JP5569270B2 - プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置 - Google Patents

プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置に関する。
電子材料分野では、ノート型パーソナルコンピューターや携帯電話等の情報処理機器を含む電子機器に対する小型化、高速化等の要求に伴い、当該電子機器に使用される半導体装置等の電子部品においても小型化、高速化等が進んでいる。情報伝達の高速伝送においては電気信号の劣化が問題となっている。前記電気信号の劣化は、導体損失と誘電体損失の和で表される。特に多層プリント配線板の層間絶縁材料の誘電特性に起因する誘電体損失は、高速伝送に必要な高周波領域では著しく増加する。そのため、誘電体損失がGHz帯の周波数において電気信号劣化の主要因となっている。この問題を解決するために、プリント配線板の絶縁層に低誘電率及び低誘電正接の特性を有する材料を用いることが求められている。
プリント配線板の絶縁層としてはプリプレグを用いることができる。プリプレグは、一般的に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂組成物を溶剤に含有させてワニスとし、これをガラスクロス等の基材に含浸させて加熱乾燥させることにより作製される。プリント配線板の絶縁層を低誘電率化及び低誘電正接化させる手段として、ガラスクロスに保持される樹脂組成物量を大きくする方法がある。特にGHz帯での高周波領域において、ガラスクロスは誘電率及び誘電正接が比較的高く、樹脂は誘電率及び誘電正接が比較的低いため、ガラスクロスの体積比を小さくし、前記樹脂を主成分とした樹脂組成物の体積比を大きくすることで、プリプレグ全体の誘電率及び誘電正接を下げることができる。
また、プリプレグ上に金属箔等の導体層を設けて導体回路層を形成することにより作製したプリント配線板は、前記プリプレグが有する樹脂組成物量を大きくすることで、誘電率及び誘電正接が比較的高いガラスクロスから、導体回路層までの間隔が広くなるため、低誘電率化、低誘電正接化を図ることができる。
しかし、プリプレグが有する樹脂組成物量を大きくすると、プリプレグが厚くなってしまうため、プリプレグの樹脂組成物量を大きくし、且つ、プリプレグの厚さを従来と同等に維持し或いは従来よりも薄くするためには、ガラスクロスを薄くする必要がある。
しかしながら、薄いガラスクロスを用いて作製したプリプレグは、ガラスクロスに対する樹脂組成物量は大きいが、樹脂の弾性率や熱膨張率の影響が大きくなるため、プリプレグ全体の弾性率低下、熱膨張率増大が起こる。そこで従来は、樹脂組成物中の充填材の含有量を大きくすることによってプリプレグの弾性率低下、熱膨張率増大を阻止していた。さらに、充填材は樹脂に比べても誘電正接が低いため、樹脂組成物中に充填材を多量に含有させることにより、プリプレグの誘電正接をさらに低くすることができる。
また、特許文献1には、ヤーンを構成するモノフィラメントを切断する起毛処理を施した後の厚み変化率が10%以上のガラスクロスと、このガラスクロスに保持された半硬化の硬化性樹脂とから成ることを特徴とするプリプレグが開示され、当該プリプレグは、ガラスクロスの起毛によって半硬化の硬化性樹脂の保持率が高まり、低誘電率及び低誘電正接である旨が記載されている。
特開平8−41224号公報
しかしながら、樹脂組成物中の充填材量を大きくすると、樹脂組成物の流動性を低下させるため、プリプレグの成形性が悪くなり、特に当該プリプレグをコア基板用基材として用いる時に導体層との密着性が悪かったり、当該プリプレグをビルドアップ用絶縁材として用いる時に回路の埋め込みが困難になったりする等の問題が生じる。さらに、樹脂組成物の流動性が低いと、ボイド発生による絶縁信頼性の低下が起こりやすくなる。反応性が低く低粘度の樹脂を用いることで、樹脂組成物の流動性を高くすることができるが、その場合には樹脂と充填材とが分離しやすくなり、当該樹脂組成物をシート状に成形する際のプレス時に、スジ状のムラが発生する等の外観不良が生じやすくなる。また、流動性の高い樹脂組成物は、ワニスとした時の流動性も高いため、プリプレグ作製時に、ワニスを基材に保持させることが困難になるという問題点もある。
また、特許文献1に開示されているプリプレグは、本発明者の実験によれば、起毛したガラスクロスを用いているため、表面の回路パターンの平滑性が高い積層板を得るためにはプリプレグの厚みが厚くなり、薄膜化に対応させることが困難である。
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、本発明の目的は、樹脂組成物の保持量が大きく、低誘電率及び低誘電正接であり、成形性に優れるプリプレグを提供することにある。
また、本発明の目的は、前記プリプレグを用いて作製した金属張積層板及びプリント配線板を提供し、さらに、前記プリント配線板を用いて作製した半導体装置を提供することにある。
上記目的は、下記発明[1]〜[10]により達成される。
[1]充填材を60〜85質量%の割合で含有する熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有したワニスを、ガラスクロスに保持させた後、前記溶剤を除去することにより得られるプリプレグであって、
前記ワニスは、JIS C 6521に準じて測定される150℃でのゲルタイムが15分以上であり、180℃でのゲルタイムが3.0〜7.0分であり、
前記熱硬化性樹脂組成物の示差走査熱量測定(DSC)で測定される熱硬化反応開始温度が、150〜180℃であることを特徴とするプリプレグ。
[2]前記ガラスクロスの単位面積あたり重量が24g/m〜49g/mで、且つ前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が48g/m〜279g/mである、上記[1]に記載のプリプレグ。
[3]前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の2倍〜5.7倍である上記[1]又は[2]に記載のプリプレグ
[4]前記熱硬化性樹脂組成物が、硬化剤として下記化学式(1)で表わされる末端構造を少なくとも一つ含み、さらにベンゼン環のメタ位にアミノ基を有する末端構造を少なくとも一つ含む芳香族アミン化合物を含有するエポキシ樹脂組成物である、上記[1]乃至[]のいずれか一に記載のプリプレグ。
Figure 0005569270
]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらにビスマレイミド化合物を含むものである、上記[]に記載のプリプレグ。
]上記[1]乃至[]のいずれか一に記載のプリプレグ上に金属箔を積層し、加熱加圧して得られることを特徴とする金属張積層板。
]上記[]に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
]内層回路上に、上記[1]乃至[]のいずれか一に記載のプリプレグを絶縁層に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
]上記[]又は[]に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。
本発明のプリプレグは、樹脂組成物の保持量が大きく、低誘電率及び低誘電正接であり、成形性に優れる。
さらに、前記プリプレグを用いて、低誘電率及び低誘電正接である金属張積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得ることができる。
本発明のプリプレグの製造に用いられる含浸塗布設備の一例を示す概略図である。
(プリプレグ)
まず、本発明のプリプレグについて説明する。
本発明のプリプレグは、充填材を60〜85質量%の割合で含有する熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有したワニスを、ガラスクロスに保持させた後、前記溶剤を除去することにより得られ、
前記ワニスは、JIS C 6521に準じて測定される150℃でのゲルタイムが15分以上であり、180℃でのゲルタイムが3.0〜7.0分であることを特徴とする。
前記熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称する場合がある。)を溶剤に含有させて得たワニスは、充填材を多量に含むため流動性が小さく、ガラスクロスに保持されやすい。従って、前記ワニスを用いて得られる本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物からなる樹脂層をガラスクロスに厚付けすることがより容易となる。低誘電率及び低誘電正接である樹脂層の体積比が大きく、誘電率及び誘電正接が比較的高いガラスクロスの体積比が小さいと、プリプレグ全体が低誘電率及び低誘電正接となる。
また、本発明のプリプレグは、充填材を多量に含有した前記樹脂組成物を用いて作製されるので、高弾性及び低熱膨張性であり、誘電正接がより低い。
さらに、前記ワニスは、JIS C 6521に準じて測定される150℃でのゲルタイムが15分以上、180℃でのゲルタイムが3.0〜7.0分であり、より好ましくは、150℃でのゲルタイムが20分以上、180℃でのゲルタイムが5〜6.5分である。
ワニスのゲルタイムとは、ワニスが所定温度で流動性を失うまでの時間であり、ワニスのゲルタイムが短いほど、ワニスの硬化速度が速いことを意味する。
本発明のプリプレグは、前記ワニスをガラスクロスに保持させた後、加熱乾燥によってワニス中の溶剤を除去することにより得られるが、ワニスの150℃でのゲルタイムが15分未満又は180℃のゲルタイムが3.0分未満であると、ワニスの硬化速度が速すぎて、流動性が低いため、得られるプリプレグはボイド発生により絶縁信頼性が低下したり、成形性が悪くなったりする。なお、本発明においてプリプレグの成形性とは、コア基板用基材として用いる時の導体層との密着性、及びビルドアップ用絶縁材として用いる時の回路の埋め込み性のことを意味する。プリプレグ作製の際の加熱乾燥工程では、ワニス中の溶剤が除去されると同時に、ワニスが含有する樹脂組成物の硬化反応が進行し、加熱乾燥後の樹脂層は半硬化状態となる。ワニスのゲルタイムが前記範囲内であると、前記加熱乾燥工程においてワニスの硬化が徐々に進行するため、半硬化状態での樹脂層が、導体層との密着性及び回路埋め込み性に優れる流動性を有するようにすることができる。
一方、ワニスの180℃でのゲルタイムが7.0分を超えると、ワニスの硬化速度が遅すぎて、ワニスの流動性が高いため、プレス時にスジ状のムラが発生したりする。
ワニスのゲルタイムは、樹脂組成物に含まれる樹脂、硬化剤、硬化促進剤、充填材等の成分の種類及び量、並びに溶剤の種類及び量等を変えることによって調節することができる。
以下、本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物について詳しく説明する。
前記熱硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、硬化剤、充填材等を含有する。
前記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド化合物、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が用いられる。中でも、硬化性及び導体層との密着性の観点からエポキシ樹脂が好適に用いられ、硬化性及び誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の観点から、さらにビスマレイミド化合物を含有することがより好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、実質的にハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、1,1,2,2−(テトラフェノール)エタンのグリシジルエーテル類、3官能、又は4官能のグリシジルアミン類、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、ナフトールアルキレン型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂をハロゲン化した難燃化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる分子量を有する2種類以上を併用することもでき、1種類又は2種類以上と、それらのプレポリマーを併用することもできる。
これらのエポキシ樹脂の中でも特に、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより、低吸水性、耐熱性及び難燃性が向上する。
前記エポキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、300〜3000が好ましく、特に400〜2000が好ましい。分子量が前記下限値未満であると、プリプレグの機械的強度が低下したり、タック性が生じたりする場合がある。分子量が前記上限値を超えると、プリプレグ作製時におけるガラスクロスへの含浸性が低下し、均一な製品が得られない場合があったり、硬化反応が速くなり、プリプレグの成形性が悪くなったりする場合がある。
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で5〜25重量%が好ましく、特に6〜10重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると硬化性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したり、密着性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると耐熱性が低下したり、誘電特性が不十分になったりする場合がある。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、ビスマレイミド化合物を含むことが好ましい。これにより、硬化性が良好となり、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)も良好となる。
前記ビスマレイミド化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、2,2'−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N'−エチレンジマレイミド、N,N'−ヘキサメチレンジマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、低吸水率等を考慮すると、2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンが好ましい。
前記ビスマレイミド化合物は、単独で用いてもよいし、種類の異なるビスマレイミド化合物を併用したり、ビスマレイミド化合物とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記ビスマレイミド化合物の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で5〜25重量%が好ましく、特に6〜10重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が不十分となる場合があり、前記上限値を超えると半田耐熱性が悪化する場合がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、シアネート樹脂を含むことにより、難燃性を向上させ、熱膨張係数を小さくし、さらに、プリプレグの誘電特性(低誘電率、低誘電正接)等を向上させることができ、さらには、耐熱性、剛性、および導体層との密着性を向上させることができる。
前記シアネート樹脂は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
前記シアネート樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びナフトールアラルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。ノボラック型シアネート樹脂は、樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができ、樹脂層の機械的強度、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)にも優れる。
前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2’−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル、フェノールノボラック型シアネートエステル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等が挙げられる。これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、及び低熱膨張性に優れ、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、及びジシクロペンタジエン型シアネートエステルが架橋密度の制御、及び耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよいし、種類の異なるシアネート樹脂を併用したり、シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記プレポリマーは、通常、前記シアネート樹脂を加熱反応等により、例えば3量化することで得られるものであり、ワニスの成形性、流動性を調整するために好ましく使用されるものである。
前記プレポリマーは、特に限定されないが、例えば、3量化率が20〜50重量%のプレポリマーを用いた場合、良好な成形性、流動性を発現できる。
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で5〜25重量%が好ましく、特に6〜10重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、シアネート樹脂は、効果的に耐熱性、及び難燃性を発現させることができる。また、含有量が前記下限未満であると、熱膨張性が大きくなり、耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えると熱硬化性樹脂組成物を用いて作製したプリプレグの強度が低下する場合がある。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂の他に、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂を併用しても良い。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含有することができる。
前記硬化剤としては、特に限定されず、例えば前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合は、エポキシ樹脂の硬化剤として公知の脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂等を用いることができる。これらの中でも、前記熱硬化性樹脂組成物をワニスとした時に、当該ワニスのゲルタイムを本発明で特定する範囲内とすることが容易である点から、芳香族アミンが好ましく、中でも、下記化学式(1)で表わされる末端構造を少なくとも一つ含み、さらにベンゼン環のメタ位にアミノ基を有する末端構造を少なくとも一つ含む芳香族アミン化合物が好ましく、特に下記化学式(1)で表わされる末端構造を少なくとも二つ含む芳香族アミン化合物が好ましく、下記化学式(1)で表わされる末端構造を少なくとも二つ含み且つ芳香環を3つ以上有するものであることがより好ましい。なお、前記硬化剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
Figure 0005569270
前記芳香族アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(2)、(3)で表わされるアミン化合物等が挙げられる。
Figure 0005569270
Figure 0005569270
上記化学式(3)中、Rは有機基であり、本発明において「有機基」とは、異種原子を含んでいてもよい炭化水素基である。Rとしては、特に限定されないが、例えば、フェニレン基、メチレン基、イソプロピレン基等の炭化水素基、及びケトン、スルホン、アミド等の構造を含む炭化水素基のような異種原子を含む炭化水素基等が挙げられる。前記異種原子を含む炭化水素基としては、芳香環を含むものであることが特に好ましい。
前記芳香族アミン化合物としては、典型的には、鎖状のポリマーの両末端に前記化学式(1)で表わされる末端構造を二つ有する芳香族アミン化合物であるが、分岐鎖の末端に前記化学式(1)で表わされる末端構造を有する芳香族アミン化合物でもよく、また、前記化学式(2)で表わされるアミン化合物のnが0の場合のような芳香族アミン化合物であってもよい。
前記硬化剤の含有量は、特に限定されないが、前記熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を用いない場合は、前記熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で2〜15重量%が好ましく、特に5〜12重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると、硬化を促進する効果が不充分で樹脂組成物の流動性が高く、プリプレグのプレス成形時にスジ状のムラが発生したり、硬化が不充分でモノマーが残存し、その結果半田耐熱性が悪化したりする場合がある。一方、含有量が前記上限値を超えると、硬化を促進する効果が飽和する場合があり、硬化に寄与しないアミノ基が残存し、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が悪化する場合がある。
なお、前記熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を用いる場合はシアネート樹脂とアミノ基が激しく反応するため、前記硬化剤の含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で0〜5重量%が好ましく、特に0〜2重量%が好ましい。
また、本発明において硬化剤と硬化促進剤を併用しても良い。前記硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機燐系や、1.8−ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等の窒素系の硬化促進剤かそれらのアダクト品が好適に使用される。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は充填材を含有する。これにより、当該熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有したワニスの流動性を低下させることができ、さらに、当該ワニスを用いて作製したプリプレグを高弾性、低熱膨張性、及び低誘電正接とすることができる。
前記充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等の無機充填材、シリコンゴム、アクリルゴム粒子、ポリスチレンパウダー等の有機充填材を用いることができる。
本発明に用いられる充填材としては、これらの中でも特に低誘電正接及び低熱膨張性である点から、シリカが好ましく、特に溶融シリカが好ましい。
また、前記充填材の形状は、破砕状、球状等が挙げられるが、プリプレグ製造において樹脂組成物のガラスクロスに対する含浸性を確保するため、樹脂組成物の粘度を下げることから、球状シリカを使うことが好ましい。
前記無機充填材の粒径は、特に限定されないが、平均粒径が、0.01〜5.0μmであることが好ましく、特に0.1〜2.0μmであることが好ましい。充填材の平均粒径が前記下限値未満であると、本発明の樹脂組成物を用いてワニスを調製する際に、ワニスの粘度が高くなるため、プリプレグを作製する際の作業性に影響を与える場合がある。一方、前記上限値を超えると、ワニス中で充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。充填材の平均粒子径を前記範囲内とすることにより、作業性に優れたものとすることができる。
また前記充填材は、特に限定されないが、平均粒径が単分散の充填材を用いることもできるし、平均粒子径が多分散の充填材を用いることができる。さらに平均粒子径が単分散及び/または、多分散の充填材を1種類単独で用いることもできるし、2種類以上併用することもできる。
前記充填材の含有量は、特に限定されないが、前記熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で60〜85重量%が好ましく、特に65〜75重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると充填材の分散性に優れ、ワニスがガラスクロスに保持されやすいためガラスクロスへの樹脂層の厚付けができ、前記熱硬化性樹脂組成物を用いて作製したプリプレグは高弾性、低熱膨張性、低誘電率及び低誘電正接となる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、カップリング剤を使用することが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂と充填材との界面の濡れ性を向上させることにより、ガラスクロスに対して樹脂及び充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を向上させることができる。
前記カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。
前記カップリング剤の含有量は、特に限定されないが、前記充填材100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると前記充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分以外の添加物を、特性を損なわない範囲で添加することができる。上記成分以外の成分としては、アクリル系重合物等の表面調整剤、染料及び顔料等の着色剤等を挙げることができる。
本発明では、上述の熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有したワニスをガラスクロスに保持させた後、前記溶剤を除去することによりプリプレグを得る。なお、本発明において熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有するとは、前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる可溶性の樹脂等は溶剤に溶解し、不溶性の充填材等は溶剤に分散していることを意味する。
前記溶剤としては、少なくとも前記熱硬化性樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用してもよい。具体的には、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、及びエステルエーテル類等の有機溶剤を用いることができる。良好な溶解性を示す溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
前記ワニスの固形分は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。ワニスの固形分量が前記範囲内であると、ワニスの流動性を、ガラスクロスに保持されやすい程度とすることができ、且つ、ワニスのゲルタイムを本発明で特定した範囲内とすることができる。
前記ガラスクロスとしては、例えばガラス織布、ガラス不織布、ガラスペーパー等が挙げられる。これらの中でも線膨張係数を低減する観点から、ガラス織布が好ましい。
前記ガラスクロスを構成するガラスは、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもEガラス、Tガラス、または、Sガラスが好ましい。これにより、ガラスクロスの高弾性化を達成することができ、熱膨張係数も小さくすることができる。
前記ワニスを前記ガラスクロスに含浸させる方法は、例えばガラスクロスをワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、ガラスクロスをワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、ガラスクロスに対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。尚、ガラスクロスをワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。図1に示すように、ガラスクロス1を、含浸槽2の樹脂組成物のワニス3中に浸漬して、ガラスクロス1にワニス3を含浸する。その際、含浸槽2が備えるディップロール4(図1では3本)によってガラスクロス1はワニス3中に浸漬される。次いで、ワニス3を含浸したガラスクロス1を、垂直方向に引き上げて、水平方向に並設され、対向している1対のスクイズロール又は、コンマロール(図1の5はスクイズロール)の間を通して、ガラスクロス1へのワニス3の塗布量を調整する。その後、ワニス3が塗布されたガラスクロス1を、乾燥機6で所定の温度で加熱して、塗布されたワニス中の溶剤を揮発させると共に熱硬化性樹脂組成物を半硬化させてプリプレグ7を製造する。なお、図1中の上部ロール8はプリプレグ7を進行方向に移動させるために、プリプレグ7の進行方向と同方向に回転している。また、前記ワニス3の溶剤を乾燥させる条件は、温度90〜180℃、時間1〜10分で乾燥させることにより半硬化のプリプレグ7を得ることができる。
本発明のプリプレグは、前記ガラスクロスの単位面積あたり重量が24g/m 〜49g/m で、且つ前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が48g/m 〜279g/m であることが好ましい。ガラスクロスの単位面積あたり重量及び熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が前記範囲内であると、ガラスクロスに保持される樹脂組成物量が大きいので、プリプレグが低誘電率及び低誘電正接となり、且つ、ガラスクロスが薄いので、プリプレグ全体の厚さが従来と同等又はそれ以下となる。
また、本発明のプリプレグは、前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の2倍〜5.7倍であることが好ましく、特に3倍〜5倍であることが好ましい。これにより、プリプレグが低誘電率及び低誘電正接となる。
本発明のプリプレグが有する前記熱硬化性樹脂組成物は、示差走査熱量測定(DSC)で測定される熱硬化反応開始温度が、150〜180℃であることが好ましく、特に160〜170℃であることが好ましい。前記熱硬化反応開始温度は、DSC装置によって所定の温度範囲における樹脂組成物の発熱量を測定した時の、発熱量の増加が始まる温度とすることができ、具体的には、JIS K7121の方法に準じて算出した硬化発熱開始温度を、熱硬化反応開始温度とすることができる。
熱硬化反応開始温度が前記下限値未満であると、樹脂組成物の硬化反応が速すぎるため、得られるプリプレグはボイドが発生したり、成形性が悪くなったりする。熱硬化反応開始温度が前記上限値を超えると、樹脂組成物の硬化反応が遅すぎるため、ワニスの流動性が高く、ワニスをガラスクロスに保持させることが困難であったり、プレス時にスジ状のムラが発生したりする。
熱硬化反応開始温度は、一般的には、樹脂組成物に含まれる樹脂及び硬化剤、硬化促進剤の種類を変えることによって調節することができる。
なお、前記DSC測定を行う熱硬化性樹脂組成物のサンプルとしては、プリプレグから樹脂層を削り取る等の操作によってガラスクロスから分離した熱硬化性樹脂組成物の粉末を用いることができる。
(金属張積層板)
次に、金属張積層板について説明する。
本発明の金属張積層板は、上述のプリプレグ上に金属箔を積層し、加熱加圧して得られる。前記プリプレグは、1枚で用いても良いし、2枚以上積層した積層体を用いても良い。プリプレグを1枚で用いるときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。プリプレグを2枚以上積層した積層体を用いるときは、当該積層体の最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次に、プリプレグと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。
前記金属箔としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金等の金属箔が挙げられる。また、上記のような銅、銅系合金等の導体層をめっきにより形成してもよい。
前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.5〜5MPaが好ましく、特に1〜3MPaが好ましい。また、必要に応じて高温槽等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
本発明の金属張積層板は、本発明のプリプレグを用いているため、金属箔の密着性に優れ、さらに、加熱加圧成形時の樹脂組成物のフローが少なく、加熱加圧中の金属張積層板内における溶融樹脂の不均一な移動が抑制され、金属張積層板表面のスジ状のムラを防止し、且つ均一な厚みとすることができる。
(プリント配線板)
次に、本発明のプリント配線板について説明する。
本発明のプリント配線板は、上記の金属張積層板を内層回路基板に用いてなる。
または、本発明のプリント配線板は、上記のプリプレグを絶縁層に用いてなる。
本発明においてプリント配線板とは、絶縁層の上に金属箔等の導体層を設けて導体回路層を形成したものであり、片面プリント配線板(一層板)、両面プリント配線板(二層板)、及び多層プリント配線板(多層板)のいずれであってもよい。多層プリント配線板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により3層以上に重ねたプリント配線板であり、内層回路基板に絶縁層を重ね合わせて加熱加圧成形することによって得ることができる。
前記内層回路基板は、例えば、本発明の金属張積層板の金属箔に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
前記絶縁層としては、本発明のプリプレグを用いることができる。尚、前記絶縁層として、本発明のプリプレグを用いる場合は、前記内層回路基板は本発明の金属張積層板からなるものでなくてもよい。
以下、本発明のプリント配線板の代表例として、本発明の金属張積層板を内層回路基板として用い、本発明のプリプレグを絶縁層として用いる場合の多層プリント配線板について説明する。
前記金属張積層板の片面又は両面に、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法等の公知の方法により回路形成し、内層回路基板を作製する。場合によっては、ドリル加工、レーザー加工によりスルーホールを形成し、メッキ等で両面の電気的接続をとることもできる。この内層回路基板に前記プリプレグを重ね合わせて加熱加圧形成することで絶縁層を形成する。同様にして、前記公知の方法により形成した導体回路層と絶縁層とを交互に繰り返し形成することにより、多層プリント配線板を得ることができる。
具体的には、前記プリプレグと前記内層回路基板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置等で絶縁層を加熱硬化させる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
次に、積層した絶縁層にレーザーを照射して、開孔部を形成する。前記レーザーは、エキシマレーザー、UVレーザー及び炭酸ガスレーザー等が使用できる。
レーザー照射後の樹脂残渣等(スミア)は過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤等により除去する処理、すなわちデスミア処理を行うことが好ましい。デスミア処理が不十分で、デスミア性が十分に確保されていないと、開孔部に金属メッキ処理を行っても、スミアが原因で上層導体回路層と下層導体回路層との通電性が十分に確保されなくなるおそれがある。また、デスミア処理を行うことで、平滑な絶縁層の表面を同時に粗化することができるため、次工程において金属メッキにより形成される外層回路の密着性を上げることができる。尚、レーザー照射による開孔部形成の前に、絶縁層表面に導体層を形成してもよい。
次に、開孔部に金属メッキ処理を行い、前記公知の方法により絶縁層表面に外層回路形成を行う。開孔部に金属メッキ処理を行うことで、外層回路と内層回路との導通を図る。
さらに絶縁層を積層し、前記同様回路形成を行っても良いが、多層プリント配線板では、回路形成後、最外層にソルダーレジストを形成する。ソルダーレジストの形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストを積層(ラミネート)し、露光、及び現像により形成する方法、又は液状レジストを印刷したものを露光、及び現像により形成する方法によりなされる。尚、得られた多層プリント配線板を半導体装置に用いる場合、半導体素子を実装するため接続用電極部を設ける。接続用電極部は、金メッキ、ニッケルメッキ及び半田メッキ等の金属皮膜で適宜被覆することができる。
(半導体装置)
次に、本発明の半導体装置について説明する。
前記で得られたプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンブを介して、前記プリント配線板との接続を図る。そして、プリント配線板と半導体素子との間には封止樹脂を充填し、半導体装置を形成する。半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマス等からなる合金で構成されることが好ましい。
半導体素子とプリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダー等を用いて、プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいてもよい。この接合工程に先んじて、半田バンプ及び/又はプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)ワニスの調製
7.0質量部のビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(ケイアイ化成製、BMI−70)、8.0質量部の4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイアイ化成製、BMI−H)、7.2質量部のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)、7.4質量部の1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学製、APB、下記化学式(4))、0.5質量部の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製、KBM−403)、70.0質量部の溶融シリカ粒子(アドマテックス製、SO−25R、平均粒径0.5μm)をシクロヘキサノンに加え、不揮発分70%となるように調整して樹脂組成物のワニスを得た。
Figure 0005569270
(2)プリプレグの製造
上述のワニスを用いて、ガラス織布(厚さ0.032mm、旭化成エレクトロニクス製)31質量部に対して、ワニスを樹脂組成物の固形分で151質量部含浸させて、180℃の乾燥炉で5分間乾燥させ、樹脂組成物含有量83.0質量%のプリプレグを作製した。
(3)金属張積層板の製造
上記プリプレグを4枚重ね、上下に厚さ12μmの電解銅箔(古河サーキットホイル製、F2WS−12)を重ねて、圧力4MPa、温度220℃で180分間加熱加圧成形を行い、厚さ0.4mmの両面銅張積層板を得た。
(4)プリント配線板の製造
前記で得られた両面銅張積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。前記内層回路基板の表裏に、前記で得られたプリプレグを重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させた。これを、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱し硬化させて、積層体を得た。
次に、表面の電解銅箔層に黒化処理を施した後、炭酸ガスレーザーで、層間接続用のφ60μmのビアホールを形成した。次いで、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に15分浸漬後、中和してビアホール内のデスミア処理を行った。次に、フラッシュエッチングにより電解銅箔層表面を1μm程度エッチングした後、無電解銅メッキを厚さ0.5μmで行い、電解銅メッキ用レジスト層を厚さ18μm形成しパターン銅メッキし、温度200℃時間60分加熱してポストキュアした。次いで、メッキレジストを剥離し全面をフラッシュエッチングして、L/S=20/20μmのパターンを形成した。最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR4000/AUS308)を厚さ20μm形成し多層プリント配線板を得た。
(5)半導体装置の製造
プリント配線板は、前記で得られた多層プリント配線板であって、半導体素子の半田バンプ配列に相当するニッケル金メッキ処理が施された接続用電極部を配したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、Sn/Pb組成の共晶で形成された半田バンプを有し、半導体素子の回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製、CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、多層プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂の硬化条件は、温度150℃、120分の条件であった。
(実施例2)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表1に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりに1,3-ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン(三井化学製、APB−5、下記化学式(5))を10.4質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(実施例3)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表1に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりに4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル(東永産業製、3,3’−BAPB、下記化学式(6))を8.7質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(実施例4)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表1に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりに4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(東永産業製、BABP、下記化学式(7))を9.2質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(実施例5)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表1に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりに1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(東永産業製、BABB、下記化学式(8))を10.7質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(実施例6)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表1に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりにビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(小西化学製、3BAPS、下記化学式(9))を9.8質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(実施例7)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、及び1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの添加量を表1に示すように変え、溶融シリカ粒子の含有量を65.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例8)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4‘−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、及び1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの添加量を表1に示すように変え、溶融シリカ粒子の含有量を75.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例9)
実施例1のワニスを用いて、ガラス織布(厚さ0.039mm、旭化成エレクトロニクス製)25質量部に対して、ワニスを樹脂組成物の固形分で142質量部含浸させて、180℃の乾燥炉で5分間乾燥させ、樹脂組成物含有量85.0質量%のプリプレグを作製した以外は、実施例1と同様にして、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例10)
実施例1のワニスを用いて、ガラス織布(厚さ0.045mm、旭化成エレクトロニクス製)49質量部に対して、ワニスを樹脂組成物の固形分で126質量部含浸させて、180℃の乾燥炉で5分間乾燥させ、樹脂組成物含有量73.5質量%のプリプレグを作製した以外は、実施例1と同様にして、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例11)
7.0質量部のビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(ケイアイ化成製、BMI−70)、8.0質量部の4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイアイ化成製、BMI−H)、7.2質量部のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)、7.3質量部のフェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA製、PT−30)、0.1質量部の2−フェニルイミダゾール(四国化成製、2PZ)、0.5質量部の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製、KBM−403)、70.0質量部の溶融シリカ粒子(アドマテックス製、SO−25R、平均粒径0.5μm)をシクロヘキサノンに加え、不揮発分70%となるように調整して樹脂組成物のワニスを調製した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例1)
ワニスに含まれる溶融シリカ粒子の含有量を30.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例2)
ワニスに含まれる溶融シリカ粒子の含有量を200.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例3)
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりに1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(和歌山精化製、TPE−R、下記化学式(10))を用いた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(比較例4)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表2に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりに1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(和歌山精化製、TPE−R、上記化学式(10))を4.2質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例5)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表2に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりに4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(東永産業製、4,4’−BAPB、下記化学式(11))を8.7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(比較例6)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表2に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりにビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(小西化学製、4BAPS、下記化学式(12))を9.8質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(比較例7)
ワニスに含まれるビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の添加量を表2に示すように変え、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの代わりに3,3’−ジアミノジフェニルメタン(東京化成製、下記化学式(13))を5.4質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
Figure 0005569270
(比較例8)
8.0質量部のビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(ケイアイ化成製、BMI−70)、9.1質量部の4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイアイ化成製、BMI−H)、8.3質量部のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)、4.0質量部のフェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA製、PT−30)、0.1質量部の2−フェニルイミダゾール(四国化成製、2PZ)、0.5質量部の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製、KBM−403)に70.0質量部の溶融シリカ粒子(アドマテックス製、SO−25R、平均粒径0.5μm)をシクロヘキサノンに加え、不揮発分70%となるように調整して樹脂組成物のワニスを調製した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(評価)
各実施例および各比較例で得られたワニス、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板について以下の評価を行った。評価内容を項目と共に示す。また、各実施例により得られた評価結果を表1に示し、各比較例により得られた評価結果を表2に示す。なお、成形不良により評価できなかった項目は、表中において「成形不良」と記載した。
(1)ワニスのゲルタイムの測定
各実施例及び各比較例で得られたワニスのゲルタイムを、JIS C 6521に準拠して150℃、180℃で測定した。
(2)DSC発熱開始温度
各実施例及び各比較例で得られたプリプレグが有する樹脂組成物の発熱開始温度をDSCにより測定した。前記樹脂組成物のサンプルとしては、前記プリプレグから樹脂層を削り取ることによって得られた樹脂組成物の粉末を用いた。DSCは、示差走査熱量計DSC−220U(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、窒素気流下で昇温速度10℃/minで測定を行った。DSC測定データから、JIS K7121の方法に準じて、硬化発熱開始温度を算出した。算出された硬化発熱開始温度は、樹脂組成物の熱硬化反応開始温度とすることができる。
(3)スジ状ムラの発生状況
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板表面のスジ状のムラの発生状況を目視により評価した。スジ状のムラが確認されなかったものを「問題なし」とし、スジ状のムラが確認されたものを「スジあり」とした。
(4)ボイドの発生状況
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、ボイドの発生状況を目視により評価した。ボイドが確認されなかったものを「問題なし」とし、ボイドが確認されたものを「ボイドあり」とした。
(5)熱膨張係数(50〜100℃)
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、得られた積層板から5mm×20mmの試験片を作製し、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、温度範囲30〜300℃、10℃/分、荷重5gの条件で2サイクル目の50〜100℃における線膨張係数(CTE)を測定した。
(6)弾性率
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、6mm×25mmの試験片を作製し、DMA装置(TAインスツルメント社製、動的粘弾性測定装置、DMA983)を用いて5℃/分で昇温し、50℃でのG’(貯蔵弾性率)の値を弾性率とした。
(7)半田耐熱性
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板を50mm×50mmにグラインダーソーでカットした後、エッチングにより銅箔を1/4だけ残した試料を作製し、JIS C 6481に準拠して半田耐熱性を評価した。評価は、121℃、100%、2時間、PCT吸湿処理を行った後に、288℃の半田槽に30秒間浸漬した後で外観の異常の有無を調べた。異常がなかったものを「問題なし」とし、全体的にフクレの箇所があったものを「フクレあり」とした。
(8)銅箔ピール強度
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板から100mm×20mmの試験片を作製し、23℃におけるピール強度を測定した。尚、ピール強度測定は、JIS C 6481に準拠して行った。
(9)誘電特性
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、97×25mm、53×25mm、38×25mmに切断し、0.018mmの圧延銅箔を貼り付け、トリプレート線路共振器を作成し、マイクロ波ネットワークアナライザHP8510C、HP83651A、HP8517B(アジレントテクノロジー製)を用いて、トリプレート線路共振器法で誘電率及び誘電正接を測定した。
(10)回路埋め込み性
各実施例及び各比較例で得られた多層プリント配線板の回路部分の断面を観察し、回路埋め込み性を確認した。
ボイドが確認されたものを「ボイドあり」とした。
Figure 0005569270
Figure 0005569270
比較例1は充填材の量が少ないため、熱膨張係数が高く、弾性率が低く、誘電正接が高かった。
比較例2は充填材の量が多いため、樹脂層の流動性が小さく、ボイドが発生した。また、両面銅張積層板作製時の加熱加圧工程にて溶融樹脂の不均一な移動が起き、表面が平滑にならず、成形不良となった。このため、熱膨張係数、弾性率、半田耐熱性、及び誘電特性を評価するためのサンプルを作製できなかった。また、得られた両面銅張積層板は、銅箔が簡単に剥がれるため、銅箔ピール強度を測定できなかった。
比較例3、比較例5及び比較例6は、150℃及び180℃でのワニスのゲルタイムが短く、熱硬化反応開始温度が低いために、ボイドが発生し、比較例2と同様に成形不良となった。
比較例4は、180℃でのワニスゲルタイムが短く、熱硬化反応開始温度が低いために、多層プリント配線板の回路部分にボイドが発生した。さらに硬化剤の量を減らしたことにより、成形は可能となったものの、硬化が不充分でモノマーが残存するため、半田耐熱性が悪化した。
比較例7は、180℃でのワニスのゲルタイムが長く、熱硬化反応開始温度が高いために、スジ状のムラが発生した。
比較例8は、180℃でのワニスのゲルタイムが長いために、スジ状のムラが発生した。さらに、硬化が不充分でモノマーが残存し、その結果半田耐熱性が悪化した。
一方、実施例1〜11は、熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で充填材を60〜85質量%含有し、さらにワニス中の成分の配合を調整して、ワニスのゲルタイムが150℃で15分以上、180℃で3.0〜7.0分となるようにしたため、低誘電率及び低誘電正接であり、成形性(導体層との密着性及び回路埋め込み性)に優れ、スジ状のムラやボイドの発生もなく、低熱膨張性、高弾性であり、半田耐熱性に優れる等の基本的な要求品質も満たしていた。
1…ガラスクロス
2…含浸槽
3…ワニス
4…ディップロール
5…スクイズロール
6…乾燥機
7…プリプレグ
8…上部ロール

Claims (9)

  1. 充填材を60〜85質量%の割合で含有する熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有したワニスを、ガラスクロスに保持させた後、前記溶剤を除去することにより得られるプリプレグであって、
    前記ワニスは、JIS C 6521に準じて測定される150℃でのゲルタイムが15分以上であり、180℃でのゲルタイムが3.0〜7.0分であり、
    前記熱硬化性樹脂組成物の示差走査熱量測定(DSC)で測定される熱硬化反応開始温度が、150〜180℃であることを特徴とするプリプレグ。
  2. 前記ガラスクロスの単位面積あたり重量が24g/m〜49g/mで、且つ前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が48g/m〜279g/mである、請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の2倍〜5.7倍である請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  4. 前記熱硬化性樹脂組成物が、硬化剤として下記化学式(1)で表わされる末端構造を少なくとも一つ含み、さらにベンゼン環のメタ位にアミノ基を有する末端構造を少なくとも一つ含む芳香族アミン化合物を含有するエポキシ樹脂組成物である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のプリプレグ。
    Figure 0005569270
  5. 前記熱硬化性樹脂組成物が、さらにビスマレイミド化合物を含むものである、請求項に記載のプリプレグ。
  6. 前記請求項1乃至のいずれか一項に記載のプリプレグ上に金属箔を積層し、加熱加圧して得られることを特徴とする金属張積層板。
  7. 前記請求項に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
  8. 内層回路上に、前記請求項1乃至のいずれか一項に記載のプリプレグを絶縁層に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
  9. 前記請求項又はに記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。
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