JP2012107215A - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物および硬化物 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献3では、フィラーの形状を特徴付けており、特許文献4では、フィラーの配合による接着性等の低下をエポキシ樹脂と相溶性の高分子量樹脂や反応性高分子量樹脂の配合で改善しており、いずれも使用されているエポキシ樹脂はごく一般的なノボラック型エポキシ樹脂やビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
また、実用性を考えると、特殊な材料組成や特別な硬化プロセスを必要とせず、現在実用化されているエポキシ樹脂組成物の構成成分を置き換えたり、あるいは単に添加するだけで、可撓性などの硬化物特性を維持したまま、熱伝導性を向上させる材料が求められるものと考えられる。
尚、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値または物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明のエポキシ樹脂は、下記式(1)で表され、かつエポキシ当量が2,500g/当量以上30,000g/当量以下であるものである。以下において、本発明のエポキシ樹脂を「エポキシ樹脂(1)」と称す場合がある。
本発明のエポキシ樹脂は、フィルム成形・塗布等のプロセスに適用するのに十分な製膜性、伸び性を有し、かつ熱伝導性、耐熱性、可撓性などのバランスに優れ、また、硬化物特性のバランスに優れるものである。
本発明のエポキシ樹脂が伸び性に優れる理由の詳細は明らかではないが、引っ張りの応力がかかった際の延伸に耐えうる分子鎖長を有し、さらにその応力を緩和するために、重なり合ったビフェニル骨格同士が「滑る」ことができるためであると推測される。また、この時、結晶性が高すぎると、脆く、伸びずに破断してしまうため、適度にアモルファス部分を有していることが重要であるが、本発明のエポキシ樹脂では、ビフェニル骨格が置換基を有することにより、結晶性を適度に低下させることができ、このことが伸び性の発現に繋がっていると考えられる。従って、伸び性の観点からは、前記式(2)におけるR1がすべて水素原子ではなく、1つ以上のR1が炭化水素基、またはハロゲン元素であることが好ましい。
熱伝導はフォノンと伝導電子に支配され、金属のように自由電子を有する場合は伝導電子による寄与が大きいが、エポキシ樹脂は一般的に絶縁体であり、絶縁体においてはフォノンが熱伝導の主因子である。フォノンによる熱伝導は振動エネルギーの伝播であるので、振動が減衰しにくく、結晶性の高い材料であるほど熱伝導性に優れる。
本発明のエポキシ樹脂が熱伝導性に優れる理由の詳細は明確ではないが、全ての骨格がビフェニル骨格であることから構造の自由度が少なく、振動エネルギーが減衰しにくいこと、またビフェニル骨格は平面性が高いため、分子間の重なりが良く、より分子運動を拘束できることによるものであると推定される。
エポキシ樹脂は、結晶性がよい方が耐熱性に優れる傾向があり、同一構造のエポキシ樹脂であれば、樹脂の分子量、あるいはエポキシ当量が大きい方が耐熱性に優れる傾向にある。本発明のエポキシ樹脂は適度な結晶性とエポキシ当量の大きさを有することにより耐熱性にも優れる。
本発明のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が大きいため、可撓性に優れている。また、硬化物としたときにもエポキシ樹脂全体に対する架橋点が少ないために架橋密度が低くなり、硬化物特性としての可撓性にも優れたものである。
前記式(1)中、nは繰り返し数であり、平均値である。その値の範囲は1<n<100であるが、伸び性と樹脂の取り扱いの両面のバランスから、好ましくは10より大、より好ましくは15より大、更に好ましくは20より大、特に好ましくは25より大、とりわけ好ましくは35より大であり、一方、好ましくは80より小、より好ましくは60より小、特に好ましくは50より小である。例えばnは、10<n<80、特に20<n<50、とりわけ35<n<50であることが好ましい。前記式(1)のnが1以下であると伸び性が全く発現せず、100以上であるとエポキシ樹脂の粘度が高くなり、取り扱いが困難となる傾向がある。
前記式(1)中、Aは前記式(2)で表されるビフェニル骨格であり、前記式(2)において、R1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素を表すが、1分子のエポキシ樹脂において、R1としては水素原子と炭素数1〜10の炭化水素基との両方を含んでいるものがエポキシ樹脂全体の結晶性とハンドリングの観点から好ましい。R1が同一であると結晶性が高くなり、熱伝導性を高めることが可能であるが、結晶性が高すぎるとエポキシ樹脂をフィルム成形したときの伸びが小さくなる傾向にある。
尚、R1の炭化水素基は置換基を有していてもよく、その置換基は特に限定されるものではないが、分子量で200以下のものである。
また、R1のハロゲン元素とは、フッ素元素、塩素元素、臭素元素を指し、これらは1種のみでも複数種を含んでいてもよい。
また、R1としての水素原子は、2位および/または6位にあることが好ましく、3位および/または5位に炭化水素基があることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量は2,500g/当量以上30,000g/当量以下である。エポキシ当量が2,500g/当量以上であることが、エポキシ樹脂をフィルム成形したときの伸びの観点、また可撓性の観点から好ましく、本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量は好ましくは3,000g/当量以上、より好ましくは5,000g/当量以上である。一方、エポキシ当量が30,000g/当量以下であることが硬化時の反応性の観点から好ましく、本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量は好ましくは15,000g/当量以下、より好ましくは10,000g/当量以下である。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、後述の実施例の項に記載される方法で求められる。
本発明のエポキシ樹脂の重量平均分子量Mwは、10,000以上200,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が10,000より低いものでは伸び性、可撓性が低くなる傾向にあり、200,000より高いと樹脂の取り扱いが困難となる傾向にある。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、後述の実施例の項に記載される方法で求められる。
本発明のエポキシ樹脂の熱伝導率(硬化前の熱伝導率)は、通常0.18W/mK以上、好ましくは0.19W/mK以上、さらに好ましくは0.20W/mK以上である。尚、一般的にエポキシ樹脂の熱伝導率はエポキシ樹脂の硬化物として評価されることが多く、一般的な硬化していないビスフェノールA型エポキシ樹脂の熱伝導率は通常この値よりも低く、液状であるため伸び性を測定するサンプル作成も不可能である場合が多い。本発明のエポキシ樹脂は、硬化前の樹脂そのものの状態でも十分な製膜性と熱伝導率を有し、かつ伸び性とのバランスにも優れるものである。なお、エポキシ樹脂の熱伝導率は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明のエポキシ樹脂は耐熱性に優れるものであり、後掲の実施例の項で示すガラス転移温度Tg(DSC)で評価した場合、100℃以上、220℃以下を達成することができる。エポキシ樹脂のTg(DSC)は、後掲の本発明のエポキシ樹脂を用いる用途では高い方が好ましく、好ましくは105℃以上、より好ましくは115℃以上、更に好ましくは120℃以上であるが、Tg(DSC)が高過ぎると、加工プロセスで使用する加熱温度で硬化反応が十分に進行せず、品質が安定しなかったり、要求される物性が発現しない、といった問題が生じうるため、その上限は通常200℃であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂は、例えば、ビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂(X)とビフェノール化合物(Y)を反応させる、二段法によって得ることができる。また、1種類または2種類以上のビフェノール化合物(Y)とエピクロロヒドリンを直接反応させる、一段法によっても得られる。しかし、ビフェノール化合物(Y)は溶剤溶解性が良くないため、一般的に一段法に用いられる溶剤が適用できない場合があるので、二段法を用いることが好ましい。
ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサンなどが挙げられる。
アミド系溶剤の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
また、反応途中で高粘性生成物が生じたときは溶剤を追加添加して反応を続けることもできる。反応終了後、溶剤は必要に応じて、除去することもできるし、更に追加することもできる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として少なくとも上述の本発明のエポキシ樹脂、すなわちエポキシ樹脂(1)と硬化剤を含むものであり、熱伝導性に優れると共に、各種用途に要求される諸物性を十分に満たす硬化物を与える。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分としてエポキシ樹脂(1)のみを含むものであってもよく、エポキシ樹脂(1)と共にエポキシ樹脂(1)以外のエポキシ樹脂(以下「他のエポキシ樹脂」と称す場合がある。)を含んでいてもよい。
これまでに報告されている高熱伝導性エポキシ樹脂の設計思想は、メソゲン部位間の相互作用を利用して分子(鎖)を自発的に配向させたり、外部磁場などの印可によりメソゲンを含む分子(鎖)を配向させることによりフォノン散乱を低減させて熱伝導性を向上させることを主目的としていた。そのため、従来の高熱伝導性エポキシ樹脂はほぼすべてが熱伝導性を高めるために設計されたエポキシ樹脂であり、硬化条件を含めた硬化プロセス等において制限があることが多く、その選択の自由度は低かった。このため、部材や封止剤、接着剤などの製品に従来の高熱伝導性エポキシ樹脂を適用しようとした場合、製品の要求物性と高熱伝導性を両立させることが非常に困難であった。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂(1)に加え、他のエポキシ樹脂を含むことが出来る。
他のエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の、各種エポキシ樹脂を使用することができる。
これらは1種を単独でまたは2種以上の混合体として使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては硬化剤が配合される。
本発明における硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応に寄与する物質を示す。
本発明のエポキシ樹脂組成物は無機充填剤を含有していてもよく、無機充填剤を含むことにより、より一層の熱伝導性の向上を図ることができる。
また、凝集状の無機充填剤であれば、平均結晶径が0.01μm〜5μmで、平均凝集径が1〜1000μmのものを用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、塗膜形成時の取り扱い時に、エポキシ樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、各種の添加剤を含んでいてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分はエポキシ樹脂(1)のみよりなるものであってもよく、エポキシ樹脂(1)と他のエポキシ樹脂とからなるものであってもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物において、固形分としての全エポキシ樹脂成分中のエポキシ樹脂(1)の割合は、通常1〜100重量%、好ましくは1〜99重量%、より好ましくは5〜95重量%である。エポキシ樹脂(1)の割合が1重量%以上であることにより、エポキシ樹脂(1)を配合することによる熱伝導性の向上効果を十分に得ることができ、所望の高熱伝導性を得ることができる。エポキシ樹脂(1)の割合が99重量%以下で他のエポキシ樹脂が1重量%以上であることにより、他のエポキシ樹脂の配合効果が発揮され、硬化性、硬化物の物性が十分なものとなる。なお、本発明において「固形分」とは、常温(20℃)で揮発する溶媒などを除いた成分を意味し、固体のみならず、半固形や粘稠な液状物をも含むものとする。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、固形分としての全エポキシ樹脂成分と硬化剤の合計に対して0.1〜60重量%である。
また、硬化剤がアミド系硬化剤、第3級アミン、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等の場合は、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分と硬化剤の合計に対して0.1〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。
無機充填剤の配合量が上記下限値以上であることにより、無機充填剤を配合することによる熱伝導性の向上効果が十分なものとなり、所望の高熱伝導性を得ることができ、上記上限値以下であることにより、成膜性や接着性、硬化物の物を損なうことなく、良好な特性が得られる。
本発明の硬化物は、前述の本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるものであり、伸び性、熱伝導性、耐熱性のバランスに優れ、良好な硬化物特性を示すものである。本発明の硬化物は上記の優れた硬化物特性を有するため、以下に記載する各種用途に有用である。
本発明のエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂組成物は、フィルム成形・塗布等のプロセスに適用するのに十分な伸び性を有し、かつ熱伝導性、耐熱性とのバランスに優れ、硬化物特性にも優れるものであり、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。
本発明のエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂組成物の用途の一例としては、多層プリント配線基板、フィルム状接着剤、液状接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
以下において、「部」は全て「重量部」を示す。
また、以下における各種特性の測定方法は次の通りである。
<分子量>
高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー(株)製 HLC−8320GPC EcoSEC(登録商標))を使用し、以下の測定条件で、標準ポリスチレンとして、TSK Standard Polystyrene:F−128(Mw1,090,000、Mn1,030,000)、F−10(Mw106,000、Mn103,000)、F−4(Mw43,000、Mn42,700)、F−2(Mw17,200、Mn16,900)、A−5000(Mw6,400、Mn6,100)、A−2500(Mw2,800、Mn2,700)、A−300(Mw453、Mn387)を使用した検量線を作成し、重量平均分子量および数平均分子量をポリスチレン換算値として測定した。
カラム:東ソー(株)製「TSKGEL SuperHM−H+H5000+H4000+H3000+H2000」
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/分
検出:UV(波長254nm)
温度:40℃
試料濃度:0.1重量%
インジェクション量:10μl
前記式(1)におけるnの値およびその平均値は、上記で求められた数平均分子量より算出した。
JIS K 7236に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
溶剤を乾燥除去したエポキシ樹脂で、SIIナノテクノロジー(株)製 示差走査熱量計「DSC7020」を使用し、30〜200℃まで10℃/分で昇温して測定した。
エポキシ樹脂の溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)にアプリケーターで塗布し、以下のaまたはbの条件で乾燥させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂フィルムを得た。
a:60℃で1時間、その後150℃で1時間、更に200℃で1時間乾燥
b:150℃で2時間、その後200℃で1時間乾燥
これを幅1cmに切り出し、精密万能試験機(インストロン社製 INSTRON 5582型)を使用して5mm/分で3回測定した平均値を示した。
エポキシ樹脂の溶液(実施例1−1〜1−3及び比較例1−1)またはエポキシ樹脂組成物(実施例2−1〜2−5、比較例2−1、実施例3−1〜3−3及び比較例3−1)を、セパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)にドクターブレードで塗布した。
エポキシ樹脂の溶液については、以下のaまたはbの条件で加熱乾燥させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂のフィルムを得た(実施例1−1〜1−3及び比較例1−1)。
a:60℃で1時間、その後150℃で1時間、更に200℃で1時間加熱
b:150℃で2時間、その後、200℃で1時間加熱
また、エポキシ樹脂組成物については、上記のaまたはbの条件で加熱することにより硬化させ、厚さ約50μmの硬化物のフィルムを得た(実施例2−1〜2−5、比較例2−1、実施例3−1〜3−3及び比較例3−1)。
これらのフィルムについて、以下の装置にて、熱拡散率、比重、比熱を測定し、この3つの測定値を乗じることで熱伝導率を求めた。
熱拡散率:(株)アイフェイズ「アイフェイズ・モバイル 1u」
比重:メトラー・トレド(株)「天秤 XS−204」(「固体比重測定キット」使用)
比熱:セイコーインスツル(株)「DSC320/6200」
得られた硬化物のフィルムのガラス転移温度Tg(DMA)、並びに30℃及び200℃における弾性率を動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した。動的粘弾性測定により、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E''の値が得られる。ガラス転移温度Tg(DMA)は、損失正接tanδ(=E''/E’)の最大値より求めた。また、30℃及び200℃における弾性率は、貯蔵弾性率E’の値を用いた。
ガラス転移温度Tg(DMA)が高いほど耐熱性に優れるものと評価し、また、弾性率(貯蔵弾性率E’)の値が低いほど可撓性に優れるものと評価した。
なお、動的粘弾性測定の測定条件は下記の通りである。
装置:TAインスツルメント社製 RSAIII
測定温度範囲:30℃〜200℃
引張荷重:100mN(初期静荷重)
周波数:1Hz
昇温速度:2℃/分
サンプル幅:3mm
スパン間距離:20mm
<実施例1−1〜1−3及び比較例1−1>
表−1に示した配合で化合物(X)、化合物(Y)、触媒および反応用溶剤を撹拌機付き耐圧反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、180℃で5時間反応を行った後、希釈用溶剤を加えて固形分濃度を調整した。反応生成物から定法により溶剤を除去した後、得られた樹脂について分析を行った。結果を表−1に示す。
(X−A):三菱化学(株)製 商品名「YL6121H」(4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂と3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂の1:1混合物、エポキシ当量171g/当量)
(X−B):三菱化学(株)製 商品名「YX4000」(3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、エポキシ当量186g/当量)
(Y−A):3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール(OH当量107g/当量、本州化学(株)製)
(Y−B):3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール(OH当量121g/当量)
(Y−C):4,4’−ビフェノール(OH当量93g/当量)
(C−1):27重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液
(C−2):50重量%テトラメチルアンモニウムクロライド水溶液
(S−1):シクロヘキサノン
(S−2):メチルエチルケトン
<実施例2−1>
実施例1−1で得られたエポキシ樹脂(Mw59,741)2.5g(樹脂の固形分0.75g;60重量部)と、ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80重量%MEK溶液(三菱化学(株)製 商品名「157S65B80)」)0.625g(樹脂の固形分0.5g;40重量部)と、硬化剤として2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(三菱化学(株)製 商品名「EMI24」)の20重量%溶液(溶剤MEK)0.032g(硬化剤重量0.00625g;0.5重量部)をはかり取り、自転公転ミキサーにて撹拌混合・脱泡を行った。このエポキシ樹脂組成物について前述の方法により硬化フィルムを作製し、その熱伝導率を求めた。結果を表−2に示す。
表−2または表−3に示したようにエポキシ樹脂組成物の配合を変更した以外は実施例2−1と同様にエポキシ樹脂組成物を製造し、表−2または表−3に示した硬化条件にて硬化フィルムを得た。実施例2−1と同様に前述の方法にて熱伝導率を測定し、実施例3−1〜3−3及び比較例3−1については、更に、前述の方法にてガラス転移温度Tg(TMA)、及び30℃と200℃とのそれぞれにおける貯蔵弾性率E’を測定した。
・その他のエポキシ樹脂
「1256B40」:三菱化学(株)製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂40重量%MEK溶液
「157S65B80」:三菱化学(株)製 ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80重量%MEK溶液
「NC−3000−H」:日本化薬(株)製 ビフェニル型多官能エポキシ樹脂
「NC−3000」:日本化薬(株)製 ビフェニル型多官能エポキシ樹脂
・硬化剤
「EMI24」:三菱化学(株)製 2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール
また、表−2の結果より、実施例2−1〜2−5のエポキシ樹脂は、比較例2−1よりも熱伝導性に優れていることがわかる。
更に、表−3の結果より、実施例3−1〜3−3のエポキシ樹脂は、比較例3−1のエポキシ樹脂よりも剛直な骨格を有しているにも関わらず、その硬化物は同等の可撓性を有し、かつ熱伝導性は比較例3−1よりも優れたものであることがわかる。
Claims (4)
- 前記式(2)におけるR1が、水素原子または炭素数が1〜4のアルキル基であり、式(2)で表されるビフェニル骨格は少なくとも一つの水素原子と少なくとも一つの炭素数1〜4のアルキル基を有する請求項1に記載のエポキシ樹脂。
- エポキシ樹脂成分と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物において、該エポキシ樹脂成分として少なくとも請求項1または2に記載のエポキシ樹脂を含み、該硬化剤を固形分としての全エポキシ樹脂成分と硬化剤の合計に対して0.1〜60重量%含むエポキシ樹脂組成物。
- 請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
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