<前提技術>
本願発明の特徴の理解を容易にするため、本願発明の前提技術となる従来の列車無線システムの具体的に構成及び動作について説明する。
図7はこの発明の前提技術となる従来の列車無線システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、従来の列車無線システムでは、列車51に移動局52及び車上モニタ装置55、停止ボタン56及び車上ATO装置57を含む種々の車上装置を備える。一方、列車51と列車管理部5において指令所に配置される中央装置54は、基地局53(53a,53b)を介して列車51の移動局52との間で通信が可能であり、車上モニタ装置55、停止ボタン56及び車上ATO装置57から得られる、音声信号、制御信号及びデータ信号を含む情報が送信データとして移動局52から基地局53に送信可能である。
以下、車上モニタ装置55、停止ボタン56及び車上ATO装置57を総称する装置を「車上装置55X」と呼び、車上モニタ装置55、停止ボタン56及び車上ATO装置57からの音声信号、制御信号及びデータ信号を含む情報を、総称して「処理結果情報S55X」と呼ぶ場合がある。
一方、列車管理部5は中央装置54、地上外部装置58及び基地局53から構成され、基地局53,移動局52間の無線通信によって列車51と通信が可能である。なお、基地局53は複数の基地局53a,53b,…からなり、それぞれが分散して所定の箇所に配置される。
中央装置54が基地局53を介して移動局52から得られる送信データS52を受信し、この送信データS52の内容を列車運行に関わるデータである伝送データとして運行管理装置、ATO中央装置、CTC装置、電力遠制装置などを含む地上外部装置58に伝送している。
図8は図7で示した従来の列車無線システムの処理結果情報である制御信号、データ信号のシーケンスを示す説明図である。図7に示す従来の列車無線システムでは、図8に示す流れで制御信号、データ信号を伝送している。
図8において、基地局53は移動局52からの電波を受信して中央装置54にデータを渡し、また、中央装置54からのデータを電波に変換して移動局52に送信するだけの機能のため、中央装置54に含めて「中央装置/基地局」としてまとめて示している。
まず、ステップST51で、列車51に備えられた移動局52は車上モニタ装置55からの車両状態情報(障害情報など)、停止ボタン56からの停止信号、車上ATO装置57からの列車制御信号を含む処理結果情報S55Xを車上装置55Xから受信する。
そして、ステップST52において、移動局52は処理結果情報S55Xを含む送信データS52を基地局53を介して中央装置54に送信する。
その後、ステップST53において、中央装置54から送信データS52(処理結果情報S55X)を含む伝送データS54を地上外部装置58に伝送する。地上外部装置58は、列車51運行に関わるデータである伝送データS54に基づき、列車51を含む列車の運行制御を行う。
図7及び図8で示した従来の列車無線システムでは、例えば、列車51の運行開始時の始業点検や保守点検等のために、基地局53を介して中央装置54との通信状態の試験(通信試験)が行われている。通信試験としては、例えば列車51の乗務員と指令所の指令員間で通話すること等により行われている。
このように従来の列車無線システムでは、運行開始時の始業点検や保守点検等において、通話試験等による通信試験が行われている。しかしながら、列車51運行に関わる重要信号である処理結果情報S55Xを受け、処理結果情報S55Xを含む送信データS52を送信する移動局52自体は、処理結果情報S55Xの入力状態の良否を確認する手段がない。したがって、前述したように、何らかの要因によりこの移動局52への処理結果情報S55Xの入力が不通となっていた場合、列車51の運行後に障害が発生しても列車管理部5で列車51の車両状態が把握できず、列車51運行に多大な影響を与えてしまう場合がある。
その理由として、移動局52は車上装置55Xから処理結果情報S55Xを入力すると、全てそのまま基地局53を介して中央装置54に送信データS52として伝送してしまうという点が挙げられる。このため、試験として列車51の車上装置55Xから移動局52に対して処理結果情報S55Xを入力しても、移動局52はそのままの内容を送信データS52として基地局53を介して中央装置54に伝送し、中央装置54は地上外部装置38に送信データS52の内容をそのまま伝送データS54として伝送してしまう。
その結果、前述したように、試験として移動局52に対して車上装置55Xの処理結果情報S55Xを出力させたにも関わらず、中央装置54を有する列車管理部5で列車51での障害発生と誤認識を引き起こす要因となり、電力停止や信号停止など列車運行に多大な影響を与え、安定運行の妨げとなる可能性があるという問題点があった。
<実施の形態1>
図1はこの発明の実施の形態1である列車無線システムの構成を示すブロック図である。
同図に示すように、実施の形態1の列車無線システムは列車管理部1及び列車11から構成される。
列車11には移動局12、車上モニタ装置15、停止ボタン16、車上ATO装置17、試験条件発生装置19及び(車上)表示器20が搭載される。
車上モニタ装置15は、列車11の車両状態情報(障害情報など)S15を例えばシリアル伝送で移動局12に出力する。停止ボタン16はボタン押圧時に停止信号S16を例えば接点による信号伝送で移動局12に出力する。車上ATO装置17は列車自動運転用の列車制御信号S17を例えば接点による信号伝送で移動局12に出力する。
以下、説明の都合上、車上モニタ装置15、停止ボタン16及び車上ATO装置17を総称する際、単に「車上装置15X」(所定の車上装置)と称する場合があり、上述した車両状態情報S15、停止信号S16及び列車制御信号S17を総称する際、単に「処理結果情報S15X」と称する場合がある。
試験条件発生装置19は試験スイッチによる操作等をトリガとして、試験開始、試験解除等の試験条件を指示する試験条件情報S19を移動局12に出力する。
移動局12は、通常時(運行モード時)は、処理結果情報S15Xを含む送信データS12を基地局13(13a,13b)に向けて送信する。なお、通常時とは後述する試験モード時でない期間を意味する。
一方、移動局12は、試験条件情報S19が試験開始を指示し、試験終了が指示されるまでの試験モード時は、処理結果情報S15Xに対する入力状態の良否判定試験を行い、その判定結果を示す試験判定結果情報D12をユーザに視覚認識可能に表示器20上に出力する。この際、移動局12は処理結果情報S15Xを含む送信データS12の無線送信を遮断して無線送信をマスクしている。なお、表示器20はLED点灯、ディスプレイ表示等の表示機能を有している。また、表示器20を通常時にも用いる場合、試験モード時にはLEDの点灯周期を通常時と変える等により、当該表示が試験モードにおける表示であることを比較的観点にユーザに認知させることができる。
一方、列車11から独立して設置される列車管理部1は、中央装置14、地上外部装置18及び基地局13から構成され、基地局13,移動局12間の無線通信によって列車11と通信が可能である。なお、基地局13は複数の基地局13a,13b,…からなり、それぞれが分散して所定の箇所に配置される。
中央装置14が基地局13を介して移動局12から送信される送信データS12を受信し、この送信データS12(処理結果情報S55X)の内容を列車運行に関わるデータである伝送データS14として運行管理装置、ATO中央装置、CTC装置、電力遠制装置などを含む地上外部装置18に伝送している。そして、地上外部装置18は、伝送データS14に基づき、列車11を含む列車の運行制御を行う。
図2は実施の形態1の列車無線システムにおける主として試験モード時における試験動作を模式的に示す説明図である。
図2において、基地局13は移動局12からの電波を受信して中央装置14にデータを渡し、また、中央装置14からのデータを電波に変換して移動局12に送信するだけの機能のため、中央装置14に含めて「中央装置/基地局」としてまとめて示している。
実施の形態1の列車無線システムは、列車11の運行開始時の始業点検や保守点検等において、車上装置15Xから移動局12に出力される処理結果情報S15Xの移動局12への入力状態を良否判定試験する試験動作が可能である。
以下、図2を参照して、実施の形態1の列車無線システムの試験動作を説明する。
まず、ステップST11において試験ON動作を行う。すなわち、ステップST11において、ユーザ(乗務員など)が、列車11の試験条件発生装置19に設けられた試験スイッチ等を操作して、試験条件発生装置19から試験開始を指示する試験条件情報S19を移動局12に出力することにより、移動局12に試験モードの開始を認識させる。なお、ステップST11において、試験スイッチ以外の試験条件情報S19の情報出力手段を用いても良い。
その結果、移動局12は試験モードが開始されたこと(試験モードON)を認識することができ、試験モードにおいて試験動作を実行する。
次に、ステップST12(情報入力処理)において、車上装置15Xから出力される処理結果情報S15Xが移動局12に入力される。移動局12は試験モード中において基地局13への処理結果情報S15Xを含む送信データS12の送信を行う無線送信をマスクする。したがって、試験モード時において処理結果情報S15Xを含む送信データS12が列車管理部1に向けて無線送信させることはない。
そして、ステップST13(試験処理)において、処理結果情報S15Xに対する移動局22への入力状態の良否判定試験を行い、その判定結果を示す試験判定結果情報D12をユーザに視覚認識可能に表示器20上に出力する。なお、試験判定結果情報D12には、車上モニタ装置15、停止信号S16及び列車制御信号S17のいずれの入力に不良があったかを示す不良信号識別情報が含まれる。
なお、移動局12による試験判定は処理結果情報S15Xを構成する車両状態情報S15、停止信号S16及び列車制御信号S17それぞれの入力の有無によって行う。
その結果、ユーザは表示器20の表示内容を視覚認識することにより、車上装置15Xに含まれる車上モニタ装置15、停止ボタン16及び車上ATO装置17それぞれから出力される車両状態情報S15、停止信号S16及び列車制御信号S17の移動局12への入力状態に関する試験判定結果を認識することができる。
その後、ステップST14において試験モードOFF動作を行う。すなわち、ユーザが、列車11の試験条件発生装置19に設けられた試験スイッチ等を操作して、試験条件発生装置19から試験解除を指示する試験条件情報S19を移動局12に出力することにより、移動局12に試験モードの終了を認識させる。なお、ステップST14において、試験スイッチ以外の試験条件情報S19の信号出力手段を用いても良い。
その結果、移動局12は試験モードが解除されたこと(試験モードOFF)を認識することができ、以降、通常動作を行う運用モードに戻る。
ステップST15以降は通常動作を行う運用モードに戻るため、ステップST15で車上装置15Xからの処理結果情報S15Xが出力され、ステップST16で処理結果情報S15Xを含む送信データS12が基地局13及び中央装置14に無線送信され、ステップST17で送信データS12(処理結果情報S15X)を含む伝送データS14が地上外部装置18に出力される。そして、地上外部装置18は伝送データS14に基づき、列車11の車両状態把握などを認識し、列車11を含む種々の列車の運行制御を行う。
このように、実施の形態1の列車無線システムにおける移動局12は、試験モード設定時において、車上モニタ装置15、停止ボタン16、及び車上ATO装置17を含む列車11の車上装置15Xから移動局12への処理結果情報S15Xの入力状態の良否を試験することができ、その試験結果に基づく試験判定結果情報D12を、ユーザに対して視覚認識可能に表示器20上に表示することができる。
その結果、ユーザ(乗務員など)は、表示器20を参照することにより、処理結果情報S55Xの移動局12への入力状態の良否を簡単に認識することができる。
また、この場合において、試験判定結果情報D12には上述した不良信号識別情報が含まれるため、ユーザは試験判定結果情報D12内の不良信号識別情報に基づき、不具合が生じた回線(例えば、移動局12−車上モニタ装置15間)を具体的に特定することが可能である。この場合、試験判定結果情報D12は車上モニタ装置15から出力される車両状態情報S15の入力状態が不良であることを指示する。
また、試験モード設定時において、列車11の移動局12は、車上装置15Xからの処理結果情報S15Xの入力があっても、基地局13への処理結果情報S15Xを含む送信データS12の基地局13への無線送信を抑止(遮断)する。このため、基地局13および中央装置14には、列車11の車上装置15Xから試験として移動局12に入力された処理結果情報S15Xが送信データS12として送信されることはなく、地上外部装置18に処理結果情報S15Xを含む伝送データS14が伝送されることもない。
このため、地上側(指令所など)に存在する列車管理部1において、試験中の処理結果情報S15Xを実際の情報とし認識し、列車11で障害が発生した等の誤認識を引き起こす等の悪影響を確実に回避することができ、他の列車運行に悪影響を与えることなく、車上モニタ装置15などの列車11の車上装置15Xから移動局12への処理結果情報S15Xの入力良否に関する確認試験を行うことが可能である。
このように、試験条件発生装置19から出力される試験条件情報S19によって、移動局12を試験モード/運用モードを切替え設定することにより、車上装置15Xから移動局12に出力される処理結果情報S15Xの処理内容を試験モード時と運用モード時とで適切に区別することができる。その結果、実施の形態1の列車無線システムは、列車運行に悪影響を与えることなく、車上装置15Xから移動局12への処理結果情報S15Xの入力の良否判定の確認試験を行うことが可能である。
<実施の形態2>
図3はこの発明の実施の形態2である列車無線システムの構成を示すブロック図である。
同図に示すように、実施の形態2の列車無線システムは列車管理部2及び列車21から構成される。
列車21には移動局22、車上モニタ装置25、停止ボタン26、車上ATO装置27及び試験条件発生装置29が搭載される。
車上モニタ装置25は、列車21の車両状態情報(障害情報など)S25を移動局22に出力する。停止ボタン26はボタン押圧時に停止信号S26を移動局22に出力する。車上ATO装置27は列車自動運転用の列車制御信号S27を移動局22に出力する。
以下、説明の都合上、車上モニタ装置25、停止ボタン26及び車上ATO装置27を総称する際、単に「車上装置25X」(所定の車上装置)と称する場合があり、上述した車両状態情報S25、停止信号S26及び列車制御信号S27を総称する際、単に「処理結果情報S25X」と称する場合がある。
さらに、試験条件発生装置29は試験スイッチによる操作等をトリガとして、試験開始、試験解除等の試験条件を指示する試験条件情報S29を移動局22に出力する。
移動局22は、通常時(運行モード時)は、処理結果情報S25Xを含む送信データS22を基地局23(23a,23b)に向けて送信する。
一方、移動局22は、試験条件情報S29が試験開始を指示し、試験終了が指示されるまでの試験モード時は、試験ビット等で試験データであることを指示する識別信号(モード識別情報)、及び処理結果情報S25Xを含む試験データを送信データS22として基地局13に向けて送信する。
列車21から独立して設置される列車管理部2は中央装置24、地上外部装置28、基地局23及び(管理用)表示器30から構成され、基地局23,移動局22間の無線通信によって列車21と通信が可能である。なお、基地局23は複数の基地局23a,23b,…からなり、それぞれが分散して所定の箇所に配置される。
中央装置24が基地局23を介して移動局22から得られる送信データS22を受信し、送信データS22に試験データであることを指示する識別信号が存在しない場合、送信データS22を列車運行に関わるデータを伝送データとして運行管理装置、ATO中央装置、CTC装置、電力遠制装置などを含む地上外部装置28に伝送する。そして、地上外部装置28は、伝送データS24に基づき、列車21を含む列車の運行制御を行う。
一方、中央装置24は、送信データS22に試験データであることを指示する識別信号が存在する場合、送信データS22に含まれる処理結果情報S25Xに対する良否判定試験を行い、その試験判定結果情報D24を列車管理部2の外部のユーザ(指令員など)に視覚認識可能に表示器30上に表示(出力)する。この際、中央装置24は、処理結果情報S25X(送信データS22)を含む伝送データS24の地上外部装置28への伝送を遮断している。なお、表示器30はLED点灯、ディスプレイ表示等の表示機能を有している。
図4は実施の形態2の列車無線システムにおける主として試験モード時における試験動作を模式的に示す説明図である。
図4において、基地局23は移動局22からの電波を受信して中央装置24にデータを渡し、また、中央装置24からのデータを電波に変換して移動局22に送信するだけの機能のため、中央装置24に含めて「中央装置/基地局」としてまとめて示している。
実施の形態2の列車無線システムは、列車21の運行開始時の始業点検や保守点検等において、車上装置25Xから移動局22に出力される処理結果情報S25Xを列車管理部2側にて良否判定試験する試験動作が可能である。
以下、図4を参照して、実施の形態2の列車無線システムの試験動作を説明する。
まず、ステップST21において試験ON動作を行う。すなわち、ステップST21において、ユーザ(乗務員など)が、列車21の試験条件発生装置29に設けられた試験スイッチ等を操作して、試験条件発生装置29から試験開始を指示する試験条件情報S29を移動局22に出力することにより、移動局22に試験モードの開始を認識させる。なお、ステップST21において、試験スイッチ以外の試験条件情報S29の信号出力手段を用いても良い。
その結果、移動局22は試験モードが開始されたこと(試験モードON)を認識することができ、試験モードにおいて試験用データ加工動作を実行する。
次に、ステップST22(情報入力処理)において、車上装置25Xから出力される処理結果情報S25Xが移動局22に入力される。
その後、ステップST23において、移動局22は、試験モードであることを指示する識別信号と処理結果情報S25Xとを含む試験データを得る試験用データ加工動作を行い、該試験データを送信データS22として基地局23に向けて無線送信を行う。
基地局23を介して送信データS22を受けた中央装置24は、送信データS22に含まれる識別信号により、送信データS22が試験データであることを認識する。中央装置24は送信データS22が試験データであることを認識すると、処理結果情報S25Xを含む伝送データS24の地上外部装置28への伝送をマスクする。したがって、試験モード時において処理結果情報S25Xを含む伝送データS24が地上外部装置28に伝送されることはない。
そして、ステップST24(試験処理)において、中央装置24は、処理結果情報S25Xに対する中央装置24の入力状態の良否判定試験を行い、その判定結果を示す試験判定結果情報D24を、列車管理部2のユーザに視覚認識可能に表示器30上に出力する。
なお、中央装置24による試験判定は送信データS22に含まれるべき処理結果情報S25Xを構成する車両状態情報S25、停止信号S26及び列車制御信号S27それぞれの入力の有無及びビットエラーの有無によって行う。すなわち、中央装置24によって、送信データS22に含まれる処理結果情報S25Xが移動局22、基地局23を経て中央装置24に正しく入力されているか否かがチェックされる。また、試験判定結果情報D24には、車上モニタ装置25、停止信号S26及び列車制御信号S27のいずれの入力に不良があったかを識別する不良信号識別情報が含まれる。
その結果、外部のユーザは表示器30の表示内容を視覚認識することにより、車上装置25Xに含まれる車上モニタ装置25、停止ボタン26及び車上ATO装置27それぞれから出力される車両状態情報S25、停止信号S26及び列車制御信号S27の移動局22及び基地局23を経た中央装置2への入力状態に関する試験判定結果を認識することができる。
その後、ステップST25において試験モードOFF動作を行う。すなわち、ユーザが、列車21の試験条件発生装置29に設けられた試験スイッチ等を操作して、試験条件発生装置29から試験解除を指示する試験条件情報S29を移動局22に出力することにより、移動局22に試験モードの終了を認識させる。なお、ステップST25において、試験スイッチ以外の試験条件情報S29の信号出力手段を用いても良い。
その結果、移動局22は試験モードが解除されたこと(試験モードOFF)を認識することができ、以降、通常動作を行う運用モードに戻る。
ステップST26以降は通常動作を行う運用モードに戻るため、ステップST26で車上装置25Xからの処理結果情報S25Xが出力され、ステップST27で処理結果情報S25Xを含む送信データS22が基地局23及び中央装置24に無線送信され、ステップST28で送信データS22(車上装置25X)を含む伝送データS24が地上外部装置28に出力される。
そして、地上外部装置28は伝送データS24に基づき、列車21の車両状態把握などを認識し、列車21を含む種々の列車の運行制御を行う。
このように、実施の形態2の列車無線システムにおける中央装置24は、送信データS22に含まれる識別信号(モード識別情報)に基づき、基地局23を介して得た移動局22からの送信データS22が試験データであることを認識すると、送信データS22に含まれる処理結果情報S25Xの中央装置24への入力状態の良否を判定し、その判定結果に基づく試験判定結果情報D34を表示器30に表示可能である。
このため、司令員等の列車管理部2のユーザは試験モード時に表示器30を参照することにより、処理結果情報S25Xの移動局22及び基地局23を経由した中央装置24への入力状態の良否を簡単に認識することができる。
すなわち、実施の形態2の列車無線システムは、試験モード設定時において、車上モニタ装置25、停止ボタン26、及び車上ATO装置27を含む列車21の車上装置25Xから移動局22への処理結果情報S25Xの移動局22、基地局23を経由して中央装置24に至る際の入力状態良否を試験することができ、試験判定結果情報D24を表示器30を用いて列車管理部2のユーザに対して視覚認識可能に出力することができる。
また、試験判定結果情報D34には不良信号識別情報が含まれるため、例えば外部のユーザは、表示器30で表示される試験判定結果情報D24に基づき、不具合が生じた回線(例えば、移動局22−車上モニタ装置25間)を具体的に特定することが可能である。
また、試験モード設定時において、列車管理部2の中央装置24は、処理結果情報S25X及び試験モードを指示する識別信号を含む送信データS22の入力があった場合、地上外部装置28への処理結果情報S25Xを含む伝送データS24の伝送を抑止(遮断)するため、地上外部装置28に処理結果情報S25Xを含む伝送データS24が伝送されることはない。
このため、地上側(指令所など)に存在する列車管理部2において、試験中の処理結果情報S25Xを実際の情報とし認識し、列車21で障害が発生した等の誤認識を引き起こす悪影響を確実に回避することができ、他の列車運行に悪影響を与えることなく、車上モニタ装置25などの列車21の車上装置25Xから移動局22及び基地局23を経由した中央装置24への送信データS22に含まれる処理結果情報S25Xの入力良否に関する確認試験を行うことが可能である。すなわち、処理結果情報S25Xのデータ入力の確認試験を運用状態と同じ通信路(移動局22から中央装置24までの経路)で行うことが可能である。
このように、実施の形態2の列車無線システムにおける中央装置24は、識別信号(モード識別情報)に基づき送信データS22が試験データであることを認識すると、伝送データS24の地上外部装置28への伝送を遮断するため、試験モード時に処理結果情報S25Xが地上外部装置28に伝送されることによる悪影響を確実に回避することができる。
上述したように、実施の形態2の列車無線システムは、試験条件発生装置29から出力される試験条件情報S29によって、移動局22を試験モード/運用モードを切替え設定することにより、車上装置25Xから移動局22に出力される処理結果情報S25Xの処理内容を試験モード時と運用モード時とで適切に区別することができる。その結果、実施の形態2の列車無線システムは、列車運行に影響を与えることなく、車上装置25Xから中央装置24への送信データS22に含まれる処理結果情報S25Xの入力状態の良否判定の確認試験を行うことが可能である。
<実施の形態3>
図5はこの発明の実施の形態3である列車無線システムの構成を示すブロック図である。
同図に示すように、実施の形態3の列車無線システムは列車管理部3及び列車31から構成される。
列車31には移動局32、車上モニタ装置35、停止ボタン36、車上ATO装置37、表示器41及び試験条件発生装置39が搭載される。
車上モニタ装置35は、列車31の車両状態情報(障害情報など)S35を移動局32に出力する。停止ボタン36はボタン押圧時に停止信号S36を移動局32に出力する。車上ATO装置37は列車自動運転用の列車制御信号S37を移動局32に出力する。
以下、説明の都合上、車上モニタ装置35、停止ボタン36及び車上ATO装置37を総称する際、単に「車上装置35X」(所定の車上装置)と称する場合があり、上述した車両状態情報S35、停止信号S36及び列車制御信号S37を総称する際、単に「処理結果情報S35X」と称する場合がある。
さらに、試験条件発生装置39は試験スイッチによる操作等をトリガとして、試験開始、試験解除等の試験条件を指示する試験条件情報S39を移動局32に出力する。
移動局32は、通常時(運行モード時)は、処理結果情報S35Xを含む送信データS32を基地局33(33a,33b)に向けて送信する。
一方、移動局32は、試験条件情報S39が試験開始を指示し、試験終了が指示されるまでの試験モード時は、試験ビット等で試験データであることを指示する識別信号(モード識別情報)、及び処理結果情報S35Xを含む送信データS32を基地局13に向けて送信する。
さらに、移動局32は、試験モード時において、基地局33から送信された応答送信データS33を受け、応答送信データS33に含まれる試験判定結果情報D34を、列車31のユーザに視覚認識可能に表示器41上に出力する。なお、表示器41はLED点灯、ディスプレイ表示等の表示機能を有している。
一方、列車21から独立して設置される列車管理部3は中央装置34、地上外部装置38、基地局33及び表示器40から構成され、基地局33,移動局32間の無線通信によって列車31と通信が可能である。なお、基地局33は複数の基地局33a,33b,…からなり、それぞれが分散して所定の箇所に配置される。
中央装置34が基地局33を介して移動局32から得られる送信データS32を受信し、送信データS32に試験データであることを指示する識別信号が存在しない場合、送信データS32を列車運行制御に関わるデータである伝送データS34として運行管理装置、ATO中央装置、CTC装置、電力遠制装置などを含む地上外部装置38に伝送する。そして、地上外部装置38は、伝送データS34に基づき、列車31を含む列車の運行制御を行う。
一方、中央装置34は、送信データS32に試験データであることを指示する識別信号が存在する場合、送信データS32に含まれる処理結果情報S35Xに対する良否判定試験を行い、その試験判定結果情報D34を列車管理部3のユーザに視覚認識可能に表示器40上に出力する。この際、中央装置34は、処理結果情報S35Xを含む伝送データS24の伝送を遮断している。なお、表示器40はLED点灯、ディスプレイ表示等の表示機能を有している。
さらに、中央装置34は、試験判定結果情報D34を含むデータを応答送信データS33として、基地局33を介して移動局32に送り返す。
図6は実施の形態3の列車無線システムにおける主として試験モード時における試験動作を模式的に示す説明図である。
図6において、基地局33は移動局32からの電波を受信して中央装置34にデータを渡し、また、中央装置34からのデータを電波に変換して移動局32に送信するだけの機能のため、中央装置34に含めて「中央装置/基地局」としてまとめて示している。
実施の形態3の列車無線システムは、列車31の運行開始時の始業点検や保守点検等において、車上装置35Xから移動局32に出力される処理結果情報S35Xを列車管理部3側にて良否判定試験する試験動作が可能である。
以下、図6を参照して、実施の形態3の列車無線システムの試験動作を説明する。
まず、ステップST31において試験ON動作を行う。すなわち、ステップST31において、ユーザ(乗務員など)が、列車31の試験条件発生装置39に設けられた試験スイッチ等を操作して、試験条件発生装置39から試験開始を指示する試験条件情報S39を移動局32に出力することにより、移動局32に試験モードの開始を認識させる。なお、ステップST31において、試験スイッチ以外の試験条件情報S39の信号出力手段を用いても良い。
その結果、移動局32は試験モードが開始されたこと(試験モードON)を認識することができ、試験モードにおいて試験用データ加工動作を実行する。
次に、ステップST32(情報入力処理)において、車上装置35Xから出力される処理結果情報S35Xが移動局32に入力される。
その後、ステップST33において、移動局32は、試験モードであることを指示する識別信号と処理結果情報S35Xとを含む試験データを得る試験用データ加工処理を行い、該試験データを送信データS32として基地局33に向けて無線送信を行う。
基地局33を介して送信データS32を受けた中央装置34は、送信データS32に含まれる識別信号(モード識別情報)により、送信データS32が試験データであることを認識する。中央装置34は送信データS32が試験データであることを認識すると、送信データS32(処理結果情報S35X)を含む伝送データS34の伝送をマスクする。したがって、試験モード時において処理結果情報S35Xを含む伝送データS34が地上外部装置38に伝送されることはない。
その後、ステップST34(試験処理)において、中央装置34は、処理結果情報S35Xに対する良否判定試験を行い、その判定結果である試験判定結果情報D34を、列車管理部3の外部のユーザ(司令員など)に視覚認識可能に表示器40上に出力する。
その結果、列車管理部3のユーザは表示器40の表示内容を視覚認識することにより、車上装置35Xに含まれる車上モニタ装置35、停止ボタン36及び車上ATO装置37それぞれから出力される車両状態情報S35、停止信号S36及び列車制御信号S37の移動局32への入力状態に関する試験判定結果を認識することができる。
なお、中央装置24による試験判定は、送信データS32に含まれるべき処理結果情報S35Xを構成する車両状態情報S35、停止信号S36及び列車制御信号S37それぞれの入力の有無及びビットエラーの有無によって行う。すなわち、中央装置34によって、送信データS32に含まれる処理結果情報S35Xが移動局32、基地局33を経て中央装置34に正しく入力されているか否かがチェックされる。また、試験判定結果情報D34には、車上モニタ装置35、停止信号S36及び列車制御信号S37のいずれの入力に不良があったかを識別する不良信号識別情報が含まれる。
そして、ステップST35において、中央装置34は、試験判定結果情報D34を含む応答送信データS33を基地局33を介して列車31の移動局32に応答送信する。
すると、ステップST36において、移動局32は応答送信データS33内の試験判定結果情報D34を列車31のユーザに視覚認識可能に表示器41上に出力する。
その後、ステップST37において試験モードOFF動作を行う。すなわち、ユーザが、列車31の試験条件発生装置39に設けられた試験スイッチ等を操作して、試験条件発生装置39から試験解除を指示する試験条件情報S39を移動局32に出力することにより、移動局32に試験モードの終了を認識させる。なお、ステップST37において、試験スイッチ以外の試験条件情報S39の信号出力手段を用いても良い。
その結果、移動局32は試験モードが解除されたこと(試験モードOFF)を認識することができ、以降、通常動作を行う運用モードに戻る。
ステップST37以降は通常時の運用モードに戻るため、ステップST38で車上装置35Xからの処理結果情報S35Xが出力され、ステップST39で処理結果情報S35Xを含む送信データS32が基地局33及び中央装置34に無線送信され、ステップST39で送信データS32(処理結果情報S35X)を含む伝送データS34が地上外部装置38に出力される。そして、地上外部装置38は伝送データS34に基づき、列車31の車両状態把握などを認識し、列車31を含む列車に対する種々の運行制御を行う。
このように、実施の形態3の列車無線システムは、実施の形態2と同様、試験モード設定時において、列車31の車上装置35Xから移動局32への処理結果情報S35Xの移動局32、基地局33を経由して中央装置34に至る際の入力状態良否を試験することができ、当該試験判定結果情報D34を表示器40を用いて列車管理部3のユーザに対して視覚認識可能に出力することができる。
さらに、実施の形態3の列車無線システムは、試験モード設定時において、移動局32は応答送信データS33を受けることにより、応答送信データS33内の試験判定結果情報D34を表示器41を用いて列車31のユーザに対しても視覚認識可能に出力することができる。
その結果、列車のユーザは試験モード時に表示器41を参照することにより、処理結果情報S35Xの移動局32及び基地局33を経由した中央装置34への入力状態の良否を簡単に認識することができる。
また、試験判定結果情報D34には不良信号識別情報が含まれているため、例えばユーザは、表示器40及び41それぞれで表示される試験判定結果情報D34に基づき、不具合が生じた回線(例えば、移動局32−車上モニタ装置35間)を具体的に特定することが可能である。
また、試験モード設定時において、列車管理部3の中央装置34は、処理結果情報S35X及び試験モードを指示する識別信号を含む送信データS32の入力があっても、地上外部装置38への処理結果情報S35Xを含む伝送データS34の伝送を抑止するため、地上外部装置38に処理結果情報S35Xを含む伝送データS34が伝送されることもない。
このため、地上側(指令所など)に存在する列車管理部3において、試験中の処理結果情報S35Xを実際の情報とし認識し、列車31で障害が発生した等の誤認識を引き起こす悪影響を確実に回避することができ、他の列車運行に悪影響を与えることなく、列車31の車上装置35Xから移動局32及び基地局33を経由した中央装置34への送信データS32に含まれる処理結果情報S35Xの入力良否に関する確認試験を行うことが可能である。すなわち、処理結果情報S35Xのデータ入力の確認試験を運用状態と同じ通信路(移動局32から中央装置34までの経路)で行うことが可能である。
加えて、列車31の車上装置35Xから移動局32及び基地局33を経由して中央装置34に至る試験判定結果情報D34を含む応答送信データS33を移動局32にて受信することにより、列車31上においても試験判定結果情報D34を表示器41上に表示することができる。
このように、実施の形態3の列車無線システムは、試験条件発生装置39から出力される試験条件情報S39によって、移動局32を試験モード/運用モードを切替え設定することにより、車上装置35Xから移動局32に出力される処理結果情報S35Xの処理内容を試験モード時と運用モード時とで適切に区別することができる。その結果、実施の形態3の列車無線システムは、列車運行に悪影響を与えることなく、車上装置35Xから中央装置34への送信データS32に含まれる処理結果情報S35Xの入力状態の良否判定の確認試験結果を列車管理部3及び列車31それぞれで認識することが可能である。