JP2012092435A - 鉄スクラップを利用した製鋼方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 鉄スクラップを鉄源として溶鋼を製造するにあたり、鉄スクラップを省エネルギーで効率良く溶解するとともに、含有成分の種類及び含有量が様々である鉄スクラップを使用しても不純物成分の少ない鋼を製造する。
【解決手段】 鉄スクラップと炭材とからアーク炉にて溶銑を製造し、製造した溶銑を、該溶銑の一部を炉内に残留させてアーク炉から出湯し、出湯した後の溶銑に高炉溶銑を混合し、混合した後の溶銑を転炉に装入し、転炉にて酸素吹錬して溶鋼を製造する、鉄スクラップを利用した製鋼方法であって、アーク炉では、前記の鉄スクラップ装入から前記の溶銑出湯までの工程を繰り返し実施し、且つ、下記の(1)式で定義される、アーク炉に残留させる溶銑の残湯量比率Zが10〜70質量%の範囲内になるように出湯量を制御する。 残湯量比率Z(質量%)=炉内残留溶銑量(t)×100/溶銑溶解量(t)…(1)
【選択図】 図2

Description

本発明は、含有成分の種類及び含有量が様々である鉄スクラップを有効に活用して不純物成分の少ない鋼を製造する方法に関し、詳しくは、鉄スクラップを鉄源とし、炭材を炭素源としてアーク炉にて溶銑を製造し、製造された溶銑と高炉にて製造された溶銑(以下、「高炉溶銑」と記す)とを混合して不純物成分濃度を希釈し、この希釈された溶銑を用いて転炉にて溶鋼を製造する方法に関する。
高炉を有する銑鋼一貫製鉄所において、製鋼過程で使用する鉄源は、鉄鉱石を高炉で還元して得られる高炉溶銑が主体であるが、鉄鋼材料の加工工程で発生する鉄スクラップや、建築物及び機械製品などの老朽化に伴って発生する鉄スクラップも、溶銑に対して10質量%前後の量が鉄源として一般的に使用されている。鉄鋼製品の製造にあたり、高炉溶銑の製造には、鉄鉱石を還元し且つ溶融するために多大なエネルギーを要するのに対し、鉄スクラップは溶解熱のみを必要としており、鉄スクラップを利用した場合には、鉄鉱石の還元熱分のエネルギー使用量を少なくすることができるという利点がある。従って、省エネルギー及びCO2削減による地球温暖化防止の観点からも、鉄スクラップ利用の促進が望まれている。
現在、鉄スクラップは、アーク炉で消費される量が多く、棒鋼や形鋼といった鋼材の製造に使用されている。一方、銑鋼一貫製鉄所では、鉄スクラップを転炉などの製鋼炉へ直接投入して使用するが、転炉では、鉄スクラップの溶解熱として高炉溶銑に含有される炭素の燃焼熱を利用しているので、鉄スクラップの配合比率を極端に高めることはできない。また、アーク炉及び転炉ともに、鉄源として低級な鉄スクラップを使用すると、製造される溶鋼の成分調整が難しいという問題もある。
鉄源として鉄スクラップが主体のアーク炉においても、更なる生産性の向上及び省エネルギーを図るべく多数の提案がなされており、その中の1つの技術として、鉄源として高炉溶銑を利用し、溶解時間を短縮する或いは電力原単位を下げる方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、鉄スクラップなどの固体原料をアーク炉に装入するに先立って、アーク炉の排滓口上に仮設溶湯ガイドを設けて湯道を確保し、その後、アーク炉に固体原料を装入して通電を行い、この通電中に前記湯道を介して高炉溶銑をアーク炉内に装入する技術が開示されている。特許文献1によれば、高炉溶銑の配合比率を30質量%程度とすることで、アーク炉の生産性が向上し、消費電力を低減できるとしている。
また、特許文献2には、アーク炉に、鉄スクラップなどの原料とともに、高炉溶銑を全装入物の30〜85質量%の割合で、その装入時期を鉄スクラップ溶解率30〜40%の段階として、炉頂から炉の中心部の鉄スクラップなどの固形原料に囲まれた部分に装入する技術が開示されている。特許文献2によれば、アーク炉の生産性が向上するのみならず、高炉溶銑による希釈効果により鋼中不純物成分の低下が図られ、低級鉄スクラップでも有効に再利用することが可能になるとしている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、溶解した溶銑をアーク炉にて溶鋼(通常、炭素濃度は1質量%未満)の段階まで精錬(「脱炭精錬」という)し、精錬後にアーク炉から溶鋼を出湯する技術であり、アーク炉において、炉内の溶銑に多量の酸素ガスを供給して、脱炭精錬を行わねばならず、鉄スクラップの溶解時間以外に、脱炭時間が更に必要になり、一回の溶解・精錬処理に費やす時間は長くなる。また、鉄源として高炉溶銑を併用することから、1回の溶解・精錬処理あたりに溶解される鉄スクラップの量は炉容量に比較して少なく、脱炭精錬によって精錬時間が長くなることを考えると、必ずしも単位時間あたりの鉄スクラップの溶解量が増加するわけではない。これらから判断すれば、特許文献1及び特許文献2では、鉄スクラップを鉄源として大量に消費することは困難であるといわざるを得ない。
また更に、アーク炉は、本来、炭素を高濃度に含有する溶銑を精錬対象としていないことから、一般的に、転炉のような大規模な排ガス回収設備を備えておらず、従って、アーク炉での脱炭精錬の場合には、転炉での脱炭精錬に比較して、脱炭反応により生成される、溶銑中炭素と酸素ガスとの反応生成物であるCOガス及びCO2ガスなどからなる排ガスの潜熱・顕熱が有効に回収されているとはいいがたい。
加えて、高炉溶銑をアーク炉に装入する工程は、アーク炉の蓋を開けて上部から装入する方法と、炉内への湯道のランナーを介して装入する方法があるが、何れも以下の問題点がある。つまり、上部から装入する方法では、溶銑及び炉体からの放熱量が多く、熱ロスが大きいばかりでなく、装入時間も長くなり、効率的な方法とはいえない。また、ランナーを介する方法も、溶銑の放熱量が大きくなるだけではなく、ランナーの予熱や耐火物補修などのメンテナンスが必要であり、この場合も効率的な方法とはいえない。
特開平6−41627号公報 特開平8−109408号公報
鉄スクラップを省エネルギーで効率的に溶解する手段として、上記のように、アーク炉に高炉溶銑を配合して鉄スクラップを溶解する技術があるが、上記従来技術では、アーク炉で脱炭精錬を行っており、この脱炭精錬のための処理時間に起因して、鉄スクラップの溶解能が低下することによる生産性の悪化や、脱炭精錬時の排ガス中の潜熱・顕熱を有効に回収することができないという問題点がある。
更に、近年、鋼の品質特性に対する要求が厳しくなり、銅、錫などのトランプエレメントの濃度低減の要求も高くなっているが、逆に、鉄スクラップ市場では、国内での鉄スクラップ備蓄量の増加に伴い、老廃屑中のトランプエレメントの濃度が高く推移してきており、鉄スクラップを鉄源とする場合には、鉄鋼製品の品質を確保するのが非常に厳しい状況下にある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鉄スクラップを鉄源として溶鋼を製造するにあたり、鉄スクラップを省エネルギーで効率良く溶解するとともに、含有成分の種類及び含有量が様々である鉄スクラップを使用しても不純物成分の少ない鋼を製造することのできる、鉄スクラップを利用した製鋼方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)鉄スクラップを鉄源としてアーク炉に装入し、該アーク炉にて前記鉄スクラップを溶解するとともに炭材を用いて加炭して溶銑を製造し、製造した溶銑を、該溶銑の一部を炉内に残留させてアーク炉から出湯し、出湯した後の溶銑に高炉にて製造された溶銑を混合し、混合した後の溶銑を転炉に装入し、該転炉にて酸素吹錬して溶鋼を製造する、鉄スクラップを利用した製鋼方法であって、
前記アーク炉では、前記の鉄スクラップ装入から前記の溶銑出湯までの工程を繰り返し実施し、且つ、下記の(1)式で定義される、アーク炉に残留させる溶銑の残湯量比率Zが10質量%以上70質量%以下の範囲内になるように出湯量を制御することを特徴とする、鉄スクラップを利用した製鋼方法。
残湯量比率Z(質量%)=炉内残留溶銑量(t)×100/溶銑溶解量(t)…(1)
(2)前記アーク炉では、鉄源として高炉にて製造された溶銑を使用せず溶銑を製造することを特徴とする、上記(1)に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
(3)前記残湯量比率Zを20質量%以上65質量%以下の範囲に制御することを特徴とする、上記(1)または上記(2)に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
(4)前記残湯量比率Zを35質量%以上60質量%以下の範囲に制御することを特徴とする、上記(3)に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
(5)アーク炉から出湯した後の溶銑に高炉にて製造された溶銑を混合して、アーク炉から出湯された溶銑に含有されるトランプエレメントを希釈することを特徴とする、上記(1)ないし上記(4)の何れか1項に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
(6)アーク炉で製造される溶銑の炭素濃度を3.5質量%以上に調整し、その後の転炉での酸素吹錬では、製造される溶鋼トンあたり80kg以上の鉄スクラップを鉄源として併用することを特徴とする、上記(1)ないし上記(5)の何れか1項に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
(7)アーク炉から出湯した後の溶銑、または、アーク炉から出湯した後に高炉にて製造された溶銑が混合された溶銑を脱硫処理することを特徴とする、上記(1)ないし上記(6)の何れか1項に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
本発明によれば、アーク炉に高炉溶銑を装入することなく、鉄スクラップ及び炭材からアーク炉にて溶銑を製造し、製造した溶銑を脱炭精錬することなく且つ溶銑の一部を炉内に残留させた状態で出湯するので、単位時間あたりの鉄スクラップ溶解量が増大し、省エネルギー且つ効率的に鉄スクラップを溶解することが実現される。また、出湯した溶銑を高炉溶銑と混合し、混合した後に転炉での脱炭精錬を実施するので、含有成分の種類及び含有量が様々である鉄スクラップを使用しても、高炉溶銑によって不純物成分が希釈され、不純物成分の少ない鋼を製造することが実現されるとともに、高炉溶銑を精錬対象とする転炉には排ガス回収設備が備えられていることから、脱炭精錬時の排ガス中の潜熱・顕熱を有効に回収することができる。
アーク炉において、鉄スクラップを溶解する1例を示す概略図である。 残湯量比率Zと鉄スクラップ溶解能力との関係の調査結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、大量の鉄スクラップを省エネルギーで効率良く溶解するとともに、含有成分の種類及び含有量が様々である鉄スクラップを使用しても不純物成分の少ない鋼を製造する方法について検討を重ねた。以下に検討結果を説明する。
鉄スクラップを溶解する手段としては、アーク炉を用いる方法が一般的であるが、アーク炉においては、鉄スクラップが溶け始めて液体になるまでの投入エネルギーの着熱効率は低い。そこで、これを改善するために、鉄スクラップを溶解して製造した、前チャージの溶鋼の一部をアーク炉内に残し、次回装入の鉄スクラップの熱効率を高める方法も行われている。従って、この方法を参考として、近接して高炉を有するアーク炉においては、高炉溶銑をアーク炉に装入して、鉄スクラップ溶解用の電力を削減する方法も実用化されている。但し、従来、アーク炉にて炭素濃度の低い溶鋼の段階まで精錬しており、つまり、アーク炉内の溶湯に酸素ガスを供給して脱炭精錬を実施しており、この脱炭精錬に時間を費やし、鉄スクラップ溶解の生産性は、高炉溶銑と鉄スクラップとの配合比で最適値が決まることになる。
一方、鉄スクラップ中に混入する銅、錫などのトランプエレメントは、アーク炉や転炉などの現在の製鋼工程ではほとんど除去されず、鉄スクラップに混入している濃度で溶鋼中の成分が決定される。高炉溶銑は、鉄鉱石を原料とするために、これらのトランプエレメントの含有量が少なく、従って、高炉溶銑を併用することにより、これらのトランプエレメントの濃度を希釈することができ、高炉溶銑を併用するメリットは大きい。但し、アーク炉における高炉溶銑の配合比率が大きい場合には、トランプエレメントの希釈効果は大きいが、生成する溶湯の炭素濃度が高くなり、これに伴って、その後の脱炭精錬時間が延長されることから、生産性を考慮すると高炉溶銑の配合比率は自ずと制限されることになる。
また、アーク炉への高炉溶銑の装入は、放熱ロスが大きいことや操業時間が延長すること、更には装入設備のメンテナンスが煩雑で処理コストが増加するなどの問題点を抱えている。
これらの検討結果から、上記課題を解決するためには、高炉溶銑をアーク炉に装入することなく、前チャージに炉内に残留させた溶湯(「残湯」ともいう)の熱を利用して鉄スクラップを溶解し、この溶解中に炭材を用いて加炭して溶銑(以下、高炉溶銑と区別するために、「アーク炉溶銑」と記す)を製造し、製造したアーク炉溶銑に脱炭精錬を施すことなく、アーク炉溶銑の一部を炉内に残留させて、炭素濃度の高い溶銑状態のままアーク炉から出湯し、出湯後のアーク炉溶銑に高炉溶銑を混合し、混合したものを転炉で酸素吹錬して溶鋼とすることが有効であるとの知見を得た。
この場合、アーク炉溶銑を製造する際に、鉄スクラップを効率的に溶解するためには、炉内に残留させるアーク炉溶銑の残湯量を、下記の(1)式で定義される残湯量比率Zが10質量%以上70質量%以下の範囲内になるように、好ましくは20質量%以上65質量%以下の範囲内、更に好ましくは35質量%以上60質量%以下の範囲内に制御する必要のあることが分った。
残湯量比率Z(質量%)=炉内残留溶銑量(t)×100/溶銑溶解量(t)…(1)
残湯量比率Zを10〜70質量%の範囲内とすることで、アーク炉での溶解能力は、残湯しない場合に比較して1.03倍以上に増加し、残湯量比率Zを20〜65質量%の範囲内とすることで、アーク炉での溶解能力を、残湯しない場合に比較して1.05倍以上に増加させることができ、更に、残湯量比率Zを35〜60質量%の範囲内とすることで、アーク炉での溶解能力を、残湯しない場合に比較して1.10倍以上に増加させることができる。残湯量比率Zが10質量%未満では、溶解能力の改善効果が少なく、一方、残湯量比率Zが70質量%を超えると、1回の溶解時に溶解する鉄スクラップ量が減少し、溶解時間は短縮するものの、装入時間や出湯・排滓時間は変わらないため、鉄スクラップ1トンあたりの処理時間は増加するためである。
即ち、アーク炉で前チャージの残湯の熱を効率的に利用することにより、鉄スクラップを溶解する際の高い熱効率を享受でき、また、アーク炉内では脱炭精錬を行わないので1回の処理時間が短縮でき、更に、出湯した後にアーク炉で溶製したアーク炉溶銑に高炉溶銑を混合することで、トランプエレメントの濃度を鋼材の品質仕様に応じて希釈することが可能となる。また、アーク炉には高炉溶銑を装入しないので、高炉溶銑装入設備をメンテナンスする必要もなく、高炉溶銑装入による操業時間の延長も招くことがない。尚、アーク炉から出湯されるアーク炉溶銑は炭素濃度の高い溶銑であり、溶鋼とは異なり、高炉溶銑と混合する際に発生する発塵の量は少なく、COボイリングによる溶湯の突沸が防止できる。
更に、アーク炉内での溶解中に炭材を添加して、生成する溶融鉄中の炭素濃度を高く維持することにより、鉄スクラップの溶解温度が下がり、溶解までの投入エネルギーを少なくすることができる。また更に、アーク炉溶銑は溶鋼に比較して凝固温度が低いことから、保持温度及び出湯温度を低くすることができ、その結果、アーク炉耐火物への負荷が大幅に低減し、アーク炉操業でのコストに閉める割合の大きい耐火物コストを低減することが可能となる。
本発明は、このような知見に基づきなされたものであり、鉄スクラップを鉄源としてアーク炉に装入し、該アーク炉にて前記鉄スクラップを溶解するとともに炭材を用いて加炭してアーク炉溶銑を製造し、製造したアーク炉溶銑を、該溶銑の一部を炉内に残留させてアーク炉から出湯し、出湯した後のアーク炉溶銑に高炉溶銑を混合し、混合した後の溶銑(アーク炉溶銑+高炉溶銑)を転炉に装入し、該転炉にて酸素吹錬して溶鋼を製造するにあたり、前記アーク炉では、前記の鉄スクラップ装入から前記のアーク炉溶銑出湯までの工程を繰り返し実施し、且つ、上記の(1)式で定義される、アーク炉に残留させるアーク炉溶銑の残湯量比率Zが10質量%以上70質量%以下の範囲内になるように出湯量を制御することを特徴とする。
以下、工程に沿って本発明を説明する。
図1は、アーク炉において、鉄スクラップを溶解して溶銑を製造する1例を示す概略図であり、図1において、符号1は直流式のアーク炉、2は溶解室、3は炉蓋、4は上部電極、5は炉底電極、6は出湯口、7は酸素ガス供給ランス、8は炭材供給ランス、9は鉄スクラップ、10は残湯(残留させたアーク炉溶銑)である。
前チャージで製造したアーク炉溶銑を、上記の(1)式で定義される残湯量比率Zが10質量%以上70質量%以下の範囲内、好ましくは20質量%以上65質量%以下の範囲内、更に好ましくは35質量%以上60質量%以下の範囲内となるように溶解室2に残留させておき、炉蓋3を外して残留させた残湯10の上に鉄スクラップ9を装入する。次いで、上部電極4と炉底電極5との間に直流電流を給電し、上部電極4と炉底電極5との間、または、装入された鉄スクラップ9と上部電極4との間、或いは、残湯10と上部電極4との間でアークを発生させる。そして、発生するアーク熱により鉄スクラップ9を溶解して溶融鉄を生成させる。生成した溶融鉄は流下して残湯10と合流して混合する。本発明においては、生成した溶融鉄と残湯10とが合流・混合したものを「混合溶融鉄」と称す。尚、1回の装入では所定量の鉄スクラップ9を装入できない場合には、鉄スクラップ9の溶解が或る程度進行した後に、溶解室内に鉄スクラップ9を追装することもできる。
この場合に、鉄スクラップ9の装入量は、炉内の残湯10の質量に応じて決定する。つまり、炉内の残湯量と鉄スクラップ9の装入量との和が、アーク炉1の炉容量(公称溶解量)と一致するように、鉄スクラップ9の装入量を決定する。当該チャージが連続して行う操業の最初のチャージであり、炉内に前チャージの残湯10が無い場合には、鉄スクラップ9のみを使用し、当該チャージ以降で、炉内に残湯10としてアーク炉溶銑を残留させる。
アーク炉1においては、溶融鉄の生成に伴って、生石灰などのフラックスを溶解室2に装入して溶融スラグを、混合溶融鉄(溶融鉄と残湯10との混合物)の上に形成させ、混合溶融鉄の酸化を防止するとともに保温を図ることが好ましい。また、通電後、炭材供給ランス8の溶解室内への挿入が可能となった段階から、炭材供給ランス8から、コークス、石炭、黒鉛などの炭材を、溶解室内の混合溶融鉄または溶融スラグに向けて吹き付ける。この場合、同時に、酸素ガス供給ランス7から酸素ガスを、炭材供給ランス8から炭材が吹き付けられている混合溶融鉄または溶融スラグに向けて吹き付けることが好ましい。
吹き付けられた炭材は、混合溶融鉄に溶解し、加炭剤として機能して混合溶融鉄の炭素濃度を上昇させ、混合溶融鉄からアーク炉溶銑が生成される。また、吹き付けられた炭材は、吹き付けられた酸素ガスと反応して燃焼熱を発生し、補助熱源として作用して電力使用量を節約する。尚、炭材は、混合溶融鉄の炭素濃度を高める役割を担うので、供給される酸素ガスの化学当量よりも多い量の炭材を供給する必要がある。また、混合溶融鉄を加炭するにあたり、炭材を炉内の鉄スクラップ9に上置き装入する、溶解開始前に鉄スクラップ9とともに炭材を炉内に装入するなどの方法を併用してもよい。
アーク炉1から出湯されるアーク炉溶銑の炭素濃度が高いほど、後工程の転炉精錬工程での熱余裕が高くなる、つまり、後工程の転炉での酸素吹錬工程において、鉄スクラップの配合比率を高くすることが可能となる。上記のように、残湯10の存在する条件下で鉄スクラップ9を溶解すると、溶解により生成した溶融鉄は残湯10と混合して残湯10の炭素濃度を希釈する。従って、この希釈分を補う、更にはそれ以上に炭素濃度を高めるために、生成される混合溶融鉄に、炭材供給ランス8から、コークス、石炭、黒鉛などの炭材を吹き付け添加しながら、鉄スクラップ9の溶解を実施する。この場合、炭材添加による混合溶融鉄の加炭は、鉄スクラップ9の溶解期間のみで十分であり、加炭のために処理時間を延長する必要はない。
溶解室内に所定量のアーク炉溶銑が製造されたなら、傾動装置(図示せず)により溶解室2を出湯口6の側へ傾動させ、出湯口6からアーク炉溶銑を取鍋などの保持容器(図示せず)へ出湯する。この場合に、上記の(1)式で定義される残湯量比率Zが10質量%以上70質量%以下の範囲内、好ましくは20質量%以上65質量%以下の範囲内、更に好ましくは35質量%以上60質量%以下の範囲内となるように、アーク炉溶銑の一部を溶解室内に残留させる。出湯後、新たに鉄スクラップ9を溶解室2に装入し、次回ヒートの溶解を開始する。アーク炉1においては、この操業を繰り返し実施する。
本発明においては、アーク炉1からの出湯後、鉄スクラップ9により持ち来たされる、アーク炉溶銑のトランプエレメントの濃度を希釈するために、出湯されたアーク炉溶銑に高炉溶銑を混合する。
ところで、コークスや石炭は、硫黄を0.1質量%以上(コークスの例でいえば0.5〜0.7質量%)含有しており、アーク炉1でこれらの炭材を使用することによってアーク炉溶銑の硫黄濃度が上昇する。従って、アーク炉1から出湯した後のアーク炉溶銑、或いは、アーク炉溶銑に高炉溶銑を混合した後の溶銑(アーク炉溶銑+高炉溶銑:以下「混合溶銑」と記す)に脱硫処理を施すことが好ましい。
この脱硫処理は、金属Mg−CaO系フラックスを主体とした脱硫剤を、ランスを介してインジェクションする方法など、各種の脱硫処理が適用可能であるが、特に、脱硫剤として生石灰(CaO)を使用し、回転するインペラで、脱硫剤と、アーク炉溶銑或いは混合溶銑とを機械撹拌する、いわゆる機械撹拌式脱硫装置で脱硫処理することが好適である。脱硫処理後のこれら溶銑中の硫黄濃度は、0.002〜0.010質量%程度を目標とすれば十分である。
尚、高炉溶銑に混合する前のアーク炉溶銑に対して脱硫処理を行う場合には、脱硫処理後に混合する高炉溶銑は脱硫処理が施されたものを使用する。また、脱硫処理後のアーク炉溶銑に高炉溶銑が混合された混合溶銑、或いはアーク炉溶銑と高炉溶銑との混合後に脱硫処理が施された混合溶銑に対して、更に、必要に応じて脱燐処理を行うことも可能である。
脱硫処理、好ましくは更に脱燐処理の施された混合溶銑を転炉に装入し、該転炉にて上吹きランス或いは底吹きノズルからの酸素吹錬を実施し、混合溶銑中の炭素及び燐を酸化除去して混合溶銑から溶鋼を製造する。
転炉での酸素吹錬では、混合溶銑中の炭素は酸素と結びつきCOガスとして除去されるが、転炉の排ガス回収設備により、COガスの潜熱をエネルギーとして回収することができる。これに対して、従来のアーク炉で脱炭精錬して溶鋼を製造する場合には、アーク炉には、設備費が莫大なことから転炉のような排ガス回収設備は一般的には設置されておらず、可能な場合でもCOガスの潜熱・顕熱を蒸気エネルギーとして回収する程度であり、回収するエネルギー効率は低い。
更に、転炉で脱炭精錬する際には、主に脱炭反応による発熱で溶湯の温度を上昇させるが、発熱量は混合溶銑中の炭素濃度に比例するため、混合溶銑の炭素濃度が高い場合には、鉄スクラップなどの冷鉄源を溶解することが可能となる。例えば、排ガスからのCOガス回収を前提とする通常の転炉精錬法においては、装入時の混合溶銑の炭素濃度が4.5質量%の場合には、1300℃の混合溶銑を1600℃以上の溶鋼になるまでの温度上昇分の熱量と、更に混合溶銑の質量に対して10質量%程度の質量の常温の鉄スクラップを溶解できる熱余裕があるが、装入時の混合溶銑の炭素濃度が3.0質量%程度では、混合溶銑を昇熱する熱量分しかなく、鉄スクラップをほとんど溶解することはできない。
因みに、加炭してアーク炉溶銑の炭素濃度を4.0質量%以上に確保することで、その後に該アーク炉溶銑に混合する高炉溶銑の炭素濃度を4.5質量%程度とすれば、転炉での酸素吹錬では、製造される溶鋼トンあたり100kg以上の鉄スクラップを併用可能なことを本発明者らは確認している。つまり、本発明では、鉄スクラップをアーク炉で溶解する際に、溶解処理中に炭材を添加することでアーク炉溶銑の炭素濃度を高めることが可能であるため、混合溶銑の炭素濃度が高く、転炉においても鉄スクラップを溶解できる能力がある。
以上説明したように、本発明によれば、アーク炉に高炉溶銑を装入することなく、鉄スクラップと炭材とからアーク炉にて溶銑を製造し、製造した溶銑を脱炭精錬することなく且つ溶銑の一部を炉内に残留させた状態で出湯するので、単位時間あたりの鉄スクラップ溶解量が増大し、省エネルギー且つ効率的に鉄スクラップを溶解することが実現され、また、出湯した溶銑を高炉溶銑と混合し、混合した後に転炉での脱炭精錬を実施するので、含有成分の種類及び含有量が様々である鉄スクラップを使用しても、高炉溶銑によって不純物成分が希釈され、不純物成分の少ない鋼を製造することが実現される。また、高炉溶銑を精錬対象とする転炉には排ガス回収設備が備えられていることから、脱炭精錬時の排ガス中の潜熱・顕熱を有効に回収することができる。
尚、図1に示すアーク炉は、直流式アーク炉であるが、交流式アーク炉を用いても全く支障なく本発明を適用することができる。また、加炭剤にバイオマス原料を用いる方法は、バイオマスはカーボンニュートラルであることから地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素の排出量を低減でき、地球温暖化の観点からは炭材としてバイオマス原料を用いることが好ましい。また更に、加炭の方法は、ランスからの上吹き投射で実施しているが、上方からの浴中へのインジェクションでも構わず、また、炉底に専用のノズルを埋設して、底吹きインジェクションでも構わない。設備投資及び効率のバランスにより、最適な設備で実施すればよい。更にまた、アーク炉自体も図1に示す型式に限ることはなく、鉄スクラップを予熱するための予熱室を有する型式のアーク炉であっても何ら支障がない。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
[本発明例1]
図1に示す、炉径6m、高さ4m、炉容量140トン、トランス容量100MVAのアーク炉に、炭素濃度が4.0質量%の前チャージの70トンの残湯を残した状態で、鉄スクラップを同じく約70トン装入した(残湯量比率Z=50質量%)。黒鉛製の上部電極に通電して溶解を開始するとともに、酸素ガス供給ランスから酸素ガスを7700Nm3/h、炭材供給ランスからコークスを230kg/minの供給速度でアーク炉内に上吹き添加した。鉄スクラップが全量溶解するまでに23分間を費やし、生成されたアーク炉溶銑における炭材原単位、酸素ガス原単位、電力原単位は、それぞれ、40kg/溶銑−t、21Nm3/溶銑−t、170kWh/溶銑−tであった。尚、精錬時間は鉄スクラップの溶解時間以外の原料装入、出湯時間などを含んだ1チャージの処理時間である。
生成した140トンのアーク炉溶銑を、事前に70トンの高炉溶銑を受銑していた高炉鍋に、アーク炉の出湯口から70トンだけ出湯して高炉溶銑と混合した。アーク炉内に残った70トンは種湯として次チャージの鉄スクラップ溶解用に使用した。尚、アーク炉からの出湯時のアーク炉溶銑の炭素濃度は、3.5質量%、温度は1397℃であり、混合用の高炉溶銑の炭素濃度は4.5質量%、温度は1400℃であった。その後、この混合した溶銑を溶銑鍋に装入し、この溶銑鍋に更に新しい約140トンの高炉溶銑(炭素濃度:4.5質量%、温度:1400℃)を装入して約280トンの混合溶銑を得た。
この混合溶銑を脱硫するために、溶銑鍋の上方から溶湯攪拌用のインペラを混合溶銑に浸漬させ、石灰を主体とした脱硫剤を供給(供給量=8kg/溶銑−t)し、10分間、インペラで混合溶銑及び脱硫剤を攪拌して脱硫処理した。脱硫処理後の混合溶銑の硫黄濃度は0.002質量%であった。
転炉では、製造される溶鋼トンあたり80kgの鉄スクラップをスクラップシュートから転炉内に装入した後、脱硫処理後の混合溶銑を転炉に装入し、底吹きノズルを介して0.1Nm3/(min・溶銑−t)の流量の窒素ガス、Arガスを流しながら、上吹きランスより流量60000Nm3/hで酸素ガスを13分間供給して脱炭精錬を行った。脱炭精錬終了時の溶鋼の炭素濃度は0.04質量%、温度は1630℃であり、銅濃度は0.05質量%であった。その後、溶鋼を取鍋に出湯し、連続鋳造機でスラブ鋳片に鋳造した。
[本発明例2]
本発明例1で使用したアーク炉と同一のアーク炉を使用して、本発明を実施した。本発明例2は、上記の本発明例1に比較してアーク炉溶銑の炭素濃度を高めるために、アーク炉での溶解時の炭材の供給量を増加させた試験である。
アーク炉に、炭素濃度が4.0質量%の前チャージの70トンの残湯を残した状態で、70トンの鉄スクラップを装入した(残湯量比率Z=50質量%)。上部電極に通電して溶解を開始するとともに、酸素ガス供給ランスから酸素ガスを7800Nm3/h、炭材供給ランスからコークスを250kg/minの供給速度でアーク炉内に上吹き添加した。鉄スクラップが全量溶解するまでに25分間を費やし、生成されたアーク炉溶銑における炭材原単位、酸素ガス原単位、電力原単位は、それぞれ、45kg/溶銑−t、23Nm3/溶銑−t、172kWh/溶銑−tであった。
生成した140トンのアーク炉溶銑を、事前に70トンの高炉溶銑を受銑していた高炉鍋に、アーク炉の出湯口から70トンだけ出湯して高炉溶銑と混合した。アーク炉内に残った70トンは種湯として次チャージのスクラップ溶解用に使用した。尚、アーク炉からの出湯時のアーク炉溶銑の炭素濃度は、4.0質量%、温度は1402℃であり、混合用の高炉溶銑の炭素濃度は4.5質量%、温度は1400℃であった。その後、この混合した溶銑を溶銑鍋に装入し、この溶銑鍋に更に新しい約140トンの高炉溶銑(炭素濃度:4.5質量%、温度:1400℃)を装入して約280トンの混合溶銑を得た。この混合溶銑に対して、本発明例1と同一の方法で脱硫処理を実施した。
転炉では、この脱硫処理後の混合溶銑を用いて脱炭精錬を行うにあたり、転炉内に、製造される溶鋼トンあたり100kgの鉄スクラップを予め装入した後、脱硫後の混合溶銑を装入し、本発明例1に準じて脱炭精錬を実施した。脱炭精錬終了時の溶鋼の炭素濃度は0.04質量%、温度は1630℃であり、銅濃度は0.05質量%であった。その後、溶鋼を取鍋に出湯し、連続鋳造機でスラブ鋳片に鋳造した。
[比較例1]
本発明例1で使用したアーク炉に約140トンの鉄スクラップを装入し、上部電極に通電して溶解を開始するとともに、酸素ガス供給ランスから酸素ガスを3000Nm3/h、炭材供給ランスからコークスを50kg/minの供給速度でアーク炉内に上吹き添加した。鉄スクラップが全量溶解するまでに55分間を費やし、生成された溶融鉄における炭材原単位、酸素ガス原単位、電力原単位は、それぞれ、20kg/溶銑−t、19Nm3/溶銑−t、420kWh/溶銑−tであった。
生成した約140トンの溶融鉄を取鍋に出湯した。アーク炉からの出湯時の溶融鉄の炭素濃度は、0.1質量%、温度は1630℃、銅濃度は0.21質量%であった。その後、この溶融鉄(溶鋼)をLF設備(取鍋精錬設備)で脱硫処理を実施し、脱硫処理後の溶鋼を連続鋳造機でブルーム鋳片に鋳造した。
[比較例2]
本発明例1で使用したアーク炉に70トンの鉄スクラップを装入した後、装入鍋を介して70トンの高炉溶銑を装入した。上部電極に通電して溶解を開始するとともに、酸素ガス供給ランスから酸素ガスを4300Nm3/h、炭材供給ランスからコークスを150kg/minの供給速度でアーク炉内に上吹き添加した。鉄スクラップが全量溶解するまでに23分間を費やし、生成された溶融鉄における炭材原単位、酸素ガス原単位、電力原単位は、それぞれ、25kg/溶銑−t、12Nm3/溶銑−t、170kWh/溶銑−tであった。
生成した約140トンの溶融鉄を取鍋に出湯した。アーク炉からの出湯時の溶融鉄の炭素濃度は、2.5質量%、温度は1398℃であった。その後、この混合した溶銑を溶銑鍋に装入し、この溶銑鍋に更に新しい約140トンの高炉溶銑(炭素濃度:4.5質量%、温度:1400℃)を装入して約280トンの混合溶銑を得た。この混合溶銑に対して、本発明例1と同一の方法で脱硫処理を実施した。
転炉では、この脱硫処理後の混合溶銑を用いて脱炭精錬を行うにあたり、転炉内に、製造される溶鋼トンあたり40kgの鉄スクラップを予め装入した後、脱硫後の混合溶銑を装入し、本発明例1に準じて脱炭精錬を実施した。脱炭精錬終了時の溶鋼の炭素濃度は0.04質量%、温度は1630℃であり、銅濃度は0.05質量%であった。その後、溶鋼を取鍋に出湯し、連続鋳造機でスラブ鋳片に鋳造した。
表1に、本発明例1、2及び比較例1、2の操業結果を示す。
Figure 2012092435
表1に示すように、本発明により、短時間で且つ少ない電力原単位で鉄スクラップを溶解することが可能となり、しかも、製造される溶鋼は銅濃度が低く、鉄スクラップを高級鋼の鉄源として利用することが実現された。また、アーク炉にて加炭することで、転炉においても鉄スクラップを高い配合比で配合することが可能となり、省エネルギーのみならずCO2削減による地球温暖化防止も達成されることが確認できた。
尚、本発明は上記発明例の範囲に限定されることはなく、種々の変更が可能である。例えば、上記発明例では、残湯量比率Zが50質量%であったが、この残湯量比率Zは、10〜70質量%の範囲内において、目標とする生産性に基づいて最適な値を選択すればよい。また、鉄スクラップの溶解時にアーク炉内に酸素ガスを供給しているが、酸素ガスを添加しない場合には、炭材の燃焼による電力量の低減化を得ることはできず、出湯から出湯までの時間が長くなるものの、生産性と処理コストとの兼ね合いに基づいて酸素ガスの使用を決定すればよい。
実施例1で使用したアーク炉と同一のアーク炉を使用し、アーク炉内の前チャージの残湯量比率Zを、0、10、20、30、40、50、65、70、75、78質量%の10水準に変化させ、残湯量比率Zの溶解能力に及ぼす影響を調査した。具体的には、前チャージの残湯量を変更し、その後に装入する鉄スクラップと残湯量との合計値が140トンとなるように鉄スクラップを装入し、この鉄スクラップを溶解してアーク炉の鉄スクラップ溶解能力を比較した。
鉄スクラップが全量溶解するまでに20〜30分間を費やした。溶解能力は、鉄スクラップの装入時間、鉄スクラップの溶解時間並びに出湯・排滓時間の合計時間(精錬時間)と、そのときの出湯量とで決まり、合計時間(精錬時間)が短いからといっても溶解能力が大きいとは一概にいえない。つまり、残湯量が多く(残湯量比率Zが高い)、鉄スクラップの装入量が少ないほど電力原単位が小さくなるので、鉄スクラップを溶解する時間は短くなるが、1回の出湯量が少なくなり、生産性は悪くなる。このために、最適な残湯量が存在することになる。
残湯量比率Zと鉄スクラップ溶解能力との関係の調査結果を図2に示す。図2では、残湯量比率Zが0質量%の場合の溶解能力を1.00として指数化している。図2に示すように、残湯量比率Zを10〜70質量%の範囲とすることで、残湯量比率Zが0質量%の場合の溶解能力に比較して1.03倍以上に溶解能力を増加させることができ、特に、残湯量比率Zを20〜65質量%の範囲内とすることで、アーク炉の溶解能力を、残湯しない場合に比較して1.05倍以上に増加させることができ、更に、残湯量比率Zを35〜60質量%の範囲内とすることで、アーク炉の溶解能力を、残湯しない場合に比較して1.10倍以上に増加させることができることが分った。
これは、前チャージのアーク炉溶銑を残留させることによる、電力原単位の低下による通電時間の短縮及び着熱効率の向上によるためである。しかし、残湯量比率Zが50質量%を超えたあたりから効果が減少し、残湯量比率Zが70質量%を超えると溶解能力が1.00以下となった。これは、残湯量比率Zが大きくなり過ぎると、1回の溶解時に溶解する鉄スクラップ量が減少し、溶解時間は短縮するものの、装入時間や出湯・排滓時間は変わらないため、鉄スクラップ1トンあたりの時間は増加するためである。
1 直流式アーク炉
2 溶解室
3 炉蓋
4 上部電極
5 炉底電極
6 出湯口
7 酸素ガス供給ランス
8 炭材供給ランス
9 鉄スクラップ
10 残湯

Claims (7)

  1. 鉄スクラップを鉄源としてアーク炉に装入し、該アーク炉にて前記鉄スクラップを溶解するとともに炭材を用いて加炭して溶銑を製造し、製造した溶銑を、該溶銑の一部を炉内に残留させてアーク炉から出湯し、出湯した後の溶銑に高炉にて製造された溶銑を混合し、混合した後の溶銑を転炉に装入し、該転炉にて酸素吹錬して溶鋼を製造する、鉄スクラップを利用した製鋼方法であって、
    前記アーク炉では、前記の鉄スクラップ装入から前記の溶銑出湯までの工程を繰り返し実施し、且つ、下記の(1)式で定義される、アーク炉に残留させる溶銑の残湯量比率Zが10質量%以上70質量%以下の範囲内になるように出湯量を制御することを特徴とする、鉄スクラップを利用した製鋼方法。
    残湯量比率Z(質量%)=炉内残留溶銑量(t)×100/溶銑溶解量(t)…(1)
  2. 前記アーク炉では、鉄源として高炉にて製造された溶銑を使用せず溶銑を製造することを特徴とする、請求項1に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
  3. 前記残湯量比率Zを20質量%以上65質量%以下の範囲に制御することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
  4. 前記残湯量比率Zを35質量%以上60質量%以下の範囲に制御することを特徴とする、請求項3に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
  5. アーク炉から出湯した後の溶銑に高炉にて製造された溶銑を混合して、アーク炉から出湯された溶銑に含有されるトランプエレメントを希釈することを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
  6. アーク炉で製造される溶銑の炭素濃度を3.5質量%以上に調整し、その後の転炉での酸素吹錬では、製造される溶鋼トンあたり80kg以上の鉄スクラップを鉄源として併用することを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
  7. アーク炉から出湯した後の溶銑、または、アーク炉から出湯した後に高炉にて製造された溶銑が混合された溶銑を脱硫処理することを特徴とする、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の鉄スクラップを利用した製鋼方法。
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