本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
本発明の潜像模様形成体(1)は、図1(a)に示すように、基材(2)の少なくとも一部に凹形状又は凸形状の第1の要素(11)が複数配置されて第1の模様(10)が形成され、第1の要素(11)と異なる色の第2の要素(21)が複数配置されて第2の模様(20)が形成されて成る。そして、潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成された領域を真上から観察した場合には、図1(b)に示す第2の模様(20)が観察される。また、潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成された領域を斜めから観察した場合には、図1(c)に示す潜像模様(5)が観察される。なお、潜像模様形成体(1)を斜めから観察するときの状態については、後述する。図1(d)は、図1(c)に示す潜像模様(5)の図柄を模式的に示す図であり、本実施の形態の潜像模様(5)は、「A」の文字とその背景で構成される。図1(e)は、図1(d)に示す潜像模様(5)の「A」の文字が観察される部分のうち、太線枠で囲む部分を拡大した図であり、この部分では、複数の第1の潜像部(3)が観察され、本実施の形態では、「NPB」の文字が観察される。また、図1(f)は、図1(d)に示す潜像模様(5)の「A」の文字の背景が観察される部分のうち、破線枠で囲む部分を拡大した図であり、この部分では、複数の第2の潜像部(4)が観察され、本実施の形態では、「JPN」の文字が観察される。図1(a)に示す潜像模様形成体(1)は、斜めから観察したときに視認される、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)の濃度が異なり、第1の潜像部(3)が「A」の文字を形成するように配置され、第1の潜像部(3)に対して濃度の異なる第2の潜像部(4)が「A」の文字の背景を形成するように配置されて、図1(c)に示す潜像模様(5)が観察される構成となっている。
本実施の形態は、潜像模様(5)が「A」の文字で構成される例であるが、本発明において潜像模様(5)の図柄は、「A」の文字に限定されるものではなく、数字、記号、図形、マークでもよい。また、本実施の形態は、第1の潜像部(3)の図柄が、「NPB」の文字で構成される例であるが、第1の潜像部(4)の図柄は、「NPB」の文字に限定されず、数字、記号、図形、マークでもよい。第2の潜像部(4)の図柄についても、これと同様である。
図2は、図1に示す第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成される領域を拡大した図である。以降は、本発明の潜像模様形成体(1)において、図2に示す第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成される領域の詳細な構成について説明する。
(第1の模様)
第1の模様(10)は、図3に示すように、基材(2)に、基材(2)と同じ色又は基材(2)と異なる色の凹形状、あるいは、基材(2)と同じ色又は基材(2)と異なる色の凸形状の第1の要素(11)が万線状に複数配置されて成る。なお、第1の模様(10)を構成する第1の要素(11)は、前述した凹形状と凸形状を組み合わせて成る構成としても良い。図3では、第1の要素(11)が万線状に複数配置されることを示すために第1の要素(11)を黒色の画線で示しているが、第1の要素(11)が、基材(2)と同じ色で形成される場合、目視で視認することはできない。本発明で用いる基材(2)は、有色で不透明なものを用いる必要があり、仮に、基材(2)の一方の面に有色の模様を印刷し、それを基材(2)の他方の面から反射光で観察したときに、一方の面に形成した模様が観察できないか、目立たない程度の不透明性を要する。そのような基材(2)であれば特に限定されるものではなく、紙、フィルム、プラスチック又はそれらの複合素材等を用いることができる。
図4、図5及び図6は、図3に示すX−X線における第1の要素(11)の断面図である。図4(a)〜(c)は、第1の要素(11)が凸形状で形成される例を示している。図5(a)〜(c)は、第1の要素(11)が凹形状で形成される例を示している。図6は、第1の要素(11)が凹形状と凸形状を組み合わせて成る構成の例を示している。凸形状を形成する方法の例としては、基材(2)にインキによる印刷で形成することができ、この場合、第1の要素(11)は、基材と同じ色又は異なる色のインキで形成される。また、凹形状を形成する方法の例としては、基材(2)の一部をレーザ加工によって除去することによって形成することができ、この場合、第1の要素(11)は、基材(2)と同じ色で形成される。なお、凸形状と凹形状の形成方法は後述する。
凸形状と凹形状の構成は、図4、図5及び図6に示す形状に限定されるものではなく、真上から観察したときに、凸形状又は凹形状の表面の略全面が観察でき、斜めから観察したときに、凸形状の場合、手前側となる表面が観察でき、奥側となる表面が観察できない形状であればよく、凹形状の場合、奥側となる表面が観察でき、手前側となる表面が観察できない形状であればよい。なお、斜めから観察したときの凸形状又は凹形状の表面の見え方については、後述する。
また、第1の要素(11)は、画線で構成される。本発明において、「画線」とは、直線、破線、波線のことであり、直線で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を図7(a)に示す。破線による画線で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を図7(b)に示す。波線による画線で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を図7(c)に示す。画線内に図柄が付与された画線で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を図7(d)に示す。
図7に示す画線の幅(W1)は、限定されるものではないが、20μm〜1000μmの範囲で形成されるのが好ましい。なお、画線の幅(W1)を1000μmより大きくしても潜像を観察することができるが、潜像の図柄を形成するための第1の模様(10)が大きくなり、貴重印刷物を構成するデザイン、例えば、他の印刷図柄等の制約を受けるために、好ましくない。また、画線の幅(W1)を20μm以下で形成した場合、後述する第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置に高い位置合わせ精度が必要とされ、作製が困難になるため好ましくない。
図7に示す第1のピッチ(P1)については、後述する。
図4に示す第1の要素の高さ(h)及び図5に示す第1の要素の深さ(h’)は、10μm〜100μmの範囲で形成される。なお、第1の要素の高さ(h)を10μmより小さくしても潜像を観察することはできるが、潜像の観察できる視点の範囲が狭くなってしまうために、好ましくない。また、第1の要素の深さ(h’)を100μmより大きくすることも可能であるが、基材(2)の厚さが限定されるとともに、加工効率が悪くなるという問題が生じるため、好ましくない。
図7に示す第1の要素(11)は、画線で構成される例を示しているが、本発明において第1の要素(11)は、図7に示す画線と同様に観察される範囲であれば、図8に示すように、第1の要素(11)を画素で構成することもできる。続いて、画素で構成される第1の要素(11)について説明する。
本発明において、「画素」とは、所定の形状を有する文字、数字、記号、図形、マークのことであり、画素の形状は、特に限定されるものではない。
文字による画素で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を図8(a)に示す。数字による画素で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を図8(b)に示す。記号による画素で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を図8(c)に示す。図形による画素で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を図8(d)に示す。
図8に示す画素の高さ(W’1)の範囲は、第1の要素(11)が、画線で構成される場合の画線の幅(W1)と同じで20〜1000μmである。この理由は、第1の要素(11)が画線で構成される場合と同じである。
図8に示す第1のピッチ(P1)については、第1の要素(11)が画線で構成される場合と同じであり、後述する。
図8に示す画素の幅(X1)は、20μmより大きく形成するのが好ましい。画素の幅(X1)を20μm以下で形成する場合、第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置に高い位置合わせ精度が必要とされ、作製が困難になるため好ましくない。
なお、画素の幅(X1)の上限については、画素で構成される第1の要素(11)が画線として観察される範囲であれば特に限定されるものではなく、画素の種類に応じて、画素の幅(X1)を適宜調整すればよい。ただし、画素同士が重なると、第1の要素(11)の視認性が異なるため、図7に示す画素のピッチ(p1)を少なくとも画素の幅(X1)より大きくし、画素同士が重ならないように形成する必要がある。
また、画素のピッチ(p1)が大きいと、隣の画素同士で間隔が空いてしまい、画線として観察されないので、画素のピッチ(p1)と画素の幅(X1)の差を、500μmより小さくするのが好ましい。
以上のように説明した画線の構成と、画素の構成を複合させて、図9(a)に示すように、一つの第1の要素(11)を構成してもよい。また、図9(b)に示すように、複数配置された第1の要素(11)ごとに、画線、画素又はそれらの複合の構成としてもよい。
以降の説明では、第1の要素(11)が直線の画線で構成される例で説明する。
以上のように説明した第1の要素(11)が万線状に複数配置されて成る第1の模様(10)は、潜像模様(5)の「A」の文字が観察される部分と「A」の文字の背景が観察される部分で構成が異なる。以下、その構成について順に説明する。
はじめに、潜像模様(5)の「A」の文字が観察される部分の第1の模様(10)の構成について説明する。図10(a)は、潜像模様(5)と第1の模様(10)の配置を示す模式図である。図10(b)は、図10(a)に示す潜像模様(5)の「A」の文字が観察される部分のうち、太線枠で囲む部分に対する第1の模様(10)を拡大した図である。これまで、第1の模様(10)は、図10(a)に示すように、第1の要素(11)が万線状に複数配置されて成ることを説明してきたが、潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分に対する第1の模様(10)の詳細は、図10(b)の拡大図に示すように、二つの異なる位相に配置された第1の要素(11)によって構成される。また、潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分を拡大すると、「NPB」の文字の第1の潜像部(3)が観察されることを前述したが、図10(c)に示すように、「A」の文字が観察される部分において、二つの異なる位相に配置された第1の要素(11)の一方が、第1の潜像部(3)の「NPB」の文字に対応し、他方が「NPB」の文字の背景に対応する構成となっている。
以降、第1の潜像部(3)の図柄(本実施の形態では「NPB」の文字)に対応する第1の要素(11)を第1の潜像要素(11A)と呼び、第1の潜像部(3)の図柄の背景に対応する第1の要素(11)を背景要素(11C)と呼ぶ。第1の潜像部(3)の図柄は、図10(c)に示すように、複数の第1の潜像要素(11A)によって形成される。
続いて、潜像模様(5)の「A」の文字の背景が観察される部分の第1の模様(10)の構成について説明する。
図11(a)は、潜像模様(5)と第1の模様(10)の配置を示す模式図である。図11(b)は、図11(a)に示す潜像模様(5)の「A」の文字の背景が観察される部分のうち、太線枠で囲む部分に対する第1の模様(10)を拡大した図である。本発明において、潜像模様(5)のうち、「A」の文字の背景が観察される部分に対する第1の模様(10)の詳細は、図11(b)の拡大図に示すように、二つの異なる位相に配置された第1の要素(11)によって構成される。また、潜像模様(5)のうち、「A」の文字の背景が観察される部分を拡大すると、「JPN」の文字の第2の潜像部(4)が観察されることを前述したが、図11(c)に示すように、「A」の文字の背景が観察される部分において、二つの異なる位相に配置された第1の要素(11)の一方が、第2の潜像部(4)の「JPN」の文字に対応し、他方が「JPN」の背景に対応する構成となっている。
以降、第2の潜像部(4)の図柄(本実施の形態では「JPN」の文字)に対応する第1の要素(11)を第2の潜像要素(11B)と呼び、第2の潜像部(4)の図柄の背景に対応する第1の要素(11)を背景要素(11C)と呼ぶ。第2の潜像部(4)の図柄は、図11(c)に示すように複数の第2の潜像要素(11B)によって形成される。
以上説明したように、本実施の形態において第1の模様(10)は、図12に示すように、潜像模様(5)の「A」の文字に対して、第1の潜像部(3)(本実施の形態では「NPB」の文字)の図柄が複数配置され、「A」の文字の背景に対して、第2の潜像部(4)(本実施の形態では「JPN」の文字)の図柄が複数配置される構成となっている。なお、図12は、第1の模様(10)に対する第1の潜像部(3)の図柄と第2の潜像部(4)の図柄の配置の関係を模式的に示す図であり、実際には、第1の潜像部(3)の図柄は、第1の潜像要素(11A)によって形成され、第2の潜像部(4)の図柄は、第2の潜像要素(11B)によって形成される。
次に、以上説明した、第1の潜像要素(11A)、第1の潜像部(3)の図柄に対応する背景要素(11C)、第2の潜像要素(11B)及び第2の潜像部(4)の図柄に対応する背景要素(11C)の関係について説明する。
図13(a)は、潜像模様(5)と第1の模様(10)の配置を示す模式図であり、図13(b)は、図13(a)に示す太線枠の位置の潜像模様(5)に対する第1の模様(10)を拡大した図である。なお、図13(a)に示す太線枠の位置は、潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分(「NPB」の文字で構成される第1の潜像部(3))と、「A」の文字の背景が観察される部分(「JPN」の文字で構成される第2の潜像部(4))の境界の位置である。また、図13(b)に示す一点鎖線は、「A」の文字が観察される部分と「A」の文字の背景が観察される部分の境界を示すためのものであり、一点鎖線の左側に配置される第1の潜像要素(11A)は、潜像模様(5)の「A」の文字(「NPB」の文字で構成される第1の潜像部(3))に対応し、一点鎖線の右側に配置される第2の潜像要素(11B)は、潜像模様(5)の「A」の文字の背景(「JPN」の文字で構成される第2の潜像部(4))に対応している。
本発明において、第1の潜像部(3)の図柄に対応する背景要素(11C)と第2の潜像部(4)の図柄に対応する背景要素(11C)は、図13(b)に示すように、同じ位相に配置される。また、第1の潜像要素(11A)の位相と、第2の潜像要素(11B)の位相が異なり、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)は、互いに異なる位相に配置される。このように、本発明において、第1の模様(10)は、三つの異なる位相に配置される第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)から構成される。
以上説明したように、本発明において、第1の潜像部(3)の図柄に対する背景と第2の潜像部(4)の図柄に対する背景には、第1の潜像要素(11A)と第2の潜像要素(11B)に共通する背景要素(11C)が対応して配置され、以降、第1の潜像部(3)及び第2の潜像部(4)に対して、背景要素(11C)によって表現される、潜像の図柄の背景と成る部分を「背景部(6)」として説明する。第1の模様(10)において、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)の図柄に対する背景は、複数の背景要素(11C)によって形成される。
第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)は、異なる位相に配置されるが、図13(b)に示す点線で囲まれた各要素は、すべてが対応して配置される構成となっている。なお、各要素が対応して配置されるとは、仮に、図13(b)において、背景要素(11C)を基準に第1の潜像要素(11A)と第2の潜像要素(11B)の位相が異なる場合に、第1の潜像要素(11A)と第2の潜像要素(11B)は、基準となる背景要素(11C)に隣り合う背景要素(11C)の位相を越えて配置されないということである。また、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)は、異なる位相に配置され、かつ、隣り合う同じ要素同士において、同じピッチで配置される。
次に、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)が異なる位相に配置される例について説明する。
図14は、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)の配置の関係を示すための模式図である。
図13(b)は、第1の潜像要素(11A)と第2の潜像要素(11B)が背景要素(11C)に対して上側に位相が異なって配置される例であるが、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)は、図13(b)に示す配置に限定されず、図14(a)に示すように、第1の潜像要素(11A)と第2の潜像要素(11B)が背景要素(11C)に対して下側に位相が異なってもよい。また、第1の潜像要素(11A)と第2の潜像要素(11B)のうち、一方の位相が背景要素(11C)に対して上側に異なり、他方の位相が背景要素(11C)に対して下側に異なってもよい。図14(b)は、その一例として、第1の潜像要素(11A)を背景要素(11C)に対して上側に位相を異ならせ、第2の潜像要素(11B)を背景要素(11C)に対して下側に位相を異ならせた例を示している。
また、図13(b)に示す配置に対して、図15(a)に示すように、第1の潜像要素(11A)が第2の潜像要素(11B)より上側の位相に配置されてもよいし、図14(a)に示す配置に対して、図15(b)に示すように、第1の潜像要素(11A)が第2の潜像要素(11B)より下側の位相に配置されてもよい。第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)は、以上に説明したいずれかの配置で、すべての位相が異なる。
また、これまで説明してきた第1の潜像要素(11A)、背景要素(11C)及び第2の潜像要素(11B)は、図16に示すように、繋がっていてもよい。第1の潜像要素(11A)、背景要素(11C)及び第2の潜像要素(11B)を繋ぐための画線の角度は、第1の潜像要素(11A)、背景要素(11C)及び第2の潜像要素(11B)に対して90°に限定されるものでない。繋ぐための画線の角度は、30°〜90°が好ましい。ただし、繋ぐための角度が小さいと潜像の視認性に影響するため、第1の潜像部(3)の図柄及び第2の潜像部(4)の図柄と第1のピッチ(P1)に応じて適宜調整する必要がある。
(第1の要素の加工方法)
凹形状又は凸形状の第1の要素(11)の形成方法としては、エンボス加工、すき入れ、レーザ加工やインキによる印刷等を用いることができる。エンボス加工を用いる場合は、凸形状の版面を基材(2)に押し付けることによって、凹形状で基材(2)と同じ色の第1の要素(11)が形成される。すき入れを用いる場合は、円網抄紙機で紙を製造する工程の段階で、円網ロールの押し付けによって、凹形状で基材(2)と同じ色の第1の要素(11)が形成される。レーザ加工を用いる場合は、レーザ光によって基材(2)の一部が除去されることによって凹形状の第1の要素(11)が形成される。このとき、レーザの出力を大きくすると基材(2)が焦げて変色し、凹形状の第1の要素(11)が、基材(2)と異なる色で形成される。また、一度に基材(2)が除去される基材(2)の量は小さくなるが、基材(2)を焦がさないようにレーザの出力を小さくした場合は、凹形状の第1の要素(11)が、基材(2)と同じ色で形成される。インキによる印刷を用いる場合は、インキの厚みによって凸形状の第1の要素(11)が形成される。なお、すき入れ、レーザ加工、インキによって第1の要素(11)を形成する場合は、第2の要素(21)を形成する前に、第1の要素(11)を形成する必要がある。これは、第2の要素(21)を形成した後に、すき入れ、レーザ加工を施すと、第2の要素(21)が基材(2)から除去されてしまうからである。また、第2の要素(21)を形成した後に、インキによって凸形状の第1の要素(11)を形成すると、第2の要素(21)が隠蔽されて潜像が観察できなくなるからである。
(第2の模様)
第2の模様(20)は、図17に示すように、基材(2)に、第1の要素(11)と異なる色で有色の第2の要素(21)が万線状に複数配置されて成る。第1の要素(11)が基材(2)と同じ色で形成される場合、第2の要素(11)の色は、基材(2)の色とも異なる必要があり、第1の要素(11)が基材(2)と異なる色で形成される場合、第2の要素(21)の色は、基材(2)と同じ色であってもよい。第2の要素(21)を形成する例としてはインキを用いて印刷する方法があり、第2の要素(21)の形成方法の詳細については後述する。
第2の要素(21)は、図7に示す第1の要素(11)と同様に画線で構成、図8に示す第1の要素(11)と同様に画素で構成又は図9に示す画線と画素の複合の構成のいずれでもよい。なお、第2の要素(21)の画線に対しては、第2のピッチ(P2)、画線の幅(W2)として説明し、第2の要素(21)の画素に対しては、画素の高さ(W’2)、画素の幅(X2)、画素のピッチ(p2)として説明する。
第2のピッチ(P2)、画線の幅(W2)及び画素の高さ(W’2)の範囲については、第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置及び観察される潜像(潜像が一定の濃度で観察されるか、モアレとなって観察されるか)によるので、以降に説明する潜像の観察原理で後述する。なお、画素の高さ(W’2)の範囲は、画線の幅(W2)の範囲と同じであるため、以降に説明する潜像の観察原理では、画素の高さ(W’2)の範囲の説明を省略する。ここでは、画素の幅(X2)及び画素のピッチ(p2)の範囲について説明する。
図8に示す画素の幅(X2)は、20μmより大きく形成するのが好ましい。画素の幅(X2)を20μm以下で形成する場合、第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置に高い位置合わせ精度が必要とされ、作製が困難になるため好ましくない。
なお、画素の幅(X2)の上限については、画素で構成される第2の要素(21)が画線として観察される範囲であれば特に限定されるものではなく、画素の種類に応じて、画素の幅(X2)を適宜調整すればよい。ただし、画素同士が重なると、第2の要素(21)の視認性が異なるため、図8に示す画素のピッチ(p2)を少なくとも画素の幅(X2)より大きくし、画素同士が重ならないように形成する必要がある。
また、画素のピッチ(p2)が大きいと、隣の画素同士で間隔が空いてしまい、画線として観察されないので、画素のピッチ(p2)と画素の幅(X2)の差を、500μmより小さくするのが好ましい。
以降の説明では、第2の要素(21)が直線の画線で構成される例で説明する。
第2の模様(20)の形成方法は、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法又はレーザ加工等を用いることができる。なお、印刷によって第2の模様(20)が形成される場合は、第2の要素(21)は、インキから成り、レーザ加工によって第2の模様(20)が形成される場合は、第2の要素(21)は、基材(2)がレーザによって変色されて成る。この場合、基材(2)に形成された第1の要素(11)の形状を崩さないようにレーザの出力を調整して加工する必要がある。
(第1の模様と第2の模様の配置)
以降、第1の模様(10)と第2の模様(20)の配置と観察される潜像について説明するが、まず、本発明の潜像の観察原理について説明する。
まず、図18〜図20を用いて、凸形状の第1の要素(11)と第2の要素(21)が形成された基材(2)を観察したときに視認される状況について説明する。
図18(a)は、図4(a)に示す半円の凸形状の第1の要素(11)と第2の要素(21)が重なって配置されている状態の一例を示す平面図であり、その一部を拡大したものである。なお、Z−Z線は、凸形状の頂点の位置を示しており、本発明において、「凸形状の頂点」とは、凸形状で形成される第1の要素(11)のうち、最も高い部分のことである。
図18(a)に示す配置では、第2の要素(21)が、凸形状の頂点を境として、凸形状の表面の半分に重なる状態を示している。
図18(b)は、図18(a)に示すX−X線における断面図を示す図である。図18(b)において、観察点(L1)は、基材(2)の真上から観察した場合の視点の位置を示しており、観察点(L2)は、基材(2)に対して、X−X軸上の斜めから観察した場合の視点の位置を示している。以降の説明では、観察点(L2)の位置から観察する状態を「斜めから観察する」と記載する。また、図18(b)では、図18(a)のZ−Z線で示す凸形状の頂点を符号(Q)として図示している。そして、図18(b)においても、第2の要素(21)が凸形状の第1の要素(11)の半分に重なっている状態を示している。
このとき、観察点(L1)のように、基材(2)の真上から観察した場合、第2の要素(21)を視認することができ、第2の要素(21)の色を観察することができる。
一方、観察点(L2)のように、基材(2)を斜めから観察した場合には、凸形状の頂点(Q)を境として、手前側となる凸形状の表面(V1)は観察することができるが、奥側の表面(V2)は凸形状の死角となることから観察することができない。したがって、斜めから観察した場合には、凸形状の頂点(Q)を境として、手前側となる凸形状の表面(V1)に重なる第2の要素(21)のみを観察することができる。なお、斜めから観察するときに、凸形状の表面(V1)の観察できる範囲は、第1のピッチ(P1)及び画線の幅(W1)によって、若干の差はある。
また、凸形状の第1の要素(11)が形成されない基材(2)の平らな部分(V3)は、凸形状の死角となって基本的に観察することができないが、特に、凸形状の頂点(Q)を境として、手前側となる凸形状の表面(V1)に近い側の部分(V3’)は、第1の要素(11)の形状や第1のピッチ(P1)及び画線の幅(W1)によって、観察されることもある。
以上説明したように、斜めから観察するときに凸形状の第1の要素(11)及び基材(2)の観察可能な表面の範囲は、第1のピッチ(P1)及び画線の幅(W1)によって、若干の差はあるが、以降の説明では、凸形状の頂点(Q)を境として、手前側となる凸形状の表面(V1)のみが観察されるものとし、基材(2)を斜めから観察したときに、凸形状の頂点(Q)を境として、手前側となる凸形状の表面(V1)のことを「観察部(V)」、基材(2)を斜めから観察したときに、凸形状の頂点(Q)を境として、奥側となる凸形状の表面(V2)及び基材(2)の平らな部分(V3)のことを「非観察部(V’)」として説明する。なお、図18(b)は、図18(a)に示すX−X線の断面図であり、図18(b)に示す観察部(V)及び非観察部(V’)は、X−X線上のものであるが、実際には、図18(a)に示すように、一つの第1の要素(11)において、凸形状の頂点(Q)を結ぶ線、すなわちZ−Z線を境として観察部(V)と非観察部(V’)に区分けされる。
続いて、図4(c)に示す台形の凸形状の第1の要素(11)が形成される場合、観察部(V)と非観察部(V’)の範囲が異なるので、次に説明する。
図4(c)に示す台形の凸形状の第1の要素(11)が形成された基材(2)に第2の要素(21)が重なる配置の断面図を図19に示す。第1の要素(11)が台形で形成される場合、凸形状の頂点(Q)の位置は、凸形状の上面(V4)となる。このとき、基材(2)を斜めから観察すると、凸形状の手前側となる表面(V1)と凸形状の上面(V4)は観察することができ、凸形状の奥側となる表面(V2)と凸形状の第1の要素(11)が形成されない基材(2)の平らな部分(V3)は凸形状の死角となって観察することができない。
また、凸形状の上面(V4)に形成される第2の要素(21)は、凸形状の手前側となる表面(V1)に形成される第2の要素(21)に対して、視認性が弱く、潜像の図柄の視認性への影響は小さいため、実際には、凸形状の手前側となる表面(V1)に重なる第2の要素(21)によって、潜像が形成される。
したがって、第1の要素(11)が台形で形成される場合、第1の要素(11)の観察部(V)の範囲は、凸形状の上面(V4)を除く、凸形状の手前側となる表面(V1)となる。また、第1の要素(11)が台形で形成される場合、非観察部(V’)の範囲は、凸形状の奥側となる表面(V2)、凸形状の上面(V4)及び基材(2)の平らな部分(V3)となる。
次に、図18に示す配置と異なる第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置について説明する。図20は、図18に示す配置と異なる、第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置の一例を示した図である。
図20(a)に示す配置は、第2の要素(21)が、凸形状の観察部(V)の約半分に重なり、残りが第1の要素(11)が形成されない基材(2)の平らな部分(V3)に重なる状態を示している。
図20(b)は、図20(a)に示すX−X線における断面図を示す図である。このとき、凸形状の第1の要素(11)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なっている部分のみ、その色を観察することができる。ただし、図18に示す配置に対して、凸形状の第1の要素(11)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積が小さく、観察点(L2)から観察したときに視認される第2の要素(11)の面積も小さくなるため、図18に示す配置で観察される色に対して、低い濃度で観察される。これは、網点印刷の観察原理と同様であり、一定の領域内に形成される網点において、網点面積率が大きいほど高い濃度として視認され、網点面積率が小さいほど低い濃度で視認される原理のように、凸形状の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積が小さいほど低い濃度で観察され、凸形状の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積が大きいほど高い濃度で観察されるというものである。
本発明は、以上の観察原理を利用しており、第1の模様(10)の第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)がそれぞれ異なる位相に配置されることによって、第1の要素(11)の各要素と第2の要素(21)の重なり方がそれぞれ異なり、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)は異なる濃度で観察される。なお、第1の要素(11)と第2の要素(21)の具体的な配置については後述する。
これまでの説明は、第1の要素(11)が凸形状で形成される例であるが、続いて、第1の要素(11)が、凹形状で形成される例について説明する。
図21は、図5(a)に示す半円の凹形状の第1の要素(11)と第2の要素(21)が重なって配置されている状態の一例を示す断面図である。この場合、図21に示すように、観察点(L2)のように、基材(2)を斜めから観察すると、凹形状の底点(R)を境として、奥側となる凹形状の表面(V5)は観察することができ、手前側となる凹形状の表面(V6)は、死角となることから観察することができない。なお、本発明において、「凹形状の底点(R)」とは、凹形状で形成される第1の要素(11)のうち、最も低い部分のことである。
また、基材(2)を斜めから観察したときに、第1の要素(11)が形成されない基材(2)の平らな部分(V7)も観察することができるが、第1の要素(11)が形成されない基材(2)の平らな部分(V7)に形成される第2の要素(21)は、凹形状の底点(R)を境として奥側となる凹形状の表面(V5)に形成される第2の要素(21)に対して、視認性が弱く、潜像の図柄の視認性への影響は小さいため、実際には、凹形状の底点(R)を境として奥側となる凹形状の表面(V5)に重なる第2の要素(21)によって、潜像が形成される。
したがって、第1の要素(11)が凹形状で形成される場合、凹形状の底点(R)を境として、奥側となる凹形状の表面(V5)のことを「観察部(V)」、基材(2)を斜めから観察したときに、凹形状の底点(R)を境として、手前側となる凹形状の表面(V6)及び基材(2)の平らな部分(V7)のことを「非観察部(V’)」とし、以降説明する。なお、図21は、第1の要素(11)の所定の位置における断面図であり、図21に示す観察部(V)及び非観察部(V’)は、該位置におけるものであるが、実際には、一つの第1の要素(11)において、凹形状の底点(R)を結ぶ線を境として観察部(V)と非観察部(V’)に区分けされる。また、第1の要素(11)が凹形状で形成される場合においても、観察部(V)及び非観察部(V’)の範囲は、第1のピッチ(P1)及び画線の幅(W1)によって、若干の差はある。このように、第1の要素(11)を凹形状で形成した場合においても、観察部(V)と非観察部(V’)を設けることができ、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)の観察部(V)と第2の要素(21)の重なり方がそれぞれ異なることによって、潜像を形成することができる。
続いて、図5(c)に示す台形の凹形状の第1の要素(11)が形成される場合、観察部(V)と非観察部(V’)の範囲が異なるので、次に説明する。
図5(c)に示す台形の凹形状の第1の要素(11)が形成された基材(2)に第2の要素(21)が重なる配置の断面図を図22に示す。第1の要素(11)が台形で形成される場合、凹形状の底点(R)の位置は、凹形状の下面(V8)となる。このとき、基材(2)を斜めから観察すると、凹形状の奥側となる表面(V5)と基材の平らな部分(V7)は観察することができ、凹形状の手前側となる表面(V6)と凹形状の下面(V8)は、基材(2)の死角となって観察することができない。また、基材の平らな部分(V7)に形成される第2の要素(21)は、凹形状の奥側となる表面(V5)に形成される第2の要素(21)に対して、視認性が弱く、潜像の図柄の視認性への影響は小さいため、実際には、凹形状の奥側となる表面(V5)に重なる第2の要素(21)によって、潜像が形成される。
したがって、第1の要素(11)が台形で形成される場合、第1の要素(11)の観察部(V)の範囲は、基材(2)の平らな部分(V7)を除く、凹形状の奥側となる表面(V5)となる。また、第1の要素(11)が台形で形成される場合、第1の要素(11)の非観察部(V’)の範囲は、凹形状の手前側となる表面(V6)、凹形状の下面(V8)及び基材(2)の平らな部分(V7)となる。
続いて、凹形状と凸形状を組み合わせて成る構成の第1の要素(11)について説明する。図23は、図6(a)に示す半円の凹形状と凸形状を組み合わせて成る第1の要素(11)に第2の要素(21)が重なって配置されている状態の一例を示す断面図である。この場合、第1の要素(11)が半円の凸形状で形成される場合で説明したように、凸形状の頂点(Q)を境として、手前側となる凸形状の表面(V1)は観察することができるが、奥側の表面(V2)は凸形状の死角となることから観察することができない。
また、第1の要素(11)が半円の凹形状で形成される場合で説明したように、凹形状の低点(R)を境として、奥側となる凹形状の表面(V5)は観察することができるが、手前側となる凹形状の表面(V6)は、基材(1)の死角となることから観察することができない。
また、凹形状又は凸形状の第1の要素(11)が形成されない基材の平らな部分(V9)は、凸形状の死角となって基本的に観察することができないが、凹形状に近い側の部分(V9’)は、第1の要素(11)の形状や第1のピッチ(P1)及び画線の幅(W1)によって、観察されることもある。しかしながら、前述したように、基材(1)の平らな部分に形成される第2の要素(21)は、視認性が弱く、潜像の図柄の視認性への影響は小さい。
したがって、第1の要素(11)が凹形状と凸形状の組み合わせで形成される場合、凸形状の頂点(Q)を境として、手前側となる凹形状の表面(V1)と凹形状の底点(R)を境として、奥側となる凹形状の表面(V5)が観察部(V)となる。なお、観察部(V)及び非観察部(V’)の範囲は、第1の要素(11)の形状、第1のピッチ(P1)及び画線の幅(W1)によって、若干の差はある。
以上、本発明の潜像の観察原理と観察部(V)と非観察部(V’)の範囲について説明したが、以降の説明では、第1の要素(11)が図4(a)に示す半円の凸形状で形成される例で説明する。
続いて、第1の要素(11)と第2の要素(21)の具体的な配置と、観察される図柄について説明する。なお、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じピッチで形成される第1の模様(10)と第2の模様(20)の配置について説明する。また、第1の要素(11)が、基材(2)と同じ色で形成される例で説明する。また、観察点(L1)のように真上から観察した場合には、いずれの場合も第2の要素(21)を観察することができるので説明を省略し、基材(2)に対して、斜めの方向から観察した場合に観察される潜像の図柄について説明する。また、以降説明する第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置を示す図において、観察部(V)は、図面に示す各要素の半分から下側とし、非観察部(V’)は、図面に示す各要素の半分から上側とする。
本発明において、第2の要素(21)は、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)のうち、少なくとも二つの要素に異なる面積率で重なる必要がある。第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成される場合、このような配置となる組み合わせは4通りあり、本説明では、第1の配置〜第4の配置として、以下に説明する。
第1の配置は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)の少なくとも一部及び背景要素(11C)の観察部(V)の少なくとも一部に重なり、第2の潜像要素(11B)に重ならない配置である。この場合、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率と、背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率を異ならせて配置される。この配置の一例を、図24(a)に示す。
図24(a)は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)の全体及び背景要素(11C)の観察部(V)の一部に重なり、第2の潜像要素(11B)に重ならない状態を示している。また、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きい状態を示している。
ここで、第2の要素(21)の画線の幅(W2)の範囲について説明する。図24(a)に示す第1の配置において、第2の要素(21)の画線の幅(W2)は、少なくとも10μmより大きくする必要がある。これは、第2の要素(21)の画線の幅(W2)が10μmより小さいと、第1の要素(11)と第2の要素(21)の重なる面積が小さいため潜像の視認性が低下するからである。なお、第2の要素(21)の画線の幅(W2)を小さくする場合は、各要素の位相の差も小さくする必要がある。
また、第2の要素(21)の画線の幅(W2)の上限は、図14及び図15に示す各要素の配置によって適宜調整して第1の配置とすればよいが、必ず、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)と背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が異なり、かつ、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重ならないようにする必要がある。
図24(a)に示す第1の配置の潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成された領域を斜めから観察した場合、図24(b)に示す潜像模様(5)が観察される。このときに観察される潜像模様(5)の「A」の文字は、第2の要素(21)の色が高い濃度で視認され、「A」の文字の背景は、第2の要素(21)の色が低い濃度で視認される。このように、潜像模様(5)が観察される理由は、以下の通りである。
潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分に対する第1の模様(10)は、二つの異なる位相に配置された第1の潜像要素(11A)と背景要素(11C)で構成されており、第1の配置のとき、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図24(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される第1の潜像部(3)が形成される。また、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図24(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される背景部(6)が形成される。このとき、「NPB」の文字は、「NPB」の文字に対応する第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、「NPB」の文字の背景に対応する背景要素(11C)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きく、斜めから観察するときに視認される第2の要素(21)の面積が大きくなるため、「NPB」の文字の背景より高い濃度で観察される。
また、潜像模様(5)のうち、「A」の文字の背景が観察される部分に対する第1の模様(10)は、二つの異なる位相に配置された第2の潜像要素(11B)と背景要素(11C)で構成されており、第1の配置のとき、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図24(d)に示す第2の要素(21)の色で観察される背景部(6)が形成される。また、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)には、第2の要素(21)が重ならないが、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図24(d)に示す白抜きで観察される第2の潜像部(4)が形成される。なお、第1の潜像部(3)の図柄の背景に対応する背景要素(11C)と第2の潜像部(4)の図柄の背景に対応する背景要素(11C)は、同じ位相に位置しており、二つの背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が同じであるため、図24(c)に示す背景部(6)と図24(d)に示す背景部(6)は、同じ濃度で観察される。
以上の説明から、図24(a)に示す第1の配置においては、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)に対し、互いの背景となる背景部(6)が同じ色で観察される中、高い濃度で観察される第1の潜像部(3)が、潜像模様(5)の「A」の文字に配置されることで、第1の潜像部(3)の濃度が強調され、「A」の文字全体としては、第2の要素(21)の色が高い濃度で観察される。また、「A」の文字の背景では、白抜きで観察される第2の潜像部(4)が配置されることで、「A」の文字の背景全体として濃度が低下し、第2の要素(21)の色が低い濃度で観察される。なお、第1の配置において、背景要素(11C)に重なる第2の要素(21)の面積率を、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きくした場合(図示せず)、互いの背景部(6)が高い濃度で観察される中、潜像模様(5)の「A」の文字は、低い濃度で観察され、「A」の文字の背景は、更に低い濃度で観察される。
特許文献1の技術は、印刷された面を傾けて観察すると、一定の濃度の潜像が観察されるだけであったが、本発明の潜像模様形成体(1)は、異なる濃度で視認される第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)を設け、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)を潜像模様(5)の「A」の文字とその背景を構成するように配置することで、単純に第1の潜像部(3)と第2の潜像部(3)が観察されるだけでなく、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)の配置によって現される図柄を潜像模様(5)として観察することができる。そして、本発明の潜像模様形成体(1)は、以上説明した潜像を観察することができ、これを真偽判別に用いることによって、貴重印刷物の偽造防止を図ることができる。
なお、図24(a)に示す第1の配置は、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じピッチで形成される例であるが、本発明において、第2の要素(21)の第2のピッチ(P2)は、第1のピッチ(P1)と略同じ大きさで形成される。略同じ大きさとは、第1のピッチ(P1)に対して4/5〜6/5の大きさの範囲である。好ましくは、同じピッチとするのがよい。これは、図24(a)に示すように、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じ場合、第1の要素(11)と第2の要素(21)が必ず一定の間隔で重なるため、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)による潜像の図柄とその背景を視認しやすいからである。仮に、第2のピッチ(P2)を、前述した範囲で異なる場合には、第1の要素(11)と第2の要素(21)の重なる状態が徐々に変化するので、モアレ状の潜像模様が観察される。
第2の配置は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)の少なくとも一部及び第2の潜像要素(11B)の観察部(V)の少なくとも一部に重なり、背景要素(11C)の観察部(V)に重ならない配置である。この場合、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率と、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率を異ならせて配置される。この配置の一例を、図25(a)に示す。
図25(a)は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)の一部及び第2の潜像要素(11B)の全体に重なり、背景要素(11C)に重ならない状態を示している。また、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より小さい状態を示している。
図25(a)に示す第2の配置において、第2の要素(21)の画線の幅(W2)は、少なくとも10μmより大きくする必要がある。この理由は、第1の配置で説明したとおりである。また、第2の要素(21)の画線の幅(W2)の上限は、図14及び図15に示す各要素の配置によって適宜調整して第2の配置とすればよいが、必ず、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)と第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が異なり、かつ、背景要素(11C)の観察部(V)に重ならないようにする必要がある。
また、図25(a)に示す第2の配置は、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じピッチで形成される例であるが、第2の配置においても、第2のピッチ(P2)は、前述したように、第1のピッチ(P1)と略同一の範囲で形成してもよい。
図25(a)に示す第2の配置の潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成された領域を斜めから観察した場合、図25(b)に示す潜像模様(5)が観察される。このときに観察される潜像模様(5)の「A」の文字は、第2の要素(21)の色が低い濃度で視認され、「A」の文字の背景は、第2の要素(21)の色が高い濃度で視認される。このように、潜像模様(5)が観察される理由は、以下の通りである。
潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分に対する第1の模様(10)において、第2の配置のとき、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図25(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される第1の潜像部(3)が形成される。また、背景要素(11C)には、第2の要素(21)が重ならないが、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図25(c)に示す白抜きで観察される背景部(6)が形成される。
また、潜像模様(5)のうち、「A」の文字の背景が観察される部分に対する第1の模様(10)においては、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図25(d)に示す第2の要素(21)の色で観察される第2の潜像部(4)が形成される。このとき、「JPN」の文字は、「JPN」の文字に対応する第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、「NPB」の文字に対応する第1の潜像要素(11A)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きく、斜めから観察するときに視認される第2の要素(21)の面積が大きくなるため、「NPB」の文字より高い濃度で観察される。また、背景要素(11C)には、第2の要素(21)が重ならないが、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図25(d)に示す白抜きで観察される背景部(6)が形成される。
以上の説明から、図25(a)に示す第2の配置においては、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)に対し、互いの背景となる背景部(6)が白抜きで観察される中、高い濃度で観察される第2の潜像部(4)が、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に配置されることで、「A」の文字背景全体としては、第2の要素(21)の色が高い濃度で観察される。また、第2の潜像部(4)に対して低い濃度で観察される第1の潜像部(3)が、潜像模様(5)の「A」の文字に配置されることで、「A」の文字全体としては、第2の要素(21)の色が低い濃度で観察される。なお、第2の配置において、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率を、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きくした場合(図示せず)、第1の潜像部(3)で構成される「A」の文字が高い濃度で観察され、第2の潜像部(4)で構成される「A」の文字の背景が低い濃度で観察される。
第3の配置は、第2の要素(21)が、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)の少なくとも一部及び背景要素(11C)の観察部(V)の少なくとも一部に重なり、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重ならない配置である。この場合、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率と、背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率を異ならせて配置される。この配置の一例を、図26(a)に示す。
図26(a)は、第2の要素(21)が、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)の全体及び背景要素(11C)の観察部(V)の一部と非観察部(V’)の全体に重なり、第1の潜像要素(11A)に重ならない状態を示している。また、背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より小さい状態を示している。
図26(a)に示す第3の配置において、第2の要素(21)の画線の幅(W2)は、少なくとも10μmより大きくする必要がある。この理由は、第1の配置で説明したとおりである。また、第2の要素(21)の画線の幅(W2)の上限は、図14及び図15に示す各要素の配置によって適宜調整して第3の配置とすればよいが、必ず、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)と背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が異なり、かつ、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重ならないようにする必要がある。
また、図26(a)に示す第3の配置は、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じピッチで形成される例であるが、第3の配置においても、第2のピッチ(P2)は、前述したように、第1のピッチ(P1)と略同一の範囲で形成してもよい。
図26(a)に示す第3の配置の潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成された領域を斜めから観察した場合、図26(b)に示す潜像模様(5)が観察される。このときに観察される潜像模様(5)の「A」の文字は、第2の要素(21)の色が低い濃度で視認され、「A」の文字の背景は、第2の要素(21)の色が高い濃度で視認される。このように、潜像模様(5)が観察される理由は、以下の通りである。
潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分に対する第1の模様(10)において、第3の配置のとき、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図26(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される背景部(6)が形成される。また、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)には、第2の要素(21)が重ならないが、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図26(c)に示す白抜きで観察される第1の潜像部(3)が形成される。
また、潜像模様(5)のうち、「A」の文字の背景が観察される部分に対する第1の模様(10)においては、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図26(d)に示す第2の要素(21)の色で観察される第2の潜像部(4)が形成される。また、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図26(d)に示す第2の要素(21)の色で観察される背景部(6)が形成される。このとき、「JPN」の文字は、「JPN」の文字に対応する第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、「JPN」の文字の背景に対応する背景要素(11C)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きく、斜めから観察するときに視認される第2の要素(21)の面積が大きくなるため、「JPN」の文字の背景より高い濃度で観察される。なお、第1の潜像部(3)の図柄の背景に対応する背景要素(11C)と第2の潜像部(4)の図柄の背景に対応する背景要素(11C)は、同じ位相に位置しており、二つの背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が同じであるため、図26(c)に示す背景部(6)と図26(d)に示す背景部(6)は、同じ濃度で観察される。
以上の説明から、図26(a)に示す第3の配置においては、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)に対し、互いの背景となる背景部(6)が同じ色で観察される中、潜像模様(5)の「A」の文字は、白抜きで観察される第1の潜像部(3)が、潜像模様(5)の「A」の文字に配置されることで、「A」の文字全体として濃度が低下し、第2の要素(21)の色が低い濃度で観察される。また、高い濃度で観察される第2の潜像部(4)が、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に配置されることで、第2の潜像部(4)の濃度が強調され、「A」の文字の背景全体としては、第2の要素(21)の色が高い濃度で観察される。なお、第3の配置において、背景要素(11C)に重なる第2の要素(21)の面積率を、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きくした場合(図示せず)、互いの背景部(6)が高い濃度で観察される中、潜像模様(5)の「A」の文字の背景は、低い濃度で観察され、「A」の文字は、更に低い濃度で観察される。
第4の配置は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)の少なくとも一部、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)の少なくとも一部及び背景要素(11C)の観察部(V)の少なくとも一部に重なる配置である。この場合、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率及び背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率のそれぞれを異ならせて配置される。この配置の一例を、図27(a)に示す。
図27(a)は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)の一部、第2の潜像要素(11B)の全体及び背景要素(11C)の観察部(V)の一部と非観察部(V’)の全体に重なる状態を示している。また、背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より小さい状態を示している。
図27(a)に示す第4の配置において、第2の要素(21)の画線の幅(W2)は、少なくとも10μmより大きくする必要がある。この理由は、第1の配置で説明したとおりである。また、第2の要素(21)の画線の幅(W2)の上限は、第1のピッチ(P1)に対して9/10より小さい範囲の大きさで形成される。これは、第2の要素(21)の画線の幅(W2)が、第1のピッチ(P1)に対して9/10より大きいと、異なる位相に配置された各要素(11)の全体に第2の要素(21)が重なり、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)による潜像の図柄とその背景でコントラストが得られず潜像が観察できないからである。
また、図27(a)に示す第4の配置は、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じピッチで形成される例であるが、第4の配置においても、第2のピッチ(P2)は、前述した第1のピッチ(P1)と略同一の範囲で形成してもよい。
図27(a)に示す第4の配置の潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成された領域を斜めから観察した場合、図27(b)に示す潜像模様(5)が観察される。このときに観察される潜像模様(5)の「A」の文字は、第2の要素(21)の色が低い濃度で視認され、「A」の文字の背景は、第2の要素(21)の色が高い濃度で視認される。このように、潜像模様(5)が観察される理由は、以下の通りである。
潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分に対する第1の模様(10)において、第4の配置のとき、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図27(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される第1の潜像部(3)が形成される。また、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図27(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される背景部(6)が形成される。このとき、「NPB」の文字は、「NPB」の文字に対応する第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、「NPB」の文字の背景に対応する背景要素(11C)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きく、斜めから観察するときに視認される第2の要素(21)の面積が大きくなるため、「NPB」の文字の背景より高い濃度で観察される。
また、潜像模様(5)のうち、「A」の文字の背景が観察される部分に対する第1の模様(10)においては、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図27(d)に示す第2の要素(21)の色で観察される第2の潜像部(4)が形成される。また、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図27(d)に示す第2の要素(21)の色で観察される背景部(6)が形成される。このとき、「JPN」の文字は、「JPN」の文字に対応する第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、「JPN」の文字の背景に対応する背景要素(11C)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きく、斜めから観察するときに視認される第2の要素(21)の面積が大きくなるため、「JPN」の文字の背景より高い濃度で観察される。なお、第1の潜像部(3)に対応する背景要素(11C)と第2の潜像部(4)に対応する背景要素(11C)は、同じ位相に位置しており、二つの背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が同じであるため、図27(c)に示す背景部(6)と図27(d)に示す背景部(6)は、同じ色で観察される。また、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)の一部に第2の要素(21)が重なるのに対して、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)の全体に第2の要素(21)が重なるため、第2の潜像部(4)である「JPN」の文字は、第1の潜像部(3)である「NPB」の文字より高い濃度で観察される。
以上の説明から、図27(a)に示す第4の配置においては、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)に対し、互いの背景となる背景部(6)が同じ色で観察される中、高い濃度で観察される第2の潜像部(4)が、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に配置されることで、第2の潜像部(4)の濃度が強調され、「A」の文字の背景全体としては、第2の要素(21)の色が高い濃度で観察される。また、「A」の文字では、背景部(6)より高い濃度で観察される第1の潜像部(3)が、潜像模様(5)の「A」の文字に配置されることで、第1の潜像部(3)の濃度が強調されて観察される。ただし、第1の潜像部(3)の濃度は、第2の潜像部(4)の濃度より低いため、「A」の文字は、「A」の文字の背景に対して低い濃度で観察される。なお、第4の配置において、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率の大小関係は、図27(a)に示す配置の例に限定されず、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が最も大きくてもよいし(図示せず)、背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が最も大きくてもよい(図示せず)。
以上が、第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成されて成る潜像模様形成体(1)の配置と観察される潜像であり、第1の模様(10)を構成する第1の潜像要素(11A)及び第2の潜像要素(11B)に対する潜像をすべて出現させるために、第2の模様(20)を形成する領域を、第1の模様(10)が形成される領域と同じ大きさ又は第1の模様(10)が形成される領域よりも大きくし、第1の模様(10)を覆うように配置する必要がある。
なお、本実施の形態では、潜像模様(5)の「A」の文字に第1の潜像部(3)が配置され、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に第2の潜像部(4)が配置される構成について説明したが、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に第1の潜像部(3)が複数配置され、「A」の文字に第2の潜像部(4)が複数配置される構成であっても良い(図示せず)。これは、前述した第1の配置〜第4の配置において、第1の模様(10)と第2の模様(20)が重なるとき、第1の潜像部(3)、第2の潜像部(4)及び背景部(6)は、視認性が異なるからであり、これによって、「A」の文字とその背景で視認性が異なる潜像模様(5)を観察することができるからである。
続いて、前述した観察原理によって潜像模様(5)が観察されるための第1の要素(11)の第1のピッチ(P1)について説明する。
図7に示す第1のピッチ(P1)は、各要素を異なる位相に配置することが可能な範囲であれば、第1の配置〜第4の配置とすることができるので、特に限定されるものではないが、好ましくは、画線の幅(W1)の2倍〜3倍で形成されるのがよい。ここで、第1のピッチ(P1)が、画線の幅(W1)の2倍〜3倍で形成されるのが好ましい理由について説明する。
はじめに、第1のピッチ(P1)が、画線の幅(W1)の2倍より大きくするのが好ましい理由について説明する。これは、各要素の観察部(V)を同じ位相で重ならないように配置するためには、第1のピッチ(P1)を、画線の幅(W1)の2倍より大きくする必要があり、このとき、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)に重なる第2の要素(21)のコントラストが最も得られるとともに、潜像の表現可能な濃度の範囲を広くすることができるからである。
図28(a)に、画線の幅(W1)の2倍より小さい範囲に各要素を配置した状態の一例として、画線の幅(W1)の1.5倍の範囲に各要素を配置した状態を示し、図28(b)に、画線の幅(W1)の2倍の範囲に各要素を配置した状態を示す。図28(a)及び(b)に示す各要素は、画線の幅(W1)の中心を境に観察部(V)と非観察部(V’)に区分けされ、各要素は等間隔に配置されている状態を示している。
図28(a)に示すように、各要素を画線の幅(W1)の1.5倍の範囲に配置した場合には、背景要素(11C)と第1の潜像要素(11A)の観察部(V)及び第1の潜像要素(11A)と第2の潜像要素(11B)の観察部(V)において、同じ位相に位置する部分が生じる。そして、各要素の観察部(V)に第2の要素(21)が前述した第1の配置〜第4の配置で重なる場合、第1の潜像部(3)、第2の潜像部(4)及び背景部(6)のコントラストが低下してしまう。これを説明するため、図28(a)に示す背景要素(11C)の観察部(V)と第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に、第2の要素(21)が重なる第1の配置の例を、図29(a)に示す。
図29(a)に示す配置は、第2の要素(21)が背景要素(11C)の観察部(V)の全体と、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)の半分に重なる状態を示している。このとき、背景要素(21)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)と第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の潜像要素(21)の面積率の差が、第1の潜像要素(11A)に対する潜像の図柄とその背景のコントラストとなる。そして、図29(a)に示す配置の場合、潜像の図柄と背景のコントラストは、画線の幅(W1)の1/4の範囲に重なる第2の要素(21)となる。
続いて、図28(b)に示す各要素の観察部(V)に第2の要素(21)が第1の配置で重なる例を図29(b)に示す。図29(b)に示す配置は、第2の要素(21)が背景要素(11C)の観察部(V)の全体と非観察部(V)の一部及び第1の潜像要素(11A)の観察部(V)の一部に重なる状態を示している。
図29(b)に示すように、各要素の観察部(V)が異なる位相に配置される構成の場合、第2の要素(21)の画線の幅(W2)を調整して、第2の要素(21)を第1の潜像要素(11A)の観察部(V)のわずかな一部に重ねることによって、第1の潜像要素(11A)に対する潜像の図柄とその背景のコントラストを大きくすることができる。
また、図29(a)に示す第1の配置の場合、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)には、画線の幅(W1)の1/2までしか第2の要素(21)を形成することができない。これは、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の範囲を画線の幅(W1)の1/2より大きくすると、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なってしまい、第1の配置にならないからである。このことから、図29(a)に示す配置の場合、第1の潜像要素(11A)によって構成される図柄の表現できる濃度範囲が制限されてしまう。
一方、図29(b)に示す第1の配置の場合、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)は、画線の幅(W1)の1/2よりも大きくすることができ(画線の幅(W1)の1/2より大きくしても、第2の潜像要素(11B)に重ならないため)、第1の潜像要素(11A)に対する潜像の図柄の表現可能な濃度の範囲を広くすることができる。
以上の説明は、第2の要素(21)が第1の配置で重なる例で説明したが、第2の配置〜第4の配置についても同様である。
このように、潜像が観察されるときの第1の潜像要素(11A)に対する潜像の図柄、第2の潜像要素(11B)に対する潜像の図柄及び潜像の図柄の背景のコントラストが最も得られるとともに、潜像の表現可能な濃度の範囲を広くすることが可能な構成とするため、各要素を画線の幅(W1)の2倍の範囲に配置するのが好ましい。
続いて、第1のピッチ(P1)が、画線の幅(W1)の3倍より小さくするのが好ましい理由について説明する。これは、第1のピッチ(P1)を、画線の幅(W1)の3倍より大きくすると、潜像の図柄を形成するための第1の模様(10)が大きくなり、貴重印刷物を構成するデザイン、例えば、他の印刷図柄等の制約を受けるために、好ましくない。また、本発明において、第2の要素(21)は、異なる位相に配置された第1の要素(11)の少なくとも二つの観察部(V)に異なる面積率で重なる必要があるが、各要素同士に間隔が生じると、第2の要素(21)の画線の幅(W2)も大きくする必要があり、加工効率が低下するからである。以上のことから、第1のピッチ(P1)は、画線の幅(W1)の3倍より小さくするのが好ましい。
このような構成の第1の要素(11)と第2の要素(21)が、前述した第1の配置から第4の配置で重なることによって、潜像模様(5)を観察することができる。
以上説明した潜像模様形成体(1)は、潜像模様(5)が第2の模様(20)の色で観察されるが、第2の模様(20)と同じ形成方法で、かつ、第1の模様(10)及び第2の模様(20)と異なる色相の第3の模様(30)を形成することによって、潜像に色変化を持たせることも可能である。そこで、第3の模様(30)について、以下に説明する。
(第3の模様)
第3の模様(30)は、図30に示すように、基材(2)に、第1の要素(11)及び第2の要素(21)と異なる色の第3の要素(31)が万線状に複数配置されて成る。第3の要素(21)を形成する方法は、前述した第2の要素(21)を形成する方法と同じであり、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法を用いることができる。
また、画線の構成についても第2の要素(21)と同じであり、画線、画素又は画線と画素の複合の構成のいずれでもよい。なお、第3の要素(31)の画線に対しては、第3のピッチ(P3)、画線の幅(W3)として説明し、第3の要素(31)の画素に対しては、画素の高さ(W’3)、画素の幅(X3)、画素のピッチ(p3)として説明する。
第3のピッチ(P3)、画素の幅(X3)及び画素のピッチ(p3)の範囲は、第2の要素(21)の第2のピッチ(P2)、画素の幅(X2)及び画素のピッチ(p2)の範囲と同じである。画線の幅(W3)及び画素の高さ(W’3)の範囲については、第1の要素(11)、第2の要素(21)及び第3の要素(31)の配置によるので、以降に説明する第1の要素(11)、第2の要素(21)及び第3の要素(31)の配置で後述する。なお、画素の高さ(W’3)の範囲は、画線の幅(W3)の範囲と同じであるため、説明を省略する。
第3の模様(30)は、第2の模様(20)と同様に、第1の模様(10)が形成される領域と同じ大きさ又は第1の模様(10)が形成される領域よりも大きくし、第1の模様(10)を覆うように配置する必要がある。これは、第1の潜像要素(11A)及び第2の潜像要素(11B)に対する潜像をすべて出現させるためである。そして、第3の模様(30)は、図31に示すように、第1の模様(10)を覆うように重なり、第3の要素(31)は、第2の要素(21)と重ならないように配置される。続いて、第1の要素(11)、第2の要素(21)及び第3の要素(31)の具体的な配置について説明する。
第3の模様(30)が形成される場合の、第1の要素(11)、第2の要素(21)及び第3の要素(31)の配置は、以下に説明する2通りの配置があり、それぞれ第5の配置と第6の配置とする。
第3の模様(30)が形成される場合の一つ目の配置(以降、第5の配置という)は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)のうち、一つの要素の観察部(V)の少なくとも一部に重なり、他の要素の観察部(V)に重ならず、第3の要素(31)が、第2の要素(21)に重ならず、かつ、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)のうち、第2の要素(21)が重ならない一つの要素の観察部(V)の少なくとも一部に重なり、他の要素の観察部(V)に重ならない配置である。
このような配置とする理由は、前述した第1の要素(11)と第2の要素(21)の第1の配置〜第4の配置において、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)、背景要素(11C)のうち、異なる位相に配置された二つの要素に第2の要素(21)が重なる場合は、第2の要素(21)が重なる部分が異なる濃度で観察されるために、観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率を異ならせる必要があるが、第3の模様(30)を形成することによって、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)、背景要素(11C)のうち、二つの要素の一方に第2の要素(21)が重なり、他方に第3の要素(31)が重なるように配置すれば、第1の潜像要素(11A)に対する潜像の図柄、第2の潜像要素(11B)に対する潜像の図柄及びその背景のそれぞれを異なる色で観察することができるからである。
図32(a)に第5の配置の一例を示す。
図32(a)は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)の全体に重なり、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)に重ならず、第3の要素(31)が第2の潜像要素(11B)の全体に重なり、第1の潜像要素(11A)及び背景要素(11C)に重ならない状態を示している。
このとき、第2の要素(21)の画線の幅(W2)と第3の要素(W3)は、潜像の視認性を低下させないため、少なくとも10μmより大きくする必要があり、上限は、一つの要素の観察部(V)に重なり、他の要素の観察部(V)に重ならない範囲である。
図32(a)に示す第5の配置の潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)、第2の模様(20)及び第3の模様(30)が形成された領域を斜めから観察した場合、図32(b)に示す潜像模様(5)が観察される。このときに観察される潜像模様(5)の「A」の文字は、第2の要素(21)の色で視認され、「A」の文字の背景は、第3の要素(31)の色で視認される。このように、潜像模様(5)が観察される理由は、以下の通りである。
潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分に対する第1の模様(10)は、二つの異なる位相に配置された第1の潜像要素(11A)と背景要素(11C)で構成されており、第1の配置のとき、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図32(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される第1の潜像部(3)が形成される。また、背景要素(11C)には、第2の要素(21)が重ならないが、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図32(c)に示す白抜きで観察される背景部(6)が形成される。
また、潜像模様(5)のうち、「A」の文字の背景が観察される部分に対する第1の模様(10)においては、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第3の要素(31)が重なることによって、図32(d)に示す第3の要素(31)の色で観察される第2の潜像部(4)が形成される。このとき、第2の要素(21)の色と第3の要素(31)の色が異なるため、「JPN」の文字は、「NPB」の文字が観察される色に対して、異なる色で観察される。また、背景要素(11C)には、第3の要素(31)が重ならないが、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第3の要素(21)が重なることによって、図32(d)に示す白抜きで観察される背景部(6)が形成される。
以上の説明から、図32(a)に示す第5の配置においては、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)に対し、互いの背景となる背景部(6)が白抜きで観察される中、第2の要素(21)の色で観察される第1の潜像部(3)が、潜像模様(5)の「A」の文字に配置されることで、「A」の文字全体としては、第2の要素(21)の色で観察される。また、第3の要素(31)の色で観察される第2の潜像部(3)が、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に配置されることで、「A」の文字の背景全体としては、第3の要素(31)の色で観察される。
このように、図32(a)に示す第5の配置とした場合には、第2の要素(21)と第3の要素(31)の色の差によって、「A」の文字と「A」の文字の背景は、色の異なる潜像模様(5)として観察される。なお、図32(a)に示す配置とは異なる第5の配置、例えば、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なり、背景要素(11C)の観察部(V)に第3の要素(31)が重なる配置とした場合でも、第2の要素(21)と第3の要素(31)の色の差によって、「A」の文字と「A」の文字の背景が、異なる色となって潜像模様(5)が観察される。
続いて、第3の模様(30)が形成される場合の二つ目(以降、第6の配置という)の配置について説明する。
第3の模様(30)が形成される場合の第6の配置は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)のうち、異なる位相に配置された二つの要素の観察部(V)のそれぞれの少なくとも一部に重なり、他の要素の観察部(V)に重ならず、第3の要素(31)が、第2の要素(21)に重ならず、かつ、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)のうち、第2の要素(21)が重ならない残りの要素の観察部(V)の一部に少なくとも重なる配置である。この場合、第2の要素(21)が二つの要素に重なる面積率を異ならせる必要がある。
図33(a)に第6の配置の一例を示す。
図33(a)は、第2の要素(21)が、第1の潜像要素(11A)の全体と背景要素(11C)の観察部(V)の一部に重なり、第2の潜像要素(11B)に重ならず、第3の要素(31)が第2の潜像要素(11B)の全体に重なり、第1の潜像要素(11A)及び背景要素(11C)に重ならない状態を示している。また、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きい状態を示している。図33(a)に示す配置は、図24(a)に示す第1の配置に対して、第2の潜像要素(11B)に第3の要素(31)が重なる点が異なる。
このとき、第2の要素(21)の画線の幅(W2)と第3の要素(W3)は、潜像の視認性を低下させないため、少なくとも10μmより大きくする必要がある。第2の要素(21)の画線の幅(W2)の上限は、図14及び図15に示す各要素の配置によって適宜調整して第6の配置とすればよいが、必ず、二つの要素の観察部(V)に異なる面積率で重なり、他の要素の観察部(V)に重ならないようにする必要がある。また、第3の要素(31)の画線の幅(W3)の上限は、第2の要素(21)の画線の幅(W2)と図14及び図15に示す各要素の配置によるが、必ず、第2の要素(21)に重ならないようにする必要がある。
図33(a)に示す第6の配置の潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)、第2の模様(20)及び第3の模様(30)が形成された領域を斜めから観察した場合、図33(b)に示す潜像模様(5)が観察される。このときに観察される潜像模様(5)の「A」の文字は、第2の要素(21)の色が高い濃度で視認され、「A」の文字の背景は、第3の要素(31)の色で視認される。このように、潜像模様(5)が観察される理由は、以下の通りである。
潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分に対する第1の模様(10)は、二つの異なる位相に配置された第1の潜像要素(11A)と背景要素(11C)で構成されており、図33(a)に示す第6の配置のとき、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図33(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される第1の潜像部(3)が形成される。また、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図33(c)に示す第2の要素(21)の色で観察される背景部(6)が形成される。このとき、「NPB」の文字は、「NPB」の文字に対応する第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率が、「NPB」の文字の背景に対応する背景要素(11C)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きく、斜めから観察するときに視認される第2の要素(21)の面積が大きくなるため、「NPB」の文字の背景より高い濃度で観察される。
また、潜像模様(5)のうち、「A」の文字の背景が観察される部分に対する第1の模様(10)においては、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第3の要素(31)が重なることによって、図33(d)に示す第3の要素(31)の色で観察される第2の潜像部(4)が形成される。また、背景要素(11C)の観察部(V)に、第2の要素(21)が重なることによって、図33(d)に示す第2の要素(21)の色で観察される背景部(6)が形成される。なお、図33(c)に示す背景部(6)と図33(d)に示す背景部(6)は、同じ色で観察される。
以上の説明から、図33(a)に示す第6の配置においては、「A」の文字と「A」の文字の背景で互いに共通する背景部(6)は、第2の要素(21)の色が低い濃度で視認される中、高い濃度で観察される第1の潜像部(3)が、潜像模様(5)の「A」の文字に配置されることで、第1の潜像部(3)の色が強調され、「A」の文字全体としては、第2の要素(21)の色が高い濃度で観察される。また、第3の要素(31)の色で観察される第2の潜像部(4)が、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に配置されることで、第2の潜像部(4)の色が強調され、「A」の文字の背景全体としては、第3の要素(31)の色で観察される。
なお、図33(a)に示す第6の配置とは異なる配置、例えば、第2の潜像要素(11B)と背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)が異なる面積率で重なり、第1の潜像要素(11A)の観察部(V)に第3の要素(31)が重なる場合においても、「A」の文字と「A」の文字の背景は、色の異なる潜像模様(5)として観察される。この場合、図33(b)に示す潜像模様(5)に対して、「A」の文字と「A」の文字の背景で色が入れ替わって観察される。
一方、第6の配置において、第1の潜像要素(11A)と第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に第2の要素(21)が異なる面積率で重なり、背景要素(11C)の観察部(V)に第3の要素(31)が重なる場合には、潜像模様(5)の「A」の文字と「A」の文字の背景で互いに共通する背景部(6)が、第3の要素(31)で視認される中、「A」の文字に配置される第1の潜像部(3)が視認される色(第2の要素の色)と、「A」の文字の背景に配置される第2の潜像部(4)が視認される色(第2の要素の色)の濃度差が強調されて、「A」の文字と「A」の文字の背景は、異なる濃度の潜像模様(5)として観察される。
以上説明した、第6の配置は、第3の要素(31)が、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)のうち、第2の要素(21)が重ならない残りの一つの要素の観察部(V)に重なる例であるが、第3の要素(31)は、更に、第2の要素(21)が重なる一つの要素の観察部(V)に重なってもよい。ただし、この場合、前述したように、第3の要素(31)を第2の要素(21)と重ならないように配置する必要がある。この配置の一例を図34(a)に示す。
図34(a)は、図33(a)に示す第6の配置から、更に、第3の要素(31)が背景要素(11C)の観察部(V)の一部と非観察部(V’)の全体に重なる状態を示している。また、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)に重なる第3の要素(31)の面積率が、背景要素(11C)の観察部(V)に重なる第3の要素(31)の面積率より大きい状態を示している。
この場合、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)の視認性は、図33(a)に示す配置のときの同じであるが、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)と第3の要素(31)が重なることによって、第2の要素(21)と第3の要素(31)の色が混色した状態で観察される背景部(6)が形成される。
結果的に、潜像模様(5)の「A」の文字と「A」の文字の背景で互いに共通する背景部(6)は、第2の要素(21)の色と第3の要素(31)の色が混色した状態で観察される中、第2の要素(21)の色で観察される第1の潜像部(3)が、潜像模様(5)の「A」の文字に配置されることで、第1の潜像部(3)の色が強調され、「A」の文字全体としては、第2の要素(21)の色で観察される。また、第3の要素(31)の色で観察される第2の潜像部(4)が、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に配置されることで、第2の潜像部(4)の色が強調され、「A」の文字の背景全体としては、第3の要素(31)の色で観察される。
図34(a)に示す配置では、背景要素(11C)の観察部に、第2の要素(21)と第3の要素(31)が重なる配置であるが、第1の潜像要素(11A)又は第2の潜像要素(11B)の観察部に第2の要素(21)と第3の要素(31)が重なる場合には、第1の潜像部(3)又は第2の潜像部(4)が、第2の要素(21)と第3の要素(31)の色の混色で観察される。
このように、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(111C)のうち、一つの要素の観察部(V)に第2の要素(21)と第3の要素(31)が重なることによって、二つの色の混色で観察され、これまで説明した配置で観察される、潜像模様(5)と異なる視認性の潜像模様(5)を観察することができる。
以上に説明した、第3の模様(30)を追加することにより、斜めから観察したときの潜像に第3の要素(31)の色を加えて視認させることが可能となり、潜像の意匠性を高めることできる。
同様にして、第1の要素(21)及び第3の要素(31)と異なる色で成る第4の要素を万線状に複数配置して第4の模様を形成し、第2の要素(21)、第3の要素(31)及び第4の要素が互いに重ならず、かつ、第2の要素(21)、第3の要素(31)及び第4の要素のそれぞれが、第1の潜像要素(11A)、第2の潜像要素(11B)及び背景要素(11C)の観察部(V)のいずれかに重なるように配置することで、潜像模様の意匠性を高めることができる。
以上説明した潜像模様形成体(1)は、第1の潜像部(3)である「NPB」の文字と第2の潜像部(4)である「JPN」の文字が異なる濃度又は色で観察され、「NPB」の文字の背景と「JPN」の文字の背景は共通の背景部(6)として同じ濃度又は色で観察され、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)の配置によって潜像模様(5)が形成されるが、本発明で潜像が出現する原理を用いて、図35(a)及び(b)に示すように、「NPB」の文字に対する背景部(16)と、「JPN」の文字に対する背景部(17)を異なる濃度又は色で出現させ、「NPB」と「JPN」の文字を共通の潜像部(15)として同じ濃度又は色で出現させることによって、図36に示す潜像模様(5)を形成することができる。図36に示す潜像模様(5)は、「A」の文字と「A」の文字の背景が異なる濃度又は色で観察される点は、先に説明した潜像模様形成体(1)と同じであるが、「NPB」の文字に対する背景部(16)と「JPN」の文字に対する背景部(17)の濃度又は色の差によって構成される点が異なる。続いて、図36に示す潜像模様(5)を形成するための構成について、第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成される潜像模様形成体(1A)の例で説明する。
図37(a)は、潜像模様(5)と第1の模様(10)の配置を示す模式図であり、図37(b)は、図37(a)に示す太線枠の位置の潜像模様(5)に対する第1の模様(10)を拡大した図である。なお、図37(a)に示す太線枠の位置は、潜像模様(5)のうち、「A」の文字が観察される部分と、「A」の文字の背景が観察される部分の境界の位置である。また、図37(b)に示す一点鎖線は、「A」の文字が観察される部分と「A」の文字の背景が観察される部分の境界を示すためのものであり、一点鎖線の左側に配置される第1の要素(11)は、潜像模様(5)の「A」の文字(「NPB」の文字とその背景)に対応し、一点鎖線の右側に配置される第2の潜像要素(11B)は、潜像模様(5)の「A」の文字(「NPBの文字とその背景」)の背景に対応している。
図37(b)に示すように、潜像模様形成体(1A)の第1の模様(10)を構成する第1の要素(11)は三つの異なる位相に配置される。この構成は、潜像模様形成体(1)の第1の模様(10)と同じであるが、潜像模様形成体(1A)の場合、三つの異なる位相に配置された第1の要素(11)が、それぞれ、「NPB」の文字に対する背景、「JPN」の文字に対する背景、「JPN」と「NPB」の文字に対応している点が異なる。以降、三つの異なる位相に配置された第1の要素(11)のうち、「NPB」の文字の背景に対応する第1の要素(11)を「第1の背景要素(11D)」とし、「JPN」の文字の背景に対応する第1の要素(11)を「第2の背景要素(11E)」とし、「NPB」と「NPB」の文字に対応する第1の要素(11)を「潜像要素(11F)」として説明する。
図37(b)に示すように、「NPB」の文字に対応する潜像要素(11F)と「JPN」の文字に対応する潜像要素(11F)は、同じ位相に配置され、第1の背景要素(11D)、第2の背景要素(11E)及び潜像要素(11F)は、異なる位相に配置される。
以上の構成で成る第1の模様(10)に対して、第1の背景要素(11D)及び第2の背景要素(11E)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図35に示すように、「NPB」の文字に対する背景部(16)と「JPN」の文字に対する背景部(17)が形成される。以降、第1の背景要素(11D)に対応し、「NPB」の文字に対する背景部を「第1の背景部(16)」として説明する。また、第2の背景要素(11E)に対応し、「JPN」の文字に対する背景部を「第2の背景部(17)」として説明する。
このとき、第1の背景要素(11D)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率を第2の背景要素(11E)の観察部(V)に重なる第2の要素(21)の面積率より大きくすることによって、図35に示すように、第1の背景部(16)が第2の背景部(17)より高い濃度で観察される。また、潜像要素(11F)の観察部(V)に、第2の要素(21)が重ならず、第1の背景要素(11D)及び第2の背景要素(11E)の観察部(V)に第2の要素(21)が重なることによって、図35に示す白抜きで観察される潜像部(35)が形成される。
そして、潜像模様形成体(1A)を斜めら観察した場合、図36に示すように、「A」の文字と「A」の文字の背景で互いに共通する潜像部(15)は、白抜きで観察される中、高い濃度で観察される第1の背景部(16)が潜像模様(5)の「A」の文字に配置されることで、「A」の文字全体としては、第2の要素(21)の色が高い濃度で観察される。また、第1の背景部(16)に対して低い濃度で観察される第2の背景部(17)が、潜像模様(5)の「A」の文字の背景に配置されることで、「A」の文字の背景全体としては、第2の要素(21)の色が低い濃度で観察される。
なお、潜像模様形成体(1A)を斜めから観察したときに視認される潜像模様(5)は、図36に示す模様だけでなく、第1の背景要素(11D)、第2の背景要素(11E)及び潜像要素(11F)と第2の要素(21)の配置を、先に説明した第1の配置から第4の配置と同様に異ならせることで、多彩な潜像模様(5)が観察される。また、第3の模様(30)を形成する場合も、先に説明した第5の配置及び第6の配置と同様に各要素を配置すればよい。
従来(特許第2600094号公報)の潜像模様形成体で観察される潜像は、本発明の潜像部の図柄である「NPB」と「JPN」の文字のように、潜像毎に異なる濃度又は色で出現するものではなく、このような潜像を、単純に、「A」の文字とその背景に配置した場合には、「A」の文字とその背景の濃度の差又は色の差が得られず、本発明の潜像模様(5)を観察することができない。また、仮に、「A」の文字を構成する潜像部と、「A」の文字の背景を構成する潜像部の濃度を異ならせて形成したとき、それぞれの背景部の濃度が異なる場合には、潜像全体としては四つの濃度で観察され、「A」の文字とその背景、あるいは、潜像部の図柄とその背景でコントラストが低下してしまうという問題がある。また、「A」の文字とその背景に、従来の潜像を、色を異ならせて配置することも考えられるが、構造が単純であるため、複製される可能性がある。これに加えて、「A」の文字に対応する潜像部と「A」の文字の背景に対応する潜像部を異なる色で出現させるためには、各潜像部を構成する第1の要素の位相の差を十分に設ける必要があり、その場合、潜像を視認するための画線(本発明でいう第2の要素と第3の要素)の間隔が大きくなり、結果的に潜像の視認性が低下してしまう。そこで、本発明の潜像模様形成体(1)は、第1の潜像部(3)と第2の潜像部(4)に対する背景部(6)を共通とし、第1の潜像部(3)で構成される「A」の文字と第2の潜像部(4)で構成される「A」の文字の背景のそれぞれを、背景部(6)に対して異なる色又は濃度で出現させることで、潜像模様(5)の視認性に優れたものとしている。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これら実施例の範囲に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成されて成る潜像模様形成体(1)である。実施例1の潜像模様形成体(1)について、実施の形態で説明した図面を用いて説明する。
実施例1の潜像模様形成体(1)は、図1に示すように、基材(2)に第1の模様(10)と第2の模様(20)が形成されて成る。基材(2)は、白色の紙から形成されたものであり、基材(2)の厚さは、100μmのものを用いた。
図3に示す第1の模様(10)は、抄紙機における湿紙の段階で円網により透かし模様として形成した。このとき、第1の要素の深さ(h)が45μmの凹形状で、画線の幅(W1)が200μmの直線で構成される第1の要素(11)を、第1のピッチ(P1)を600μmとして、第1の要素(11)を万線状に複数配置して第1の模様(10)を形成した。
このとき、第1の模様(10)は、万線状に複数配置した第1の要素(11)の位相を異ならせることにより、図10(c)に示す「NPB」の文字を構成する第1の潜像要素(11A)と背景要素(11C)及び図11(c)に示す「JPN」の文字を構成する第2の潜像要素(11B)と背景要素(11C)から成る構成で形成した。なお、第1の潜像要素(11A)は、背景要素(11C)に対して、第1のピッチ(P1)の1/3ピッチ下方へ位相をずらして形成し、第2の潜像要素(11B)は、背景要素(11C)に対して、第1のピッチ(P1)の2/3ピッチ下方へ位相をずらして形成した。また、第1の潜像部(3)の図柄(実施例1では「NPB」の文字)を複数配置して、潜像模様(5)の図柄である「A」の文字を形成し、第2の潜像部(4)の図柄(実施例1では「JPN」の文字)を複数配置して、潜像模様(5)の「A」の文字の背景を形成した。
図17に示す第2の模様(20)は、シアンインキ(TK ハイユニティネオ 東洋インキ製)を用い、オフセット印刷によって形成した。このとき、画線の幅(W2)が250μmの直線で構成される第2の要素(21)を、第2のピッチ(P2)を600μmとして、第2の要素(21)を万線状に複数配置して第2の模様(20)を形成した。
以上の構成から成る第1の模様(10)と第2の模様(20)を図24に示す第1の配置で形成し、潜像模様形成体(1)を作製した。
このようにして作製した潜像模様形成体(1)を斜めから観察すると、図24(b)に示す潜像模様(5)である「A」の文字とその背景が第2の要素(21)の色で観察された。また、潜像模様(5)の「A」の文字が観察される部分を拡大してみると図24(c)に示す第1の潜像部(3)が観察され、潜像模様(5)の「A」の文字の背景が観察される部分を拡大してみると図24(d)に示す第2の潜像部(4)が観察された。
(実施例2)
実施例2は、凹版インキを印刷して凸形状の第1の要素(11)を形成し、また、第2の要素(21)を画素で構成した潜像模様形成(1)である。実施例2は、実施例1に対して異なる点のみを説明する。
実施例2の第2の要素(21)は、図8(a)に示す文字による画素で構成した。なお、画素の幅(X2)を250μm、画素の高さ(W2)を250μm、画素のピッチ(p2)を300μmで一定のピッチとし第2の要素(21)を形成した。そして、第2のピッチ(P2)を600μmとし、第2の要素(21)を万線状に複数配置して第2の模様(20)を形成した。
このようにして作製した実施例2の潜像模様形成体(1)を、第2の模様(20)が形成された面の真上から観察すると、第2の模様(20)が観察された。このとき、第2の要素(21)を構成する画素の幅(X2)が250μmであるのに対して、画素のピッチ(p2)を300μmで形成しており、画素の間隔が50μmと小さいため、第2の模様(20)は、目視上直線による第2の要素(21)で形成された模様と同じように観察された。そこで、ルーペで拡大して第2の模様(20)を真上から観察すると、文字による画素が観察された。また、実施例1と同様に、実施例2の潜像模様形成体(1)を、斜めから観察すると、実施例1と同じ潜像を観察することができた。
このように、実施例2の潜像模様形成体(1)のように、斜めから観察したときに潜像が観察されるだけでなく、第2の要素(21)を微小な画素で形成することによって、潜像模様形成体(1)に付加的なその他の偽造防止効果をもたせることも可能である。
(実施例3)
実施例3は、実施例1に対して、凸状となる版をプレス機でプレスして、凹形状の第1の要素(11)を形成し、さらに、第3の模様(30)を形成した潜像模様形成体(1)である。実施例3は、実施例1に対して異なる点のみを説明する。
実施例3において、第2の模様(20)は、シアンインキ(TK ハイユニティネオ 東洋インキ製)を用い、オフセット印刷によって形成した。このとき、画線の幅(W2)を200μmの直線で構成し、第2のピッチ(P2)を600μmとして、第2の要素(21)を万線状に複数配置して第2の模様(20)を形成した。
第3の模様(30)は、マゼンタインキ(TK ハイユニティネオ 東洋インキ製)を用い、オフセット印刷によって形成した。その他の構成は、第2の模様(20)と同じである。
以上の構成から成る第1の模様(10)と第2の模様(20)を、第1の模様(10)が形成された基材(2)に形成し、図38(a)に示すように配置して潜像模様形成体(2)を作製した。図38(a)は、シアンインキで形成される第2の要素(21)が第1の潜像要素(11A)の全体に重なり、マゼンタインキで形成される第3の要素(31)が第2の潜像要素(11B)の全体に重なる状態を示している。
このようにして作製した潜像模様形成体(1)を斜めから観察すると、図38(b)に示す潜像模様(5)が観察され、「A」の文字は、マゼンタ色で観察され、「A」の文字の背景は、シアン色で観察された。また、潜像模様(5)の「A」の文字が観察される部分を拡大してみると、図38(c)に示すように、第1の潜像部(3)がマゼンタ色で観察され、図38(d)に示すように、第2の潜像部(4)がシアン色で観察された。
(実施例4)
実施例4は、実施例3に対して、背景要素(11C)の観察部(V)に第2の要素(21)と第3の要素(31)が重なる配置とした潜像模様形成体(1)である。実施例4は、実施例3に対して異なる点のみを説明する。
実施例4において、第2の模様(20)は、第2の要素(21)の画線の幅(W2)を250μmで形成し、第3の模様(30)は、第3の要素(31)の画線の幅(W3)を250μmで形成した。
そして、図39(a)に示すように、第2の要素(21)が第1の潜像要素(11A)の全体と、図39(a)に示す背景要素(11C)の観察部(V)の下側半分に重なり、第3の要素(31)が、第2の潜像要素(11B)の観察部(V)の全体、背景要素(11C)の観察部(V)の上側半分及び背景要素(11C)の非観察部(V’)の全体に重なるように配置した。
このようにして作製した潜像模様形成体(1)を斜めから観察すると、図39(b)に示す潜像模様(5)が観察された。このとき、潜像模様(5)の「A」の文字と「A」の文字の背景で互いに共通する背景部(6)は、第2の要素(21)の色と第3の要素(31)の色が混色した状態で観察される中、潜像模様(5)の「A」の文字に配置される第1の潜像部(3)の色が強調され、「A」の文字全体としては、シアン色で観察された。また、潜像模様(5)の「A」の文字に配置される第2の潜像部(4)の色が強調され、「A」の文字の背景全体としては、マゼンタ色で観察された。また、潜像模様(5)の「A」の文字が観察される部分を拡大してみると、図39(c)に示すように、第1の潜像部(3)がマゼンタ色で観察され、図39(d)に示すように、第2の潜像部(4)がシアン色で観察された。