JP2012087413A - 押し出しに適したAl−Mg−Si合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】押し出し性に優れたAlMgSi合金を提供する。
【解決手段】本発明は、押し出し目的に特に有用な、MgおよびSiを含有するアルミニウム合金であって、前記合金は、均一化の間に形成され、均一化後の冷却の間に多数の小さなMg2Si粒子の核化サイトとして働くAlMnFeSi分散質粒子を含み、重量%で:
Mg 0.3〜0.5;
Si 0.35〜0.6;
Mn 0.03〜0.06;
Cr 最大0.05;
Zn 最大0.15;
Cu 最大0.1;
Fe 0.08〜0.28;および
加えて、0.1重量%までの結晶粒微細化元素、および、0.15重量%までの偶発的な不純物からなることを特徴とする合金である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、押し出し目的に特に有用な、MgおよびSiを含有するアルミニウム合金であって、前記合金は、均一化の間に形成され、均一化後の冷却の間に多数の小さなMg2Si粒子の核化サイトとして働くAlMnFeSi分散質粒子を含み、重量%で:
Mg 0.3〜0.5;
Si 0.35〜0.6;
Mn 0.03〜0.06;
Cr 最大0.05;
Zn 最大0.15;
Cu 最大0.1;
Fe 0.08〜0.28;および
加えて、0.1重量%までの結晶粒微細化元素、および、0.15重量%までの偶発的な不純物からなることを特徴とする合金である。
【選択図】なし
Description
本発明は、MgおよびSiを含有するアルミニウム合金に関し、特に、高速での押し出し目的に有用である。本合金はマンガンMnを、重要な合金元素として含有する。
最も近い先行技術と考えられてよいものの中に国際公開第98/42884号パンフレット(WO98/42884)があり、AlMgSi合金中に0.02重量%を上回る濃度、好ましくは少なくとも0.03重量%で包含される場合、Mnは技術面での効果を持つと述べられている。約0.50重量%以上のSi濃度では、均一化の間にβ−AlFeSiの安定性が向上し、該AlFeSiのβからαへの金属相間形質転換が遅くなる。該AlFeSi金属相間の低い形質転換度が主張されるが、低下した押し出し性および乏しい表面仕上がりを与える。Mnを、0.02重量%を上回る濃度で加える場合のメカニズムは、該β−AlFeSi相の安定性が低下するというものである。Mnの添加はこれゆえ、該AlFeSiのβからαへの金属相間形質転換を促進し、そのサイズを小さくし、該金属間の球状化を上昇させる。以下の最小含量のMnが、Si含量の関数として提案される。
マンガン重量%=少なくとも0.3×シリコン重量%−0.12
マンガン重量%=少なくとも0.3×シリコン重量%−0.12
AlMgSi合金では、材料温度がMg2Si+Al(ss)の共融温度を超える場合、Mg2Si粒子が、周りを囲んでいるマトリックスと一緒に溶融する。これが押し出しの間に起きると、これはその表面(profile、側面など)において開裂(tearing)を引き起こし、および/または、押し出された表面の質に悪影響を及ぼすことになる。これゆえ、該材料が金型開口部に到達する時に存在し、押し出しの間にこのような溶融反応を引き起こすことがある大きなMg2Si粒子を避けることが最も重要である。
本発明を用いることで、Mnが、AlMgSi合金の押し出し性に更なる好影響(プラスの効果)を持つことが見出される。AlFeSi金属相間の形質転換を促進するのに加えて、AlMnFeSi分散質粒子が、均一化の間に形成される。これら粒子は、均一化後の冷却の間に、Mg2Si粒子の核化サイト(結晶の核となる部位)として働く。高品質ビレット(鋼片)において、均一化後の冷却の間に形成されたMg2Si粒子は、材料が金型開口部に到達する前、予備加熱および押し出し操作の間に、容易に溶解する筈である。より多数の分散質粒子を用いると、より多数のMg2Si粒子が形成され、結果的に、小さくなったサイズの各粒子を与える。Mg2Si粒子の溶解速度はそのサイズに比例しているので、高品質ビレットは、ある量のAlMnFeSi分散質粒子を含有する筈であり、相対的に多数の小さなMg2Si粒子の形成を促進し、予備加熱および押し出し操作の間に容易に溶解する。
本発明による合金は、押し出し目的に特に有用な、MgおよびSiを含有するアルミニウム合金であって、前記合金は、均一化の間に形成され、均一化後の冷却の間に多数の小さなMg2Si粒子の核化サイトとして働くAlMnFeSi分散質粒子を含み、重量%で:
Mg 0.3〜0.5;
Si 0.35〜0.6;
Mn 0.03〜0.06;
Cr 最大0.05;
Zn 最大0.15;
Cu 最大0.1;
Fe 0.08〜0.28;および
加えて、0.1重量%までの結晶粒微細化元素、および、0.15重量%までの偶発的な不純物からなることを特徴とし、添付の請求項1に定義されるとおりである。
Mg 0.3〜0.5;
Si 0.35〜0.6;
Mn 0.03〜0.06;
Cr 最大0.05;
Zn 最大0.15;
Cu 最大0.1;
Fe 0.08〜0.28;および
加えて、0.1重量%までの結晶粒微細化元素、および、0.15重量%までの偶発的な不純物からなることを特徴とし、添付の請求項1に定義されるとおりである。
従属請求項2〜3は、本発明の好ましい実施形態を定義する。
本発明は以下に、実施例により、図面を参照しながら更に記載される。
形成される分散質粒子の数は、本合金中のMn含量に依存する。図1では、一定のMg、SiおよびFe含量を有する、均一化6060タイプのような合金中の分散質粒子の数密度が、当該合金のMn含量に対してプロットされる。該密度は真の平均数密度ではないが、最大数の分散質粒子を有する領域中の数密度を表す。しかしながら、これらの数は、調べられる合金間の相対的な違いを表す筈である。
Mn含量の効果、これゆえ最大押し出しスピードでの分散質粒子の数が、更にテストに基づいて、図2において実証される。タイプ6060の2つの合金は、その測定された組成が以下の表1に与えられるが、本質的に一定な、Mg、SiおよびFe含量を有し、2つの異なるMn含量が調べられた。押し出しスピードが、ビレット温度に対してプロットされる。塗りつぶされた三角形は開裂を有する表面を表し、塗りつぶされていない三角形は良好な表面を表す。図2a)では、そのMn含量は0.03重量%であり、445℃前後の温度での最大押し出しスピードは有意に、Mn含量が0.006重量%である図2b)より速い。
両合金とも、均一化後、400℃/時間の速度で冷却された。合金1中のより多数の分散質粒子が、最大Mn含量を伴って、結果的に、合金2におけるよりも小さなMg2Si粒子を与える。最低予備加熱温度、およそ445℃において、合金2中のMg2Si粒子は溶解せず、ラム(ram、鎚)スピード12mm/秒以上において、その表面が開裂していくのが観察される。より小さな粒子サイズを有する合金1中では、Mg2Si粒子が少なくとも一部溶解し、その表面が開裂していくことは、そのラムスピードが14.5mm/秒に達するまで起こらない。更により高いMn含量では、結果的により小さなMg2Si粒子を与えたと思われ、最大押し出しスピードは恐らく、18mm/秒より速かったものと思われる。
最高予備加熱温度において、最高Mn含量を有する合金のバリエーション(variant、タイプ)が、低Mnの合金のバリエーションよりも、僅かに良好な押し出し性を示す。β−AlFeSiのα−AlFeSiへの形質転換度は、合金1に関しては94%であり、0.03重量%のMnを有し、合金2に関しては54%であり、0.006重量%のMnを有する。
更なるテスト結果が、図3に示される。この場合、6060タイプの合金が、その測定された組成が以下の表2に与えられるが、本質的に一定な、Mg、SiおよびFe含量ならびに変動するMn含量を有し、均一化温度から400℃/時間の速度で冷却された。
最低予備加熱温度において、2つのバリエーションJ6およびJ7は、最高Mn含量を有するが、より低いMn含量を有する他のバリエーションよりも良好な押し出し性を示す。説明は再度同じである:これら2種類のバリエーション中のより多数の分散質粒子が結果的に、溶解もしくは部分的に溶解するより小さなMg2Si粒子を与え、結果的に、その表面が開裂していくのが観察される前に、より速い押し出しスピードに到達する。
2つの最高予備加熱温度においては、最大押し出しスピードのこれら合金間での小さな違いのみが存在している。β−AlFeSiのα−AlFeSiへの形質転換度が、合金のバリエーションJ0〜J7に関して図4に示される。たとえ該形質転換度がバリエーションJ0およびJ1に関して、推奨される80%(前に述べたWO98/42884文献中)よりも低くても、それらは実際に、全ての合金のバリエーションの最高最大押し出しスピードを、これら2つの最高予備加熱温度において示す。
第3の実施例においても、6060の範疇内の合金を用い、本質的に一定濃度の、Mg、Si、およびFeを有しており、表3に示されるように変動している濃度のMnを有しているが、Mnの有益な効果が更に実証される。これら合金は均一化後、240℃/時間の速度で冷却された。押し出しテスト結果が、図5に示される。
低いビレット予備加熱温度に関して、開裂前の最大押し出しスピードが、そのMn濃度が0.03重量%を超過する場合に大きく速まることが見出される一方、高いビレット温度に関して、最大押し出しスピードは遅く、何はともあれ、これら合金のMn濃度により影響される。
上に示した3つの実施例全てにおいて、高予備加熱温度における最大押し出しスピードの、高Mn含量合金と低Mn含量合金との間での小さな違いのみが存在している。この理由は、そのMg2Si粒子が、最小粒子サイズを有する合金(つまり最高Mn含量)においてのみでなく全ての合金に関して、これら高ビレット温度においては溶解しているからである。より高いビレット温度では、開裂を引き起こしているメカニズムは、AlFeSi金属相と一緒のAl(ss)の融解である(この温度は非常に、該合金の固化温度に近い)。より低いビレット温度では、Al(ss)と一緒のMg2Si粒子の融解が開裂を引き起こし、これはより低いビレット出口温度において起こり、これゆえより低いスピードにおいてである。開裂を引き起こす該メカニズムが変わらない限り、最大押し出しスピードがより低いビレット温度と共に上昇することは、よく知られていることである。Mnを加えていくことは、より大きな数密度に至り、より小さな平均サイズのMg2Si粒子を有さないが、これにより、より低い予備加熱温度へと下げての、AlFeSi金属相と一緒のAl(ss)の融解である該開裂メカニズムを維持することが可能である。Mg2Si粒子の融解は、小さなMg2Si粒子を有する合金中では、低い予備加熱温度においては避けられるので、低いビレット温度の利点を利用することは可能であり、これゆえ押し出しスピードを上昇させる。
図6はスキームによるダイヤグラムを示し、ここでは最大押し出しスピードが、Al(ss)+AlFeSi金属相粒子の融解温度(〜固化温度)により、高いビレット温度では限定され、Mg2Si+Al(ss)の融解温度(共融温度)により、低いビレット温度では限定される。これら2つのメカニズム間の遷移が起こる温度T*は、この材料中のMg2Si粒子サイズに依存している。小さなMg2Si粒子サイズに関しては、該遷移温度は低温で起こり、より高いビレット温度へと向かってシフトされ、Mg2Si粒子サイズを増大させていく。
Mg2Si粒子サイズは、当該合金中のMgおよびSi含量、均一化後に冷却していく速度、Mg2Si粒子に関する核化条件のような要因に依存する。MgおよびSiが加えられ、材料の必要強度を、押し出される表面の仕上げの経時処理において与え、これゆえ変更するのが難しい。均一化後に冷却していく該速度は多かれ少なかれ、その冷却装備およびビレット直径により与えられ、冷却していく該速度の上昇は、鋳造工場中での主要な投資を必要とすることになると思われる。上で実証したように、Mg2Si粒子に関して、少量のMnを当該合金へと加えていくことにより、該核化条件を変えることができる。
上記した効果を得るために、少なくとも0.02重量%、好ましくは0.03重量%以上のMn含量が必要とされると思われる。Mnの精確な量は、合金中のMgおよびSi含量ならびに均一化後に冷却していく速度に依存するものである。高過ぎるMn含量では、AlMgSi合金は、急冷感受性になる。AlMnFeSi分散質粒子は、Mg2Si粒子の核化サイトとして振る舞うので、押し出し後のゆっくり冷却していく速度が、大量のMg2Si粒子を、押し出し後に冷却していく最中に成長させる。大きな該Mg2Si粒子は、材料強度を増強させていくことに寄与するものではないが、むしろ、MgおよびSiに関して該材料を排出し、これらは、大量のMg−Si硬化沈澱を核化させるための経時硬化プロセスにおいて使用されていて然るべきものである。結果として、該合金中での高過ぎるMn含量は、押し出された表面において、より低い強度を与えることになる。
「急冷感受性問題」のMn濃度の効果が、以下の実施例により例示される。表3の合金の押し出された表面(K0〜K4)が、550℃において溶解熱処理され、経時硬化していく前に、2つの異なる冷却していく手順に付された。
経路A:再現可能なやり方での、非硬化性Mg2Si粒子の形成に関して
・250℃まで急冷し、250℃に30秒間保ち続ける
・引き続いて、375℃まで急加熱し、375℃に2分間保ち続ける
・引き続いて、室温まで水で急冷し、室温に4時間保ち続ける
経路B:これら合金の最大経時硬化ポテンシャルを得ていくことに関して
・室温まで水で急冷し、室温に4時間保ち続ける
経路A:再現可能なやり方での、非硬化性Mg2Si粒子の形成に関して
・250℃まで急冷し、250℃に30秒間保ち続ける
・引き続いて、375℃まで急加熱し、375℃に2分間保ち続ける
・引き続いて、室温まで水で急冷し、室温に4時間保ち続ける
経路B:これら合金の最大経時硬化ポテンシャルを得ていくことに関して
・室温まで水で急冷し、室温に4時間保ち続ける
これらの冷却していく手順の後、これら表面サンプルは、185℃で5時間経時硬化された。経路Aに付されたサンプルの経時硬化応答を、経路Bに付された対応しているサンプルの経時硬化応答から差し引くことにより、合金の急冷感受性の直接測定値が、損失経時硬化ポテンシャルとして得られる。図7は、このような損失硬化ポテンシャルを降伏強度の減少により、合金K0〜K4中のMn含量の関数として示す。急冷感受性の着実な上昇が見られ、これに伴って、これら合金中のMn含量が上昇していく。
この実験は、もう1つ別の系列の合金に関して繰り返され、これらは本質的に等しい、Mg、SiおよびFe含量、ならびに、異なるMn含量を有し、表4に与えられるとおりである。粗(open)表面および凹(hollow)表面の両方が、これら合金から押し出され、これら押し出された表面からのサンプルが、上記と同じ熱処理手順に付された。図8a)およびb)は、その損失硬化ポテンシャルを降伏強度の減少により、合金L1〜L4中のMn含量の関数として、その粗表面および凹表面に関して、それぞれ示す。もう一度、急冷感受性の着実な上昇が見られ、これに伴って、これら合金中のMn含量が上昇していく。
これらの観察に鑑みると、これら合金のMn濃度へ上限を敢えて設けることが適切であり、押し出し性の望ましい上昇を、急冷感受性の最小限の上昇と共に達成するようにする。上に示したこれら3実施例の押し出し性に関して、Mnの望ましい効果が、Mn濃度に関して適切な範囲0.02重量%〜0.08重量%において達成されている。これゆえ、0.08重量%を上限として設定することが合理的である。殆どの場合、Mnの望ましい効果を、より低い上限内、例えば0.06重量%で達成すると考えられる。
急冷感受性問題のもう1つ別の態様、つまり押し出し後に冷却していく間の、AlMnFeSi分散質粒子上での(Mg、Si)粒子の過剰形成は、不動態化された表面上の外見へ及ぼす、該(Mg、Si)粒子の分布の効果である。不動態化された表面上の整った外見を維持するには、合金Mn含量へ上限を敢えて設けることが必要である。
押し出し性に関する上に示した3実施例は、より多数のAlMnFeSi分散質粒子が、AlMgSi合金の最大押し出しスピードへのプラスの効果を持つことを実証している。押し出し性へのMnのこのプラスの効果は、Mg2Si粒子の核化および成長時の該分散質粒子の効果の結果であるので、Mnは全AlMgSi合金へのプラスの効果を持ち、これらは、Si含量がおよそ0.50重量%を上回っている合金(国際公開第98/42884号参照)へのみにとどまらない。これら3実施例では、これらの合金はAA6060タイプのものであるが、そのプラスの効果は、AA6063、AA6005の範疇の合金に関しても期待され、AA6060よりも低いMn含量を有する合金に関しても同様である。
Claims (3)
- 押し出し目的に特に有用な、MgおよびSiを含有するアルミニウム合金であって、前記合金は、均一化の間に形成され、均一化後の冷却の間に多数の小さなMg2Si粒子の核化サイトとして働くAlMnFeSi分散質粒子を含み、重量%で:
Mg 0.3〜0.5;
Si 0.35〜0.6;
Mn 0.03〜0.06;
Cr 最大0.05;
Zn 最大0.15;
Cu 最大0.1;
Fe 0.08〜0.28;および
加えて、0.1重量%までの結晶粒微細化元素、および、0.15重量%までの偶発的な不純物からなることを特徴とする合金。 - Fe含量が、0.18〜0.25重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
- 押し出し前の温度が、430〜510℃であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
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