JP2012087327A - 高強度マグネシウム合金線材及びその製造方法、高強度マグネシウム合金部品、並びに高強度マグネシウム合金ばね - Google Patents

高強度マグネシウム合金線材及びその製造方法、高強度マグネシウム合金部品、並びに高強度マグネシウム合金ばね Download PDF

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Abstract

【課題】伸びと0.2%耐力を共に満足することにより、強度および加工性に優れ、しかも表面近傍で更に高い強度を備え、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する製品に用いて好適な高強度マグネシウム合金線材を提供する。
【解決手段】曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する部材に使用されるマグネシウム合金製の線材であって、線材は、その表層部が最高硬さで170HV以上の部分を有するとともに、内部が550MPa以上の0.2%耐力かつ5%以上の伸びを有する
【選択図】なし

Description

本発明は、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する製品に用いて好適な高強度マグネシウム合金線材及びその製造方法、高強度マグネシウム合金部品、並びに高強度マグネシウム合金ばねに関する。
従来、航空宇宙、車両(自動車、オートバイ、鉄道など)、医療機器、福祉機器、ロボット等の様々な分野において、機能拡充や性能向上、操作性向上等を目的に部品の軽量化要求は強い。特に、自動車をはじめとする車両分野においては、近年、環境問題を背景とした二酸化炭素排出量の低減、すなわち、燃費向上を目的としたこの軽量化に対する要求は年々厳しさを増している。
そして、車両分野を中心に部品の軽量化に対する研究は盛んであり、これまでは、組成改良や表面改質、またはそれらの組み合わせによる鋼の高強度化を中心に研究が進められてきた。たとえば、強度部品の代表であるばねについては、既にハイテン材が主流として用いられており、窒化処理やショットピーニング処理等の表面改質技術を組み合わせることで更に疲労強度を向上させ、その結果、ばねとしての軽量化が図られている。しかし、鋼では従来の組成依存による高強度化が限界に近付きつつあり、今後の大幅な軽量化が期待できないのが実情である。
そこで、さらなる軽量化に対し、チタン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金を代表とする比重の小さい軽合金への期待は大きい。中でも実用金属中で最も軽いマグネシウム合金の比重は、鋼の約1/4、チタン合金の約1/2.5、アルミニウム合金の約1/1.5とその軽量化効果は大きく、資源が豊富であることとも合わせ、市場への早期普及が望まれている。
ただし、従来の一般的なマグネシウム合金は、製品用途が限られている。この最大の原因は、従来の一般的なマグネシウム合金の強度が低いことに起因し、部品としての強度を確保するためにはこれまでの鋼部品よりも部品サイズの大型化が避けられない。すなわち、従来のマグネシウム合金は、軽量化とコンパクト化の両立が困難なため、強度部品としては未だ市場に受け入れられていないのが実情である。
このような状況を背景に、マグネシウム合金の強度部品への適用に向けた高強度マグネシウム合金の研究が盛んに行われている。例えば、特許文献1には、Mg−Al−Zn−Mn−Ca−RE(希土類元素)合金の溶湯からホイールキャスティングで固体生成物を製造し、その固体生成物を引き抜き加工で圧密化することで、0.2%耐力565MPaのマグネシウム合金部材を得られる技術が開示されている。
また、特許文献2には、Mg−X−Ln(XはCu、Ni、Sn、Znの1種または2種以上、LnはY、La、Ce、Nd、Smの1種または2種以上)合金を溶湯から急冷凝固して非晶質の箔帯とすることで、硬さ200HV以上のマグネシウム合金箔帯を得られる技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、Mg−Al−Mn合金の鋳造材または押出材を引抜加工することで、引張強度250MPa以上かつ伸び6%以上のマグネシウム合金ワイヤを得る技術が開示されている。
特開平3−90530号公報 特開平3−10041号公報 特開2003−293069号公報
これら特許文献に示される手段は、マグネシウム合金の高強度化に対して有効である。しかし、特許文献1に開示されたマグネシウム合金は、強度部品として市場の要求を満足するにはその機械的性質が充分ではない。たとえば、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用するばねへの適用を想定した場合、現行の鋼製ばねと同じサイズを維持した上で軽量化が計れるマグネシウム合金製の線材の強度としては、本発明者等の試算によれば線材内部で550MPa以上の0.2%耐力を有し、かつ線材表面近傍で650MPa以上の0.2%耐力が必要となる。また、コイルばねなどに成形するためには、線材内部で少なくとも5%以上の伸びが合わせて必要となる。ところが、特許文献1に開示されている最も強度が高い0.2%耐力565MPaの発明品は、その延性が乏しく1.6%の伸びしか有していない。一方で、特許文献1に開示されている最も延性に優れた発明品の伸びは4.7%であり、本発明において所望される値に近い伸びを有しているが、その強度は0.2%耐力で535MPaと乏しく、要求を満足できていない。
特許文献2に開示されたマグネシウム合金では、170HV以上の硬さが得られている。この硬さは、本発明者等の試算によれば、上記した線材表面で650MPa以上の0.2%耐力に相当する硬さである。しかし、特許文献2では、延性を示す特性については一切開示されていない。特許文献2に開示されたマグネシウム合金は、希土類元素を多量に含むと共に50%以上の非晶質相からなるためその延性は非常に乏しく、本発明において所望される程度の伸びが得られないことが容易に想定される。さらに、非晶質相は熱的に不安定であり、環境温度等の外因により容易に結晶化するという欠点がある。非晶質相と結晶相の混相合金はその相の割合により特性が大きく異なるため、生産において特性の均質な製品を安定して生産することに難しさがあると共に、市場における品質保証・安全保障の難しさからも工業製品への適用は不適当である。
特許文献3に開示されたマグネシウム合金では、伸びが6%以上と充分な延性を有している。しかし、引張強さが最大でも479MPaであり、上記した線材内部で550MPa以上の0.2%耐力を満足し得るものではなかった。
このように、従来のマグネシウム合金は、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する強度部品(例えば、ばね)を想定した場合に必要となる0.2%耐力と伸びを共に満足するものではなかった。したがって、本発明は、0.2%耐力と伸びというトレードオフの関係にある特性を共に満足することにより、強度および成形性(以下、特に断らない限り曲げ加工やコイリング加工等に必要な延性を意味する)に優れ、しかも更に高い表面強度を備えることで、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する製品に用いて好適な高強度マグネシウム合金線材及び高強度マグネシウム合金部品並びにそれらの製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する部材に使用されるマグネシウム合金製の線材であって、前記線材は、その表面近傍に最高硬さで170HV以上の部分を有するとともに、内部が550MPa以上の0.2%耐力と5%以上の伸びを有することを特徴とする。
線材の表面近傍とは、線材の最表面から約d/10(dは線材の直径)深さまでの範囲を示し、その表面近傍に最高硬さで170HV以上の部分を有することから、前述のように線材の表面近傍では650MPa以上の0.2%耐力を満足している。本発明では、その表面近傍から中央部へ向かうに従って強度(硬さ)は緩やかながら漸次減少するが、内部でも550MPa以上の0.2%耐力を有しており、かつ5%以上の伸びを有している。すなわち、本発明品は、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する製品に用いて好適な強度と成形性を有したマグネシウム合金である。
このように、本発明では、内部の高強度高延性域と表面近傍の更なる高強度域を有しているため、0.2%耐力と伸びというトレードオフの関係にある特性を、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する部品に対し適切な機械的性質の分布を持たせることで満足することができる。この場合、最表面部については、例えばショットピーニングにより圧縮残留応力を付与する等の表面改質が可能である。その結果、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する部品に対しては、更なる耐疲労特性の向上が可能となる。
次に、本発明の高強度マグネシウム合金線材の製造方法は、急冷凝固法によりマグネシウム合金からなる箔帯、箔片、または細線のいずれかの形態をなす出発材料を作製する工程と、出発材料を焼結により接合してビレットを成形する焼結工程と、ビレットに塑性加工を施し線材に加工する塑性加工工程とにより上記した線材を得ることを特徴とする。
本発明では、急冷凝固法によりマグネシウム合金からなる箔帯、箔片、または細線のいずれかの形態をなす後述する材料組成の出発材料を用いることが望ましい。これにより、特許文献1における一手段として記載されている比表面積の大きい粉末を用いる場合やより活性な材料組成からなる合金を用いた場合に必要とされる、出発材料の成形後における瞬時のコンテナ内への充填やキャニングのような工程が不要である。
また、本発明の高強度マグネシウム合金線材を製造する一手段としては、溶湯抽出法によりマグネシウム合金からなる細線を作製する工程と、細線を焼結により接合してビレットを成形する焼結工程と、ビレットをプレスのコンテナにそのまま装入し、該ビレットに押出加工を施す押出工程とにより上記線材を得る製造方法を採用することができる。
本発明では、キャニングしていないビレットを直接押出加工することにより、内部の高強度高延性域を得ると共に、表面近傍では更なる高強度域を得ることができる。また、内部の高強度高延性域と表面近傍の更なる高強度域は漸次的に繋がり機械的性質として明瞭な境界を有しておらず、この事は、繰り返しの応力を受ける疲労に対して特に好ましい。両領域が明瞭な境界を有していた場合には、硬度(或いは弾性歪)差によりその界面が破壊起点となる可能性が高まるが、両領域が明瞭な境界を持たずに漸次的に繋がることで、その界面が破壊起点となる危険性を回避することが可能となる。そして本発明では、ビレットをプレスのコンテナにそのまま装入するから、キャニングを行う場合と比較して工程が短縮され、安価に製造することも可能である。
本発明の高強度マグネシウム合金線材は、高い表面強度と成形性を有する。よって、曲げ応力および/またはねじり応力が主に作用する成形部品に用いることで、従来の鋼製部品と比較した場合、部品サイズの大型化が強いられずに、大幅な軽量化が可能である。具体的には、例えば、自動車部品としては、重量的に占める割合が大きいシートフレームや高強度が必要とされるばね(懸架ばね、弁ばね、クラッチトーションばね、トーションバー、スタビライザー)等において適用可能な強度と成形性を有している。
実施形態で使用する金属細線製造装置を示す断面図である。 実施形態で使用する押出装置を示す側断面図である。 本発明の実施例における各押出温度での線材の横断面における中心からの距離と硬さとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例における各材料組成での線材の横断面における中心からの距離と硬さとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例における各コンテナ内径および押出比での線材の横断面における中心からの距離と硬さとの関係を示すグラフである。
1.材料組成
マグネシウム合金における強度と延性の向上に対し、従来は第1の添加元素としてZnが主に添加されていた。しかし、Znの添加では本発明において所望される高強度と延性の両立には不十分である。そこで、第1の添加元素としては、Niを添加することが望ましい。Niは、Znと比較して高強度且つ高延性に対し作用する効果が大きい。
しかし、高強度及び高延性に大きく寄与するNiの添加をもってしても本発明が目指す高強度化を達成するのは容易ではない。そこで、第2の添加元素としてYを添加することが望ましい。Yの添加により高強度なMg−Ni−Y系の化合物相が形成される。また、YはMgに対する溶解度が高く、α−Mg相における固溶強化にも有効である。しかも、出発材料を急冷凝固法で製造することとの組み合わせにより、後述するように、さらに高強度化を達成することができる。なお、本発明におけるマグネシウム合金は、Mg、Ni、Yの3元素からの組成に限られたものでは無い。Mg、Ni、Yを主成分とし、更に結晶粒微細化や耐食性向上等を目的に第3の添加元素を添加しても良く、その場合、例えば、ZrやAl等が有効である。
Mgを主成分としNiとYを含有するマグネシウム合金を用いる場合には、原子%で、Ni:2〜5%、Y:2〜5%、残部:Mgおよび不可避不純物からなる組成にすることが望ましい。Niが2原子%未満でYが2原子%未満の場合には、表面近傍における最高硬さが所望の硬さに至らず、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する強度部品に対しては強度が十分ではない。一方、Niが5原子%を超え、且つ、Yが5原子%を超える場合には、加工性が著しく悪くなり押出加工時に破断する。これは、NiとYの添加により形成される高硬さの化合物相の量が多くなると共にその大きさが粗大化し、その結果、変形抵抗が増大すると共に靭性が低下して破断に至る。
2.出発材料の作製
上述の組成からなるマグネシウム合金の出発材料を作製する。その方法としては、単ロール法、溶融紡糸法、溶湯抽出法などの急冷凝固法を用い、箔帯、箔片、または細線のうちいずれかの形態をなすものを作製する。凝固速度の遅い一般的な鋳造法と比較して、急冷凝固法で作製した箔帯、箔片、または細線における各添加元素のα−Mg相への固溶量は多い。そのため、各元素の添加量が同じであっても、固溶強化による高強度化が図られる。また、急冷凝固法では結晶粒が微細となる。結晶粒の微細化は、強度向上に寄与すると共に延性も向上させ、固溶強化と相まって機械的性質全般の向上に有効である。
なお、一般的に急冷凝固からなる出発材料として使用されるアトマイズ法をはじめとする急冷凝固粉末は、本発明における出発材料としては不適である。Mgは活性であるため、大気に曝されると表面に極めて薄いが酸化膜が容易に形成される。比表面積の大きい粉末では、その酸化膜の総面積が本発明における箔帯、箔片、または細線と比較して非常に大きい。ここで、得られた粉末を一度大気に暴露し、次に焼結する工程を考えた場合、表面に形成された酸化層は、粉末同士における接触面での接合を阻害する。また、接合されたとしても、酸化物または酸化物が分解した酸素が多量に内部に取り込まれる。このように、比表面積の大きい粉末では、接合不良や酸化物または酸素の混入による脆化を招きやすく、箔帯、箔片、または細線を用いた場合と比較して特性が低下する。そして、この問題を回避するためには、粉末成形後瞬時のキャニング工程を要し、その結果、後述するように塑性加工(例えば押出加工)後の線材において表面近傍の高強度化を図ることは困難となる。
また、粉末状態では粉塵爆発の危険を伴うため、実用上、活性なマグネシウム合金粉末を大気中では取り扱えない。つまり、粉末を用いる際には、真空または不活性雰囲気で作製した粉末を大気に曝すことなく、連続した一連の真空または不活性雰囲気を有する装置内において銅製等の金属鞘に充填し、不活性雰囲気の場合は更に金属鞘の中を脱ガスし、その後封止するといった連続した真空プロセスまたは不活性雰囲気プロセスにおけるキャニング工程が必須となる。真空または不活性雰囲気下においてキャニングまで行う設備では、作製できる製品サイズへの制約が大きい。つまりは、本発明品の適用される製品、例えば、自動車用ばね(懸架ばね、弁ばね、クラッチトーションばね、トーションバー、スタビライザー)やシートフレームといった大きさの部品に対しては、粉末を用いた真空プロセスまたは不活性雰囲気プロセスからなる一連の連続したプロセスを工業的な量産プロセスとして成立させることは困難といえる。
図1は、出発材料を作製するため一手段である金属細線製造装置100(以下、「装置100」と略称する)の概略構成を表し、(A)は装置100全体の概略構成の側断面図、(B)は装置100で用いる回転する円板141の周縁141aの断面図である。図1(B)は、図1(A)の紙面垂直方向における側断面図である。
装置100は、溶湯抽出法を用いた金属細線の製造装置である。溶湯抽出法を用いた装置100では、ロッド状の原材料Mの上端部を溶融し、その溶融材料Maが回転する円板141の周縁141aと接触させることによって、溶湯材料Maの一部を円板円周の略接線方向に引き出すと共に急冷することでマグネシウム合金細線Fを形成する。ここで原材料MとしてはMg−Ni−Y系のマグネシウム合金を用い、例えば線径が200μm以下であるマグネシウム合金細線Fを製造する。マグネシウム合金細線Fの線径は特に限定されたものではなく、生産性やその後の工程における取り扱い性等の観点から適宜選択することが可能であり、所望する各添加元素のα―Mg相への固溶量や組織微細化に対し、線径を200μm以下の範囲とすることで十分な効果が得られる。
装置100は、図1に示すように、密閉可能なチャンバ101を備え、チャンバ101内には、原材料供給部110、原材料保持部120、加熱部130、金属細線形成部140、温度計測部150、高周波発生部160、および、金属細線回収部170が設けられている。
チャンバ101内には雰囲気より酸素や窒素等が溶融材料Maと反応することを防止するために、雰囲気ガスとして、たとえばアルゴンガスなどの不活性ガスが用いられている。原材料供給部110は、例えば、チャンバ101の底部に設けられ、原材料Mを所定速度で矢印B方向に向けて移動させて原材料保持部120へ供給する。原材料保持部120は、溶融材料Maの径方向への移動を防止する機能および原材料Mを細線形成部140の適正な位置へ案内するガイド機能を有する。
原材料保持部120は筒状部材であり、原材料供給部110と金属細線形成部140との間における円板141の下側に設けられている。加熱部130は、原材料Mの上端部を溶融することにより溶融材料Maを形成するための磁束を発生させる高周波誘導コイルである。原材料保持部120の材質としては、溶融材料Maとの反応が無い材質が望ましい。原材料保持部120の実用的な材質としては、例えば黒鉛が好適である。
細線形成部140は、回転軸142回りに回転する円板141を用いて溶融材料Maからマグネシウム合金細線Fを形成する。円板141は、例えば熱伝導率の高い銅あるいは銅合金からなる。円板141の外周部には、図1(B)に示すように、V字状をなす周縁141aが形成されている。
温度計測部150は、溶融材料Maの温度を計測する。高周波発生部160は、加熱部130に高周波電流を供給する。高周波発生部160の出力は、温度計測部150で計測された溶融材料Maの温度に基づいて調整され、溶融材料Maの温度が一定に保たれる。金属細線回収部170は、金属細線形成部140により形成された金属細線Fを収容する。
上記構成の装置においては、まず、原材料供給部110は原材料Mを矢印B方向に連続的に移動させて原材料保持部120に供給する。加熱部130は、原材料Mの上端部を誘導加熱により溶融して溶融材料Maを形成する。次いで、溶融材料Maは、矢印A方向に回転している円板141の周縁141aに向けて連続的に送出され、溶融材料Maは円板141の周縁141aに接触して、一部が円板141の円周の略接線方向へ引き出されると共に急冷されマグネシウム合金細線Fを形成する。これにより形成されたマグネシウム合金細線Fは、円板141の円周の略接線方向に伸び、その先に位置する金属細線回収部170により収容される。
3.焼結
作製した出発材は、焼結により塑性加工用のビレットに成形される。焼結の方法は、雰囲気焼結、真空焼結、或いは放電プラズマ焼結等を用い、無加圧、或いは加圧焼結で作製することができる。また、焼結後のビレットの特性や品質は、その後、塑性加工を施された製品としての特性や品質に影響する。よって、より清浄度が高く、組織が均一で気孔の少ない緻密なビレットを成形するためには、加圧機構を有しかつ真空または不活性ガス雰囲気で焼結が可能な真空ホットプレス(HP)による焼結が好ましい。真空または不活性ガス雰囲気で加熱しながら加圧することにより、気孔の殆ど存在しないビレットを得ることができる。
焼結は、例えばHPの場合は、真空容器の内部に加熱室を配置し、加熱室の内部にモールドを配置したもので、真空容器の上側に設けたシリンダから突出したプレスラムが加熱室内で上下方向に移動可能とされ、プレスラムに取り付けた上パンチがモールドに挿入されるようになっている。このように構成されたHPのモールドに、出発材であるマグネシウム合金細線Fを充填し、真空容器内を真空または不活性ガス雰囲気にして所定の焼結温度まで昇温させる。そして、モールドに挿入された上パンチによりマグネシウム合金細線Fを加圧し焼結する。
この焼結工程においては、加熱温度:250〜500℃、加熱時間:10分以上、加圧力:25MPa以上で行うことが望ましく、このような条件によりマグネシウム合金細線同士の接点における焼結が十分に進んだビレットを得ることができる。さらには、加熱温度:350〜500℃、加熱時間30分以上、加圧力40MPa以上で行うことがより望ましく、このような条件によりマグネシウム合金細線同士の接点における焼結が十分に進むと共に気孔率が10%未満の緻密なビレットを得ることができる。なお、加熱温度が250℃未満の場合は、細線同士の接点における焼結が十分に進まず、また、多くの気孔が存在する。その後の塑性加工工程を経た製品に至っても、その焼結不十分な細線同士の接点および細線同士の未焼結界面が残存し、その結果、強度の低下を招くため、加熱温度は250℃以上が好ましい。また、加熱温度が500℃を越えた場合は、細線同士の接点における焼結は十分に進み、気孔も殆ど存在しない。しかし、500℃を越えた加熱温度では組織が粗大化し、その後の塑性加工工程を経た製品に至っても所望の微細組織が得られない。その結果、本発明において所望される強度のマグネシウム合金線材を得ることは困難となるため、加熱温度は500℃以下が好ましい。
ここで、出発材料が粉末の場合には、キャニング工程における封止前に焼結することが必要となる。しかし、真空または不活性雰囲気を設ける一連の装置が大掛かりになるとともに、閉鎖された装置の中で型あるいは金属鞘への粉末の均一な充填は容易ではなく、その結果、緻密な焼結体の作製は困難となる。つまり、粉末を用いた場合は、大気暴露前にキャニングが必要であるとともに、その金属鞘内の焼結体は粉末同士の焼結が不十分であり、また、気孔が多く存在するとともに密度が不均一な焼結体となる。さらに、金属鞘を除去した場合には、表面と連通した気孔が内部まで多く存在することから内部まで大気に曝されることが避けられない。したがって、ビレットの状態としても金属鞘を除去することはできず、次の塑性加工工程においては、キャニングしたままでの加工が強いられる。
4.塑性加工
ビレットから線材への加工は、温間加工として引抜加工、圧延加工、押出加工、鍛造をはじめとする塑性加工によって行う。適切な温度と加工度(断面減少率)における塑性加工は、動的再結晶による組織微細化や加工硬化が生じ、マグネシウム合金の高強度化に有効である。中でも、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する線材に対しては、引抜加工または押出加工がより好ましい。これら塑性加工方法によれば、線材として必要不可欠な均一の断面形状が得られると共に、線材表面に内部と比較してより大きな歪みを導入することができる。その結果、線材表面近傍の組織がより微細化し、線材内部の特性とは別に表面におけるさらなる高強度化が図られる。
本来、強度と伸びはトレードオフの関係にある。これまで粉末を用いる手段等により組織の微細化を図り、高強度化を達成したマグネシウム合金は種々研究されているが、いずれも高強度な組織を有する一方で延性に課題があり、その延性の乏しさから部品形状への成形が困難であるという不都合があった。そして、粉末を用いた場合には、金属鞘を外装した状態で加工していることから、加工における歪みは最表層となる金属鞘に優先的に導入される。したがって、本発明で得られるような表面近傍高強度化の効果を得ることはできない。
また、ビレットを鋳物で作製した場合は、本発明と同等の組成を有するマグネシウム合金であっても高強度化は図れない。これは、鋳物ではもともとのα−Mg相結晶粒が粗大であるとともに、析出している化合物相も粗大であるため、変形抵抗が大きいことと歪みの蓄積が大きいことが相まって、所望する微細組織への到達前にせん断破壊に至るためである。また、α−Mg相への添加元素の固溶量も少ないため、α−Mg相の固溶強化による高強度化の効果も乏しい。これに対して、組織が微細な箔帯、箔片、または細線から作製したビレットの場合は、適正な加熱温度で焼結することにより、その焼結後の組織もまた微細であるため変形抵抗が小さい。したがって、変形能に優れていることから塑性加工においてより低温で大きな歪みを導入することが可能となり、再結晶の駆動力となる内部エネルギーを多く蓄積できるため、より微細な組織を得ることができる。また、α−Mg相への添加元素の固溶量も多いため固溶強化の効果も大きく、微細組織と相まって高強度化が図られる。
図2は、塑性加工として押出加工を採用したときに用いる押出装置200を示す図である。図2において符号205は外型、符号210は外型205に収容されたコンテナである。コンテナ210は筒状をなし、その一端面側には下型220が同軸上に配置されている。コンテナ210と下型220との間にはダイス230が配置されている。また、コンテナ210にはパンチ240が摺動自在に挿入されている。さらに、コンテナ210の外周には、ヒータ260が配置されている。
上記構成の押出装置200では、コンテナ210内に予め加熱されたビレットBが装入されると、パンチ240が下降し、ビレットBを圧縮する。圧縮されたビレットBは、ダイス230によって縮径されながら下型220内の空間に押し出されて線材が形成される。
上記のような押出装置による押出は、ビレットBの加熱温度:315〜335℃、押出比:5〜13、パンチ240の前進速度:0.01〜2.5mm/秒で行うことが望ましい。このような条件により、動的再結晶の誘発による組織微細化と歪み導入による加工硬化が適切となり、内部が高強度かつ高延性であり、表面近傍が更に高強度な高強度マグネシウム合金線材が形成される。即ち、表面近傍の最高硬さが170HV以上で、内部が550MPa以上の0.2%耐力かつ5%以上の伸びを有しており、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する強度部品に好適な高強度マグネシウム合金線材を得ることができる。
なお、ビレットBの加熱温度が315℃未満では、変形抵抗が大きいために押出加工で困難をきたし、押出加工中の破断や線材表面における肌荒れやクラックの発生を招く。また加工できた場合の線材は高強度化が進むと伴に延性が損なわれており、成形性として必要な5%以上の伸びが得られない。一方、加熱温度が335℃を越えると、動的再結晶による組織の微細化と歪み導入による加工硬化が十分ではない。その結果、所望する表面近傍での硬さが得られず、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する強度部品への適用には用いることができない。
ここで、押出加工における条件は、上記した範囲や後述する実施例での値に限定されるものではなく、内部での高強度高延性と表面近傍での更なる高強度化の確保を主眼として適切な範囲で設定されるべきものである。即ち、塑性加工における歪みの導入や動的再結晶の誘発は、材料組成、加工率、加工温度等の複雑な関係に影響され、理論、経験、実験により条件を適切に設定することで導かれるものである。
以上のようにして作製した高強度マグネシウム合金線材の表面近傍の硬さが最も高い部分のEBSD法にて測定したα−Mg相の平均結晶粒径は、1μm以下であることが望ましい。ホールペッチ則をはじめ結晶粒の微細化が高強度化に大きく寄与することは良く知られており、また、繰返し応力が掛かる疲労部品における表面での初き裂発生抑制に対しても結晶粒の微細化は有効である。後述する本発明の実施例において表面近傍の最高強度が170HV以上の製造例については、その表面近傍におけるα−Mg相の平均結晶粒径が1μm以下と非常に微細であり、耐静的強度はもとより耐疲労強度に対しても好適である。
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
まず、所定の鋳物サイズに合わせて所望するマグネシウム合金成分となるように鋳物作製用の各元素原料を秤量し、秤量した各元素原料を用いて真空溶解により鋳物を作製した。鋳物の成分を表1に示す。真空溶解では、黒鉛製の坩堝と銅合金製の金型を用いた。次に、作製した鋳物を原材料とし、図1に示す装置100を用いて溶湯抽出法により細線を成形した。溶湯抽出法による細線成形では、黒鉛製の原材料保持部と銅合金製の円板を用い、Arガス置換による不活性雰囲気において平均線径60μmの細線を成形した。
Figure 2012087327
成形した細線をキャニングせずにそのまま黒鉛製の焼結型に充填し、HPにより焼結して直径:15mm、長さ:50mmのビレットと、直径:33mm、長さ:50mmのビレットを作製した。なお、HPによる焼結は、Arガス置換による不活性雰囲気(雰囲気圧力0.08MPa)のもと、焼結温度300〜525℃、プレス圧力50MPaで行った。
図2に示す押出装置200を用い、作製したビレットを線材に加工した。具体的には、黒鉛系の潤滑剤(日本アチソン製、OILDAG−E)を用い、押出比3〜15、押出速度(パンチ240の前進速度)0.01〜5mm/分、表1に併記する押出温度300〜425℃の範囲とし、直径15mmのビレットに対しては内径16mmのコンテナ210と孔径5mmのダイス230を用い(押出比10)、直径33mmのビレットに対しては内径35mmのコンテナ210と各押出比に合わせた孔径20mm(押出比3)、孔径15.5mm(押出比5)、孔径11mm(押出比10)、孔径9.7mm(押出比13)、孔径9mm(押出比15)のダイス230をそれぞれ用いて線材を作製した。なお、比較のために鋳物のビレットについても押出加工して線材を作製した。
上記のようにして作製した線材の引張試験を行った。引張試験では、直径5mmの線材からは、平行部径1.6mmの試験片を機械加工により作製し、直径が9mm以上の線材からは、平行部径3mmの試験片を機械加工により作製した。そして、各試験片に対して万能材料試験機(インストロン製、型番5586)を用い、室温において試験速度0.5mm/分で引張試験を行った。引張試験の結果を表2に示す。
Figure 2012087327
なお、表1において「ビレット形態」とは押出前のビレットまでの製法を表し、「細線焼結体」とは細線を焼結することで作製したビレット、「鋳物」とは原材料である鋳物のままのビレットを示す。また、表1に押出結果も併記する。表1において「×」は押出加工中に破断し押出後の線材が得られなかったもの、「△」は、線材は得られたがその表層に肌荒れやクラックが目視により確認されたもの、「○」は肌荒れやクラックのない良好な線材が得られたものであることを示す。引張試験は押出結果が「△」と「○」のものについて実施した。
押出結果が「△」と「○」であった線材について硬さを測定した。硬さ測定の試験片は、押出した線材の横断面が露出するよう樹脂埋込後に機械研磨で鏡面仕上し、硬さ試験機としてビッカース硬さ試験機(フューチュアテック製、FM−600)を用い、試験荷重25gfにおいて押出材横断面における径方向の分布を測定した。硬さ測定の結果を表2および図3〜図5に示す。
表2および図3〜図5において線材の表面近傍における最大硬さが170HV以上であって引張試験により測定した内部の0.2%耐力が550MPa以上かつ伸びが5.0%以上のものが本発明の実施例(製造例4〜8,14,15,18〜20、22,25,26,28〜30)である。鋳物のビレットから作製した比較例2,3と比較すると、実施例における強度は格段に高い。線材の内部は、0.2%耐力が563MPa以上であり、かつ、伸びが5%以上の高強度高延性域を有している。また、これら実施例では、線材の表面近傍では、最大硬さが170HV以上であることから、650MPa以上の0.2%耐力を満足する更なる高強度域を有している。そして、内部の高強度高延性域と表面近傍のさらなる高強度域は漸次的に繋がり明瞭な境界を有しておらず、線材全体として強度及び靱性に優れていると共に十分な成形性を有している。
表1に示すように、製造例1,2では押出温度(ビレットの加熱温度)が低いために変形抵抗が大きく、押出加工中に破断して線材が得られなかった。また、製造例3では、線材は得られたがその表層に肌荒れやクラックの発生が見られると共に、その線材の内部は高強度化が進むと伴に延性が損なわれており、成形性として必要な5%以上の伸びが得られていない。
一方、製造例9〜12、23では、押出温度が335℃を超えているため動的再結晶による組織の微細化と歪み導入による加工硬化が十分ではない。その結果、表面近傍の最高硬さが170HV未満であり、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する強度部品への適用には表面近傍の硬さが不充分である。また、製造例13では、NiおよびYの含有量が1.0原子%と少ないため、α−Mg相における固溶強化と高強度なMg−Ni−Y系化合物相の析出量が乏しく、その結果、表面近傍の最高硬さ170HVが得られなかった。一方、製造例16では、NiおよびYの含有量が6.0原子%と多いため、NiとYの添加により形成される高強度なMg−Ni−Y系化合物相の析出量が多くかつ粗大であり、その結果、変形抵抗が大きくなると共に靭性が低下したことで、押出加工時の破断に至った。
製造例27では、押出比が13を超えているため線材の高強度化と伴にその靭性が低下し押出加工時に破断した。製造例21では、焼結温度が500℃を超えているため焼結時において高強度化に有効な相の分解と共に結晶粒の粗大化を招き、表面近傍の硬さが170HV未満となった。製造例17では、焼結温度が350℃未満のため緻密なビレットの製作が困難であった。ビレットには次の工程である塑性加工工程を経ても消滅が困難な押出後の線材としては欠陥となる細線同士の未接合界面が多く存在し、また、マグネシウム合金細線同士の接点における接合度合いも不十分であったため、硬さの向上は見られるものの、0.2%耐力や伸びについては所望される十分な特性が得られなかった。製造例31では、押出速度が2.5mm/秒を越えているため、潤滑の不十分等を招いたことで線材表面にむしれのような肌荒れが発生した。そのような肌荒れにより加工歪みは解放され、内部では600MPaの0.2%耐力かつ5.1%の伸びが確保されているものの、表面近傍の硬さは170HV未満となった。比較例1,2では、鋳物であるためα−Mg相が粗大であるとともに、析出している化合物相も粗大であった。そのため、変形抵抗が大きくしかも歪みの蓄積が大きく、比較例1では押出加工中に破断し、比較例2では押出加工によって線材の表層に肌荒れやクラックが発生した。なお、比較例3では押出温度が高いために押出加工中の破断には至らなかったが、所望される特性は得られていない。
次に、本発明の実施例と比較例3の線材について、表面近傍におけるα−Mg相の平均結晶粒径と硬さの関係を調査した。その結果を表3に示す。α−Mg相の平均結晶粒径の測定は、硬さ試験に使用した試験片をそのまま用い、FE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡、日本電子製:JSM−7000F)を利用したEBSD法(電子線後方散乱回折装置、TSL社製)にて押出した線材の横断面における表面近傍で最高硬さが得られた位置において、実施例については分析倍率10,000倍で、比較例3については分析倍率2,000倍で測定した。また、硬さについては、表面近傍の最高硬さを用いた。
Figure 2012087327
表3に示すとおり、本発明の実施例ではα−Mg相の平均結晶粒径が0.19〜0.76 μmであり、比較例3の6.76μmと比較して極めて微細である。この微細な結晶粒が表面近傍の硬さの向上に貢献していることは明らかである。
本発明の高強度マグネシウム合金線材は、曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する高強度部品に好適である。本発明の高強度マグネシウム合金線材を用いることにより、従来の鋼部品と比較した場合に部品サイズの大型化をほぼ伴うことなく大幅な軽量化が可能である。例えば、自動車部品としては、重量的に占める割合が大きいシートフレームや高強度が必要とされるばね(懸架ばね、弁ばね、クラッチトーションばね、トーションバー、スタビライザー)等において軽量化の効果は大きい。

Claims (10)

  1. 曲げ応力および/またはねじり応力が主として作用する部材に使用されるマグネシウム合金製の線材であって、前記線材は、その表面近傍で最高硬さが170HV以上の部分を有するとともに、内部が550MPa以上の0.2%耐力と5%以上の伸びを有することを特徴とする高強度マグネシウム合金線材。
  2. Mgを主成分とし、NiとYを含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度マグネシウム合金線材。
  3. 原子%で、Ni:2〜5%、Y:2〜5%、残部:Mgおよび不可避不純物からなることを特徴とする請求項2に記載の高強度マグネシウム合金線材。
  4. 前記表層部の最高硬さ部分のEBSD法にて測定した平均結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度マグネシウム合金線材。
  5. 急冷凝固法によりマグネシウム合金からなる箔帯、箔片、または細線のいずれかの形態をなす出発材料を作製する工程と、
    前記出発材料を焼結により接合し加圧してビレットを成形する焼結工程と、
    前記ビレットに塑性加工を施し線材に加工する工程とにより請求項1〜4のいずれかに記載の線材を得ることを特徴とする高強度マグネシウム合金線材の製造方法。
  6. 溶湯抽出法によりマグネシウム合金からなる細線を作製する工程と、
    前記細線を焼結により接合し加圧してビレットを成形する焼結工程と、
    前記ビレットをプレスのコンテナにそのまま装入し、該ビレットに押出加工を施す押出工程とにより請求項1〜4のいずれかに記載の線材を得ることを特徴とする高強度マグネシウム合金線材の製造方法。
  7. 前記焼結工程を、加熱温度:350〜500℃、加熱時間:10分以上、加圧力:25MPa以上で行うことを特徴とする請求項5または6に記載の高強度マグネシウム合金線材の製造方法。
  8. 前記押出工程を、加熱温度:315〜335℃、押出比:5〜13、プレスラムの前進速度:2.5mm/秒以下で行うことを特徴とする請求項請求項6または7に記載の高強度マグネシウム合金線材の製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載の高強度マグネシウム合金線材を用いたことを特徴とする高強度マグネシウム合金部品。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載の高強度マグネシウム合金線材を用いたことを特徴とする高強度マグネシウム合金ばね。
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