JP2012087192A - 熱硬化性エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

熱硬化性エポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】相溶性に優れるとともに、硬化物のガラス転移点を低下させることなく、柔軟性に優れた熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 エポキシ樹脂と、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物と、硬化剤とを含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
エポキシ樹脂は、硬いが脆いという性質を有する。エポキシ樹脂の脆さを改善するために、ベンゾオキサジン化合物を配合したエポキシ樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の樹脂組成物は、硬化物の脆さが改善されるとともに、耐熱性にも優れ、航空機などの用途で用いられている。
しかし、汎用のベンゾオキサジン化合物は、室温では硬いために、エポキシ樹脂と配合させる際に加熱により軟化させる等の作業が必要で、ハンドリング性が悪い。
ところで、種々の分野で、シリコーン鎖を有する化合物は、柔軟性を付与しうる物質として知られている。そのような物質として、例えば、シリコーンオイルにエポキシ基を導入してなるエポキシ変性シリコーン樹脂が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−269641号公報 特開2007−106852号公報
エポキシ樹脂の脆さを改善するために、上述のエポキシ変性シリコーン樹脂をエポキシ樹脂に配合することが考えられるが、この場合、両者の相溶性が重要である。一方、樹脂は、一般に、柔軟性が高くなると、ガラス転移点が顕著に低下する傾向がある。
本発明は、相溶性に優れるとともに、硬化物のガラス転移点を低下させることなく、柔軟性に優れた熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エポキシ変性シリコーン樹脂は、エポキシ基を有するにも関わらず、エポキシ樹脂と混合しても、相分離してしまうことが確認された。
そして、本発明者は、さらに鋭意研究を続けた結果、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物を相溶化剤として用いることにより、嵩高いベンゾオキサジン基があるにも関わらず、意外にも、エポキシ樹脂との相溶性が改善されることを見出した。さらに、本発明者は、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物を含有するエポキシ樹脂組成物は、硬化物の柔軟性が高いにも関わらず、ガラス転移点が低下しないことを見出した。
本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂と、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物と、硬化剤とを含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、相溶性に優れるとともに、硬化物のガラス転移点を低下させることなく柔軟性を高められる。
粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された、実施例9、比較例4および5の組成物の弾性率を示すグラフである。
以下、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物と、硬化剤とを含有する。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、エポキシ基を2個以上有するものであれば特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物)
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、エポキシ樹脂に柔軟性を付与する観点から分子中に1個以上のベンゾオキサジン基を有し、シリコーン鎖を有する化合物であれば、特に制限されない。シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、室温で液状であり、エポキシ樹脂と混合する際のハンドリング性がよく、室温で容易に混合することができる。シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、エポキシ樹脂の架橋に組み込むという観点から、2官能以上であることが好ましい。
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、エポキシ樹脂組成物を十分に硬化させられる観点から、分子の両末端にベンゾオキサジン基を有しているものが好ましい。このようなシリコーン含有ベンゾオキサジンは、出発原料として用いられるシリコーン鎖を有するアミンの入手が容易である観点からも好ましい。
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、エポキシ樹脂に柔軟性を付与する点からジメチルシロキサン単位を有するシリコーン鎖を有しているものが好ましい。ベンゾオキサジン基とシリコーン鎖は、特に限定されるものではないが、原料としてアミノ基を有するシリコーンを使用する場合の合成のしやすさを考慮すると、ベンゾオキサジン化合物の置換基はプロピル基である事が好ましい。
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物の具体例としては、エポキシ樹脂との相溶性に優れ、硬化物の柔軟性を高められる観点から、下記一般式(I)で表されるものが挙げられる。式中、nは0以上の整数である。nは、エポキシ樹脂との相溶性を十分に確保する観点から、20以下であることが好ましい。例えば、n=0,8,17の化合物が挙げられる。

(nは0以上の整数)
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知の方法(例えば、特表平9−502452号公報の実施例4参照)に従って得ることができる。
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、それぞれ単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、その配合比が、硬化物の柔軟性が十分に得られる観点から、エポキシ樹脂100重量部に対し5重量部以上であるのが好ましく、10重量部以上であるのがより好ましい。また、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物は、硬化物の十分な硬さを確保する観点から、特に、式(I)においてn=3以上である化合物を用いる場合は200重量部以下であるのが好ましい。
(硬化剤)
硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として通常使用することができるものであれば特に制限されない。例えば、フェノール系硬化剤(多価フェノール)、ジアミン、トリアミンまたはそれ以上の脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミンビスアジド、酸無水物、ジカルボン酸、ジオール、ポリアミド、ポリイソシアネート(例えばジイソシアネート)、イミダゾール類、ジシアンジアミド類などが挙げられる。中でも、イミダゾール類が好ましい。
イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−ヒドロキシメチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
硬化剤がイミダゾール類である場合、その配合比は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。
(エポキシ変性シリコーン樹脂)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分のほか、エポキシ変性シリコーン樹脂をさらに含有してもよい。
エポキシ変性シリコーン樹脂は、分子中にエポキシ基を1個以上有し、シリコーン鎖を有する化合物であれば特に制限されない。エポキシ変性シリコーン樹脂は、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物と比べ、入手がより容易であるとともにシリコーン含有ベンゾオキサジン化合物と共に配合された場合のエポキシ樹脂との相溶性により優れ、本発明のエポキシ樹脂組成物の工業的な製造に適している。
エポキシ変性シリコーン樹脂は、エポキシ樹脂に柔軟性を付与する観点から、1分子中に1つ以上のエポキシ基を有するシリコーン樹脂ならば特に問題ないが、架橋に完全に組み込むためには2つ以上エポキシ基を有するものがより好ましい。
エポキシ変性シリコーン樹脂の具体例としては、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物と共に配合する場合のエポキシ樹脂との相溶性に優れ、硬化物の柔軟性を高められる観点から、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。式中、nは0以上の整数である。nは、エポキシ樹脂との相溶性を十分に確保する観点から、25以下であることが好ましい。例えば、n=0,8,21の化合物が挙げられる。

(nは0以上の整数)
エポキシ変性シリコーン樹脂は、それぞれ単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
エポキシ変性シリコーン樹脂は、その製造について特に制限されない。例えば、オレフィン基含有シロキサンを過酸化物と反応させる方法、クロロシラン又はアセトキシシラン化合物をグリシドールと反応させてグリシジルシリコーンエーテルを生成させる方法等、従来公知の方法に従って得ることができる。また、一部のエポキシ変性シリコーン樹脂については、工業薬品として市販されている。
エポキシ変性シリコーン樹脂は、その配合比が、硬化物の柔軟性が十分に得られる観点から、エポキシ樹脂100重量部に対し5重量部以上であるのが好ましく、10重量部以上であるのがより好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物、硬化剤、エポキシ変性シリコーン樹脂の他に、必要に応じて添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、硬化促進剤、充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウムなど)、希釈剤、溶剤、顔料、可撓性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、チキソ性付与剤、分散剤が挙げられる。
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、上述したエポキシ樹脂、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物、硬化剤および必要に応じて添加されるエポキシ変性シリコーン樹脂、添加剤の各成分を室温で減圧下または窒素雰囲気下において、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分混練し、均一に分散させることによって、1液型のエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明の組成物は、例えば、エポキシ樹脂を含む第1液(主剤)と、第2液(硬化剤)とを有する2液型の組成物として製造することができる。シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物、エポキシ変性シリコーン樹脂、添加剤は、第1液及び/または第2液に加えることができる。第1液及び第2液は、それぞれ室温で減圧下または窒素雰囲気下において、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分混練し、均一に分散させることによって製造することができる。
本発明の組成物は、エポキシ樹脂の架橋に組み込む観点から、全成分を一緒に200℃で4時間硬化させるのが好ましい。
本発明において、相溶性は、エポキシ樹脂組成物の硬化前及び硬化後で、肉眼での観察の結果、相分離しているか否かによりその良否が判断される。
本発明において、ガラス転移点は、動的な粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis)におけるtanδのピーク値の温度をいう。具体的には、後述するように硬化物について貯蔵弾性率と損失弾性率を測定することにより評価される。
本発明において、柔軟性は、後述する貯蔵弾性率により評価される。
本発明の組成物は、例えば、プリント配線板の基板材料、封止剤、含浸(プリプレグ)、接着剤、塗料、コーティング材、FRP及び成形材料等に使用することができる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
(エポキシ樹脂組成物の調製)
実施例1〜9、比較例1〜5として、下記表1、表2に示す各成分を、それぞれ同表に示す配合比で混合し、エポキシ樹脂組成物を製造した。表中の各成分の数値は重量部で表す。硬化剤の量は、その活性水素の当量数を基準に算出した。

表1、表2に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・ エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名EP4100E、ADEKA社製)
・ シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物:式(I)においてn=8である化合物(略称:BZX-Si10)
・ シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物:式(I)においてn=0である化合物(略称:BZX-Si2)
・ シリコーン非含有ベンゾオキサジン化合物:下記式で表されるビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)メタン(商品名:F-a、四国化成社製)
・ エポキシ変性シリコーン樹脂(1):式(II)においてn=0である化合物(商品名:X-22-163、信越化学工業社製)
・ エポキシ変性シリコーン樹脂(2):式(II)においてn=8である化合物(商品名:KF-105、信越化学工業社製)
・ エポキシ変性シリコーン樹脂(3):式(II)においてn=21である化合物(商品名:X-22-163A、信越化学工業社製)
・ 硬化剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成社製)
上記成分のうち、式(I)においてn=8である化合物は、次のようにして調製した。シリコーン含有ジアミン(商品名:KF-8010、信越化学工業社製)10g、フェノール4.6g、パラホルムアルデヒド2.9g、トルエン200mlをフラスコに投入し、撹拌しながら120℃で2時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム、飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、エバポレータでトルエンを留去した。
また、式(I)においてn=0である化合物は、シリコーン含有ジアミン(商品名:PAM−E、信越化学工業社製)10g、フェノール14.5g、パラホルムアルデヒド9.2gを用いた点を除いて、式(I)においてn=8である化合物と同様に調製した。
なお、比較例5については、室温ではエポキシ樹脂とシリコーン非含有ベンゾオキサジン化合物とを混合できなかったため、90℃に加熱して混合した。
(評価)
得られた各エポキシ樹脂組成物について、それぞれ、下記の方法で相溶性の確認、貯蔵弾性率の測定を行い、相溶性、ガラス転移点を評価した。さらに、実施例9と、比較例4及び5について、所定の温度領域にわたる貯蔵弾性率を比較し、柔軟性を評価した。
(1)相溶性
得られた各組成物について、硬化前及び硬化後に肉眼で観察し、相分離しているか否かを確認した。表2の相溶性の欄において、○は、相分離していないことを示し、×は、相分離していることを示す。
(2)貯蔵弾性率
得られた各組成物について、200℃のオーブンにてそれぞれ4時間硬化させた。各硬化物について、動的粘弾性測定を歪み0.01%、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で、室温から200℃までの温度領域において、強制伸長加振を行って貯蔵弾性率を測定した。そして、tanδのピーク値を各組成物のガラス転移点Tgとした。
なお、表2のガラス転移点の欄において「測定不可」は、硬化物が相分離したために、動的粘弾性測定ができなかったことを意味する。
表1、表2及び図1に示す結果から明らかなように、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物を含有せず、シリコーン非含有ベンゾオキサジン化合物を含有する組成物(比較例5)は、実施例9よりも貯蔵弾性率が高く、柔軟性が悪かった。
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物を含有せず、エポキシ変性シリコーン樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物(比較例1〜3)は、硬化物が相分離し、相溶性が悪かった。
シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物及びエポキシ変性シリコーン樹脂のいずれも含有しないエポキシ樹脂組成物(比較例4)は、硬化物のガラス転移点は高いものの、貯蔵弾性率が高く、柔軟性が悪かった。
これに対し、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物を含有する組成物(実施例1〜9)は、硬化前、硬化後いずれにおいても相溶し、ガラス転移点の低下は見られなかった。また、実施例9の組成物の硬化物は、貯蔵弾性率が低く、柔軟性が高いことが分かる。他の実施例の組成物の硬化物も、比較例4,5と比べて貯蔵弾性率が低く、柔軟性が高いことが分かった。
特に、エポキシ変性シリコーン樹脂をさらに含有するエポキシ樹脂組成物(実施例7〜9)は、硬化物が相分離せず、比較例1〜3とは異なり、エポキシ変性シリコーン樹脂とエポキシ樹脂が含まれる場合の相溶性も良好であることが確認された。また、実施例7〜9は、ガラス転移点の低下も見られなかった。

Claims (5)

  1. エポキシ樹脂と、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物と、硬化剤とを含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
  2. エポキシ変性シリコーン樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
  3. 前記シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物が下記一般式(I)で表される、請求項1又は2に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
    (nは0以上の整数)
  4. 前記エポキシ変性シリコーン樹脂が下記一般式(II)で表される、請求項1から3のいずれかに記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。

    (nは0以上の整数)
  5. エポキシ樹脂100重量部に対し、シリコーン含有ベンゾオキサジン化合物が5〜250重量部含有される、請求項1から4のいずれかに記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
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