JP2012084803A - 圧粉磁心の製造方法およびこの製造方法によって得られる圧粉磁心 - Google Patents

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Abstract

【課題】高磁束密度で、機械的強度が高く、且つ鉄損が小さい圧粉磁心を製造することのできる方法を提供する。この製造方法によって得られる高性能な圧粉磁心を提供する。
【解決手段】鉄基軟磁性粉末表面に、りん酸系化成皮膜を有する圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末を圧粉成形する成形工程と、前記成形工程で得られた圧粉成形体に、酸素と飽和水蒸気圧の水とを接触させる酸化工程とを含む圧粉磁心の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、モーターのロータやステータのコア等に用いられる圧粉磁心の製造方法およびこの製造方法を用いて得られる圧粉磁心に関するものである。
電磁気部品用圧粉磁心には、鉄損が小さいことと、磁束密度が高いことが要求される。また、製造工程においてハンドリング性が良好なことや、コイルにするための巻き線の際に破損しない充分な機械的強度を有することが重要である。
これらの点を考慮して、圧粉磁心分野では、圧粉磁心の素材となる鉄粉粒子を電気絶縁物で被覆する技術が知られている。電気絶縁物で鉄粉粒子を被覆することによって鉄粉粒子間が電気絶縁物を介して接着されるため、これを用いて得られる圧粉磁心は機械的強度が向上する。
このような電気絶縁物の形成材料として耐熱性の高いシリコーン樹脂を用いる技術が開発されている。また、樹脂以外の電気絶縁物(形成材料)として、りん酸等から得られるガラス状化合物を利用する技術も古くから知られている(特許文献1)。更に本出願人は、鉄基軟磁性粉末表面に、特定の元素を含むりん酸系化成皮膜と、シリコーン樹脂皮膜とをこの順で形成することによって高磁束密度、低比抵抗、高機械的強度の圧粉磁心を提供することに成功し、既に特許を受けている(特許文献2)。
特許第2710152号公報 特許第4044591号公報
圧粉磁心の高性能化の要求は特許文献2の出願時に比べて更に高まっており、従来にも増して高機械的強度が求められている。また、圧粉磁心には、前記したように磁束密度が高く、鉄損は小さいことも要求される。
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は、高磁束密度で、機械的強度が高く、且つ鉄損が小さい圧粉磁心を製造することのできる方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、この製造方法によって得られる高性能な圧粉磁心を提供することにある。
上記課題を解決できる本発明に係る圧粉磁心の製造方法とは、鉄基軟磁性粉末表面に、りん酸系化成皮膜を有する圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末を圧粉成形する成形工程と、前記成形工程で得られた圧粉成形体に、酸素と飽和水蒸気圧の水とを接触させる酸化工程とを含む点に要旨を有している。
上記成形工程と上記酸化工程との間には、上記圧粉成形体を焼鈍する焼鈍工程を更に含んでもよい。
前記圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末は、前記りん酸系化成皮膜の上にシリコーン樹脂皮膜を有していることが好ましい。
上記製造方法によって得られる圧粉磁心は、マグネタイトの体積割合が2.0体積%以下となり、高性能な圧粉磁心となる。
本発明の製造方法によれば、磁束密度を低下させることなく、機械的強度が高く、しかも鉄損が小さい圧粉磁心を提供できる。
図1は、圧粉成形体に含まれるマグネタイト量と鉄損との関係を示すグラフである。
本発明者らは、圧粉磁心の機械的強度を高めるために鋭意検討を重ねてきた。その結果、鉄基軟磁性粉末表面に、りん酸系化成皮膜を有する圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末を圧粉成形した圧粉成形体(圧粉磁心)に、超臨界状態の水を接触させれば、圧粉磁心の機械的強度が向上することを見出し、先に特許出願を行った(特願2010−77301号)。圧粉磁心の機械的強度が向上する理由は、圧粉成形体に超臨界状態の水を接触させることによって、圧粉成形体内部に水が浸透し、圧粉成形体を構成する個々の鉄基軟磁性粉末の表面を酸化するからである。即ち、りん酸系化成皮膜が水由来の酸素を介して鉄基軟磁性粉末表面と強固な結合を形成することになるため、鉄基軟磁性粉末同士の結合力が向上し、圧粉磁心の機械的強度が向上するのである。
また、本発明者らは、超臨界状態の水の代わりに亜臨界状態の水を圧粉成形体に接触させても同様の作用効果が発揮され、圧粉磁心の機械的強度を向上できることを見出し、先に特許出願を行った(特願2010−39131号)。
ところがその後、圧粉成形体に亜臨界状態の水を接触させると、圧粉成形体の鉄損が大きくなることが新たに明らかとなった。そこでその原因について種々検討したところ、鉄損が大きい圧粉成形体はマグネタイトを多く含むものであることが分かった。マグネタイトは、磁性体で、しかも半導体であるため、絶縁性を劣化させる方向に作用し、鉄損を増大させたと考えられる。そのため圧粉磁心の機械的強度を高めたうえで鉄損を小さくするには、マグネタイトの生成を抑制すれば良いと考えられた。
そこで本発明者らは、マグネタイトの生成を抑制しつつ圧粉成形体を構成する個々の鉄基軟磁性粉末表面を酸化させるために更に検討を重ねた。
Fe−O状態図によれば、鉄を570℃以下の温度域で加熱すると、マグネタイト(Fe34)が生成することが読み取れる。しかし、Fe−O状態図に基づいても、570℃以下の温度域でマグネタイト以外の酸化物が生成するかどうかは全く不明である。一方、鉄の酸化物としては、マグネタイト(Fe34)の他、ウスタイト(FeO)やヘマタイト(Fe23)がある。そしてヘマタイトは、磁性体であるが、半導体にはならず、絶縁性を劣化させないことが知られている。そこで、本発明者らは、570℃以下の温度域でも酸化が一層進めば、マグネタイト(Fe34)がヘマタイト(Fe23)に変化するのではないかと考えた。そして、こうした反応を進めるには、飽和水蒸気圧の水に酸素ガスを添加すればよいことを初めて見出し、本発明を完成したのである。以下、本発明を詳細に説明する。
なお、電磁軟質複合体部品の製造方法を開示する文献として、特開2008−544520号公報が知られている。この公報には、成形体に300〜600℃の温度で水蒸気処理することが記載されている。しかしこの公報には酸化物の種類について何も記載されておらず、マグネタイトをヘマタイトに変化させるという技術的思想については全く開示も示唆もされていない。
[鉄基軟磁性粉末]
本発明で用いる鉄基軟磁性粉末は、強磁性体の鉄基粉末であり、具体的には、純鉄粉、鉄基合金粉末(例えば、Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイなど)、および鉄基アモルファス粉末等が挙げられる。これらの鉄基軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法によって溶融鉄(または溶融鉄合金)を微粒子とした後に還元し、次いで粉砕する等によって製造できる。このような製法では、篩分け法で評価される粒度分布で累積粒度分布が50%になる粒径(メジアン径)が20〜250μm程度の鉄基軟磁性粉末が得られるが、本発明で用いる鉄基軟磁性粉末は、粒径(メジアン径)が50〜150μm程度であることが好ましい。
本発明で用いる圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末(以下、「圧粉成形体用鉄粉」ということがある。)は、鉄基軟磁性粉末の表面に、りん酸系化成皮膜を有している。この皮膜により鉄基軟磁性粉末に電気絶縁性を付与することができる。
[りん酸系化成皮膜]
上記りん酸系化成皮膜は、Pを含む化合物を用いて形成されるガラス状の皮膜であり、その組成は特に限定されるものではない。例えば、上記P以外に、更にCo、Na、S、Cs、およびAlよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む化合物を用いて形成されるガラス状の皮膜であることが好ましい。これらの元素は、酸素が熱処理(焼鈍)時にFeと半導体を形成して比抵抗を低下させるのを抑制するからである。上記化合物は、より好ましくはCo、Na、およびSを含む化合物や、Csおよび/またはAlを含む化合物である。
上記元素の含有率は、圧粉成形体用鉄粉100質量%中の量として、Pは0.005〜1質量%、Coは0.005〜0.1質量%、Naは0.002〜0.6質量%、Sは0.001〜0.2質量%、Csは0.002〜0.6質量%、Alは0.001〜0.1質量%であることが好ましい。なお、Co、Na、およびSを併用する場合や、CsとAlとを併用する場合も、それぞれをこの範囲内とすることが好ましい。
上記元素のうち、Pは酸素を介して鉄基軟磁性粉末表面と化学結合を形成する。従って、P量が0.005質量%未満の場合には、鉄基軟磁性粉末表面とりん酸系化成皮膜との化学結合量が不十分となり、強固な皮膜を形成しないおそれがあり好ましくない。一方、P量が1質量%を超える場合には、化学結合に関与しないPが未反応のまま残留し、かえって結合強度を低下させるおそれがあり好ましくない。
上記元素のうち、Co、Na、S、Cs、Alは、焼鈍工程を行う場合にFeと酸素が半導体を形成するのを阻害して比抵抗が低下するのを抑制する作用を有する元素である。これらの元素のうちCo、Na、およびSは、2種以上を複合添加することによってその効果が最大限に発揮される。また、CsとAlは、Co、Na、およびSを複合添加することによる効果を一層増大させるために作用する元素である。CsとAlはいずれか一方でも構わないが、各元素の下限値は、Co、Na、およびSを複合添加することによる効果を増大させるための最低量を意味している。また、Co、Na、S、Cs、Alは、必要以上に添加量を増やしても複合添加時に相対的なバランスを維持できなくなるほか、酸素を介したPと鉄基軟磁性粉末表面との化学結合の生成を阻害すると考えられる。
上記りん酸系化成皮膜には、更に、MgやBが含まれていてもよい。これらの元素の含有率は、圧粉成形体用鉄粉100質量%中の量として、Mg、B共に、0.001〜0.5質量%であることが好適である。
上記りん酸系化成皮膜の膜厚は、1〜250nm程度が好ましい。膜厚が1nmより薄いと絶縁効果が発現しないことがある。一方、膜厚が250nmを超えると、絶縁効果が飽和する上、圧粉成形体の高密度化の点からも望ましくない。より好ましい膜厚は10〜50nmである。
[りん酸系化成皮膜の形成方法]
本発明で用いる圧粉成形体用鉄粉は、いずれの態様で製造されてもよいが、例えば、水および/または有機溶剤からなる溶媒にPを含む化合物を溶解させた溶液と、鉄基軟磁性粉末とを混合した後、必要に応じて前記溶媒を蒸発させて得ることができる。
上記溶媒としては、水や、アルコールやケトン等の親水性有機溶剤、及びこれらの混合物が挙げられる。また、上記溶媒には公知の界面活性剤を添加してもよい。
上記Pを含む化合物としては、例えば、オルトりん酸(H3PO4)が挙げられる。また、上記りん酸系化成皮膜にCo等の元素を含有させるためには、例えば、Co3(PO42(CoおよびP源)、Co3(PO42・8H2O(CoおよびP源)、Na2HPO4(PおよびNa源)、NaH2PO4(PおよびNa源)、NaH2PO4・nH2O(PおよびNa源)、Al(H2PO43(PおよびAl源)、Cs2SO4(CsおよびS源)、H2SO4(S源)、MgO(Mg源)、H3BO3(B源)等の化合物が使用可能である。これらのなかでも、NaH2PO4(りん酸二水素ナトリウム塩)をP源やNa源として用いると、得られる圧粉成形体の密度、強度、比抵抗がバランス良く優れるものとなる。
鉄基軟磁性粉末に対するPを含む化合物の添加量は、形成されるりん酸系化成皮膜の組成が上記の範囲になるように調整すればよい。例えば、固形分が0.01〜10質量%程度となるように調製したPを含む化合物や必要に応じて皮膜に含ませようとする元素を含む化合物の溶液を、鉄基軟磁性粉末100質量部に対して1〜10質量部程度添加して、公知のミキサー、ボールミル、ニーダー、V型混合機、造粒機等の混合機で混合することによって、形成されるりん酸系化成皮膜の組成を上記の範囲内にすることができる。
また必要に応じて、上記混合工程の後、大気中、減圧下、または真空下で、150〜250℃で乾燥してもよい。乾燥後には、目開き200〜500μm程度の篩を通過させてもよい。上記工程を経ることで、りん酸系化成皮膜が形成された圧粉成形体用鉄粉が得られる。
[シリコーン樹脂皮膜]
本発明の圧粉成形体用鉄粉は、前記りん酸系化成皮膜の上に、更にシリコーン樹脂皮膜を有していることが推奨される。これにより、シリコーン樹脂の架橋・硬化反応終了時(圧縮時)には、粉末同士が強固に結合する。また、耐熱性に優れたSi−O結合を形成して熱的安定性に優れた絶縁皮膜となる。
上記シリコーン樹脂としては、硬化が遅いものでは粉末がべとついて皮膜形成後のハンドリング性が悪いので、二官能性のD単位(R2SiX2:Xは加水分解性基)よりは、三官能性のT単位(RSiX3:Xは前記と同じ)を多く持つものが好ましい。しかし、四官能性のQ単位(SiX4:Xは前記と同じ)が多く含まれていると、予備硬化の際に粉末同士が強固に結着してしまい、後の成形工程が行えなくなるため好ましくない。よって、シリコーン樹脂のT単位は60モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、全てT単位であることが最も好ましい。
ところで、上記シリコーン樹脂としては、上記Rがメチル基またはフェニル基となっているメチルフェニルシリコーン樹脂が一般的で、フェニル基を多く持つ方が耐熱性は高いとされている。しかし、本発明で推奨するような高温の熱処理(焼鈍)条件では、フェニル基の存在はそれほど有効とは言えなかった。フェニル基の嵩高さが、緻密なガラス状網目構造を乱して、熱的安定性や鉄との化合物形成阻害効果を逆に低減させるのではないかと考えられる。よって、本発明では、メチル基が50モル%以上のメチルフェニルシリコーン樹脂(例えば、信越化学工業社製のKR255、KR311等)を用いることが好ましく、70モル%以上(例えば、信越化学工業社製のKR300等)がより好ましく、フェニル基を全く持たないメチルシリコーン樹脂(例えば、信越化学工業社製のKR251、KR400、KR220L,KR242A、KR240、KR500、KC89等や、東レ・ダウコーニング社製のSR2400等)が最も好ましい。なお、シリコーン樹脂(皮膜)のメチル基とフェニル基の比率や官能性については、FT−IR等で分析可能である。
上記シリコーン樹脂皮膜の付着量は、りん酸系化成皮膜とシリコーン樹脂皮膜とがこの順で形成された圧粉成形体用鉄粉を100質量%としたとき、0.05〜0.3質量%となるように調整することが好ましい。0.05質量%より少ないと、絶縁性に劣り、電気抵抗が低くなるが、0.3質量%より多く加えると、得られる圧粉成形体の高密度化が達成しにくい。
上記シリコーン樹脂皮膜の厚みとしては、1〜200nmが好ましい。より好ましい厚みは20〜150nmである。
また、上記りん酸系化成皮膜と上記シリコーン樹脂皮膜の合計厚みは250nm以下とすることが好ましい。合計厚みが250nmを超えると、磁束密度の低下が大きくなることがある。
[シリコーン樹脂皮膜の形成方法]
上記シリコーン樹脂皮膜の形成は、例えば、シリコーン樹脂をアルコール類や、トルエン、キシレン等の石油系有機溶剤等に溶解させたシリコーン樹脂溶液と、りん酸系化成皮膜が形成された鉄基軟磁性粉末(以下、便宜上、単に「りん酸系化成皮膜形成鉄粉」と称する場合がある。)とを混合し、次いで必要に応じて前記有機溶剤を蒸発させることによって行うことができる。
上記りん酸系化成皮膜形成鉄粉に対するシリコーン樹脂の添加量は、形成されるシリコーン樹脂皮膜の付着量が上記の範囲になるように調整すればよい。例えば、前記したりん酸系化成皮膜形成鉄粉100質量部に対し、固形分が大体2〜10質量%になるように調製した樹脂溶液を0.5〜10質量部程度添加して混合し、これを乾燥すればよい。樹脂溶液が0.5質量部より少ないと混合に時間がかかったり、皮膜が不均一になるおそれがある。一方、樹脂溶液が10質量部を超えると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不充分になるおそれがある。樹脂溶液は適宜加熱しておいても構わない。混合機は前記したものと同様のものが使用可能である。
乾燥工程では、用いた有機溶剤が揮発する温度で、かつ、シリコーン樹脂の硬化温度未満に加熱して、有機溶剤を充分に蒸発揮散させることが望ましい。具体的な乾燥温度としては、上記したアルコール類や石油系有機溶剤の場合は、60〜80℃程度が好適である。乾燥後には、凝集ダマを除くために、目開き300〜500μm程度の篩を通過させておくことが好ましい。
乾燥後には、シリコーン樹脂皮膜が形成された鉄基軟磁性粉末(以下、便宜上、単に「シリコーン樹脂皮膜形成鉄粉」と称する場合がある。)を加熱して、シリコーン樹脂皮膜を予備硬化させることが推奨される。予備硬化とは、シリコーン樹脂皮膜の硬化時における軟化過程を粉末状態で終了させる処理である。この予備硬化処理によって、温間成形時(100〜250℃程度)にシリコーン樹脂皮膜形成鉄粉の流れ性を確保することができる。具体的な手法としては、シリコーン樹脂皮膜形成鉄粉を、このシリコーン樹脂の硬化温度近傍で短時間加熱する方法が簡便であるが、薬剤(硬化剤)を用いる手法も利用可能である。予備硬化と、硬化(予備ではない完全硬化)処理との違いは、予備硬化処理では、粉末同士が完全に接着固化することなく、容易に解砕が可能であるのに対し、粉末の成形後に行う高温加熱硬化処理では、樹脂が硬化して粉末同士が接着固化する点である。完全硬化処理によって圧粉成形体の強度が向上する。
上記したように、シリコーン樹脂を予備硬化させた後、解砕することで、流動性に優れた粉末が得られ、圧粉成形の際に成形型へ、砂のようにさらさらと投入することができるようになる。予備硬化させないと、例えば温間成形の際に粉末同士が付着して、成形型への短時間での投入が困難となることがある。実操業上、ハンドリング性の向上は非常に有意義である。また、予備硬化させることによって、得られる圧粉磁心の比抵抗が非常に向上することが見出されている。この理由は明確ではないが、硬化の際の鉄粉との密着性が上がるためではないかと考えられる。
上記予備硬化を短時間加熱法によって行う場合、100〜200℃で5〜100分の加熱処理を行うとよい。130〜170℃で10〜30分がより好ましい。予備硬化後も、前記したように、篩を通過させておくことが好ましい。
[成形工程]
上記圧粉成形体用鉄粉を圧粉成形することによって圧粉成形体が得られる。圧粉成形法は特に限定されず、従来公知の方法が採用可能である。圧粉成形の好適条件は、面圧で、490〜1960MPa、より好ましくは790〜1180MPaである。特に、980MPa以上の条件で圧縮成形を行うと、最終的な密度が7.50g/cm3以上である圧粉磁心を得やすく、高強度で磁気特性(磁束密度)の良好な圧粉磁心が得られるため好ましい。成形温度は、室温、温間(例えば、100〜250℃)いずれも可能である。温間成形は、型潤滑成形で行う方が、より高強度の圧粉磁心が得られるため好ましい。圧粉磁心の強度の目安としては、後述する実施例における測定方法で測定した抗折強度が、60MPa以上が好ましく、80MPa以上がより好ましい。
[潤滑剤]
上記成形工程では、潤滑剤を用いてもよい。潤滑剤の作用により、圧粉成形体用鉄粉を圧縮成形する際の鉄粉間、あるいは鉄粉と成形型内壁間の摩擦抵抗を低減でき、成形体の型かじりや成形時の発熱を防止できる。このような効果を有効に発揮させるためには、上記潤滑剤を圧粉成形体用鉄粉に対して0.2質量%以上含有させることが好ましい。しかし、潤滑剤量が多くなると、圧粉成形体の高密度化に反するため、0.8質量%以下にとどめることが好ましい。また、圧縮成形する際に、成形型内壁面に潤滑剤を塗布した後、成形するような場合(型潤滑成形)には、0.2質量%より少ない潤滑剤量でも構わない。
上記潤滑剤としては、従来から公知のものを使用すればよく、具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸の金属塩粉末、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、脂肪酸アミド、パラフィン、ワックス、天然または合成樹脂誘導体等が挙げられる。ポリヒドロキシカルボン酸アミドとしては、WO2005/068588号公報に記載のCmm+1(OH)m−CONH−Cn2n+1(mは2または5、nは6から24の整数)などが利用可能である。
[酸素と飽和水蒸気圧の水とを接触させる酸化工程]
本発明の製造方法は、成形工程で得られた圧粉成形体に、酸素と、飽和水蒸気圧の水との混合物を接触させる工程(以下、酸化工程ということがある。)を含むところに最大の特徴がある。
上記圧粉成形体に飽和水蒸気圧の水を接触させることによって圧粉成形体内部に水を浸透させることができ、圧粉成形体を構成する個々の鉄基軟磁性粉末の表面を酸化させることができる。その結果、鉄基軟磁性粉末を被覆するりん酸系化成皮膜が、この水由来の酸素を介して鉄基軟磁性粉末表面と強固な結合を形成し、圧粉成形体の機械的強度が向上する。
そして本発明では、上記飽和水蒸気圧の水と併せて酸素を接触させることによって、鉄基軟磁性粉末の表面にマグネタイトが生成するのを抑制できる。マグネタイトの生成を抑制できる機構は明らかになっていないが、飽和水蒸気圧の水と併せて酸素を接触させることによって、鉄基軟磁性粉末の表面に形成される酸化物の酸化を促進することができ、鉄基軟磁性粉末表面に形成されたマグネタイトがヘマタイトへと更に酸化され、マグネタイト(Fe34)の存在量が低減すると考えている。このようにマグネタイト量を低減してヘマタイトを積極的に生成させることによって、圧粉成形体の鉄損を小さくできる。
また、このように鉄基軟磁性粉末の表面にヘマタイトを積極的に生成させた場合であっても圧粉成形体の磁束密度は低下しないことも判明した。
上記圧粉成形体に、酸素および飽和水蒸気圧の水とを接触させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、酸素および飽和水蒸気圧の水が存在する環境下に圧粉成形体を曝すことによって行えばよい。具体的には、圧粉成形体を耐圧容器内に入れ密封した後、空気を入れて加圧する。次に、水を入れてから耐圧容器内を所定の温度と圧力に加熱、加圧して圧粉成形体を酸素と飽和水蒸気圧の水が存在する環境下に曝せばよい。なお、耐圧容器内に入れる水の量は、加熱温度における飽和水蒸気量とする。
上記圧粉成形体と接触させるときの水の圧力は飽和水蒸気圧とする。飽和水蒸気圧未満では、圧粉成形体内部に充分な量の水を浸透させることができない。
上記耐圧容器内の圧力は、飽和水蒸気圧以上とする。例えば、耐圧容器内の温度を300℃に設定する場合は、圧力は10MPa以上とすることが好ましく、より好ましくは20MPa以上である。このとき水の飽和水蒸気圧は8.58MPaである。上記耐圧容器内の圧力の上限は特に限定されないが、設備上の制約により、50MPa程度である。
上記耐圧容器内の圧力は、空気、酸素ガス、不活性ガス、或いは空気や酸素ガスと不活性ガスの混合ガスによって調整すればよい。
上記耐圧容器内の酸素ガス濃度は、1体積%以上とすることが好ましく、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上である。しかし酸素ガス濃度が50体積%を超えると鉄基軟磁性粉末の表面に形成される酸化膜の生成速度が却って小さくなる。従って酸素ガス濃度は50体積%以下とすることが好ましく、より好ましくは30体積%以下とする。なお、酸素ガス濃度は、耐圧容器内の圧力を調整するために入れるガスに含まれる酸素量によって調整すればよい。
上記圧粉成形体に、酸素および飽和水蒸気圧の水を接触させる温度は、200℃以上とすることが好ましく、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは280℃以上である。接触温度が低過ぎると圧粉成形体中の鉄基軟磁性粉末を酸化させることが困難となる。一方、接触温度は370℃以下であることが好ましく、より好ましくは340℃以下である。接触温度が高過ぎるとマグネタイトの生成量が多くなり過ぎてヘマタイトに酸化させることができず、鉄損が低下する傾向がある。
上記圧粉成形体に、酸素および飽和水蒸気圧の水を接触させる時間は、10分以上が好ましく、より好ましくは100分以上、更に好ましくは200分以上、最も好ましくは240分(4時間)以上である。また、接触時間は、24時間以下が好ましく、より好ましくは15時間以下、更に好ましくは12時間以下である。これにより圧粉成形体内部まで水を充分に浸透させて、鉄基軟磁性粉末表面を酸化できる。
本発明においては、酸化工程の後、圧粉成形体を乾燥させることが好ましい(乾燥工程)。
乾燥条件は、その目的を達成することができれば特に限定されるものではない。例えば、上記酸化工程の後、150〜200℃程度に冷却してから水蒸気を排出し、容器内の温度を100〜300℃に維持しつつ、容器内に不活性ガスを30分〜2時間流通させることによって行う方法が挙げられる。
上記酸化工程または上記乾燥工程で用いることの出来る不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスの他、ヘリウムガスやアルゴンガス等の希ガスが挙げられる。これらの不活性ガスは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、用いる不活性ガスには、各工程の目的を阻害しない範囲において、不活性ガス以外の他のガスが含まれていてもよい。好ましい不活性ガスは、純度99%以上の窒素ガスである。
[焼鈍工程]
本発明では、歪み取りのための焼鈍(以下、焼鈍工程ということがある。)を行ってもよい。焼鈍工程は、成形工程の後、酸化工程の前に行う。酸化工程の後に焼鈍工程を行うと、得られる圧粉磁心の比抵抗が極端に低下してしまうからである。
上記焼鈍工程は温度500℃以上、時間20分以上で行うことが好ましい。500℃よりも低温の場合や、20分よりも時間が短い場合は、成形によって発生したヒステリシス損の増加を充分に低減させることができない。
焼鈍温度は520℃以上が好ましく、540℃以上がより好ましい。焼鈍温度の上限は特に限定されないが、鉄粉表面のりん酸系化成皮膜(絶縁皮膜)は加熱に伴って薄肉化する傾向があるため、りん酸系化成皮膜の薄膜化を抑制するには、700℃以下とすることが好ましく、650℃以下がより好ましい。
焼鈍時間は25分以上が好ましく、27分以上がより好ましい。歪み取りの点からは焼鈍時間は長い方が好ましいが、長時間に亘って高温の熱処理を行うと上記したように、りん酸系化成皮膜の薄肉化が生じて絶縁性が低下する。従って焼鈍時間は、例えば、180分以下が好ましく、60分以下がより好ましく、35分以下が特に好ましい。
なお、焼鈍の際の雰囲気は特に限定されないが、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
上記した条件で歪み取りの焼鈍を行うと、渦電流損(保磁力に相当する)を増大させることなく、高い電気絶縁性、すなわち、高い比抵抗を有する圧粉磁心を製造することができる。
[圧粉磁心]
上記圧粉成形体を酸化処理した後は、冷却して常温に戻せば本発明の圧粉磁心が得られる。
上記圧粉磁心の鉄損は、47W/kg以下であることが好ましく、より好ましくは45W/kg以下である。圧粉磁心の鉄損は、後記するように自動磁気測定装置によって測定できる。
本発明で得られる圧粉磁心は、モーターのロータやステータのコアとして利用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。但し、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。
鉄基軟磁性粉末として純鉄粉(神戸製鋼所製「アトメル300NH」;平均粒径80〜100μm)を準備し、粉末表面に、りん酸鉄化成皮膜を形成した。具体的には、目開き300μmの篩を通した上記純鉄粉1kgに、りん酸鉄化成皮膜用処理液50mlを添加し、V型混合機を用いて30分以上混合した後、大気中、200℃、30分間乾燥し、再度目開き300μmの篩を通してりん酸鉄化成皮膜付き鉄基軟磁性粉末を得た。りん酸鉄化成皮膜用処理液としては、りん酸(H3PO4)を1.5質量%含む水溶液を用いた。
次に、メチル基が100モル%、T単位が100モル%であるシリコーン樹脂「KR220L」(信越化学工業社製)をトルエンに溶解させて、4.8%の固形分濃度の樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液を上記りん酸鉄化成皮膜付き鉄基軟磁性粉末に対して樹脂固形分が0.05%となるように添加混合し、オーブン炉で大気中、75℃、30分間加熱して乾燥した後、再度目開き300μmの篩を通した。その後、150℃で30分間、予備硬化を行い、シリコーン樹脂皮膜付き鉄基軟磁性粉末(圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末)を得た。
続いて、潤滑剤として、ポリヒドロキシカルボン酸アミドとしてのC56(OH)5−CONH−C1837が70%、脂肪酸アミドとしてのC1531(OH)5−CONH−C1835が30%(いずれも日本精化社製)となるように混合したものを上記圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末に対して0.2%となるように添加して混合した後、これを板状またはリング状の金型に入れ、面圧1176MPaで室温(25℃)での圧粉成形を行った。板状圧粉成形体の寸法は、31.75mm×12.7mm、高さ約5mmである。リング状圧粉成形体の寸法は、外径45mm×内径33mm、厚み5mmである。その後、550℃で30分間、窒素ガス雰囲気下で焼鈍した。550℃に加熱するときの昇温速度は約10℃/分とした。
焼鈍後の圧粉成形体を炉冷した後、下記(a)〜(c)のいずれかの処理を行った。
[(a)常圧水蒸気処理]
焼鈍後の圧粉成形体を割型管状炉に入れ、アルゴンガスを30分間通気してから300℃まで昇温した。300℃に昇温した時点で雰囲気ガスをアルゴンガスから水蒸気に切り替え、24時間保持した。24時間後、雰囲気ガスを水蒸気からアルゴンガスに切り替えて3分間保持した。保持後、割型管状炉を開放して炉冷してから圧粉成形体を取り出した。
[(b)亜臨界水処理]
焼鈍後の圧粉成形体を耐圧容器に入れ、耐圧容器内を1MPaにし、窒素ガスでパージを3回行った。その後、常圧に戻してから純水を耐圧容器に入れ、断熱材を巻いた熱線ヒーターで耐圧容器内を120℃に加熱すると共に、耐圧容器内の窒素ガスを120℃の水蒸気でパージして排出した。次に、断熱材を巻いた熱線ヒーターで耐圧容器内を300℃に加熱すると共に、プランジャータイプの高圧ポンプで水蒸気を送り、耐圧容器内を29MPaにして耐圧容器内の水を亜臨界状態にした。この状態で6時間または12時間保った後、200℃まで炉冷して耐圧容器内の温度を下げたところ、圧力が下がり、耐圧容器内の亜臨界状態の水は水蒸気となった。耐圧容器内の水蒸気を窒素ガスでパージして排出した後、耐圧容器内に窒素ガスを少量流しながら、200℃で1時間保持して圧粉成形体を乾燥し、炉冷後、圧粉成形体を取り出した。
[(c)酸素および飽和水蒸気圧の水と接触させる処理(酸化工程)]
焼鈍後の圧粉成形体を耐圧容器に入れた後、耐圧容器内に空気を入れて12MPaに加圧した。その後、プランジャータイプの高圧ポンプで純水18.9gを耐圧容器に入れ、断熱材を巻いた熱線ヒーターで耐圧容器内を300℃に加熱し、適宜放圧し、耐圧容器内を29MPaにした。このとき耐圧容器内における水蒸気の圧力は、飽和水蒸気圧(8.58MPa)であった。また、耐圧容器内の酸素濃度は15.5体積%であった。この状態で6時間保った後、200℃まで炉冷して耐圧容器内の温度を下げ、耐圧容器内の水蒸気を窒素ガスでパージして排出した後、耐圧容器内に窒素ガスを少量流しながら、200℃で1時間保持して圧粉成形体を乾燥し、炉冷後、圧粉成形体を取り出した。
上記(a)〜(c)のいずれかの処理を行なって得られた圧粉成形体について、密度、磁束密度、鉄損、抗折強度、マグネタイトの体積割合を夫々以下の手順で測定し、その結果を下記表1に示す。なお、比較対象として、上記処理を行っていない焼鈍後の圧粉成形体についても同様の測定を行い、その結果を下記表1に併せて示す。
[密度]
板状圧粉成形体の大きさおよび質量を測定し、密度を計算した。
[磁束密度]
リング状圧粉成形体に1次巻き線400ターン、2次巻き線25ターンの巻き線を行い、理研電子製のB−H特性自動記録装置「BHS−40S」を用い、励磁磁場10000A/mでの磁束密度を測定した。
[鉄損]
上記磁束密度の測定に用いた試験片と同じ巻き線を行った試験片を用い、横河電機製の自動磁気測定装置によって、励磁磁束密度1.0T、周波数400Hzで鉄損を測定した。
[抗折強度]
圧粉成形体の機械的強度は抗折強度を測定して評価した。抗折強度は、板状圧粉成形体を用いて抗折強度試験を行って測定した。試験は、JPMA M 09−1992(日本粉末冶金工業会;焼結金属材料の抗折力試験方法)に準拠した3点曲げ試験を行った。抗折強度の測定には引張試験機(島津製作所製「AUTOGRAPH AG−5000E」)を用い、支点間距離を25mmとして測定を行った。
[マグネタイト(Fe34)の体積割合]
圧粉成形体に含まれるマグネタイトの体積割合は、上記抗折強度試験後の試験片を用いて測定した。具体的には、抗折強度試験によって破断して露出した面にX線を照射してX線回折測定を実施し、マグネタイトの体積割合を測定した。測定装置としては、理学電機製のX線解析装置「RAD−RU300」を用いた。CoターゲットおよびモノクロメータによりKα線を使用し、測定角度(2θ)15〜110°で測定した。Fe34由来のピーク面積とFe由来のピーク面積についてピークフィッティングを施し、マグネタイト(Fe34)の体積割合を求めた。
図1に圧粉成形体に含まれるマグネタイト量と鉄損との関係をグラフに示す。図1に示した直線は、鉄損の測定結果に基づいて描いた近似式を示している。図1から明らかなように、圧粉成形体に含まれるマグネタイト量と鉄損との間には良好な相関関係があり、マグネタイト量を低減するほど鉄損を小さくできることが分かる。また、鉄損が47W/kg程度以下であれば圧粉磁心として問題なく使用できるため、圧粉成形体に含まれるマグネタイト量は2体積%までであれば許容できることが分かる。
次に、下記表1から次のように考察できる。No.1〜5は、圧粉成形体の密度はほぼ同じで、磁束密度もほぼ同じであった。しかしNo.1に示されるように、焼鈍ままの圧粉成形体は、鉄損は小さいが、抗折強度が低下している。また、No.2〜4は、いずれも本発明で規定している要件を満足しない例である。これらのうちNo.2では、圧粉成形体に常圧の水蒸気を接触させているため、圧粉成形体の内部に水が浸透せず、抗折強度を高めることができていない。No.3と4は、圧粉成形体に亜臨界状態の水を接触させているため、圧粉成形体の内部に水を浸透させることができ、抗折強度を高めることができている。しかしマグネタイトが多く生成しているため、鉄損が大きくなった。一方、No.5は本発明で規定する要件を満足している例であり、抗折強度を高めたうえで、鉄損も小さくできている。
Figure 2012084803

Claims (4)

  1. 鉄基軟磁性粉末表面に、りん酸系化成皮膜を有する圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末を圧粉成形する成形工程と、
    前記成形工程で得られた圧粉成形体に、酸素と飽和水蒸気圧の水とを接触させる酸化工程とを含むことを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  2. 上記成形工程と上記酸化工程との間に、上記圧粉成形体を焼鈍する焼鈍工程を更に含む請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記圧粉成形体用鉄基軟磁性粉末が、前記りん酸系化成皮膜の上にシリコーン樹脂皮膜を有している請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法によって得られる圧粉磁心であって、マグネタイトの体積割合が2.0体積%以下であることを特徴とする圧粉磁心。
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