JP2007231331A - 圧粉磁心用金属粉末および圧粉磁心の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高温域においてオーステナイト相を呈する金属粉末を、該オーステナイト相が形成される温度域まで加熱し、この温度域にて気相反応により該金属粉末の表層部にSiを濃化させる。
【選択図】なし
Description
粉末冶金技術では、金属粉末に、必要に応じて潤滑剤粉末や合金用粉末を混合した後、金型で加圧成形して成形体として、ついで焼結さらには熱処理を行って、所望の寸法形状および特性を有する焼結部品としている。また、粉末冶金技術では、金属粉末に、樹脂等の結合剤を混合したのち、金型で加圧成形して成形体とし、部品とする場合もある。
また、優れた磁気特性を得るために、圧粉磁心の鉄損(渦電流損やヒステリシス損)を低くすることが要求される。渦電流損を低減するためには、金属粉末を絶縁被覆し、圧粉磁心の比抵抗を大きくする必要がある。また、ヒステリシス損を低減するためには、加圧成形時に圧粉体に蓄積される歪みを除去する必要がある。
また、本発明は、上記の圧粉磁心用金属粉末を素材とすることにより、圧粉密度が真密度の95%以上という高い密度を得ることができる圧粉磁心の製造方法を提案することを目的とする。
しかしながら、粉体の表層部のみにSiを濃化させることができれば、上記の絶縁処理効果を確保した上で、高い圧粉密度および高い磁束密度が得られると考えられる。
そこで、発明者らは、金属粉末の表層部のみにSi濃化層を形成する方法について検討を重ねた。
この理由は、粉末は、鋼板に比べて比表面積が大きく反応性が高いため、容易に中心部までSiが浸透するためであることが判明した。粉末全体にわたってSi濃度が高まると、高Si濃度の鋼板の圧延が困難であることと同様に、粒子が硬くなり、後工程である成形工程において圧縮性が低下して成形体密度が低下し、その結果、高い飽和磁束密度が得られなくなる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
(1)高温域においてオーステナイト相を呈する金属粉末を、該オーステナイト相が形成される温度域まで加熱し、この温度域にて気相反応により該金属粉末の表層部にSiを濃化させることを特徴とする圧粉磁心用金属粉末の製造方法。
また、上記の圧粉磁心用金属粉末を素材として加圧成形することにより、電気抵抗が高く、かつ成形密度が高い圧粉磁心を得ることができる。
従って、上記の圧粉磁心を利用することにより、優れた磁気特性を有するモータおよびトランス、さらにはインダクタ素子等を得ることができる。
本発明で対象とする軟磁性金属材料は、高温域においてオーステナイト相を呈する材料であり、代表的なものとしては、純鉄および低Si濃度のFe−Si合金が挙げられる。ここに、純鉄とはFe濃度が99mass%以上のものを指し、高純度で軟質あるが故に、高い飽和磁束密度と優れた圧縮性を得ることができる。また、低Si濃度のFe−Si合金とはSi濃度が1mass%以下のものを指し、少量とはいえSiを含有するが故に、比抵抗の増大ひいては渦電流損の低減を図ることができる。また、Si含有量が1mass%以下と少ないので、圧縮性や飽和磁束密度に及ぼす悪影響はほとんどない。
以下、水アトマイズ法を適用する場合を例に、好ましい製造方法を説明するが、これに限定されないことは言うまでもない。
通常の純鉄組成の溶湯を、水アトマイズ法で噴霧、急冷・凝固させるとともに高圧水で解砕して、水アトマイズ製鉄粉(生粉)とする。ついで、この生粉に、脱水・乾燥処理、さらに還元処理を施して、粒子表面の酸化皮膜を除去した製品(純鉄粉)とする。
また、Fe−Si合金粉についても、同様に、アトマイズ法や粉砕法を利用して製造することができる。
前述したとおり、気相反応法により低Si含有の鋼板に浸珪処理を施して、高珪素鋼板を製造する方法が知られている。この方法は、例えば、圧延が容易なSi含有量:4mass%未満の鋼板をSiCl4と1000〜1200℃程度の温度で反応させることにより、鋼板表面にSiCl4+5Fe→Fe3Si+2FeCl2の反応により、鋼板表面にFe3Siを形成し、さらに板厚方向にSiを拡散させることにより、磁気特性および磁歪特性に優れた高Si濃度の鋼板を得る方法である。
フェライト相ではSiの拡散速度がオーステナイト相に比べて格段に速い。このため、気相反応処理を施す鋼板のSi濃度が3〜4mass%であれば、フェライト相になっているため、厚み方向にSiを十分浸透させることが可能である。一方、本発明が対象としている粉末の場合は、同様の粉末組成に対して、気相反応処理を同条件で施すと、鋼板に比べて比表面積が大きく反応性が高いため、Siが浸透し易く、かつ拡散により速やかに粉末中心部までSi濃度が高くなってしまう。
そこで、発明者らは、このSiの拡散速度が遅いオーステナイト相となる温度域で気相反応を行えば、粉体内部までのSiの浸透・拡散が効果的に抑制されて表層部のみにSi濃化層を形成できるのではないかと考え、実験を行った結果、所期した目的の達成に関し、望外の成果が得られ、本発明を完成させるに至ったのである。
石英製の容器内に、粒径が10〜200μmの鉄粉を、厚さ:5mm以下より好ましくは3mm以下に載積し、非酸化性雰囲気中にて910℃以上、1400℃以下、より好ましくは910℃以上、1200℃以下に加熱する。次に、SiCl4ガスを0.01〜10NL/min/kg導入する。
かくすることにより、鉄粉の表層部のみに安定してSiを濃化させることができた。
なお、SiCl4ガスの流量は、効果ならびに経済性の観点から、0.01 〜10NL/min/kg程度とすることが好ましい。
ここに、金属粉末が純鉄粉の場合のオーステナイト相温度域は910〜1400℃である。より好ましい処理温度は910〜1200℃の範囲である。
また、金属粉末がFe−Si合金粉の場合、Si量が0.5mass%のときのオーステナイト相温度域はおよそ950〜1370℃、Si量が1mass%のときのオーステナイト相温度域はおよそ1000〜1350℃である。
また、これらの気相反応後、酸素を微量含むガスを系内に導入することにより、粉末粒子の表面を酸化してSiO2を形成することができる。これは、特に5μm以下の粒径の粉末 が大気に曝された瞬間に急激に酸化されて発熱し、さらに酸化が進行することを防ぐ効果がある。さらに、絶縁被覆処理において、粒子と絶縁被膜材料との密着性を高める点でも効果がある。
また、本発明では、上記したSi濃化層の厚み範囲内において、該Si濃化層の厚みを粉末粒径(半径)の1/2以下とすることが重要である。というのは、Si濃化層の厚みが粉末粒径の1/2超では、Si濃化層が粉末内部まで浸透しすぎ、やはり飽和磁束密度の低下および圧縮性の低下を招くからである。より好ましいSi濃化層の厚みは粉末粒径の1/5以下である。
本発明の金属粉末を、圧粉磁心のような磁性部品に適用する際には、粉末粒子に絶縁被覆処理を施し、粒子表面を層状に覆う被膜構造の絶縁層を形成して圧粉体の電気抵抗を高め、渦電流損失を低減することにより、磁気特性を高める必要がある。
ここに、絶縁被覆用の材料としては、金属粉末を加圧成形し所望の形状に成形した後でも要求される絶縁性を保持できるものであればよく、とくに限定されない。かような材料としては、Al,Si,Mg,Ca,Mn,Zn,Ni,Fe,Ti,V,Bi,B,Mo,W,Na,K等の酸化物等が挙げられる。また、スピネル型フェライトのような磁性酸化物、水ガラスに代表される非晶質材を使用することもできる。さらに、リン酸塩化成処理被膜やクロム酸塩化成処理被膜なども用いることができる。リン酸塩化成処理被膜にはホウ酸やMgを含むこともできる。その他、絶縁材料として、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムおよびリン酸鉄等のリン酸化合物を用いることもできる。また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の有機樹脂を用いてもよい。
さらに、特開2003−303711号公報に記載された絶縁被覆用材料、例えばシリコーン樹脂と、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、鉱物およびガラス等の顔料との混合物などをを用いても何ら問題はない。
上記したような絶縁被覆処理を施し、粒子表面に絶縁層を形成した金属粉末(絶縁被覆粉)を、加圧成形して圧粉磁心とする。なお、この加圧成形に先立ち、粉末には必要に応じて金属石鹸やアミド系ワックス等の潤滑剤を配合することもできる。潤滑剤の配合量は、粉末:100質量部に対し0.5質量部以下程度とすることが好ましい。潤滑剤の配合量が多くなると圧粉磁心の密度が低下するためである。
圧粉体は、成形時に歪みが加わっているため、ヒステリシス損失が大きくなっている。従って、この歪みを取り除いて本来の磁気特性を発現させために、歪み取り熱処理が必要である。この処理温度は、600℃以上 1000℃以下程度とすることが好ましい。この処理温度が高すぎると、歪み取り効果は増加するものの絶縁被覆が結晶化や分解するために絶縁効果を失い、電気抵抗が著しく低下する。また、熱処理時間も長い方が歪み取りには好ましいが、長すぎると同様に電気抵抗が著しく低下する。従って、熱処理時間は効果ならびに経済性の観点から5〜300分、より好ましくは10〜120分程度とするのが好適である。
これらの粉末を、石英容器内に載積厚み:3〜10mmで充填し、アルゴンガス中にて880〜1420℃で5分間加熱後、塩化珪素ガスを1Nl/min/kgの流量で1〜30分間流しながら所定の温度に保持し、さらにアルゴンガスに置換後3〜60分間加熱処理する、気相反応処理を施した。
表1に、金属粉末の加熱温度、SiCl4ガス中での加熱時間およびArガス中での加熱時間を示す。また、表1には、気相反応処理後の金属粉末のSi濃化層厚みおよび該濃化層中の平均Si濃度について調べた結果も示す。
その後、得られた圧粉体に、窒素雰囲気中にて800℃,60分間の熱処理を施した。
かくして得られた圧粉磁心の圧粉密度、磁束密度および電気抵抗について調べた結果を表1に併記する。
なお、表1には、比較のため、本発明に従うSiの濃化処理を施さなかった2%Si−Fe合金粉(比較例3)および3%Si−Fe合金粉(比較例4)についても、同様の調査を行った結果を示す。
また、磁束密度は、圧粉磁心に1次側:100ターン、2次側:20ターンを巻き、直流磁化特性測定装置を用いて10kA/mの磁化での磁束密度(B10k)を測定した。
さらに、電気抵抗は四端子法により通電電流1Aで測定した。
これに対し、比較例1,2は、気相反応処理温度が本発明の適正温度域を外れた場合であり、高い比抵抗は得られたものの、圧粉密度、磁束密度は低かった。これは、フェライト相が生成する温度域で加熱処理を行っているため、鉄粉の内部まで深くSiの浸透が進み、鉄粉が硬化したためと考えられる。
比較例3,4は、Siを表面濃化した鉄粉の代わりに、単にFe−Si合金粉を用いた場合であるが、粉末自体の硬度が高いため、圧粉密度が上がらず、比抵抗は高いものの、高い磁束密度を得ることはできなかった。
Claims (6)
- 高温域においてオーステナイト相を呈する金属粉末を、該オーステナイト相が形成される温度域まで加熱し、この温度域にて気相反応により該金属粉末の表層部にSiを濃化させることを特徴とする圧粉磁心用金属粉末の製造方法。
- 請求項1において、前記金属粉末が、純度99%以上の純鉄粉であることを特徴とする圧粉磁心用金属粉末の製造方法。
- 請求項1において、前記金属粉末が、Siを1mass%以下で含有するFe−Si合金粉であることを特徴とする圧粉磁心用金属粉末の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、表層部にSiを濃化させた金属粉末の表面に、さらに絶縁被覆処理を施すことを特徴とする圧粉磁心用金属粉末の製造方法。
- 請求項4に記載の方法により製造した絶縁被覆処理済みの金属粉末を、加圧成形することを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
- 請求項4に記載の方法により製造した絶縁被覆処理済みの金属粉末を、加圧成形後、600℃以上 1000℃以下の温度域にて熱処理を施すことを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
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