JP2012080830A - ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(nash)の非ヒトモデル動物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非ヒト動物に以下の(1)〜(3)から選択される少なくとも1つの特徴を有するコリン不含・L−アミノ酸規定(CDAA)飼料を与えて飼育することにより、ヒト非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物を作製する。
(1)脂質含量が高められている。
(2)血中インスリン濃度や血中コレステロール濃度が上昇しやすく、血中トリグリセリド濃度が低下しにくい脂質を含有する。
(3)コレステロールを含有する。
【選択図】なし
Description
含・L−アミノ酸規定(CDAA)飼料を与えることにより、ヒトと同様の臨床病態を示すNASHのモデルマウスの作製に成功し、本発明を完成させた。当該モデルマウスには、肝臓への異常な脂質の蓄積(脂肪肝)、肝臓の繊維化、および血中パラメータによる慢性肝炎像が認められ、特に、従来のNASHモデル動物で報告の無かった、体重の増加、血清トリグリセリドの増加、および血清総コレステロールの増加が認められた。また、当該モデルマウスにおいては、ヒトと同様の緩やかな病態の進行が認められた。
[1]非ヒト動物にコリン不含・L−アミノ酸規定(CDAA)飼料を与えて飼育する工程を含む、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物を作製する方法であって、
前記CDAA飼料が、以下の(1)〜(3)から選択される少なくとも1つの特徴を有する、方法。
(1)脂質含量が高められている。
(2)血中インスリン濃度や血中コレステロール濃度が上昇しやすく、血中トリグリセリド濃度が低下しにくい脂質を含有する。
(3)コレステロールを含有する。
[2]前記CDAA飼料がパーム油またはヤシ油を含有する、[1]に記載の方法。
[3]前記CDAA飼料におけるコレステロール含量が0.2%以上2.0%以下である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記CDAA飼料における脂質含量が飼料全体に対するカロリーベースで30%以上60%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記非ヒト動物がげっ歯類である、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記非ヒト動物がマウスまたはラットである、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記非ヒト動物がインスリン抵抗性を有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記インスリン抵抗性が、遺伝背景によって獲得されたものである、[7]に記載の方法。
[9]前記非ヒト動物がKK−Ayマウスである、[8]に記載の方法。
[10][1]〜[9]のいずれかに記載の方法により作製されうる、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物。
[11]以下の所見(1)〜(11)の少なくとも1つを示す、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物。
(1)体重の増加
(2)体重あたりの肝臓重量の増加(肝臓/体重比)
(3)アラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性(AST)の増加
(4)AST/ALT比の減少
(5)血清トリグリセリド(TG)の増加
(6)血清総コレステロールの増加
(7)肝ヒドロキシプロリン量(HYP)の増加
(8)肝トリグリセリド(TG)の増加
(9)肝細胞において大滴性の脂肪沈着が観察され、肝細胞の風船様膨化が観察される(脂肪変性)。
(10)炎症性細胞浸潤が認められる。
(11)中心静脈を中心とした線維化が観察される。
[12]前記非ヒトモデル動物が、前記所見(5)、(6)、(9)、(10)、および(11)を示す、[11]に記載の非ヒトモデル動物。
[13]前記非ヒトモデル動物が、前記所見(1)〜(11)の全てを示す、[11]に記載の非ヒトモデル動物。
[14]以下の工程(a)および(b)を含む、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法。
(a)[10]〜[13]のいずれかに記載のヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物へ被験物質を投与する工程
(b)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する改善効果を評価する工程
[15]以下の工程(a)および(b)を含む、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の改善に対する薬効評価方法。
(a)[10]〜[13]のいずれかに記載のヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物へ被験物質を投与する工程
(b)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する改善効果を評価する工程
[16]以下の(1)〜(3)から選択される少なくとも1つの特徴を有するCDAA飼料。
(1)脂質含量が高められている。
(2)血中インスリン濃度や血中コレステロール濃度が上昇しやすく、血中トリグリセリド濃度が低下しにくい脂質を含有する。
(3)コレステロールを含有する。
[17]パーム油またはヤシ油を含有する、[16]に記載のCDAA飼料。
[18]コレステロール含量が0.2%以上2.0%以下である、[16]または[17]に記載のCDAA飼料。
[19]脂質含量が飼料全体に対するカロリーベースで30%以上60%以下である、[16]〜[18]のいずれか1項に記載のCDAA飼料。
(1)脂質含量を高め、且つ、血中インスリンやコレステロールが上昇しやすく、トリグリセリドが低下しにくい脂質を含有するもの、
(2)脂質含量を高め、且つ、コレステロールを含有するもの、
(3)血中インスリンやコレステロールが上昇しやすく、トリグリセリドが低下しにくい脂質を含有し、且つ、コレステロールを含有するもの、あるいは、
(4)脂質含量を高め、且つ、血中インスリンやコレステロールが上昇しやすく、トリグリセリドが低下しにくい脂質を含有し、且つ、コレステロールを含有するもの、であるのが好ましい。本発明の飼料は、上記(4)に示した、脂質含量を高め、且つ、血中インスリンやコレステロールが上昇しやすく、トリグリセリドが低下しにくい脂質を含有し、且つ、コレステロールを含有するものであるのが特に好ましい。
(1)体重の増加
(2)体重あたりの肝臓重量の増加(肝臓/体重比)
(3)アラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性(AST)の増加
(4)AST/ALT比の減少
(5)血清トリグリセリド(TG)の増加
(6)血清総コレステロールの増加
(7)肝ヒドロキシプロリン量(HYP)の増加
(8)肝トリグリセリド(TG)の増加
(9)肝細胞において大滴性の脂肪沈着が観察され、肝細胞の風船様膨化が観察される(脂肪変性)。
(10)炎症性細胞浸潤が認められる。
(11)中心静脈を中心とした線維化が観察される。
(a)本発明のヒトNASHの非ヒトモデル動物へ被験物質を投与する工程
(b)NASHに対する改善効果を評価する工程
(a)本発明のヒトNASHの非ヒトモデル動物へ被験物質を投与する工程
(b)NASHに対する改善効果を評価する工程
(1−1)新規コリン不含・L−アミノ酸規定(N−CDAA)飼料の作製
新規コリン不含・L−アミノ酸規定(N−CDAA)飼料を、従来のコリン不含・L−アミノ酸規定(CDAA)飼料の組成を改変して作製した。具体的には、脂質含量をカロリーベースで50%に高め、脂質としてはパーム油を含有させた。更に、コレステロールを添加し、その含量を1.27%とした。他のアミノ酸などの成分については、げっ歯類に必要とされている量を添加した。
遺伝背景としてインスリン抵抗性を有しII型糖尿病を自然発症する肥満マウス(KK−Ay Ta/Jcl 雄性マウス)をメタボリックシンドローム患者に見立て、以下の手順でNASHの非ヒトモデル動物を作製した。
上記のように飼育された各マウス群について、NASHの臨床病態の検討を行った。NASHの臨床病態としては、ヒトのNASHを診断する指標(例えば、非特許文献1を参照)を参考にして、以下の項目(1)〜(11)を設定した(NASHの所見)。なお、ヒトのNASHの繊維化の指標として用いられる血中ヒアルロン酸、コラーゲン量の代わりに、項目(7)では、一般的にげっ歯類等の臓器繊維化の指標として用いられている肝臓中のヒドロキシプロリン量(HYP)を指標とした。
(1)体重の増加
(2)体重あたりの肝臓重量の増加(肝臓/体重比)
(3)アラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性(AST)の増加
(4)AST/ALT比の減少
(5)血清トリグリセリド(TG)の増加
(6)血清総コレステロールの増加
(7)肝ヒドロキシプロリン量(HYP)の増加
(8)肝トリグリセリド(TG)の増加
(9)肝細胞において大滴性の脂肪沈着が観察され、肝細胞の風船様膨化が観察される(脂肪変性)。
(10)炎症性細胞浸潤が認められる。
(11)中心静脈を中心とした線維化が観察される。
N−CDAA飼料、または各コントロール用飼料の摂餌開始後3週ごとに、20時間程度の絶食の後、ペントバルビタールナトリウム麻酔下で屠殺し、採血を行い血清または血漿を得た。また、肝臓を採取した。得られた試料を用いて、上記各項目の測定を行った。
通常食であるCRF−1飼料で飼育した個体群においては、NASHの病態は認められなかった。よって、CRF−1飼料で飼育した個体群を正常個体群とした。上記各項目について、N−CDAA飼料、または各コントロール用飼料により飼育した群と、CRF−1飼料で飼育した正常個体群とを統計解析により比較した結果を表2に示す。統計解析は、項目(1)〜(8)についてはStudentのt検定法により、項目(9)〜(11)については病理結果をスコア化しWilcoxon検定法により行った。
AST)の上昇が認められ、更に、AST/ALT比の低下が認められた。これらの指標の変化から、N−CDAA飼料により飼育したマウス群は、慢性肝炎を引き起こしていることが示された。さらに、摂餌開始後9週目より、空腹時血糖、総コレステロール及び中性脂肪の値がCRF−1で飼育した正常個体群より高くなった。また、総コレステロールに占めるHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)の割合が低下していることから、悪玉コレステロールの増加が示唆された。更に、肝臓中の中性脂肪量、コレステロール量、および繊維化の指標であるヒドロキシプロリン量(HYP)の増加が認められ、N−CDAA飼料により飼育したマウス群は、脂肪肝およびNASH症状を呈していることが確認された。これらの状態は、摂餌開始後12週目まで続いた。なお、従来の高脂肪食(脂質含量約60%)のように、単に飼料を高脂肪化した場合、血中のコレステロールおよびトリグリセリドは減少することが知られている。したがって、N−CDAA飼料において、脂質含量が高められているにも関わらず、血中のコレステロールおよびトリグリセリドが増加したことは当業者が予想できない効果であった。
ヒトのNASHの治療に用いられているピオグリタゾン(商品名:アクトス)(武田薬品工業株式会社)を投与することによって、N−CDAAを摂餌させて作製した上記NASHマウスのNASH症状が緩和されるか否か検討した。ピオグリタゾンは20 mg/kg体重の用量で1日1回経口投与した。
N−CDAAの摂餌開始から12週間、ピオグリタゾンを投与し続け、NASH症状が現れるか検討した。その結果、ピオグリタゾンを投与しない群と比較して、肝臓重量、肝臓体重比の低下、血清ALTの減少、血清HDLCの上昇、血清総コレステロール中のHDLC比の上昇、肝臓中HYP、TG含量の低下が認められ、更に、病理組織学的検査において炎症性細胞浸潤および繊維化の改善が認められた。したがって、ピオグリタゾンの投与により、現れるNASH症状の程度が緩和されることが認められた。
次に、肝臓の繊維化が認められるN−CDAAの摂餌開始後6〜12週目の6週間、ピオグリタゾンを投与し続け、NASH症状が改善されるか検討した。その結果、ピオグリタゾンを投与しない群と比較して、肝臓重量、肝臓体重比の低下、血清ALTの減少、血清HDLCの上昇、血清総コレステロール中のHDLC比の上昇、肝臓中HYP、TG含量の低下が認められ、NASH症状が改善されることが認められた。
Claims (19)
- 非ヒト動物にコリン不含・L−アミノ酸規定(CDAA)飼料を与えて飼育する工程を含む、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物を作製する方法であって、
前記CDAA飼料が、以下の(1)〜(3)から選択される少なくとも1つの特徴を有する、方法。
(1)脂質含量が高められている。
(2)血中インスリン濃度や血中コレステロール濃度が上昇しやすく、血中トリグリセリド濃度が低下しにくい脂質を含有する。
(3)コレステロールを含有する。 - 前記CDAA飼料がパーム油またはヤシ油を含有する、請求項1に記載の方法。
- 前記CDAA飼料におけるコレステロール含量が0.2%以上2.0%以下である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記CDAA飼料における脂質含量が飼料全体に対するカロリーベースで30%以上60%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記非ヒト動物がげっ歯類である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記非ヒト動物がマウスまたはラットである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記非ヒト動物がインスリン抵抗性を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記インスリン抵抗性が、遺伝背景によって獲得されたものである、請求項7に記載の方法。
- 前記非ヒト動物がKK−Ayマウスである、請求項8に記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により作製されうる、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物。
- 以下の所見(1)〜(11)の少なくとも1つを示す、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物。
(1)体重の増加
(2)体重あたりの肝臓重量の増加(肝臓/体重比)
(3)アラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性(AST)の増加
(4)AST/ALT比の減少
(5)血清トリグリセリド(TG)の増加
(6)血清総コレステロールの増加
(7)肝ヒドロキシプロリン量(HYP)の増加
(8)肝トリグリセリド(TG)の増加
(9)肝細胞において大滴性の脂肪沈着が観察され、肝細胞の風船様膨化が観察される(脂肪変性)。
(10)炎症性細胞浸潤が認められる。
(11)中心静脈を中心とした線維化が観察される。 - 前記非ヒトモデル動物が、前記所見(5)、(6)、(9)、(10)、および(11)を示す、請求項11に記載の非ヒトモデル動物。
- 前記非ヒトモデル動物が、前記所見(1)〜(11)の全てを示す、請求項11に記載の非ヒトモデル動物。
- 以下の工程(a)および(b)を含む、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法。
(a)請求項10〜13のいずれか1項に記載のヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物へ被験物質を投与する工程
(b)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する改善効果を評価する工程 - 以下の工程(a)および(b)を含む、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の改善に対する薬効評価方法。
(a)請求項10〜13のいずれか1項に記載のヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の非ヒトモデル動物へ被験物質を投与する工程
(b)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する改善効果を評価する工程 - 以下の(1)〜(3)から選択される少なくとも1つの特徴を有するCDAA飼料。
(1)脂質含量が高められている。
(2)血中インスリン濃度や血中コレステロール濃度が上昇しやすく、血中トリグリセリド濃度が低下しにくい脂質を含有する。
(3)コレステロールを含有する。 - パーム油またはヤシ油を含有する、請求項16に記載のCDAA飼料。
- コレステロール含量が0.2%以上2.0%以下である、請求項16または17に記載のCDAA飼料。
- 脂質含量が飼料全体に対するカロリーベースで30%以上60%以下である、請求項16〜18のいずれか1項に記載のCDAA飼料。
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