JP2012077161A - ポリスチレン系樹脂シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリスチレン系樹脂からなるベース樹脂と、高分子型帯電防止剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物によって少なくとも表面が形成されているポリスチレン系樹脂シート10であって、前記高分子型帯電防止剤として前記ベース樹脂に非相溶性を示すアイオノマー樹脂が含有され、ポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、アクリル系樹脂の内の1種以上からなる前記ベース樹脂に非相溶性を示す樹脂成分が前記ポリスチレン系樹脂組成物にさらに含有されることによって前記表面には前記ベース樹脂からなるマトリックス相中に分散相が形成されており、且つ、前記分散相は、前記樹脂成分でコア部が形成されているとともに前記アイオノマー樹脂で外殻部が形成されているコアショル状粒子となっているポリスチレン系樹脂シート。
【選択図】図1
Description
このようなポリスチレン系樹脂シートは、耐熱性や機械的強度に優れていることから、従来、養生シート、組立箱、仕切り材、電気・電子部品容器、機械部品容器、及び、食品容器等に広く用いられている。
しかし、ポリスチレン系樹脂フィルムや発泡シートは、静電気によって帯電されやすく、保管中に挨等が付着して汚れを生じやすいという問題を有し改善が求められている。
また、ポリスチレン系樹脂シートは、その用途によっては1011(Ω/□)オーダーの表面抵抗率が求められる場合もある。
この界面活性剤などといった、分子量が1000程度、あるいは、それ以下のものは“低分子型帯電防止剤”とも呼ばれており、これらの低分子型帯電防止剤は、帯電防止に有効ではあるもののポリマー中における拡散速度が大きいため時間の経過とともにポリスチレン系樹脂シート表面に滲出して、いわゆる“ブリードアウト”するという問題を発生させるおそれを有する。
この高分子型帯電防止剤としては、エーテル結合やエステル結合を含んだ極性ブロックと、アルキルなどからなる非極性ブロックとを有する共重合体が知られており、このような共重合体は、ポリマー中における移行性が低いことから、この高分子型帯電防止剤を用いることでブリードアウトの問題を抑制させる効果を期待することができる。
また、このような共重合体樹脂以外にも、例えば、アイオノマー樹脂が高分子型帯電防止剤として利用可能であることが知られている。
しかし、高分子型帯電防止剤は、比較的、大量に配合しないと効果が発揮されず、しかも、一般にポリスチレン系樹脂に比べて高価であるために大量配合するとポリスチレン系樹脂シートの材料コストを増大させてしまいやすくポリスチレン系樹脂シートの汎用性を低下させるおそれを有する。
また、本発明のポリスチレン系樹脂シートは、その形成に用いられるポリスチレン系樹脂組成物に、前記ベース樹脂に非相溶性を示すアイオノマー樹脂が高分子型帯電防止剤として含有されており、前記樹脂成分でコア部が形成されているとともに前記アイオノマー樹脂で外殻部が形成されているコアショル状粒子となって前記分散相が形成されている。
したがって、分散相の表面全体を導電性に優れた状態にすることができ、単に高分子型帯電防止剤のみを分散させた場合に比べてポリスチレン系樹脂シートの表面の電気抵抗値を大きく低下させうる。
すなわち、高分子型帯電防止剤の使用量の低減を図りつつ帯電防止を図り得る。
本発明のポリスチレン系樹脂シートについて、第一の実施形態としてポリスチレン系樹脂フィルムを例示しつつ以下に説明する。
まず、前記ポリスチレン系樹脂フィルムを形成するためのポリスチレン系樹脂組成物について説明する。
なお、本実施形態における前記非相溶性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、アクリル系樹脂の内のいずれかである。
そして、本実施形態においては、このような材料を用いることによって少なくとも前記ポリスチレン系樹脂フィルムの表面に前記ベース樹脂を含んでなるマトリックス相と、該マトリックス相中に分散された分散相を形成させ、しかも、前記非相溶性樹脂でコア部が形成されているとともに前記アイオノマー樹脂で外殻部が形成されているコアショル状粒子の状態で前記分散相を形成させている。
本実施形態におけるポリスチレン系樹脂フィルムは、上記のようなコアショル状粒子の状態で前記分散相を形成させていることによってアイオノマー樹脂の使用量の低減を図りつつポリスチレン系樹脂フィルムの帯電防止が図られている。
また、分散相の外殻部を構成するアイオノマー樹脂も1種単独ではなく複数組み合わせて用いることができる。
一方でこれ以上SP値が離れると非相溶性を示すようになるといわれている。
したがって、ポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、アクリル系樹脂系樹脂の中でもSP値が前記ベース樹脂と大きく異なるものを採用することでポリスチレン系樹脂フィルムにこれらによる分散相を形成させることができる。
さらに、本実施形態においては、上記単量体以外の単量体を含有するコポリマーを、マトリックス相を形成させるためのポリスチレン系樹脂として用い得る。
また、本実施形態におけるポリスチレン系樹脂としては、上記のようなホモポリマーやコポリマーの複数でマトリックス相を形成させることも可能である。
なお、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)とは、前記スチレン系単量体など以外にブタジエンなどのゴム成分を含有するものであり、例えば、該ゴム成分がスチレン系単量体と共重合しているコポリマーや、該コポリマーと他のホモポリマーあるいはコポリマーとのブレンド樹脂などが挙げられる。
また、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)とは、添加剤等を除いた樹脂成分が実質上スチレンモノマーのみで構成されたものである。
これらのポリスチレン系樹脂は、いずれも、多くの種類が市販されており、求める特性のものが入手容易であるばかりでなく比較的安価である点においても好適である。
なお、メルトフローレートが、20g/10minを超えるようなポリスチレン系樹脂は一般的に溶融張力が低く、発泡させるには不適なものとなることがある点においても、前記ポリスチレン系樹脂は、メルトフローレートが20g/10min以下であることが好ましい。
したがって、ベース樹脂として用いられるポリスチレン系樹脂よりに対してSP値の小さな、非極性の樹脂や、前記ポリスチレン系樹脂よりもSP値の大きな極性樹脂をポリスチレン系樹脂組成物に含有させることでポリスチレン系樹脂からなるマトリックス相中にこれらの樹脂からなる分散相を形成させることができる。
特に、分散相を形成させるためのEVAとしては、JIS K6924−2によって求められる酢酸ビニル含有量が3〜30質量%であることが好ましい。
また、JIS K7121のDSC法によって求められる融点が60〜120℃であることが好ましい。
さらに、JIS K6924−2(190℃、21.18N)によって求められるメルトフローレイト(MFR)が0.2〜3g/10minのものが好ましい。
このポリエチレン系樹脂(PE)の中では、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)又は高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)が好適である。
該ポリプロピレン系樹脂(PP)としては、プロピレン成分のみからなるホモポリプロピレン樹脂、プロピレン成分以外にエチレンなどのオレフィン成分を含有するランダム共重合体やブロック共重合体が採用可能である。
なお、ポリプロピレン系樹脂(PP)として共重合体を採用する場合には、プロピレン以外のオレフィンを共重合体中に0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜10質量%の割合で含有させたものを用いることが望ましい。この場合のオレフィン成分としては、エチレン、あるいは、炭素数4〜10のα−オレフィンを挙げることができる。
特に、高溶融張力ポリプロピレン系樹脂が好ましく、例えば、特許第2521388号公報に記載されているものが好適に使用されうる。
なお、この“(メタ)アクリル”との用語は、本明細書中においては“メタクリル”と“アクリル”との両方を含む意味で用いている。
さらに、本実施形態においては、上記モノマー成分以外に他のモノマー成分を含有するコポリマーをアクリル系樹脂として用い得る。
このようなアイオノマー樹脂としては、例えば、三井デュポンポリケミカル社から、商品名「エンティラMK400」、商品名「エンティラSD100」などとして市販されている市販品を採用することができる。
なお、ポリスチレン系樹脂フィルムの表面抵抗率は、1×109Ω/□〜1×1012Ω/□のいずれかとさせることがより好ましく、1×109Ω/□〜1×1011Ω/□のいずれかとさせることが最も好ましい。
このような表面抵抗率の値をポリスチレン系樹脂フィルムにより確実に付与しうる点において、通常、ポリスチレン系樹脂組成物の全ての樹脂成分に占める非相溶性樹脂の割合を5〜20質量%とすることが好ましく、5〜15質量%のいずれかとすることがより好ましい。
この、アイオノマー樹脂の下限値が、1質量%とされているのは、これよりも少ない含有量の場合には、ポリスチレン系樹脂フィルムに十分な帯電防止効果が発揮されないおそれを有するためであり、上限値が30質量%とされているのは、これを超えてアイオノマー樹脂を含有させても、その含有量に見合う帯電防止効果が得られにくいばかりでなくポリスチレン系樹脂フィルムの材料コストを増大させてしまうおそれがあるためである。
なお、このような観点からは、前記アイオノマー樹脂は、ポリスチレン系樹脂組成物の全ての樹脂成分に占める割合が3〜20質量%の内のいずれかとなるように含有されることが好ましく、4〜15質量%の内のいずれかとなるように含有されることが特に好ましい。
また、さらなる帯電防止効果の向上を図るべく、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤や、その他の界面活性剤、又は、アルカリ金属塩などの低分子型帯電防止剤を併用してもよい。
ただし、これらの低分子型帯電防止剤の添加によって、溶出イオン量が増加することがあるので、低分子型帯電防止剤は、ポリスチレン系樹脂組成物に含有される帯電防止剤(高分子型帯電防止剤+低分子型帯電防止剤)の合計量に占める割合が0.5質量%未満となるように含有させることが好ましい。
本実施形態においては、一般的なフィルム製造方法に用いられる方法を採用することができ、例えば、前記ベース樹脂、前記非相溶性樹脂、及び、前記アイオノマー樹脂などを含有するコンパウンドを作製する樹脂混練工程を実施した後に、得られたコンパウンドをフィルム状に押出加工する押出工程を実施する方法などを採用しうる。
以下に、それぞれの工程に関して、より具体的に説明する。
まず、ベース樹脂、非相溶性樹脂、高分子型帯電防止剤、及び、必要に応じてスリップ剤、防曇剤等の添加剤を計量してタンブラーブレンダー、へンシェルミキサーなどでドライブレンドした後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで各配合材料が略均一に混合された状態となるように溶融混練する。
その後、混練物をストランド状に押し出してペレタイズするか、ホットカットしてペレット化するなどしてポリスチレン系樹脂組成物からなるコンパウンドペレットを作製する。
上記樹脂混練工程で得られたコンパウンドペレットを熱溶融状態でフィルム状に押出加工する方法としては、例えば、サーキュラーダイなどから押し出してインフレーション法によってフィルム化したり、T−ダイなどから押し出してキャスト法によってフィルム化したりする方法があげられる。
この内、T−ダイなどのフラットダイでは、押出方向への延伸が容易である一方で幅方向への延伸のためにはテンターなどの設備を要することから、幅方向への延伸も容易なサーキュラーダイを用いた押出工程を実施することが好ましい。
すなわち、LDPEによる分散相の形成された海島構造が溶融状態の樹脂組成物中に形成される。
このとき、GPPSに対して非相溶性を示すアイオノマー樹脂がこの分散相とマトリックス相との界面に集合して、この界面に沿っての電気抵抗の低い領域を形成させる。
すなわち、高分子型帯電防止剤によって覆われた状態でLDPEがベース樹脂であるGPPSに分散されることになる。
そして、溶融状態の樹脂組成物が当該押出工程おいて流動しつつ冷却されることによって、この分散相が長く延びた状態が、得られる樹脂フィルムにおいても維持されることになる。
このことによって、例えば、1μm長さを超える細長い粒子を分散相に形成させることで表面抵抗率を顕著に低下させることができる。
このとき、ポリスチレン系樹脂フィルムの表面抵抗率は、その表面積に占めるアイオノマー樹脂粒子の面積割合と、アイオノマー樹脂粒子の粒子間距離に影響される。
すなわち、ポリスチレン系樹脂フィルムの表面に占めるアイオノマー樹脂粒子の面積割合が大きいほど、アイオノマー樹脂粒子の粒子間距離が短いほど表面抵抗率を低下させうる。
ここで、本実施形態においては、コア部がポリスチレン系樹脂に非相溶な樹脂粒子で形成され、外殻部(シェル部)がアイオノマー樹脂で形成された樹脂粒子が形成される。
このことから、このコアシェル状の樹脂粒子の表面を導電性発現に有効利用することができ、アイオノマー樹脂の使用量を抑制しつつもポリスチレン系樹脂フィルムの表面における樹脂粒子の面積割合を増大させうるとともに樹脂粒子間の距離を接近させることができる。
したがって、導電性発現に有利な樹脂の流れ方向以外の方向においても電気抵抗値の低減が図られることとなり、高分子型帯電防止剤の配合量を抑制しつつもポリスチレン系樹脂フィルムの表面抵抗率の値を、一般的に求められる1013(Ω/□)オーダー以下(1×1014未満)の値となるように低下させうる。
この分散相の大きさについても、SEMやTEMで直接確認することができ、例えば、ポリスチレン系樹脂フィルムの表面部から採取した試料に対して数千倍から数万倍の倍率で無作為に10視野程度の観察を行い、その半数以上の視野において1μm以上の長さの粒子が確認できれば、ポリスチレン系樹脂フィルムに1μm以上の分散相が形成されていると判断することができる。
なお、フィルム内部における分散相の形状や大きさについては、帯電防止性能に大きな影響は与えないためこのような分散相は、少なくともポリスチレン系樹脂フィルムの表面に形成されていれば良い。
すなわち、通常、ロール状に巻き取られた樹脂フィルムは、外側のフィルムが引き出されて使用され、引き出されるフィルムがその内側で接しているフィルムの背面から離れる際に静電気を発生させやすいが、本実施形態のポリスチレン系樹脂フィルムは、ロール巻取り方向にポリスチレン系樹脂粒子が長く延びる状態となっており、この方向に向けての電気抵抗値が特に低減されていることから、フィルムの引き出しによって静電気が発生されたとしてもその電荷を引き出される方向とは逆の、フィルムどうしが接触している箇所に向けて移動させることが容易で、電気的な中和を図ることが容易である。
このように本実施形態のポリスチレン系樹脂フィルムは、容器などの製品に加工された際においても優れた帯電防止性が発揮されるのみならず、フィルムロールなどの中間製品の状態においてもその優れた効果が発揮されるものである。
次いで、本発明の第二の実施形態として、積層シートについて説明する。
図1は、本実施形態に係る積層シートの断面図であり、この図1にも示されているように、本実施形態に係る積層シート1は、該積層シート1の表面層を構成するポリスチレン系樹脂フィルム層10と、該ポリスチレン系樹脂フィルム層10に背面側で接着する状態で積層された発泡層20とを有している。
すなわち、積層シート1は、その表面層が、表面抵抗率の低いポリスチレン系樹脂フィルム層10によって形成されることで帯電防止が図られている。
例えば、ポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種を含有するベース樹脂に対して、加熱分解型の発泡剤を含有させるか、気泡調整剤を含有させてガス発泡させるかして発泡層20を形成させ得る。
また、前記気泡調整剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物などが挙げられる。
さらに、ガス発泡においては、ブタンやペンタンなどの炭化水素を発泡剤として採用することができる。
これらは、単独、または、複数組み合わせて発泡層20の形成に用いることができる。
したがって、本実施形態の積層シートとしては、ポリスチレン系樹脂フィルム層10を形成させるためのポリスチレン系樹脂フィルムと、発泡層20を形成させるための発泡シートとを、一旦、別々に作製した後に、これらをヒートラミネートして一体化させたものなどが例示されるものの、このようなものに代えて共押出し成形法によってポリスチレン系樹脂フィルム層と発泡層とを一度に形成させたものも採用が可能である。
特には、本実施形態に係る積層シート1を作製する方法として、フィードブロック法による共押出し成形法を採用することが好ましい。
すなわち、帯電防止性能を有するポリスチレン系樹脂フィルム層10の押し出しと発泡層20の押し出しに異なる押出機を用いて、これらから押し出される溶融状態の樹脂組成物を一つのダイに合流させた後、これを、例えば、サーキュラーダイの内側に沿って発泡層形成用の樹脂組成物を押し出させるとともに外側に沿ってポリスチレン系樹脂フィルム層形成用の樹脂組成物を押し出させ、内外二層となる状態での押し出しを実施することで外側にポリスチレン系樹脂フィルム層10が形成され内側に発泡層20の形成された筒状の積層シート1を形成させることができる。
例えば、発泡層20の両面にポリスチレン系樹脂フィルム層10,10’を設けたり(図2(a))、両表面を構成する2層のポリスチレン系樹脂フィルム層10,10’の間に、複数の発泡層20,20’を設けたり(図2(b))する場合も本発明の積層シートとして意図する範囲のものである。
さらには、発泡層20の片面に2層のポリスチレン系樹脂フィルム層10,10”を設ける(図2(c))場合も本発明の意図する範囲である。
また、2層又はそれ以上のポリスチレン系樹脂フィルム層は、発泡層の片面側のみならず両面に形成させることもでき、これらに限らず種々の積層構造を積層シートに形成させ得る。
なお、この図2(a)、図2(b)に示すように両面にポリスチレン系樹脂フィルム層を設けている場合には、必要な側にのみ帯電防止性能を付与させればよく、いずれか一方、又は両方のポリスチレン系樹脂フィルム層を非相溶性樹脂とアイオノマー樹脂とを含有するポリスチレン系樹脂組成物によって形成させることができる。
また、図2(c)に示すように発泡層20の片面に2層のポリスチレン系樹脂フィルム層を設ける場合は、外側のポリスチレン系樹脂フィルム層10のみ、又は、外側のポリスチレン系樹脂フィルム層10と内側のポリスチレン系樹脂フィルム層10”の両方を非相溶性樹脂とアイオノマー樹脂とを含有するポリスチレン系樹脂組成物によって形成させることができる。
本発明のポリスチレン系樹脂シートとして、発泡シートを形成させるには、上記積層シートの発泡層と同様にして製造することができる。
すなわち、アイオノマー樹脂を非相溶性樹脂とともに含有し、気泡を形成させるための成分をさらに含有するポリスチレン系樹脂組成物を押出機で押し出し発泡させてシート状に成形する方法が採用可能である。
この場合も、非相溶性樹脂がコア部を構成しアイオノマー樹脂が外殻部を構成しているコアシェル状粒子によって発泡シートの表面に分散相を形成させることで、第一実施形態のポリスチレン系樹脂フィルムや、第二実施形態の積層シートと同様にアイオノマー樹脂の使用量を抑制しつつ帯電防止性能に優れた発泡シートを作製し得る。
例えば、第二実施形態の積層シートや発泡シートは、軽量で強度が高く、しかも、断熱性能に優れるとともに保管中の汚損などが抑制されることから食品トレーなどの原材料シートとして好適に用いられ得る。
以下に、各実施例、比較例のポリスチレン系樹脂フィルムの作製に用いる配合剤の略称と、その詳細とを記載する。
下記表1に示す配合(配合1〜8)にてポリスチレン系樹脂フィルムを作製した。
また、得られたポリスチレン系樹脂フィルムに対して、JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法により表面抵抗率の値を測定した。
具体的には、一辺が10cmの平面正方形状の試験片を温度22℃、湿度60%の雰囲気下に24時間放置した後、温度22℃、湿度60%の環境下、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試験片に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、次式により算出した。
ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs
ただし、
ρs:表面抵抗率(Ω/□)
D:表面の環状電極の内径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、7cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、5cm)
Rs:表面抵抗(Ω)
結果を、表1に併せて示す。
またアイオノマー樹脂の添加による表面抵抗率の低下効果は、MFRが18.0g/10minを超える「679」よりもMFRが15.0g/10min以下の「HRM18」や「HRM40」の方が顕著であることも上記表1の結果からわかる。
なお、「HRM40」のみからなる帯電防止剤を一切加えていないフィルムの表面抵抗率は、5.3×1015(Ω/□)であり、「HRM18」のフィルムの表面抵抗率は、4.8×1015(Ω/□)であり、「679」のフィルムの表面抵抗率は、5.8×1015(Ω/□)である。
同様に「679」(GPPS、MFR=18.0g/min)90質量%と「MK400」10質量%との混合樹脂フィルムの表面抵抗率を測定したところ1.7×1011(Ω/□)であった。
この評価結果からも、アイオノマー樹脂の添加による表面抵抗率の低下効果は、MFRが15.0g/10minを超える「679」よりもMFRが15.0g/10min以下の「HRM26」の方が顕著であることがわかった。
下記表2に示す配合(配合9〜14)にてポリスチレン系樹脂フィルムを作製した。
また、得られたポリスチレン系樹脂フィルムに対して、先の評価1と同様に表面抵抗率の値を測定した。
結果を、表2に併せて示す。
また、アイオノマー樹脂単独の添加では、一般に求められる帯電防止性能の獲得が出来ないような添加量においても、非相溶性を示す樹脂成分を更に含有させることで、帯電防止性能の獲得が可能となっていることがわかる。
下記表3に示す配合(配合15〜18)にてポリスチレン系樹脂フィルムを作製した。
また、得られたポリスチレン系樹脂フィルムに対して、先の評価1と同様に表面抵抗率の値を測定した。
結果を、表3に併せて示す。
下記表4に示す配合(配合19〜23)にてポリスチレン系樹脂フィルムを作製した。
また、得られたポリスチレン系樹脂フィルムに対して、先の評価1と同様に表面抵抗率の値を測定した。
結果を、表4に併せて示す。
また、ポリスチレン系樹脂フィルムにおける樹脂成分中に4質量%以上となる割合でアイオノマー樹脂を含有させることで、帯電防止効果がより顕著に発揮されることがわかる。
下記表5に示す配合(配合24〜27)にてポリスチレン系樹脂フィルムを作製した。
また、得られたポリスチレン系樹脂フィルムに対して、先の評価1と同様に表面抵抗率の値を測定した。
結果を、表5に併せて示す。
下記表6に示す配合(配合27〜29)にてポリスチレン系樹脂フィルムを作製した。
また、得られたポリスチレン系樹脂フィルムに対して、先の評価1と同様に表面抵抗率の値を測定した。
結果を、表6に併せて示す。
「HRM18」(GPPS)を65質量%、「LV115」(EVA)を27質量%、「MK400」(アイオノマー樹脂)を8質量%含有させたポリスチレン系樹脂組成物を押出したポリスチレン系樹脂フィルムを用いて作製した薄片試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した様子を図3に示す。
この図3からも、EVAがアスペクト比の高い分散相を形成し、その周囲に高分子型帯電防止剤であるアイオノマー樹脂が集合されて外殻を形成していることがわかる。
このことからも、本発明によれば、ポリスチレン系樹脂シートにおいて高分子型帯電防止剤の使用量の低減を図りつつ帯電防止を図り得ることがわかる。
すなわち、ポリスチレン系樹脂フィルムの厚み方向の断面における表面側近傍の様子を押出し方向に直交する方向から観察したものである。
Claims (6)
- ポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種からなるベース樹脂と、高分子型帯電防止剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物によって少なくとも表面が形成されているポリスチレン系樹脂シートであって、
前記高分子型帯電防止剤として前記ベース樹脂に非相溶性を示すアイオノマー樹脂が含有され、ポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、アクリル系樹脂の内の1種以上からなる前記ベース樹脂に非相溶性を示す樹脂成分が前記ポリスチレン系樹脂組成物にさらに含有されることによって前記表面には前記ベース樹脂からなるマトリックス相中に分散相が形成されており、且つ、前記分散相は、前記樹脂成分でコア部が形成されているとともに前記アイオノマー樹脂で外殻部が形成されているコアショル状粒子となっていることを特徴とするポリスチレン系樹脂シート。 - 前記ポリスチレン系樹脂のJIS K 7210の条件H(試験温度:200℃、公称荷重5.00kg)によるメルトフローレートが、15g/10min以下である請求項1記載のポリスチレン系樹脂シート。
- ベース樹脂に非相溶性を示す前記樹脂成分がポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、及び、低密度ポリエチレン樹脂の内のいずれかである請求項1又は2記載のポリスチレン系樹脂シート。
- 前記ポリスチレン系樹脂組成物が用いられてなるフィルムである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂シート。
- 前記ポリスチレン系樹脂組成物が押出発泡されてなる発泡シートである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂シート。
- 前記ポリスチレン系樹脂組成物によって形成されたポリスチレン系樹脂フィルム層を表面層として備えており、該表面層の背面側に積層された発泡層をさらに備えた積層シートである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂シート。
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