JP2011231284A - ポリ乳酸系樹脂フィルム及び積層シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有するポリ乳酸系樹脂組成物によって形成されているポリ乳酸系樹脂フィルムであって、ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種が前記ポリ乳酸系樹脂組成物にさらに含有されることによって、該ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種を含む分散相と前記ポリ乳酸系樹脂を含んだマトリックス相とが少なくともフィルム表面において形成されており、しかも、前記高分子型帯電防止剤として前記ポリ乳酸系樹脂よりも溶解度パラメータが小さい高分子型帯電防止剤が用いられることによって、該高分子型帯電防止剤を外殻としたコアシェル状粒子となって前記分散相が形成。
【選択図】図1
Description
また、ポリ乳酸系樹脂は、機械的強度、剛性などの特性や透明性が優れていることから、多くの分野において広く用いられるようになってきている。
この界面活性剤などの分子量が1000程度、あるいは、それ以下のものは“低分子型帯電防止剤”とも呼ばれており、これらの低分子型帯電防止剤は、帯電防止に有効ではあるもののポリマー中における拡散速度が大きいため時間の経過によって樹脂フィルム表面に滲出して、いわゆる“ブリードアウト”という問題を発生させるおそれを有する。
この特許文献1に係る高分子型帯電防止剤は、エーテル結合やエステル結合を含んだ極性ブロックと、アルキルなどからなる非極性ブロックとを有する共重合体であり、ポリマー中における移行性が低いことから、このような高分子型帯電防止剤を用いることでブリードアウトの問題を抑制させることができる。
一方で、高分子型帯電防止剤は、比較的、大量に配合しないと効果が発揮されず、しかも、一般的なポリ乳酸系樹脂に比べてはるかに高価であるために、このような高分子型帯電防止剤によってポリ乳酸系樹脂フィルムの帯電防止を図ろうとすると材料コストを増大させてしまいポリ乳酸系樹脂フィルムの汎用性を低下させるおそれを有する。
また、ポリ乳酸系樹脂特有の性質が高分子型帯電防止剤の大量配合により損なわれるおそれも有する。
すなわち、ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂は、ポリ乳酸系樹脂に対する相溶性が低いことから、ポリ乳酸系樹脂組成物でポリ乳酸系樹脂フィルムを形成させるに際してポリ乳酸系樹脂を含むマトリックス相中に前記ポリオレフィン系樹脂あるいは前記ポリスチレン系樹脂を含んだ粒子状の分散相が形成され、いわゆる“海島構造”を形成することとなる。
したがって、分散相の表面全体を導電路として利用することができ、単に高分子型帯電防止剤のみをポリ乳酸系樹脂などに分散させている場合と違って、フィルム(シート)表面の電気抵抗値を大きく低下させうる。
すなわち、高分子型帯電防止剤の使用量の低減を図りつつ帯電防止を図り得る。
本発明に係る第一の実施形態としてポリ乳酸系樹脂フィルムについて、以下に説明する。
まず、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムを形成するためのポリ乳酸系樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種がさらに含有されており、このポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種は、前記ポリ乳酸系樹脂に非相溶性を示す非相溶性成分として前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含有されている。
前記ポリエチレン(PE)系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、(高圧法によって得られる)低密度ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
なお、PP系樹脂として共重合体を採用する場合には、プロピレン以外のオレフィンを共重合体中に0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜10質量%の割合で含有させたものを用いることが望ましい。
この場合のオレフィン成分としては、エチレン、あるいは、炭素数4〜10のα−オレフィンを挙げることができる。
また、上記ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体を主成分とする共重合体であってもよく、上記スチレン系単量体とこのスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよい。
このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
すなわち、本発明で用いられるポリスチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体の1種以上と上記例示のビニル単量体の1種以上から構成されるコポリマー(共重合体)であってもよい。
さらに、本実施形態のポリスチレン系樹脂としては、上記例示の単量体以外に共重合可能な他の単量体成分を含有するコポリマーを用い得る。
このゴムによる改質とは、一般に、ゴム分を共重合成分として分子中に導入させる場合、及び、ゴムを混合成分としてポリスチレン系樹脂に分散させることを意味する。
すなわち、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂の中には、分子中にゴム成分の導入された耐衝撃性ポリスチレン(以下、「HIPS」ともいう。)、該HIPSと汎用ポリスチレン(以下、「GPPS」ともいう。)とのブレンド体、又はGPPSとスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)あるいはその水素添加物(SEBS)などとのブレンド体等が包含される。
中でも、ポリ乳酸系樹脂との相互作用を考慮した場合、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体が好ましく、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックのブロック共重合体)からなる高分子型帯電防止剤が好適に使用されうる。
しかも、本実施形態において用いられる高分子型帯電防止剤としては、プロピレンを70モル%以上含むオレフィン系ブロックとポリエーテル系ブロックとのブロック共重合体がより好ましい。
帯電防止性能の更なる向上を目的として、ポリアミド系樹脂をポリ乳酸系樹脂組成物に添加したり、ポリアミド系ブロックをさらに共重合させた高分子型帯電防止剤を本実施形態のポリ乳酸系樹脂組成物に含有させたりすることができる。
さらには、実質上、上記ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体のみからなる高分子型帯電防止剤を利用することが最も好ましい。
ただし、これらの添加によって、溶出イオン量が増加することがあるので使用量は、ポリ乳酸系樹脂組成物に含有される帯電防止剤(高分子型帯電防止剤+低分子型帯電防止剤)の合計量に占める割合が0.5質量%未満となるように含有させることが好ましい。
なお、ポリ乳酸系樹脂フィルムの表面抵抗率は、1×109〜1×1012Ω/□のいずれかとさせることがより好ましく、1×109〜1×1011Ω/□のいずれかとさせることが最も好ましい。
このような表面抵抗率の値をポリ乳酸系樹脂フィルムに付与しうるポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂のポリ乳酸系樹脂組成物に占める含有量としては、通常、5〜20質量%のいずれかであり、5〜15質量%のいずれかであることが好ましい。
この、高分子型帯電防止剤の下限値が、2質量%とされているのは、これよりも少ない含有量の場合には、ポリ乳酸系樹脂フィルムに十分な帯電防止効果が発揮されないおそれを有するためであり、上限値が30質量%とされているのは、これを超えて高分子型帯電防止剤を含有させても、その含有量に見合う帯電防止効果が得られにくいばかりでなくポリ乳酸系樹脂フィルムの材料コストを増大させてしまうおそれを有するためである。
なお、このような観点からは、前記高分子型帯電防止剤は、ポリ乳酸系樹脂組成物全体に占める割合が3〜20質量%の内のいずれかとなる割合で含有させることが好ましく、ポリ乳酸系樹脂組成物全体に占める割合が5〜10質量%の内のいずれかとなるように含有させることが特に好ましい。
本実施形態においては、一般的なフィルム製造方法に用いられる方法を採用することができ、例えば、前記ベース樹脂、前記ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種(非相溶性成分)、及び、前記高分子型帯電防止剤などを含有するポリ乳酸系樹脂組成物を作製する樹脂混練工程を実施した後に、得られたポリ乳酸系樹脂組成物をフィルム状に押出し加工する押出し工程を実施する方法などを採用しうる。
以下に、それぞれの工程に関して、より具体的に説明する。
まず、ベース樹脂となる少なくとも1種のポリ乳酸系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種と、高分子型帯電防止剤と、必要に応じてスリップ剤、防曇剤等の添加剤とを計量してタンブラーブレンダー、へンシェルミキサーなどでドライブレンドした後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで各配合材料が略均一に混合された状態となるように溶融混練する。
その後、混練物をストランド状に押出してペレタイズするか、ホットカットしてペレット化するなどしてポリ乳酸系樹脂組成物からなるペレットを作製する。
上記樹脂混練工程で得られたペレットを熱溶融状態でフィルム状に押出し加工する方法としては、例えば、サーキュラーダイなどから押出してインフレーション法によってフィルム化したり、T−ダイなどから押出してキャスト法によってフィルム化したりする方法があげられる。
この内、T−ダイなどのフラットダイでは、押出し方向への延伸が容易である一方で幅方向への延伸のためにはテンターなどの設備を要することから、幅方向への延伸も容易なサーキュラーダイを用いた押出し工程を実施することが好ましい。
すなわち、ポリオレフィン系樹脂またはポリスチレン系樹脂による分散相の形成された海島構造が溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物中に形成される。
このとき、分散相を形成しているポリオレフィン系樹脂またはポリスチレン系樹脂に対して親和性の高いオレフィン結合を含んだ非極性ブロックと、マトリックス相を形成しているポリ乳酸系樹脂に親和性の高いポリエーテルブロックとを有する高分子型帯電防止剤がこの分散相とマトリックス相との界面に集合して、この界面に沿っての電気抵抗の低い領域を形成させる。
すなわち、高分子型帯電防止剤によって覆われた状態でポリオレフィン系樹脂またはポリスチレン系樹脂粒子がベース樹脂であるポリ乳酸系樹脂中に分散されることになる。
そして、平面方向への長さが1μmを超える細長いコアシェル型の粒子(分散相)をフィルムの表面において形成させることで表面抵抗率を顕著に低下させることができる。
一方で、本実施形態においては、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂粒子、又は、これらの混合樹脂でコア部が形成され、外殻部(シェル部)が高分子型帯電防止剤で形成された粒子が形成される。
このことから、このコア部の分だけ高分子型帯電防止剤の使用量を抑制しつつ、この分散相の粒子間距離を縮めることができる。
すなわち、本実施形態のポリ乳酸系樹脂フィルムにおいては、樹脂の流れ方向に沿って上記のような長細い粒状に分散相が形成されることから、この粒子の長手方向に沿った電気抵抗値の低減が図られることとなる。
つまり、樹脂の流れ方向と直交する方向に電圧を印加した場合においては、コアシェル状粒子どうしが隣り合せとなる区間における最も電気抵抗値の低い箇所(通常、粒子どうしが最も接近している箇所)を通って流れる電荷の量によって電気抵抗値が左右されることになる。
したがって、イオン伝導等に有利な樹脂の流れ方向以外の方向においても電気抵抗値の低減が図られることとなり、高分子型帯電防止剤の配合量を30質量%以下、例えば、5〜10質量%にまで低減したとしてもポリ乳酸系樹脂フィルムの表面抵抗率の値を、一般的に求められる1013(Ω/□)オーダー以下(1×1014未満)の値となるように低下させうる。
前記溶解度パラメータはSP値などとも呼ばれ、Fedorsの式によって求められるが、通常、その値が0.5以上離れる物質どうしは非相溶性を示すといわれている。
そして、例えば、ポリ乳酸系樹脂であれば、通常、SP値が11.4程度であり、ポリオレフィン系樹脂では、例えば、一般的なPEでは8前後であり、ポリスチレン系樹脂であれば、9程度の値を示す。
したがって、この間の8.5〜9.7程度のポリマーで、体積固有抵抗値の低いポリマーからなる高分子型帯電防止剤を利用することで、マトリックス(ポリ乳酸系樹脂)相の側にも分散相(ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂)の側にも高分子型帯電防止剤が取り込まれてしまうことを防ぐことができ、ポリ乳酸系樹脂組成物に含有させた高分子型帯電防止剤の内のより多くの高分子型帯電防止剤をコアシェル状粒子の外殻部の形成に利用することができる。
すなわち、ポリ乳酸系樹脂に対して少なくとも非相溶性を示すことが確認できれば溶解度パラメータの値がポリ乳酸系樹脂よりも低いと判断することができる。
また、同様にポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂の中で前記高分子型帯電防止剤に対して非相溶性を示すものを選択することでマトリックス相を構成するベース樹脂と分散相のコア部を構成する樹脂との中間の溶解パラメータを有すると判断することができる。
このようにコアシェル状粒子の形状と、その外殻部を構成させる高分子型帯電防止剤の選択によって、ポリ乳酸系樹脂フィルムにおける高分子型帯電防止剤の使用量をより一層抑制させつつ表面抵抗率の低減を図ることができる。
このような分散相は、少なくともポリ乳酸系樹脂フィルムの表面に形成されていれば良く、フィルム内部における分散相の形状や大きさが帯電防止性能に与える影響は、フィルム表面が与える影響よりも小さい。
したがって、厚みの厚いポリ乳酸系樹脂フィルムが必要な場合は、例えば、3層共押出しを実施して、中央部を高分子型帯電防止剤や非相溶性成分を含まない構成とすることも可能である。
また、次に示すような積層シートにも応用が可能なものである。
次いで、本発明の第二の実施形態として、積層シートについて説明する。
図1は、本実施形態に係る積層シートの断面図であり、この図1にも示されているように、本実施形態に係る積層シート1は、表面層となる部分がポリ乳酸系樹脂フィルムで構成されており、該ポリ乳酸系樹脂フィルム層10に背面側で接する発泡層20がさらに備えられている。
すなわち、積層シート1は、その表面層が、表面抵抗率の低いポリ乳酸系樹脂フィルム層10によって形成されることで帯電防止が図られている。
例えば、ポリ乳酸系樹脂を含有するベース樹脂に対して、加熱分解型の発泡剤を含有させるか、ガス発泡のための核剤を含有させるかしたものなどが挙げられる。
また、前記核剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物などが挙げられる。
さらに、ガス成分としては、例えば、水、炭化水素、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を使用することができる。
これらは、単独、または、複数組み合わせて発泡層20の形成に用いることができる。
したがって、本実施形態の積層シートとしては、ポリ乳酸系樹脂フィルム層10を形成させるためのポリ乳酸系樹脂フィルムと、発泡層20を形成させるための発泡シートとを、一旦、別々に作製した後に、これらをヒートラミネートして一体化される場合もその一例として挙げられるものの共押出し成形法によってポリ乳酸系樹脂フィルム層10と発泡層20とが一度に形成される場合も本発明の積層シートとして意図する範囲である。
特には、本実施形態に係る積層シート1を作製する方法として、フィードブロック法による共押出し成形法を採用することが好ましい。
すなわち、帯電防止性能を有するポリ乳酸系樹脂フィルム層10の押出しと発泡層20の押出しに異なる押出し機を用いて、これらから押出される溶融状態の樹脂組成物を一つのダイに合流させた後、これを、例えば、サーキュラーダイの内側に沿って発泡層形成用の樹脂組成物を押出させるとともに外側に沿ってポリ乳酸系樹脂フィルム層形成用の樹脂組成物を押出させ、内外二層となる状態での押出しを実施することで外側にポリ乳酸系樹脂フィルム層10が形成され内側に発泡層20の形成された筒状の積層シート1を形成させることができる。
例えば、発泡層20の両面にポリ乳酸系樹脂フィルム層10,10’を設けたり(図2(a))、両表面を構成する2層のポリ乳酸系樹脂フィルム層10,10’の間に、複数の発泡層20,20’を設けたり(図2(b))する場合も本発明の積層シートとして意図する範囲のものである。
さらには、発泡層20の片面に2層のポリ乳酸系樹脂フィルム層10,10”を設ける(図2(c))場合も本発明の意図する範囲である。
また、2層又はそれ以上のポリ乳酸系樹脂フィルム層は、発泡層の片面側のみならず両面に形成させることもでき、これらに限らず種々の積層構造を積層シートに形成させ得る。
なお、この図2(a)、図2(b)に示すように両面にポリ乳酸系樹脂フィルム層を設けている場合には、必要な側にのみ帯電防止性能を付与させればよく、いずれか一方、又は両方のポリ乳酸系樹脂フィルム層を高分子型帯電防止剤とポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種とを含有するポリ乳酸系樹脂組成物によって形成させることができる。
また、図2(c)に示すように発泡層20の片面に2層のポリ乳酸系樹脂フィルム層を設ける場合は、外側のポリ乳酸系樹脂フィルム層10のみ、又は、外側のポリ乳酸系樹脂フィルム層10と内側のポリ乳酸系樹脂フィルム層10”の両方を高分子型帯電防止剤とポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種とを含有するポリ乳酸系樹脂脂組成物によって形成させることができる。
以下に、ポリ乳酸系樹脂フィルムの作製に用いる配合剤の略称と、その詳細とを記載する。
下記表1に示す配合にて、表1に示す厚みのポリ乳酸系樹脂フィルムを作製した。
また、得られたポリ乳酸系樹脂フィルムに対して、JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法により表面抵抗率の値を測定した。
具体的には、一辺が10cmの平面正方形状の試験片を温度22℃、湿度60%の雰囲気下に24時間放置した後、温度22℃、湿度60%の環境下、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試験片に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、次式により算出した。
ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs
ただし、
ρs:表面抵抗率(Ω/□)
D:表面の環状電極の内径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、7cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、5cm)
Rs:表面抵抗(Ω)
結果を、表1に併せて示す。
PE(LF580)を10質量%、高分子型帯電防止剤(ペレスタット230)を8質量%含有させたポリ乳酸系樹脂組成物を加熱溶融させた状態でフィルム状に押出したものを用いて作製した薄片試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した様子を図3に示す。
なお、上記TEM観察における試験片は、ポリ乳酸系樹脂フィルムを押出し方向に沿ってスライスしたものであり、図3のTEM像は、ポリ乳酸系樹脂フィルムの表面に相当する側においてこのスライスされた試験片を観察したものである。
すなわち、ポリ乳酸系樹脂フィルムの厚み方向の断面における表面側近傍の様子を押出し方向に直交する方向から観察したものである。
この図3からも、PEがアスペクト比の高い分散相を形成し、その周囲に高分子型帯電防止剤である「ペレスタット230」が集合されていることがわかる。
このことからも、本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂フィルムや積層シートにおいて高分子型帯電防止剤の使用量の低減を図りつつ帯電防止を図り得ることがわかる。
Claims (6)
- ポリ乳酸系樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有するポリ乳酸系樹脂組成物によって形成されているポリ乳酸系樹脂フィルムであって、
ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種が前記ポリ乳酸系樹脂組成物にさらに含有されることによって、該ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種を含む分散相と前記ポリ乳酸系樹脂を含んだマトリックス相とが少なくともフィルム表面において形成されており、しかも、前記高分子型帯電防止剤として前記ポリ乳酸系樹脂よりも溶解度パラメータが小さい高分子型帯電防止剤が用いられることによって、該高分子型帯電防止剤を外殻としたコアシェル状粒子となって前記分散相が形成されていることを特徴とするポリ乳酸系樹脂フィルム。 - 前記分散相には、平面方向の長さが1μmを超える細長いコアシェル状粒子が含まれている請求項1記載のポリ乳酸系樹脂フィルム。
- 前記高分子型帯電防止剤が、分子内にポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとを有するブロック共重合体である請求項1又は2記載のポリ乳酸系樹脂フィルム。
- ポリ乳酸系樹脂と高分子型帯電防止剤とを含んだポリ乳酸系樹脂組成物からなるポリ乳酸系樹脂フィルム層が表面層として備えられており、発泡層がさらに備えられている積層シートであって、
ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種が前記ポリ乳酸系樹脂組成物にさらに含有されることによって、該ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の内の少なくとも1種を含む分散相と前記ポリ乳酸系樹脂を含んだマトリックス相とが少なくとも前記表面層に形成されており、しかも、前記高分子型帯電防止剤として前記ポリ乳酸系樹脂よりも溶解度パラメータが小さい高分子型帯電防止剤が用いられることによって、該高分子型帯電防止剤を外殻としたコアシェル状粒子となって前記分散相が形成されていることを特徴とする積層シート。 - 前記分散相には、平面方向の長さが1μmを超える細長いコアシェル状粒子が含まれている請求項4記載の積層シート。
- 前記高分子型帯電防止剤が、分子内にポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとを有するブロック共重合体である請求項4又は5記載の積層シート。
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