JP2012070821A - 吸収性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ウエットバックを抑制し、横漏れを起こし難く、防漏性に優れた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】表面シート2と吸収体4との間に、表面シート2に比して密度が低く親水性の中間シート5が配置されている。中間シート5は、表面シート2の物品長手方向Xに沿う両側縁2s,2sそれぞれから物品幅方向Yの外方に延出する延出部50を有している。延出部50は、肌当接面2a側に隆起する隆起部52を有している。隆起部52は物品長手方向Xに直線状に延びており、隆起部52の頂部52aは表面シート2よりも上方に位置している。表面シート2は、中間シート5に比して液拡散性が低い。
【選択図】図2

Description

本発明は、パンティライナー(おりものシート)、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
生理用ナプキン等の吸収性物品として、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備し、縦長のものが知られている。また、斯かる構成の吸収性物品において、その側部からの体液の漏れ出し(いわゆる横漏れ)防止等を目的として、吸収体の物品幅方向外方に、着用者の肌側に向かって起立する体液防漏性のバリヤカフ(防漏壁)を形成する技術が知られている。
例えば特許文献1には、表面シート及び裏面シートそれぞれの吸収体の側縁からの延出部で形成された第1サイドフラップ(バリヤカフ)と、該吸収体の側縁近傍と該第1サイドフラップの外側縁との間に配置された第2サイドフラップ(バリヤカフ)とを具備する吸収性物品が記載されている。
また特許文献2には、吸収体を具備する本体の左右両側部に、該本体上面からの起立性向を有し且つ表面シート及び裏面シートとは別体のプラスチック製の開孔フィルムからなるバリヤカフが設けられた吸収性着用物品が記載されている。
また特許文献3には、防漏壁の内面域(物品幅方向の内方側を向く面)の少なくとも一部が親水性シートで形成され、該防漏壁の外面域(物品幅方向の外方側を向く面)に疎水性シートが位置している吸収性物品が記載されている。
特開平7−148200号公報 特開平8−322877号公報 特開2002−238949号公報
特許文献1に記載の吸収性物品は、吸収体の上面(肌当接面)を直接被覆している表面シートが、該吸収体の側縁部も直接被覆し、更に物品幅方向外方に延出しているため、排泄された体液が、該表面シートを伝ってバリヤカフを越えて物品幅方向外方に漏れ出すおそれがある。
特許文献2に記載の吸収性着用物品は、バリヤカフが開孔フィルムであるため、体液がバリヤカフの貫通孔を介して外部に漏れ出すおそれがあり、また、バリヤカフがプラスチック製であるため、肌触りが良くない。
特許文献3に記載の吸収性物品は、防漏壁の内面域が親水性シートで形成されているため、体液が該防漏壁を超えて外部に沁み出すおそれがある。
また、特許文献1〜3には、バリヤカフが機能する以前の体液の物品内部での移行性については特に記載されていない。例えば、この種の吸収性物品においては、吸収体に一旦は吸収された体液が表面シート上に戻る、いわゆるウエットバックが起こる場合があり、ウエットバックした体液が、表面シート上を流れて横漏れを引き起こす場合や、バリヤカフに付着し染み出して横漏れを引き起こす場合があるが、特許文献1〜3には、ウエットバックやそれに起因する横漏れについては何等記載されていない。ウエットバックを抑制し、横漏れを起こし難く、防漏性に優れた吸収性物品は未だ提供されていない。
従って本発明の課題は、ウエットバックを抑制し、横漏れを起こし難く、防漏性に優れた吸収性物品を提供することにある。
本発明は、肌当接面を形成する表面シート、非肌当接面を形成する裏面シート、及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備する縦長の吸収性物品であって、前記表面シートと前記吸収体との間に、該表面シートに比して密度が低く親水性の中間シートが配置されており、前記中間シートは、前記表面シートの物品長手方向に沿う両側縁それぞれから物品幅方向外方に延出する延出部を有しており、該延出部は、肌当接面側に隆起する隆起部を有しており、前記隆起部の頂部は、前記表面シートよりも上方に位置しており、前記表面シートは、前記中間シートに比して液拡散性が低い吸収性物品を提供することにより、前記課題を解決したものである。
本発明の吸収性物品は、ウエットバックを抑制し、横漏れを起こし難く、防漏性に優れている。また、不快なべたつきを着用者に感じさせ難く、ドライ感にも優れる。
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態の肌当接面側(表面シート側)を模式的に示す平面図である。 図2は、図1のI−I線断面を模式的に示す横断面図である。 図3は、図1に示すナプキンが備えている表面シートの一実施形態を模式的に示す斜視図である。 図4、図3に示す表面シートの肌当接面側の一部を拡大して模式的に示す平面図である。 図5は、図3に示す表面シートの製造方法の概略説明図である。 図6は、本発明の吸収性物品の他の実施形態の図2相当図である。 図7は、本発明の吸収性物品の更に他の実施形態の図2相当図である。 図8は、実施例の性能(防漏性及びべたつき防止性)の評価方法の説明図である。
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図面を参照して説明する。第1実施形態の生理用ナプキン1Aは、図1及び図2に示すように、肌当接面を形成する表面シート2、非肌当接面を形成する裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された液保持性の吸収体4を具備し、縦長の形状(図1に示す如き平面視において一方向に長い形状)をしている。吸収体4は、図1に示すように、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状をしている。生理用ナプキン1A(吸収性本体10)は、着用時に着用者の腹部寄りの位置に配される前方部A、着用者の液排泄部に対向配置される排泄部対向部B、及び着用者の背中寄りの位置に配される後方部Cを長手方向に有している。
尚、本明細書において、肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の装着時に装着者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の装着時に肌側とは反対側(衣類側)に向けられる面である。また、長手方向は、吸収性物品又はその構成部材の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図中、符号Xで示す方向は、物品長手方向(生理用ナプキン長手方向)であり、符号Yで示す方向は、物品幅方向(生理用ナプキン幅方向)である。
表面シート2は、その物品幅方向Yの長さが、吸収体4と略同じか、又は図示したように吸収体4よりも短くなされている。裏面シート3は、吸収体4の非肌当接面を直接被覆するように配置され、その物品幅方向Yの長さが、吸収体4よりも長くなされており、吸収体4の物品長手方向Xに沿う両側縁4s,4sそれぞれから幅方向Yの外方に延出している。裏面シート3と吸収体4との間は、接着剤によって接合されている。
生理用ナプキン1Aの非肌当接面(裏面シート3の非肌当接面3b)は、着用時に下着のクロッチ部等、衣類側に向けられる。非肌当接面3bには、生理用ナプキン1Aを下着のクロッチ部に固定するための粘着部(図示せず)が設けられている。該粘着部は、ホットメルト粘着剤を所定箇所に塗布することにより設けられており、生理用ナプキン1Aの使用前においてはフィルム、不織布、紙などからなる図示しない剥離シートによって被覆されている。
図2に示すように、表面シート2と吸収体4との間には、中間シート5が配置されている。中間シート5は、その物品幅方向Yの長さが、表面シート2及び吸収体4よりも長くなされており、表面シート2の物品長手方向Xに沿う両側縁2s,2sそれぞれから物品幅方向Yの外方に延出する延出部50を有している。延出部50は、生理用ナプキン1Aの物品長手方向Xの略全長に亘って存している。延出部50は、その物品長手方向Xに沿う端部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって、裏面シート3における吸収体4の側縁4sからの延出部の端部に、物品長手方向Xの全長に亘って接合されており、これにより、物品長手方向Xに延びる直線状の接合部51(生理用ナプキン1Aの側縁部)が形成されている。また、表面シート2、裏面シート3及び中間シート5は、図1に示すように、吸収体4の物品長手方向Xの前端及び後端から物品長手方向Xの外方に延出し、それらの延出部において、公知の接合手段によって互いに接合されてエンドシール部6を形成している。表面シート2と中間シート5との間及び中間シート5と吸収体4との間は、それぞれ、接着剤あるいは後述する溝部7によって、互いに接合されている。
中間シート5の延出部50は、図1及び図2に示すように、肌当接面側(着用者の肌側)に隆起する隆起部52を有している。隆起部52は、表面シート2の側縁2sに沿って物品長手方向Xに直線状に延びており、少なくとも排泄部対向部Bの全長に亘って配されている。第1実施形態における隆起部52は、図1に示すように、エンドシール部6を除いて、生理用ナプキン1Aの物品長手方向Xの略全長に亘って配されている。隆起部52は、少なくとも排泄部対向部B並びに前方部A及び後方部Cにおける排泄部対向部B寄りの部分においては、図2に示すように、その頂部52aが上方(着用者の肌側)を向くように起立しており、生理用ナプキン1Aの物品長手方向Xの前端部及び後端部(エンドシール部6の近傍)においては、図示していないが、頂部52aが物品幅方向Yの内方を向くようにクセ付けされて、やや内側に倒れている。
隆起部52の頂部52aは、図2に示すように、表面シート2よりも上方に位置している。ここで、「隆起部の頂部が表面シートよりも上方に位置している」とは、隆起部52の頂部52aが、表面シート2において最も上方(着用者の肌側)に位置している部分(第1実施形態では表面シート2の肌当接面2a)よりも、更に上方(着用者の肌側)に位置している場合を意味する。
第1実施形態における隆起部52は、図2に示すように、延出部50を形成している中間シート5が、頂部52aにおいて二つに折り曲げられて形成されている。折り曲げられることによって互いに向き合うこととなった中間シート5どうしは、互いに接合されずに離間しており、相対向する中間シート5,5間、即ち隆起部52の上部(吸収体4よりも上方に位置する部分)の内部には、第1の空間部53が形成されている。第1の空間部53は、表面シート2の側縁2sに沿って、隆起部52の物品長手方向Xの略全長に亘って存している。
隆起部52と表面シート2との間には、図2に示すように、生理用ナプキン1Aの肌当接面(表面シート2の肌当接面2a)側に凹状となるポケット部54が形成されている。ポケット部54は、吸収体4上に位置する表面シート2を底部、相対向する表面シート2の側縁2S及び該側縁2sと相対向する中間シート5を側壁部とし、表面シート2の側縁2sに沿って、隆起部52の物品長手方向Xの略全長に亘って存している。
吸収体4は、図2に示すように、中間シート5よりも物品幅方向Yの長さが短く、隆起部52の頂部52aよりも物品幅方向Yの内方に位置し(左右一対の頂部52a,52aに挟まれた領域に位置し)且つ中間シート5に隣接して配置されている。尚、前述したように、生理用ナプキン1Aの物品長手方向Xの前端部及び後端部(エンドシール部6の近傍)では隆起部52はやや内側に倒れているため、該前端部及び該後端部では、吸収体4が、隆起部52の頂部52aよりも物品幅方向Yの内方に位置しておらず、若干外方に位置している場合がある。
吸収体4の側縁4sは、図2に示すように、裏面シート3と中間シート5との接合部51に達しておらず、側縁4sと接合部51との間、即ち隆起部52の下部(吸収体4の側方に位置する部分)の内部には、第2の空間部55が形成されている。第2の空間部55は、表面シート2の側縁2sに沿って、隆起部52の物品長手方向Xの略全長に亘って存しており、第1の空間部53と繋がって1つの連続したトンネル状の空間を形成している。
表面シート2について詳述すると、表面シート2は、中間シート5に比して液拡散性が低い。即ち、表面シート2及び中間シート5それぞれの上面に経血等の体液を付着させた場合、表面シート2は、中間シート5に比して該体液を面方向に拡げ難く、速やかに下方に透過させることができ、中間シート5よりも厚み方向の液透過性に優れたシートである。
液拡散性が低い(液透過性が高い)表面シート2の具体例としては、例えば、1)表面(肌当接面)に、構成繊維が圧着又は接着されて形成された線状の凹部が格子状に形成されているシート(多数の領域に区画されたシート)、2)構成繊維の繊維間距離が中間シート5より大きいシート、3)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリビニルアセテート等の樹脂製フィルムからなり、該フィルムを厚み方向に貫通する貫通孔が多数形成されている開孔フィルム、等が挙げられる。前記1)及び2)は、シート自体は本来一定の液拡散性を有しているが、特定パターンの凹部の形成や繊維間距離の制御等によって人為的に液拡散性を低下(液透過性を向上)せしめたものであり、前記3)は、シート(フィルム)自体がそもそも液拡散性を実質的に有していないものである。
表面シート2は、下記測定方法による液拡散面積が、4cm2以下、特に2cm2以下であることが好ましい。液拡散面積が小さいほど、液拡散性が低いと評価できる。表面シート2よりも液拡散性に優れる中間シート5の液拡散面積は、中間シートの形成材料等にもよるが、通常表面シート2の液拡散面積よりも大きい。
<液拡散面積の測定方法>
吸収体として、縦15cm、横8cmの略矩形形状で坪量16g/m2の2枚の紙の間に坪量200g/m2のNBKPを介在させたものを用意し、該吸収体の一面上に、中間シート〔坪量30g/m2、芯鞘構造繊維(芯:ポリエチレンテレフタレート、鞘:高密度ポリエチレン、2.2dtex×51mm)によるエアスルー不織布、繊維表面を0.5質量%の親水性油剤処理、親水性油剤0.5質量%相当のポリエチレンの平滑フィルム上におけるイオン交換水との接触角が40〜60°〕と評価対象の表面シートとの積層体を、該中間シートが該吸収体と重なるように(評価対象の表面シートが外面となるように)重ね合わせ、こうして得られた吸収構造体を測定サンプルとする。前記積層体において、中間シートと表面シートとの間は接着剤によって接合し、該接着剤の塗布面積は、両シートが重なり合う部分の全面積の5%以下とする。尚、本測定方法で用いる吸収体としては、前記のものに限定されず、要は、評価対象シート(表面シート)及び中間シートにおける液の拡散性に実質的に影響を及ぼさないものであれば良い。測定サンプルにおける評価対象シート(表面シート)上に、円筒状の注入部の付いたアクリル板(大きさ60mm×160mm、重さ75g)を載せる。アクリル板に設けられた注入部は、内径22mmの円筒状をなし、アクリル板には、長手方向及び幅方向の中心軸に、該円筒状注入部の中心軸線が一致し、該円筒状注入部の内部とアクリル板の評価対象シート対向面との間を連通する内径7mmの貫通孔が形成されている。次いで、円筒状注入部の中心軸が評価対象シート(表面シート)の中央部(排泄部対向部に相当)の一点と一致するようにアクリル板を配置し、液温20℃での粘度が7mPa・sに調整されたグリセリン水溶液(青色2号を0.5〜1質量%外添)10gを、円筒状注入部から一度に注入し、測定サンプルに吸収させる。そして、グリセリン水溶液の注入時において、アクリル板の下方で該アクリル板に沿って拡散するグリセリン水溶液の最大拡散面積を測定し、その測定値を評価対象シート(表面シート)の液拡散面積とする。最大拡散面積の測定対象となる液には、測定サンプルに吸収・拡散された液のみならず、アクリル板と測定サンプル(評価対象シート)との間で拡散する液も含まれる。最大拡散面積は、目視でも測定可能であるが、円筒状注入部(貫通孔)の直上にビデオカメラ等の動画記録手段を設置し、該動画記録手段によって撮影された画像に基づいて測定することが好ましい。
図3には、第1実施形態の生理用ナプキン1が備えている表面シート2が示されている。第1実施形態に係る表面シート2は、前記1)及び2)の特徴を併せ持ったシート、即ち、肌当接面に線状の凹部20が格子状に形成され且つ構成繊維の繊維間距離が比較的大きいシートであり、面方向の液拡散性が低く、厚み方向の液透過性が高いものである。
第1実施形態に係る表面シート2は、図3に示すように、その一面2aに、線状の凹部20と、該凹部20で囲まれた凸部23とをそれぞれ多数有している。表面シート2は、単層構造の不織布(立体賦形不織布)からなり、その一面2aが多数の凹部20及び凸部23を有する凹凸形状となっており、他面2bが略平坦となっている。一面2aは、ナプキン1の肌当接面を形成する面である。凸部23は凹部20間に位置している。凸部23内は、表面シート20の構成繊維で満たされている。
線状の凹部20は、構成繊維が圧着又は接着されて形成されている。ここで、「線状」とは、凹部20の形状が平面視において図3に示す如き直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも良く、あるいは平面視において長方形、正方形、菱形、円形、十字等の多数の窪み部(エンボス部)が間隔を置かずに連なって全体として連続線を形成していても良い。また、繊維を圧着する手段としては、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工、超音波エンボス加工等が挙げられる。一方、繊維を接着する手段としてはホットメルトや各種接着剤による結合が挙げられる。第1実施形態に係る表面シート2における線状の凹部20は、カード法によって形成した繊維ウエブに熱エンボス加工を施して形成されている。線状の凹部20においては、表面シート2又はそれを構成する不織布の構成繊維である熱融着性繊維が熱融着により一体化している。線状の凹部20における熱融着性繊維は、熱融着成分が溶融して繊維の形態を維持していない。
多数の線状の凹部20は、図3に示すように格子状に形成されている。より具体的には、表面シート2は、図6に示すように、線状の凹部20として、互いに平行に且つ所定の間隔で形成された多数本の第1線状の凹部20aと、互いに平行に且つ所定の間隔で形成された多数本の第2線状の凹部20bとを有しており、第1線状の凹部20aと第2線状の凹部20bとが角度αをなして互いに交差している。第1線状の凹部20aの幅W1と第2線状の凹部20bの幅は同じであり、第1線状の凹部20aどうし間の間隔W2と第2線状の凹部20bどうし間の間隔も同じである。
このように、表面シート2には多数の線状の凹部20が格子状に形成されており、該線状の凹部20によって表面シート2が多数の領域に区画化され、区画領域22,22・・が形成されている。個々の区画領域22は、それぞれ周囲を線状の凹部20に囲まれた領域であり、平面視において菱形形状である。各区画領域22の中央部は、該区画領域22を囲む凹部20に対して相対的に隆起して凸部23となっている。
表面シート2においては、肌当接面2aに線状の凹部20が格子状に形成されているため、一面(肌当接面)2aに付着した経血等の体液が凹部20を乗り越えて面方向に拡散することが難しく、該体液は他面2b側に移行し易い。また、線状の凹部20と凸部23とが、表面シート2の一方向及び該一方向と交差する方向それぞれにおいて交互に配置されていることで、生理用ナプキン1の着用者の肌との接触面積が低減して蒸れやかぶれが効果的に防止される。また、凸部23(区画領域22)が、線状の凹部20によって包囲され、平面視において閉じた形状をしていることにより、凸部23が凹部20によって包囲されていない場合に比して、凸部23における構成繊維が表面シート2の厚み方向に向かって伸張しやすくなるため凸部23の厚みが増し、これにより、イ)液が素早く透過し、且つ、液残りが少なく、表面シート2の肌との接触面積が減少する、ロ)凸部23が規則正しいパターンで形成されるため、視覚的な印象が良好となる、等の効果が奏される。
個々の区画領域22の面積は、0.25〜2cm2、特に0.5〜1.5cm2であることが好ましい。また、線状の凹部20の面積率は16%以下、特に14%以下であることが、表面シート2中に液が残りにくくなることから好ましい。凹部20の面積率が高すぎると、シートの凸部23が押さえ付けられて、表面シート2の中に液が残り易くなる。また、凹部20の面積率は、10%以上、特に11%以上であることが、液の吸い込み性が向上することから好ましい。凹部20の面積率が低すぎると、線状の凹部20の幅が細くなり該部分のエンボスの強度が確保できないので、液の吸い込み性が悪化する。凹部20の面積率は、実物の写真を画像解析して得ることができる。このとき、凹部20に繊維の欠損部分がある場合は手動補正を行い、繊維があるものと仮定して測定する。
また、第1実施形態に係る表面シート2は、構成繊維として、加熱によってその長さが伸びる熱伸長性繊維を含んでいる。熱伸長性繊維は、熱融着性繊維であることが好ましい。熱伸長性繊維としての熱融着性繊維は、熱融着成分と該熱融着成分よりも融点の高い高融点成分とからなる複合繊維であることが好ましく、より好ましくは、熱融着成分を鞘、高融点成分を芯とする芯鞘型複合繊維が用いられる。熱融着成分及び高融点成分は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱融着成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、又はこれらのランダム若しくはブロック共重合体等が挙げられる。高融点成分としては、例えば、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン−6やナイロン−66などのポリアミド等が挙げられる。
熱融着成分と高融点成分との好ましい組み合わせとしては、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンとポリプロピレン、低融点のポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンとポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。芯鞘型複合繊維は、同芯タイプの他、偏芯タイプのもの、更には繊維の全周の一部に芯成分が露出しているもの等であっても良い。
熱融着性繊維は、凹凸形状の形成性の点から、熱伸長性複合繊維であることが好ましい。熱伸長性複合繊維は、加熱によってその長さが伸びる複合繊維であり、温度が90℃以上、好ましくは、110℃〜130℃で伸張する繊維である。熱伸長性複合繊維は、表面シート2の製造時に伸長させることにより、起伏の大きい凹凸を形成し得ると共に後述する繊維並列起立部を容易に生じさせることができる。従って、表面シート2として完成した後においては、その多くが伸長した状態となっており、その状態から更に伸長される繊維という意味ではない。伸長後の熱伸長性複合繊維も熱伸長性複合繊維に含める。
熱伸長性複合繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びたり、あるいは捲縮加工が施された繊維であって捲縮が解除されて見かけの長さが伸びる繊維が挙げられる。熱伸長性複合繊維としては、熱融着成分の軟化点より10℃高く、更に融点よりも10℃低い温度での伸張率が5〜40、特に10〜30%であることが、凹凸形状を顕著に形成させる点から好ましい。熱伸長性複合繊維の好ましい例は、特開2005−350836号公報の段落〔0024〕〜〔0040〕に記載されている。
熱融着成分と高融点成分とからなる複合繊維、特に熱伸長性複合繊維の割合は、表面シート2の構成繊維中、40〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。これらの複合繊維以外に配合する繊維としては、熱可塑性樹脂からなる繊維(非複合繊維)等が挙げられる。
表面シート2は、前述したように熱伸長性繊維を含んでおり、且つ該熱伸長性繊維を含むウエブに線状の凹部20を形成した後、加熱処理されて形成されている。以下、表面シート2の製造方法について、熱伸長性複合繊維を用いて製造する場合を例に図5を参照しながら説明する。
先ず、所定のウエブ形成手段(図示せず)を用いて表面シート2の原反となるウエブ2Aを作製する。ウエブ2Aは、熱伸長性複合繊維を含むものであるか、又は熱伸長性複合繊維からなるものである。ウエブ形成手段としては、例えば(a)カード機を用いて短繊維を開繊するカード法、(b)溶融紡糸された連続フィラメントを直接エアサッカーで牽引してネット上に堆積させる方法(スパンボンド法)、(c)短繊維を空気流に搬送させてネット上に堆積させる方法(エアレイ法)等の公知の方法を用いることができる。
次いで、ウエブ2Aをヒートエンボス装置71に導入する。そして、ヒートエンボス装置71内で、ウエブ2Aにヒートエンボス加工が施される。ヒートエンボス装置71は、一対のロール72,73を備えている。ロール72は周面が平滑となっている平滑ロールである。一方、ロール73は、その周面に、線状の凹部20に対応する格子状の凸部が形成されている彫刻ロールである。各ロール72,73は所定温度に加熱可能になっている。
ヒートエンボス加工は、ウエブ2A中の熱伸長性複合繊維の熱融着成分が溶融する温度で行う。ヒートエンボス加工の加工温度は、ウエブ2A中の熱伸長性複合繊維における熱融着成分の融点以上で且つ高融点成分の融点未満の温度で行われることが好ましい。また熱伸長性繊維の伸長開始温度未満の温度で行われることが好ましい。
ヒートエンボス加工によって、線状の凹部20を有する不織布74が得られる。次いで、その不織布74は、熱風吹き付け装置75に搬送される。熱風吹き付け装置75においては不織布74にエアスルー加工(加熱処理)が施される。熱風吹き付け装置75は、所定温度に加熱された熱風が、通気性のネット上に載置された不織布74を貫通するように構成されている。エアスルー加工は、不織布74中の熱伸長性複合繊維が加熱によって伸長する温度で行われる。且つ不織布74における線状の凹部20以外の部分に存するフリーな状態の熱伸長性複合繊維どうしの交点が熱融着する温度で行われる。尤も、斯かる温度は熱伸長性複合繊維の高融点成分の融点未満の温度で行うことが好ましい。
このようなエアスルー加工によって、不織布74に含まれる熱伸長性複合繊維が、線状の凹部20以外の部分において伸長する。熱伸長性複合繊維はその一部が線状の凹部20によって固定されているので、伸長するのは線状の凹部20間の部分である。熱伸長性複合繊維はその一部が線状の凹部20によって固定されていることによって、伸長した熱伸長性複合繊維の伸び分は、不織布74の平面方向への行き場を失い、エアスルー加工時の熱風吹きつけ側の熱伸長性複合繊維は、該不織布74の厚み方向へ移動する。これによって、線状の凹部20に囲まれた区画領域22の中央部に凸部23が形成される。一方、熱風吹きつけ側とは反対側で、通常ネット面側となる不織布74の熱風排出側(最終的に表面シート2の非肌当接面となる面)は、熱風等による抑えつけによって厚み方向への伸長が起こりにくく、平面内でジグザグに折れ曲がりながら展開するため平面性が高い。また、エアスルー加工によって線状の凹部20間に存する熱伸長性複合繊維どうしの交点が熱融着によって接合され、凸部23には、繊維接合点が3次元的に分散した状態に形成される。このようにして目的とする表面シート2が得られる。表面シート2の坪量は、好ましくは20〜40g/m2、更に好ましくは25〜35g/m2である。
こうして得られた第1実施形態に係る表面シート2(熱伸長性繊維を含んでいる表面シート)は、構成繊維の繊維間距離(区画領域22における繊維間距離)が、従来のこの種の表面シート(熱伸長性繊維を含まない通常の不織布)に比して比較的大きいため、前述した、肌当接面2aにおける格子状の凹部20による効果と相俟って、面方向への液拡散性が低く、液透過性に優れ、肌当接面2aに付着した体液を速やかに下方(中間シート5)へ移行させることができる。表面シート2における構成繊維の繊維間距離〔区画領域22の中央部(頂部)における繊維間距離〕は、好ましくは60〜150μm、更に好ましくは80〜130μmである。また、表面シート2の肌当接面2a側と非肌当接面2b側との繊維間距離の差は、20〜70μm、特に30〜50μmであることが好ましい。繊維間距離は次のようにして測定される。
<繊維間距離の測定方法>
表面シートにおける構成繊維の繊維間距離は、特願2009−239846号に記載の方法に準じて測定することができる。具体的には、走査型電子顕微鏡による表面シートの表面(肌当接面)側及び裏面(非肌当接面)側それぞれの平面の拡大画像(500〜1000倍)を用い、繊維の融着交点を特定し、融着交点でより上位となる繊維と下位となる繊維を5段階に選別して、画像上で繊維間距離を計測するためのネットワーク構造を特定する。次いで画像処理ソフトによる繊維で囲まれた領域の面積を計測し、該領域を円と見なすことでその円の直径を算出し、該直径を繊維間距離とした。
本発明に係る表面シートは、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、区画領域22(線状の凹部20で囲まれた領域)の平面視における形状は、図3に示す如き菱形に制限されず、例えば、長方形、正方形、平行四辺形、楕円形、三角形等の任意の形状とすることができる。また、一枚の表面シートに、菱形形状の区画領域と平行四辺形状の区画領域とを組み合わせて設ける等、平面視形状の異なる複数種類の区画領域を設けることもできる。
また、中間シート5について詳述すると、中間シート5は、表面シート2に比して密度が低く、親水性である。中間シート5は、表面シート2に比して低密度で嵩高であるが、親水性で液の拡散を抑制する構造を有しないため、表面シート2とは対照的に面方向の液拡散性に優れており、表面シート2を透過してきた経血等の体液を、面方向に拡散させながら吸収体4に移行させることができる。また、前述したように、防漏壁(バリヤカフ)として機能する隆起部52は、中間シート5から形成されているところ、中間シート5が親水性であることにより、体液は隆起部52の内部に吸収されやすく、着用者の肌が直接触れる隆起部52の外面には体液が残り難いため、生理用ナプキン1の使用中において、隆起部52に起因する不快なべたつきを着用者に感じさせ難く、肌を汚染するおそれが少ない。
また、表面シート2の非肌当接面(中間シート5との対向面)が、図3に示す他面2bのように平坦である場合は、表面シート2と中間シート5との間に隙間が生じ難く、そのため、表面シート2から中間シート5への液の移行がスムーズに行われる。表面シート2から中間シート5への液の移行性を高めるため、表面シート2と中間シート5との間を接着剤によって接合し、両シート2,5の密着性を高めても良い。その場合、接着剤の塗布面積は、両シート2,5が重なり合う部分の全面積の3〜10%程度とすることが好ましい。
親水性の中間シート5としては、界面活性剤による親水化処理が施された親水性の不織布が好ましく、該不織布としては例えば、エアスルー不織布、エアレイド不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布等が挙げられる。特に、親水性のエアスルー不織布は、低密度で嵩高な中間シート5として好ましく用いられる。
親水性の中間シート5の構成繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維を界面活性剤により親水化処理したもの等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要に応じて親水性を元来有する繊維を一部用いても良い。特に、レーヨン繊維、HBAパルプ繊維、マーセル化パルプ繊維は、嵩高性を有する中間シート5の構成繊維として好ましく用いられる。
中間シート5の構成繊維の繊維径は、低密度で嵩高な中間シート5とする観点から、好ましくは3.3dtex以上、更に好ましくは4.4〜10dtexである。繊維径の測定は、走査型電子顕微鏡観察を用いて行い、20本以上の繊維の平均値を、当該繊維の繊維径とする。
中間シート5の坪量は、好ましくは15〜50g/m2、更に好ましくは20〜40g/m2である。また、中間シート5の0.5g/m2の荷重下における厚みは、好ましくは0.5〜2mm、更に好ましくは1〜1.5mmである。
中間シート5の延出部50と表面シート2の物品幅方向Yの中央部(中間シート5と接触している部分)との密度比(中間シートの密度/表面シートの密度)は、好ましくは0.5〜1.1、更に好ましくは0.6〜0.9である。また、中間シート5の密度は、好ましくは0.01〜0.04g/m3、更に好ましくは0.02〜0.03g/m3である。シートの密度は次のようにして測定される。
<密度の測定方法>
測定対象物から長さ50mm、幅5mmの大きさを切り出してサンプルとし、電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用い、サンプルの重量を測定する。カトーテック(株)製のKES‐G5「ハンディ圧縮試験機」のハンディ圧縮計測プログラム(圧力は0.5g/cm2)を用い、サンプル厚みを測定し、測定したサンプルの重量を、サンプルの体積(厚み×長さ×幅)で除してサンプルの密度を算出し、これを測定対象物の密度とする。但し、測定対象物が、例えば図3に示す表面シート2のように、表面が凹部によって区画化されて区画領域が形成されたシートの場合は、その区画領域(凸部)における密度を該シートの密度とし、また、中空部を有する形態のシートの場合は、該シートの断面を拡大して実質厚みを計測し、その実質厚みを用いて算出した密度を該シートの密度とする。
また、吸収体4について詳述すると、吸収体4は、中間シート5に比して密度が高い。より具体的には、吸収体4は、比較的厚みの小さい薄型の吸収体であり、繊維を積繊して得られる従来の積繊タイプの吸収体に比して高密度である。そのため、吸収体4は、積繊タイプの吸収体に比して厚み方向の液透過性が低く、厚み方向の液透過速度が遅い。このような比較的高密度の吸収体の採用により、生理用ナプキンを薄型にすることが可能となる反面、該吸収体の厚み方向の液透過速度の遅さ等に起因して、中間シート5に液が留まり吸収された液が表面シート2上に戻るウエットバックが起こるおそれがある。しかし、第1実施形態の生理用ナプキン1は、前述した表面シート2及び中間シート5を含む特定構成を具備しているため、吸収体4として薄型で高密度の吸収体を用いてもウエットバックやそれに起因する横漏れを起こし難く、防漏性に優れている。
吸収体4としては、A)繊維及び吸水性ポリマーを含んで構成され、該吸水性ポリマーの含有率が高い吸収性シート、B)吸水性ポリマーを2枚の繊維シートで挟んだ構成の吸収性シート、C)吸水性ポリマーを含まない繊維シートそのもの、等を用いることができる。繊維及び吸水性ポリマーとしては、この種の吸収体において通常用いられるものを特に制限無く用いることができる。また、前記A)において、吸収性シートにおける吸水性ポリマーの含有率は、吸収性シートの全質量に対して、好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20〜40質量%である。また、前記B)及びC)において、繊維シートとしては、例えば、湿式抄造法により得られる通常の紙;繊維間距離の小さいスパンボンド不織布やメルトブロー不織布及びそれらの複合シート;密度がエアスルー不織布より高いニードルパンチ不織布やウォーターニードル不織布等を用いることができる。前記A)〜C)の各シートは、それぞれ複数枚を重ねて吸収体4として使用することもできる。
吸収体4の坪量は、好ましくは30〜150g/m2、更に好ましくは40〜90g/m2である。また、吸収体4の0.5g/m2荷重下における厚み(見掛け厚み)は、好ましくは0.35〜0.8mm、更に好ましくは0.45〜0.6mmである。厚みの測定は、繊維毛羽等による厚み変動の影響を低減させるために0.5g/m2の荷重下で実施し、(株)キーエンス製のマイクロスコープVHX−1000等を使用して断面観察によって実施するか、又は、カトーテック(株)製のKES‐G5「ハンディ圧縮試験機」のハンディ圧縮計測プログラム(SENS:2、力計の種類:5kg、SPEED RANGE:0.02cm/sec)による、0.5g/m2の荷重下の厚みT0の測定によって実施する。
吸収体4は、液透過性のコアラップシート(図示せず)で被覆されていても良い。特に、吸収体4が粒子状の吸水性ポリマーを含んで構成されている場合は、該吸収体4の全体をコアラップシートで被覆することにより、吸水性ポリマーの脱落が効果的に防止される。その場合、吸収体4とコアラップシートとの間は、所定の部位においてホットメルト粘着剤等の接合手段により接合されていても良い。コアラップシートとしては、例えば、ティッシュペーパー等の紙や各種不織布、開孔フィルム等を用いることができる。
第1実施形態の生理用ナプキン1Aについて更に説明すると、図1及び図2に示すように、生理用ナプキン1Aは、その肌当接面(表面シート2の肌当接面2a)における、該生理用ナプキン1Aの平面視において吸収体4と重なる領域に、表面シート2、中間シート5及び吸収体4が裏面シート3に向かって一体的に凹陥して形成された、溝部7を有している。溝部7においては、表面シート2、中間シート5及び吸収体4が熱融着等により一体化している。このように、生理用ナプキン1Aの肌当接面側に、表面シート2、中間シート5及び吸収体4が一体化された溝部7が形成されていることにより、吸収体4の平面方向の液の拡散が効果的に抑制されるようになり、また吸収体4のヨレが防止できる。溝部7の形成は、経血等の排泄された体液の拡散防止、装着時の身体に対する密着性の向上等に特に有効である。溝部7は、熱を伴うか又は伴わないエンボス、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。
溝部7は、平面視において線状をしている。ここで、「線状」とは、溝部の形状が平面視において直線に限られず、曲線、折曲線を含み、各線は、連続線でも破線でも良い。また、溝部7は、平面視において長方形、正方形、菱形、円形、十字等の多数の深窪み部(相対的に深く窪んでいる部分。高エンボス部。)と浅窪み部(相対的に浅く窪んでいる部分。低エンボス部。)とが、交互に連なって全体として連続線を形成していても良く、あるいは多数の窪み部が間欠的に配されて形成されていても良い。間欠的にとは、窪み部の隣り合う間隔が5mm以上離れていることをいう。
裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。裏面シート3は、液不透過性でも液透過性でも良く、例えば透湿性を有しない樹脂フィルムや、微細孔を有し、透湿性を有する樹脂製フィルム、撥水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等を用いることができる。
第1実施形態の生理用ナプキン1は、通常の生理用ナプキンと同様に下着に装着して使用する。生理用ナプキン1においては、前述したように、肌当接面2aに線状の凹部20が格子状に形成され、面方向の液拡散性が低く厚み方向の液透過性が高い表面シート2と、面方向の液拡散性が高い中間シート5とが、吸収体4の上方に順次積層されているため、表面シート2の肌当接面2a上に排泄された経血等の体液は、表面シート2を厚み方向に速やかに透過して中間シート5に移行され、中間シート5内で面方向に拡散されつつその下方に位置する吸収体4に移行される。
また、排泄された体液が、表面シート2を厚み方向に透過せずに、表面シート2の肌当接面2a上を物品幅方向Yに流れて表面シート2の側縁2sに達したとしても、側縁2sの近傍には中間シート5から形成された隆起部52が設けられているため、体液は隆起部52で堰き止められ、横漏れが効果的に防止される。特に、第1実施形態においては、隆起部52と表面シート2の側縁2sとの間に体液を収容可能なポケット部54が形成されており、更には、隆起部52の内部に、繊維等の隆起部形成材料が存在していない、第1及び第2の空間部53,55が形成されているため、横漏れが一層効果的に防止される。
また、隆起部52を形成する中間シート5が親水性であるため、肌当接面2a上を流れて隆起部52に達した体液は、隆起部52(中間シート5)の内部に吸収・拡散され、着用者の肌が直接触れる箇所である、隆起部52の外面には残り難い。そのため、第1実施形態の生理用ナプキン1は、隆起部52に起因する不快なべたつきを着用者に感じさせ難くドライ感に優れ、また、隆起部52を介して肌に体液を付着させるおそれが少ない。
また、第1実施形態の生理用ナプキン1は、前述した表面シート2及び中間シート5(隆起部52)を含む特定構成を具備しているため、薄型で高密度の吸収体4を採用した場合に懸念されるウエットバックやそれに起因する横漏れを起こし難い。従って、生理用ナプキン1は、薄型で携帯性に優れるものとすることができる。
前述した効果を一層確実に奏させるようにする観点から、第1実施形態の生理用ナプキン1における各部の寸法等は次のように設定されることが好ましい。
隆起部52の隆起高さL1(図2参照)は、好ましくは2〜6mm、更に好ましくは3〜5mmである。
隆起部52の頂部52aの、表面シート2において最も上方(着用者の肌側)に位置している部分(第1実施形態では表面シート2の肌当接面2a)からの突出高さL2(図2参照)は、好ましくは1〜4mm、更に好ましくは2〜3mmである。
第1の空間部53の幅(物品幅方向Yの長さ)L3(図2参照)は、好ましくは2〜10mm、更に好ましくは3〜8mmである。
ポケット部54の開口部の幅(物品幅方向Yの長さ)L4(図2参照)は、好ましくは0〜10mm、更に好ましくは3〜5mmである。
第2の空間部55の幅(物品幅方向Yの長さ)L5(図2参照)は、好ましくは2〜6mm、更に好ましくは3〜5mmである。
また、中間シート5において、表面シート2の下方に位置する部分の厚みt1(図2参照)は、隆起部52を構成する部分の厚みt2(図2参照)よりも小さい(t1<t2)ことが好ましく、厚みt1とt2との比(t1/t2)は、好ましくは0.4〜0.8、更に好ましくは0.5〜0.7である。
次に、本発明の吸収性物品の他の実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。以下の実施形態については、前述した第1実施形態の生理用ナプキン1Aと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態の生理用ナプキン1Aについての説明が適宜適用される。
図6には、本発明の吸収性物品の第2実施形態の生理用ナプキン1Bが示されている。第2実施形態の生理用ナプキン1Bは、隆起部52の上部(吸収体4よりも上方に位置する部分)の内部に第1の空間部53が形成されていない点で、第1実施形態の生理用ナプキン1Aと異なる。第2実施形態における隆起部52は、図6に示すように、延出部50を形成している中間シート5が頂部52aにおいて二つに折り曲げられ、且つ折り曲げられることによって互いに向き合うこととなった中間シート5どうしが互いに接合されて形成されている。相対向する中間シート5どうしは、ホットメルト接着剤等により接合されており、両シート5,5間に、液不透過性部材としての接着剤塗布部56が形成されている。接着剤塗布部56は、表面シート2の側縁2sに沿って、隆起部52の物品長手方向Xの略全長に亘って存している。接着剤塗布部56によっても、第1実施形態における第1の空間部53と同様に、体液が隆起部52(中間シート5)内を透過して外部に漏れ出すことが抑制され、横漏れが効果的に防止される。第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が奏される。
図7には、本発明の吸収性物品の第3実施形態の生理用ナプキン1Cが示されている。第1及び第2実施形態においては、平板状の中間シート5を頂部52aにおいて折り曲げることによって隆起部52を形成していたが、第3実施形態においては、図7に示すように、表面に所定の凹凸が予め形成された中間シート5’を用いることによって隆起部52を形成している。第3実施形態に係る隆起部52は、第2実施形態に係る隆起部52と同様に第1の空間部53を有しておらず、第3実施形態に係る隆起部52の上部(吸収体4よりも上方に位置する部分)の内部は、中間シート5’の形成材料(繊維等)で満たされている。表面に所定の凹凸が予め形成された中間シート5’は、凹凸が形成されていない平板状のシートに、公知のエンボス加工を施す方法により作製することができる。第3実施形態によっても第1及び第2実施形態と略同様の効果が奏されるが、隆起部52の上部の内部に、第1の空間部53や接着剤塗布部56に相当する、体液を堰き止め得る手段が設けられていないため、横漏れ防止効果に関しては、第1及び第2実施形態に劣る場合がある。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、本発明の吸収性物品の適用例の一つとして生理用ナプキン(おりものシート)を挙げたが、例えば、生理用ナプキン、失禁パッド等にも適用できる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
図1及び図2に示す生理用ナプキン1と概ね同じ構成を有し、長手方向の長さ15cm、幅方向の長さ8cmの略矩形の生理用ナプキンを作製し、これを実施例1のサンプルとした。1)表面シートとして下記のものを用い、2)中間シートとして、界面活性剤によって構成繊維表面を親水化した親水性のエアスルー不織布(レンゴー・ノンウーブン・プロダクツ製、坪量40g/m2、密度0.029g/m3、0.5g/m2荷重下における厚み1.35mm、構成繊維は芯鞘型複合繊維で、芯成分樹脂ポリエステル、鞘成分樹脂ポリエチレン、繊維径4.4dtex、特開2006−305044号公報の〔0027〕〜〔0030〕に記載の測定方法によって測定された、繊維表面の接触角50〜60°を用い、3)吸収体として、NBKPからなり、坪量35g/m2、クレープ率15%、厚み0.1mm(クレープ構造を含めた見掛け厚みではなく断面の拡大観察による実質厚みで0.1mm)の紙を用い、4)裏面シートとして、厚み25μmのポリエチレン製フィルムを用いた。表面シートと中間シートとの間を接着剤で接合し、その接着剤の塗布面積を、両シートが重なり合う部分の全面積の5%以下とした。
実施例1のサンプル(生理用ナプキン)において、隆起部52の隆起高さL1(図2参照)は2mm、隆起部52の頂部52aの、表面シート2において最も上方に位置している部分(表面シート2の肌当接面2a)からの突出高さL2(図2参照)は0.5mm、ポケット部54の開口幅L4(図2参照)は5mmであった。
(実施例1で使用した表面シート)
繊維径4dtex伸長率8%の芯鞘型複合繊維(芯成分樹脂ポリプロピレン、鞘成分樹脂ポリエチレン)をカード機に通してウエブとし、該ウエブを、ヒートエンボス装置に導入して、該ウエブに線状の凹部(エンボス部)を形成した。次いで、そのウエブを、熱風吹き付け装置に導入し、エアスルー加工による熱風処理を行い、坪量30g/m2の表面シートを得た。得られた表面シートの線状の凹部の形成パターンは、図3及び図4に示すパターンであり、第1及び第2線状の凹部20a,20bそれぞれの幅W1は0.5mm、第1線状の凹部20aどうし間の間隔及び第2線状の凹部20bどうし間の間隔W2は6mmであった。また、線状の凹部の面積率は14%であった。実施例1で使用した表面シートは、前記測定方法によって測定される密度が0.034g/m3、液拡散面積が1cm2であった。
〔実施例2〕
表面シート2と隆起部52との間に隙間を設けず、ポケット部54を形成しなかった(ポケット部54の開口幅L4を0mmとした)以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製し、これを実施例2のサンプルとした。
〔比較例1〕
側方に親水性の中間シート5を用いなかった(隆起部52を形成しなかった)、即ち実施例1における表面シート幅と同じ幅の中間シート5を配し、その肌当接面に実施例1における中間シートと同じ幅の表面シートを配した以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製し、これを比較例1のサンプルとした。
〔比較例2〕
中間シート5として、前記親水性のエアスルー不織布に代えて、撥水性の不織布(レンゴー・ノンウーブン・プロダクツ製、商品名GP200R、坪量20g/m2、密度0.038g/m3、0.5g/m2荷重下における厚み0.52mm、構成繊維は芯鞘型複合繊維で、芯成分樹脂ポリエステル、鞘成分樹脂ポリプロピレン、繊維径2.2dtex、前記測定方法による繊維表面の接触角90°以上(液滴が流れて形成できないため計測不可)を用いた以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製し、これを比較例2のサンプルとした。
〔評価〕
実施例及び比較例の各サンプル(生理用ナプキン)について、下記方法により防漏性及びべたつき防止性を評価した。その結果を下記表1に示す。
<防漏性及びべたつき防止性の評価方法>
各サンプルを図8に示す如く一方の側部が下方になるように傾斜させ(傾斜角度θ=45°)、その傾斜状態で、表面シート2の肌当接面2aにおける、サンプルの側縁部51からサンプル幅方向内方に30mm離間した位置に、試験液(グリセリン水溶液であって室温20℃に1日放置後の粘度7mPa・sに調整し、青色2号を0.5〜1質量%外添)を、流速コントロール可能なポンプ(例えばEYELA製マイクロチューブポンプMP−3N)を用いて、流速2g/15秒で連続的に付与し、試験液の付与開始から、試験液が側縁部51から漏れ出すまでの時間(漏れ防止時間)を測定する。また、漏れ防止時間から、サンプルに吸収された試験液の量(液吸収量)を算出する。漏れ防止時間が長いほど、また、液吸収量が多いほど、防漏性に優れ高評価となる。
また、傾斜させたときに下方に位置していたサンプルの側部の表面(隆起部52を有するサンプルについては隆起部52の外面)を指で触り、べたつきを感じなかった場合を○、べたつきを感じた場合を×とした。
Figure 2012070821
表1に示す結果から明らかなように、表面シートの物品幅方向の外方に親水性の中間シートからなる隆起部を有する、実施例のナプキンは、そのような親水性の隆起部を有しない比較例のナプキンに比して、防漏性に優れ、側部表面のべたつきが少ない。また、実施例1と実施例2との比較から、実施例1のように、隆起部と表面シートとの間にポケット部を形成することは、防漏性の向上に有効であることがわかる。隆起部自体を有しない比較例1のナプキンは、前述した防漏性の評価方法において、液が留まらずに流れ出る結果となって漏れ防止時間及び液吸収量を測定することができず、防漏性及びべたつき防止性に劣る結果となった。また、隆起部自体は有しているものの該隆起部が撥水性である比較例2のナプキンは、側方に流れた液が、該隆起部及びその近傍の表面上で液滴となって留まるため、べたつきやすい。
1A,1B,1C 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
2s 表面シートの側縁
2a 表面シート(生理用ナプキン)の肌当接面
20 線状の凹部
22 区画領域
23 凸部
3 裏面シート
3b 裏面シートの非肌当接面
4 吸収体
5,5’ 中間シート
50 延出部
51 裏面シートと中間シートとの接合部(生理用ナプキンの側縁部)
52 隆起部
52a 隆起部の頂部
53 第1の空間部
54 ポケット部
55 第2の空間部
56 接着剤塗布部(液不透過性部材)
6 エンドシール部
7 溝部
A 前方部
B 排泄部対向部
C 後方部
X 物品長手方向
Y 物品幅方向

Claims (7)

  1. 肌当接面を形成する表面シート、非肌当接面を形成する裏面シート、及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備する縦長の吸収性物品であって、
    前記表面シートと前記吸収体との間に、該表面シートに比して密度が低く親水性の中間シートが配置されており、
    前記中間シートは、前記表面シートの物品長手方向に沿う両側縁それぞれから物品幅方向外方に延出する延出部を有しており、該延出部は、肌当接面側に隆起する隆起部を有しており、
    前記隆起部の頂部は、前記表面シートよりも上方に位置しており、
    前記表面シートは、前記中間シートに比して液拡散性が低い吸収性物品。
  2. 前記吸収体は、前記中間シートに比して密度が高い請求項1記載の吸収性物品。
  3. 前記吸収体は、前記中間シートよりも物品幅方向の長さが短く、前記隆起部の頂部よりも物品幅方向内方に位置し且つ該中間シートに隣接して配置されている請求項1又は2記載の吸収性物品。
  4. 前記隆起部と前記表面シートとの間に、肌当接面側に凹状となるポケット部が形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の吸収性物品。
  5. 前記隆起部は、前記延出部を形成している前記中間シートが、前記頂部において折り曲げられて形成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の吸収性物品。
  6. 前記隆起部の内部に、空間部が形成されているか又は液不透過性部材が配されている請求項1〜5の何れか一項に記載の吸収性物品。
  7. 前記中間シートにおいて、前記表面シートの下方に位置する部分の厚みは、前記隆起部を構成する部分の厚みよりも小さい請求項1〜6の何れか一項に記載の吸収性物品。
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