JP2012068630A - 黒色膜、黒色膜付き基材及び画像表示装置、並びに黒色樹脂組成物及び黒色材料分散液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記黒色材料の体積分率が2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下であり、かつ厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上であり、体積抵抗率が1011Ω・cm以上である黒色膜である。
【選択図】なし
Description
これらの黒色材料は、黒色遮光性フィルム、黒色遮光性ガラス、黒色紙、黒色布、黒色インキに加え、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの表示素子のブラックマトリックス材料、ブラックシール材、ブラックマスク材等に黒色や遮光性を付与する材料として利用されている。
このブラックマトリックス等は、酸化クロム等の膜を用いて形成する場合もあるが、上記の黒色材料を光感光性の樹脂成分中に分散させた黒色膜を形成した後、フォトリソグラフィー法を用いて樹脂成分をパターン形成することで作製される樹脂ブラックマトリックス等が一般的である。
最近では、カラー液晶表示器においてより高精細化、高輝度化に対応するため、アクティブマトリックス型液晶ディスプレイにおいて、カラーフィルターをTFT素子基板側に設けたカラーフィルター・オン・アレイ方式(COA方式)や、ブラックマトリックスだけをTFT基板素子側に設けたブラックマトリックス・オン・アレイ方式(BOA方式)が提案されている。これらの方式によれば、カラーフィルター側にブラックマトリックスを形成する場合に比べ、アクティブ素子側との位置合わせマージンを取る必要がなくなるため、開口率を高くすることができ、その結果、高輝度化を図ることができる。
さらに、従来のTN(Twisted Nematic)駆動型液晶で問題となる視野角の狭さを大幅に拡大するための、IPS(In−Plane Switching)駆動型液晶も注目されている。
これらの自発光型表示装置は、対向する一対の電極間にガスや無機又は有機固体材料からなる発光層を有して構成されたものである。
このためには、各発光素子間を区分する隔壁や分離層を遮光化して遮光壁とするとともに、この遮光壁をより細くかつ高遮光性を有するものとする必要がある。
この反射は、主として各発光画素間の隔壁や分離層、さらに同部分に設けられた発光素子駆動用配線に起因している。従って、隔壁や分離層を遮光化するだけでなく、ブラックマトリックス等を設けることにより、光素子駆動用配線に外光が入射しないようにすることが有効である。
また、IPS駆動型液晶の場合にも、ブラックマトリックスが導電性を有すると、本来液晶を駆動するための電界とは異なる方向に電界が生じて画像の乱れを誘発するため、ブラックマトリックスを絶縁性とする必要がある。
さらに、これらのブラックマトリックス等や遮光壁においては、TFT素子や自発光素子を安定に動作させ画像の乱れを生じさせないために、寄生容量の最小化等を行う必要があり、このために低い比誘電率が要求されている。
しかしながら、この方法では、膜厚1μm当たりの光学濃度として高々0.5程度しか得ることができず、従ってブラックマトリックスとして必要とされる光学濃度(一般に2.5あるいはそれ以上)を得るためには膜厚を増大せざるを得ないために、基板とブラックマトリックスや遮光壁間との段差が大きくなり、結果として配線の断線が起こりやすくなったり、各液晶素子や各発光素子間の均一性が悪くなり素子の面内ばらつきが大きくなるという問題が生じる。
また、絶縁性が維持できた場合でも、膜の比誘電率が200以上と高くなる場合が多いために、画像の乱れが問題となる可能性がある。
例えば、カーボンブラックをジアゾニウム化合物で表面処理して、樹脂中のカーボンブラックの分散性を高めることで、ブラックマトリックス樹脂中のカーボンブラック含有比率を高めて遮光性を高くしても、絶縁性を維持するという方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、カーボン粒子の表面を絶縁物質でコーティングすることにより、高い絶縁性と比較的低い比誘電率を有するブラックマトリックスを得る方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、黒色材料として、組成を制御することで遮光性を高めたチタン酸窒化物(TiOxNy:チタンブラック)の粉末を使用し、これと絶縁性の酸化物粉末とを組み合わせて用いることで、高い遮光性と絶縁性とを有するブラックマトリックスが得られることが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
さらに、カーボンブラックの含有量を下げるとともに、有機顔料を添加することで、高い遮光性と絶縁性とを有するブラックマトリックスが得られることも開示されている(例えば、特許文献5参照)。
また、前記カーボン粒子の表面を絶縁物質でコーティングする方法においても、ブラックマトリックスの製造工程が複雑化するという課題を有する。さらに、同文献では絶縁物質の具体的記載が無く、実施が困難である。
また、前記有機顔料を添加する方法では、絶縁性は維持できるものの、遮光性の向上が難しく、結果としてブラックマトリックスの厚さを薄くすることができないこと、また外部光である太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線により、有機顔料の退色が発生する虞があるという課題がある。
〔1〕 少なくとも樹脂成分と黒色材料とを含み、
前記黒色材料の体積分率が2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下であり、かつ厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上であり、体積抵抗率が1011Ω・cm以上である黒色膜、
〔2〕 1kHzにおける比誘電率が15以下である〔1〕に記載の黒色膜、
〔3〕 前記黒色材料の膜中の粒度分布指標D90%が600nm以下である〔1〕または〔2〕に記載の黒色膜、
〔4〕 前記黒色材料が、銀及び錫を主成分とする金属微粒子である〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の黒色膜、
〔5〕 前記金属微粒子が、銀錫合金微粒子もしくは該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子からなり、当該銀錫合金微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下、もしくは当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下である〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の黒色膜、
〔6〕 〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の黒色膜を形成するための黒色樹脂組成物であって、
少なくとも黒色材料と樹脂形成成分又は樹脂成分とを含み、該黒色樹脂組成物中の該黒色材料の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、該黒色樹脂組成物中の粒度分布指標D90%が600nm以下である黒色樹脂組成物、
〔7〕 〔6〕に記載の黒色樹脂組成物に用いられる黒色材料分散液であって、
分散媒中に黒色材料が分散され、該黒色材料の分散液中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、分散液中の粒度分布指標D90%が600nm以下である黒色材料分散液、
〔8〕 〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の黒色膜を有する黒色膜付き基材、及び
〔9〕 〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の黒色膜を有する画像表示装置、
を提供するものである。
<黒色膜及び黒色材料分散液>
本実施形態の黒色膜は、少なくとも樹脂成分と黒色材料とを含み、
前記黒色材料の体積分率が2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下であり、かつ厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上であり、体積抵抗率が1011Ω・cm以上であることを特徴とする。
上記黒色材料の体積分率は2体積%以上28体積%以下であることが好ましく、2体積%以上25体積%以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態の黒色膜における上記黒色材料の体積分率は、黒色材料及び樹脂成分それぞれの比重が既知であることから、原料として使用する黒色材料及び樹脂形成成分の質量より求めることができる。
また、樹脂成分は比較的低温で分解や酸化により揮散するのに対し、黒色材料は金属のため高温まで安定であることから、熱重量分析(TG)による黒色膜の質量変化量から当該黒色膜中の樹脂成分と黒色材料の重量割合を求めることができ、一方、成分分析により樹脂成分と黒色材料それぞれの物質を特定すれば両物質の比重を求めることができるので、得られた重量割合と各成分の比重から、本実施形態の黒色膜における黒色材料の体積分率を求めてもよい。
上記膜中の平均分散粒子径は2nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上200nm以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態の黒色膜における平均分散粒子径は、粒度を累積分布で示した場合の累積値50%に対応する粒子径(累積50%径:メジアン径)で示している。
なお、D90%の下限値は特に規定されないが、好適に用いる黒色材料の平均粒子径の下限値が1nmであることから、D90%を5nm未満とすることは実際の製造工程上困難である。
本実施形態においては、観察視野から一定数の任意の粒子(50個以上、より好ましくは100個以上)を選び、それぞれの粒子像を同一面積の円で近似し、当該円の直径を該粒子の粒子径とした上で、粒子径の累積分布を求め、累積値50%に対応する粒子径(メジアン径)を膜中の平均粒子径とした。また、前記粒度分布指標D90%は選択した粒子の粒子径の累積90%径として求めた。なお、累積値はいずれも個数基準である。
また、1μm当たりの光学濃度は1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
ここで、本実施形態の黒色材料は黒色度が高く、また樹脂中での分散性にも優れていることから、本実施形態の黒色膜は、黒色材料の量を増加させることにより、所望の体積抵抗率を維持しつつ、1μm当たりの光学濃度を2以上とすることも容易である。なお、1μm当たりの光学濃度は高いほど望ましいが、測定上の限界から上限は10程度である。
試料は透過測定用として透明基板上に膜状に形成する。この膜状試料の光学濃度を透過濃度計で測定するとともに、触針式表面形状測定器等を用いて膜厚を測定し、得られた試料の光学濃度値を膜厚で除すことにより、厚さ1μm当たりの光学濃度を求めることができる。なお、膜状試料の光学濃度は4.0程度かそれ以下にしておくことが、測定精度の低下を防ぐことができるので好ましい。
この黒色膜の体積抵抗率は1012Ω・cm以上であることが好ましく、1013Ω・cm以上であることがより好ましい。黒色膜の体積抵抗率は高いほど好ましく、その上限は特に制限はないが、通常1018Ω・cm以下である。
なお、体積抵抗率の測定は、市販の体積抵抗率計を用い、例えば4探針法等により測定することができる。
ただし、比誘電率の影響は信号周波数に比例することから、液晶素子や発光素子におけるスイッチング信号の駆動周波数が遅い場合には、比誘電率は必ずしも低い必要はなく、さらに駆動周波数がDCレベル(10Hz以下)であれば、比誘電率の値自体を無視することができる。
なお、黒色膜の比誘電率の測定は、市販のLCRメーターを用いて行うことができる。
まず、黒色材料である銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子の黒色度が、従来の黒色材料であるカーボンブラック等に比べて高いことが挙げられる。黒色度が高いということは、同じ遮光性を得るために必要とする量が少なくて済む、すなわち厚さ1μm当たりの光学濃度を1以上としても、黒色材料の体積分率は従来より少なくて済むということである。このように黒色材料の体積分率が低いことから、黒色膜中で黒色材料微粒子は密に詰まることがない。微粒子同士が密に詰まった場合には、微粒子同士が接触するため導電パスが形成されるが、そのようなことは起こらないということである。
また、黒色材料自体は金属で比誘電率が非常に高いが、これを微小粒子化して比誘電率が低い樹脂成分中に均一に分散させて高抵抗膜とすることにより、黒色膜としての実効的な比誘電率を低下させることができる。さらに、黒色膜中の黒色材料の体積分率が低いことから、比誘電率低下の効果をより高めることができる。これにより、低い比誘電率を得ることができる。
なお、本実施形態の黒色材料は、後述の黒色材料分散液や黒色樹脂組成物において記すように、分散剤や分散助剤を用いて分散処理を行うことにより、前記黒色膜中の分散粒子径減少や粒度分布指標の減少を容易に達成することができる。
本実施形態における黒色材料としては、銀及び錫を主成分とする金属微粒子が好適に選択される。ここで、上記「銀及び錫を主成分とする」とは、金属微粒子において、少なくとも銀及び錫の両成分を含んでおり、かつ、銀及び錫の合計の含有量が金属微粒子全体に対して50質量%以上であることをいう。すなわち、成分及び含有量は金属微粒子全体に対して規定されるものであって、個々の粒子自体の成分及び含有量を規定するものではない。
従来より、粒子径が1nmから数百nm程度の金属微粒子(ナノメートルサイズの金属微粒子)は、金属の表面プラズモン吸収により様々な色調を呈することが知られており、また、この色調は微粒子の組成や粒子径により変化することも知られている。本実施形態においては、組成や粒子径を調整することにより、黒色を呈する金属微粒子を選択すればよく、このような黒色金属微粒子として、銀及び錫を主成分とする金属微粒子を選択することができる。
また、銀及び錫を主成分とする金属微粒子が銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子である場合においても、当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子中における銀成分の含有率、すなわち銀及び錫の合計量に対する銀成分の比率(銀/(銀+錫):質量%)は、45質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは62質量%以上95質量%以下であり、特に好ましくは65質量%以上95質量%以下である。
前記銀成分の含有率を上記の範囲に限定した理由は、該銀成分の比率が45質量%以上95質量%以下であると、光の反射率が高くならず十分な黒色度を有する黒色膜となり、十分な光遮蔽性を得ることができるからである。
なお、前記銀成分の好適な含有率範囲は、前記銀錫合金微粒子、もしくは前記銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子を一定量取ったとき、その微粒子全体における銀成分の好適な含有率範囲を示すものであって、個々の粒子における銀成分の好適な含有率範囲を示すものではない。
まず、銀錫合金相を有するものとしては、銀錫合金を化学式Ag1-XSnXで表した場合のXの範囲としては、0.118≦X≦0.2285のζ相(空間群P63/mmc)及び0.237≦X≦0.25のε相(空間群Pmmn)が知られている(Binary Alloy Phase Diagram,P94−97による)。これらの相の組成と空間群を、X線回折のICDDカード(JCPDSカード)と比較すると、ε相のX線回折データがAg3Sn(IDCC 71−0530)、ζ相のX線回折データがAg4Sn(IDCC 29−1151)に相当すると考えられる。従って、斜方晶系であるε相(Ag3Sn)又は六方晶系であるζ相(Ag4Sn)の構造を有する銀錫合金微粒子であれば、化学的安定性と黒色度とを満足することができる。
なお、Y=0(Ag1Sn0)あるいはZ=∞(Ag∞Sn)はAg単独相に相当するため、ここで示す銀錫合金微粒子としての規定範囲からは外してある。ただし、本実施形態において本黒色材料として用いられる銀及び錫を主成分とする金属微粒子としては、銀錫合金微粒子だけでなく、銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子も好適であることから、黒色材料中にはY=0のものを含んでもかまわない。
ここで、平均一次粒子径を上記の範囲に限定した理由は、平均一次粒子径を上記の範囲内とすることで所望の黒色膜を容易に形成することができるからである。すなわち、平均一次粒子径が1nm未満では、可視光線の波長と比較して小さ過ぎるために、光吸収の主要因である金属の局在型表面プラズモン吸収が減少し、所望の黒色度が得られなくなるおそれがあるからであり、一方、平均一次粒子径が200nmを超えると、粒子表面での電子運動の範囲が広がるために、金属の局在型表面プラズモン吸収が減少して、黒色度が低下するおそれがあるからである。
特に上記金属微粒子として、銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子を選択する場合においては、これらの微粒子が容易に得られる液相反応法を用いることが好ましい。
この製造方法にあっては、反応条件(例えば、錫と銀イオンとの比率、反応液のpH、反応温度、反応時間、還元剤量など)を適宜調整することにより、銀錫合金微粒子の生成量、銀微粒子の生成量(実質的に生成されない場合、すなわち銀錫合金微粒子のみが生成される場合を含む)、さらに銀錫合金微粒子と銀微粒子との生成量比を任意に制御することができる。
また、この黒色材料を用いて黒色膜を作製する場合、樹脂形成成分との分散性を考慮して、分散液の分散媒を有機溶媒系としてもよい。上記のように、黒色材料は水系の液相中に分散された状態で得られているから、有機溶媒系の分散液とする場合には、水系の液相から回収したケーキ状の凝集物を一旦機械的に粉砕して粉末とし、その後、ボールミル、ビーズミルなどの湿式混合機を用いて有機溶媒中にて分散処理する方法を採ることができる。また可能であれば、分散液の状態を維持したまま、溶媒置換法により分散液を変更してもよい。
本実施形態における樹脂成分としては、黒色材料である黒色を呈する金属微粒子が均一に分散された状態で硬化するものであって、形成された黒色膜に要求される特性に適したものを選択すればよい。この樹脂成分としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能である。
上記アクリル系樹脂としては、ポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオール(メタ)アクリレート系樹脂、シリコーン(メタ)アクリレート系樹脂等を例示することができる。なお、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。以下同様である。
また、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、 ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが好適に用いられる。
さらに、本実施形態の黒色膜をブラックマトリクス等とする場合には、樹脂成分の原料である樹脂形成成分としてアルカリ可溶性樹脂を選択し、この樹脂形成成分を用いて形成される樹脂を樹脂成分とすることが好ましい。
なお、樹脂(有機材料)の比誘電率は一般的に低いことから、黒色膜の比誘電率を15以下とすることに対する樹脂成分選定の限定要因はほとんどないが、一部の樹脂、例えばフェノール樹脂では、組成等により比誘電率が10を超えるものがあるので、注意が必要な場合がある。
本実施形態の黒色膜は、後述の黒色樹脂組成物を用いて、公知の各種塗工法により膜体を形成することにより得られる。例えば、黒色膜は、前記の黒色樹脂組成物を、基材の一主面上に、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法等の各種塗布法により層状に成形(塗布)して塗布膜を形成し、この塗布膜から溶剤を揮発等により除去し、必要により硬化処理することにより、容易に得ることができる。
放射線の照射量は、電離放射線硬化型樹脂が十分に硬化するために十分な量とするが、通常、20mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下とする。また、加熱処理の温度としては、熱反応性樹脂が十分に硬化し、かつ樹脂自体が変性や変形しないとともに基材が耐え得る温度であれば特に制限されないが、例えば、大気雰囲気中、80℃乃至300℃の範囲の温度にて3分乃至120分程度の熱処理を例示することができる。
また、黒色樹脂組成物中の成分が溶媒中に溶解した樹脂成分の場合においては、硬化処理は、塗布膜中の樹脂成分中から溶媒を除去する工程となり、大気圧下あるいは減圧下での加熱処理が挙げられる。この場合、溶媒除去により硬化した樹脂成分は、同様の溶媒に曝されることで再度膨潤・溶解する可能性があるため、加熱処理条件を厳しくすることにより、溶媒を完全に除去することが好ましい。ここで、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂を用いる場合には、溶媒除去後に紫外線、電子線、X線などの放射線の照射や、さらには熱処理を施して完全に硬化させればよく、樹脂成分として熱反応性樹脂を用いる場合には、溶媒除去後の熱処理により、硬化反応を完結させればよい。
本実施形態の黒色材料分散液(以下、単に「分散液」という場合がある)は、前述の本実施形態の黒色材料を分散媒中に分散した分散液である。
この分散液においては、黒色材料の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、分散媒中の粒度分布指標D90%が600nm以下である。
前記分散媒は、基本的には、水、有機溶媒及び樹脂形成成分のうちの1種以上を含有したものである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
分散液の含水率が5質量%を超えると、黒色材料を分散した分散液を非水系の樹脂成分あるいは樹脂形成成分と混合した場合に、分散液と樹脂成分あるいは樹脂形成成分とが分離し易くなり、安定した混合物(黒色樹脂組成物)が得難くなる場合がある。すなわち、分散液の含水率を5質量%以下とすることで、種類が多い非水系の感光性樹脂の中から所望の露光、現像条件、膜物性等に合ったものを適宜選択することができ、分散液や塗布膜における制約もなく、これらの設計の自由度を広げることができる。
本実施形態の分散液では、黒色材料の分散性の向上、分散安定性の向上のために、分散剤及び/又は分散助剤を併用することが好ましい。中でも、特に分散剤として高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。なお、ここで、分散剤は黒色材料の分散安定性を確保するための、黒色材料とは全く構造の異なるポリマー等であり、分散助剤とは黒色材料の分散性を高めるための顔料誘導体をいう。
これらの条件を満たす分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)等を挙げることができる。これらの分散剤は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
なお、これらの分散剤等もポリマー(樹脂)であり、比誘電率は一般的に低いことから、黒色膜の比誘電率を15以下とすることに対する限定要因はほとんどない。
上記平均分散粒子径は2nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上150nm以下であることがより好ましい。
また、上記分散液中の粒度分布指標D90%は、500nm以下であることがより好ましい。なお、D90%の下限値は特に規定されないが、黒色材料の平均粒子径の下限値が1nmであることから、D90%を5nm未満とすることは実際の分散工程上困難である。
また、後述の黒色樹脂組成物における平均分散粒子径及び粒度分布指標についても、同様の測定方法により求めることができる。
本実施形態の黒色膜の形成に用いる黒色樹脂組成物は、少なくとも本実施形態の黒色材料と樹脂形成成分又は樹脂成分とを含む樹脂組成物であって、黒色塗料等が含まれる。なお、樹脂形成成分とは、前記の樹脂成分を形成するための成分である。
上記平均分散粒子径は2nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上150nm以下であることがより好ましい。
また、上記黒色樹脂組成物中の粒度分布指標D90%は、500nm以下であることが好ましい。なお、D90%の下限値は特に規定されないが、黒色材料の平均粒子径の下限値が1nmであることから、D90%を5nm未満とすることは実際の分散工程上困難である。
なお、黒色樹脂組成物中の平均分散粒子径及び粒度分布指標D90%の測定方法については、前記黒色材料分散液の記載と同様の測定方法により求めることができる。
樹脂成分及び樹脂形成成分を合わせた含有量が70質量%を超えると、本黒色樹脂組成物を用いて黒色膜を形成したときに、黒色膜における樹脂成分単位体積中の黒色材料存在量が不足するために十分な遮光性が確保されない場合がある。一方、樹脂成分及び樹脂形成成分を合わせた含有量が5質量%未満であると、本黒色樹脂組成物を用いて黒色膜を形成したときに、均一な膜体が形成されない、必要な膜厚が得られない等、黒色膜としての好ましい形状が形成されない場合がある。
[A]黒色材料
[B]黒色材料分散媒
[C]樹脂形成成分
[D]樹脂成分
[E]樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒
(1):[A]+[C]
最小限の組み合わせである2成分系であり、液状の樹脂形成成分中に黒色材料を分散したものと捉えることができる。この場合、[C]は液状である必要がある。
(2):[A]+[B]+[C]
3成分系であり、前記「黒色材料分散液」と、樹脂形成成分とを混合したものと捉えることができる。一般的には[C]は液状である必要があるが、[C]が[B]に可溶の場合には、[C]は固体状であってもかまわない。
(3):[A]+[C]+[E]
3成分系であり、溶媒中に溶解させた樹脂形成成分中に黒色材料を分散させたものと捉えることができる。[C]は[E]に溶解させているため、液状でも固体状でもかまわない。
(4):[A]+[D]+[E]
3成分系であり、溶媒中に溶解させた樹脂成分中に黒色材料を分散させたものと捉えることができる。なお[D]は固体であるから、[D]が存在する限り[E]は不可欠である。
(5):[A]+[B]+[D]
[D]が[B]に可溶な場合にのみ可能な組み合わせであって、前記「黒色材料分散液」中に、樹脂成分を溶解したものと捉えることができる。この場合のみ、例外的に[E]は不要である。
(6):[A]+[B]+[C]+[E]
(7):[A]+[B]+[D]+[E]
4成分系であり、前記「黒色材料分散液」に、樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液を混合したものと捉えることができる。この場合、[B]と[E]とは相溶性が高い必要がある。両者の相溶性が低い場合、「黒色材料分散液」と「樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液」とがそれぞれ安定に存在しても、両者を混合した際に、相分離や粒子成分の凝集等が起こるため好ましくない。なお、[B]と[E]とが同一の場合には、(6)は(2)又は(3)に、(7)は(4)又は(5)に、それぞれ含めるものとする。また、[A]+[B]+[C]+[D]+[E]も考えられるが、これは樹脂形成成分の一部が樹脂成分に変化しつつある状態と同様と捉えることができることから、(6)に含めるものとする。
樹脂形成成分とは、前記の黒色膜における樹脂成分を形成するための成分であり、通常は樹脂成分のモノマー、オリゴマーやプレポリマーが含まれる。すなわち、前記樹脂成分として、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能であることから、これら樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーの少なくともいずれかもこれらに含まれる。
さらに、前記樹脂成分として熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、 ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等を選択する場合にも、樹脂形成成分としては、これらの熱可塑性樹脂を形成するための原料化合物や、重合性樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを挙げることができる。
この場合、前記黒色樹脂組成物中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂の割合は、5質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上50質量%以下である。この範囲よりもアルカリ可溶性樹脂の割合が多過ぎると、ブラックマトリックスパターン形成時に充分な感度が確保されず、また必要な遮光性も確保できない場合があり、一方少な過ぎると樹脂ブラックマトリックスの好ましい形状が形成されない場合がある。
光重合開始剤としては、特に、感度の点でオキシム誘導体類(オキシム系化合物) が有効であり、遮光性を高くしたり、フェノール性水酸基を含むアルカリ可溶性樹脂を用いる場合などは、感度の点で不利になるため、特にこのような感度に優れたオキシム誘導体類(オキシム系化合物)が有用である。本実施形態では、上記光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂ブラックマトリクスを形成する場合、分散液中の光重合開始剤の割合は、全固形分に対して0.4質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。この範囲よりも光重合開始剤の割合が多すぎると現像速度が遅くなり過ぎる場合があり、一方少なすぎると十分な感度が得られず、好ましい樹脂ブラックマトリクス形状も形成されない場合がある。
また、前記エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類、及び、(メタ)アクリル酸又はヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリエポキシ化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒(以下、「樹脂溶媒」という場合がある)としては、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶解度が高い液体であって、基本的には、水及び有機溶媒のうちの1種あるいは2種以上から選択されるものである。
前記樹脂溶媒としては、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶解度が高いほかに、黒色材料の分散性が高いこと、黒色材料分散液との相溶性が高いこと、また、黒色材料分散液と混合した際に、黒色材料の分散性や樹脂成分や樹脂形成成分の溶解度が低下しないこと、という条件が必要である。これらの条件が満たされない場合には、「黒色材料分散液」と「樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液」とがそれぞれ安定に存在しても、両者を混合して黒色樹脂組成物を形成した際に、相分離、黒色材料の凝集や沈降、樹脂形成成分又は樹脂成分の析出等が起こり、良好な黒色樹脂組成物が得られなくなるため好ましくない。ここで、樹脂溶媒と黒色材料分散液として、同一あるいは同類の溶媒を選択することができれば、このような問題点を回避できるので好ましい。
なお、前記有機溶媒としては、前述の黒色材料分散液に用いられる有機溶媒を同様に用いることができる。
また、本実施形態の黒色材料分散液として分散剤及び/又は分散助剤を含む分散液を選択し、この黒色材料分散液を黒色樹脂組成物の原料として使用する場合においては、当該分散液中に既に含まれている分散剤や分散助剤をそのまま使用してもよい。その理由として、分散剤や分散助剤は、黒色材料の表面を修飾することで黒色材料表面が分散媒や溶媒に対して親和性を有するようにする物質であることから、分散媒や溶媒と特性が変わらないのであれば、あえて別種の分散剤や分散助剤で処理する必要はないからである。
以上説明した黒色樹脂組成物は、少なくとも前記黒色材料並びに樹脂形成成分及び/又は樹脂成分を選択し、必要に応じて黒色材料分散媒や樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒を加え、さらには光重合開始剤、分散剤その他の成分を加えて混合分散することにより調製することができる。これらの内、黒色材料、黒色材料分散媒、樹脂形成成分、樹脂成分、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒の組み合わせについては、前述の通りである。
この場合、予め黒色材料分散液を調製し、これに樹脂形成成分等や光重合開始剤等を加えて溶解させることにより黒色樹脂組成物を調製してもよい。また、予め調製した黒色材料分散液と、樹脂形成成分等や光重合開始剤等の成分とを溶解させた溶液とを、混合することにより調製することもできる。
混合分散方法は、黒色材料や樹脂形成成分等を混合した混合液を、超音波分散機、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、アイガーミルなどの公知の分散処理方法より選択すればよいが、分散性の点からビーズミルが好ましい。また、複数の分散方法を組み合わせて使用してもよい。なお、予め調製した黒色材料分散液を用いる場合、黒色樹脂組成物の製造時には上記分散処理方法を行うことなく、黒色材料分散液と樹脂形成成分等を溶解させた溶液とを十分に混合・攪拌すればよい場合もある。
本実施形態の黒色膜付き基材は、基材上に既述の本実施形態の黒色膜を設けて構成されたものである。具体的には、例えば光透過性基材の上に、前述の黒色樹脂組成物を用いて既述したように形成した層を、必要に応じてパターニングすることで作製される。
前記プラスチック基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、セルロースアセテート、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート等から、用途や使用条件に基づいて適宜選択することができる。
上記露光、現像などのパターニング工程については公知の方法を使用できるが、例えば画像表示装置用のブラックマトリックスとして適用する場合には、特開2006−251095号公報の段落番号0096から0106に記載の方法や、特開2006−251237号公報の段落番号0116から0126に記載の遮光画像の形成方法が、本実施形態においても好適に用いることができる。
この工程についても公知の方法を使用できるが、例えば画像表示装置用のブラックマトリックスとして適用する場合には、特開2008−116895号公報の段落番号0029から0031に記載の方法を用いることができる。
ブラックマトリクス基板としたときの、黒色膜の膜厚は0.2μm以上5.0μm以下が好ましく、特に0.2μm以上4.0μm以下が好ましい。また、ブラックマトリクス基板における黒色膜は、本実施形態の黒色膜を使用しているので、薄膜でも高度の光学濃度を有する。
本実施形態の黒色膜は、各種画像表示装置において好適に用いることができる。前記画像表示装置としては、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置等の自発光型表示装置、CRT表示装置、液晶表示装置等が挙げられ、中でも液晶表示装置やEL表示装置に用いた場合に本実施形態の黒色膜の効果が顕著に発揮される。ここで、液晶表示装置の種類としては、STN、TN、VA、IPS、OCS、及びR−OCB等が挙げられる。
さらに体積抵抗率が高いことから、COA方式やBOA方式の液晶表示素子や自発光型表示装置のように、ブラックマトリックスと画素駆動用の配線とが接触する場合においても、配線の短絡等による素子の駆動不良をおこす虞がない。
さらには、高い光吸収性を利用して、コントラスト増強フィルム等へ応用することも可能である。
<各測定・評価方法>
以下に、実施例または比較例において採用した、材料及びシートの特性等の各測定または評価方法を示す。
(黒色材料中の銀成分の含有率)
黒色材料(銀錫合金微粒子もしくは該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子)中の銀成分の含有率は、黒色材料粉末の圧粉体を電子線マイクロアナライザー(EPMA:JXA8800、日本電子社製)にて分析し、波長分散型X線分光器を用いた定性ならびに定量分析によって粉末中の錫及び銀の含有比率(質量比)を測定することによって求めた。
調製した黒色材料分散液又は黒色樹脂組成物について、動的光散乱法を適用した粒度分布測定装置(Microtrac 9340−UPA、日機装社製)を用いて、この分散液の粒度分布を測定し、得られた分布結果より体積平均粒子径(MV値)を算術平均により求め、その値を平均分散粒子径とした。また、前記測定された粒度分布から粒度の累積分布(体積基準)を算出し、累積値90%に対応する粒子径(累積90%径)を求め、粒度分布指標D90%とした。
作製した黒色膜試料をFIB(集束イオンビーム)を用いて断面方向に切断して薄片化し、切断面を透過型電子顕微鏡(TEM:JEM−2010、日本電子社製)により観察した。観察視野から任意の粒子100個を選び、粒子形状が略球状であったことから、それぞれの粒子像を同一面積の円で近似し、当該円の直径を該粒子の粒子径とした。得られた結果より粒子径の累積分布を求め、累積値50%に対応する粒子径(メジアン径)を膜中の黒色材料の平均粒子径、累積値90%に対応する粒子径(累積90%径)を粒度分布指標D90%とした。なお、黒色膜における累積値は、いずれも個数基準である。
成膜基板としてITO膜をスパッタ法により表面に成膜したガラス基板を選択し、この基板上に成膜した黒色膜について、LCRメーター(LCRメーター4284A、Agilent社製)により比誘電率を、絶縁抵抗計(超高抵抗/微小電流計R8340A、エーディーシー社製)を用いて体積抵抗率を測定した。なお、比誘電率測定は1kHz・1Vにて、体積抵抗率測定はDC5Vにて実施した。
成膜基板としてITO膜をスパッタ法により表面に成膜したガラス基板を選択し、この基板上に黒色膜を成膜した黒色膜付きガラス基板を試料として、透過率濃度計(RT−120、TECHKON社製)を用いて透過率を測定し、ガラス基板単体(膜なし)の測定値を参照値とすることにより、黒色膜の光学濃度(OD値:Optical Densty)を得た。
次に、触針式表面形状測定器(P−10、KLAテンコール社製)を用いて黒色膜の膜厚を測定し、前記方法にて得られた黒色膜のOD値を膜厚(μm単位)で除することにより、1μm当たりの光学濃度を得た。
(黒色膜の作製)
銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)に、多官能性アクリレートを樹脂形成成分とするレジスト(分散媒:PGMEA、固形分:1質量%)を、固形分体積比(銀錫コロイド:レジスト)が3:97となるように添加し、超音波処理により分散して黒色塗料とした。なお、上記固形分体積比は仕込み比である。
次いで、この黒色塗料の粒度分布を前記の方法により測定したところ、平均分散粒径は13nmであり、粒度分布指標D90%は48nmであった。
その後、塗布膜側から、3kW高圧水銀を用い、100mJ/cm2の露光条件にて全面露光を施した。次いで、水酸化カリウム0.1%水溶液により現像を行った後、純水にて現像を停止し、ガラス基板を200℃で1時間ポストベークし、黒色膜付きガラス基板を得た。尚、この段階での黒色膜厚は0.5μmであった。
上記で得られたガラス基板上に形成した黒色膜について、前記の条件にしたがって光学濃度、体積抵抗率及び比誘電率を測定した。また、同様の条件にしたがってガラス基板上に形成した黒色膜を用いて、前述の方法によりTEM観察用試料を作製し、これのTEM観察を行うことにより膜中平均分散粒子径及び、膜中粒度分布指標D90%を求めた。
結果をまとめて第1表に示す。なお、第1表は黒色膜の評価に関する実施例、比較例である。
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が7:93となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が20:80となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が23:77となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が25:75となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。なお、本実施例では、比誘電率の測定において値が安定せず、測定を行うことができなかった。これは、膜体(バルク体)としての体積抵抗率は高い状態で維持されているものの、黒色材料の体積分率が高いことから、膜内に局所的な導電パス部分が形成されたためではないかと考えられる。これは、実施例5も同様と考えられる。
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が30:70となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:180nm、粒度分布指標D90%:500nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:60質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:5質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:50質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す
実施例1の黒色膜の作製において、銀錫コロイド液の代わりにカーボンブラック(商品名「HA3」、東海カーボン社製)を用い、実施例1と同様にカーボンブラックと樹脂形成成分との体積比が10:90となるようにレジストを加え、実施例1と同様に分散処理を行うことにより、カーボンブラック分散塗料を得た。なお、比較例1では、分散剤を使用していない。
上記カーボンブラック分散塗料を用いて、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。なお、本比較例における黒色膜は体積抵抗率が低く導電性が発現しているため、比誘電率の測定を行うことができなかった。これは、比較例4、5、6も同様である。
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:220nm、粒度分布指標D90%:550nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:170nm、粒度分布指標D90%:650nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が30:70となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が35:65となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
60℃に保温した純水200mlに、錫(Sn)コロイド(平均粒子径:20nm、固形分:20質量%、住友大阪セメント社製)15gと、銀(Ag)コロイド(平均粒子径:7nm、固形分:20質量%、住友大阪セメント社製)60gと、ポリビニルピロリドン(PVP)(商品名「k15」、東京化成工業社製)0.75gを水100mlに溶解した溶液とを加え、コロイド溶液とした。
次いで、このコロイド溶液を60℃に保持した状態で60分間攪拌し、その後、超音波を5分間照射した。次いで、このコロイド溶液を遠心分離により濃縮し、固形分が15質量%のA液を得た。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:3質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:70質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリカルボン酸系、分散剤添加量:70質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
(ブラックマトリックスの作製)
各遮光性感光性樹脂組成物塗布液として、実施例1乃至10で調製した各黒色塗料を用い、ブラックマトリックスパターンとして通常のメッシュ状パターン(線幅20μm)からなるパターンマスクを用いたことを除いては、特開2009−75446号公報の段落番号0301に記載のブラックマトリックス作製方法を用いて、10cm角のTFT素子基板上に、実施例1乃至9の黒色膜をメッシュ状パターンに形成させたブラックマトリックスを得た。
上記で得られた実施例1乃至10の黒色膜を有するブラックマトリクス(遮光画像)に対して、特開2006−251237号公報の段落番号0158から0170に記載の転写型の感光性樹脂フィルムを用いたカラーフィルター作製方法にて、赤色、緑色、青色の所定サイズ、形状の着色パターンを形成し、TFT素子基板上にカラーフィルターを作製した。
次いで、TFT素子基板上のカラーフィルターに対向する位置に、透明共通電極を設けた対向電極基板を配置し、カラーフィルターと対向電極基板間に液晶材料を封入して、液晶セルを形成した。得られた液晶セルの両面に偏光板を張り付け、さらに、TFT素子基板の裏面側に、バックライトとしての白色LEDを配置した。
このようにして作製された、COA方式の液晶表示装置の表示特性評価を行った。その結果、前記各ブラックマトリックスを用いたカラーフィルターを備えた液晶表示装置が、良好な表示特性を示すことが確認された。
また、本発明の黒色膜をブラックマトリクスとしたカラーフィルターは、液晶表示装置において良好な表示特性を示した。
Claims (9)
- 少なくとも樹脂成分と黒色材料とを含み、
前記黒色材料の体積分率が2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下であり、かつ厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上であり、体積抵抗率が1011Ω・cm以上である黒色膜。 - 1kHzにおける比誘電率が15以下である請求項1に記載の黒色膜。
- 前記黒色材料の膜中の粒度分布指標D90%が600nm以下である請求項1または2に記載の黒色膜。
- 前記黒色材料が、銀及び錫を主成分とする金属微粒子である請求項1乃至3のいずれかに記載の黒色膜。
- 前記金属微粒子が、銀錫合金微粒子もしくは該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子からなり、当該銀錫合金微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下、もしくは当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の黒色膜。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の黒色膜を形成するための黒色樹脂組成物であって、
少なくとも黒色材料と樹脂形成成分又は樹脂成分とを含み、該黒色樹脂組成物中の該黒色材料の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、該黒色樹脂組成物中の粒度分布指標D90%が600nm以下である黒色樹脂組成物。 - 請求項6に記載の黒色樹脂組成物に用いられる黒色材料分散液であって、
分散媒中に黒色材料が分散され、該黒色材料の分散液中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、分散液中の粒度分布指標D90%が600nm以下である黒色材料分散液。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載の黒色膜を有する黒色膜付き基材。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の黒色膜を有する画像表示装置。
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