JP2012068630A - 黒色膜、黒色膜付き基材及び画像表示装置、並びに黒色樹脂組成物及び黒色材料分散液 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた遮光性を有し、かつ一定の体積抵抗率を付与された黒色膜、黒色膜付き基材及びそれを備えた画像表示装置、さらには上記黒色膜を形成するための黒色樹脂組成物及び黒色材料分散液を提供すること。
【解決手段】前記黒色材料の体積分率が2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下であり、かつ厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上であり、体積抵抗率が1011Ω・cm以上である黒色膜である。
【選択図】なし

Description

本発明は、黒色膜、該黒色膜を有する黒色膜付き基材及び画像表示装置、並びに黒色樹脂組成物及び黒色材料分散液に関する。
従来、黒色材料としては、カーボンブラック、チタンブラック(低次酸化チタン又は酸窒化チタン)、酸化鉄、クロム、銀微粒子等の金属材料や無機材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
これらの黒色材料は、黒色遮光性フィルム、黒色遮光性ガラス、黒色紙、黒色布、黒色インキに加え、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの表示素子のブラックマトリックス材料、ブラックシール材、ブラックマスク材等に黒色や遮光性を付与する材料として利用されている。
上記のうち、液晶表示素子用のブラックマトリックスやブラックストライプ(以下、「ブラックマトリックス等」と略記する)は、液晶表示素子において駆動電極等に起因する各画素間の光のもれを防ぐことで、画像のにじみやぼけを抑えるために用いられるものであって、一般的にはTFT素子基板と対をなすガラス又はプラスチックシートなどの透明基板上に、フォトリソグラフィー法を用いて形成されるストライプ状または格子状の遮光性材料のパターンである。
このブラックマトリックス等は、酸化クロム等の膜を用いて形成する場合もあるが、上記の黒色材料を光感光性の樹脂成分中に分散させた黒色膜を形成した後、フォトリソグラフィー法を用いて樹脂成分をパターン形成することで作製される樹脂ブラックマトリックス等が一般的である。
ここで、従来の液晶表示素子用のブラックマトリックスは、TFT素子基板と対をなすガラス又はプラスチックシートなどの透明基板上に形成されている。
最近では、カラー液晶表示器においてより高精細化、高輝度化に対応するため、アクティブマトリックス型液晶ディスプレイにおいて、カラーフィルターをTFT素子基板側に設けたカラーフィルター・オン・アレイ方式(COA方式)や、ブラックマトリックスだけをTFT基板素子側に設けたブラックマトリックス・オン・アレイ方式(BOA方式)が提案されている。これらの方式によれば、カラーフィルター側にブラックマトリックスを形成する場合に比べ、アクティブ素子側との位置合わせマージンを取る必要がなくなるため、開口率を高くすることができ、その結果、高輝度化を図ることができる。
一方、液晶表示装置において高コントラスト化を図るためには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)各液晶素子間の光のもれをより防ぎ、画像のにじみやぼけをより抑える必要が生じる。すなわち、液晶表示装置において高輝度と高コントラストを得るためには、ブラックマトリックスの微細化と高遮光性が必要となる。
さらに、従来のTN(Twisted Nematic)駆動型液晶で問題となる視野角の狭さを大幅に拡大するための、IPS(In−Plane Switching)駆動型液晶も注目されている。
一方、近年、バックライト等を必要としない自発光型の表示装置として、プラズマディスプレイ装置や無機EL装置、有機EL装置等が実用化されている。
これらの自発光型表示装置は、対向する一対の電極間にガスや無機又は有機固体材料からなる発光層を有して構成されたものである。
このような自発光型の表示装置において高輝度を図るためには、各発光素子自体の発光面積を拡大させる方法が考えられる。また、高コントラスト化は、R、G、B各発光素子間の光のもれや相互干渉を防ぐことで、混色を防ぎ、画像のにじみやぼけを抑えることが重要となっている。
このためには、各発光素子間を区分する隔壁や分離層を遮光化して遮光壁とするとともに、この遮光壁をより細くかつ高遮光性を有するものとする必要がある。
さらに、このような自発光型の表示装置においては、その表示品質として、コントラストの向上が一つの課題となっている。すなわち、表示面に外部光が入射しこれが反射することにより、発光層からの光による表示が損なわれ、結果として良好な表示品質が得られないといった課題がある。
この反射は、主として各発光画素間の隔壁や分離層、さらに同部分に設けられた発光素子駆動用配線に起因している。従って、隔壁や分離層を遮光化するだけでなく、ブラックマトリックス等を設けることにより、光素子駆動用配線に外光が入射しないようにすることが有効である。
ここで、COA方式やBOA方式の液晶表示素子や、自発光型表示装置においては、ブラックマトリックス等や遮光壁に素子駆動用の配線が接触したり、ブラックマトリックスや遮光壁上に直接素子駆動用配線を設ける構造が主流となってきている。この場合、ブラックマトリックス等や遮光壁には、配線間の短絡を防ぐため、一定値以上の体積抵抗率を有する絶縁性材料を用いる必要が生じる。
また、IPS駆動型液晶の場合にも、ブラックマトリックスが導電性を有すると、本来液晶を駆動するための電界とは異なる方向に電界が生じて画像の乱れを誘発するため、ブラックマトリックスを絶縁性とする必要がある。
さらに、これらのブラックマトリックス等や遮光壁においては、TFT素子や自発光素子を安定に動作させ画像の乱れを生じさせないために、寄生容量の最小化等を行う必要があり、このために低い比誘電率が要求されている。
従来のブラックマトリックス等や遮光壁においては、遮光用黒色材料として、一般的にカーボンブラックが使用されている。カーボンブラックは遮光性は高いものの、電気抵抗値が低いため、樹脂成分と混合してブラックマトリックス等や遮光壁を形成する場合に、これらを高遮光性とするために、樹脂成分に対するカーボンブラックの添加量を増加させると、カーボンブラックの粒子同士が接触して導電パスが形成され、ブラックマトリックス等や遮光壁の絶縁性が保てなくなるという問題が生じる。
絶縁性が保てないという問題を防ぐためには、カーボンブラックの添加量を導電性が発現しない程度に抑えることで絶縁性を維持しつつ、ブラックマトリックスの厚さや遮光壁の高さを増すことで、遮光性を高める方法がある。
しかしながら、この方法では、膜厚1μm当たりの光学濃度として高々0.5程度しか得ることができず、従ってブラックマトリックスとして必要とされる光学濃度(一般に2.5あるいはそれ以上)を得るためには膜厚を増大せざるを得ないために、基板とブラックマトリックスや遮光壁間との段差が大きくなり、結果として配線の断線が起こりやすくなったり、各液晶素子や各発光素子間の均一性が悪くなり素子の面内ばらつきが大きくなるという問題が生じる。
また、絶縁性が維持できた場合でも、膜の比誘電率が200以上と高くなる場合が多いために、画像の乱れが問題となる可能性がある。
これらの問題、すなわち遮光性が高く、絶縁性を有し、かつ厚さを抑えるとともに、比誘電率が低いブラックマトリックスや遮光壁を得るために、次のような方法が開示されている。
例えば、カーボンブラックをジアゾニウム化合物で表面処理して、樹脂中のカーボンブラックの分散性を高めることで、ブラックマトリックス樹脂中のカーボンブラック含有比率を高めて遮光性を高くしても、絶縁性を維持するという方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、カーボン粒子の表面を絶縁物質でコーティングすることにより、高い絶縁性と比較的低い比誘電率を有するブラックマトリックスを得る方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、黒色材料として、組成を制御することで遮光性を高めたチタン酸窒化物(TiOxNy:チタンブラック)の粉末を使用し、これと絶縁性の酸化物粉末とを組み合わせて用いることで、高い遮光性と絶縁性とを有するブラックマトリックスが得られることが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
さらに、カーボンブラックの含有量を下げるとともに、有機顔料を添加することで、高い遮光性と絶縁性とを有するブラックマトリックスが得られることも開示されている(例えば、特許文献5参照)。
特開平5−127433号公報 特開2005−215149号公報 特開2006−189765号公報 特開2008−266045号公報 特開2009−75446号公報
しかしながら、 前記カーボンブラックの分散性を高める方法では、製造時点で融着や凝集を起こしているカーボンブラック粒子自体の状態はそのままであるから、あくまで融着粒子や凝集粒子同士の分散性が改善されたに過ぎず、このため、特に黒色度を高めるためにカーボンブラック量を増やした場合には、融着粒子や凝集粒子同士の再凝集が発生しやすくなり、ブラックマトリックスにおける特性の均一性が低下したり、部分的な導電性が発現してしまうという課題がある。さらに、同文献では安定性改善のために、液状ではなくあらかじめ仮膜化しておく方法が示されているが、ブラックマトリックスの製造工程が複雑化し、ブラックマトリックスと基材間の接合性が低下するという課題もある。
また、前記カーボン粒子の表面を絶縁物質でコーティングする方法においても、ブラックマトリックスの製造工程が複雑化するという課題を有する。さらに、同文献では絶縁物質の具体的記載が無く、実施が困難である。
また、前記チタン酸窒化物粉末を用いる方法では、チタン酸窒化物が導電性を有するため、絶縁性の酸化物粉末と組み合わせることでブラックマトリックスとしての絶縁性を確保しているが、ブラックマトリックスを形成する樹脂成分に対して添加可能なチタン酸窒化物粉末と酸化物粉末の合計量には限度があるため、高い黒色度と高絶縁性とを両立させることが難しいという課題がある。さらに、チタン酸窒化物粉末と酸化物粉末が樹脂成分中に均一に分散されていない場合には、チタン酸窒化物粉末同士が連続して導電パスが形成され絶縁性が保てなくなるため、両成分を均一に分散させる必要がある。
また、前記有機顔料を添加する方法では、絶縁性は維持できるものの、遮光性の向上が難しく、結果としてブラックマトリックスの厚さを薄くすることができないこと、また外部光である太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線により、有機顔料の退色が発生する虞があるという課題がある。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、優れた遮光性を有し、かつ一定値以上の体積抵抗率、さらに好適には一定値以下の比誘電率を付与された黒色膜、該黒色膜を有する黒色膜付き基材及び画像表示装置、さらには上記黒色膜を形成するための黒色樹脂組成物及び黒色材料分散液を提供することを目的とする。
上記課題は、下記本発明により解決される。すなわち、本発明は、
〔1〕 少なくとも樹脂成分と黒色材料とを含み、
前記黒色材料の体積分率が2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下であり、かつ厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上であり、体積抵抗率が1011Ω・cm以上である黒色膜、
〔2〕 1kHzにおける比誘電率が15以下である〔1〕に記載の黒色膜、
〔3〕 前記黒色材料の膜中の粒度分布指標D90%が600nm以下である〔1〕または〔2〕に記載の黒色膜、
〔4〕 前記黒色材料が、銀及び錫を主成分とする金属微粒子である〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の黒色膜、
〔5〕 前記金属微粒子が、銀錫合金微粒子もしくは該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子からなり、当該銀錫合金微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下、もしくは当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下である〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の黒色膜、
〔6〕 〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の黒色膜を形成するための黒色樹脂組成物であって、
少なくとも黒色材料と樹脂形成成分又は樹脂成分とを含み、該黒色樹脂組成物中の該黒色材料の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、該黒色樹脂組成物中の粒度分布指標D90%が600nm以下である黒色樹脂組成物、
〔7〕 〔6〕に記載の黒色樹脂組成物に用いられる黒色材料分散液であって、
分散媒中に黒色材料が分散され、該黒色材料の分散液中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、分散液中の粒度分布指標D90%が600nm以下である黒色材料分散液、
〔8〕 〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の黒色膜を有する黒色膜付き基材、及び
〔9〕 〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の黒色膜を有する画像表示装置、
を提供するものである。
本発明によれば、優れた遮光性を有し、かつ一定値以上の体積抵抗率を付与された黒色膜、該黒色膜を有する黒色膜付き基材及び画像表示装置、さらには上記黒色膜を形成するための黒色樹脂組成物及び黒色材料分散液を提供することができる。従って、高輝度で高コントラストな特性を有する画像表示装置を提供することができる。
以下、本発明を実施形態により説明する。
<黒色膜及び黒色材料分散液>
本実施形態の黒色膜は、少なくとも樹脂成分と黒色材料とを含み、
前記黒色材料の体積分率が2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下であり、かつ厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上であり、体積抵抗率が1011Ω・cm以上であることを特徴とする。
本実施形態の黒色膜においては、後述する黒色材料を用いるが、この黒色材料は黒色度が高く、樹脂中での分散性にも優れている。したがって、黒色膜中の体積分率を2体積%以上30体積%以下とすることにより、本実施形態の黒色膜の特性である、厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上で、体積抵抗率が1011Ωcm以上の黒色膜を容易に得ることができる。また分散性が良いので、1KHzにおける比誘電率を15以下とすることができ、さらには粒度分布指標D90%を600nm以下とすることができる。
本実施形態の黒色膜において、前記黒色材料の体積分率は、2体積%以上30体積%以下とする必要がある。この範囲よりも黒色材料分が少なすぎると、黒色膜を形成したときに十分な遮光性が確保されず、また黒色材料がこの範囲より多すぎると、黒色材料の形状、寸法や分散状態にかかわらず、黒色膜が低抵抗となるために、所望の体積抵抗率が得られなくなる。
上記黒色材料の体積分率は2体積%以上28体積%以下であることが好ましく、2体積%以上25体積%以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態の黒色膜における上記黒色材料の体積分率は、黒色材料及び樹脂成分それぞれの比重が既知であることから、原料として使用する黒色材料及び樹脂形成成分の質量より求めることができる。
また、樹脂成分は比較的低温で分解や酸化により揮散するのに対し、黒色材料は金属のため高温まで安定であることから、熱重量分析(TG)による黒色膜の質量変化量から当該黒色膜中の樹脂成分と黒色材料の重量割合を求めることができ、一方、成分分析により樹脂成分と黒色材料それぞれの物質を特定すれば両物質の比重を求めることができるので、得られた重量割合と各成分の比重から、本実施形態の黒色膜における黒色材料の体積分率を求めてもよい。
また、本実施形態の黒色膜において、黒色材料の膜中の平均分散粒子径は1nm以上200nm以下である必要がある。本実施形態においては、用いられる黒色材料の平均一次粒子径は1nm以上が好適であるとしているから、平均分散粒子径が1nm未満では粒子として存在することが難しく、一方、平均分散粒子径が200nmを超えると黒色膜中での黒色材料微粒子の凝集による導電パスが生じやすくなるために、所望の体積抵抗率の確保が困難となる上、黒色材料微粒子の凝集が著しい場合には、遮光性も低下する。
上記膜中の平均分散粒子径は2nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上200nm以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態の黒色膜における平均分散粒子径は、粒度を累積分布で示した場合の累積値50%に対応する粒子径(累積50%径:メジアン径)で示している。
また、黒色膜における前記黒色材料の膜中の粒度分布指標D90%は、600nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。膜中の粒度分布指標D90%が600nm以下であれば、粒子径のばらつきが大きくなるのを抑えることができ、所望の体積抵抗率を維持しつつ十分な遮光性を確保することができる。ここで、前記膜中の粒度分布指標D90%とは 粒度を累積分布で示した場合に、累積値90%に対応する粒子径(累積90%径)のことであり、膜中に存在する黒色材料粒子の粒子径の均一性を示す指標となるものである。
なお、D90%の下限値は特に規定されないが、好適に用いる黒色材料の平均粒子径の下限値が1nmであることから、D90%を5nm未満とすることは実際の製造工程上困難である。
上記黒色材料の膜中の平均分散粒子径は、例えば膜試料をFIB(集束イオンビーム)を用いて断面方向に切断して薄片化し、切断面を透過型電子顕微鏡により観察することにより測定することができる。
本実施形態においては、観察視野から一定数の任意の粒子(50個以上、より好ましくは100個以上)を選び、それぞれの粒子像を同一面積の円で近似し、当該円の直径を該粒子の粒子径とした上で、粒子径の累積分布を求め、累積値50%に対応する粒子径(メジアン径)を膜中の平均粒子径とした。また、前記粒度分布指標D90%は選択した粒子の粒子径の累積90%径として求めた。なお、累積値はいずれも個数基準である。
本実施形態の黒色膜は、厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上である必要がある。1μm当たりの光学濃度が1に満たないと、黒色膜の厚さが数μm程度では十分な遮光性が得られず、また十分な遮光性を得るためには膜厚を厚くせざるを得ないために、特にブラックマトリックス等として用いた場合、膜厚が厚くなることにより、配線の断線や表示ムラ等が生じ易くなる。そこで、膜厚を必要以上に厚くしなくても十分な遮光性が得られる範囲として、1μm当たりの光学濃度を1以上とした。
また、1μm当たりの光学濃度は1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
ここで、本実施形態の黒色材料は黒色度が高く、また樹脂中での分散性にも優れていることから、本実施形態の黒色膜は、黒色材料の量を増加させることにより、所望の体積抵抗率を維持しつつ、1μm当たりの光学濃度を2以上とすることも容易である。なお、1μm当たりの光学濃度は高いほど望ましいが、測定上の限界から上限は10程度である。
ここで、上記厚さ1μm当たりの光学濃度は、以下のようにして求めることができる。
試料は透過測定用として透明基板上に膜状に形成する。この膜状試料の光学濃度を透過濃度計で測定するとともに、触針式表面形状測定器等を用いて膜厚を測定し、得られた試料の光学濃度値を膜厚で除すことにより、厚さ1μm当たりの光学濃度を求めることができる。なお、膜状試料の光学濃度は4.0程度かそれ以下にしておくことが、測定精度の低下を防ぐことができるので好ましい。
また、前記黒色膜の体積抵抗率は1011Ω・cm以上である必要がある。これは、COA方式やBOA方式の液晶表示素子や、自発光型表示装置において、ブラックマトリックス等や遮光壁に素子駆動用の配線が接触したり、ブラックマトリックスや遮光壁上に直接素子駆動用配線を設ける構造が主流となってきているために、前記黒色膜を用いて形成されたブラックマトリックス等や遮光壁の体積抵抗率が1011Ω・cmに満たないと、配線間が短絡を起こしやすくなり、TFT素子の動作不良等を起こすためである。またIPS駆動型液晶においても、前記黒色膜を用いて形成されたブラックマトリックスが導電性を有すると本来液晶を駆動するための電界とは異なる方向に不要電界が生じ、画像の乱れを誘発するためである。
この黒色膜の体積抵抗率は1012Ω・cm以上であることが好ましく、1013Ω・cm以上であることがより好ましい。黒色膜の体積抵抗率は高いほど好ましく、その上限は特に制限はないが、通常1018Ω・cm以下である。
なお、体積抵抗率の測定は、市販の体積抵抗率計を用い、例えば4探針法等により測定することができる。
さらに、本実施形態の黒色膜の比誘電率は、1kHzにて15以下であることが好ましく、より好ましくは12以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは5以下である。黒色膜の比誘電率が15以下であれば、前記黒色膜を用いてブラックマトリックス等や遮光壁を形成した場合に、液晶素子や発光素子駆動のためのスイッチング信号に対する寄生容量等の影響が低減されることで、画像等の乱れを目視上ほとんど影響がない程度まで低減することができる。また、黒色膜の比誘電率が6以下であれば、前記黒色膜を用いてブラックマトリックス等や遮光壁を形成した場合に、液晶素子や発光素子駆動のためのスイッチング信号を正確に伝達することができ、画像等に乱れが生じることがない。黒色膜の比誘電率は小さい程好ましく、その下限は特に制限はないが、通常1kHzにて2.0以上である。
ただし、比誘電率の影響は信号周波数に比例することから、液晶素子や発光素子におけるスイッチング信号の駆動周波数が遅い場合には、比誘電率は必ずしも低い必要はなく、さらに駆動周波数がDCレベル(10Hz以下)であれば、比誘電率の値自体を無視することができる。
なお、黒色膜の比誘電率の測定は、市販のLCRメーターを用いて行うことができる。
本実施形態の黒色膜において高い体積抵抗率の値が得られ、さらに比誘電率の値が低く抑えられることで、COA方式やBOA方式の液晶表示素子や、自発光型表示装置におけるブラックマトリックス等や遮光壁に好適に用いることができる理由は、次のように考えられる。
まず、黒色材料である銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子の黒色度が、従来の黒色材料であるカーボンブラック等に比べて高いことが挙げられる。黒色度が高いということは、同じ遮光性を得るために必要とする量が少なくて済む、すなわち厚さ1μm当たりの光学濃度を1以上としても、黒色材料の体積分率は従来より少なくて済むということである。このように黒色材料の体積分率が低いことから、黒色膜中で黒色材料微粒子は密に詰まることがない。微粒子同士が密に詰まった場合には、微粒子同士が接触するため導電パスが形成されるが、そのようなことは起こらないということである。
次に、黒色材料の分散性を高めていることが挙げられる。分散性が高いということは、黒色材料の凝集度が低いということである。上記のように黒色材料の体積分率が低い場合でも、黒色材料の分散性が低い場合には、黒色材料微粒子同士が凝集、特に鎖状に凝集することにより、導電パスが形成される可能性がある。しかしながら、本実施形態の黒色膜においては、黒色材料の分散性が高く平均分散粒子径が小さいことから、黒色材料は黒色膜中に均一に分散されており、鎖状の凝集による導電パスが形成されることはない。このように、本実施形態の黒色膜では、黒色材料が均一に分散され導電パスが形成されないことから、高い体積抵抗率を得ることができる。
また、黒色材料自体は金属で比誘電率が非常に高いが、これを微小粒子化して比誘電率が低い樹脂成分中に均一に分散させて高抵抗膜とすることにより、黒色膜としての実効的な比誘電率を低下させることができる。さらに、黒色膜中の黒色材料の体積分率が低いことから、比誘電率低下の効果をより高めることができる。これにより、低い比誘電率を得ることができる。
なお、本実施形態の黒色材料は、後述の黒色材料分散液や黒色樹脂組成物において記すように、分散剤や分散助剤を用いて分散処理を行うことにより、前記黒色膜中の分散粒子径減少や粒度分布指標の減少を容易に達成することができる。
このように、特徴ある黒色材料を、分散性を高めて膜中に存在させることで得られる本実施形態の黒色膜において、黒色材料の体積分率を2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径を1nm以上200nm以下とすることにより、1011Ω・cm以上の体積抵抗率を得ることができ、また、厚さ1μm当たりの光学濃度を1以上とすることもできる。さらに、1kHzにおける比誘電率を15以下とすることができる。
(黒色材料)
本実施形態における黒色材料としては、銀及び錫を主成分とする金属微粒子が好適に選択される。ここで、上記「銀及び錫を主成分とする」とは、金属微粒子において、少なくとも銀及び錫の両成分を含んでおり、かつ、銀及び錫の合計の含有量が金属微粒子全体に対して50質量%以上であることをいう。すなわち、成分及び含有量は金属微粒子全体に対して規定されるものであって、個々の粒子自体の成分及び含有量を規定するものではない。
従来より、粒子径が1nmから数百nm程度の金属微粒子(ナノメートルサイズの金属微粒子)は、金属の表面プラズモン吸収により様々な色調を呈することが知られており、また、この色調は微粒子の組成や粒子径により変化することも知られている。本実施形態においては、組成や粒子径を調整することにより、黒色を呈する金属微粒子を選択すればよく、このような黒色金属微粒子として、銀及び錫を主成分とする金属微粒子を選択することができる。
この金属微粒子としては、銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子を好適に用いることができる。ここで、銀及び錫を主成分とする金属微粒子が銀錫合金微粒子である場合、当該銀錫合金微粒子中における銀成分の含有率、すなわち銀及び錫の合計量に対する銀成分の比率(銀/(銀+錫):質量%)は、45質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは62質量%以上95質量%以下であり、特に好ましくは65質量%以上95質量%以下である。
また、銀及び錫を主成分とする金属微粒子が銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子である場合においても、当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子中における銀成分の含有率、すなわち銀及び錫の合計量に対する銀成分の比率(銀/(銀+錫):質量%)は、45質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは62質量%以上95質量%以下であり、特に好ましくは65質量%以上95質量%以下である。
前記銀成分の含有率を上記の範囲に限定した理由は、該銀成分の比率が45質量%以上95質量%以下であると、光の反射率が高くならず十分な黒色度を有する黒色膜となり、十分な光遮蔽性を得ることができるからである。
なお、前記銀成分の好適な含有率範囲は、前記銀錫合金微粒子、もしくは前記銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子を一定量取ったとき、その微粒子全体における銀成分の好適な含有率範囲を示すものであって、個々の粒子における銀成分の好適な含有率範囲を示すものではない。
なおここで、銀錫合金微粒子とは例えば次のものであって、銀錫合金の結晶構造を有するもの(以下、「銀錫合金相」とも言う)だけではなく、銀の結晶構造を有するもの(以下、「銀相」とも言う)を含んでもよい。
まず、銀錫合金相を有するものとしては、銀錫合金を化学式Ag1-XSnXで表した場合のXの範囲としては、0.118≦X≦0.2285のζ相(空間群P63/mmc)及び0.237≦X≦0.25のε相(空間群Pmmn)が知られている(Binary Alloy Phase Diagram,P94−97による)。これらの相の組成と空間群を、X線回折のICDDカード(JCPDSカード)と比較すると、ε相のX線回折データがAg3Sn(IDCC 71−0530)、ζ相のX線回折データがAg4Sn(IDCC 29−1151)に相当すると考えられる。従って、斜方晶系であるε相(Ag3Sn)又は六方晶系であるζ相(Ag4Sn)の構造を有する銀錫合金微粒子であれば、化学的安定性と黒色度とを満足することができる。
次に、銀相、すなわち銀の結晶構造を有するものとしては、銀結晶中の銀原子の一部を錫原子が置換したものとなるが、この場合の銀錫合金を化学式Ag1-YSnYで表した場合、0<Y≦0.115であり、前記文献では(Ag)相(以下の表記で示される空間群:立方晶系)で示される。
Figure 2012068630
この範囲を、AgZSn(Zは実数)で表記すれば、7.70≦Z<∞(無限大)となる。
なお、Y=0(Ag1Sn0)あるいはZ=∞(Ag∞Sn)はAg単独相に相当するため、ここで示す銀錫合金微粒子としての規定範囲からは外してある。ただし、本実施形態において本黒色材料として用いられる銀及び錫を主成分とする金属微粒子としては、銀錫合金微粒子だけでなく、銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子も好適であることから、黒色材料中にはY=0のものを含んでもかまわない。
また、この銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子からなる黒色材料は、実質的に錫微粒子を含有していない。ここで、実質的に錫微粒子を含有していないとは、X線回析法により錫の結晶構造を有する物質の存在が確認されないことを意味する。この黒色材料が錫微粒子を含有していると、当該黒色材料を用いて形成した黒色遮光膜の光遮蔽性が大幅に低下する。
本実施形態に用いられる黒色材料の平均一次粒子径は、1nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは5nm以上200nm以下である。
ここで、平均一次粒子径を上記の範囲に限定した理由は、平均一次粒子径を上記の範囲内とすることで所望の黒色膜を容易に形成することができるからである。すなわち、平均一次粒子径が1nm未満では、可視光線の波長と比較して小さ過ぎるために、光吸収の主要因である金属の局在型表面プラズモン吸収が減少し、所望の黒色度が得られなくなるおそれがあるからであり、一方、平均一次粒子径が200nmを超えると、粒子表面での電子運動の範囲が広がるために、金属の局在型表面プラズモン吸収が減少して、黒色度が低下するおそれがあるからである。
本実施形態に用いられる黒色材料の製造方法としては、上記のように、組成や粒子径を調整することにより黒色を呈する金属微粒子が得られる方法であれば、特に制限はなく、気相反応法、噴霧熱分解法、液相反応法、凍結乾燥法、水熱合成法など、通常の金属微粒子合成法を適用することができる。
特に上記金属微粒子として、銀錫合金微粒子、もしくは銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子を選択する場合においては、これらの微粒子が容易に得られる液相反応法を用いることが好ましい。
上記液相反応法の一例としては、例えば、錫コロイド分散液中に銀化合物溶液と還元剤とを滴下し、錫と銀イオンとを反応させて合金化させるとともに、銀イオンから銀微粒子を形成させることにより、銀錫合金微粒子と銀微粒子を生成する方法を例示することができる。
この製造方法にあっては、反応条件(例えば、錫と銀イオンとの比率、反応液のpH、反応温度、反応時間、還元剤量など)を適宜調整することにより、銀錫合金微粒子の生成量、銀微粒子の生成量(実質的に生成されない場合、すなわち銀錫合金微粒子のみが生成される場合を含む)、さらに銀錫合金微粒子と銀微粒子との生成量比を任意に制御することができる。
この製造方法では、液相中での反応により合成が完結するので、得られた金属微粒子からなる黒色材料は水系の液相中に分散された状態となっており、そのままあるいは簡単な工程を経ることで、後述する水分散系の黒色材料分散液として用いることが可能である。
また、この黒色材料を用いて黒色膜を作製する場合、樹脂形成成分との分散性を考慮して、分散液の分散媒を有機溶媒系としてもよい。上記のように、黒色材料は水系の液相中に分散された状態で得られているから、有機溶媒系の分散液とする場合には、水系の液相から回収したケーキ状の凝集物を一旦機械的に粉砕して粉末とし、その後、ボールミル、ビーズミルなどの湿式混合機を用いて有機溶媒中にて分散処理する方法を採ることができる。また可能であれば、分散液の状態を維持したまま、溶媒置換法により分散液を変更してもよい。
(樹脂成分)
本実施形態における樹脂成分としては、黒色材料である黒色を呈する金属微粒子が均一に分散された状態で硬化するものであって、形成された黒色膜に要求される特性に適したものを選択すればよい。この樹脂成分としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能である。
前記電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線、例えば紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋又は重合反応にて硬化する樹脂を意味するものであって、ラジカル重合型のアクリル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂や、カチオン重合型のエポキシ樹脂、ビニルエーテル系樹脂、オキセタン類、グリシジルエーテル類を例示することができる。
上記アクリル系樹脂としては、ポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオール(メタ)アクリレート系樹脂、シリコーン(メタ)アクリレート系樹脂等を例示することができる。なお、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。以下同様である。
また、前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)等を例示することができる
また、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、 ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが好適に用いられる。
さらに、本実施形態の黒色膜をブラックマトリクス等とする場合には、樹脂成分の原料である樹脂形成成分としてアルカリ可溶性樹脂を選択し、この樹脂形成成分を用いて形成される樹脂を樹脂成分とすることが好ましい。
なお、樹脂(有機材料)の比誘電率は一般的に低いことから、黒色膜の比誘電率を15以下とすることに対する樹脂成分選定の限定要因はほとんどないが、一部の樹脂、例えばフェノール樹脂では、組成等により比誘電率が10を超えるものがあるので、注意が必要な場合がある。
(黒色膜の製造方法)
本実施形態の黒色膜は、後述の黒色樹脂組成物を用いて、公知の各種塗工法により膜体を形成することにより得られる。例えば、黒色膜は、前記の黒色樹脂組成物を、基材の一主面上に、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法等の各種塗布法により層状に成形(塗布)して塗布膜を形成し、この塗布膜から溶剤を揮発等により除去し、必要により硬化処理することにより、容易に得ることができる。
この硬化処理は、通常は塗布膜中の樹脂形成成分を重合等により反応させて樹脂成分とする工程であって、樹脂形成成分として電離放射線硬化型樹脂を用いる場合、紫外線、電子線、X線などの放射線の照射(放射線の照射後、必要に応じて熱処理を施してもよい。)が挙げられ、樹脂形成成分として熱重合触媒を添加した熱可塑性樹脂原料等の熱反応性樹脂を用いる場合には、加熱処理が挙げられる。
放射線の照射量は、電離放射線硬化型樹脂が十分に硬化するために十分な量とするが、通常、20mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下とする。また、加熱処理の温度としては、熱反応性樹脂が十分に硬化し、かつ樹脂自体が変性や変形しないとともに基材が耐え得る温度であれば特に制限されないが、例えば、大気雰囲気中、80℃乃至300℃の範囲の温度にて3分乃至120分程度の熱処理を例示することができる。
また、黒色樹脂組成物中の成分が溶媒中に溶解した樹脂成分の場合においては、硬化処理は、塗布膜中の樹脂成分中から溶媒を除去する工程となり、大気圧下あるいは減圧下での加熱処理が挙げられる。この場合、溶媒除去により硬化した樹脂成分は、同様の溶媒に曝されることで再度膨潤・溶解する可能性があるため、加熱処理条件を厳しくすることにより、溶媒を完全に除去することが好ましい。ここで、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂を用いる場合には、溶媒除去後に紫外線、電子線、X線などの放射線の照射や、さらには熱処理を施して完全に硬化させればよく、樹脂成分として熱反応性樹脂を用いる場合には、溶媒除去後の熱処理により、硬化反応を完結させればよい。
<黒色材料分散液>
本実施形態の黒色材料分散液(以下、単に「分散液」という場合がある)は、前述の本実施形態の黒色材料を分散媒中に分散した分散液である。
この分散液においては、黒色材料の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、分散媒中の粒度分布指標D90%が600nm以下である。
(分散媒)
前記分散媒は、基本的には、水、有機溶媒及び樹脂形成成分のうちの1種以上を含有したものである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
上記有機溶媒を用いた場合の分散液における含水率は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
分散液の含水率が5質量%を超えると、黒色材料を分散した分散液を非水系の樹脂成分あるいは樹脂形成成分と混合した場合に、分散液と樹脂成分あるいは樹脂形成成分とが分離し易くなり、安定した混合物(黒色樹脂組成物)が得難くなる場合がある。すなわち、分散液の含水率を5質量%以下とすることで、種類が多い非水系の感光性樹脂の中から所望の露光、現像条件、膜物性等に合ったものを適宜選択することができ、分散液や塗布膜における制約もなく、これらの設計の自由度を広げることができる。
(その他の成分)
本実施形態の分散液では、黒色材料の分散性の向上、分散安定性の向上のために、分散剤及び/又は分散助剤を併用することが好ましい。中でも、特に分散剤として高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。なお、ここで、分散剤は黒色材料の分散安定性を確保するための、黒色材料とは全く構造の異なるポリマー等であり、分散助剤とは黒色材料の分散性を高めるための顔料誘導体をいう。
一般的に高分子分散剤の分類としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤、ポリカルボン酸塩、ポリアルキル硫酸塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの中では、樹脂として使用する電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂との相溶性、有機溶剤に対する相溶性を考慮すると、ウレタン系分散剤が好ましい。
また、高分子分散剤を製法に依存した構造で分類した場合、ランダムコポリマー、櫛型コポリマー、ABA型ブロックコポリマー、BAB型ブロックコポリマー、両末端親水基含有ポリマー、片末端親水基含有ポリマーなどがある。これらの中では、樹脂として使用する電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂との相溶性、有機溶剤に対する相溶性を考慮すると、ランダムコポリマー、櫛形ポリマーが好ましい。
これらの条件を満たす分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)等を挙げることができる。これらの分散剤は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
なお、これらの分散剤等もポリマー(樹脂)であり、比誘電率は一般的に低いことから、黒色膜の比誘電率を15以下とすることに対する限定要因はほとんどない。
また、上記分散剤の黒色材料に対する添加量は、黒色材料を100質量部に対して5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。分散剤添加量が5質量部未満であると、黒色微粒子の分散に必要な分散剤量が足りずに分散液の分散性が保持できず、前記分散液における平均分散粒子径、膜中の平均分散粒子径、膜の体積抵抗率を満たすことができない場合がある。また、添加分散剤量が50質量部を超えると、黒色微粒子に対して分散剤量が過剰となり、分散剤同士の相互作用などにより分散液の分散性が保持できず、前記分散液における平均分散粒子径、膜中の平均分散粒子径、膜の体積抵抗率を満たすことができない場合がある。
本実施形態の黒色材料分散液は、本実施形態の黒色材料を分散媒中に分散した分散液であって、必要に応じて前記「その他の成分」が添加されている。ここで、当該分散液における前記黒色材料の平均分散粒子径は、1nm以上200nm以下である必要がある。すなわち、本実施形態で用いる好適な黒色材料の平均一次粒子径を1nm以上としているから、平均分散粒子径が1nm未満の黒色材料微粒子としては、それ自体が存在することが難しく、一方、平均分散粒子径が200nmを超えると、当該分散液を用いて形成される黒色膜中での黒色材料微粒子の凝集による導電パスが生じやすくなるために、所望の体積抵抗率の確保が困難となる上、黒色材料微粒子の凝集が著しい場合には、遮光性も低下する。さらには、平均分散粒子径が増大すると、分散液中で安定した分散状態を維持すること自体が難しくなる。
上記平均分散粒子径は2nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上150nm以下であることがより好ましい。
また、分散液における前記黒色材料の粒度分布指標D90%(累積90%径)は、600nm以下である必要がある。600nmを超えると粒子径のばらつきが大きくなりすぎ、含まれる粗大粒子が分散液中で安定した分散状態を維持すること自体が難しくなる上、当該分散液を用いて形成される黒色膜において、所望の体積抵抗率を維持しつつ十分な遮光性を確保することが困難となる。
また、上記分散液中の粒度分布指標D90%は、500nm以下であることがより好ましい。なお、D90%の下限値は特に規定されないが、黒色材料の平均粒子径の下限値が1nmであることから、D90%を5nm未満とすることは実際の分散工程上困難である。
なおここで、上記分散液中の平均分散粒子径及び粒度分布指標D90%の測定方法については、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用いてこの分散液の粒度分布を測定し、得られた分布結果より算術平均により求めた体積平均粒子径(MV値)を平均分散粒子径とすればよい。一方、粒度分布指標D90%は、粒度を累積分布(体積基準)で示した場合に、累積値90%に対応する粒子径(累積90%径)として求めることができる。
また、後述の黒色樹脂組成物における平均分散粒子径及び粒度分布指標についても、同様の測定方法により求めることができる。
また、この分散液における黒色材料の含有率は、1質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下である。黒色材料の含有率が1質量%以上80質量%以下であれば、分散液中で前記黒色材料が良好な分散状態を取ることが可能となる。ここで、黒色材料の含有率が1質量%未満では、分散媒が過多となり、この分散液を用いて黒色膜を形成する場合に、分散媒の影響により必要とする黒色膜が得にくくなる場合や、分散媒を除去するためのコストがかかる場合があり、一方、80質量%を超えると、黒色材料の濃度が高くなり過ぎてペースト状態となり、分散液としての特徴を消失する場合がある。
本実施形態の黒色材料分散液は、前記黒色材料と、必要に応じて分散剤や分散助剤等の成分とを、前記分散媒に加えて混合分散することにより調製することができる。混合分散方法は、黒色材料や樹脂形成成分等を混合した混合液を、超音波分散機、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、アイガーミルなどの公知の分散機を選択して分散処理すればよいが、分散性の点からビーズミルが好ましい。また、複数の分散方法を組み合わせて使用してもよい。
<黒色樹脂組成物>
本実施形態の黒色膜の形成に用いる黒色樹脂組成物は、少なくとも本実施形態の黒色材料と樹脂形成成分又は樹脂成分とを含む樹脂組成物であって、黒色塗料等が含まれる。なお、樹脂形成成分とは、前記の樹脂成分を形成するための成分である。
この黒色樹脂組成物において、前記黒色材料の平均分散粒子径は1nm以上200nm以下である。すなわち、本実施形態で用いる好適な黒色材料の平均一次粒子径を1nm以上としているから、平均分散粒子径が1nm未満の黒色材料微粒子としては、それ自体が存在することが難しい。一方、平均分散粒子径が200nmを超えると、当該黒色樹脂組成物を用いて形成される黒色膜中で、黒色材料微粒子の凝集による導電パスが生じやすくなるために、所望の体積抵抗率の確保が困難となる上、黒色材料微粒子の凝集が著しい場合には、遮光性も低下する。さらには、平均分散粒子径が増大すると、黒色樹脂組成物中で黒色材料が安定した分散状態を維持すること自体が難しくなる。
上記平均分散粒子径は2nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上150nm以下であることがより好ましい。
また、この黒色樹脂組成物における前記黒色材料の粒度分布指標D90%は、600nm以下である。600nmを超えると粒子径のばらつきが大きくなりすぎ、含まれる粗大粒子が黒色樹脂組成物中で安定した分散状態を維持すること自体が難しくなる上、当該黒色樹脂組成物を用いて形成される黒色膜において、所望の体積抵抗率を維持しつつ十分な遮光性を確保することが困難となる。
また、上記黒色樹脂組成物中の粒度分布指標D90%は、500nm以下であることが好ましい。なお、D90%の下限値は特に規定されないが、黒色材料の平均粒子径の下限値が1nmであることから、D90%を5nm未満とすることは実際の分散工程上困難である。
なお、黒色樹脂組成物中の平均分散粒子径及び粒度分布指標D90%の測定方法については、前記黒色材料分散液の記載と同様の測定方法により求めることができる。
ここで、黒色樹脂組成物に含まれる全固形分中において、樹脂成分及び樹脂形成成分を合わせた含有量は、5質量%以上70質量%以下とすることが好ましく、10質量%以上50質量%以下とすることがより好ましい。
樹脂成分及び樹脂形成成分を合わせた含有量が70質量%を超えると、本黒色樹脂組成物を用いて黒色膜を形成したときに、黒色膜における樹脂成分単位体積中の黒色材料存在量が不足するために十分な遮光性が確保されない場合がある。一方、樹脂成分及び樹脂形成成分を合わせた含有量が5質量%未満であると、本黒色樹脂組成物を用いて黒色膜を形成したときに、均一な膜体が形成されない、必要な膜厚が得られない等、黒色膜としての好ましい形状が形成されない場合がある。
ここで、黒色樹脂組成物を構成するための主たる成分は次に示す[A]から[E]の5種類である。なお、[B]と[E]とは異なるものとする。
[A]黒色材料
[B]黒色材料分散媒
[C]樹脂形成成分
[D]樹脂成分
[E]樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒
前記黒色樹脂組成物は、主にこの5成分の組み合わせにより構成されており、その組み合わせは次の(1)から(7)の通りとなる。なお、必要に応じて添加することが可能な[A]から[E]以外の成分、すなわち分散剤、分散助剤や表面処理剤については、ここでは省略する。
(1):[A]+[C]
最小限の組み合わせである2成分系であり、液状の樹脂形成成分中に黒色材料を分散したものと捉えることができる。この場合、[C]は液状である必要がある。
(2):[A]+[B]+[C]
3成分系であり、前記「黒色材料分散液」と、樹脂形成成分とを混合したものと捉えることができる。一般的には[C]は液状である必要があるが、[C]が[B]に可溶の場合には、[C]は固体状であってもかまわない。
(3):[A]+[C]+[E]
3成分系であり、溶媒中に溶解させた樹脂形成成分中に黒色材料を分散させたものと捉えることができる。[C]は[E]に溶解させているため、液状でも固体状でもかまわない。
(4):[A]+[D]+[E]
3成分系であり、溶媒中に溶解させた樹脂成分中に黒色材料を分散させたものと捉えることができる。なお[D]は固体であるから、[D]が存在する限り[E]は不可欠である。
(5):[A]+[B]+[D]
[D]が[B]に可溶な場合にのみ可能な組み合わせであって、前記「黒色材料分散液」中に、樹脂成分を溶解したものと捉えることができる。この場合のみ、例外的に[E]は不要である。
(6):[A]+[B]+[C]+[E]
(7):[A]+[B]+[D]+[E]
4成分系であり、前記「黒色材料分散液」に、樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液を混合したものと捉えることができる。この場合、[B]と[E]とは相溶性が高い必要がある。両者の相溶性が低い場合、「黒色材料分散液」と「樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液」とがそれぞれ安定に存在しても、両者を混合した際に、相分離や粒子成分の凝集等が起こるため好ましくない。なお、[B]と[E]とが同一の場合には、(6)は(2)又は(3)に、(7)は(4)又は(5)に、それぞれ含めるものとする。また、[A]+[B]+[C]+[D]+[E]も考えられるが、これは樹脂形成成分の一部が樹脂成分に変化しつつある状態と同様と捉えることができることから、(6)に含めるものとする。
上記黒色材料[A]、黒色材料の分散媒[B]、樹脂形成成分[C]、樹脂成分[D]、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒[E]の内、黒色材料、黒色材料の分散媒、樹脂成分については上述していることから、ここでは樹脂形成成分、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒、について説明する。
(樹脂形成成分)
樹脂形成成分とは、前記の黒色膜における樹脂成分を形成するための成分であり、通常は樹脂成分のモノマー、オリゴマーやプレポリマーが含まれる。すなわち、前記樹脂成分として、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能であることから、これら樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーの少なくともいずれかもこれらに含まれる。
樹脂成分として電離放射線硬化性樹脂を選択する場合、樹脂形成成分である前記電離放射線重合性モノマー(単量体)としては、分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性モノマーである多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有するモノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロへキセニルメチル−3',4'−エポキシシクロへキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等グリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等ビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等オキセタン類等が挙げられる。これらの電離放射線重合性モノマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記電離放射線重合性プレポリマーと併用してもよい。
前記電離放射線重合性プレポリマー(オリゴマーも包含する)としては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリオール(メタ)アクリレート系、シリコーン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル系等の分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性オリゴマー、あるいはノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等のエポキシ系樹脂等の分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等が挙げられる。これらの電離放射線重合性プレポリマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記樹脂成分として熱硬化性樹脂である前記のフェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)等を選択する場合、樹脂形成成分としては、これら熱硬化性樹脂を形成するための原料化合物や、重合性樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを挙げることができる。
さらに、前記樹脂成分として熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、 ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等を選択する場合にも、樹脂形成成分としては、これらの熱可塑性樹脂を形成するための原料化合物や、重合性樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを挙げることができる。
さらに、これらの原料化合物や重合性樹脂モノマー、オリゴマー、プレポリマーから樹脂を反応形成させるために添加する、反応剤、反応開始剤や、重合剤、重合開始剤等を、樹脂形成成分に含めてもよい。
前記黒色樹脂組成物を用いた黒色膜として、特定の形状にパターニングされた膜体、例えばブラックマトリクスとする場合には、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和化合物を含む黒色樹脂組成物を用い、該黒色樹脂組成物を層状に成形した塗布膜に光(紫外線)感光性を持たせることが望ましい。塗布膜が光感光性を有していれば、塗布膜をフォトマスク等を用いて特定のパターン状に露光した後現像して硬化処理することにより、ブラックマトリックス等の特定の形状の黒色膜を容易に得ることができる。
前記アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基又は水酸基を含む樹脂であれば特に限定はなく、例えばエポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、アクリル系樹脂、カルボキシル基含有エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ウレタン樹脂等が挙げられるが、これらのうち、エポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、中でも芳香環構造を有する樹脂が高い体積抵抗率及び低い比誘電率を与える点において特に好ましい。
この場合、前記黒色樹脂組成物中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂の割合は、5質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上50質量%以下である。この範囲よりもアルカリ可溶性樹脂の割合が多過ぎると、ブラックマトリックスパターン形成時に充分な感度が確保されず、また必要な遮光性も確保できない場合があり、一方少な過ぎると樹脂ブラックマトリックスの好ましい形状が形成されない場合がある。
前記光重合開始剤とは、紫外線や熱によりエチレン性不飽和基を重合させるラジカルを発生させることのできる化合物である。
光重合開始剤としては、特に、感度の点でオキシム誘導体類(オキシム系化合物) が有効であり、遮光性を高くしたり、フェノール性水酸基を含むアルカリ可溶性樹脂を用いる場合などは、感度の点で不利になるため、特にこのような感度に優れたオキシム誘導体類(オキシム系化合物)が有用である。本実施形態では、上記光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂ブラックマトリクスを形成する場合、分散液中の光重合開始剤の割合は、全固形分に対して0.4質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。この範囲よりも光重合開始剤の割合が多すぎると現像速度が遅くなり過ぎる場合があり、一方少なすぎると十分な感度が得られず、好ましい樹脂ブラックマトリクス形状も形成されない場合がある。
前記エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物を意味するが、重合性、架橋性、及びそれに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましく、また、その不飽和結合が(メタ)アクリロイルオキシ基に由来する(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。さらに、エチレン性不飽和結合を分子内に3個以上有する化合物を用いると、形成膜の体積抵抗率や比誘電率などの電気特性的にとって好ましい。
前記エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸、及びそのアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。
また、前記エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類、及び、(メタ)アクリル酸又はヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリエポキシ化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
(樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒)
樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒(以下、「樹脂溶媒」という場合がある)としては、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶解度が高い液体であって、基本的には、水及び有機溶媒のうちの1種あるいは2種以上から選択されるものである。
前記樹脂溶媒としては、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶解度が高いほかに、黒色材料の分散性が高いこと、黒色材料分散液との相溶性が高いこと、また、黒色材料分散液と混合した際に、黒色材料の分散性や樹脂成分や樹脂形成成分の溶解度が低下しないこと、という条件が必要である。これらの条件が満たされない場合には、「黒色材料分散液」と「樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液」とがそれぞれ安定に存在しても、両者を混合して黒色樹脂組成物を形成した際に、相分離、黒色材料の凝集や沈降、樹脂形成成分又は樹脂成分の析出等が起こり、良好な黒色樹脂組成物が得られなくなるため好ましくない。ここで、樹脂溶媒と黒色材料分散液として、同一あるいは同類の溶媒を選択することができれば、このような問題点を回避できるので好ましい。
なお、前記有機溶媒としては、前述の黒色材料分散液に用いられる有機溶媒を同様に用いることができる。
また、前記黒色樹脂組成物においても、黒色材料分散液と同様、黒色材料の分散性の向上、分散安定性の向上のために、分散剤及び/又は分散助剤を併用することが好ましい。中でも、特に分散剤として高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。なお、分散剤や分散助剤については、黒色材料分散液において記載したものと同一であるから、詳細は省略する。
また、本実施形態の黒色材料分散液として分散剤及び/又は分散助剤を含む分散液を選択し、この黒色材料分散液を黒色樹脂組成物の原料として使用する場合においては、当該分散液中に既に含まれている分散剤や分散助剤をそのまま使用してもよい。その理由として、分散剤や分散助剤は、黒色材料の表面を修飾することで黒色材料表面が分散媒や溶媒に対して親和性を有するようにする物質であることから、分散媒や溶媒と特性が変わらないのであれば、あえて別種の分散剤や分散助剤で処理する必要はないからである。
(黒色樹脂組成物の製造方法)
以上説明した黒色樹脂組成物は、少なくとも前記黒色材料並びに樹脂形成成分及び/又は樹脂成分を選択し、必要に応じて黒色材料分散媒や樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒を加え、さらには光重合開始剤、分散剤その他の成分を加えて混合分散することにより調製することができる。これらの内、黒色材料、黒色材料分散媒、樹脂形成成分、樹脂成分、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒の組み合わせについては、前述の通りである。
この場合、予め黒色材料分散液を調製し、これに樹脂形成成分等や光重合開始剤等を加えて溶解させることにより黒色樹脂組成物を調製してもよい。また、予め調製した黒色材料分散液と、樹脂形成成分等や光重合開始剤等の成分とを溶解させた溶液とを、混合することにより調製することもできる。
混合分散方法は、黒色材料や樹脂形成成分等を混合した混合液を、超音波分散機、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、アイガーミルなどの公知の分散処理方法より選択すればよいが、分散性の点からビーズミルが好ましい。また、複数の分散方法を組み合わせて使用してもよい。なお、予め調製した黒色材料分散液を用いる場合、黒色樹脂組成物の製造時には上記分散処理方法を行うことなく、黒色材料分散液と樹脂形成成分等を溶解させた溶液とを十分に混合・攪拌すればよい場合もある。
<黒色膜付き基材>
本実施形態の黒色膜付き基材は、基材上に既述の本実施形態の黒色膜を設けて構成されたものである。具体的には、例えば光透過性基材の上に、前述の黒色樹脂組成物を用いて既述したように形成した層を、必要に応じてパターニングすることで作製される。
前記基材としては、特に限定されるものではないが、ガラス基材、プラスチック基材(有機高分子基材)を挙げることができる。また、その形状としては、平板、フィルム状、シート状等が挙げられる。また、上記のプラスチック基材としては、プラスチックシート、プラスチックフィルム等が好適である。
前記ガラス基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ソーダガラス、アルカリガラス、無アルカリガラス等から適宜選択することができる。
前記プラスチック基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、セルロースアセテート、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート等から、用途や使用条件に基づいて適宜選択することができる。
また、前記黒色樹脂組成物を用いて形成した層を、パターニングする方法は、特に限定はされず、前述のように黒色樹脂組成物中にアルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和化合物を含ませ、この黒色樹脂組成物を層状に成形して光(紫外線)感光性を持たせた塗布膜を形成し、該塗布膜をパターン状に露光した後現像して黒色膜を形成する工程を有してなり、必要に応じてポスト露光やポストベークなどの他の工程を設けて構成することができる。
上記露光、現像などのパターニング工程については公知の方法を使用できるが、例えば画像表示装置用のブラックマトリックスとして適用する場合には、特開2006−251095号公報の段落番号0096から0106に記載の方法や、特開2006−251237号公報の段落番号0116から0126に記載の遮光画像の形成方法が、本実施形態においても好適に用いることができる。
また、前記黒色樹脂組成物を使用し、インクジェット法を用いて、基材上に直接パターンが形成された層を作製する方法もある。この場合、黒色樹脂組成物の塗布膜には光感光性を与える必要はないが、黒色樹脂組成物においては、微小なインクジェットノズルからの吐出性(吐出量や吐出方向の安定性)に優れるとともに、吐出され基材に付着した黒色樹脂組成物は、流出や変形しないように高粘度状態となるようにする必要がある。このため、黒色樹脂組成物の粘度を調整したり、チクソトロピーを与えるための助剤を添加したりする等の方法が用いられる。
この工程についても公知の方法を使用できるが、例えば画像表示装置用のブラックマトリックスとして適用する場合には、特開2008−116895号公報の段落番号0029から0031に記載の方法を用いることができる。
本実施形態の黒色膜付き基材は、ブラックマトリクス(遮光膜)が設けられたブラックマトリクス基板として、カラーフィルターを作製するのに好適に用いることができる。
ブラックマトリクス基板としたときの、黒色膜の膜厚は0.2μm以上5.0μm以下が好ましく、特に0.2μm以上4.0μm以下が好ましい。また、ブラックマトリクス基板における黒色膜は、本実施形態の黒色膜を使用しているので、薄膜でも高度の光学濃度を有する。
<画像表示装置>
本実施形態の黒色膜は、各種画像表示装置において好適に用いることができる。前記画像表示装置としては、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置等の自発光型表示装置、CRT表示装置、液晶表示装置等が挙げられ、中でも液晶表示装置やEL表示装置に用いた場合に本実施形態の黒色膜の効果が顕著に発揮される。ここで、液晶表示装置の種類としては、STN、TN、VA、IPS、OCS、及びR−OCB等が挙げられる。
本実施形態の黒色膜は、黒色度が高くかつ高い体積抵抗率を有していることから、その遮光性(光の無反射性)と高抵抗率を利用した画像表示装置用部材として、好適に用いることができる。これらの部材としては、液晶表示素子や自発光型表示装置におけるブラックマトリックスとそれを用いたカラーフィルターやブラックストライプ、液晶表示装置や自発光型表示装置において各色の画素間を分離する遮光壁、液晶表示装置において液晶を充填する基板間のスペーサー等を挙げることができる。
ここで、ブラックマトリックスとそれを用いたカラーフィルターへの適用においては、黒色度が高いことからブラックマトリックスの厚さを減じることができ、結果として得られるカラーフィルターの平坦性が高いため、このカラーフィルターを備えた液晶表示装置は、カラーフィルターと基板との間にセルギャップムラが発生せず、色ムラ等の表示不良の発生が改善される。
さらに体積抵抗率が高いことから、COA方式やBOA方式の液晶表示素子や自発光型表示装置のように、ブラックマトリックスと画素駆動用の配線とが接触する場合においても、配線の短絡等による素子の駆動不良をおこす虞がない。
また、遮光壁やスペーサーへの適用においても、体積抵抗率が高いことから、各画素間の配線が短絡する虞がなく、従って素子の駆動不良をおこすことがない。さらに黒色度が高いことから、遮光壁の厚さを減じることができ、各画素における発光領域の拡大によるコントラストの向上、あるいは画素間隔の減少に伴う発光素子の高密度化等をはかることができる。
さらには、高い光吸収性を利用して、コントラスト増強フィルム等へ応用することも可能である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
<各測定・評価方法>
以下に、実施例または比較例において採用した、材料及びシートの特性等の各測定または評価方法を示す。
(黒色材料中の銀成分の含有率)
黒色材料(銀錫合金微粒子もしくは該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子)中の銀成分の含有率は、黒色材料粉末の圧粉体を電子線マイクロアナライザー(EPMA:JXA8800、日本電子社製)にて分析し、波長分散型X線分光器を用いた定性ならびに定量分析によって粉末中の錫及び銀の含有比率(質量比)を測定することによって求めた。
(黒色材料分散液及び黒色樹脂組成物中の黒色材料粒子の平均分散粒子径、粒度分布指標)
調製した黒色材料分散液又は黒色樹脂組成物について、動的光散乱法を適用した粒度分布測定装置(Microtrac 9340−UPA、日機装社製)を用いて、この分散液の粒度分布を測定し、得られた分布結果より体積平均粒子径(MV値)を算術平均により求め、その値を平均分散粒子径とした。また、前記測定された粒度分布から粒度の累積分布(体積基準)を算出し、累積値90%に対応する粒子径(累積90%径)を求め、粒度分布指標D90%とした。
(黒色膜中の黒色材料粒子の平均分散粒子径、粒度分布指標)
作製した黒色膜試料をFIB(集束イオンビーム)を用いて断面方向に切断して薄片化し、切断面を透過型電子顕微鏡(TEM:JEM−2010、日本電子社製)により観察した。観察視野から任意の粒子100個を選び、粒子形状が略球状であったことから、それぞれの粒子像を同一面積の円で近似し、当該円の直径を該粒子の粒子径とした。得られた結果より粒子径の累積分布を求め、累積値50%に対応する粒子径(メジアン径)を膜中の黒色材料の平均粒子径、累積値90%に対応する粒子径(累積90%径)を粒度分布指標D90%とした。なお、黒色膜における累積値は、いずれも個数基準である。
(黒色膜の体積抵抗率、比誘電率)
成膜基板としてITO膜をスパッタ法により表面に成膜したガラス基板を選択し、この基板上に成膜した黒色膜について、LCRメーター(LCRメーター4284A、Agilent社製)により比誘電率を、絶縁抵抗計(超高抵抗/微小電流計R8340A、エーディーシー社製)を用いて体積抵抗率を測定した。なお、比誘電率測定は1kHz・1Vにて、体積抵抗率測定はDC5Vにて実施した。
(黒色膜の光学濃度)
成膜基板としてITO膜をスパッタ法により表面に成膜したガラス基板を選択し、この基板上に黒色膜を成膜した黒色膜付きガラス基板を試料として、透過率濃度計(RT−120、TECHKON社製)を用いて透過率を測定し、ガラス基板単体(膜なし)の測定値を参照値とすることにより、黒色膜の光学濃度(OD値:Optical Densty)を得た。
次に、触針式表面形状測定器(P−10、KLAテンコール社製)を用いて黒色膜の膜厚を測定し、前記方法にて得られた黒色膜のOD値を膜厚(μm単位)で除することにより、1μm当たりの光学濃度を得た。
<実施例1>
(黒色膜の作製)
銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)に、多官能性アクリレートを樹脂形成成分とするレジスト(分散媒:PGMEA、固形分:1質量%)を、固形分体積比(銀錫コロイド:レジスト)が3:97となるように添加し、超音波処理により分散して黒色塗料とした。なお、上記固形分体積比は仕込み比である。
次いで、この黒色塗料の粒度分布を前記の方法により測定したところ、平均分散粒径は13nmであり、粒度分布指標D90%は48nmであった。
次いで、150nm厚のITO膜をスパッタ法により成膜したガラス基板(旭硝子社製カラーフィルタ用ガラス板「AN100」)を用い、前記調製した黒色塗料をスピンコーターを用いて塗布し、1分間真空乾燥後、ホットプレート上で120℃にて30秒間プリベークし、乾燥膜厚0.5μmの塗布膜を得た。
その後、塗布膜側から、3kW高圧水銀を用い、100mJ/cm2の露光条件にて全面露光を施した。次いで、水酸化カリウム0.1%水溶液により現像を行った後、純水にて現像を停止し、ガラス基板を200℃で1時間ポストベークし、黒色膜付きガラス基板を得た。尚、この段階での黒色膜厚は0.5μmであった。
(評価)
上記で得られたガラス基板上に形成した黒色膜について、前記の条件にしたがって光学濃度、体積抵抗率及び比誘電率を測定した。また、同様の条件にしたがってガラス基板上に形成した黒色膜を用いて、前述の方法によりTEM観察用試料を作製し、これのTEM観察を行うことにより膜中平均分散粒子径及び、膜中粒度分布指標D90%を求めた。
結果をまとめて第1表に示す。なお、第1表は黒色膜の評価に関する実施例、比較例である。
<実施例2>
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が7:93となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<実施例3>
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が20:80となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<実施例4>
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が23:77となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<実施例5>
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が25:75となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。なお、本実施例では、比誘電率の測定において値が安定せず、測定を行うことができなかった。これは、膜体(バルク体)としての体積抵抗率は高い状態で維持されているものの、黒色材料の体積分率が高いことから、膜内に局所的な導電パス部分が形成されたためではないかと考えられる。これは、実施例5も同様と考えられる。
<実施例6>
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が30:70となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<実施例7>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:180nm、粒度分布指標D90%:500nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<実施例8>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:60質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<実施例9>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:5質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す
<実施例10>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:50質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す
<比較例1>
実施例1の黒色膜の作製において、銀錫コロイド液の代わりにカーボンブラック(商品名「HA3」、東海カーボン社製)を用い、実施例1と同様にカーボンブラックと樹脂形成成分との体積比が10:90となるようにレジストを加え、実施例1と同様に分散処理を行うことにより、カーボンブラック分散塗料を得た。なお、比較例1では、分散剤を使用していない。
上記カーボンブラック分散塗料を用いて、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。なお、本比較例における黒色膜は体積抵抗率が低く導電性が発現しているため、比誘電率の測定を行うことができなかった。これは、比較例4、5、6も同様である。
<比較例2>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:220nm、粒度分布指標D90%:550nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<比較例3>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:170nm、粒度分布指標D90%:650nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:15質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<比較例4>
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が30:70となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<比較例5>
実施例1の黒色膜の作製において、固形分体積比が35:65となるようにレジストを添加した以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<比較例6>
60℃に保温した純水200mlに、錫(Sn)コロイド(平均粒子径:20nm、固形分:20質量%、住友大阪セメント社製)15gと、銀(Ag)コロイド(平均粒子径:7nm、固形分:20質量%、住友大阪セメント社製)60gと、ポリビニルピロリドン(PVP)(商品名「k15」、東京化成工業社製)0.75gを水100mlに溶解した溶液とを加え、コロイド溶液とした。
次いで、このコロイド溶液を60℃に保持した状態で60分間攪拌し、その後、超音波を5分間照射した。次いで、このコロイド溶液を遠心分離により濃縮し、固形分が15質量%のA液を得た。
次いで、このA液に、A液中の固形分とポリビニルアルコール(PVA)との体積比が50:50となるようにPVA水溶液を加え、超音波分散機(ソニファイヤー450:BRANSON ULTRASONICS社製)にて分散処理した後、1時間静置し、黒色微粒子分散塗料とした。なお、分散剤は使用していない。次いで、この塗料をスピンコート法により厚み1.1mmのガラス基板上に塗布し、黒色の塗布膜とした。ここでは、分散液中の水分量を調整することにより、塗布膜の厚みを0.5μmとした。その後、この塗布膜付きガラス基板を、加熱装置を用いて200℃にて1時間加熱し、黒色膜付きガラス基板を得た。この黒色膜付きガラス基板等を用いて、実施例1と同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<比較例7>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:3質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<比較例8>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリウレタン系・ランダムコポリマー、分散剤添加量:70質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
<比較例9>
実施例1の黒色膜の作製において、原料分散液として銀錫コロイド液(銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子分散液、住友大阪セメント社製、固形分:30質量%、平均分散粒子径:10nm、粒度分布指標D90%:40nm、銀成分の含有量:91質量%、分散剤種:ポリカルボン酸系、分散剤添加量:70質量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして黒色膜付き基材を作製し、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表に示す。
Figure 2012068630
<カラーフィルター特性>
(ブラックマトリックスの作製)
各遮光性感光性樹脂組成物塗布液として、実施例1乃至10で調製した各黒色塗料を用い、ブラックマトリックスパターンとして通常のメッシュ状パターン(線幅20μm)からなるパターンマスクを用いたことを除いては、特開2009−75446号公報の段落番号0301に記載のブラックマトリックス作製方法を用いて、10cm角のTFT素子基板上に、実施例1乃至9の黒色膜をメッシュ状パターンに形成させたブラックマトリックスを得た。
(カラーフィルターの作製、評価)
上記で得られた実施例1乃至10の黒色膜を有するブラックマトリクス(遮光画像)に対して、特開2006−251237号公報の段落番号0158から0170に記載の転写型の感光性樹脂フィルムを用いたカラーフィルター作製方法にて、赤色、緑色、青色の所定サイズ、形状の着色パターンを形成し、TFT素子基板上にカラーフィルターを作製した。
次いで、TFT素子基板上のカラーフィルターに対向する位置に、透明共通電極を設けた対向電極基板を配置し、カラーフィルターと対向電極基板間に液晶材料を封入して、液晶セルを形成した。得られた液晶セルの両面に偏光板を張り付け、さらに、TFT素子基板の裏面側に、バックライトとしての白色LEDを配置した。
このようにして作製された、COA方式の液晶表示装置の表示特性評価を行った。その結果、前記各ブラックマトリックスを用いたカラーフィルターを備えた液晶表示装置が、良好な表示特性を示すことが確認された。
上記の実施例1乃至10の結果から、本発明の黒色材料分散液を使用して調製した黒色塗料により形成した黒色膜では、比較例に示した黒色膜に比べて、膜中に微小な粒子径の黒色材料微粒子が均一に分散されており、黒色膜の光学濃度や電気特性に優れていることがわかる。
また、本発明の黒色膜をブラックマトリクスとしたカラーフィルターは、液晶表示装置において良好な表示特性を示した。
本発明の黒色膜及びこれを用いた黒色膜付き基材は、液晶表示素子や有機EL素子等の代表される表示素子やこれを用いた画像表示装置において、好適に使用することができる。

Claims (9)

  1. 少なくとも樹脂成分と黒色材料とを含み、
    前記黒色材料の体積分率が2体積%以上30体積%以下、膜中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下であり、かつ厚さ1μm当たりの光学濃度が1以上であり、体積抵抗率が1011Ω・cm以上である黒色膜。
  2. 1kHzにおける比誘電率が15以下である請求項1に記載の黒色膜。
  3. 前記黒色材料の膜中の粒度分布指標D90%が600nm以下である請求項1または2に記載の黒色膜。
  4. 前記黒色材料が、銀及び錫を主成分とする金属微粒子である請求項1乃至3のいずれかに記載の黒色膜。
  5. 前記金属微粒子が、銀錫合金微粒子もしくは該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子からなり、当該銀錫合金微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下、もしくは当該銀錫合金微粒子及び銀微粒子の混合微粒子における銀及び錫の合計量に対する銀成分の含有率が45質量%以上95質量%以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の黒色膜。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の黒色膜を形成するための黒色樹脂組成物であって、
    少なくとも黒色材料と樹脂形成成分又は樹脂成分とを含み、該黒色樹脂組成物中の該黒色材料の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、該黒色樹脂組成物中の粒度分布指標D90%が600nm以下である黒色樹脂組成物。
  7. 請求項6に記載の黒色樹脂組成物に用いられる黒色材料分散液であって、
    分散媒中に黒色材料が分散され、該黒色材料の分散液中の平均分散粒子径が1nm以上200nm以下、分散液中の粒度分布指標D90%が600nm以下である黒色材料分散液。
  8. 請求項1乃至5のいずれかに記載の黒色膜を有する黒色膜付き基材。
  9. 請求項1乃至5のいずれかに記載の黒色膜を有する画像表示装置。
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