JP2012062417A - ポリアミド樹脂組成物およびその成形方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】キシリレンジアミンとセバシン酸とから得られるポリアミド樹脂(A)とポリアミド66(B)を含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド66(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高く、かつ、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度とポリアミド66(B)の結晶化温度の温度差が50℃以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物による。
【選択図】なし
Description
このため、本出願人は、MXD6に結晶核剤としてタルク、あるいは窒化ホウ素を添加することを提案した(特許文献2および特許文献3参照)が、タルクや窒化ホウ素等の添加は機械強度の低下が起きるのでその配合量には制限があり、十分な結晶化速度の向上は達成しにくい。
しかしながら、上記した問題点は、キシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂において、さらに顕著であり、結晶化速度が遅く、成形品を射出成形した場合、結晶化度の低い成形品となる。また、十分な結晶化度の成形品を得るためには、冷却時間を長くする必要があり、成形サイクルも長くなり、成形効率が悪い。また、金型温度を上げて成形をしたり、成形品にアニール処理を施したりすることにより、結晶化度を上げる方法もあるが、金型温度を上げて成形した場合には、樹脂の流動性がよいため、成形品にバリが発生し易くなり、また、アニール処理を施す場合は、処理工程が増えるという問題が発生する。
ポリアミド66(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高く、かつ、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度とポリアミド66(B)の結晶化温度の温度差が50℃以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物が提供される。
[1.概要]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、キシリレンジアミンとセバシン酸とから得られるポリアミド樹脂(A)とポリアミド66(B)を含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂組成物中のポリアミド66(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高く、かつ、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度とポリアミド66(B)の結晶化温度の温度差が50℃以下であることを特徴とする。
本発明のポリアミド樹脂組成物に用いるポリアミド樹脂(A)は、ジアミン成分としてキシリレンジアミン、ジカルボン酸成分としてセバシン酸を用いて得られるポリアミド樹脂である。
キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンを単独又はこれらを混合して用いてもよく、メタキシリレンジアミン40〜100モル%とパラキシリレンジアミン60〜0モル%の範囲で用いるのが好ましい。パラキシリレンジアミンが60モル%を超えると得られるキシリレンセバカミド系ポリアミド樹脂の融点が高くなりすぎ、成形時の加熱による熱劣化を引き起こしやすく、また、結晶化速度が速くなりすぎ外観が悪くなる場合がある。
混合して使用する他のジカルボン酸としては、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは6〜9の脂肪族ジカルボン酸であり、具体例としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられ、このうち特に好ましいのは、アジピン酸である。
他のジカルボン酸の使用割合は、好ましくは全ジカルボン酸の10モル%以下であり、より好ましくは全ジカルボン酸の5モル%以下である。また、脂肪族ジカルボン酸以外に少量の芳香族ジカルボン酸を使用することもでき、芳香族ジカルボン酸としては、1,5−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸を使用する場合の使用量は、好ましくは、全ジカルボン酸の10モル%以下であり、より好ましくは全ジカルボン酸の5モル%以下である。
本発明におけるポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド66(B)を含有する。
ポリアミド66(B)は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との塩よりなるポリアミド構成単位(ポリアミド66単位)を主成分とする単独重合体あるいは共重合体であり、単独重合体としてはポリアミド66、共重合体としては、ヘキサメチレンアジパミド塩とカプロラクタムまたはε−アミノカプロン酸を主原料としたポリアミド66/6共重合体、またテレフタル酸やイソフタル酸も用いたポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド66/6T/6I共重合体等が好ましく挙げられる。なお、上記「I」はイソフタル酸由来成分、「T」はテレフタル酸由来成分を示す。
ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度とポリアミド66(B)の結晶化温度との温度差を50℃以下とすることで、ポリアミド66(B)の結晶化をポリアミド樹脂(A)の結晶化が起こる領域近くの温度で行うことができる。すなわち、ポリアミド樹脂(A)が結晶化しやすい温度領域でポリアミド66(B)が結晶化することにより、結晶化したポリアミド66(B)がポリアミド樹脂(A)の結晶核剤として機能し、ポリアミド樹脂(A)の結晶化を促進することができて、得られる成形品を高い結晶化度のものとすることが可能となる。両者の温度差は、好ましくは45℃以下である。
具体的には、例えば、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド66(B)を配合し溶融混練後得られた樹脂組成物ペレットの場合で説明すると、得られた樹脂組成物ペレットを、室温で12時間放置後、ペレットから10mgの試料を切り出し、DSCに供する。条件としては、窒素雰囲気下、30℃〜300℃、共重合体の場合は予想される融点+30℃まで10℃/分の速度で昇温し、ポリアミド樹脂(A)成分とポリアミド66(B)成分に対応する吸熱ピークのピークトップの温度からそれぞれの融点が求められ、その後、30℃まで20℃/分の速度で降温し、ポリアミド樹脂(A)成分とポリアミド66(B)成分に対応する発熱ピークのピークトップの温度からそれぞれの結晶化温度が求められる。
ポリアミド66(B)の含有量が、7重量部より少ない場合は、期待される結晶化速度の向上効果が得られにくい。また、50重量部より多い場合は、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度とポリアミド66(B)の結晶化温度の温度差を50℃以下とすることが困難となりやすい傾向にあり、この場合は、ポリアミド66(B)の結晶化が素早く進行してしまい、本来の目的であるポリアミド樹脂(A)の結晶化が促進されにくくなり、それにより、剛性等の機械的強度も低下する場合があるので、好ましくない。
本発明においては、無機系結晶核剤を実質的に含有しないことが好ましいが、ポリアミド66(B)の含有量が少ない場合には、少量の無機系結晶核剤を添加することも有効である。ポリアミド66(B)の含有量がポリアミド樹脂(A)100質量部に対し7〜20質量部程度である場合には、無機系結晶核剤の含有量が0.01〜1質量部となるように添加することが好ましく、ポリアミド66(B)の含有量がポリアミド樹脂(A)100質量部に対して10〜17質量部程度である場合は、無機系結晶核剤の含有量が0.1〜0.7質量部となるように添加することが好ましい。このような含有量とすることにより、ポリアミド66(B)の結晶核剤としての機能を有効に発揮させやすい傾向にある。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形品に反り性能および剛性等の機械的強度を付与させるために、ガラス繊維を含有するのも、好ましい。その含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、10〜250質量部が好ましく、より好ましくは20〜200質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは30〜120質量部である。ガラス繊維が、10質量部未満では、機械部品等としての強度、剛性を発揮するのが十分でない場合があり、250質量部を超えるとポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が非常に高くなって射出成形等によって成形品を製造するのが困難となりやすい。
また、本発明におけるポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、可塑剤、ハロゲン化銅系(例えば、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅)及び/又はハロゲン化アルカリ金属塩系(例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等)等の安定剤や、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系等の酸化防止剤、離型剤、顔料、染料、分散剤、紫外線吸収剤、抗菌剤及びその他の周知の添加剤を配合することができる。
高級脂肪酸の具体例としては、例えば、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられ、好ましくはステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられる。
高級脂肪酸金属塩の具体例としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
これらの中でも、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムがより好ましい。
多塩基酸としては、二塩基酸以上のカルボン酸で、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸類及びフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸並びにシクロヘキシルジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
このようなポリアミド樹脂組成物を製造する方法は、特に制限はないが、押出機を使用して、押出機のホッパーにポリアミド樹脂(A)とポリアミド66(B)、必要により、ガラス繊維、無機系結晶核剤等を投入するか、又はガラス繊維はサイドフィードするか、あるいはまた、予めこれらを混合して得られた予備混合物をホッパーに投入し、これを溶融混練する。
押出機としては、樹脂組成物原料を加熱してスクリューを用いて連続的にダイから押出すタイプのものであって、単軸式押出機、ベント付押出機、多軸式押出機等が通常用いられる。
本発明で得られるポリアミド樹脂組成物ペレットから成形品を得る方法は、特に限定されず、ポリアミド樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。それらの例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法などが挙げられる。特には、射出成形により成形品を製造することが好ましい。
なお、実施例及び比較例で用いた測定・評価法および使用材料は、以下のとおりである。なお、ポリアミド樹脂の相対粘度は、96%硫酸溶液中、濃度1g/100ml、温度25℃の条件で測定した。
ポリアミド樹脂(A):
本発明におけるポリアミド樹脂(A)として、以下の方法で製造したものを使用した。
反応缶内でセバシン酸(伊藤製油製、TAグレード)を170℃にて加熱し溶融した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製、MXDA)をセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、260℃まで昇温した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂は、下記記載の方法で測定された融点は190℃であった。また、相対粘度は2.1であった。
以下、このポリアミド樹脂を、「MXD10」と略記する。
(B−1)ポリアミド66
東レ社製、商品名「アミラン3001N」、下記記載方法で測定された融点は262℃であった。また、相対粘度は3.0であった。
以下、このポリアミド樹脂を、「PA66」と略記する。
(B−2)ポリアミド6
三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「ノバミッド(登録商標)1013J」、下記記載方法で測定された融点は223℃であった。また、相対粘度は2.5であった。
以下、このポリアミド樹脂を、「PA6」と略記する。
(C−1)タルク、林化成社製、商品名「ミクロンホワイト#5000S」
(C−2)窒化ホウ素、電気化学工業社製、商品名「SP−2」(平均粒径1μm)を、MXD10との5質量%のマスターバッチとして配合した。
(D−1)モンタン酸カルシウム
クラリアントジャパン社製、商品名「リコモントCaV102」
(D−2)エチレンビスステアリン酸アマイド
共栄社化学社製、商品名「ライトアマイドWH−215」
(E−1)日本電気硝子社製チョップドストランド、商品名「T−296GH」
(E−2)日本電気硝子社製チョップドストランド、商品名「T−275H」
<樹脂組成物の製造方法>
ガラス繊維(E)を除く上記(A)〜(D)成分を表1に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製「TEM35B」)の基部から投入して溶融した後、ガラス繊維(E)を含有する場合はこれをサイドフィードして、樹脂組成物ペレットを作成した。押出機の温度設定は、サイドフィード部まで280℃、サイドフィード部からは260℃、吐出量は20kg/時間とした。得られたペレットを用い、下記記載の方法で融点及び結晶化温度を測定した。なお、表1中の窒化ホウ素の割合(質量部)は、MXD10 100質量部に対する窒化ホウ素の配合割合(マスターバッチの配合割合ではない)として表した。
結果を表1に示す。
[融点及び結晶化温度]
上記記載の方法で得られた樹脂組成物ペレットを室温で12時間放置後、10mgの試料を切り出し、セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6200」を用いて、窒素雰囲気下、比較例4は30℃から260℃、比較例4以外は30℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温し、MXD10、PA66又はPA6成分に相当する吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めた。比較例4は260℃、比較例4以外は300℃で3分保持後、30℃まで20℃/分の速度で降温し、MXD10、PA66またはPA6成分に相当する発熱ピークのピークトップの温度から結晶化温度を求めた。
上記記載の方法で得られた樹脂組成物ペレットを85℃で12時間乾燥した後、ファナック社製射出成形機「100T」を使用し、シリンダー温度設定280℃(一律)、計量値55mm、計量初期設定時間5秒、回転数80rpm、背圧3MPaの条件で100×100×2mm厚の試験片を20ショット成形し、変形せずに安定して離型できる最短の冷却時間の平均値を求めた。冷却時間が短い程、成形性に優れているといえる。
Claims (5)
- キシリレンジアミンとセバシン酸とから得られるポリアミド樹脂(A)とポリアミド66(B)を含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド66(B)の融点がポリアミド樹脂(A)の融点より50℃を超えて高く、かつ、ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度とポリアミド66(B)の結晶化温度の温度差が50℃以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。 - ポリアミド66(B)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、7〜50質量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- ポリアミド樹脂組成物が、無機系結晶核剤を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とする成形品。
- ポリアミド66(B)の融点以上の温度で溶融し、射出成形することを特徴とする、請求項4に記載の成形品の成形方法。
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