JP2012054439A5 - - Google Patents

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記憶素子は、例えば図2に一例を示す層構造とされ、少なくとも2つの強磁性体層としての記憶層17、磁化固定層15を備え、またその2つの磁性層の間の中間層16を備える。
記憶層17は、膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される。
磁化固定層15は、記憶層17に記憶された情報の基準となる膜面に垂直な磁化を有する。
中間層16は、非磁性体であって、記憶層17と磁化固定層15の間に設けられる。
そして記憶層17、中間層16、磁化固定層15を有する層構造の積層方向にスピン偏極した電子を注入することにより、記憶層17の磁化の向きが変化して、記憶層17に対して情報の記録が行われる。
Figure 2012054439

ここで、Hk:実効的な異方性磁界、kB:ボルツマン定数、T:温度、Ms:飽和磁化量、V:記憶層の体積、Kは異方性エネルギーである。
また、記憶素子の膜構成は、記憶層17が磁化固定層15の下側に配置される構成でも、下側に配置される構成でも全く問題はない。さらには、磁化固定層15が記憶層17の上下に存在する、いわゆるデュアル構造でも全く問題ない。
さらに、本実施の形態において、中間層16を、酸化マグネシウム層とした場合には、磁気抵抗変化率(MR比)を高くすることができる。
このようにMR比を高くすることによって、スピン注入の効率を向上して、記憶層17の磁化M17の向きを反転させるために必要な電流密度を低減することができる。
反転電流値の測定結果を図3に示し、熱安定性の指標の測定結果を図4に示す。
図3は、記憶層17のCo−Fe合金のCo量(CoFe中の含有量;原子%)と、反転電流値から求めた反転電流密度Jc0との関係を示している。
図4は、記憶層17のCo−Fe合金のCo量(CoFe中の含有量;原子%)と、熱安定性の指標Δ(KV/kBT)との関係を示している。
図4より、Co量xが小さくなるにつれて、熱安定性の指標Δ(=KV/kBT)が大きくなっていき、Co量xが70%以下になると熱安定性の指標Δが大きい値で安定することが分かる。
これは、表1に示した飽和磁化量Msの測定結果と、式(2)より熱安定性の指標Δが飽和磁化量Msに比例することとから予想される変化とよく一致している。
[実験2]
上記[実験1]により、CoxFe100-xの場合、Co量xが70%以下の組成で高い熱安定性を有したまま、反転電流値Jc0を低減できることがわかった。
そこで、[実験2]においては、Co−Fe合金への、異種元素の添加効果を調べるため、B(ホウ素)を添加し、(Co50Fe50928という組成の記憶層17を用い、これがMeffective/Msにどのような影響を与えるかを調べた。試料の詳細は[実験1]と同様である。
すなわち、8原子%のホウ素を添加しても、飽和磁化量Msと実効的な反磁界Meffectiveの大小関係はCoとFeの比で決定されることが明らかになった。
従って、記憶層17の実効的な反磁界Meffectiveを飽和磁化量Msより小さくすることを、異種元素の添加が妨げることはないと考えられる。すなわち、高いトンネル磁気抵抗効果を発生させる、あるいは界面を平坦にして絶縁耐圧を向上させる、などの目的により、ホウ素などの添加元素を加えることも可能である。
図5より、素子サイズが50nmφになったことにより、熱安定性指数ΔのCo−Fe合金組成依存性が図4に示した短軸0.09μm×長軸0.18μmの楕円形状記憶素子で得られたΔのCo−Fe合金組成依存性から大きく変化したことが分かる。
図5によると、Coが40%以下、すなわちFeが60%以上存在するCo−Fe合金組成の場合にのみ、高い熱安定性が保持されている。
種々の検討を行った結果、Feが60%以上存在するCo−Fe合金が極微小な記憶素子において高い熱安定性Δを示す理由は、Co−Fe合金の磁化が膜面垂直方向を向いていることに起因していることが明らかになった。(外部磁界がない場合に磁化が安定になる方向は容易軸方向と呼ばれ、記憶素子の抵抗の外部磁界依存を測定し、その際の磁界方向を面内方向と垂直方向で比較することで調べることが可能である)。
Co−Fe合金の磁化が膜面垂直方向になっている理由は実効的な反磁界Meffectiveが飽和磁化量Msより著しく小さい組成であることに起因していると思われる。
また、垂直磁化膜になると極微小素子においても熱安定性が保たれる理由は、式(2)中のHk[実効的な異方性磁界]に関係しており、垂直磁化膜のHkは一般的に面内磁化膜よりも遥かに大きな値になる。つまり、垂直磁化膜では、大きなHkの効果により、面内磁化膜では十分な熱安定性Δを確保できない極微小な素子においても高い熱安定性Δを保つことが出来る。
上記の実験結果から、Co−Fe合金では、Fe量が60%以上になる場合、GbitクラスのST−MRAMに好適となるといえる。
以上実施の形態について説明してきたが、本発明では、上述の各実施の形態で示した記憶素子の膜構成に限らず、様々な膜構成を採用することが可能である。
例えば実施の形態では、磁化固定層15をCoFeBとしたが、実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
また、実施の形態では、単一の下地、キャップ材料、記憶素子形状しか示していないが、それらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
また実施の形態では、磁化固定層15は単層であったが、2層の強磁性層と非磁性層から成る積層フェリピン構造を用いても良い。また、さらに、積層フェリピン構造膜に反強磁性膜を付与した構造でもよい。
また、記憶素子の膜構成は、記憶層が磁化固定層の上側に配置される構成でも、下側に配置される構成でも全く問題はない。さらには、磁化固定層が記憶層の上下に存在する、いわゆるデュアル構造でも全く問題ない。
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