JP2012052093A - 電子機器ハウジング用の薄肉成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄肉成形体であり、機械的強度が高く、吸水による寸法変化が小さい薄肉成形体とその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス長繊維の束にポリアミドを溶融させた状態で含浸させ一体化させ、5〜15mmの長さに切断した樹脂含浸繊維束を含む樹脂組成物から得られ、ポリアミドが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンから得られるポリアミド又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンから得られるものであり、樹脂含浸繊維束中のガラス繊維含有量が40〜70質量%であり、要件(a)〜(d)を満たす薄肉成形体。(a)厚みが0.8〜2.0mm、(b)ガラス繊維の重量平均繊維長が0.5〜1.5mm、(c)シャルピー衝撃強度が10kJ以上、(d)曲げ弾性率(長さ80mm×幅10mm×厚さ2mmの試験片)の絶対乾燥値を基準(100%)としたときの吸湿値の値が80%以上。
【選択図】なし

Description

本発明は、携帯電話等の電子機器ハウジングや内部シャーシ用として適した薄肉成形体とその製造方法に関する。
携帯電話等の電子機器ハウジングや内部シャーシは薄肉の成形体からなるものであり、曲げ弾性率が高いことや、耐衝撃性に優れること、吸水による寸法変化が小さいことなどが要求される。
特許文献1には、ポリアミド、充填剤、添加剤及び補助剤からなるポリアミド成形化合物が開示されており、その用途として携帯電話のケーシング又は筺体が記載されている。充填剤には扁平ガラス繊維が含まれている。
特許文献2には、テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を50〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる半芳香族ポリアミド樹脂(A)100質量部と、繊維長が3mm以上である繊維状強化材(B)5〜300質量部とを含む長繊維強化半芳香族ポリアミド樹脂組成物が開示されている。
成形品中の繊維状強化材(B)の重量平均繊維長は、1〜10mmが好ましいことが記載されており(段落番号42)、実施例3(段落番号67)では、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長は3〜5mmであることが記載されている。このように成形品中の繊維長が長めであることから、薄肉成形体(厚さ2mm以下の成形体)の用途は記載されていない(段落番号43)。
特開2009−79212号公報 特開2006−274061号公報
本発明は、携帯電話等の電子機器のハウジングや内部シャーシ用として適した、厚さが0.8〜2.0mmの薄肉成形体であり、機械的強度が高く、吸水による寸法変化が小さい薄肉成形体とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、課題の解決手段として、
ガラス長繊維を長さ方向に揃えた状態で束ね、前記ガラス長繊維の束にポリアミドを溶融させた状態で含浸させ一体化した後に、5〜15mmの長さに切断した樹脂含浸繊維束を含む樹脂組成物から得られる薄肉成形体であり、
前記樹脂含浸繊維束中のポリアミドが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンから得られるポリアミド又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンから得られるポリアミドであり、
前記樹脂含浸繊維束中のガラス繊維含有量が40〜70質量%であり、下記の要件(a)〜(d)を満たすものである薄肉成形体を提供する。
(a)薄肉成形体の厚みが0.8〜2.0mm
(b)薄肉成形体中のガラス繊維の重量平均繊維長が0.5〜1.5mm
(c)薄肉成形体のシャルピー衝撃強度が10kJ以上
(d)薄肉成形体の曲げ弾性率(長さ80mm×幅10mm×厚さ2mmの試験片)の絶対乾燥値を基準(100%)としたときの吸湿値の値が80%以上
本発明の薄肉成形体は、厚みが0.8〜2.0mmと非常に薄いにも拘わらず高い機械的強度を有しており、さらに23℃/50%RH雰囲気下の飽和吸水状態であっても寸法変化が非常に小さい。本発明の薄肉成形体は、各種電子機器ハウジングや内部シャーシ用として好適である。
吸水による寸法変化率の測定方法の説明図。
<樹脂組成物>
本発明で用いる樹脂組成物に含まれる樹脂含浸繊維束は、ガラス長繊維を長さ方向に揃えた状態で束ね、前記ガラス長繊維の束にポリアミドを溶融させた状態で含浸させ一体化した後に、5〜15mmの長さに切断したものである。樹脂含浸繊維束に含まれるガラス繊維の長さは、樹脂含浸繊維束の長さと同一である。
樹脂含浸繊維束に含まれるポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンから得られるポリアミド又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンから得られるものである。
具体例としてはヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の重合体(ナイロン6T)、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の重合体(ナイロン6I)、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸およびイソフタル酸の重合体(ナイロン6T/6I)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸およびテレフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸およびε−カプロラクタムの重合体、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の重合体(ナイロンMXD-6)、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の重合体(ナイロンTMD-6)、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とε−カプロラクタムの重合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とイソフタル酸の重合体、テレフタル酸およびイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンおよびε−カプロラクタム重合体、メタキシリレンジアミンとテレフタル酸およびイソフタル酸とε−カプロラクタムの共重合体、ノナンジアミンとテレフタル酸の共重合体(ナイロン9T)、メチルペンタジアミンとテレフタル酸の共重合体(ナイロンM5T)、デカメチレンジアミンとテレフタル酸の共重合体(ナイロン10T)等のポリアミド樹脂が挙げられる。
ポリアミドは、ナイロンMXD-6やナイロン9Tがより好ましく、さらにナイロン9Tであり、極限粘度〔η〕(濃硫酸中30℃で測定)が0.80〜1.00dl/gのものがより好ましい。
樹脂含浸繊維束に含まれるガラス繊維は、繊維径(単糸径)6〜30μmのものが使用でき、1つの繊維束のガラス繊維の本数は100〜30000本、好ましくは500〜20000本、さらに好ましくは1000〜10000本程度である。
樹脂含浸繊維束は、ダイスを用いた周知の製造方法により製造することができ、例えば、特開平6−313050号公報の段落番号7、特開2007−176227号公報の段落番号23のほか、特公平6−2344号公報(樹脂被覆長繊維束の製造方法並びに成形方法)、特開平6−114832号公報(繊維強化熱可塑性樹脂構造体およびその製造法)、特開平6−293023号公報(長繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法)、特開平7−205317号公報(繊維束の取り出し方法および長繊維強化樹脂構造物の製造方法)、特開平7−216104号公報(長繊維強化樹脂構造物の製造方法)、特開平7−251437号公報(長繊維強化熱可塑性複合材料の製造方法および製造装置)、特開平8−118490号公報(クロスヘッドダイおよび長繊維強化樹脂構造物の製造方法)等に記載の製造方法を適用することができる。
本発明で用いる樹脂含浸繊維束中のガラス繊維とポリアミドの含有割合は、ガラス繊維は40〜70質量%、好ましくは50〜60質量%であり、ポリアミドは合計で100質量%となる残部割合である。
なお、樹脂含浸繊維束中のガラス繊維とポリアミドの含有割合を調整するため、樹脂組成物中に樹脂含浸繊維束とは別に上記ポリアミドを配合することができる。
本発明で用いる樹脂組成物は、上記樹脂含浸繊維束に加えて、さらに滑剤を含有することができる。滑剤は、樹脂含浸繊維束の内部に添加するのではなく、樹脂含浸繊維束と混合する(即ち、外部添加する)ものである。滑剤を含有することにより、射出成形機時にホッパに投入する際の組成物の計量時間を短縮することができ、計量のばらつきも小さくすることができる。
滑剤としては、慣用の滑剤、脂質類、ワックス類、シリコーン樹脂類などが含まれる。
脂質類としては、高級脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの飽和C8−35脂肪酸(好ましくは飽和C12−30脂肪酸、さらに好ましくは飽和C16−22脂肪酸)、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エルカ酸などの不飽和C10−35脂肪酸など)又はこれらの誘導体[例えば、高級脂肪酸塩(例えば、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛などのC8−35脂肪酸金属塩など);高級脂肪酸エステル[例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの前記高級脂肪酸と一価アルコールとのエステル;ショ糖脂肪酸エステル(例えば、ショ糖モノ乃至ヘキサステアリン酸エステルなどのショ糖と前記高級脂肪酸とのエステル)、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、グリセリンモノ乃至トリステアリン酸エステルなどのグリセリンと前記高級脂肪酸とのエステル)、ペンタエリスリトールと前記高級脂肪酸とのエステル、ジグリセリンと前記高級脂肪酸とのエステル、ポリグリセリンと前記高級脂肪酸とのエステルなどの前記高級脂肪酸と多価アルコールとのエステルなど];高級脂肪酸アミド(例えば、ステアリン酸アミドなどのC8−35脂肪酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドなどのアルキレンビス脂肪酸アミドなど)などが挙げられる。これらの脂質類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ワックス類としては、脂肪族炭化水素系ワックス(ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリC2−4オレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなど)、植物性又は動物性ワックス(カルナウバワックス、ミツロウ、セラックワックス、モンタンワックスなど)などが挙げられる。これらのワックス類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
シリコーン樹脂類としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、トリフルオロプロピルポリシロキサンなどのアルキルポリシロキサン;ジフェニルポリシロキサンなどのアリールポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサンなどのアルキルアリールポリシロキサンなどが挙げられる。シリコーン樹脂は、鎖状ポリシロキサンであってもよく、環状ポリシロキサンであってもよい。これらのシリコーン樹脂類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの滑剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの滑剤のうち、常温(5〜35℃程度)において、固体(又は固形状)の滑剤が好ましい。
このような滑剤としては、脂質類、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの飽和C12−30脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウムなどの飽和C12−30脂肪酸金属塩、グリセリンモノ乃至トリステアリン酸エステルなどのグリセリンモノ乃至トリ飽和C12−30脂肪酸エステル、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアルキレンビス飽和C12−30脂肪酸アミドなどが好ましく、特に、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和C16−22脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウムなどの飽和C16−22脂肪酸アルカリ土類金属塩などが好適に使用される。
滑剤の含有量は、樹脂含浸繊維束の質量に対して50〜2000ppmが好ましく、100〜1000ppmがより好ましい。50ppm以上であると計量時間の短縮効果及び計量ばらつきの改善効果が十分であり、2000ppm以下であると安定した計量ができる。
本発明で用いる樹脂組成物は、本発明の課題を解決できる範囲にて、公知の各種樹脂添加剤を含有することができる。
公知の添加剤としては、上記したポリアミド以外の熱可塑性樹脂、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、軟化剤、分散剤、安定化剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、アンチブロッキング剤、結晶核成長剤、充填剤(シリカやタルクなどの粒状充填剤など)などを含んでいてもよい。
<薄肉成形体>
本発明の薄肉成形体は、上記の樹脂組成物(樹脂含浸繊維束、又は樹脂含浸繊維束と必要に応じて含有する他の成分)を用いて、射出成形機等の成形機により成形することができる。
本発明では、射出成形時において、射出成形用金型としてピンゲートを有するものを使用する。ピンゲートの大きさ(径)は、0.5〜2.0mmが好ましく、0.7〜1.5mmがより好ましい。ピンゲートの大きさが0.5mm以上であると、繊維折損が抑制され、薄肉成形体中の重量平均繊維長が0.5mmよりも短くなることが防止され、2.0mm以下であるとゲート切れが良好で成形性が良くなる。
本発明の薄肉成形体は、下記の要件(a)〜(d)を満たすものであり、好ましくはさらに要件(e)を満たすものである。
<要件(a)>
薄肉成形体の厚みは0.8〜2.0mmであり、具体的な用途に応じて調整することができる。
<要件(b)>
薄肉成形体中のガラス繊維の重量平均繊維長は0.5〜1.5mmであり、好ましくは0.5〜1.0mmである。
なお、樹脂組成物が含有する樹脂含浸繊維束の長さ(即ち、ガラス繊維の長さ)は5〜15mmであり、好ましくは6〜12mm未満である。薄肉成形体の製造時において、前記範囲の樹脂含浸繊維束を用いて射出成形する過程において、ガラス繊維が折れて小さくなり、要件(b)の範囲となる。このときの射出成形条件は次のとおりである。
射出成形機クラス(30T〜220T)
シリンダー温度及び金型温度:ベース樹脂によって適宜調整(シリンダー温度250〜340℃、金型温度80〜160℃)
高速射出、射出一次圧力40〜200MPa、背圧0〜10MPa、回転数20〜200rpm
また、他の成形機及び他の成形条件を適用する場合であっても、長さ5〜15mmの樹脂含浸繊維束を用い、成形条件を変えたときの成形体中の重量平均繊維長のデータを取ることにより、容易に成形体中の重量平均繊維長を所定範囲内に調整することができる。
<要件(c)>
薄肉成形体のシャルピー衝撃強度は10kJ以上であり、好ましくは15kJ以上である。
<要件(d)>
薄肉成形体の曲げ弾性率(長さ80mm×幅10mm×厚さ2mmの試験片)の絶対乾燥値を基準(100%)としたときの吸湿値の値(23℃/50%RH雰囲気下の飽和吸水状態)は80%以上であり、好ましくは90%以上である。
<要件(e)>
吸水による寸法変化率は0.1%以下であり、好ましくは0.1%未満である。(23℃/50%RH雰囲気下の飽和吸水状態:吸水)
本発明の薄肉成形体は、上記した要件(a)〜(d)、好ましくはさらに要件(e)を満たしているものであることから、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、カーナビゲーション、ゲーム機、コンパクトカセット、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、電子手帳、電子辞書、電卓、ハードディスクレコーダー、パーソナルコンピューター、ビデオカメラ、デジタルカメラから選ばれる電子機器のハウジングや内部シャーシ用として適している。
これらの中でも、特に携帯電話、携帯情報端末(PDA)、スマートフォンのハウジング(アッパーケースとロウワーケースの組み合わせ)やハウジング内部に配置される内部シャーシ用として適している。
(ポリアミド)
MXD6:レニー6002(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
PA6T-1:VESTAMID HTplusM1000(ダイセル・エボニック(株)製)
PA6T-2:ZytelHTN501(NC010)(デュポン(株)製)
PA9T:Genestar N1000A (L41)((株)クラレ製)
(比較用ポリアミド)
PA6:UBEナイロン 1013B(宇部興産(株)製)
PA66:UBEナイロン 2020B(宇部興産(株)製)
(ガラス繊維)
GF−1:RS240QR−483(日東紡製)[ガラス繊維ロービング 4000本繊維束 平均繊維径17.4μm]
GF−2:CSX−3J−451S(日東紡製)[ガラス繊維チョップドストランド](その他の成分)
外部滑剤:St−Ca(ステアリン酸カルシウム,SC−100(堺化学工業(株)製))
(物性測定のための試験片作成方法)
装置:(株)日本製鋼所製、J−150E II
スクリュー:長繊維専用スクリュー
スクリュー径:51mm
(1)ISO多目的試験片A型形状品(厚み2mm)
ゲート形状20mm幅サイドゲート
成形品1はこの成形品から切り出した試験片(長さ80mm×幅10mm×厚み2mm)である。
(2)100角平板成形品(厚み1mm)=成形品2
ゲート形状10mm幅サイドゲート
(測定方法)
(1)シャルピー衝撃試験
ISO179/1eA(エッジワイズ)に準拠した。
試験片形状:長さ80mm×幅10mm×厚み2mm ノッチ付き(深さ2mm)
[ISO多目的試験片A型形状品(厚み2mm)]からノッチングマシーン(自動ノッチ加工機 No.189-PNCA-2((株)安田精機製作所製))を使用して加工した。
(2)曲げ試験(曲げ弾性率)
成形品1(長さ80mm×幅10mm×厚み2mm)を使用し、支点間距離32mm、試験速度1mm/minで測定した。
(3)水分率(吸水率)及び寸法変化率(吸水による寸法変化率)
成形品1(長さ80mm×幅10mm×厚み2mm)と成形品2(100mm角平板成形品,厚み1mm)それぞれの絶対乾燥状態の成形品質量を測定した後、それぞれ60℃の水中に96時間浸漬した。
その後、成形品1、2を取り出して、ペーパータオルで十分に水分を拭き取った後、成形品質量を測定した。
その後、23℃/50%RH雰囲気下に放置して、質量の経時変化を記録、質量変化が確認できなくなった状態を23℃/50%RH雰囲気下の飽和吸水状態、つまり吸水(吸湿)状態とした。
水分率と寸法変化率(図1に示す矢印間の長さL)の変化率)を下記計算式から求め、曲げ弾性率(表1、2に示す吸水状態及絶乾状態)を「(2)曲げ試験(曲げ弾性率)」により測定した。
水分率(%)=(吸水(吸湿)状態の成形品質量−絶乾状態の成形品質量)/絶乾状態の成形品質量×100
寸法変化率(%)=吸水状態の長さL/絶乾状態の長さL×100
(重量平均繊維長)
成形品1、2から約3gの試料を切出し、650℃で加熱して灰化させて繊維を取り出した。取り出した繊維の一部(500本)から重量平均繊維長を求めた。計算式は、特開2006−274061号公報の〔0044〕、〔0045〕を使用した。
(計量時間測定方法)
射出成形機:S-2000i 100B (スクリュー径32),ファナック(株)製
射出成形機のホッパーにペレットを投入して、下記条件での計量時間を求めた。ばらつきについては10ショット分で確認した。計量時間(sec)は射出成形機操作パネル画面から確認した。
・計量値:40mm
・回転数:80rpm
・背圧:3MPa
・シリンダー温度:280℃
実施例1
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてMXD6をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(290℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量60質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度280℃、金型温度130℃(実測))して、それぞれの測定のための試験片を作製した。
実施例2
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてMXD6をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(290℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量60質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットをそのまま射出成形(シリンダー温度280℃、金型温度130℃(実測))して、それぞれの物性測定のための試験片を作製した。
実施例3
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてMXD6をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(290℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量50質量%、長さ6mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度280℃、金型温度130℃(実測))して、それぞれの測定のための試験片を作製した。
実施例4
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてMXD6をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(290℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量50質量%、長さ12mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度280℃、金型温度130℃(実測))して、それぞれの物性測定のための試験片を作製した。
実施例5
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてMXD6をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(290℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量40質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度280℃、金型温度130℃(実測))して、それぞれの物性測定のための試験片を作製した。
実施例6
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてPA6T−1をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(340℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量50質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度330℃、金型温度140℃(実測))して、それぞれの物性測定のための試験片を作製した。
実施例7
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてPA6T−2をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(340℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量50質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度330℃、金型温度140℃(実測))して、それぞれの物性測定のための試験片を作製した。
実施例8
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてPA9Tをクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(340℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量60質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度330℃、金型温度140℃(実測))して、それぞれの物性測定のための試験片を作製した。
実施例9
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてPA9Tをクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(340℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量50質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度330℃、金型温度140℃(実測))して、それぞれの物性測定のための試験片を作製した。
比較例1
熱可塑性樹脂としてMXD6を50質量%とガラス繊維チョップドストランド(GF−2)50質量%をタンブラーブレンダーにて混合後、押出機(270℃)で溶融混練してペレット状の樹脂組成物を得た。
得られたペレットを射出成形(シリンダー温度270℃、金型温度130℃(実測))して、それぞれの測定のための試験片を作製した。
比較例2
熱可塑性樹脂としてPA9Tを50質量%とガラス繊維チョップドストランド(GF−2)50質量%をタンブラーブレンダーにて混合後、押出機(320℃)で溶融混練してペレット状の樹脂組成物を得た。
得られたペレットを射出成形(シリンダー温度330℃、金型温度140℃(実測))して、それぞれの測定のための試験片を作製した。
比較例3
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてPA66をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(320℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量60質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度300℃、金型温度100℃(実測))して、それぞれの測定のための試験片を作製した。
比較例4
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてPA6をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(290℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量60質量%、長さ9mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットにステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを外部滑剤として添加したものを射出成形(シリンダー温度280℃、金型温度100℃(実測))によりそれぞれの物性測定のための試験片を作成した。
比較例5
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてMXD6をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(290℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量50質量%、長さ18mmのペレット(樹脂含浸繊維束)を得た。
得られたペレットに外部滑剤としてステアリン酸カルシウム(St−Ca)200ppmを添加したものを射出成形(シリンダー温度280℃、金型温度130℃(実測))しようとしたが、ペレットがスクリューに喰い込んでいかず、射出成形できなかった。
比較例6
連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドを通して、ガラス繊維ロービング(GF−1)を引きながら、熱可塑性樹脂としてMXD6をクロスヘッドに接続された押出機から溶融状態(290℃)で供給して、ガラス繊維に含浸させた。
その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、冷却後、裁断し、ガラス繊維含有量50質量%、長さ4mmのペレットを作製しようとしたが、ペレットが割れてしまい、ペレットを得ることができなかった。
Figure 2012052093
Figure 2012052093
表1の実施例3(MXD6+GF−1)と表2の比較例1(MXD6+GF−2)との対比から、成形品1が含有するガラス繊維の重量平均繊維長の大小により、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強度に差が生じたことが確認された。また、成形品2が含有するガラス繊維の重量平均繊維長の大小により、寸法変化率に差が生じたことが確認された。
表1の実施例9(PA9T+GF−1)と表2の比較例2(PA9T+GF−2)との対比から、成形品1が含有するガラス繊維の重量平均繊維長の大小により、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強度に差が生じたことが確認された。また、成形品2が含有するガラス繊維の重量平均繊維長の大小により、寸法変化率に差が生じたことが確認された。
特許文献2の実施例3(段落番号67)のように、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長を3〜5mmにしようとすると、上記した比較例5のペレット(長さ18mm)よりも長いペレットを使用する必要があることから、薄肉成形体の製造ができないことになる。

Claims (7)

  1. ガラス長繊維を長さ方向に揃えた状態で束ね、前記ガラス長繊維の束にポリアミドを溶融させた状態で含浸させ一体化した後に、5〜15mmの長さに切断した樹脂含浸繊維束を含む樹脂組成物から得られる薄肉成形体であり、
    前記樹脂含浸繊維束中のポリアミドが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンから得られるポリアミド又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンから得られるポリアミドであり、
    前記樹脂含浸繊維束中のガラス繊維含有量が40〜70質量%であり、下記の要件(a)〜(d)を満たすものである薄肉成形体。
    (a)薄肉成形体の厚みが0.8〜2.0mm
    (b)薄肉成形体中のガラス繊維の重量平均繊維長が0.5〜1.5mm
    (c)薄肉成形体のシャルピー衝撃強度が10kJ以上
    (d)薄肉成形体の曲げ弾性率(長さ80mm×幅10mm×厚さ2mmの試験片)の絶対乾燥値を基準(100%)としたときの吸湿値の値が80%以上
  2. さらに(e)吸水による寸法変化率が0.1%以下(23℃/50%RH雰囲気下の飽和吸水状態)との要件を満たすものである請求項1記載の薄肉成形体。
  3. ポリアミドが、ノナンジアミンとテレフタル酸から得られるもの(ナイロン9T)で、極限粘度〔η〕(濃硫酸中30℃で測定)が0.80〜1.00dl/gのものである請求項
    1又は2記載の薄肉成形体。
  4. さらに滑剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の薄肉成形体。
  5. 薄肉成形体が電子機器のハウジング用であり、
    電子機器のハウジングが、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、カーナビゲーション、ゲーム機、コンパクトカセット、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、電子手帳、電子辞書、電卓、ハードディスクレコーダー、パーソナルコンピューター、ビデオカメラ、デジタルカメラから選ばれる電子機器のハウジングである請求項1〜4のいずれか1項記載の薄肉成形体。
  6. 薄肉成形体が電子機器のハウジング又は内部シャーシ用であり、電子機器のハウジング又は内部シャーシが、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、スマートフォンのハウジング又は内部シャーシである請求項1〜4のいずれか1項記載の薄肉成形体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の薄肉成形体の製造方法であって、
    前記樹脂組成物を溶融させた後、射出成形して成形するとき、射出成形用金型としてピンゲートを有するものを使用する薄肉成形体の製造方法。
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