JP2012051967A - 浄化材 - Google Patents

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Abstract

【課題】ふっ素、ほう素、砒素、クロム、鉛、セレン等重金属類を含む汚染土壌を効果的に浄化できる浄化材であって、汚染土壌に混合しても容積の増大の少ない浄化材を得る。
【解決手段】本発明に係る浄化材は、金属鉄粉表面に希土類元素の水酸化物または酸化物が付着していることを特徴とするものである。
本発明の浄化材は、ふっ素、ほう素、砒素、クロム、鉛、セレン等重金属類を含む汚染土壌を効果的に浄化できる浄化材であって、汚染土壌に混合しても容積の増大の少ない浄化材を得ることができる。また、金属鉄粉表面に希土類元素の水酸化物または酸化物を付着させることで、後述する実施例で実証されたように、同量の希土類元素の水酸化物または酸化物を単体で用いるよりも、希土類元素の水酸化物または酸化物の重金属吸着能が向上する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ふっ素、ほう素、砒素、クロム、鉛、セレン等の重金属類を含む汚染土壌を浄化処理する浄化材に関する。
ふっ素、ほう素、砒素、クロム、鉛、セレン等重金属類を含む汚染土壌処理には重金属不溶化剤として金属鉄粉、希土類元素の水酸化物等を用いた浄化材が使用されている。
しかし、金属鉄粉ではふっ素、ほう素を吸着することが出来ないため、複合的な汚染に対しては鉄粉単独からなる浄化材では対処できない。
そこで、希土類元素の水酸化物を吸着剤として利用することが考えられる。
しかしながら、希土類水酸化物は微粒子であり、透水性が悪く、重金属に汚染された水が浸透しにくいため重金属の吸着が進みにくい。
また、希土類元素は希少金属で価格が高いため、鉄粉などに比べコストが高くなる傾向がある。
さらに、希土類水酸化物は嵩比重が低く粉体は飛散しやすく、施工性が良くないという問題もある。
そこで、希土類水酸化物を吸着剤として効果的に利用するため、アルミナやゼオライトなどの無機鉱物に希土類水酸化物を担持して利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−334749号公報
特許文献1に記載されたように、希土類水酸化物をアルミナやゼオライトなどの担体に担持させた場合、担体は重金属を吸着する能力が低い、もしくは無いため吸着能力あたりの嵩比重が低くなり、処理対象の汚染土壌と混合した後の汚染土壌の容積が増大してしまい、原位置に全量を収める事が出来なくなるという問題がある。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、ふっ素、ほう素、砒素、クロム、鉛、セレン等重金属類を含む汚染土壌を効果的に浄化できる浄化材であって、汚染土壌に混合しても容積の増大の少ない浄化材を得ることを目的としている。
セリウム等の希土類水酸化物は多くの重金属を吸着できるため浄化材として好適であるが以下のような問題がある。
(i) レアメタルであるためコストが高い。
(ii) 細かい粉体であるため作業性・施工性が良くない。
(iii)細かい粉体であるため、透水性が悪く、浄化効率が悪い。
(iV) 細かい粉体であるため、嵩張る。
(V) 粒子表面での反応なので、粒径が粗くなると内部は反応に寄与せず無駄になる。
他方、金属鉄粉には以下のような問題がある。
(a)金属鉄粉は、ふっ素、ほう素を吸着できない。
(b)鉄の溶解による共沈反応が重金属吸着の主反応であるため、機能発現までに時間がかかる。
上記のようのセリウム等の希土類水酸化物と金属鉄粉はそれぞれ浄化材として問題を有している。
そこで、発明者は、重金属不溶化能を持つ鉄粉表面に微粒子状希土類水酸化物を付着させることでセリウム等の希土類水酸化物と金属鉄粉のそれぞれの弱点がなくなり、さらに単体で用いるよりもより優れた浄化材になることを見出した。
本発明は、以上のような知見に基づくものであり、具体的には以下の構成を備えているものである。
(1)本発明に係る浄化材は、金属鉄粉表面に希土類元素の水酸化物または酸化物が付着していることを特徴とするものである。
(2)上記(1)に記載のものにおいて、平均粒子径が10μm〜500μmである金属鉄粉100質量部の表面に希土類元素の水酸化物または酸化物が希土類酸化物換算として0.01〜30質量部付着していることを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記希土類元素がセリウムであることを特徴とするものである。
セリウムは酸化能を持つため、鉄の溶解を誘起する。そのため、溶けた鉄が水酸化鉄で沈殿する際に、砒素等を共沈する。つまり、セリウムを鉄粉表面に付着させることで、セリウムが鉄の溶解を促進するため、鉄粉の問題点(b)が解消され鉄粉単体に比べより迅速に重金属吸着能が発現するという効果がある。
本発明に係る浄化材は、金属鉄粉表面に希土類元素の水酸化物または酸化物が付着しているので、ふっ素、ほう素、砒素、クロム、鉛、セレン等重金属類を含む汚染土壌を効果的に浄化できる浄化材であって、汚染土壌に混合しても容積の増大の少ない浄化材を得ることができる。
また、金属鉄粉表面に希土類元素の水酸化物または酸化物を付着させることで、後述する実施例で実証されたように、同量の希土類元素の水酸化物または酸化物を単体で用いるよりも、希土類元素の水酸化物または酸化物の重金属吸着能が向上する。
本実施の形態に係る浄化材は、重金属不溶化能を持つ金属鉄粉表面に微粒子状の希土類水酸化物または酸化物を付着させたものである。
金属鉄粉表面に希土類水酸化物または酸化物を付着させることで、希土類水酸化物または酸化物の粒子同士の凝集を防ぐことができ、希土類水酸化物または酸化物の表面積を有効に活用できる。したがって、希土類水酸化物または酸化物単体を使用することに比べ比表面積が大きくなり、少量の希土類元素で重金属が吸着可能になる。
平均粒子径が10μm〜500μmである金属鉄粉100質量部の表面に希土類塩の水酸化物または酸化物が0.01〜30質量部付着しているのが好ましい。
これら数値限定の根拠は以下の通りである。
金属鉄粉の平均粒子径を10μm以上としたのは、金属鉄粉の平均粒子径が10μm未満であると、使用後に磁石等を用いて土壌と分離することが困難になる、また、粉末が飛散して施工性が悪くなり、さらに発火の危険性が高くなるといった問題を回避するためである。
他方、金属鉄粉の平均粒子径が500μm超だと、同一質量あたりの粒子数が減るため土壌中へ満遍なく散布するのが困難になり、その結果より多くの鉄粉を必要となるし、また比表面積が減ることから浄化作用が低減するといった問題がある。
また、希土類水酸化物の付着量を金属鉄粉100質量部に対して0.01〜30質量部としたのは、0.01質量部未満だと、重金属類の十分な吸着が出来ないためである。
他方、30質量部超だとコストが高くなるからである。
希土類化合物としては、セリウム化合物、ランタン化合物等の全てが使用可能であるが、水に不溶、吸着能に優れるセリウムを用いることが好ましい。金属鉄粉に付着させる希土類化合物は単独で使用してもよいし、あるいは複数のものを混合して用いてもよい。なお、希土類化合物は水酸化物、または酸化物が望ましい。砒素、セレン、鉛、クロム、ふっ素、ほう素などを吸着し、固定化する能力が高いからである。
なお、セリウムは酸化能を持つため、鉄の溶解を誘起する。そのため、溶けた鉄が水酸化鉄で沈殿する際に、砒素等を共沈する。つまり、セリウムが鉄の溶解を促進するため、重金属吸着能がアップするという効果がある。
鉄粉は重金属不溶化鉄粉の他、微粉状の鉄粉、破砕削り合金鉄粉、粉末冶金用鉄粉、などを用いることが出来る。
微粒状の金属鉄粉としてはアトマイズ鉄粉、海綿鉄粉、還元鉄粉、電解鉄粉を使用することが出来る。
本実施の形態の浄化材は、殆どの有害重金属に対して浄化効果が有る。
また、本実施の形態の浄化材は、担体としての機能を有する金属鉄粉もふっ素、ほう素以外の砒素、鉛、セレン、クロムを吸着することができるので、表面担持希土類が破過した後も前記物質を吸着でき、長期に亘って浄化材として機能する。
またさらに、金属鉄粉をベースにしているため、嵩比重が高く、珪藻土やゼオライトなどに担持した場合に比べ土壌への混合時に土壌容積を増大させない。
また、施工時に粉末の飛散が無く、ハンドリング性が向上する。
次に、本実施の形態に係る浄化材の製造方法を説明する。
<製造方法1>
(1)混合工程
混合工程は、可溶性の希土類塩(塩化セリウム、硫化セリウム等)を粉体の状態で金属鉄粉の表面に万遍に付ける工程である。混合機としては、ボールミル、アイリッヒミキサー等を用いる。
混合工程では、金属鉄粉100質量部に対し、希土類塩を希土類酸化物換算として0.01〜30質量部混合する。
(2)付着工程
付着工程は、鉄粉と満遍なく混合された希土類塩を少量の水分を使い鉄粉表面に付着させるととともに、塩を加水分解させて鉄粉表面に希土類水酸化物として付着させる工程である。
付着工程では、希土類塩を鉄粉表面に付着させるためのバインダーとして純水等の水性溶媒を鉄粉100質量部に対して0.1〜10質量部加えて更に混合する。
(3)乾燥工程
乾燥工程は、付着工程の終了後、鉄粉を乾燥させて余分な水分を除去する工程である。乾燥には、例えば温風式の恒温乾燥機などを用いる。水分量が少量の場合は混合によって発生する熱により水性溶媒が乾燥する。その場合は乾燥工程を省略することが出来る。
本製造方法は、工程が非常にシンプルであり、かつ希土類塩を必要量のみ使用することからコスト低減効果に優れる。
<製造方法2>
(1)混合工程
混合工程では、金属鉄粉100質量部に対し、不溶性の希土類塩(水酸化セリウム、酸化セリウム等)を希土類酸化物換算として0.01〜30質量部、混合機を用いて混合する。
(2)付着工程
付着工程は、希土類塩の一部を溶解して鉄粉表面へ付着させる工程である。
付着工程は、塩化セリウム等のセリウム塩を溶解した酸性溶液を、金属鉄粉100質量部に対し、0.1〜10質量部加え更に混合する。
(3)乾燥工程
乾燥工程は、付着工程の終了後、鉄粉を乾燥させて余分な水分を除去する工程である。乾燥には、例えば温風式の恒温乾燥機などを用いる。
<製造方法3>
製造方法3は不溶性の希土類塩、例えば水酸化セリウム、酸化セリウムを鉄粉に付着させる方法に関するものである。
(1)混合工程
金属鉄粉100質量部に対し、希土類塩を溶解した水溶液を希土類酸化物換算として0.01〜30質量部を、混合機を用いて混合する。混合機としては、製造方法1と同様にボールミル、アイリッヒミキサー等を用いる。
(2)付着工程
付着工程は、希土類塩の価数等量相当以上のアルカリを添加して更に混合することのより、鉄粉表面に微細な希土類水酸化物を析出させて付着させる工程である。添加するアルカリ量としては、上記の通り希土類塩の価数等量相当以上であって、添加後の水溶液のpH値が7〜10程度にするのが好ましい。
(3)乾燥工程
乾燥工程は、製造方法1と同様に、付着工程の終了後、鉄粉を乾燥させて余分な水分を除去する工程である。乾燥には、例えば温風式の恒温乾燥機などを用いる。
<製造方法4>
(1)混合工程
混合工程は、希土類塩を溶解した水溶液に鉄粉を添加して撹拌する。
(2)付着工程
撹拌を継続しながら、希土類塩の価数等量相当以上であって、添加後の水溶液のpH値が7〜10程度になるアルカリを添加する。
本工程により、微細な希土類水酸化物が析出して鉄粉表面に付着する。
(3)ろ過工程
溶液からろ過によって希土類水酸化物が付着した鉄粉を回収する工程である。
(4)乾燥工程
乾燥工程は、製造方法1と同様に、付着工程の終了後、鉄粉を乾燥させて余分な水分を除去する工程である。乾燥には、例えば温風式の恒温乾燥機などを用いる。
上記のようにして製造された浄化材の用い方としては、浄化材を処理対象とする汚染土壌に混合して用いても良いし、あるいは浄化材を所定の厚みに敷き詰めて、その上に汚染土壌を盛土するような用い方でもよいし、またあるいは地盤を掘って掘った地盤の底面と側面に浄化材を所定の厚みで設置して、浄化材で囲まれた空間に汚染土壌を入れるような用い方をしてもよい。
本発明の浄化材を以下に示す方法(前述した<製造方法2>に相当)で製造し、製造した浄化材について、浄化作用の効果を確認する実験を行った。
<浄化材>
浄化材は、以下の工程により製造した。
(1)混合工程
還元鉄粉100質量部と水酸化セリウム3質量部をボールミルで混合した。
(2)付着工程
20質量%の塩化セリウム溶液2質量部を、混合物に更に添加して混合した。
(3)乾燥工程
乾燥機で水分を除去して乾燥し、浄化材(セリウム鉄粉)を完成した。
実験方法は、以下に示す実験1〜実験6の6種類を実施し、実験1〜4が本発明の実施例に相当し、実験5、6が比較例である。
<実験1(実施例1)>
ふっ素溶液(1.0mg/L)50mlに浄化材0.5gを投入し、振とう機で10分間振とうした。その後、0.45μのメンブランフィルターでろ過し、ろ液中のふっ素を定量した。
<実験2(実施例2)>
ほう素溶液(1.0mg/L)50mlに浄化材0.5gを投入し、振とう機で10分間振とうした。
その後、0.45μのメンブランフィルターでろ過し、ろ液中のほう素を定量した。
<実験3(実施例3)>
砒素溶液(1.0mg/L)50mlに浄化材0.5gを投入し、振とう機で10分間振とうした。
その後、0.45μのメンブランフィルターでろ過し、ろ液中の砒素を定量した。
<実験4(実施例4)>
鉛溶液(1.0mg/L)50mlに浄化材0.5gを投入し、振とう機で10分間振とうした。
その後、0.45μのメンブランフィルターでろ過し、ろ液中の鉛を定量した。
<実験5(比較例1)>
ふっ素溶液(1.0mg/L)50mlに水酸化セリウム0.015gを投入し、振とう機で10分間振とうした。
その後、0.45μのメンブランフィルターでろ過し、ろ液中のふっ素を定量した。
本実験で用いた水酸化セリウムの量は、実験1〜4で用いた浄化材の鉄粉に付着しているセリウムと同量である。
<実験6(比較例2)>
ひ素溶液(1.0mg/L)50mlに還元鉄粉0.5gを投入し、振とう機で10分間振とうした。
その後、0.45μのメンブランフィルターでろ過し、ろ液中のひ素を定量した。
本実験で用いた還元鉄粉は、実験1〜4で用いた浄化材の基材として用いた鉄粉である。
実験結果を表1に示す。
Figure 2012051967
表1に示されるように、実施例1〜4は、各浄化対象物質に対して浄化効果が得られていることが実証された。
実施例1と比較例1を比較すると、両者は共にふっ素を浄化対象物質としているが、本実施例の浄化材では吸着後の濃度が0.006(mg/L)であるのに対して、比較例1では0.750(mg/L)であり、本実施例の浄化材がセリウム単体の場合よりも浄化作用に優れていることが分かる。
また、実施例3と比較例2を比較すると、両者は共に砒素を浄化対象物質としているが、本実施例の浄化材では吸着後の濃度が0.003(mg/L)であるのに対して、比較例2では0.250(mg/L)であり、本実施例の浄化材が還元鉄粉単体の場合よりも浄化作用に優れていることが分かる。

Claims (3)

  1. 金属鉄粉表面に希土類元素の水酸化物または酸化物が付着していることを特徴とする浄化材。
  2. 平均粒子径が10μm〜500μmである金属鉄粉100質量部の表面に希土類元素の水酸化物または酸化物が希土類酸化物換算として0.01〜30質量部付着していることを特徴とする請求項1に記載の浄化材。
  3. 前記希土類元素がセリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の浄化材。
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