以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[静電潜像現像用トナー]
本実施形態に係る静電潜像現像用トナー(単に「トナー」と称する場合もある。)は、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含み、粉砕法により製造された不定形粉砕トナー母粒子と、結着樹脂、及び着色剤を含み、ワックスを実質上含まず、粉砕法により製造された粒子を、熱処理により球形化処理された球形粉砕トナー母粒子とを含む。すなわち、前記
不定形粉砕トナー母粒子と、前記球形粉砕トナー母粒子との、性状の異なるトナー母粒子を組み合わせた、いわゆるハイブリッドトナーである。
このような静電潜像現像用トナーは、現像ローラへのトナーの付着を抑制でき、転写性及びクリーニング性に優れている。
このことは、以下のことによると考えられる。
まず、球形化処理された球形粉砕トナー母粒子を含有させることによって、得られるトナーの転写性を向上させることができると考えられる。具体的には、形成された画像中にトナーが転写されなかった箇所が形成される現象、いわゆる転写中抜け等の発生を抑制することができると考えられる。このことは、前記球形粉砕トナー母粒子は、その形状が球形に近く、感光体との接触摩擦係数が小さく、前記球形粉砕トナー母粒子が感光体から剥がれやすくなることによると考えられる。一方、トナーに含有させるトナー母粒子として、前記球形粉砕トナー母粒子のみを含有させると、得られるトナーのクリーニング性が低下し、転写後に感光体上に残留したトナーが除去されにくくなる傾向があった。このことは、前記球形粉砕トナー母粒子が、球形に近いため、転写後に感光体上に残留したトナーを除去するために用いられる、感光体に接触して設けられるクリーニングブレード等のクリーニング装置に引っ掛からずに、すり抜けてしまいやすいためと考えられる。
これに対して、前記不定形粉砕トナー母粒子は、粉砕法により製造されたままの形状であるので、球形に近い形状とは言えず、例えば、いわゆるポテト状の形状をしている。このため、前記不定形粉砕トナー母粒子を含有させることによって、クリーニング性を向上させることができると考えられる。このことは、前記不定形粉砕トナー母粒子がクリーニングブレード等のクリーニング装置に引っ掛かりやすいので、すり抜けてしまいやすい球形粉砕トナー母粒子をも除去することができるためであると考えられる。一方、トナーに含有させるトナー母粒子として、前記不定形粉砕トナー母粒子のみを含有させると、転写性が低下すると考えられる。このことは、前記不定形粉砕トナー母粒子を用いると、得られたトナーに丸みがなくなり、感光体との接触摩擦係数が増大し、転写時にトナーが感光体から剥がれにくくなることによると考えられる。さらに、トナーに含有させるトナー母粒子として、前記不定形粉砕トナー母粒子のみを含有させると、得られたトナーが現像ローラ(現像スリーブ)に付着しやすく、いわゆるスリーブ付着が発生しやすくなると考えられる。このことは、前記不定形粉砕トナー母粒子を用いると、得られたトナー自身の付着力が高くなり、現像ローラ上で帯電凝集を起こしやすいためと考えられる。この結果、現像ローラ上に好適なトナー薄層を形成できなくなり、ベタ画像を形成する際に、画像むらや画像濃度低下等が発生し、好適な画像を形成できない傾向があると考えられる。また、前記不定形粉砕トナー母粒子は、上述したように、転写性を低下させ、好適な画像を形成できないようにする傾向があるが、前記球形粉砕トナー母粒子とともに用いることによって、優れた転写性を充分に維持できると考えられる。このことは、前記不定形粉砕トナー母粒子によって、画像中にトナーが転写されない箇所が形成されるような状況になっても、前記球形粉砕トナー母粒子が、その箇所に転写され、いわゆる転写中抜け等の発生を抑制することができることによると考えられる。
また、前記球形粉砕トナー母粒子には、ワックスを実質上含まない。このことは、球形のトナー母粒子を得るために、いわゆる粉砕法により得られたトナー母粒子を、単に熱処理により球形化処理しても、球形化処理中に、トナー母粒子からワックスが染み出し、好適な球形のトナー母粒子が得られにくいと考えられる。単にワックスを含まないトナー母粒子を用いた場合、定着性等が低下し、高画質な画像が得られにくい傾向がある。この点、ワックスを実質上含まない前記球形粉砕トナー母粒子とともに、ワックスを含む前記不定形粉砕トナー母粒子を用いるので、ワックスを含有したことによる効果を充分に発揮でき、高画質な画像を得ることができると考えられる。
以上のことから、前記不定形粉砕トナー母粒子と前記球形粉砕トナー母粒子とを含有することによって、得られたトナーが、現像ローラへのトナーの付着を抑制でき、転写性及びクリーニング性に優れたものになると考えられる。よって、このトナーを、例えば、上記のような小型タンデム型ハイブリッド現像方式の画像形成装置に用いても、現像ローラへのトナーの付着を抑制でき、高画質な画像が形成できる。
また、球形粉砕トナー母粒子は、その円相当径が3〜10μmの平均円形度が0.97以上であることが好ましい。球形粉砕トナー母粒子の平均円形度が小さすぎると、球形化処理が不充分であり、充分に球形に近い形状とは言えず、球形粉砕トナー母粒子を含有させることにより、得られたトナーの転写性を高めるという効果を充分に発揮できない可能性がある。また、前記平均円形度が0.97以上であると、走査型電子顕微鏡(SEM)等で、そのトナー母粒子を観察すると、その観察像が真円に近いものとなっており、球形のトナー母粒子と言える。この形状が、トナーの転写性を高める効果を発揮させるものと考えられる。
また、不定形粉砕トナー母粒子は、その円相当径が3〜10μmの平均円形度が、0.93以上0.97未満であることが好ましい。不定形粉砕トナー母粒子の平均円形度が小さすぎると、球形粉砕トナー母粒子を含有させて、トナーの転写性を高めるとは言え、得られたトナーの転写性が不充分になる可能性がある。さらに、スリーブ付着が発生し、好適な画像を形成できない可能性もあった。また、不定形粉砕トナー母粒子の平均円形度が大きすぎると、得られたトナーのクリーニング性を高めることができない可能性がある。また、粉砕法で得られたトナー母粒子は、球形化処理を施していない場合、不定形粉砕トナー母粒子の平均円形度が大きくなりすぎことは、ほとんどないと考えられる。また、前記平均円形度が0.97未満であると、走査型電子顕微鏡(SEM)等で、そのトナー母粒子を観察すると、その観察像が真円とは言えず、いわゆるポテト状の形状に近いものとなっており、不定形のトナー母粒子と言える。この形状が、トナーのクリーニング性を高める効果を発揮させるものと考えられる。
また、前記不定形粉砕トナー母粒子と前記球形粉砕トナー母粒子との混合物、すなわち、ハイブリッドトナーを構成するトナー母粒子の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、0.96以上であることが好ましい。この混合物の平均円形度が小さすぎると、球形粉砕トナー母粒子を含有させて、トナーの転写性を高めるとは言え、得られたトナーの転写性が不充分になるおそれがある。また、スリーブ付着が発生し、好適な画像を形成できないおそれもあった。
ここでの平均円形度は、円相当径が3〜10μmの平均円形度であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、フロー式粒子像分析装置によって測定される投影面積円相当径が3〜10μmの粒子の2次元投影像と同面積である円の周囲長を、フロー式粒子像分析装置によって測定される前記2次元投影像の周囲長で除することにより求められた円形度の平均値等が挙げられる。また、フロー式粒子像分析装置としては、特に限定されないが、例えば、シスメックス株式会社製のFPIA−2100やFPIA−3000等を用いることができる。
円相当径が3〜10μmの粒子(トナー母粒子)の平均円形度は、具体的には、以下のようにして測定した値等が挙げられる。
まず、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製のFPIA−3000)に測定対象物である粒子(平均円形度を測定する粒子)を装入する。そして、装入された粒子全体の中から、投影面積円相当径が3〜10μmの粒子の2次元投影像を、23℃60%RHの環境下で測定した。すなわち、測定の対象を、投影面積円相当径が3〜10μmの粒子に限定して、23℃60%RHの環境下で、2次元投影像を測定した。そして、得られた2次元投影像を、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理したときの周囲長(L)を測定する。次に、前記2次元投影像と同面積である円の周囲長(L0)と、下記式(I)を用いて、個々の粒子の円形度を算出する。
a=L0/L (I)
式(I)中、aは、円形度を示し、Lは、前記2次元投影像を画像処理したときの周囲長を示し、L0は、前記2次元投影像と同面積である円の周囲長を示す。
最後に、投影面積円相当径が3〜10μmの粒子における個々の粒子の円形度aの総和を、測定した投影面積円相当径が3〜10μmの粒子の個数で除した値を、円相当径が3〜10μmの粒子の平均円形度と定義する。
また、投影面積円相当径が3μm以下のトナー母粒子は、トナー母粒子の粒度分布から外れており、その量のトナー母粒子全体に対する割合は少ない。また、このような場合、その円形度を測定しても、外添剤の割合が多く、適切な円形度を測定できない。また、投影面積円相当径が10μmを超えるトナー母粒子も、トナー母粒子の粒度分布から外れており、その量のトナー母粒子全体に対する割合は少ない。このような10μmを超える円相当径のものは、実際には、トナー母粒子が凝集したものが多く、適切な円形度を測定できない。また、ハイブリッド現像方式を用いた画像形成装置において、スリーブ付着の発生したトナーを構成するトナー母粒子の粒子径を調査したところ、多くが投影面積円相当径で3〜10μmであった。そして、形成された画像中にトナーが転写されなかった箇所が形成される現象、いわゆる転写中抜けを誘発するものも、多くが投影面積円相当径で3〜10μmであった。
以上のことから、ここでは、投影面積円相当径が3〜10μmのトナー母粒子の平均円形度に着目し、これらを調整することによって、現像ローラへのトナーの付着をより抑制でき、転写性及びクリーニング性により優れたものになると考えられる。
<不定形粉砕トナー母粒子>
前記不定形粉砕トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含み、粉砕法により製造されたものである。また、前記不定形粉砕トナー母粒子は、上述したように、その円相当径が3〜10μmの平均円形度が、0.93以上0.97未満であることが好ましい。
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、従来からトナー母粒子の結着樹脂として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。その具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂等が好ましく用いられる。この中でも、ポリエステル系樹脂が、比較的軟化点が低く、低温定着性に優れ、非オフセット温度範囲が広い点から、好ましく用いられる。
ポリエステル系樹脂としては、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合又は共縮重合によって得られるものが用いられる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のものが挙げられる。
まず、2価又は3価以上のアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の2価又は3価以上のアルコール類が挙げられる。
次に、2価又は3価以上のカルボン酸成分としては、2価又は3価カルボン酸、この酸無水物又はこの低級アルキルエステルが挙げられる。2価カルボン酸としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等が挙げられる。3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等が挙げられる。
そして、ポリエステル系樹脂の軟化点は、80〜150℃であることが好ましく、90〜140℃であることがより好ましい。
また、ポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体のほか、スチレンと、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体が挙げられる。他の共重合モノマーとしては、p−クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等の他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせてスチレン単量体と共重合させることができる。
結着樹脂としては、定着性が良好な観点から上記のような熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂のみを使用する必要はなく、架橋剤を添加したり、熱硬化性樹脂を一部使用してもよい。このように結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、及び耐久性を向上させることができる。
上記のような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂やシアネート系樹脂等を使用することができる。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)としては、50〜65℃であることが好ましく、50〜60℃であることがより好ましい。結着樹脂のガラス転移点が50℃よりも低い場合には、画像形成装置の使用時にトナー同士が現像器内で融着したり、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着し、保存安定性が低下する可能性がある。また、樹脂強度が低いため、感光体へのトナー付着が生じる可能性がある。一方、ガラス転移点が65℃よりも高い場合には、トナーの低温定着性が低下する可能性がある。尚、結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計DSC−6200を用い、測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空(から)のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて吸熱曲線を測定し、得られた吸熱曲線の変化点よりガラス転移点を求めることができる。
(着色剤)
前記着色剤としては、トナーとして所望の色になるように、公知の顔料や染料を用いることができる。具体的には、例えば、色に応じて、以下のような着色剤が挙げられる。
黒色顔料としては、例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー180等が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。赤色顔料として、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド238等が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー顔料)等が挙げられる。緑色顔料としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等が挙げられる。白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。例えば、シアントナーの着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー顔料)が好ましい。また、染料としては、例えば、アシッドバイオレット等が挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、特に限定されないが、好適な画像濃度を達成するためにも、前記結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。
(ワックス)
前記ワックスは、定着性やオフセット性を向上させるために配合される。
前記ワックスとしては、従来からトナー母粒子のワックス類として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。好ましくは、例えば、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、ポリテトラフルオロエチレン系ワックス等のフッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらワックスは単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。かかるワックスを添加することにより、オフセット性や像スミアリングをより効率的に防止することができる。
前記ワックスの含有量としては、特に限定されないが、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球形粉砕トナー母粒子の合計100質量部に対して、1〜5質量部であることが好ましい。ワックスの含有量が少なすぎる場合には、オフセット性や像スミアリング等を効率的に防止することができない可能性がある。一方、ワックスの配合量が多すぎる場合には、トナー同士が融着してしまい、保存安定性が低下する可能性がある。
(電荷制御剤)
前記不定形粉砕トナー母粒子には、トナーの摩擦帯電性等の帯電性を制御するために、電荷制御剤を含有させることが一般的である。前記電荷制御剤は、帯電レベルや帯電立ち上がり特性(短時間で、一定の電荷レベルに帯電するかの指標)を著しく向上させ、耐久性や安定性に優れた特性等を得るために配合される。すなわち、トナーを正帯電させて現像に供する場合には、正帯電性の電荷制御剤(正帯電性電荷制御剤)を添加することができ、負帯電させて現像に供する場合には、負帯電性の電荷制御剤(負帯電性電荷制御剤)を添加することができる。
前記電荷制御剤としては、従来からトナー母粒子の電荷制御剤として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。
正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEW及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。特に、ニグロシン化合物は、より迅速な立ち上がり性が得られる観点から、正帯電性トナーとしての使用に最適である。
また、前記正帯電性電荷制御剤として、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂又はオリゴマ−等も使用することができる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂は、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる観点から、最適である。この場合において、上記スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。誘導されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジ(低級アルキル)アミノエチル(メタ)アクリレート;ジメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが好ましく用いられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性を示す電荷制御剤としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効である。キレート化合物の例として、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等が挙げられる。有機金属錯体としては、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体又は塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が特に好ましい。
前記電荷制御剤の含有量としては、前記不定形粉砕トナー母粒子100質量部に対して、0.5〜15質量部であることが好ましく、0.5〜8質量部であることがより好ましく、0.5〜7質量部であることがさらに好ましい。電荷制御剤の含有量が少なすぎる場合には、所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となる可能性がある。よって、このような所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となったトナーを用いて静電潜像の現像を行って画像形成を行ったとき、画像濃度が低くなったり、画像濃度を一定に維持しにくくなるおそれがある。また、電荷制御剤の分散不良が起こりやすく、いわゆるカブリの原因となったり、感光体汚染が激しくなる等の傾向がある。一方、電荷制御剤の添加量が多すぎる場合には、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良、画像不良の原因となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる可能性がある。
(製造方法)
前記不定形粉砕トナー母粒子の製造方法としては、粉砕法で製造されるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、上記の、結着樹脂、着色剤、及びワックス等のトナー母粒子の各成分を混合機等で混合する。前記混合機としては、公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル、ハイブリダイゼーションシステム、コスモシステム等が挙げられる。この中でも、ヘンシェルミキサが好ましい。
次に、得られた混合物を混練機等で溶融混練する。前記混練機としては、公知のものを使用でき、例えば、2軸押出機等の押出機、三本ロールミル、ラボブラストミル等が挙げられ、押出機が好適に用いられる。また、溶融混練時の温度としては、前記結着樹脂の軟化点以上であって、前記結着樹脂の熱分解温度未満の温度であることが好ましい。
次に、得られた溶融混練物を冷却して固形物とし、その固形物を粉砕機等で粉砕する。前記粉砕機としては、公知のものを使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機(ジェットミル)等の気流式粉砕機、ターボミル等の機械式粉砕機や衝撃式粉砕機等が挙げられ、機械式粉砕機、特にターボミルが好適に用いられる。
最後に、得られた粉砕物を分級機等で分級する。分級することによって、過粉砕物や粗粉を除去することができ、所望の不定形粉砕トナー母粒子を得ることができる。前記分級機としては、公知のものを使用でき、例えば、エルボージェット分級機等の旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)等の風力分級機や遠心力分級機等が挙げられ、風力分級機、特にエルボージェット分級機が好適に用いられる。
<球状粉砕トナー母粒子>
前記球状粉砕トナー母粒子は、結着樹脂、及び着色剤を含み、ワックスを実質上含まず、粉砕法により製造された着色粒子を、熱処理により球形化処理されたものである。また、前記球形粉砕トナー母粒子は、球形化処理によって球形化されたものであり、上述したように、その円相当径が3〜10μmの平均円形度が、0.97以上であることが好ましい。
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、従来からトナー母粒子の結着樹脂として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、前記不定形粉砕トナー母粒子での結着樹脂と同様のもの等が挙げられる。そして、その含有量の好適範囲も、前記不定形粉砕トナー母粒子での含有量の好適範囲と同様の範囲が挙げられる。
また、前記結着樹脂としては、前記不定形粉砕トナー母粒子での結着樹脂と同様、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。前記結着樹脂として、ポリエステル系樹脂を用いることによって、定着性が高まる。さらに、球状のトナー母粒子として、いわゆる重合法で得られたものを用いた場合、ポリエステル系樹脂を結着樹脂としたものを得ることが困難である。これに対して、本実施形態によれば、球状のトナー母粒子として、ポリエステル系樹脂を結着樹脂としたものを容易に得ることができる。さらに、不定形のトナー母粒子としても、ポリエステル系樹脂を結着樹脂としたものを容易に得ることができる。よって、本実施形態によれば、不定形粉砕トナー母粒子と球状粉砕トナー母粒子との、形状が異なるトナー母粒子を含み、その形状が異なるトナー母粒子を構成する結着樹脂が、ともにポリエステル系樹脂であるものを得ることができる。そうすることによって、現像ローラへのトナーの付着を抑制でき、転写性及びクリーニング性に優れ、さらに、定着性に優れたトナーが得られる。
(着色剤)
前記着色剤としては、トナーとして所望の色になるように、公知の顔料や染料を用いることができる。具体的には、例えば、前記不定形粉砕トナー母粒子での着色剤と同様のもの等が挙げられる。そして、その含有量の好適範囲も、前記不定形粉砕トナー母粒子での含有量の好適範囲と同様の範囲が挙げられる。
(ワックス)
前記球状粉砕トナー母粒子には、上述したように、ワックスを実質上含まない。そうすることによって、結着樹脂、及び着色剤を含み、ワックスを実質上含まず、粉砕法により製造された着色粒子を、熱処理することによって、球形化処理を施すことができる。よって、結着樹脂、及び着色剤を含んだ球状のトナー母粒子を得ることができる。これに対して、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含む粉砕トナー母粒子を、熱処理して球形化処理しようとすると、熱処理中、ワックスが染み出してしまう。よって、熱処理して球形化処理して得られたトナー母粒子は、熱処理前の粒子にワックスを含んでいても、得られたトナー母粒子に好適量のワックスが含まれていないものである。また、ワックスの含有状態も、トナー母粒子中で均一ではない傾向がある。本実施形態では、ワックスを実質上含まず、結着樹脂、及び着色剤を含んだ球状粉砕トナー母粒子を、ワックスを含む不定形粉砕トナー母粒子とともに用いることによって、形状の異なるトナー母粒子を共存させることによる効果と、ワックスを含有させることによる効果とをともに発揮させることができる。よって、現像ローラへのトナーの付着を抑制でき、転写性及びクリーニング性に優れた静電潜像現像用トナーを得ることができると考えられる。
(電荷制御剤)
前記球状粉砕トナー母粒子には、前記不定形粉砕トナー母粒子同様、トナーの摩擦帯電性等の帯電性を制御するために、電荷制御剤を含有させることが一般的である。その電荷制御剤としては、例えば、前記不定形粉砕トナー母粒子での電荷制御剤と同様のもの等が挙げられる。そして、その含有量の好適範囲も、前記不定形粉砕トナー母粒子での含有量の好適範囲と同様の範囲が挙げられる。
(製造方法)
前記球状粉砕トナー母粒子の製造方法としては、結着樹脂、及び着色剤を含み、ワックスを実質上含まず、粉砕法により製造された着色粒子を、熱処理により球形化処理する方法であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、前記着色粒子は、ワックスを含有させないこと以外、前記不定形粉砕トナー母粒子の製造方法と同様の方法で製造することができる。
そして、得られた着色粒子を、熱処理により球形化処理する。そうすることによって、前記球状粉砕トナー母粒子が得られる。その球形化処理としては、着色粒子を熱処理して、粒子の円形度を高めることができる処理であれば、特に限定されない。具体的には、前記着色粒子に熱風を接触させる処理等が挙げられる。より具体的には、例えば、前記着色粒子を供給用空気とともにエアロゾルの状態で、熱処理装置に供給し、その後、前記熱処理装置内で、前記着色粒子に所定温度の熱風を吹き付ける。また、熱風の温度としては、例えば、200℃程度等が挙げられる。また、前記熱処理装置としては、例えば、日本ニューマチック工業株式会社製のサフュージョン等が挙げられる。
(トナーの製造方法)
前記静電荷像現像用トナーは、前記不定形粉砕トナー母粒子と前記球状粉砕トナー母粒子とを含んでいればよく、例えば、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球状粉砕トナー母粒子からなるものであってもよいし、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球状粉砕トナー母粒子に外添剤を外添して得られるものであってもよい。
<混合>
まず、前記不定形粉砕トナー母粒子と前記球状粉砕トナー母粒子とを混合機等で混合する。前記混合機としては、公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル、ハイブリダイゼーションシステム、コスモシステム等が挙げられる。この中でも、ヘンシェルミキサが好ましい。
その際、前記不定形粉砕トナー母粒子と前記球状粉砕トナー母粒子との混合比は、質量比で、2:1〜1:2であることが好ましい。前記不定形粉砕トナー母粒子が前記球状粉砕トナー母粒子に対して少なすぎると、クリーニング性が低下する可能性がある。また、前記球状粉砕トナー母粒子が前記不定形粉砕トナー母粒子に対して少なすぎると、転写性が低下する可能性がある。また、現像ローラへのトナーの付着が発生する可能性もある。
なお、前記静電荷像現像用トナーが、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球状粉砕トナー母粒子からなるものの場合、前記混合によって、得られる。
<外添>
次に、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球状粉砕トナー母粒子に外添剤を外添して得られたトナーの場合、前記不定形粉砕トナー母粒子と前記球状粉砕トナー母粒子との混合物に外添処理を施す。なお、前記静電荷像現像用トナーは、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球状粉砕トナー母粒子に外添される外添剤を含有させることが一般的である。
前記外添処理としては、従来公知の外添処理であれば、限定なく用いることができる。具体的には、例えば、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球状粉砕トナー母粒子に外添剤を添加し、攪拌機等で攪拌させることによって、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球状粉砕トナー母粒子の表面に外添剤を付着又は固着させる処理である。
前記外添剤としては、トナーの外添剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、コロイダルシリカ粒子や疎水性シリカ粒子等のシリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、マグネタイト粒子、及び炭化ケイ素粒子等が挙げられる。この中でも、シリカ粒子及び酸化チタン粒子が、流動性、帯電性、及び研磨性に優れる点から好ましく、シリカ粒子と酸化チタン粒子との併用がより好ましい。また、前記外添剤としては、上記外添剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記外添剤の含有量は、前記不定形粉砕トナー母粒子及び前記球状粉砕トナー母粒子の合計100質量部に対して、0.2〜3質量部であることが好ましい。
前記攪拌機としては、従来公知の攪拌機を限定なく使用できる。具体的には、例えば、タービン型攪拌機、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ等の一般的な攪拌機等が挙げられる。
[現像剤]
前記静電荷像現像用トナーは、前記静電荷像現像用トナーを含み、キャリアを含まない1成分現像剤として用いてもよいし、前記静電荷像現像用トナーを含み、さらにキャリアを含む2成分現像剤として用いてもよいが、前記静電荷像現像用トナーとキャリアとを含む2成分現像剤が好適に用いられる。ここでは、2成分現像剤について説明する。
<キャリア>
前記キャリアとしては、現像剤のキャリアとして用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、キャリアコア材である磁性体粒子の表面を樹脂で被覆したものを用いることができる。キャリアコア材としては、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属、これらの合金、希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライト等のソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物、これらの混合物等の磁性体材料を、焼結及びアトマイズ等を行うことによって製造した磁性体粒子が挙げられる。
上述のようにして得られたキャリアコア材の表面を被覆する表面コート剤として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系結着樹脂が挙げられる。
キャリアの粒子径は、一般に電子顕微鏡法による粒径で表して20〜200μmの範囲内であることが好ましく、30〜150μmの範囲内であることがより好ましい。キャリアの見掛け密度は、磁性材料を主体とする場合は磁性体の組成や表面構造等によっても相違するが、一般に2.4〜3.0g/cm3の範囲内であることが好ましい。
前記トナーとキャリアとを含む2成分現像剤中のトナー濃度は、3〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。トナー濃度が低すぎる場合には、画像濃度が薄くなりすぎる傾向がある。一方、トナー濃度が高すぎる場合には、現像装置内でトナー飛散が発生し、機内汚れや転写紙上の所望しない箇所にトナーが付着する不具合が生じる虞がある。
このような現像剤は、前記トナーを前記磁性キャリアと適切な割合で混合した2成分現像剤であり、例えば、後述の画像形成装置で使用することができる。
[画像形成装置]
前記静電荷像現像用トナー、及び前記静電荷像現像用トナーを含む現像剤を用いる画像形成装置について説明する。
図1は、本実施形態で用いられる画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。画像形成装置1は、電子写真法によって給紙カセット22から送り出された記録紙に所定の画像を形成する装置である。画像形成装置1の画像形成装置本体2内には、水平方向に図1の左から右に向かって、ブラック用画像形成ユニット3、イエロー用画像形成ユニット4、シアン用画像形成ユニット5及びマゼンタ用画像形成ユニット6が順に配置されている。
図2は、図1に示す画像形成装置に備えられる画像形成ユニット3の構成を示す概略断面図である。図2に示す画像形成ユニット3は、その他の画像形成ユニット4、5及び6と同様に、感光体ドラム10、帯電装置12、露光装置14、現像装置100、転写装置16、クリーニング装置18を備えている。画像形成装置1は小型化を図るために、縦型の現像装置100を感光ドラム10の斜め上方に配置している。
感光体ドラム10は、有機感光体(OPC)である。帯電装置12は、帯電ローラを備え、帯電ローラに電圧を印加することによって感光体ドラム10の表面に所定電位を与えるものである。露光装置14は、画像データに基づく光を照射することにより感光体ドラム10の表面電位を選択的に減衰させて静電潜像を形成するものである。現像装置100は、感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像して、トナー像を形成するものである。転写装置16は、感光体ドラム10上に形成されたトナー像を中間転写ベルト20に1次転写するものである。クリーニング装置18は、感光体ドラム10の表面に1次転写後に残留したトナー等を除去するものである。
画像形成装置1は、記録紙の搬送方向下流側に、加熱ローラと加圧ローラを有する定着装置24をさらに備えている。定着装置24は、トナー像が2次転写された記録紙に熱と圧力とを加えてトナー像を定着させて、記録紙上に画像を定着させる。
以下、画像形成装置1に用いられる現像装置100について図2を参照しながら説明する。
現像装置100は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含む2成分現像剤を収容するハウジング110と、第1と第2の現像剤撹拌室112、114内でそれぞれらせん状羽根を回転させる攪拌ローラ122、124を有し、収容された2成分現像剤を撹拌搬送する撹拌搬送手段120と、現像剤を周表面に磁気的に吸引保持して搬送する磁気ローラ130と、磁気ローラ130及び感光体ドラム10の各々の周表面に対し所定の間隔をあけて配設されてトナーのみが付着させ搬送されられる現像ローラ140とを備えている。撹拌搬送手段120、磁気ローラ130及び現像ローラ140はハウジング110内にそれぞれ回転自在に配設されている。
撹拌ローラ122、124は、らせん状羽根を回転させて、互いに逆方向に2成分現像剤を搬送しながら攪拌して、2成分現像剤のトナーを帯電させる。さらに、撹拌ローラ122は、帯電させたトナーとキャリアとを含む2成分現像剤を磁気ローラ130に供給する。磁気ローラ130は、内部に固定配置された磁石134によって2成分現像剤が穂立ちを形成するように吸着させて、2成分現像剤を搬送する。このとき、2成分現像剤は、磁気ローラ130の内部の磁石によって磁気ブラシとなっており、層厚規制ブレード117と磁気ローラ130との間を磁気ブラシが通過する際に、磁気ブラシの厚さが規制される。そして、磁気ローラ130の下側に配置された現像ローラ140は、磁気ローラ130上に穂立ちした2成分現像剤に接触することで、磁気ブラシ中のトナーを容易に現像ローラ140の周表面に移行させることができる。また、磁気ローラ130と現像ローラ140とにそれぞれ印加されるバイアス電圧の電位差の作用によっても、トナーを磁気ローラ130から現像ローラ140に移行させることができる。この移行によって、現像ローラ140の周表面にトナーの薄層を形成する。この現像ローラ140上で薄層を形成しているトナーは、感光体ドラム31の近傍まで搬送された際に、感光体ドラム10上に形成された静電潜像と現像ローラ140との間に発生させた電位差によって、感光体ドラム31へと飛翔する。
以上の画像形成動作によって、現像装置100は、感光体ドラム10上に形成されている静電潜像に基づく現像を行う。
なお、現像装置100では、キャリアは現像によって消費されず、そのまま現像装置100内に回収され、再びトナーと混合されて使用される。一方、現像装置100の上方に装着されたトナーコンテナ100Aが現像によって消費されたトナーを現像装置100に補給する。
小型タンデム型画像形成装置はコンパクトでありながら、優れた高速性を有するとともに、磁気ブラシが感光体ドラムに接触しない非接触現像方式の現像装置を採用しているので、感光体へのキャリア付着がなく、磁気ブラシによる感光体への傷が生じず、高画質化が可能である。
上記画像形成装置は、複数色のトナー像を中間転写ベルトに一旦転写して、その中間転写ベルトに転写された複数色のトナー像を用紙に転写する装置であったが、このような画像形成装置に限定されない。例えば、用紙に直接トナー像を転写する画像形成装置であってもよい。
前記画像形成装置1は、以上のような画像形成動作によって、用紙上に画像形成を行う。そして、前記画像形成装置1において、前記静電荷像現像用トナーを用いるので、高画質な画像を形成することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
なお、ここでの、円相当径が3〜10μmの平均円形度は、以下のようにして測定された値である。
まず、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製のFPIA−3000)に測定対象物である粒子(不定形粉砕トナー母粒子、球状粉砕トナー母粒子、及び不定形粉砕トナー母粒子と球状粉砕トナー母粒子との混合物)を装入した。そして、装入された粒子全体の中から、投影面積円相当径が3〜10μmの粒子の2次元投影像を、23℃、60%RHの環境下で測定した。すなわち、測定の対象を投影面積円相当径が3〜10μmの粒子に限定して、23℃、60%RHの環境下で、2次元投影像を測定した。そして、得られた2次元投影像を、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理したときの周囲長(L)を測定した。次に、前記2次元投影像と同面積である円の周囲長(L0)と、下記式(I)を用いて、個々の粒子の円形度を算出した。
a=L0/L (I)
式(I)中、aは、円形度を示し、Lは、前記2次元投影像を画像処理したときの周囲長を示し、L0は、前記2次元投影像と同面積である円の周囲長を示す。
最後に、投影面積円相当径が3〜10μmの粒子に限定した個々の粒子の円形度aの総和を、測定に用いた投影面積円相当径が3〜10μmの粒子の個数で除した値を、円相当径が3〜10μmの粒子の平均円形度と定義した。
[実施例1]
(結着樹脂)
まず、結着樹脂の製造方法について説明する。
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1960gと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物780gと、ドデセニル無水コハク酸257gと、テレフタル酸770gとからなる原料モノマーを、酸化ジブチル錫4gと共に反応容器に入れ、窒素雰囲気下、235℃で8時間、攪拌した。さらに、8.3kPaの条件で1時間、攪拌した。その後、180℃で、得られるポリエステル樹脂の酸価が所望の値になるように、無水トリメリット酸を前記反応容器内に添加し、10℃/時の昇温速度で210℃まで昇温させながら、攪拌した。そうすることによって、酸価が、20mgKOH/gのポリエステル樹脂が得られた。この得られたポリエステル樹脂を結着樹脂として用いた。
(不定形粉砕トナー母粒子)
次に、不定形粉砕トナー母粒子の製造方法について説明する。
まず、結着樹脂として、前記ポリエステル樹脂100質量部、着色剤として、カーボンブラック(三菱化学株式会社製のMA−100)5質量部、ワックスとして、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製のカルナバワックス1号)5質量部、電荷制御剤として、4級アンモニウム塩化合物(オリエント化学工業株式会社製のP−51)2質量部を、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製のFM20B)で混合した。その後、得られた混合物を、2軸押出機(東芝機械株式会社製のTEM41)を用い、その設定温度を80℃にして溶融混練した。その際、得られた混練物の温度は、約160℃であった。その後、得られた混練物を冷却させた。この冷却させた混練物を、機械式粉砕機(ターボ工業株式会社製のターボミル)で粉砕し、エルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製のEJ−LABO)で分級処理した。そうすることによって、体積平均粒子径6.8μmの不定形粉砕トナー母粒子が得られた。また、得られた不定形粉砕トナー母粒子の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、0.948であった。
なお、ここでの粒子の体積平均粒子径は、粒度計(ベックマンコールター株式会社製のマルチサイザー3)によって、測定した。
(球状粉砕トナー母粒子)
次に、球状粉砕トナー母粒子の製造方法について説明する。
まず、ワックスを含有しないこと以外、上述した不定形粉砕トナー母粒子の製造方法と同様の方法で、着色粒子を製造した。得られた着色粒子の体積平均粒子径は、6.8μmであった。
その後、得られた着色粒子を、日本ニューマチック工業株式会社製のサフュージョンに装入し、熱処理温度200℃で熱処理による球形化処理を施した。そうすることによって、体積平均粒子径6.8μmの球状粉砕トナー母粒子が得られた。また、得られた球状粉砕トナー母粒子の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、0.975であった。
(静電潜像現像用トナー)
次に、得られた不定形粉砕トナー母粒子と球状粉砕トナー母粒子とを、質量比で1:1となるように、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製のFM20B)を用いて、回転周速30m/秒の条件下で1分間混合した。得られた混合物の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、0.962であった。なお、この得られた混合物を、SEMで観察したところ、不定形粉砕トナー母粒子と球状粉砕トナー母粒子との比率がほぼ1:1であった。
そして、得られた混合物100質量部に対して、外添剤として、疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製のREA200)1.8質量部と酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製のEC−100)1.0質量部とを加え、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製のFM20B)を用いて、回転周速30m/秒の条件下で5分間攪拌混合した。そうすることによって、実施例1に係る静電潜像現像用トナーが得られた。
なお、前記不定形粉砕トナー母粒子、前記球状粉砕トナー母粒子、及び前記混合物の、円相当径が3〜10μmの平均円形度を、それぞれ表1に示す。
[実施例2〜7]
実施例2〜7に係る静電潜像現像用トナーは、不定形粉砕トナー母粒子及び球状粉砕トナー母粒子の製造時における粉砕条件や、球状粉砕トナー母粒子の製造時における球形化処理条件を変更することにより、前記不定形粉砕トナー母粒子、前記球状粉砕トナー母粒子、及び前記混合物の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、それぞれ表1に示す値となるように変更したこと以外、実施例1と同様の方法で製造した。
具体的には、例えば、球形化処理における熱処理温度を、実施例1では200℃のところを、実施例2では、220℃、実施例3では、180℃、実施例4では、180℃、実施例5では、170℃、実施例6では、160℃に、実施例7では、150℃に、それぞれ変更した。
[比較例1〜3]
比較例1〜3に係る静電潜像現像用トナーは、以下のように製造した。
まず、不定形粉砕トナー母粒子は、ワックスの含有量を5質量部から2.5質量部に変更し、さらに、不定形粉砕トナー母粒子の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、表1に示す値となるように変更したこと以外、実施例1での不定形粉砕トナー母粒子の製造方法と同様の方法で製造した。
次に、球状粉砕トナー母粒子は、ワックスとして、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製のカルナバワックス1号)を、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して2.5質量部含有するように変更し、さらに、球状粉砕トナー母粒子の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、表1に示す値となるように変更したこと以外、実施例1での球状粉砕トナー母粒子の製造方法と同様の方法で製造した。具体的には、例えば、球形化処理における熱処理温度を、実施例1では200℃のところを、比較例1では、200℃、比較例2では、170℃、比較例3では、180℃に、それぞれ変更した。
上記のようにして得られた、不定形粉砕トナー母粒子と球状粉砕トナー母粒子とを用いて、実施例1と同様の方法で、静電潜像現像用トナーを製造した。
[比較例4]
比較例4に係る静電潜像現像用トナーは、以下のように製造した。
まず、球状粉砕トナー母粒子は、ワックスとして、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製のカルナバワックス1号)を、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して2.5質量部含有するように変更し、さらに、球状粉砕トナー母粒子の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、表1に示す値となるように変更したこと以外、実施例1での球状粉砕トナー母粒子の製造方法と同様の方法で製造した。具体的には、例えば、球形化処理における熱処理温度を、実施例1では200℃のところを、比較例4では、200℃に変更した。
そして、得られた球状粉砕トナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製のREA200)1.8質量部と酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製のEC−100)1.0質量部とを加え、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製のFM20B)を用いて、回転周速30m/秒の条件下で5分間攪拌混合した。そうすることによって、比較例4に係る静電潜像現像用トナーが得られた。すなわち、不定形粉砕トナー母粒子を含まないトナーが得られた。
[比較例5]
比較例5に係る静電潜像現像用トナーは、以下のように製造した。
まず、不定形粉砕トナー母粒子は、ワックスの含有量を5質量部から2.5質量部に変更し、さらに、不定形粉砕トナー母粒子の、円相当径が3〜10μmの平均円形度が、表1に示す値となるように変更したこと以外、実施例1での不定形粉砕トナー母粒子の製造方法と同様の方法で製造した。
そして、得られた不定形粉砕トナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製のREA200)1.8質量部と酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製のEC−100)1.0質量部とを加え、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製のFM20B)を用いて、回転周速30m/秒の条件下で5分間攪拌混合した。そうすることによって、比較例5に係る静電潜像現像用トナーが得られた。すなわち、球状粉砕トナー母粒子を含まないトナーが得られた。
[評価]
得られた静電潜像現像用トナーについては、以下のような方法で評価した。
(現像剤)
まず、得られた静電潜像現像用トナーを用いて、2成分現像剤を製造した。具体的には、得られた静電潜像現像用トナーを、フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製:京セラミタ株式会社製のFS−C5016に用いられるキャリア)100質量部あたり10質量部の割合で、すなわちトナー濃度が10質量%となるように配合した。そして、ボールミル(京セラミタ株式会社製)で30分間攪拌した。そうすることによって、静電潜像現像用トナーを含む2成分現像剤が得られた。
<転写性(中抜け)>
まず、京セラミタ株式会社製のプリンタ(FS−C5016N)に備えられた帯電装置の代わりに、帯電ローラを備えた帯電装置を備えた改造機を評価機として用い、得られた各現像剤をスタート現像剤として用い、さらに、得られた各トナーを補給用トナーとして用いて、温度20〜23℃、相対湿度50〜65%RHの、常温常湿環境下で画像形成して、下記の評価を行った。
具体的には、まず、前記スタート現像剤を、前記評価機の各色に応じた現像剤収容部にセットし、前記評価機の電源を入れて安定させた。その後、常温常湿環境下で、100%ソリッド部、50%ハーフトーン部、文字部、及び細線部を含むサンプル画像を出力した。なお、この画像を初期画像とした。その後、常温常湿環境下で、印字率5%の標準パターンを10000枚印刷(10000枚耐刷)した。そして、前記10000枚印刷後に、前記サンプル画像を再び出力した。なお、この画像を耐刷後画像(評価画像)とした。
前記評価画像の細線部に中抜けが存在するかを、10倍のルーペを用いて、目視で確認した。中抜けが確認できなかった場合には、「5」と評価し、中抜けがわずかに(非常に軽微に)確認できた場合には、「4」と評価し、中抜けが多く発生していることを確認できた場合には、「3」と評価し、中抜けが顕著に発生していることを確認できた場合には、「2」と評価し、中抜けが広範囲に顕著に発生していることを確認できた場合には、「1」と評価した。なお、4以上を合格(許容範囲内)とし、3以下を不合格とした。
<画像濃度>
前記初期画像の100%ソリッド部(印字率100%)と前記耐刷後画像(評価画像)の画像濃度とを、反射濃度計(東京電色株式会社製のTC−6D)を用いて測定した。それぞれを、画像濃度ID(初期)と画像濃度ID(耐刷)とした。
そして、得られた画像濃度が、1.4以上であれば、「5」と評価し、1.3以上1.4未満であれば、「4」と評価し、1.2以上1.3未満であれば、「3」と評価し、1.1以上1.2未満であれば、「2」と評価し、1.1未満であれば、「1」と評価した。なお、4以上を合格(許容範囲内)とし、3以下を不合格とした。
<スリーブ付着>
前記画像形成中や前記耐刷後画像(評価画像)を出力した後等の適当なときに、現像スリーブ(現像ローラ)にトナーが付着しているか否かを目視で確認し、同時に、前記評価画像を目視で評価した。
前記耐刷後画像(評価画像)を出力した後に、現像スリーブ上にトナーの付着、いわゆるスリーブ付着が確認できず、前記評価画像の100%ソリッド部及び50%ハーフトーン部の画像がともに良好に形成されていれば、「5」と評価した。
前記耐刷後画像(評価画像)を出力した後に、現像スリーブ上にトナーの付着(スリーブ付着)が少し確認できるが、前記評価画像の100%ソリッド部及び50%ハーフトーン部の画像がともに良好に形成されていれば、「4」と評価した。
前記耐刷後画像(評価画像)を出力した後に、現像スリーブ上にトナーの付着(スリーブ付着)が多く発生していることが確認でき、前記評価画像の100%ソリッド部及び50%ハーフトーン部の画像に、スリーブ付着に由来すると思われる画像欠損、いわゆるスリーブ層むらが確認できた場合、「3」と評価した。
前記初期画像を出力した後、前記耐刷後画像(評価画像)を出力するまでの間に、現像スリーブ上にトナーの付着(スリーブ付着)が多く発生していることが確認でき、前記評価画像の100%ソリッド部及び50%ハーフトーン部の画像に、スリーブ付着に由来すると思われる画像欠損、いわゆるスリーブ層むらが確認できた場合、「2」と評価した。
前記初期画像を出力した後に、現像スリーブ上にトナーの付着(スリーブ付着)が多く発生していることが確認でき、前記初期画像の100%ソリッド部及び50%ハーフトーン部の画像に、スリーブ付着に由来すると思われる画像欠損、いわゆるスリーブ層むらが確認できた場合、「1」と評価した。
なお、4以上を合格(許容範囲内)とし、3以下を不合格とした。
<クリーニング性>
まず、上記各評価で用いた画像形成装置と同様のものを評価機として用い、前記評価機に画像データを送信するとともに、上記各評価での条件と同条件で、画像形成を開始させ、クリーニング装置による感光体ドラム表面のトナーを除去している途中で感光体ドラムの駆動を停止させた。
具体的には、図3に示すような、白紙部31と、帯状のベタ画像部32を含むサンプル画像を出力するための画像データを前記評価機に送信し、図4に示すように、感光体ドラム40の中央部に周方向に帯状の前記ベタ画像部を形成するためのトナーが付着されたベタ画像部領域42を形成させた。その後、クリーニング装置による感光体ドラム表面のトナーを除去している途中で感光体ドラムの駆動を停止させた。すなわち、感光体ドラム40の表面には、図4に示すように、前記白紙部に相当するトナーが付着されていない白紙部領域41と、前記ベタ画像部に相当するトナーが付着されているベタ画像部領域42と、付着されたトナーがクリーニング装置によって除去された状態のトナー除去後領域43とが形成される。なお、図3は、クリーニング性評価のための画像を示す概念図であり、図4は、クリーニング性を評価する際の感光体ドラムの状態を示す概略図である。
そして、前記トナー除去後領域43に、セロハン粘着テープを貼着させた後、剥離した。その剥離したセロハン粘着テープを、白色の用紙に貼着させた。セロハン粘着テープを貼着させた用紙の濃度を、セロハン粘着テープの上から反射濃度計(有限会社東京電色製のTC−6D)を用いて測定した。
そして、濃度が0.14以下であれば、「2」と評価し、濃度が0.14を超えるのであれば、「1」と評価した。なお、表面にトナーが全く付着されていない感光体ドラムを用いて、上記と同様の測定を行った場合、濃度が、0.10〜0.14となる。よって、「2」を合格(許容範囲内)とし、「1」を不合格とした。
以上の結果を表2に示す。
表2からわかるように、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含み、粉砕法により製造された不定形粉砕トナー母粒子と、結着樹脂、及び着色剤を含み、ワックスを実質上含まず、粉砕法により製造された粒子を、熱処理により球形化処理された球形粉砕トナー母粒子との2種のトナー母粒子を含有する静電潜像現像用トナー、いわゆるハイブリッドトナーの場合(実施例1〜7)は、球形粉砕トナー母粒子にワックスを含有した場合(比較例1〜3)やハイブリッドトナーにしていない場合(比較例4,5)と比較して、スリーブ付着の発生を抑制できるだけではなく、転写性及びクリーニング性に優れ、高画質な画像を形成することができることを示している。