JP2012046026A - タイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも、熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体17を有するタイヤであって、タイヤ骨格体17の外周部に周方向に巻回されて補強コード層28を形成する補強コード部材26を有し、前記熱可塑性樹脂材料が、少なくともポリエステル系熱可塑性エラストマーとゴムとを含むタイヤ10。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
ここで、「熱可塑性エラストマー」とは、弾性を有する高分子化合物であって、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料を意味する。
また、「ポリエステル系熱可塑性エラストマー」とは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーとしてポリエステル樹脂を含むものを意味する。
「ゴム」とは、弾性を有する高分子化合物であるが、本明細書では、既述の熱可塑性エラストマーとは区別される。
熱可塑性エラストマーは結晶性で融点の高いハードセグメントが、擬似的な架橋点として振る舞い弾性を発現する。一方、ゴムは分子鎖中に2重結合などを有しており、硫黄等を加えて架橋(加硫)することで、3次元の網目構造を生成し、弾性を発現する。その為、熱可塑性エラストマーは加熱することで、ハードセグメントが溶融し、冷却することで再び擬似的な架橋点を再生し、再利用が可能である。一方、ゴムは架橋(加硫)すると3次元網目構造を生成し、流動性を失い、加熱しても再利用が困難である。但し、架橋していないゴムは、熱可塑性エラストマー同様の挙動を示す。
一方、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを単独で用いた場合には、その弾性率を調整しようとした場合に、ハードセグメントとソフトセグメントとの比率を制御する必要がある。これに対し、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとゴムとを併用すると、両者の含有比を調整することで、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを単独で用いた場合に比して、熱可塑性樹脂材料の弾性率を容易に調整することができる。
ここで、ポリエステル系熱可塑性エラストマー単独では、動的粘弾性測定をしたときに、ポリエステル系熱可塑性エラストマーに由来するtanδのピークが見られ、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの弾性率が高くなるほど、高温側にピーク値がシフトする傾向がある。例えば、東レ・デュポン社製、ハイトレル 6347について動的粘弾性測定をすると、15℃付近にピークが存在する。
一方、ゴムについて動的粘弾性測定をすると、一般的に−10℃以下にピークが見られる。その為、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとゴムを混合することで、その配合比率に応じ、ポリエステル系熱可塑性エラストマーに由来するピーク高さが減少し、ゴムに由来するピーク高さが上昇する。しかし、ゴムのピーク位置は−10℃以下の為、30℃〜50℃のtanδへの影響少なくなり、その為に総じてtanδが低くなる。
なお、「ゴムとの親和性が良い」とは、熱可塑性エラストマーをゴムと共に混ぜ合わせた時に、ゴムの分子骨格と熱可塑性エラストマーの分子骨格とが類似しており、熱可塑性エラストマーの分散粒子内にゴムを取り込んだ状態、または、ゴムの分散粒子内に熱可塑性エラストマーを取り込んだ状態を言う。
但し、熱可塑性樹脂材料中の熱可塑性エラストマーとゴムとのすべてが上記状態である必要はなく、熱可塑性樹脂材料中の熱可塑性エラストマーとゴムとが部分的に上記状態であってもよい。
前記補強コード層に樹脂材料を含めた場合、補強コードの引き抜き性(引き抜かれにくさ)を高める観点から、前記補強コードはその表面が20%以上樹脂材料に覆われていることが好ましく、50%以上覆われていることが更に好ましい。また、前記補強コード層中の樹脂材料の含有量は、補強コードを除いた補強コード層を構成する材料の総量に対して、補強コードの引き抜き性を高める観点から、20質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
ただし、熱可塑性樹脂材料がポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーを含む場合は、ゴムとポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーとの合計量(y’)と、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(x)との質量比(x:y’)が、95:5〜50:50であるように構成することができる。
ただし、熱可塑性樹脂材料がポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーを含む場合は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーと、ゴムと、ポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーとの合計量が、50質量%〜100質量%であるように構成することができる。
上記構成とすることで、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びゴムの組み合わせにより発現し得る性能をより向上することができる。
本発明のタイヤは、少なくともポリエステル系熱可塑性エラストマーとゴムとを含む熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体を有する。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーとしてポリエステル樹脂を含むものである。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
ハードセグメントを形成する芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
「ゴム」とは、弾性を有する高分子化合物である。
既述のように、本明細書では、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料である熱可塑性エラストマーとは区別される。
中でも、熱可塑性樹脂材料の柔軟性を制御し易いとの観点から、BR、SBR、NBR、NIR、IR、EPDM及びNBIRが好ましく、BR、SBR、NBR、IR、及びEPDMがより好ましい。
特にポリエステル系熱可塑性エラストマーとゴムを混練しながら、ゴムの分散と架橋(加硫)を行う動的架橋を用いることが好ましい。
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤などが用いられる。
加硫促進剤としては、公知の加硫促進剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などが用いられる。
脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などが挙げられ、また、これらはステアリン酸亜鉛のように塩の状態で配合されてもよい。これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。
また、金属酸化物としては、亜鉛華(ZnO)、酸化鉄、酸化マグネシウムなどが挙げられ、中でも亜鉛華が好ましい。
プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい
老化防止剤としては、アミン−ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
熱可塑性樹脂材料には、ゴムとの親和性が良い熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。以下、ゴムとの親和性が良い熱可塑性エラストマーを「ゴム親和熱可塑性エラストマー」とも称する。
熱可塑性樹脂材料が、ゴム親和熱可塑性エラストマーをさらに含むことで、熱可塑性樹脂材料中にゴムを微分散することができる。更に、ゴム親和熱可塑性エラストマーが後述する酸変性熱可塑性エラストマーである場合には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーと酸変性部位との相互作用により、引張強さを向上し、仮に破壊した場合でも延性破壊を生じ、脆性破壊や層状破壊が起こり難いと考えられる。延性破壊、脆性破壊、層状破壊の別は、熱可塑性樹脂材料の破断面を目視することにより確認することができる。
但し、熱可塑性樹脂材料中の熱可塑性エラストマーとゴムとのすべてが上記状態である必要はなく、熱可塑性樹脂材料中の熱可塑性エラストマーとゴムとが部分的に上記状態であってもよい。
次に、ゴム親和熱可塑性エラストマーを構成し得るポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、及びポリウレタン系熱可塑性エラストマーについて説明する。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーが、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンであるものを言う。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとは、弾性を有する高分子化合物であり、ハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーが、ポリスチレンを含むものを言う。
ソフトセグメントを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。
前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜800,000、更に好ましくは30,000〜500,000である。
更に前記ハードセグメント(Hs)とソフトセグメント(Ss)との質量比(Hs:Ss)は成形性、物性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(酸変性体を含む)は、熱可塑性樹脂材料が意図しない架橋反応を起こすことを抑制するため、水素添加されていることが好ましい。水素添加型(SEBS、SEPS)の他の熱可塑性エラストマー及び酸変性エラストマーとしては、前記旭化成社製のタフテック(登録商標)、クラレ社製のセプトン(登録商標)等が挙げられる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R3)m−COOH(R3:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜20 の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを構成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられ、例えば、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
これらのジオール化合物は、単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
Rで表される脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,3−プロピレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及び4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
更に、Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
これらのジイソシアネート化合物は、単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、P’は、P’を含むジオール化合物に由来する。
P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、グリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオールが挙げられる。
また、P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、及びシクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
更に、P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、及び2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらのジオール化合物は、単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
各成分の混合及び混練は、例えば、東洋精機製作所社製、LABOPLASTOMILL 50MR 2軸押出し機を用いることができる。
前記2軸押出し機には、加硫したゴムを微粉砕したものを投入してもよいし、ゴムに加硫剤等をバンバリー等で混練した後、2軸押出機中で混練しながら、加硫してもよい。2軸押出し機中で混練しながら、加硫することの方が好ましい。
熱可塑性樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張弾性率(以下、特に特定しない限り本明細書で「弾性率」とは引張弾性率を意味する。)としては、100〜1000MPaが好ましく、100〜800MPaがさらに好ましく、100〜700MPaが特に好ましい。熱可塑性樹脂材料の引張弾性率が、100〜1000MPaであると、タイヤ骨格の形状を保持しつつリム組みを効率的におこなうことができる。
本発明のタイヤは、タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を有していてもよい。
また、補強コード層には、樹脂材料を含めて構成することができる。このように、補強コード層に樹脂材料が含まれていると、補強コード部材をクッションゴムで固定する場合と比して、タイヤと補強コード層との硬さの差を小さくできるため、更に補強コード部材をタイヤ骨格体に密着・固定することができる。ここで、「樹脂材料」とは、少なくとも樹脂を含む材料であり、樹脂のみならず、ゴムや無機化合物を含んでいてもよい。なお、「樹脂」とは、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムは含まない。
また、樹脂材料の同種とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
また、前記補強コード層に樹脂材料を含めた場合、補強コードの引き抜き性(引き抜かれにくさ)を高める観点から、前記補強コード部材はその表面が20%以上樹脂材料に覆われていることが好ましく、50%以上覆われていることが更に好ましい。また、前記補強コード層中の樹脂材料の含有量は、補強コードを除いた補強コード層を構成する材料の総量に対して、補強コードの引き抜き性を高める観点から、20質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
以下に、図面に従って本発明のタイヤの第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成してもよい。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
(タイヤケース成形工程)
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する熱可塑性樹脂材料の融点以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化又は溶融させ、接合金型によって加圧して、タイヤケース半体を接合させてもよい。
次に、補強コード部材巻回工程について図3を用いて説明する。図3は、コード加熱装置、及びローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コード部材を埋設する動作を説明するための説明図である。図3において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、及び第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60または第2のローラ64の表面は、溶融又は軟化した熱可塑性樹脂材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置56は、第1のローラ60または第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。
本実施形態のタイヤ10では、タイヤケース17がポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製、ハイトレル6347)と、ブタジエンゴム(BR)とを、質量比70:30で含む熱可塑性樹脂材料によって形成されているため、耐衝撃性、引張弾性率、及び引張強度に優れる。また、使用環境の温度変動による変形や硬さの変化が小さく、耐衝撃性に強い。このため、本実施形態のタイヤ10は、耐久性に優れる。さらにタイヤ構造を簡素化できる為に、従来のゴムに比して重量が軽い。また、tanδを小さくすることができる。従って、本実施形態のタイヤ10は、軽量化することができ、転がり抵抗も抑制されるので、かかるタイヤを用いた自動車の燃費を良くすることができる。
このように補強コード層28が、熱可塑性樹脂材料を含んで構成されていると、補強コード26をクッションゴムで固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に補強コード26をタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
次に、図面に従って本発明のタイヤの製造方法及びタイヤの第2実施形態について説明する。本実施形態のタイヤは、上述の第1実施形態と同様に、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。このため、以下の図において、前記第1実施形態と同様の構成については同様の番号が付される。図4(A)は、第2実施形態のタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図であり、図4(B)は第2実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。また、図5は、第2実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
(タイヤ骨格形成工程)
(1)まず、上述の第1実施形態と同様にして、タイヤケース半体17Aを形成し、これを接合金型によって加熱・押圧し、タイヤケース17を形成する。
(2)本実施形態におけるタイヤの製造装置は、上述の第1実施形態と同様であり、上述の第1実施形態の図3に示すコード供給装置56において、リール58にコード部材26Aを被覆用樹脂材料27(本実施形態では熱可塑性材料)で被覆した断面形状が略台形状の被覆コード部材26Bを巻き付けたものが用いられる。また、ガイドレール54には、図示を省略する、タイヤケース17の外周面17Sを粗化処理するためのブラスト装置が移動可能に搭載されている。
(3)次に、図示を省略するブラスト装置にて、タイヤケース17の外周面17Sに向け、タイヤケース17側を回転させながら、外周面17Sへ投射材を高速度で射出する。射出された投射材は、外周面17Sに衝突し、この外周面17Sに算術平均粗さRaが0.05mm以上となる微細な粗化凹凸96を形成する。
このようにして、タイヤケース17の外周面17Sに微細な粗化凹凸96が形成されることで、外周面17Sが親水性となり、後述する接合剤の濡れ性が向上する。
(4)次に、粗化処理を行なったタイヤケース17の外周面17Sに接合剤を塗布する。
なお、接合剤としては、ハロゲン化ゴム系接着剤等のゴム系接着剤(例えば、塩化ゴム系接着剤)、トリアジンチオール系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤など、特に制限はないが、クッションゴム29が加硫できる温度(90℃〜140℃)で反応することが好ましい。
(6)次に生タイヤケースを加硫缶やモールドに収容して加硫する。このとき、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96に未加硫のクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が向上する。本発明における熱可塑性樹脂材料は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むため、使用環境の温度変動による変形や硬さの変化が小さく、衝撃に強い。従って、加硫工程において、タイヤケースが長時間加熱されても、変形しにくい。
本実施形態のタイヤ200では、タイヤケース17がポリエステル系熱可塑性エラストマーとゴムとを、質量比70:30で含む熱可塑性樹脂材料によって形成されているため、耐衝撃性、引張弾性率、及び引張強度に優れる。また、使用環境の温度変動による変形や硬さの変化が小さく、耐衝撃性に強い。このため、本実施形態のタイヤ200は、耐久性に優れる。さらにタイヤ構造を簡素化できる為に、従来のゴムに比して重量が軽い。また、tanδを小さくすることができる。従って、本実施形態のタイヤ200は、軽量化することができ、転がり抵抗も抑制されるので、かかるタイヤを用いた自動車の燃費を良くすることができる。
また、タイヤケース17は、タイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を被覆用熱可塑性材料で覆うようにして補強コード層を形成してもよい。この場合、溶融又は軟化状態の被覆用熱可塑性材料を補強コード層28の上に吐出して被覆層を形成することができる。また、押出機を用いずに、溶着シートを加熱し溶融又は軟化状態にして、補強コード層28の表面(外周面)に貼り付けて被覆層を形成してもよい。
また、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、被覆コード部材26Bを加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に接着する構成としてもよい。
さらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、タイヤケース17を熱可塑性樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融又は軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。
またさらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱可塑性材料とし、タイヤケース17を熱可塑性樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融又は軟化状態としつつ、被覆用樹脂材料27を加熱し溶融又は軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。なお、タイヤケース17及び被覆コード部材26Bの両者を加熱して溶融又は軟化状態にした場合、両者が良く混ざり合うため接合強度が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料、及び被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27をともに熱可塑性樹脂材料とする場合には、同種の熱可塑性材料、特に同一の熱可塑性材料とすることが好ましい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
(1−1)本発明のタイヤは、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、本発明に係る熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体の外周部に補強コード部材の少なくとも一部が埋設されるように構成することができる。
このように、補強コード部材の一部がタイヤ骨格体の外周部に埋設していると、補強コード部材巻回時にコード周辺に空気が残る現象(エア入り)を更に抑制することができる。補強コード部材周辺へのエア入りが抑制されると、走行時の入力などによって補強コード部材が動くのが抑制される。これにより、例えば、タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材全体を覆うようにタイヤ構成部材が設けられた場合、補強コード部材は動きが抑制されているため、これらの部材間(タイヤ骨格体含む)に剥離などを生じるのが抑制され耐久性が向上する。
このように路面と接触するトレッドを熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性のある材料で構成することでタイヤの耐摩耗性を更に向上させることができる。
このようにタイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で補強コード部材の直径の1/5以上がタイヤ骨格体の外周部に埋設されていると、補強コード部材周辺へのエア入りを効果的に抑制することができ、走行時の入力などによって補強コード部材が動くのをより抑制することができる。
このように、タイヤ骨格体にリムとの嵌合部位であるビード部を設け、さらに、このビード部に金属材料からなる環状のビードコアを埋設することで、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リムに対して、タイヤ骨格体(すなわちタイヤ)を強固に保持させることができる。
このように、タイヤ骨格体とリムとの接触部分に、熱可塑性樹脂材料よりもシール性の高い材料からなるシール部を設けることで、タイヤ(タイヤ骨格体)とリムとの間の密着性を向上させることができる。これにより、リムと熱可塑性樹脂材料とのみを用いた場合に比較して、タイヤ内の空気漏れを一層抑制することができる。また、前記シール部を設けることでタイヤのリムフィット性も向上させることができる。
このように、前記分割体の接合面を、タイヤ骨格片を構成する熱可塑性樹脂材料の融点以上に加熱すると、タイヤ骨格片同士の融着を十分に行うことができるため、タイヤの耐久性を向上させつつ、タイヤの生産性を高めることができる。
このように、前記タイヤ骨格体の外周部を溶融又は軟化させながら補強コード部材の少なくとも一部を埋設して前記タイヤ骨格体の外周部に前記補強コード部材を巻回することで、埋設された補強コード部材の少なくとも一部と溶融又は軟化した熱可塑性樹脂材料とを溶着させることができる。これにより、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視でタイヤ骨格体の外周部と補強コード部材との間のエア入りを更に抑制することができる。また、補強コード部材を埋設した部分が冷却固化されると、タイヤ骨格体に埋設された補強コード部材の固定具合が向上する。
このように、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材を直径の1/5以上埋設すると、製造時の補強コード部材周辺へのエア入りを効果的に抑制することができ、更に、埋設された補強コード部材がタイヤ骨格体から抜け難くすることができる。
このように、補強コード部材巻回工程において、補強コード部材を加熱しながらタイヤ骨格体に埋設させると、加熱された補強コード部材がタイヤ骨格体の外周部に接触した際に接触部分が溶融又は軟化するため、補強コード部材をタイヤ骨格体の外周部に埋設し易くなる。
このように、タイヤ骨格体の外周部の補強コード部材が埋設される部分を加熱することで、タイヤ骨格体の加熱された部分が溶融又は軟化するため、補強コード部材を埋設し易くなる。
このように、補強コード部材を前記タイヤ骨格体の外周部に押圧しながら前記補強コード部材を螺旋状に巻回すると、補強コード部材のタイヤ骨格体の外周部への埋設量を調整することができる。
このように、補強コード部材が埋設された後で、タイヤ骨格体の外周部の溶融又は軟化した部分を強制的に冷却することで、タイヤ骨格体の外周部の溶融又は軟化した部分を自然冷却よりも早く迅速に冷却固化することができる。タイヤ外周部を自然冷却よりも早く冷却することで、タイヤ骨格体の外周部の変形を抑制できると共に、補強コード部材が動くのを抑制することができる。
(2−1)本発明のタイヤは、前記製造方法において、更に、タイヤ骨格体の外周面に粒子状の投射材を衝突させて、タイヤ骨格体の外周面を粗化処理する粗化処理工程と、粗化処理された前記外周面に接合剤を介してタイヤ構成ゴム部材を積層する積層工程と、を備えて構成することができる。
このように、粗化処理工程を設けると、熱可塑性樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格体の外周面に粒子状の投射材が衝突して、当該外周面に微細な粗化凹凸が形成される。なお、タイヤ骨格体の外周面に投射材を衝突させて微細な粗化凹凸を形成する処理を粗化処理という。その後、粗化処理された外周面に接合剤を介してタイヤ構成ゴム部材が積層される。ここで、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材とを一体化するにあたり、タイヤ骨格体の外周面が粗化処理されていることから、アンカー効果により接合性(接着性)が向上する。また、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料が投射材の衝突により掘り起こされることから、外周面の濡れ性が向上する。これにより、タイヤ骨格体の外周面に接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確保することができる。
このように、タイヤ骨格体の外周面の少なくとも一部が凹凸部とされていても、凹凸部に投射材を衝突させることで凹部周囲(凹壁、凹底)の粗化処理がなされ、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確保することができる。
このように、被覆コード部材をタイヤ骨格体の周方向に巻回して構成された補強層でタイヤ骨格体の外周部を構成することで、タイヤ骨格体の周方向剛性を向上させることができる。
このように、被覆コード部材を構成する樹脂材料に熱可塑性を有する熱可塑性材料を用いることで、前記樹脂材料として熱硬化性材料を用いた場合と比べて、タイヤ製造が容易になり、リサイクルしやすくなる。
このように、粗化処理工程において、タイヤ構成ゴム部材の積層領域よりも広い領域に粗化処理を施すと、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確実に確保することができる。
このように、粗化処理工程において算術平均粗さRaが0.05mm以上となるようにタイヤ骨格体の外周面を粗化処理すると、粗化処理された外周面に接合剤を介して、例えば、未加硫又は半加硫状態のタイヤ構成ゴム部材を積層し加硫した場合に、粗化処理により形成された粗化凹凸の底まで、タイヤ構成ゴム部材のゴムを流れ込ませることができる。粗化凹凸の底まで、タイヤ構成ゴム部材のゴムを流れ込ませると、外周面とタイヤ構成ゴム部材との間に十分なアンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を向上させることができる。
このように、前記タイヤ構成ゴム部材として未加硫又は半加硫状態のゴムを用いると、タイヤ構成ゴム部材を加硫した際に、粗化処理によってタイヤ骨格体の外周面に形成された粗化凹凸にゴムが流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸に流れ込んだゴム(加硫済み)により、アンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を向上させることができる。
このように、粗化処理した環状のタイヤ骨格体を用いると、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度をアンカー効果によって向上させることができる。また、外周面が粗化処理されていることから、接合剤の濡れ性がよい。これにより、タイヤ骨格体の外周面に接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度が確保されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との剥離を抑制することができる。
まず、上述の第2実施形態に従って、実施例及び比較例のタイヤを成形した。この際、タイヤケースを形成する材料については下記表1及び2に記載の材料を用いた。また、各実施例及び比較例について、材料の物性評価からタイヤ性能を考察した。
1.ポリエステル系熱可塑性エラストマー
東レ・デュポン社製、ハイトレル、6347
1)ブタジエンゴム(BR)
2)スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)
3)アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)
BR、SBR、及びNBRは、いずれも単軸押出し機により押出し、ペレット化して用いた。
1)酸変性α−オレフィン系熱可塑性エラストマー
三井化学社製、タフマー、MH7010
2)酸変性水素添加ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)
旭化成社製、タフテック、M1913
上記のBR、SBR、及びNBRの各ゴムを用いて、下記表1に示す種類及び量の成分を混合し、バンバリーミキサーにより混練し、2本ロールを用いてシート状にした後、単軸押出し機により押し出し、ペレット化して用いた。
なお、得られたゴムは、2軸押出し機中で、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとの混練中に架橋を行った。
普通硫黄・・・・・・鶴見化学工業社製、普通硫黄
加硫促進剤CZ・・・大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ」
(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
促進剤TS・・・・・大内新興化学工業社製「ノクセラーTS」)
(テトラメチルチウラムモノスルフィド)
表2に示す成分を、表2に示す組成で混合(質量基準)して、東洋精機製作所社製、LABOPLASTOMILL 50MR 2軸押出し機により混練し、ペレットを得た。なお、比較例1においては、混合系とせず、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのペレットを用意した。
作製したペレットを用いて、住友重工社製、SE30Dを用い、射出成形を行い、成形温度200℃〜235℃、金型温度50℃〜70℃とし、12.7mm×127mm、厚さ1.6mmの金型を用いて、試験片を得た。
各試験片を打ち抜き、JISK6251:1993に規定されるダンベル状試料片(5号形試料片)を作製した。
結果を下記表2に示す。
レオメトリックス(株)製の動的粘弾性測定試験機「ARES III」を使用して、温度30℃、測定周波数20Hz、及び動的歪1%における損失正接(tanδ)を測定した。
なお、実施例及び比較例の各熱可塑性樹脂材料を用いて形成した各タイヤについて、ドラム走行試験を行ったところ、走行上の安全性はいずれのタイヤも問題なかった。
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
17 タイヤケース(タイヤ骨格体)
24 シール層(シール部)
26 補強コード(補強コード部材)
26A コード部材(補強コード部材)
28 補強コード層
30 トレッド
D 補強コードの直径(補強コード部材の直径)
L 補強コードの埋設量(補強コード部材の埋設量)
Claims (7)
- 少なくとも、熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、
前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を有し、
前記熱可塑性樹脂材料が、少なくともポリエステル系熱可塑性エラストマーとゴムとを含むタイヤ。 - 前記熱可塑性樹脂材料が、さらに、前記ゴムとの親和性がよい熱可塑性エラストマーを含む請求項1に記載のタイヤ。
- 前記補強コード層が樹脂材料を含んで構成される請求項1又は2に記載のタイヤ。
- 前記熱可塑性樹脂において、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマー(x)と前記ゴム(y)との質量比(x:y)が、95:5〜50:50である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記熱可塑性樹脂材料において、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマー(x)と、前記ゴム(y)及び前記ゴムとの親和性がよい熱可塑性エラストマー(z)と、の質量比(x:y+z)が、95:5〜50:50である請求項2又は請求項3に記載のタイヤ。
- 前記熱可塑性樹脂材料中の前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーと前記ゴムとの合計含有量が、50質量%〜100質量%である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記熱可塑性樹脂材料中の前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーと、前記ゴムと、前記ゴムとの親和性がよい熱可塑性エラストマーと、の合計含有量が、50質量%〜100質量%である請求項2、請求項3または請求項5に記載のタイヤ。
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