JP6001719B2 - タイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、リムに装着されるタイヤにかかり、特に、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤに関する。
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが用いられている。
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのしやすさから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどをタイヤ材料として用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
特開2003−104008号公報
熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤと比べて、製造が容易で且つ低コストである。しかし、タイヤ骨格体がカーカスプライなどの補強部材を内装しない均一な熱可塑性高分子材料で形成されている場合には、ゴム製の従来タイヤと比べて耐応力、耐内圧等の観点で改良の余地がある。
また、熱可塑性の高分子材料を用いてタイヤを製造する場合、製造効率を高め低コストを実現しつつ従来のゴム製タイヤと比して遜色のない性能を実現することが求められる。
本発明は、上記事情を踏まえ、熱可塑性樹脂材料を用いて形成され、且つ弾性率が大きくなっても転がり抵抗の増大を抑制することができるタイヤを提供することを目的とする。
(1)本発明のタイヤは、少なくとも、熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、前記熱可塑性樹脂材料が、分子中にハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性エラストマーと、前記熱可塑性エラストマー以外であって、前記ハードセグメントと同種の樹脂と、を含むタイヤである。
ここで、「熱可塑性エラストマー」とは、分子中にハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂材料であるが、詳細には、弾性を有する高分子化合物であって、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料を言う。
また、熱可塑性エラストマーが有する「ハードセグメントと同種の樹脂」とは、熱可塑性エラストマーが有するハードセグメントの主鎖を構成する骨格と共通する骨格を有する樹脂を言う。なお、本発明における樹脂は、熱可塑性または熱硬化性を有する樹脂を意味し、従来の天然ゴムや合成ゴム等の加硫ゴムは含まない。熱可塑性エラストマーもまた、従来の天然ゴムや合成ゴム等の加硫ゴムを包含しない。
以下、熱可塑性エラストマー以外であって、熱可塑性エラストマーの有するハードセグメントと同種の樹脂を、単に「特定樹脂」とも称する。
特定樹脂が、熱可塑性エラストマーが有するハードセグメントの主鎖を構成する骨格と共通する骨格を有することで、特定樹脂と熱可塑性エラストマーのハードセグメントとの親和性が高まる。そのため、熱可塑性樹脂材料が、上記構成の熱可塑性エラストマーと特定樹脂とを含むことで、特定樹脂は、熱可塑性エラストマーのハードセグメントと相溶し、熱可塑性エラストマーのハードセグメントに偏在し、ハードセグメントの領域が大きくなる。
従って、特定樹脂と熱可塑性エラストマーとを含む熱可塑性樹脂は、単に両者が含まれ、特定樹脂が熱可塑性エラストマー中に均一に分散し、特定樹脂と熱可塑性エラストマーそれぞれの性質を有するようになるのではなく、熱可塑性エラストマーのハードセグメントの領域が大きくなって、熱可塑性樹脂材料の弾性率が高まると考えられる。
ところで、タイヤの転がり抵抗は、50℃付近の10Hz〜100Hz前後の振動で生じる為、タイヤについて粘弾性の測定を行うとすると、30℃〜50℃のtanδで転がり抵抗の大小を表すことができる。
熱可塑性エラストマーのみで構成される樹脂材料を用いて形成されるタイヤは、熱可塑性エラストマーのハードセグメント領域の数を多くして、弾性率を大きくした場合に、損失正接(tanδ)が大きくなる傾向がある。具体的には、熱可塑性エラストマーのハードセグメントとソフトセグメントの比率を変えて、弾性率を大きくした場合、粘弾性測定における熱可塑性エラストマーのtanδのピークは高温側にシフトし、30℃〜50℃におけるtanδが大きくなる傾向にある。
樹脂材料の損失正接(tanδ)が大きくなると、タイヤが転動する際の変形で発生するエネルギー損失(発熱)が大きくなり、転がり抵抗が大きくなる傾向にある。その為に、かかる樹脂材料を原料とするタイヤを用いた自動車は、燃費が大きくなり易い。つまり、熱可塑性エラストマーのみで構成される樹脂材料を用いて形成されるタイヤは、タイヤの耐変形性を向上する目的で当該樹脂材料の弾性率を上げると、同時に樹脂材料のtanδも上がってしまうため、低燃費を実現しにくかった。
これに対して、上記構成の本発明に係る熱可塑性樹脂材料を用いてタイヤ骨格体とし、タイヤを形成することで、熱可塑性樹脂材料の弾性率が高まっても、tanδは上がり難い。これは、熱可塑性エラストマーのハードセグメントに特定樹脂が相溶することで、ハードセグメントの領域自体が大きくなり、粘弾性測定において、熱可塑性樹脂材料のtanδのピークのシフトが抑えられるためと考えられる。その結果、特定樹脂のtanδのピークが現れるが、全体としてtanδが抑制されると考えられる。
以上より、本発明においては、熱可塑性樹脂材料の弾性率が高まっても、tanδが上がり難いと考えられる。
(2)本発明のタイヤは、前記樹脂の弾性率が100MPa以上であるように構成することができる。
このように、熱可塑性エラストマーが有するハードセグメントと相溶し易い樹脂の弾性率を、上記範囲とすることで、熱可塑性エラストマーのハードセグメントの弾性率をより高めることができるため、より一層、弾性率の高い熱可塑性樹脂材料を得ることができる。その結果、より弾性率の高いタイヤを得ることができる。
(3)本発明のタイヤは、前記熱可塑性エラストマーと、前記樹脂との質量比(前記熱可塑性エラストマー:前記樹脂)が、95:5〜50:50であるように構成することができる。
熱可塑性樹脂材料中の前記熱可塑性エラストマーの含有量が上記範囲であると、熱可塑性樹脂材料が有する性能を十分に発揮でき、タイヤ性能としての引張弾性、破断強度等の引張り特性を向上することができる。
(4)本発明のタイヤは、前記熱可塑性樹脂材料中の前記熱可塑性エラストマーの含有量が、50質量%〜95質量%であるように構成することができる。
熱可塑性樹脂材料中の前記熱可塑性エラストマーの含有量が上記範囲であると、熱可塑性樹脂材料が有する性能を十分に発揮でき、タイヤ性能としての引張弾性、破断強度等の引張り特性をより向上することができる。
(5)前記熱可塑性エラストマーが、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、かつ、前記樹脂が、ポリアミド系樹脂であるように構成することができる。
ここで、「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを言う。また、ポリアミド系樹脂とは、主鎖にアミド結合(−CONH−)を有する熱可塑性の樹脂を言う。
このように、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの特定樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが有するハードセグメントの分子鎖の主鎖を構成する骨格(アミド結合)と共通する骨格(アミド結合)を有する樹脂、すなわち、ポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、耐熱性を有するとともに、引張弾性率、引張強度及び破断ひずみに優れると言う利点がある。このため、特定樹脂としてポリアミド系樹脂を併用することで、さらに転がり抵抗を抑制する効果を発現することができ、耐久性が良い上に、低燃費のタイヤを得ることができる。
さらに、本発明のタイヤは、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体に加え、更に、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体の外周部に補強コード部材が巻回されて補強コード部材層を形成する補強コード部材を有していてもよい。
熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体の外周部に補強コード部材が巻回されて補強コード部材層が形成されていると、タイヤの耐パンク性、耐カット性、及びタイヤ(タイヤ骨格体)の周方向剛性が向上する。なお、周方向剛性が向上することで、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格体のクリープ(一定の応力下でタイヤ骨格体の塑性変形が時間とともに増加する現象)が抑制される。
以上説明したように、本発明によれば、熱可塑性樹脂材料を用いて形成され、且つ弾性率が大きくなっても転がり抵抗の増大を抑制することができるタイヤを提供することができる。
(A)は本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図であり、(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。 第1の実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。 コード加熱装置、及びローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。 他の実施形態に係るタイヤの断面図である。 (A)は本発明の一実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図である。(B)はタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。 第2の実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。 熱可塑性樹脂材料で作成された実施例及び比較例の各試料片の引張弾性率とtanδとの関係をプロットしたグラフである。 熱可塑性樹脂材料で作成された実施例及び比較例の各試料片の引張弾性率とtanδとの関係をプロットしたグラフである。
まず、本発明におけるタイヤ骨格体を構成する熱可塑性樹脂材料について説明し、続いて本発明のタイヤの具体的な実施形態について図を用いて説明する。
[熱可塑性樹脂材料]
本発明のタイヤは、分子中にハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性エラストマーと、前記熱可塑性エラストマー以外であって、前記ハードセグメントと同種の樹脂と、を含む熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体を有する。
タイヤを形成する環状のタイヤ骨格体を構成する熱可塑性樹脂材料として、熱可塑性エラストマーと、熱可塑性エラストマー以外であって、熱可塑性エラストマーの有するハードセグメントと同種の樹脂(特定樹脂)との組合せを適用することで、熱可塑性樹脂材料の弾性率が大きくなっても、タイヤの転がり抵抗を上がりにくくすることができる。
以下、熱可塑性エラストマー及び特定樹脂について説明する。
〔熱可塑性エラストマー〕
「熱可塑性エラストマー」とは、既述のように、分子中にハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂材料であり、詳細には、弾性を有する高分子化合物であって、結晶性で融点の高い、ハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料をいう。なお、熱可塑性エラストマーには、従来の天然ゴムや合成ゴム等の加硫ゴムは包含されない。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)
「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものをいう。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、結晶性のポリアミドが融点の高いハードセグメントを構成し、非晶性のポリマーがガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している共重合体が挙げられる。
ハードセグメントを構成する結晶性のポリアミドとしては、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,8)等の脂肪族ポリアミド、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミド等が挙げられる。
中でも、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−12等が好ましく、ナイロン−12がより好ましい。
ソフトセグメントを構成するポリマーとしては、例えば、ポリメチレン及び脂肪族ポリエーテルから選択されたポリマーが挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20が更に好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、上記ハードセグメントを構成するポリマー及びソフトセグメントを構成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
上記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の宇部興産(株)の「UBESTA、XPA」シリーズ(例えば、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、EX9200、E50−R2)等を用いることができる。
(ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー)
「ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー」とは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーが、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンであるものを言う。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、前記ポリオレフィンと前記ポリオレフィン以外のオレフィンが非晶性でガラス転移点の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
前記ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリエチレン、1−ブテン等が挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン等が挙げられる。
上述のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーしては、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体が好ましく、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体が更に好ましい。
2種類以上のポリオレフィン樹脂を組み合わせて使用してもよく、その場合、2種類以上のポリオレフィン樹脂のうち、1種は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー中のポリオレフィン含率が50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は,5,000〜10,000,000であることが好ましい。5,000未満の場合には,樹脂複合材の機械的物性が低下するおそれがある。10,000,000を超える場合には,樹脂複合材の加工性に問題が生じるおそれがある。上記と同様の理由により,ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は,7,000〜1,000,000である。特に好ましくは,ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は,10,000〜1,000,000である。これにより,樹脂複合材の機械的物性及び加工性を更に向上させることができる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、上記ハードセグメントを構成するポリマー及びソフトセグメントを構成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
上記のようなポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品のプライムポリマー社製のプライムTPO(登録商標)、三井化学社製のタフマー(登録商標)、ノティオ(登録商標)等を用いることができる。
(ポリスチレン系熱可塑性エラストマー)
「ポリスチレン系熱可塑性エラストマー」とは、弾性を有する高分子化合物であり、ハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーが、ポリスチレン及びポリスチレン誘導体を含むものを言う。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、ポリスチレンがハードセグメントを構成し、非晶性のポリマーがガラス転移温度の低いソフトセグメント(例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等)を構成している共重合体が挙げられる。
ソフトセグメントを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリスチレン)の数平均分子量としては5,000〜500,000が好ましく、10,000〜200,000がより好ましい。
前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜800,000、更に好ましくは30,000〜500,000である。
更に前記ハードセグメント(X)とソフトセグメント(Y)との質量比(X:Y)は成形性、物性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、上記ハードセグメントを構成するポリマー及びソフトセグメントを構成するポリマーをブロック共重合等の公知の方法によって共重合することで合成することができる。
上記のようなポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の旭化成社製のタフプレン(登録商標)及びタフテック(登録商標)、クラレ社製のセプトン(登録商標)等を用いることができる。
(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)
本発明におけるポリエステル系熱可塑性エラストマーは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーとしてポリエステル樹脂を含むものである。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、結晶性のポリエステルが融点の高いハードセグメントを構成し、非晶性のポリマーがガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している共重合体が挙げられる。
ハードセグメントを形成する結晶性のポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。
ハードセグメントを形成する芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
ハードセグメントを形成する好適な芳香族ポリエステルの一つとしては、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートが挙げられ、更に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール〔例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオール〕などから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分及び多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリエーテルから選択されたポリマーが挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られる共重合体の弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリエステル)の数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。更に、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、99:1〜20:80が好ましく、98:2〜30:70が更に好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、上記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、市販品を用いることもでき、例えば、東レ・デュポン(株)製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、6347、4047、4767、7247)、東洋紡(株)製の「ペルプレン」シリーズ(例えば、P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P250B、E450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)等を用いることができる。
熱可塑性樹脂材料は、2種以上の熱可塑性エラストマーを含んでいてもよいが、熱可塑性樹脂材料を用いて形成するタイヤのタイヤ性能を制御する観点から、熱可塑性エラストマーは1種であることが好ましい。
以上、説明した熱可塑性エラストマーの中でも、耐熱性を有するとともに、引張弾性率、引張強度及び破断ひずみに優れると言う観点から、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが好ましい。
〔同種の樹脂(特定樹脂)〕
熱可塑性樹脂には、熱可塑性エラストマー以外であって、熱可塑性エラストマーが有するハードセグメントと同種の樹脂(特定樹脂)を含む。
熱可塑性エラストマーが有する「ハードセグメントと同種の樹脂」とは、熱可塑性エラストマーが有するハードセグメントの主鎖を構成する骨格と共通する骨格を有する樹脂をいい、本発明における樹脂は、熱可塑性または熱硬化性を有する樹脂を意味し、従来の天然ゴムや合成ゴム等の加硫ゴムは含まない。
具体的には、熱可塑性樹脂材料に含まれる熱可塑性エラストマーが、ポリアミド系熱可塑性エラストマーである場合には、特定樹脂としてポリアミド系樹脂を用いればよく、熱可塑性エラストマーが、ポリオフィン系熱可塑性エラストマーである場合には、特定樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いればよく、熱可塑性エラストマーが、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである場合には、特定樹脂としてポリスチレン系樹脂を用いればよい。
(ポリアミド系樹脂)
ポリアミド系樹脂は、主鎖にアミド結合(−NHCO−)を有する樹脂であり、熱硬化性であっても、熱可塑性であってもよい。
ポリアミド系樹脂としては、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,8)等の脂肪族ポリアミド、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミド等が挙げられる。
中でも、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−12等が好ましく、ナイロン−12がより好ましい。
上記のようなポリアミド系樹脂としては、宇部興産社製のUBESTA(例えば、3014U、3020U等)、ダイセル・エボニックス社製のVESTAMID(例えば、L1600、L1700等)が挙げられる。
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂は、主鎖が、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのポリオレフィンであり、熱硬化性であっても、熱可塑性であってもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
中でも、熱可塑性樹脂材料の弾性率を大きくする観点から、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体がより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、数平均分子量は,5,000〜10,000,000であることが好ましい。5,000未満の場合には,樹脂複合材の機械的物性が低下するおそれがある。10,000,000を超える場合には,樹脂複合材の加工性に問題が生じるおそれがある。上記と同様の理由により,ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量は,7,000〜1,000,000である。特に好ましくは,ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量は,10,000〜1,000,000である。これにより,樹脂複合材の機械的物性及び加工性を更に向上させることができる。
上記のようなポリオレフィン系樹脂としては、例えば、市販品のプライムポリマー社製のプライムPP(登録商標)及び日本ポリプロピレン社製のノバテックPP(登録商標)、ウィンテック(登録商標)等を用いることができる。
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレンを含む樹脂であり、熱硬化性であっても、熱可塑性であってもよい。ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーのソフトセグメントを構成し得るポリマー以外のポリマーを1種以上共重合成分として含んでいてもよい。
ポリスチレン系樹脂の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、数平均分子量は,5,000〜10,000,000であることが好ましい。5,000未満の場合には,樹脂複合材の機械的物性が低下するおそれがある。10,000,000を超える場合には,樹脂複合材の加工性に問題が生じるおそれがある。上記と同様の理由により,ポリスチレン系樹脂の数平均分子量は,7,000〜1,000,000である。特に好ましくは,ポリスチレン系樹脂の数平均分子量は,10,000〜1,000,000である。これにより,樹脂複合材の機械的物性及び加工性を更に向上させることができる。
上記のようなポリスチレン系樹脂としては、例えば、市販品の出光興産社製のザレック(登録商標)、東洋スチレン社製のトーヨースチロール(登録商標)、ダイセルポリマー社製のセビアン、テクノポリマー社製のテクノABS等を用いることができる。
〔ポリエステル樹脂〕
熱可塑性樹脂材料は、熱可塑性エラストマー以外のポリエステル樹脂を含む。ポリエステル系樹脂は、主鎖にエステル結合を有する樹脂である。
ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントが含むポリエステル樹脂と同種の樹脂であることが好ましく、結晶性のポリエステルであることがより好ましい。
結晶性のポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。
芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
芳香族ポリエステルの一つとしては、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートが挙げられ、更に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール〔例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオール〕などから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分及び多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
上記のようなポリエステル樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、ポリプラスチック(株)製の「ジュラネックス」シリーズ(例えば、2000、2002、等)、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製のノバデュランシリーズ(例えば、5010R5、5010R3−2等)、東レ(株)製の「トレコン」シリーズ(例えば、1401X06、1401X31等)等が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、熱可塑性樹脂材料の弾性率を大きくする観点から、弾性率が700MPa以上であることが好ましく、800MPa〜3000MPaであることがより好ましい。なお、ポリエステル樹脂の弾性率は、JIS K7113:1995に規定される引張弾性率を意味し、特定樹脂の弾性率は、例えば、島津製作所社製の精密万能試験機オートグラフを用いて測定することができる。
また、特定樹脂は、熱可塑性樹脂材料の弾性率を大きくする観点から、弾性率が100MPa以上であることが好ましく、100MPa〜3000MPaであることがより好ましい。100MPa〜2000MPaであることが更に好ましい。なお、特定樹脂の弾性率は、JIS K7113:1995に規定される引張弾性率を意味し、特定樹脂の弾性率は、例えば、島津製作所社製の精密万能試験機オートグラフを用いて測定することができる。
熱可塑性樹脂材料は、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。ただし、その内の少なくとも1種は、熱可塑性樹脂材料に含まれる熱可塑性エラストマーが有するハードセグメントと同種の樹脂(特定樹脂)である必要がある。また、特定樹脂も、2種以上、熱可塑性樹脂材料に含まれていてもよいが、既述のように、熱可塑性樹脂材料中の熱可塑性エラストマーは1種であることが好ましいことから、特定樹脂も1種であることが好ましい。
既述のように、熱可塑性樹脂材料に含まれる熱可塑性エラストマーとして、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが好ましく用いられることから、特定樹脂は、ポリアミド系樹脂であることが好ましく、ポリアミド系熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂材料中、熱可塑性エラストマーと特定樹脂との量比(熱可塑性エラストマー:特定樹脂)は、耐衝撃性の観点から、質量基準で、95:5〜50:50であることが好ましく、90:10〜50:50であることがより好ましい。
また、熱可塑性樹脂材料中、熱可塑性エラストマーの含有量は、熱可塑性エラストマーの性能を十分発揮させる観点から、熱可塑性樹脂材料の全質量に対して、40質量%〜95質量%であることが好ましく、50質量%〜90質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂材料には、所望に応じて、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等の各種添加剤を含有させてもよい。
熱可塑性樹脂材料は、熱可塑性エラストマー、及び特定樹脂を混合し、必要に応じて各種添加剤を添加して、溶融混合することにより得ることができる。熱可塑性エラストマーと、特定樹脂との混合比は、既述の割合に準ずる。溶融混合して得られた熱可塑性樹脂材料は、必要に応じてペレット状にして用いることができる。
熱可塑性樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張弾性率(以下、特に特定しない限り本明細書で「弾性率」とは引張弾性率を意味する。)としては、100〜1000MPaが好ましく、100〜800MPaがさらに好ましく、100〜700MPaが特に好ましい。ポリアミド系熱可塑性エラストマーの引張弾性率が、100〜1000MPaであると、タイヤ骨格の形状を保持しつつリム組みを効率的におこなうことができる。
熱可塑性樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5〜20MPaが好ましく、5〜17MPaがさらに好ましい。熱可塑性樹脂材料の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時などにタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
熱可塑性樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10〜70%が好ましく、15〜60%がさらに好ましい。熱可塑性樹脂材料の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性を良くすることができる。
熱可塑性樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張破壊伸びとしては、50%以上が好ましく、100%以上が好ましく、150%以上がさらに好ましく、200%以上が特に好ましい。熱可塑性樹脂材料の引張破壊伸びが、50%以上であると、リム組み性がよく、衝突に対して破壊しにくくすることができる。
熱可塑性樹脂材料のISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)としては、50℃以上が好ましく、50〜150℃が好ましく、50〜130℃がさらに好ましい。熱可塑性樹脂材料の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、トレッド等の加流工程における変形を抑制することすることができる。
[補強コード層を構成する樹脂材料]
本発明のタイヤは、タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を有していてもよい。
また、補強コード層には、樹脂材料を含めて構成することができる。このように、補強コード層に樹脂材料が含まれていると、補強コードをクッションゴムで固定する場合と比して、タイヤと補強コード層との硬さの差を小さくできるため、更に補強コード部材をタイヤ骨格体に密着・固定することができる。上述のように「樹脂材料」とは、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムは含まない。
更に、補強コードがスチールコードの場合、タイヤ処分時に補強コードをクッションゴムから分離しようとすると、加硫ゴムは加熱だけでは補強コードと分離させるのが難しいのに対し、樹脂材料は加熱のみで補強コードと分離することが可能である。このため、タイヤのリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は通常加硫ゴムに比して損失係数(Tanδ)が低い。このため、補強コード層が樹脂材料を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、加硫ゴムに比して相対的に弾性率の高い樹脂材料は、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
補強コード層に用いることのできる前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
また、樹脂材料の同種とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
補強コード層に用いられる樹脂材料の弾性率(JIS K7113:1995に規定される引張弾性率)は、タイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂の弾性率の0.1倍から10倍の範囲内に設定することが好ましい。前記樹脂材料の弾性率がタイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の10倍以下の場合は、クラウン部が硬くなり過ぎずリム組み性が容易になる。また、前記樹脂材料の弾性率がタイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の0.1倍以上の場合には、補強コード層を構成する樹脂が柔らかすぎず、ベルト面内せん断剛性に優れコーナリング力が向上する。
また、前記補強コード層に樹脂材料を含めた場合、補強コードの引き抜き性(引き抜かれにくさ)を高める観点から、前記補強コード部材はその表面が20%以上樹脂材料に覆われていることが好ましく、50%以上覆われていることが更に好ましい。また、前記補強コード層中の樹脂材料の含有量は、補強コードを除いた補強コード層を構成する材料の総量に対して、補強コードの引き抜き性を高める観点から、20質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
[第1の実施形態]
以下に、図面に従って本発明のタイヤの第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
図1(A)に示すように、タイヤ10は、図1(B)に示すリム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)と、からなるタイヤケース17を備えている。
ここで、本実施形態のタイヤケース17は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(宇部興産社製「UBESTA、XPA9055X1」)と、ポリアミド系熱可塑性樹脂(宇部興産社製「UBESTA、3014U」)との混合材料で構成される熱可塑性樹脂材料により形成されている。本実施形態においてタイヤケース17は、本発明に係る熱可塑性樹脂材料のみで形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース17の各部位毎(サイド部14、クラウン部16、ビード部12など)に異なる特徴を有する他の熱可塑性樹脂材料を用いてもよい。また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強してもよい。
本実施形態のタイヤケース17は、本発明に係る熱可塑性樹脂材料で形成された一対のタイヤケース半体(タイヤ骨格片)17A同士を接合させたものである。タイヤケース半体17Aは、一つのビード部12と一つのサイド部14と半幅のクラウン部16とを一体として射出成形等で成形された同一形状の円環状のタイヤケース半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で接合することで形成されている。本発明に係る熱可塑性樹脂材料には、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと、特定樹脂とが含まれている。
なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成してもよい。
熱可塑性樹脂材料で形成されるタイヤケース半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができる。このため、従来のようにゴムでタイヤケースを成形する場合に比較して、加硫を行う必要がなく、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間を省略することができる。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
本実施形態において、図1(B)に示すようにビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略することもできる。なお、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで形成されていてもよい。
本実施形態では、ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりもシール性に優れた材料、例えば、ゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はタイヤケース17(ビード部12)とビードシート21とが接触する部分にも形成されていてもよい。タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりもシール性に優れた材料としては、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料に比して軟質な材料を用いることができる。シール層24に用いることのできるゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、熱可塑性樹脂材料のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24は省略してもよく、熱可塑性樹脂材料よりもシール性に優れる他の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)を用いてもよい。このような他の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂やこれら樹脂とゴム若しくはエラストマーとのブレンド物等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーを用いることもでき、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、或いは、これらエラストマー同士の組み合わせや、ゴムとのブレンド物等が挙げられる。
図1に示すように、クラウン部16には、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26がタイヤケース17の周方向に巻回されている。補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、補強コード層28を形成している。補強コード層28のタイヤ径方向外周側には、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が配置されている。
図2を用いて補強コード26によって形成される補強コード層28について説明する。図2は、第1の実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。図2に示されるように、補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、タイヤケース17の外周部の一部と共に図2において破線部で示される補強コード層28を形成している。補強コード26のクラウン部16に埋設された部分は、クラウン部16(タイヤケース17)を構成する熱可塑性樹脂材料と密着した状態となっている。補強コード26としては、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又は、スチール繊維を撚ったスチールコードなどこれら繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いることができる。なお、本実施形態において補強コード26としては、スチールコードが用いられている。
また、図2において埋設量Lは、タイヤケース17(クラウン部16)に対する補強コード26のタイヤ回転軸方向への埋設量を示す。補強コード26のクラウン部16に対する埋設量Lは、補強コード26の直径Dの1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがさらに好ましい。そして、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/2を超えると、補強コード26の寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。また、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、補強コード26が埋設されたクラウン部16上に部材が載置されても補強コード周辺部に空気が入るのを抑制することができる。なお、補強コード層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
上述のように補強コード層28のタイヤ径方向外周側にはトレッド30が配置されている。このトレッド30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を構成する熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
以下、本発明のタイヤの製造方法について説明する。
(タイヤケース成形工程)
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する熱可塑性樹脂材料の融点以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化又は溶融させ、接合金型によって加圧して、タイヤケース半体を接合させてもよい。
(補強コード部材巻回工程)
次に、補強コード巻回工程について図3を用いて説明する。図3は、コード加熱装置、及びローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。図3において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、及び第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60または第2のローラ64の表面は、溶融又は軟化した熱可塑性樹脂材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置5は、第1のローラ60または第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。
また、コード加熱装置59は、熱風を生じさせるヒーター70及びファン72を備えている。また、コード加熱装置59は、内部に熱風が供給される、内部空間をコード26が通過する加熱ボックス74と、加熱されたコード26を排出する排出口76とを備えている。
本工程においては、まず、コード加熱装置59のヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。次に、リール58から巻き出した補強コード26を、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、補強コード26の温度を100〜200℃程度に加熱)する。加熱された補強コード26は、排出口76を通り、図3の矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。ここで、加熱された補強コード26がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の熱可塑性樹脂材料が溶融又は軟化し、加熱された補強コード26の少なくとも一部がクラウン部16の外周面に埋設される。このとき、溶融又は軟化した熱可塑性樹脂材料に加熱された補強コード26が埋設されるため、熱可塑性樹脂材料と補強コード26とが隙間がない状態、つまり密着した状態となる。これにより、補強コード26を埋設した部分へのエア入りが抑制される。なお、補強コード26をタイヤケース17の熱可塑性樹脂材料の融点よりも高温に加熱することで、補強コード26が接触した部分の熱可塑性樹脂材料の溶融又は軟化が促進される。このようにすることで、クラウン部16の外周面に補強コード26を埋設しやすくなると共に、効果的にエア入りを抑制することができる。
また、補強コード26の埋設量Lは、補強コード26の加熱温度、補強コード26に作用させるテンション、及び第1のローラ60による押圧力等によって調整することができる。そして、本実施形態では、補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/5以上となるように設定されている。なお、補強コード26の埋設量Lとしては、直径Dの1/2を超えることがさらに好ましく、補強コード26全体が埋設されることが最も好ましい。
このようにして、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース17のクラウン部16の外周側に補強コード層28が形成される。
次に、タイヤケース17の外周面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にトレッド30を、接着剤などを用いて接着する。なお、トレッド30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
(作用)
本実施形態のタイヤ10では、タイヤケース17が熱可塑性樹脂材料によって形成されているため、熱可塑性樹脂材料の弾性率を大きくしても、熱可塑性樹脂材料のtanδが上がりにくく、タイヤの転がり抵抗を抑えることができ、さらにタイヤ構造が簡素化できる為、従来のゴムに比して重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ10を自動車に適用すると、転がり抵抗を抑え、軽量化することができるので、かかるタイヤを用いた自動車の燃費を良くすることができる。
また、熱可塑性樹脂材料がポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む場合、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが補強コード26に対する密着性が高く、さらに溶着強度等の固定性能に優れていることから、補強コード巻回工程において補強コード26の周囲に空気が残る現象(エア入り)を特に抑制することができる。補強コード26への密着性及び溶着性が高く、さらに補強コード部材周辺へのエア入りが抑制されていると、走行時の入力などによって補強コード26が動くのを効果的に抑制することができる。これにより、例えば、タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材全体を覆うようにタイヤ構成部材が設けられた場合であっても、補強コード部材は動きが抑制されているため、これらの部材間(タイヤ骨格体含む)の剥離などが生じるのが抑制されタイヤ10の耐久性が向上する。
また、本実施形態のタイヤ10では、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に熱可塑性樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26が周方向へ螺旋状に巻回されていることから耐パンク性、耐カット性、及びタイヤ10の周方向剛性が向上する。なお、タイヤ10の周方向剛性が向上することで、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクリープが防止される。
また、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視(図1に示される断面)で、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に補強コード26の少なくとも一部が埋設され且つ熱可塑性樹脂材料に密着していることから、製造時のエア入りが抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのが抑制される。これにより、補強コード26、タイヤケース17、及びトレッド30に剥離などが生じるのが抑制され、タイヤ10の耐久性が向上する。
そして、図2に示すように、補強コード26の埋設量Lが直径Dの1/5以上となっていることから、製造時のエア入りが効果的に抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのがさらに抑制される。
このように補強コード層28が、熱可塑性樹脂材料を含んで構成されていると、補強コード26をクッションゴムで固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に補強コード26をタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
更に、補強コードがスチールコードの場合、タイヤ処分時に補強コード26を加熱によって熱可塑性樹脂材料から容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ10のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は通常加硫ゴムに比して損失係数(Tanδ)が低い。このため、補強コード層が樹脂材料を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、加硫ゴムに比して相対的に弾性率の高い樹脂材料は、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
また、路面と接触するトレッド30を熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性のあるゴム材で構成していることから、タイヤ10の耐摩耗性が向上する。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
またさらに、ビード部12のリム20と接触する部分に、熱可塑性樹脂材料よりもシール性のあるゴム材からなるシール層24が設けられていることから、タイヤ10とリム20との間のシール性が向上する。このため、リム20と熱可塑性樹脂材料とでシールする場合と比較して、タイヤ内の空気漏れがより一層抑制される。また、シール層24を設けることでリムフィット性も向上する。
上述の実施形態では、補強コード26を加熱し、加熱した補強コード26が接触する部分の熱可塑性樹脂材料を溶融又は軟化させる構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を加熱せずに熱風生成装置を用い、補強コード26が埋設されるクラウン部16の外周面を加熱した後、補強コード26をクラウン部16に埋設するようにしてもよい。
また、第1の実施形態では、コード加熱装置59の熱源をヒーター及びファンとしているが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を輻射熱(例えば、赤外線など)で直接加熱する構成としてもよい。
さらに、第1の実施形態では、補強コード26を埋設した熱可塑性樹脂材料が溶融又は軟化した部分を金属製の第2のローラ64で強制的に冷却する構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、熱可塑性樹脂材料が溶融又は軟化した部分に冷風を直接吹きかけて、熱可塑性樹脂材料の溶融又は軟化した部分を強制的に冷却固化する構成としてもよい。
また、第1の実施形態では、補強コード26を加熱する構成としたが、例えば、補強コード26の外周をタイヤケース17と同じ熱可塑性樹脂材料で被覆する構成としてもよく、この場合には、被覆補強コードをタイヤケース17のクラウン部16に巻き付ける際に、補強コード26と共に被覆した熱可塑性樹脂材料も加熱することで、クラウン部16への埋設時におけるエア入りを効果的に抑制することができる。
また、補強コード26は螺旋巻きするのが製造上は容易だが、幅方向で補強コード26を不連続とする方法等も考えられる。
第1の実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、完全なチューブ形状であってもよい。
前記完全なチューブ形状のタイヤとしては、例えば、図4に示すように、円環状とされたタイヤ骨格体をタイヤ幅方向に3本配置した態様であってもよい。図4は、他の実施形態に係るタイヤの断面図である。図4に示すように、タイヤ86は、トレッドゴム層87と、第1の実施形態と同様の樹脂材料からなる円環状とされた中空のチューブ(タイヤ骨格体)88と、ベルト(補強コード)89と、リム90とを備えている。チューブ88は、タイヤ86のタイヤ幅方向に3本並んで配置されている。チューブ88の外周部には、ベルト89を埋設したトレッドゴム層87が接着されている。また、チューブ88は、チューブ88と係合する凹部を備えたリム90に装着されている。なお、このタイヤ86にはビードコアは設けられていない。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
[第2の実施形態]
次に、図面に従って本発明のタイヤの製造方法及びタイヤの第2の実施形態について説明する。本実施形態のタイヤは、上述の第1の実施形態と同様に、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。このため、以下の図において、前記第1の実施形態と同様の構成については同様の番号が付される。図5(A)は、第2の実施形態のタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図であり、図5(B)は第2の実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。また、図6は、第2の実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
第2の実施形態のタイヤは、上述の第1の実施形態と同様に、タイヤケース17がポリアミド系熱可塑性エラストマー(宇部興産社製「UBESTA、XPA9055X1」)と、ポリアミド系熱可塑性樹脂(宇部興産社製「UBESTA、3014U」)との混合材料で形成されている。本実施形態においてタイヤ200は、図5及び図6に示すように、クラウン部16に、被覆コード部材26Bが周方向に巻回されて構成された補強コード層28(図6では破線で示されている)が積層されている。この補強コード層28は、タイヤケース17の外周部を構成し、クラウン部16の周方向剛性を補強している。なお、補強コード層28の外周面は、タイヤケース17の外周面17Sに含まれる。
この被覆コード部材26Bは、タイヤケース17を形成する熱可塑性樹脂材料よりも剛性が高いコード部材26Aにタイヤケース17を形成する熱可塑性樹脂材料とは別体の被覆用樹脂材料27を被覆して形成されている。また、被覆コード部材26Bはクラウン部16との接触部分において、被覆コード部材26Bとクラウン部16とが接合(例えば、溶接、又は接着剤で接着)されている。
また、被覆用樹脂材料27の弾性率は、タイヤケース17を形成する樹脂材料の弾性率の0.1倍から10倍の範囲内に設定することが好ましい。被覆用樹脂材料27の弾性率がタイヤケース17を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の10倍以下の場合は、クラウン部が硬くなり過ぎずリム組み性が容易になる。また、被覆用樹脂材料27の弾性率がタイヤケース17を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の0.1倍以上の場合には、補強コード層28を構成する樹脂が柔らかすぎず、ベルト面内せん断剛性に優れコーナリング力が向上する。なお、本実施形態では、被覆用樹脂材料27として熱可塑性樹脂材料と同様の材料(本実施形態ではポリアミド系熱可塑性エラストマー(宇部興産社製「UBESTA、XPA9055X1」)と、ポリアミド系熱可塑性樹脂(宇部興産社製「UBESTA、3014U」)との混合材料)が用いられている。
また、図6に示すように、被覆コード部材26Bは、断面形状が略台形状とされている。なお、以下では、被覆コード部材26Bの上面(タイヤ径方向外側の面)を符号26Uで示し、下面(タイヤ径方向内側の面)を符号26Dで示す。また、本実施形態では、被覆コード部材26Bの断面形状を略台形状とする構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、断面形状が下面26D側(タイヤ径方向内側)から上面26U側(タイヤ径方向外側)へ向かって幅広となる形状を除いた形状であれば、いずれの形状でもよい。
図6に示すように、被覆コード部材26Bは、周方向に間隔をあけて配置されていることから、隣接する被覆コード部材26Bの間に隙間28Aが形成されている。このため、補強コード層28の外周面は、凹凸とされ、この補強コード層28が外周部を構成するタイヤケース17の外周面17Sも凹凸となっている。
タイヤケース17の外周面17S(凹凸含む)には、微細な粗化凹凸が均一に形成され、その上に接合剤を介して、クッションゴム29が接合されている。このクッションゴム29は、径方向内側のゴム部分が粗化凹凸に流れ込んでいる。
また、クッションゴム29の上(外周面)にはタイヤケース17を形成している樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が接合されている。
なお、トレッド30に用いるゴム(トレッドゴム30A)は、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を形成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
次に本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
(タイヤ骨格形成工程)
(1)まず、上述の第1の実施形態と同様にして、タイヤケース半体17Aを形成し、これを接合金型によって加熱・押圧し、タイヤケース17を形成する。
(補強コード部材巻回工程)
(2)本実施形態におけるタイヤの製造装置は、上述の第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態の図3に示すコード供給装置56において、リール58にコード部材26Aを被覆用樹脂材料27(本実施形態では熱可塑性材料)で被覆した断面形状が略台形状の被覆コード部材26Bを巻き付けたものが用いられる。
まず、ヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。リール58から巻き出した被覆コード部材26Bを、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、被覆コード部材26Bの外周面の温度を、被覆用樹脂材料27の融点以上)とする。ここで、被覆コード部材26Bが加熱されることにより、被覆用樹脂材料27が溶融又は軟化した状態となる。
そして被覆コード部材26Bは、排出口76を通り、紙面手前方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻回される。このとき、クラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bの下面26Dが接触する。そして、接触した部分の溶融又は軟化状態の被覆用樹脂材料27はクラウン部16の外周面上に広がり、クラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bが溶着される。これにより、クラウン部16と被覆コード部材26Bとの接合強度が向上する。
(粗化処理工程)
(3)次に、図示を省略するブラスト装置にて、タイヤケース17の外周面17Sに向け、タイヤケース17側を回転させながら、外周面17Sへ投射材を高速度で射出する。射出された投射材は、外周面17Sに衝突し、この外周面17Sに算術平均粗さRaが0.05mm以上となる微細な粗化凹凸96を形成する。
このようにして、タイヤケース17の外周面17Sに微細な粗化凹凸96が形成されることで、外周面17Sが親水性となり、後述する接合剤の濡れ性が向上する。
(積層工程)
(4)次に、粗化処理を行なったタイヤケース17の外周面17Sに接合剤を塗布する。
なお、接合剤としては、ハロゲン化ゴム系接着剤等のゴム系接着剤(例えば、塩化ゴム系接着剤)、トリアジンチオール系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤など、特に制限はないが、クッションゴム29が加硫できる温度(90℃〜140℃)で反応することが好ましい。
(5)次に、接合剤が塗布された外周面17Sに未加硫状態のクッションゴム29を1周分巻き付け、そのクッションゴム29の上に例えば、ゴムセメント組成物などの接合剤を塗布し、その上に加硫済み又は半加硫状態のトレッドゴム30Aを1周分巻き付けて、生タイヤケース状態とする。
(加硫工程)
(6)次に生タイヤケースを加硫缶やモールドに収容して加硫する。このとき、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96に未加硫のクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が向上する。
(8)そして、タイヤケース17のビード部12に、樹脂材料よりも軟質である軟質材料からなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ200の完成となる。
(作用)
本実施形態のタイヤ200では、タイヤケース17が熱可塑性樹脂材料によって形成されているため、熱可塑性樹脂材料の弾性率を大きくしても、熱可塑性樹脂材料のtanδが上がりにくく、タイヤの転がり抵抗を抑制することができる。さらにタイヤ構造を簡素化できる為、従来のゴムに比して重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ200は、軽量化することができるので、かかるタイヤを用いた自動車の燃費を良くすることができる。
また、補強コード層28が、被覆コード部材26Bを含んで構成されていると、補強コード26Aを単にクッションゴム29で固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に被覆コード部材26Bをタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
更に、補強コードがスチールコードの場合、タイヤ処分時に被覆コード部材26Bからコード部材26Aを加熱によって容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ200のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は通常加硫ゴムに比して損失係数(Tanδ)が低い。このため、補強コード層が樹脂材料を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、加硫ゴムに比して相対的に弾性率の高い樹脂材料は、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
本実施形態のタイヤの製造方法では、タイヤケース17とクッションゴム29及びトレッドゴム30Aとを一体化するにあたり、タイヤケース17の外周面17Sが粗化処理されていることから、アンカー効果により接合性(接着性)が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料が投射材の衝突により掘り起こされることから、接合剤の濡れ性が向上する。これにより、タイヤケース17の外周面17Sに接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度を確保することができる。
特に、タイヤケース17の外周面17Sに凹凸が構成されていても、凹部(隙間28A)に投射材を衝突させることで凹部周囲(凹壁、凹底)の粗化処理がなされ、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度を確保することができる。
一方、クッションゴム29がタイヤケース17の外周面17Sの粗化処理された領域内に積層されることから、タイヤケース17とクッションゴムとの接合強度を効果的に確保することができる。
加硫工程において、クッションゴム29を加硫した場合、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96にクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。
このような、タイヤの製造方法にて製造されたタイヤ200は、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が確保される、すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が確保される。これにより、走行時などにおいて、タイヤ200のタイヤケース17の外周面17Sとクッションゴム29との間の剥離が抑制される。
また、タイヤケース17の外周部を補強コード層28が構成していることから、外周部を補強コード層28以外のもので構成しているものと比べて、耐パンク性及び耐カット性が向上する。
また、被覆コード部材26Bを巻回して補強コード層28が形成されていることから、タイヤ200の周方向剛性が向上する。周方向剛性が向上することで、タイヤケース17のクリープ(一定の応力下でタイヤケース17の塑性変形が時間とともに増加する現象)が抑制され、且つ、タイヤ径方向内側からの空気圧に対する耐圧性が向上する。
本実施形態では、タイヤケース17の外周面17Sに凹凸を構成したが、本発明はこれに限らず、外周面17Sを平らに形成する構成としてもよい。
また、タイヤケース17は、タイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を被覆用熱可塑性材料で覆うようにして補強コード層を形成してもよい。この場合、溶融又は軟化状態の被覆用熱可塑性材料を補強コード層28の上に吐出して被覆層を形成することができる。また、押出機を用いずに、溶着シートを加熱し溶融又は軟化状態にして、補強コード層28の表面(外周面)に貼り付けて被覆層を形成してもよい。
上述の第2の実施形態では、ケース分割体(タイヤケース半体17A)を接合してタイヤケース17を形成する構成としたが、本発明はこの構成に限らず、金型などを用いてタイヤケース17を一体的に形成してもよい。
第2の実施形態のタイヤ200は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ200とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、タイヤ200は、例えば、完全なチューブ形状(例えば図4に示す形状)であってもよい。
第2の実施形態では、タイヤケース17とトレッド30との間にクッションゴム29を配置したが、本発明はこれに限らず、クッションゴム29を配置しない構成としてもよい。
また、第2の実施形態では、被覆コード部材26Bをクラウン部16へ螺旋状に巻回する構成としたが、本発明はこれに限らず、被覆コード部材26Bが幅方向で不連続となるように巻回する構成としてもよい。
第2の実施形態では、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱可塑性材料とし、この被覆用樹脂材料27を加熱することにより溶融又は軟化状態にしてクラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bを溶着する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、被覆用樹脂材料27を加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bを接着する構成としてもよい。
また、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、被覆コード部材26Bを加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に接着する構成としてもよい。
さらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、タイヤケース17を熱可塑性樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融又は軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。
またさらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱可塑性材料とし、タイヤケース17を熱可塑性樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融又は軟化状態としつつ、被覆用樹脂材料27を加熱し溶融又は軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。なお、タイヤケース17及び被覆コード部材26Bの両者を加熱して溶融又は軟化状態にした場合、両者が良く混ざり合うため接合強度が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料、及び被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27をともに熱可塑性樹脂材料とする場合には、同種の熱可塑性材料、特に同一の熱可塑性材料とすることが好ましい。
また、さらに、粗化処理を行なったタイヤケース17の外周面17Sに、コロナ処理やプラズマ処理等を用い、外周面17Sの表面を活性化し、親水性を高めた後、接着剤を塗布してもよい。
またさらに、タイヤ200を製造するための順序は、第2の実施形態の順序に限らず、適宜変更してもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以上、本発明の具体的な態様について第1の実施形態及び第2の実施形態を用いて説明したが本発明は上述の態様に限定されるものではない。
本発明のタイヤは第1の実施形態に示されるように以下のように構成することができる。
(1−1)本発明のタイヤは、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、本発明に係る熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体の外周部に補強コード部材の少なくとも一部が埋設されるように構成することができる。
このように、補強コード部材の一部がタイヤ骨格体の外周部に埋設していると、補強コード部材巻回時にコード周辺に空気が残る現象(エア入り)を更に抑制することができる。補強コード部材周辺へのエア入りが抑制されると、走行時の入力などによって補強コード部材が動くのが抑制される。これにより、例えば、タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材全体を覆うようにタイヤ構成部材が設けられた場合、補強コード部材は動きが抑制されているため、これらの部材間(タイヤ骨格体含む)に剥離などを生じるのが抑制され耐久性が向上する。
(1−2)本発明のタイヤは、前記補強コード層の径方向外側に前記熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性を有する材料から形成されるトレッドを設けてもよい。
このように路面と接触するトレッドを熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性のある材料で構成することでタイヤの耐摩耗性を更に向上させることができる。
(1−3)本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、前記補強コード部材の直径1/5以上を前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に沿って埋設させることができる。
このようにタイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で補強コード部材の直径の1/5以上がタイヤ骨格体の外周部に埋設されていると、補強コード部材周辺へのエア入りを効果的に抑制することができ、走行時の入力などによって補強コード部材が動くのをより抑制することができる。
(1−4)本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体は、径方向内側にリムのビードシート及びリムフランジに接触するビード部を有し、前記ビード部に金属材料からなる環状のビードコアが埋設されるように構成することができる。
このように、タイヤ骨格体にリムとの嵌合部位であるビード部を設け、さらに、このビード部に金属材料からなる環状のビードコアを埋設することで、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リムに対して、タイヤ骨格体(すなわちタイヤ)を強固に保持させることができる。
(1−5)本発明のタイヤは、前記ビード部が前記リムと接触する部分に前記熱可塑性樹脂材料よりもシール性(リムとの密着性)の高い材料からなるシール部を設けることが出来る。
このように、タイヤ骨格体とリムとの接触部分に、熱可塑性樹脂材料よりもシール性の高い材料からなるシール部を設けることで、タイヤ(タイヤ骨格体)とリムとの間の密着性を向上させることができる。これにより、リムと熱可塑性樹脂材料とのみを用いた場合に比較して、タイヤ内の空気漏れを一層抑制することができる。また、前記シール部を設けることでタイヤのリムフィット性も向上させることができる。
(1−6)本発明のタイヤの製造方法は、少なくとも、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(例えば、宇部興産社製「UBESTA、XPA9055X1」)と、ポリアミド系熱可塑性樹脂(例えば、宇部興産社製「UBESTA、3014U」)との混合材料を含む熱可塑性樹脂材料によって環状のタイヤ骨格体の一部を構成するタイヤ骨格片を形成するタイヤ骨格片形成工程と、前記タイヤ骨格片の接合面に熱を付与し対となる2以上の前記タイヤ骨格片を融着させて前記タイヤ骨格体を形成するタイヤ骨格片接合工程と、前記タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材を周方向に巻回して補強コード層を形成する補強コード部材巻回工程と、によって構成することができる。
(1−7)前記タイヤの製造方法は、前記タイヤ骨格片接合工程において、前記タイヤ骨格片の接合面を、タイヤ骨格片を構成する熱可塑性樹脂材料の融点以上に加熱するように構成することができる。
このように、前記分割体の接合面を、タイヤ骨格片を構成する熱可塑性樹脂材料の融点以上に加熱すると、タイヤ骨格片同士の融着を十分に行うことができるため、タイヤの耐久性を向上させつつ、タイヤの生産性を高めることができる。
(1−8)前記タイヤの製造方法は、前記補強コード部材巻回工程において、前記タイヤ骨格片接合工程において形成された前記タイヤ骨格体の外周部を溶融又は軟化させながら補強コード部材の少なくとも一部を埋設して前記タイヤ骨格体の外周部に前記補強コード部材を巻回するように構成することができる。
このように、前記タイヤ骨格体の外周部を溶融又は軟化させながら補強コード部材の少なくとも一部を埋設して前記タイヤ骨格体の外周部に前記補強コード部材を巻回することで、埋設された補強コード部材の少なくとも一部と溶融又は軟化した熱可塑性樹脂材料とを溶着させることができる。これにより、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視でタイヤ骨格体の外周部と補強コード部材との間のエア入りを更に抑制することができる。また、補強コード部材を埋設した部分が冷却固化されると、タイヤ骨格体に埋設された補強コード部材の固定具合が向上する。
(1−9)前記タイヤの製造方法は、前記補強コード部材巻回工程において、前記タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で前記補強コードの直径の1/5以上を前記タイヤ骨格体の外周部に埋設させるように構成することができる。
このように、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材を直径の1/5以上埋設すると、製造時の補強コード周辺へのエア入りを効果的に抑制することができ、更に、埋設された補強コード部材がタイヤ骨格体から抜け難くすることができる。
(1−10)前記タイヤの製造方法は、前記補強コード部材巻回工程において、加熱した前記補強コード部材を前記タイヤ骨格体に埋設するように構成することができる。
このように、補強コード巻回工程において、補強コード部材を加熱しながらタイヤ骨格体に埋設させると、加熱された補強コード部材がタイヤ骨格体の外周部に接触した際に接触部分が溶融又は軟化するため、補強コード部材をタイヤ骨格体の外周部に埋設し易くなる。
(1−11)前記タイヤの製造方法は、前記コード部材巻回工程において、前記タイヤ骨格体の外周部の前記補強コード部材が埋設される部分を加熱するように構成することができる。
このように、タイヤ骨格体の外周部の補強コード部材が埋設される部分を加熱することで、タイヤ骨格体の加熱された部分が溶融又は軟化するため、補強コード部材を埋設し易くなる。
(1−12)前記タイヤの製造方法は、前記コード部材巻回工程において、前記補強コード部材を前記タイヤ骨格体の外周部に押圧しながら前記タイヤ骨格体の外周部の周方向に前記補強コード部材を螺旋状に巻回するように構成することができる。
このように、補強コード部材を前記タイヤ骨格体の外周部に押圧しながら前記補強コード部材を螺旋状に巻回すると、補強コード部材のタイヤ骨格体の外周部への埋設量を調整することができる。
(1−13)前記製造方法によれば、前記コード部材巻回工程において、前記補強コード部材を前記タイヤ骨格体に巻回した後、前記タイヤ骨格体の外周部の溶融又は軟化した部分を冷却するように構成することができる。
このように、補強コード部材が埋設された後で、タイヤ骨格体の外周部の溶融又は軟化した部分を強制的に冷却することで、タイヤ骨格体の外周部の溶融又は軟化した部分を自然冷却よりも早く迅速に冷却固化することができる。タイヤ外周部を自然冷却よりも早く冷却することで、タイヤ骨格体の外周部の変形を抑制できると共に、補強コード部材が動くのを抑制することができる。
また、本発明のタイヤは第2の実施形態において説明したように以下のように構成することができる。
(2−1)本発明のタイヤは、前記製造方法において、更に、タイヤ骨格体の外周面に粒子状の投射材を衝突させて、タイヤ骨格体の外周面を粗化処理する粗化処理工程と、粗化処理された前記外周面に接合剤を介してタイヤ構成ゴム部材を積層する積層工程と、を備えて構成することができる。
このように、粗化処理工程を設けると、熱可塑性樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格体の外周面に粒子状の投射材が衝突して、当該外周面に微細な粗化凹凸が形成される。なお、タイヤ骨格体の外周面に投射材を衝突させて微細な粗化凹凸を形成する処理を粗化処理という。その後、粗化処理された外周面に接合剤を介してタイヤ構成ゴム部材が積層される。ここで、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材とを一体化するにあたり、タイヤ骨格体の外周面が粗化処理されていることから、アンカー効果により接合性(接着性)が向上する。また、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料が投射材の衝突により掘り起こされることから、外周面の濡れ性が向上する。これにより、タイヤ骨格体の外周面に接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確保することができる。
(2−2)本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体の外周面の少なくとも一部が凹凸部であり、前記凹凸部が前記粗化処理工程において粗化処理を施して作製することができる。
このように、タイヤ骨格体の外周面の少なくとも一部が凹凸部とされていても、凹凸部に投射材を衝突させることで凹部周囲(凹壁、凹底)の粗化処理がなされ、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確保することができる。
(2−3)本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体の外周部が、外周面に前記凹凸部を構成する補強層で構成されており、前記補強層が前記タイヤ骨格体を形成する樹脂材料とは同種又は別の樹脂材料で補強コードを被覆して構成された被覆コード部材を前記タイヤ骨格体の周方向に巻回して構成することができる。
このように、被覆コード部材をタイヤ骨格体の周方向に巻回して構成された補強層でタイヤ骨格体の外周部を構成することで、タイヤ骨格体の周方向剛性を向上させることができる。
(2−4) 本発明のタイヤは、前記被覆コード部材を構成する樹脂材料に熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
このように、被覆コード部材を構成する樹脂材料に熱可塑性を有する熱可塑性材料を用いることで、前記樹脂材料として熱硬化性材料を用いた場合と比べて、タイヤ製造が容易になり、リサイクルしやすくなる。
(2−5) 本発明のタイヤは、前記粗化処理工程において、前記タイヤ構成ゴム部材の積層領域よりも広い領域を粗化処理するように構成することができる。
このように、粗化処理工程において、タイヤ構成ゴム部材の積層領域よりも広い領域に粗化処理を施すと、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確実に確保することができる。
(2−6) 本発明のタイヤは、前記粗化処理工程において、算術平均粗さRaが0.05mm以上となるように前記外周面を粗化処理するように構成することができる。
このように、粗化処理工程において算術平均粗さRaが0.05mm以上となるようにタイヤ骨格体の外周面を粗化処理すると、粗化処理された外周面に接合剤を介して、例えば、未加硫又は半加硫状態のタイヤ構成ゴム部材を積層し加硫した場合に、粗化処理により形成された粗化凹凸の底まで、タイヤ構成ゴム部材のゴムを流れ込ませることができる。粗化凹凸の底まで、タイヤ構成ゴム部材のゴムを流れ込ませると、外周面とタイヤ構成ゴム部材との間に十分なアンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を向上させることができる。
(2−7) 本発明のタイヤは、前記タイヤ構成ゴム部材として、未加硫、又は半加硫状態のゴムを用いることできる。
このように、前記タイヤ構成ゴム部材として未加硫又は半加硫状態のゴムを用いると、タイヤ構成ゴム部材を加硫した際に、粗化処理によってタイヤ骨格体の外周面に形成された粗化凹凸にゴムが流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸に流れ込んだゴム(加硫済み)により、アンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を向上させることができる。
なお、加硫済みとは、最終製品として必要とされる加硫度に至っている状態をいい、半加硫状態とは、未加硫の状態よりは加硫度が高いが、最終製品として必要とされる加硫度に至っていない状態をいう。
(2−8) 本発明のタイヤは、本発明に係る熱可塑性樹脂材料を用いて形成され、外周面に粒子状の投射材を衝突させて該外周面を粗化処理した環状のタイヤ骨格体と、粗化処理された前記外周面に接合剤を介して積層されたタイヤ構成ゴム部材と、を備えるように構成することができる。
このように、粗化処理した環状のタイヤ骨格体を用いると、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度をアンカー効果によって向上させることができる。また、外周面が粗化処理されていることから、接合剤の濡れ性がよい。これにより、タイヤ骨格体の外周面に接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度が確保されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との剥離を抑制することができる。
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
まず。上述の第1の実施形態に従って、実施例及び比較例のタイヤを成形した。この際、タイヤケースを形成する材料については下記表1及び表2に記載の材料を用いた。また、実施例及び比較例と同条件で形成したタイヤケースと同じ成分組成である12.7mm×127mmの試料片を作成し、射出成形性、引張強さ、破断伸び、引張弾性率、及び破断状態について評価した。各試料片の作製方法、各評価方法及び評価条件は以下の通りである。
<試料片の作製>
A−1.ポリアミド系熱可塑性エラストマー
1)宇部興産社製、UBESTA、XPA9040X1
2)宇部興産社製、UBESTA、XPA9048X1
3)宇部興産社製、UBESTA、XPA9055X1
4)宇部興産社製、UBESTA、XPA9063X1
A−2.ポリアミド系熱可塑性樹脂(A−1のハードセグメントと同種の樹脂)
1)宇部興産社製、UBESTA、3014U
2)宇部興産社製、UBESTA、3020U
B−1)ポリエステル系熱可塑性エラストマー
1)東レ・デュポン社製、ハイトレル3046
2)東レ・デュポン社製、ハイトレル5557
3)東レ・デュポン社製、ハイトレル6347
4)東レ・デュポン社製、ハイトレル7247
5)東レ・デュポン社製、ハイトレル2751
B−2)ポリブチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂(B−1のハードセグメントと同種の樹脂)
1)ポリプラスチック社製、ジュラネックス2000
2)ポリプラスチック社製、ジュラネックス2002
−特定樹脂の弾性率−
A−2、B−2に示した各種樹脂を、12.7mm×127mm、厚さ1.6mmの金型にて射出成形し、サンプルを作製した。
島津製作所社製、島津オートグラフ、AGS−J(5KN)を用いて、得られたサンプルを引張速度1mm/minで引っ張ることにより、シートの引張弾性率を調べたところ、次のような結果が得られた。
A−2)
1)宇部興産社製、UBESTA、3014U、弾性率=1100MPa
2)宇部興産社製、UBESTA、3020U、弾性率=1000MPa
B−2)
1)ポリプラスチック社製、ジュラネックス、2000、弾性率=1100MPa
2)ポリプラスチック社製、ジュラネックス、2002、弾性率=1250MPa
上記熱可塑性エラストマーと樹脂とを、表1及び表2に示す組成で混合(質量基準)して、東洋靖機社製、LABOPLASTOMILL 50MR 2軸押出し機により混練し、ペレットを得た。なお、比較例1〜9においては、混合系とせず、表1及び表2に示す熱可塑性エラストマーのペレットを用意した。
用意した実施例、及び比較例の各ペレットを用い、次の条件で射出成形して、試料片を得た。
射出成形には、住友重工社製、SE30Dを用い、成形温度200℃〜235℃、金型温度50℃〜70℃とし、12.7mm×127mm、厚さ1.6mmの金型を用いた。
<評価方法>
1.引張強さ、破断伸び、及び、引張弾性率評価
上記射出成形で得た試料片を打ち抜き、JISK6251:1993に規定されるダンベル状試験片(5号形試験片)を作製した。
島津製作所社製、島津オートグラフ、AGS−J(5KN)を用いて、得られたダンベル状試験片を引張速度200mm/minで引っ張ることにより、試料片の引張強さ、破断伸び、及び、引張弾性率を調べた。
2.tanδ測定
レオメトリックス(株)製の動的粘弾性測定試験機「ARES III」を使用して、温度30℃、測定周波数20Hz、及び動的歪1%における損失正接(tanδ)を測定した。
実施例及び比較例の試料片の、引張強さ、破断伸び、引張弾性率、及びtanδを、表1及び表2に示す。
3.弾性率(引張弾性率)とtanδとの関係
実施例1〜4及び比較例1〜4の試料片の引張弾性率とtanδとの関係を、図7にプロットした。また、実施例5〜8及び比較例5〜9の試料片の引張弾性率とtanδとの関係を、図8にプロットした。
表1からわかるように、実施例1〜4に示す試料片は、引張弾性率が368から672まで増大しても、タイヤの転がり抵抗を示す指標となるtanδは0.07前後から、大きくても0.088であり、転がり抵抗の増大が抑制されている。実施例5〜8の試料片ついても同様に、引張弾性率が大きくなっても、tanδは増大が抑制されている。
このことは、図7及び図8からも把握される。図7及び図8には、引張弾性率に対するtanδがプロットされている。図7に示すように、比較例1〜4のプロットから把握される回帰直線(図示せず)は、傾きが大きく、引張弾性率が大きくなるにつれ、tanδも大きくなっているが、実施例1〜4のプロットから把握される回帰直線(図示せず)は、傾きが小さく、引張弾性率が大きくなっても、tanδが上がりにくいことがわかる。同様のことが、表2に示す比較例5〜9と実施例5〜8との各プロットからも確認される。
従って、実施例1〜8の試料片と同じ熱可塑性樹脂材料を用いて形成されたタイヤケースを用いて製造されたタイヤは、引張弾性率が大きくなっても、転がり抵抗の増大を抑制することができることは明らかである。従って、かかるタイヤを用いて構成される自動車は燃費が良いと推察される。
なお、実施例及び比較例の各熱可塑性樹脂材料を用いて形成した各タイヤについて、ドラム走行試験を行ったところ、走行上の安全性はいずれのタイヤも問題なかった。
10、200 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
17 タイヤケース(タイヤ骨格体)
24 シール層(シール部)
26 補強コード(補強コード部材)
26A コード部材(補強コード部材)
28 補強コード層
30 トレッド
D 補強コードの直径(補強コード部材の直径)
L 補強コードの埋設量(補強コード部材の埋設量)

Claims (6)

  1. 少なくとも、熱可塑性樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、
    前記熱可塑性樹脂材料が、分子中にハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性エラストマーと、前記熱可塑性エラストマー以外であって、前記ハードセグメントと同種の樹脂を含み、
    前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を有し、前記補強コード部材は、コード部材に前記タイヤ骨格体を形成する前記熱可塑性樹脂材料とは別体であり加硫ゴムを含まない被覆用樹脂材料が被覆された補強コード部材であるタイヤ。
  2. 前記樹脂の弾性率が100MPa以上である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記補強コード層として、周方向に巻回された前記補強コード部材を有する層のみを有する請求項又は請求項に記載のタイヤ。
  4. 前記熱可塑性樹脂材料中の前記熱可塑性エラストマーの含有量が、75質量%〜95質量%である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記熱可塑性エラストマーが、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、かつ、前記樹脂が、ポリアミド系樹脂である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. 前記熱可塑性樹脂材料は、加硫ゴムを含まない請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタイヤ。
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