JP5960875B2 - タイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、リムに装着されるタイヤにかかり、特に、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤに関する。
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが用いられている。
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのしやすさから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどをタイヤ材料として用いることが検討されている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、熱可塑性の高分子材料、特にポリエステルエラストマーを用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
特開2003−104008号公報 特開平03−143701号公報
熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤと比べて、製造が容易で且つ低コストである。また、近来、使用済みタイヤのリサイクルに対する要求も多い。しかし、従来のゴム製タイヤはゴム中に架橋構造が生成している為、リサイクルが難しく、焼却したり、破砕して道路の舗装材料に用いる等そのリサイクル用途が制限されている。これに対し、熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、リサイクルという観点においても、用途の自由度が高いといった利点がある。更に、高分子材料を用いてタイヤを製造する場合であっても、エネルギー効率や設備投資の観点等から、余り高い温度を用いなくても材料の熱溶着ができるなど生産性に対する要求も大きい。
また、熱可塑性の高分子材料を用いてタイヤを製造する場合、製造効率を高め、低コストを実現しつつ、従来のゴム製タイヤと比して遜色のない性能(タイヤの要求特性)を実現することが求められており、特に環境問題から低燃費のタイヤが求められる。前記タイヤの要求特性としては、例えば、一定範囲内の弾性率を有していること、タイヤの使用時の温度領域である30℃〜50℃の間において力学的損失係数(転がり係数:Tanδ(以下、単に「Tanδ」と称することがある。))が低いこと、および、耐熱性に優れること等のそれぞれが重要な特性の一つとなる。しかし、高分子材料において低Tanδ化と高弾性率化とは通常二者背反の関係にある。このため、これら特性を高いレベルで両立できるタイヤの開発が望まれている。
特にポリアミド系熱可塑性エラストマーの場合、ソフトセグメント成分とハードセグメント成分との比率を調整することでその弾性率を制御することが可能である。しかし、一般にポリアミド系熱可塑性エラストマーのソフトセグメント成分およびハードセグメント成分の比率を調整して弾性率を高めようとすると、これに伴って30℃〜50℃におけるTanδも増大してしまう。
また、上述の二者背反の関係にある性能を満たすために、ソフトセグメント成分とハードセグメント成分との比率を調整して弾性率を制御する場合には、合成段階において煩雑な工程を経る必要がある。更に、所望の弾性率を有しながら30℃〜50℃の温度範囲内で十分に低いTanδを有する材料を合成することは大変困難である。
本発明は、前記問題を解決すべく成されたもので、熱可塑性高分子材料を用いて形成され、高弾性で且つ損失係数が低く、更に、生産性に優れたタイヤを提供することを目的とする。
(1)本発明のタイヤは、少なくとも樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、前記樹脂材料が、分子中にハードセグメントおよびソフトセグメントを有するポリアミド系熱可塑性エラストマーと、ポリスチレン系樹脂と、を含み、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの引張弾性率(EPAE)と前記ポリスチレン系熱可塑性樹脂の引張弾性率(EPS)とが、下記式(1)を満たし、前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回している補強コード部材を有する補強コード層を有し、前記補強コード層として、周方向に巻回している前記補強コード部材を有する層のみ有し、前記樹脂材料中のポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂の総含有量は、前記樹脂材料の総量に対して、50質量%以上である。
式(1):EPAE<EPS
本発明のタイヤは、タイヤ骨格体がポリアミド系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系樹脂とで形成されているため、従来のゴム製タイヤで必須工程であった加硫工程を必須とせず、例えば、射出成形等でタイヤ骨格体を成形することができる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、熱融着性にも優れる。このため、製造工程の簡素化、時間短縮およびコストダウンなど生産性の向上を図ることができる。更に、樹脂材料をタイヤ骨格体に用いると、従来のゴム製タイヤに比してタイヤの構造を簡素化でき、その結果、タイヤの軽量化を実現することが可能となる。このため、タイヤ骨格体として形成した場合にタイヤの耐摩耗性、耐久性を向上させることができる。
前記タイヤ骨格体は、分子中にハードセグメントおよびソフトセグメントを有するポリアミド系熱可塑性エラストマーと、ポリスチレン系樹脂と、を含み、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの引張弾性率(EPAE)と前記ポリスチレン系樹脂の引張弾性率(EPS)とが、式(1):EPAE<EPSを満たす。ここで、各「引張弾性率」とは、JIS K7113:1995に規定される引張弾性率(以下、特に特定しない限り本明細書で「弾性率」とは当該引張弾性率を意味する。)を意味する。本発明のタイヤは、ポリアミド系熱可塑性エラストマーに、それよりも引張弾性率の高いポリスチレン系樹脂を混合することで、Tanδの増大を抑制しながら、タイヤ骨格体の弾性率を高めることができる。
(2)本発明のタイヤは、前記樹脂材料に、更に、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよび前記ポリスチレン系樹脂に対する相溶剤(以下、単に「相溶剤」と称する場合がある。)を含めることができる。本発明のタイヤによれば、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー及び前記ポリスチレン系樹脂に、更に、相溶剤を含めることで、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系樹脂との界面張力が低下し、ポリスチレン系樹脂の分散粒子径を小さくできる。このため、タイヤの破壊特性を向上させたり、弾性率を制御することができる。前記相溶剤としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂のいずれかと同種の分子骨格を含む樹脂(共重合体を含む)/熱可塑性エラストマー/ゴムであって、且つ、他方と相互作用を有する置換基(例えば、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基または水酸基)を有する化合物を用いることができる。
(3) 本発明のタイヤは、前記相溶剤として、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーやエポキシ基変性(メタ)アクリル樹脂等を用いることができる。例えば、前記相溶剤として酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーやエポキシ基変性(メタ)アクリル樹脂(例えば、エポキシ基変性(メタ)アクリル酸樹脂やエポキシ基変性(メタ)アクリル酸エステル等)を用いると、タイヤ骨格体の弾性率に微調整が必要な場合であっても、ポリアミドエラストマーを単独で用いた場合に比してTanδの増大を抑制しながらタイヤ骨格体の弾性率を容易に調整することができるとともに、タイヤの破壊特性等も向上させることができる。
(4)本発明のタイヤは、前記ポリスチレン系樹脂として、スチレン分子骨格を含む重合体、または、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、後述するPS樹脂やAS樹脂等が挙げられる。
(5)本発明のタイヤは、前記ポリスチレン系樹脂として、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体またはその水素添加物;あるいは、アクリロニトリル/スチレン共重合体とポリブタジエンとのブレンド体またはその水素添加物を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、後述するABS樹脂、AES樹脂等が挙げられる。
(6)本発明のタイヤは、前記樹脂材料に、更に、スチレン系熱可塑性エラストマーを含めることができる。本発明のタイヤによれば、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー及び前記ポリスチレン系樹脂に、スチレン系熱可塑性エラストマーを併用することで、例えば、タイヤ骨格体の弾性率に微調整が必要な場合であっても、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを単独で用いた場合に比してTanδの増大を抑制しながらタイヤ骨格体の弾性率を容易に調整することができる。
(7)本発明のタイヤは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーとして、後述するSEBS等を用いることができる。
(8)本発明のタイヤは、前記補強コード層において、前記タイヤ骨格体の外周部に前記補強コード部材の少なくとも一部が埋設、或いは、前記タイヤ骨格体を形成する樹脂材料と同種又は別の樹脂材料で前記補強コード部材が被覆されるように構成することができる。
以上説明したように、本発明のタイヤは、高弾性で且つ損失係数が低く、更に、生産性に優れる。
(A)は本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図であり、(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。 第1実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。 コード加熱装置、およびローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。 他の実施形態に係るタイヤの断面図である。 (A)は本発明の一実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図である。(B)はタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。 第2実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。 各実施例および比較例について弾性率とTanδとの関係を示すグラフである。
以下、本発明におけるタイヤ骨格体を構成する樹脂材料について説明し、続いて本発明のタイヤの具体的な実施形態について図を用いて説明する。
本発明のタイヤは、少なくとも樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、前記樹脂材料が、分子中にハードセグメントおよびソフトセグメントを有するポリアミド系熱可塑性エラストマーと、ポリスチレン系樹脂と、を含み、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの引張弾性率(EPAE)と前記ポリスチレン系樹脂の引張弾性率(EPS)とが、下記式(1)を満たすものである。
式(1):EPAE<EPS
ここで、本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含む概念であり、天然ゴムは含まない。
また、「熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメント若しくは高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料を意味する。但し、本明細書において「ポリスチレン系熱可塑性エラストマー」には、加硫された合成ゴムも含まれる。
一般に、熱可塑性エラストマーを用いて形成されるタイヤの弾性率を向上させるためにはエラストマー中のハードセグメントの含有率を高めることが考えられる。しかし、熱可塑性エラストマーの弾性率を向上させるためにハードセグメントの含有率を高めると、これに伴って熱可塑性エラストマーのTanδも高くなってしまう。
本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体を形成する樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーに加えてポリスチレン系樹脂を含むものである。このため、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを単体で用いハードセグメントの比率を調整した場合に比して、タイヤ骨格体のTanδを低く維持したまま高弾性率化を容易に達成することができる。これにより、転がり抵抗が低く、弾性率の高いタイヤを提供することができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーに弾性率の高いポリスチレン系樹脂を混合して弾性率を向上させる際にTanδの増大を抑制できる機構については明らかではないが、これはポリアミド系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系樹脂とが海島構造を構成することに起因していると推測される。
[樹脂材料]
前記タイヤ骨格体を構成する樹脂材料には、少なくともポリアミド系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系樹脂とが含まれる。また、以下樹脂材料において同種といった場合には、ポリアミド系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)
前記「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステルまたはポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーはハードセグメントおよびソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いてもよい。前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
一般式(1)


[一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。]
一般式(2)


[一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数3〜20のアルキレン基を表す。]
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖または炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖または炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などの炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドンなどの炭素数5〜20の脂肪族ラクタムなどを挙げることができる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R)m−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0または1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタムまたはウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
また、前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテルが挙げられ、例えば、ポリエチレングリコール、プリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアニモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等を用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
一般式(3)


[一般式(3)中、xおよびzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。]
前記一般式(3)において、xおよびzとしては、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数が更に好ましく、1〜14の整数が特に好ましく、1〜12の整数が最も好ましい。また、前記一般式(3)において、yとしては、それぞれ、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数が更に好ましく、7〜35の整数が特に好ましく、8〜30の整数が最も好ましい。
前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。この中でも、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せ、が好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが特に好ましい。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性および低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20が更に好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマーおよびソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の宇部興産(株)の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、EX9200、E50−R2、E40−S4、E55−S4、E62−S4)等を用いることができる。
−ポリアミド系熱可塑性エラストマーの物性−
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、所望のタイヤ性能を発揮するものを適宜選択することができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの弾性率(EPAE)は、タイヤ性能の観点からは、5MPa〜700MPaが好ましく、10MPa〜500MPaがさらに好ましく、10MPa〜400MPaが特に好ましい。
同様に、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーのTanδとしては、0.01〜0.12が好ましく、0.01〜0.10が更に好ましく、0.01〜0.08が特に好ましい。ここで、「損失係数(Tanδ)」は30℃,20Hz,せん断歪み1%における貯蔵剪断弾性率(G’)と損失剪断弾性率(G”)との比(G”/G‘)から算出される値であり、材料が変形する際にその材料がどの程度のエネルギーを吸収するか(熱に変わるか)を示す値である。Tanδは、値が大きい程エネルギーを吸収するため、タイヤとしての転がり抵抗が増大し、結果としてタイヤの燃費性能低下の要因となる。尚、熱可塑性エラストマーのTanδは、動的粘弾性測定装置(Dynamic−Mechanical Analysis:DMA)で測定することができる。
前記タイヤ骨格を構成する樹脂材料中のポリアミド系熱可塑性エラストマーの含有量としては、タイヤ骨格の弾性率や耐溶剤性の観点から、45〜95質量%が好ましく、50〜95質量%がさらに好ましく、50〜90質量%が特に好ましい。
また、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)としては、射出成型時の取り扱い性など製造性、Tanδ値の観点から、−70℃〜100℃が好ましく、−50℃〜50℃が更に好ましい。
前記ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)で測定することができる。
(ポリスチレン系樹脂)
前記ポリスチレン系樹脂は、前記タイヤ骨格体に含まれるポリアミド系熱可塑性エラストマーよりも弾性率の高いポリスチレン系樹脂である。
前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法で得られるものが好適に使用でき、例えばアニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン分子骨格を含む重合体や、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体等を挙げることができる。
この中でもアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体およびその水素添加物;アクリロニトリル/スチレン共重合体とポリブタジエンとのブレンド体またはその水素添加物が好ましい。前記ポリスチレン系樹脂として、具体的には、ポリスチレン(所謂PS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(所謂AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(所謂ABS樹脂(ブレンド系及び共重合系を含む)、ABS樹脂の水素添加物(所謂AES樹脂)等が挙げられ、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂が好ましく、ABS樹脂、AES樹脂が特に好ましい。
本発明における「ポリスチレン系樹脂」は、その弾性率(EPS)が、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの弾性率(EPAE)よりも大きい(式(1):EPAE<EPS)。前記ポリスチレン系樹脂の弾性率(EPS)は前記式(1)を満たすものであれば特に限定はされないが、低いTanδを維持したまま所望の弾性率を高めるという観点からは、700MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがさらに好ましく、1000MPa以上が特に好ましい。同様に、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリスチレン系樹脂の弾性率の差(EPS−EPAE)としては、100MPa以上が好ましく、500MPa以上が更に好ましく、700MPa以上が特に好ましい。
前記ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、使用するポリアミド熱可塑性エラストマーとポリスチレン系樹脂との組合せによっても異なるが、タイヤ骨格体成型時の製造性(取り扱い性)の観点から、通常、−150〜200℃であることが好ましく、−130〜150℃が更に好ましい。
同様に、前記ポリスチレン系樹脂自体のTanδとしては、0.01〜1.0が好ましく、0.01〜0.8がさらに好ましく、0.01〜0.7が特に好ましい。尚、ポリスチレン系樹脂のTanδは、動的粘弾性測定装置(Dynamic−Mechanical Analysis:DMA)で測定することができる。
前記タイヤ骨格を構成する樹脂材料中のポリスチレン系樹脂の含有量としては、タイヤ骨格の弾性率や耐溶剤性の観点から、5〜55質量%が好ましく、5〜50質量%がさらに好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。
(樹脂材料)
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系樹脂とを含む樹脂材料中において、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー(x)とポリスチレン系樹脂(y)との含有比(x:y)は、特に限定されるものではないが、海島構造の観点や耐溶剤性及び生産性の観点からは、95:5〜10:90が好ましく、90:10〜30:70が更に好ましく、90:10〜55:45が特に好ましい。特にポリアミド系熱可塑性エラストマーが海相を形成し、ポリスチレン系樹脂が島相を形成するように樹脂材料の海島構造を構成する場合には、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの含有量がポリスチレン系樹脂の含有量よりも大きいことが好ましい。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体の融点(または軟化点)としては、通常100℃〜350℃、好ましくは100℃〜250℃程度であるが、タイヤの生産性の観点から120℃〜250℃程度が好ましく、120℃〜200℃が更に好ましい。このように、融点が120〜250℃の熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性樹脂材料を用いることで、例えばタイヤの骨格体を、その分割体(骨格片)を融着して形成する場合に、120℃〜250℃の周辺温度範囲で融着された骨格体であってもタイヤ骨格片同士の接着強度が十分である。このため、本発明のタイヤは耐パンク性や耐摩耗性など走行時における耐久性に優れる。尚、前記加熱温度は、タイヤ骨格片を形成する熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性樹脂材料の融点(または軟化点)よりも10〜150℃高い温度が好ましく、10〜100℃高い温度が更に好ましい。
また、本発明において樹脂材料(タイヤ骨格体)中のポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂の総含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂材料の総量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂の総含有量が、樹脂材料の総量に対して、50質量%以上であるとポリアミド系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系樹脂とを併用した効果を十分に発揮させることができる。前記樹脂材料には、所望に応じて、ゴム、他の熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等の各種添加剤を含有させてもよい。
前記樹脂材料は、前記熱可塑性エラストマーと前記ポリスチレン系樹脂とを混合し、必要に応じて各種添加剤を添加して、公知の方法(例えば、溶融混合)で適宜混合することにより得ることができる。溶融混合して得られた熱可塑性樹脂材料は、必要に応じてペレット状にして用いることができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張弾性率(以下、特に特定しない限り本明細書で「弾性率」とは引張弾性率を意味する。)としては、100〜1000MPaが好ましく、100〜800MPaがさらに好ましく、100〜700MPaが特に好ましい。樹脂材料の引張弾性率が、100〜700MPaであると、タイヤ骨格の形状を保持しつつリム組みを効率的におこなうことができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5〜20MPaが好ましく、5〜17MPaがさらに好ましい。樹脂材料の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時などにタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10〜70%が好ましく、15〜60%がさらに好ましい。樹脂材料の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性をよくすることができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張破断伸びとしては、50%以上が好ましく、100%以上が好ましく、150%以上がさらに好ましく、200%以上が特に好ましい。樹脂材料の引張破断伸びが、50%以上であると、リム組み性がよく、衝突に対して破壊しにくくすることができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のISO75−2またはASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)としては、50℃以上が好ましく、50〜150℃が好ましく、50〜130℃がさらに好ましい。樹脂材料の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、タイヤの製造において加硫を行う場合であってもタイヤ骨格体の変形を抑制することができる。
(相溶剤)
前記樹脂材料には、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよび前記ポリスチレン系樹脂に対する相溶剤を含めることができる。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂に相溶剤を併用すると、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを単体で用いた場合に比してTanδを維持したまま弾性率を向上させることができるとともに、破断伸び等の破壊特性を向上させることができる。かかる効果を奏する機構については明らかではないが、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと前記ポリスチレン系樹脂とが形成する海島構造において、相溶剤が海相と島相との界面に存在し海相と島相との結合力が強化されるとともに、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとスチレン系樹脂との界面張力が低下し島相を微細化している為であると推測される。
ここで、前記「相溶剤」とは、前記樹脂材料中のポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂の一方と相互作用を生じる置換基を有し、且つ、他方と混ざることが可能なものを意味する。また、相溶剤は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂のそれぞれと相互作用する置換基を有するものであってもよい。
前記相互作用としては、例えば、イオン間相互作用、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力等、一般なものが含まれる。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーと相互作用を生じる置換基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。また、前記ポリスチレン系樹脂と相互作用と生じる置換基としては、例えば、ベンゼン基、メチルベンゼン基等が挙げられる。前記相溶剤としては、上述のポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂のいずれかと同種の分子骨格を含む樹脂/熱可塑性エラストマー/ゴムであって、且つ、他方と相互作用を有する置換基を有するものなどを用いることができる。
前記相溶剤としては、例えば、エポキシ基変性アクリル酸樹脂、エポキシ基変性メタクリル酸樹脂、エポキシ基変性アクリル酸エステル樹脂、エポキシ基変性メタクリル酸エステル樹脂、エポキシ基変性アクリル酸系熱可塑性エラストマー、エポキシ基変性アクリル酸エステル系熱可塑性エラストマー、エポキシ基変性メタクリル酸系熱可塑性エラストマー、エポキシ基変性メタクリル酸エステル系熱可塑性エラストマー等のエポキシ基変性(メタ)アクリル樹脂;酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、アミノ基変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、エポキシ基変性SBR、アミノ基変性SBRなどを用いることができ、エポキシ基変性(メタ)アクリル樹脂、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、アミノ基変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、エポキシ基変性(メタ)アクリル樹脂、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
前記相溶剤の含有量としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを海構造とする構造にする観点から、前記樹脂材料に対して、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜45質量%がさらに好ましく、0.5〜30質量%が特に好ましい。
(ポリスチレン系熱可塑性エラストマー)
前記樹脂材料には、更に、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含めることができる。前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、酸基によって変性されている酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、または、未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーのいずれをも用いることができる。前記酸変性または未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂と併用すると、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを単体で用いた場合に比してTanδを維持したまま弾性率を向上させることができるとともに、破断伸び等の破壊特性をも向上させることができる。これらの効果を奏する機構については明らかではないが、ポリアミド系熱可塑性エラストマーと前記ポリスチレン系樹脂とが形成する海島構造にポリスチレン系熱可塑性エラストマーが何らか作用しているものと推測される。即ち、酸変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、上述の相溶剤と同様の効果を有し、海相と島相との界面に存在することで海相と島相との結合力を強化しているものと推測される。一方、未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを用いた場合、ポリスチレン系樹脂で島相が形成されていると、島相に対して未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは混ざりやすい。この場合、島相はポリスチレン系熱可塑性エラストマーで構成されているため弾性率が高くなるが、未変性ポリスチレンが島相に混ざることによって、場合によっては島相内に池相を構成することで、弾性率を低下させ、破断伸びや引張特性等の破壊特性を向上させることができると推測される。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともポリスチレンがハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)がガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。また、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、加硫されたSBR樹脂等の合成ゴムを用いてもよい。
前記ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法で得られるものが好適に使用でき、例えばアニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。また、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、後述するように未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーを酸変性することで得られる。
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。この中でもポリスチレン/ポリブタジエンの組合せ、ポリスチレン/ポリイソプレンの組合せが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの意図しない架橋反応を抑制するため、ソフトセグメントは水素添加されていることが好ましい。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリスチレン)の数平均分子量としては、5000〜500000が好ましく、10000〜200000が好ましい。
また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000が更に好ましく、30000〜500000が特に好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマーおよびソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体[ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)等が挙げられ、SEBSが特に好ましい。
前記未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の旭化成社製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1062、H1082、H1141、H1221、H1272)、(株)クラレ製のSEBS(「ハイブラー」5127、5125等)、SEPS(「セプトン」2002、2063、S2004、S2006等)等を用いることができる。
前記未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを海とする構造にする観点から、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの含有量よりも少ないことが好ましい。前記未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、具体的には、前記樹脂材料に対して、5〜50質量%が好ましく、5〜45質量%がさらに好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。
−酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー−
「酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー」は、未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させて酸変性させたポリスチレン系熱可塑性エラストマーを意味する。酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、例えば、不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸無水物の不飽和結合部位をポリスチレン系熱可塑性エラストマーに結合(例えば、グラフト重合)させることで得ることができる。
酸性基を有する(不飽和)化合物としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
前記酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、旭化成社製、タフテック、例えば、M1943、M1911、M1913、Kraton社製、FG19181G等が挙げられる。
上述のように、前記樹脂材料は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーで構成されるマトリックス相である海相と、前記ポリスチレン系樹脂と、で構成される分散相である島相とを有する海島構造を有する態様が好ましい。
一方、海島構造において、酸変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーの酸価が高いほど島相が小さく、酸価が低いほど島相が大きくなる傾向にある。このように、島相が樹脂材料中に微分散していると、耐衝撃性が特に向上する。また、酸変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーの酸化が高いほど、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとの相互作用が大きくなり、樹脂材料の溶融粘度が増大する。酸変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系熱可塑性エラストマーを合せて使用することにより、酸化を調整することで、樹脂材料の溶融粘度が増大し過ぎず、樹脂材料の射出成形性に優れる。従って、前記樹脂材料を用いてタイヤ骨格体を作製するときに、樹脂材料を高温に加熱しなくて済むため、前記樹脂材料の過加熱損傷の発生を抑制することができる。
なお、酸変性エラストマーの島相が熱可塑性樹脂中に微分散していることは、SEM(走査型電子顕微鏡、scanning electron microscope)を用いた写真観察から確認することができる。
酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの酸価は、0mg(CHONa)/gを超え20mg(CHONa)/g以下であることが好ましく、0mg(CHONa)/gを超え17mg(CHONa)/g以下であることがさらに好ましく、0mg(CHONa)/gを超え15mg(CHONa)/g以下であることが特に好ましい。
前記酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを海とする構造にする観点から、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの含有量よりも少ないことが好ましい。前記酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、具体的には、前記樹脂材料に対して、5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がさらに好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。
[第1の実施形態]
以下に、図面に従って本発明のタイヤの第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
図1(A)に示すように、タイヤ10は、図1(B)に示すリム20のビードシート21およびリムフランジ22に接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)と、からなるタイヤケース17を備えている。
ここで、本実施形態のタイヤケース17は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(例えば、宇部興産社製、UBESTA、「XPA9048X1」:弾性率183MPa)とスチレン系樹脂としてABS樹脂(例えば、テクノポリマー(株)製、「テクノABS170」:弾性率1373MPa)とを含み、更に、スチレン系エラストマーとして未変性SEBS(例えば、旭化成ケミカルズ社製「タフテック H1041」)を用いて構成されている。
本実施形態においてタイヤケース17は、単一の熱可塑性樹脂材料(ポリアミド系熱可塑性エラストマー+ABS樹脂+未変性SEBS)で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース17の各部位毎(サイド部14、クラウン部16、ビード部12など)に異なる特徴を有する熱可塑性樹脂材料を用いてもよい。また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強してもよい。
本実施形態のタイヤケース17は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとABS樹脂と未変性SEBSとを含む樹脂材料で形成された一対のタイヤケース半体(タイヤ骨格片)17A同士を接合させたものである。タイヤケース半体17Aは、一つのビード部12と一つのサイド部14と半幅のクラウン部16とを一体として射出成形等で成形された同一形状の円環状のタイヤケース半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で接合することで形成されている。なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成してもよい。
前記樹脂材料で形成されるタイヤケース半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができる。このため、従来のようにゴムでタイヤケースを成形する場合に比較して、加硫を行う必要がなく、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間を省略することができる。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
本実施形態において、図1(B)に示すようにビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略することもできる。なお、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで形成されていてもよい。
本実施形態では、ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性に優れた材料、例えば、ゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はタイヤケース17(ビード部12)とビードシート21とが接触する部分にも形成されていてもよい。タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性に優れた材料としては、タイヤケース17を構成する樹脂材料に比して軟質な材料を用いることができる。シール層24に用いることのできるゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24は省略してもよく、前記樹脂材料よりもシール性に優れる他の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)を用いてもよい。このような他の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂やこれら樹脂とゴム若しくはエラストマーとのブレンド物等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーを用いることもでき、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、或いは、これらエラストマー同士の組み合わせや、ゴムとのブレンド物等が挙げられる。
図1に示すように、クラウン部16には、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26がタイヤケース17の周方向に巻回されている。補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、補強コード層28を形成している。補強コード層28のタイヤ径方向外周側には、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が配置されている。
図2を用いて補強コード26によって形成される補強コード層28について説明する。図2は、第1実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。図2に示されるように、補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、タイヤケース17の外周部の一部と共に図2において破線部で示される補強コード層28を形成している。補強コード26のクラウン部16に埋設された部分は、クラウン部16(タイヤケース17)を構成する樹脂材料と密着した状態となっている。補強コード26としては、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、または、スチール繊維を撚ったスチールコードなどこれら繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いることができる。なお、本実施形態において補強コード26としては、スチールコードが用いられている。
また、図2において埋設量Lは、タイヤケース17(クラウン部16)に対する補強コード26のタイヤ回転軸方向への埋設量を示す。補強コード26のクラウン部16に対する埋設量Lは、補強コード26の直径Dの1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがさらに好ましい。そして、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/2を超えると、補強コード26の寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。また、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、補強コード26が埋設されたクラウン部16上に部材が載置されても補強コード周辺部に空気が入るのを抑制することができる。なお、補強コード層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
上述のように補強コード層28のタイヤ径方向外周側にはトレッド30が配置されている。このトレッド30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
以下、本発明のタイヤの製造方法について説明する。
(タイヤケース成形工程)
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する熱可塑性樹脂材料の融点(または軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化または溶融させ、接合金型によって加圧して。タイヤケース半体を接合させてもよい。
(補強コード部材巻回工程)
次に、補強コード巻回工程について図3を用いて説明する。図3は、コード加熱装置、およびローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。図3において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、および第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60または第2のローラ64の表面は、溶融または軟化した樹脂材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置56は、第1のローラ60または第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。
また、コード加熱装置59は、熱風を生じさせるヒーター70およびファン72を備えている。また、コード加熱装置59は、内部に熱風が供給される、内部空間を補強コード26が通過する加熱ボックス74と、加熱された補強コード26を排出する排出口76とを備えている。
本工程においては、まず、コード加熱装置59のヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。次に、リール58から巻き出した補強コード26を、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、補強コード26の温度を100〜200℃程度に加熱)する。加熱された補強コード26は、排出口76を通り、図3の矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。ここで、加熱された補強コード26がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂材料が溶融または軟化し、加熱された補強コード26の少なくとも一部がクラウン部16の外周面に埋設される。このとき、溶融または軟化した樹脂材料に加熱された補強コード26が埋設されるため、樹脂材料と補強コード26とが隙間がない状態、つまり密着した状態となる。これにより、補強コード26を埋設した部分へのエア入りが抑制される。なお、補強コード26をタイヤケース17の樹脂材料の融点(または軟化点)よりも高温に加熱することで、補強コード26が接触した部分の樹脂材料の溶融または軟化が促進される。このようにすることで、クラウン部16の外周面に補強コード26を埋設しやすくなると共に、効果的にエア入りを抑制することができる。
また、補強コード26の埋設量Lは、補強コード26の加熱温度、補強コード26に作用させるテンション、および第1のローラ60による押圧力等によって調整することができる。そして、本実施形態では、補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/5以上となるように設定されている。なお、補強コード26の埋設量Lとしては、直径Dの1/2を超えることがさらに好ましく、補強コード26全体が埋設されることが最も好ましい。
このようにして、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース17のクラウン部16の外周側に補強コード層28が形成される。
次に、タイヤケース17の外周面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にトレッド30を、接着剤などを用いて接着する。なお、トレッド30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
(作用)
本実施形態のタイヤ10では、タイヤケース17がポリアミド系熱可塑性エラストマーとABS樹脂と未変性SEBSとを含む樹脂材料によって形成されているため、タイヤ骨格体の損失係数(Tanδ)が低く維持されたまま、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーを単独で用いた場合に比して弾性率が向上している。このため、タイヤ10は、弾性率が100〜700MPaの範囲内にありながら、且つ、転がり抵抗が低減されている。また、タイヤ10は従来のゴム製のタイヤに比して構造が簡易であるため重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ10は、耐摩擦性および耐久性が高い。
さらに、本実施形態のタイヤ10では、未変性SEBSを含有しているため、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとABS樹脂とのみを用いた場合に比して破壊特性が向上している。
また、本実施形態のタイヤ10では、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に前記樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26が周方向へ螺旋状に巻回されていることから耐パンク性、耐カット性、およびタイヤ10の周方向剛性が向上する。なお、タイヤ10の周方向剛性が向上することで、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクリープが防止される。
また、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視(図1に示される断面)で、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に補強コード26の少なくとも一部が埋設され且つ樹脂材料に密着していることから、製造時のエア入りが抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのが抑制される。これにより、補強コード26、タイヤケース17、およびトレッド30に剥離などが生じるのが抑制され、タイヤ10の耐久性が向上する。
このように補強コード層28が、樹脂材料を含んで構成されていると、補強コード26をクッションゴムで固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に補強コード26をタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
更に、補強コード26がスチールコードの場合に、タイヤ処分時に補強コード26を加熱によって樹脂材料から容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ10のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は加硫ゴムに比して損失係数(Tanδ)が低いため、補強コード層28が樹脂材料を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、樹脂材料は加硫ゴムに比して、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
そして、図2に示すように、補強コード26の埋設量Lが直径Dの1/5以上となっていることから、製造時のエア入りが効果的に抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのがさらに抑制される。
また、路面と接触するトレッド30をタイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性のあるゴム材で構成していることから、タイヤ10の耐摩耗性が向上する。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
またさらに、ビード部12のリム20と接触する部分に、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性のあるゴム材からなるシール層24が設けられていることから、タイヤ10とリム20との間のシール性が向上する。このため、リム20とタイヤケース17を構成する樹脂材料のみとでシールする場合と比較して、タイヤ内の空気漏れがより一層抑制される。また、シール層24を設けることでリムフィット性も向上する。
上述の実施形態では、補強コード26を加熱し、加熱した補強コード26が接触する部分のタイヤケース17の表面を溶融または軟化させる構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を加熱せずに熱風生成装置を用い、補強コード26が埋設されるクラウン部16の外周面を加熱した後、補強コード26をクラウン部16に埋設するようにしてもよい。
また、第1実施形態では、コード加熱装置59の熱源をヒーターおよびファンとしているが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を輻射熱(例えば、赤外線など)で直接加熱する構成としてもよい。
さらに、第1実施形態では、補強コード26を埋設した熱可塑性樹脂材料が溶融または軟化した部分を金属製の第2のローラ64で強制的に冷却する構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、熱可塑性樹脂材料が溶融または軟化した部分に冷風を直接吹きかけて、熱可塑性樹脂材料の溶融または軟化した部分を強制的に冷却固化する構成としてもよい。
また、第1実施形態では、補強コード26を加熱する構成としたが、例えば、補強コード26の外周をタイヤケース17と同じ樹脂材料で被覆する構成としてもよく、この場合には、被覆補強コードをタイヤケース17のクラウン部16に巻き付ける際に、補強コード26と共に被覆した樹脂材料も加熱することで、クラウン部16への埋設時におけるエア入りを効果的に抑制することができる。
また、補強コード26は螺旋巻きするのが製造上は容易だが、幅方向で補強コード26を不連続とする方法等も考えられる。
第1実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、完全なチューブ形状であってもよい。
前記完全なチューブ形状のタイヤとしては、図4に示すように、円環状とされたタイヤ骨格体をタイヤ幅方向に3本配置した態様であってもよい。図4は、他の実施形態に係るタイヤの断面図である。図4に示すように、タイヤ86は、トレッドゴム層87と、第1実施形態と同様の樹脂材料からなる円環状とされた中空のチューブ(タイヤ骨格体)88と、ベルト(補強コード)89と、リム90とを備えている。チューブ88は、タイヤ86のタイヤ幅方向に3本並んで配置されている。チューブ88の外周部には、ベルト89を埋設したトレッドゴム層87が接着されている。また、チューブ88は、チューブ88と係合する凹部を備えたリム90に装着されている。なお、このタイヤ86にはビードコアは設けられていない。
[第2の実施形態]
次に、図面に従って本発明のタイヤの製造方法およびタイヤの第2実施形態について説明する。本実施形態のタイヤは、上述の第1実施形態と同様に、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。このため、以下の図において、前記第1実施形態と同様の構成については同様の番号が付される。図5(A)は、第2実施形態のタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図であり、図5(B)は第2実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。また、図6は、第2実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
第2実施形態のタイヤは、上述の第1実施形態と同様に、タイヤケース17が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(例えば、宇部興産社製、UBESTA、「XPA9048X1」:弾性率183MPa)及びABS樹脂(例えば、テクノポリマー(株)製、「テクノABS130」:弾性率1853MPa)に、相溶剤として酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(例えば、旭化成ケミカルズ社製「タフテック M1913」)を用いて構成されている。
本実施形態においてタイヤ200は、図5および図6に示すように、クラウン部16に、被覆コード部材26Bが周方向に巻回されて構成された補強コード層28(図6では破線で示されている)が積層されている。この補強コード層28は、タイヤケース17の外周部を構成し、クラウン部16の周方向剛性を補強している。なお、補強コード層28の外周面は、タイヤケース17の外周面17Sに含まれる。
この被覆コード部材26Bは、タイヤケース17を形成する樹脂材料よりも剛性が高いコード部材26Aにタイヤケース17を形成する樹脂材料とは別体の被覆用樹脂材料27を被覆して形成されている。また、被覆コード部材26Bはクラウン部16との接触部分において、被覆コード部材26Bとクラウン部16とが接合(例えば、溶接、または接着剤で接着)されている。
また、被覆用樹脂材料27の弾性率は、タイヤケース17を形成する樹脂材料の弾性率の0.1倍から10倍の範囲内に設定することが好ましい。被覆用樹脂材料27の弾性率がタイヤケース17を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の10倍以下の場合は、クラウン部が硬くなり過ぎずリム組み性が容易になる。また、被覆用樹脂材料27の弾性率がタイヤケース17を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の0.1倍以上の場合には、補強コード層28を構成する樹脂が柔らかすぎず、ベルト面内せん断剛性に優れコーナリング力が向上する。なお、本実施形態では、被覆用樹脂材料27としてタイヤ骨格体を形成する樹脂材料と同様の材料が用いられている。
また、図6に示すように、被覆コード部材26Bは、断面形状が略台形状とされている。なお、以下では、被覆コード部材26Bの上面(タイヤ径方向外側の面)を符号26Uで示し、下面(タイヤ径方向内側の面)を符号26Dで示す。また、本実施形態では、被覆コード部材26Bの断面形状を略台形状とする構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、断面形状が下面26D側(タイヤ径方向内側)から上面26U側(タイヤ径方向外側)へ向かって幅広となる形状を除いた形状であれば、いずれの形状でもよい。
図6に示すように、被覆コード部材26Bは、周方向に間隔をあけて配置されていることから、隣接する被覆コード部材26Bの間に隙間28Aが形成されている。このため、補強コード層28の外周面は、凹凸とされ、この補強コード層28が外周部を構成するタイヤケース17の外周面17Sも凹凸となっている。
タイヤケース17の外周面17S(凹凸含む)には、微細な粗化凹凸が均一に形成され、その上に接合剤を介して、クッションゴム29が接合されている。このクッションゴム29は、径方向内側のゴム部分が粗化凹凸に流れ込んでいる。
また、クッションゴム29の上(外周面)にはタイヤケース17を形成している樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が接合されている。
なお、トレッド30に用いるゴム(トレッドゴム30A)は、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を形成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
次に本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
(骨格形成工程)
まず、上述の第1実施形態と同様にして、タイヤケース半体17Aを形成し、これを接合金型によって加熱・押圧し、タイヤケース17を形成する。
(補強コード部材巻回工程)
本実施形態におけるタイヤの製造装置は、上述の第1実施形態と同様であり、上述の第1実施形態の図3に示すコード供給装置56において、リール58にコード部材26Aを被覆用樹脂材料27(本実施形態ではタイヤケースと同じ樹脂材料)で被覆した断面形状が略台形状の被覆コード部材26Bを巻き付けたものが用いられる。
まず、ヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。リール58から巻き出した被覆コード部材26Bを、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、被覆コード部材26Bの外周面の温度を、被覆用樹脂材料27の融点(または軟化点)以上)とする。ここで、被覆コード部材26Bが加熱されることにより、被覆用樹脂材料27が溶融または軟化した状態となる。
そして被覆コード部材26Bは、排出口76を通り、紙面手前方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻回される。このとき、クラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bの下面26Dが接触する。そして、接触した部分の溶融または軟化状態の被覆用樹脂材料27はクラウン部16の外周面上に広がり、クラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bが溶着される。これにより、クラウン部16と被覆コード部材26Bとの接合強度が向上する。
(粗化処理工程)
次に、図示を省略するブラスト装置にて、タイヤケース17の外周面17Sに向け、タイヤケース17側を回転させながら、外周面17Sへ投射材を高速度で射出する。射出された投射材は、外周面17Sに衝突し、この外周面17Sに算術平均粗さRaが0.05mm以上となる微細な粗化凹凸96を形成する。
このようにして、タイヤケース17の外周面17Sに微細な粗化凹凸96が形成されることで、外周面17Sが親水性となり、後述する接合剤の濡れ性が向上する。
(積層工程)
次に、粗化処理を行なったタイヤケース17の外周面17Sに接合剤を塗布する。
なお、接合剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤、ゴム系接着剤など、特に制限はないが、クッションゴム29が加硫できる温度(90℃〜140℃)で反応することが好ましい。
次に、接合剤が塗布された外周面17Sに未加硫状態のクッションゴム29を1周分巻き付け、そのクッションゴム29の上に例えば、ゴムセメント組成物などの接合剤を塗布し、その上に加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴム30Aを1周分巻き付けて、生タイヤケース状態とする。
(加硫工程)
次に生タイヤケースを加硫缶やモールドに収容して加硫する。このとき、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96に未加硫のクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が向上する。
そして、タイヤケース17のビード部12に、樹脂材料よりも軟質である軟質材料からなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ200の完成となる。
(作用)
本実施形態のタイヤ200では、タイヤケース17がポリアミド系熱可塑性エラストマーとABS樹脂と酸変性SEBSとを含む樹脂材料によって形成されているため、タイヤ骨格体の損失係数(Tanδ)が低く維持されたまま、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーを単独で用いた場合に比して弾性率が向上している。このため、タイヤ200は、弾性率が100〜700MPaの範囲内にありながら、且つ、転がり抵抗が低減されている。また、タイヤ200は従来のゴム製のタイヤに比して構造が簡易であるため重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ200は、耐摩擦性および耐久性が高い。
さらに、本実施形態のタイヤ200では、酸変性SEBSを含有しているため、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとABS樹脂とのみを用いた場合に比して破壊特性が向上している。
本実施形態のタイヤの製造方法では、タイヤケース17とクッションゴム29およびトレッドゴム30Aとを一体化するにあたり、タイヤケース17の外周面17Sが粗化処理されていることから、アンカー効果により接合性(接着性)が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料が投射材の衝突により掘り起こされることから、接合剤の濡れ性が向上する。これにより、タイヤケース17の外周面17Sに接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度を確保することができる。
特に、タイヤケース17の外周面17Sに凹凸が構成されていても、凹部(隙間28A)に投射材を衝突させることで凹部周囲(凹壁、凹底)の粗化処理がなされ、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度を確保することができる。
一方、クッションゴム29がタイヤケース17の外周面17Sの粗化処理された領域内に積層されることから、タイヤケース17とクッションゴムとの接合強度を効果的に確保することができる。
加硫工程において、クッションゴム29を加硫した場合、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸にクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。
このような、タイヤの製造方法にて製造されたタイヤ200は、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が確保される、すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が確保される。これにより、走行時などにおいて、タイヤ200のタイヤケース17の外周面17Sとクッションゴム29との間の剥離が抑制される。
また、タイヤケース17の外周部を補強コード層28が構成していることから、外周部を補強コード層28以外のもので構成しているものと比べて、耐パンク性および耐カット性が向上する。
また、被覆コード部材26Bを巻回して補強コード層28が形成されていることから、タイヤ200の周方向剛性が向上する。周方向剛性が向上することで、タイヤケース17のクリープ(一定の応力下でタイヤケース17の塑性変形が時間とともに増加する現象)が抑制され、且つ、タイヤ径方向内側からの空気圧に対する耐圧性が向上する。
更に、補強コード層28が、被覆コード部材26Bを含んで構成されていると、コード部材26Aを単にクッションゴム29で固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に被覆コード部材26Bをタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
更に、コード部材26Aがスチールコードの場合に、タイヤ処分時に被覆コード部材26Bからコード部材26Aを加熱によって容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ200のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は加硫ゴムに比して損失係数(Tanδ)が低いため、補強コード層28が樹脂材料を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、樹脂材料は加硫ゴムに比して、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
本実施形態では、タイヤケース17の外周面17Sに凹凸を構成したが、本発明はこれに限らず、外周面17Sを平らに形成する構成としてもよい。
また、タイヤケース17は、タイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を被覆用熱可塑性材料で覆うようにして補強コード層を形成してもよい。この場合、溶融または軟化状態の被覆用熱可塑性材料を補強コード層28の上に吐出して被覆層を形成することができる。また、押出機を用いずに、溶着シートを加熱し溶融または軟化状態にして、補強コード層28の表面(外周面)に貼り付けて被覆層を形成してもよい。
上述の第2実施形態では、ケース分割体(タイヤケース半体17A)を接合してタイヤケース17を形成する構成としたが、本発明はこの構成に限らず、金型などを用いてタイヤケース17を一体的に形成してもよい。
第2実施形態のタイヤ200は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ200とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、タイヤ200は、例えば、完全なチューブ形状(例えば図4に示す形状)であってもよい。
第2実施形態では、タイヤケース17とトレッド30との間にクッションゴム29を配置したが、本発明はこれに限らず、クッションゴム29を配置しない構成としてもよい。
また、第2実施形態では、被覆コード部材26Bをクラウン部16へ螺旋状に巻回する構成としたが、本発明はこれに限らず、被覆コード部材26Bが幅方向で不連続となるように巻回する構成としてもよい。
第2実施形態では、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱可塑性材料とし、この被覆用樹脂材料27を加熱することにより溶融または軟化状態にしてクラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bを溶着する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、被覆用樹脂材料27を加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に被覆コード部材26Bを接着する構成としてもよい。
また、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、被覆コード部材26Bを加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に接着する構成としてもよい。
さらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、タイヤケース17を熱可塑性樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融または軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。
またさらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱可塑性材料とし、タイヤケース17を熱可塑性樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融または軟化状態としつつ、被覆用樹脂材料27を加熱し溶融または軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。なお、タイヤケース17および被覆コード部材26Bの両者を加熱して溶融または軟化状態にした場合、両者が良く混ざり合うため接合強度が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料、および被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27をともに熱可塑性樹脂材料とする場合には、同種の熱可塑性材料、特に同一の熱可塑性材料とすることが好ましい。
また、さらに粗化処理を行ったタイヤケース17の外周面17Sにコロナ処理やプラズマ処理等を用い、外周面17Sの表面を活性化し、親水性を高めた後に接着剤を塗布してもよい。
またさらに、タイヤ200を製造するための順序は、第2実施形態の順序に限らず、適宜変更してもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
また、本発明のタイヤは第1実施形態に示されるように以下のように構成することができる。
(1−1)本発明のタイヤは、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体の外周部に補強コード部材の少なくとも一部が埋設されるように構成することができる。
このように、補強コード部材の一部がタイヤ骨格体の外周部に埋設していると、補強コード部材巻回時にコード周辺に空気が残る現象(エア入り)を更に抑制することができる。補強コード部材周辺へのエア入りが抑制されると、走行時の入力などによって補強コード部材が動くのが抑制される。これにより、例えば、タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材全体を覆うようにタイヤ構成部材が設けられた場合、補強コード部材は動きが抑制されているため、これらの部材間(タイヤ骨格体含む)に剥離などを生じるのが抑制され耐久性が向上する。
(1−2)本発明のタイヤは、前記補強コード層の径方向外側に前記熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性を有する材料から形成されるトレッドを設けてもよい。
このように路面と接触するトレッドを熱可塑性樹脂材料よりも耐摩耗性のある材料で構成することでタイヤの耐摩耗性を更に向上させることができる。
(1−3)本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、前記補強コード部材の直径1/5以上を前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に沿って埋設させることができる。
このようにタイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で補強コード部材の直径の1/5以上がタイヤ骨格体の外周部に埋設されていると、補強コード部材周辺へのエア入りを効果的に抑制することができ、走行時の入力などによって補強コード部材が動くのをより抑制することができる。
(1−4)本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体は、径方向内側にリムのビードシートおよびリムフランジに接触するビード部を有し、前記ビード部に金属材料からなる環状のビードコアが埋設されるように構成することができる。
このように、タイヤ骨格体にリムとの嵌合部位であるビード部を設け、さらに、このビード部に金属材料からなる環状のビードコアを埋設することで、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リムに対して、タイヤ骨格体(すなわちタイヤ)を強固に保持させることができる。
(1−5)本発明のタイヤは、前記ビード部が前記リムと接触する部分に前記熱可塑性樹脂材料よりもシール性(リムとの密着性)の高い材料からなるシール部を設けることが出来る。
このように、タイヤ骨格体とリムとの接触部分に、熱可塑性樹脂材料よりもシール性の高い材料からなるシール部を設けることで、タイヤ(タイヤ骨格体)とリムとの間の密着性を向上させることができる。これにより、リムと熱可塑性樹脂材料とのみを用いた場合に比較して、タイヤ内の空気漏れを一層抑制することができる。また、前記シール部を設けることでタイヤのリムフィット性も向上させることができる。
(1−6) 本発明のタイヤは、少なくとも前記熱可塑性樹脂材料によって環状のタイヤ骨格体の一部を構成するタイヤ骨格片を形成するタイヤ骨格片形成工程と、前記タイヤ骨格片の接合面に熱を付与し対となる2以上の前記タイヤ骨格片を融着させて前記タイヤ骨格体を形成するタイヤ骨格片接合工程と、前記タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材を周方向に巻回して補強コード層を形成する補強コード部材巻回工程と、を含む製造方法によって製造することができる。
(1−7) 前記製造方法においては、前記タイヤ骨格片接合工程において、前記タイヤ骨格片の接合面を、タイヤ骨格片を構成する樹脂材料の融点(または軟化点)以上(例えば、融点(または軟化点)+10℃〜+150℃)に加熱するように構成することができる。
このように、前記分割体の接合面を、タイヤ骨格片を構成する樹脂材料の融点(または軟化点)以上に加熱すると、タイヤ骨格片同士の融着を十分に行うことができるため、タイヤの耐久性を向上させつつ、タイヤの生産性を高めることができる。
(1−8)前記タイヤの製造方法は、前記補強コード部材巻回工程において、前記タイヤ骨格片接合工程において形成された前記タイヤ骨格体の外周部を溶融または軟化させながら補強コード部材の少なくとも一部を埋設して前記タイヤ骨格体の外周部に前記補強コード部材を巻回するように構成することができる。
このように、前記タイヤ骨格体の外周部を溶融または軟化させながら補強コード部材の少なくとも一部を埋設して前記タイヤ骨格体の外周部に前記補強コード部材を巻回することで、埋設された補強コード部材の少なくとも一部と溶融または軟化した熱可塑性樹脂材料とを溶着させることができる。これにより、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視でタイヤ骨格体の外周部と補強コード部材との間のエア入りを更に抑制することができる。また、補強コード部材を埋設した部分が冷却固化されると、タイヤ骨格体に埋設された補強コード部材の固定具合が向上する。
(1−9)前記タイヤの製造方法は、前記補強コード部材巻回工程において、前記タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で前記補強コードの直径の1/5以上を前記タイヤ骨格体の外周部に埋設させるように構成することができる。
このように、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、タイヤ骨格体の外周部に補強コード部材を直径の1/5以上埋設すると、製造時の補強コード周辺へのエア入りを効果的に抑制することができ、更に、埋設された補強コード部材がタイヤ骨格体から抜け難くすることができる。
(1−10)前記タイヤの製造方法は、前記補強コード部材巻回工程において、加熱した前記補強コード部材を前記タイヤ骨格体に埋設するように構成することができる。
このように、補強コード巻回工程において、補強コード部材を加熱しながらタイヤ骨格体に埋設させると、加熱された補強コード部材がタイヤ骨格体の外周部に接触した際に接触部分が溶融または軟化するため、補強コード部材をタイヤ骨格体の外周部に埋設し易くなる。
(1−11)前記タイヤの製造方法は、前記コード部材巻回工程において、前記タイヤ骨格体の外周部の前記補強コード部材が埋設される部分を加熱するように構成することができる。
このように、タイヤ骨格体の外周部の補強コード部材が埋設される部分を加熱することで、タイヤ骨格体の加熱された部分が溶融または軟化するため、補強コード部材を埋設し易くなる。
(1−12)前記タイヤの製造方法は、前記コード部材巻回工程において、前記補強コード部材を前記タイヤ骨格体の外周部に押圧しながら前記タイヤ骨格体の外周部の周方向に前記補強コード部材を螺旋状に巻回するように構成することができる。
このように、補強コード部材を前記タイヤ骨格体の外周部に押圧しながら前記補強コード部材を螺旋状に巻回すると、補強コード部材のタイヤ骨格体の外周部への埋設量を調整することができる。
(1−13)前記製造方法によれば、前記コード部材巻回工程において、前記補強コード部材を前記タイヤ骨格体に巻回した後、前記タイヤ骨格体の外周部の溶融または軟化した部分を冷却するように構成することができる。
このように、補強コード部材が埋設された後で、タイヤ骨格体の外周部の溶融または軟化した部分を強制的に冷却することで、タイヤ骨格体の外周部の溶融または軟化した部分を自然冷却よりも早く迅速に冷却固化することができる。タイヤ外周部を自然冷却よりも早く冷却することで、タイヤ骨格体の外周部の変形を抑制できると共に、補強コード部材が動くのを抑制することができる。
また、本発明のタイヤは第2実施形態において説明したように以下のように構成することができる。
(2−1)本発明のタイヤは、前記製造方法において、更に、タイヤ骨格体の外周面に粒子状の投射材を衝突させて、タイヤ骨格体の外周面を粗化処理する粗化処理工程と、粗化処理された前記外周面に接合剤を介してタイヤ構成ゴム部材を積層する積層工程と、を備えて構成することができる。
このように、粗化処理工程を設けると、前記熱可塑性樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格体の外周面に粒子状の投射材が衝突して、当該外周面に微細な粗化凹凸が形成される。なお、タイヤ骨格体の外周面に投射材を衝突させて微細な粗化凹凸を形成する処理を粗化処理という。その後、粗化処理された外周面に接合剤を介してタイヤ構成ゴム部材が積層される。ここで、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材とを一体化するにあたり、タイヤ骨格体の外周面が粗化処理されていることから、アンカー効果により接合性(接着性)が向上する。また、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料が投射材の衝突により掘り起こされることから、外周面の濡れ性が向上する。これにより、タイヤ骨格体の外周面に接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確保することができる。
(2−2)本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体の外周面の少なくとも一部が凹凸部であり、前記凹凸部が前記粗化処理工程において粗化処理を施して作製することができる。
このように、タイヤ骨格体の外周面の少なくとも一部が凹凸部とされていても、凹凸部に投射材を衝突させることで凹部周囲(凹壁、凹底)の粗化処理がなされ、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確保することができる。
(2−3)本発明のタイヤは、前記タイヤ骨格体の外周部が、外周面に前記凹凸部を構成する補強層で構成されており、前記補強層が前記タイヤ骨格体を形成する樹脂材料とは同種または別の樹脂材料で補強コードを被覆して構成された被覆コード部材を前記タイヤ骨格体の周方向に巻回して構成することができる。
このように、被覆コード部材をタイヤ骨格体の周方向に巻回して構成された補強層でタイヤ骨格体の外周部を構成することで、タイヤ骨格体の周方向剛性を向上させることができる。
(2−4) 本発明のタイヤは、前記被覆コード部材を構成する樹脂材料に熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
このように、被覆コード部材を構成する樹脂材料に熱可塑性を有する熱可塑性材料を用いることで、前記樹脂材料として熱硬化性材料を用いた場合と比べて、タイヤ製造が容易になり、リサイクルしやすくなる。
(2−5) 本発明のタイヤは、前記粗化処理工程において、前記タイヤ構成ゴム部材の積層領域よりも広い領域を粗化処理するように構成することができる。
このように、粗化処理工程において、タイヤ構成ゴム部材の積層領域よりも広い領域に粗化処理を施すと、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を確実に確保することができる。
(2−6) 本発明のタイヤは、前記粗化処理工程において、算術平均粗さRaが0.05mm以上となるように前記外周面を粗化処理するように構成することができる。
このように、粗化処理工程において算術平均粗さRaが0.05mm以上となるようにタイヤ骨格体の外周面を粗化処理すると、粗化処理された外周面に接合剤を介して、例えば、未加硫または半加硫状態のタイヤ構成ゴム部材を積層し加硫した場合に、粗化処理により形成された粗化凹凸の底まで、タイヤ構成ゴム部材のゴムを流れ込ませることができる。粗化凹凸の底まで、タイヤ構成ゴム部材のゴムを流れ込ませると、外周面とタイヤ構成ゴム部材との間に十分なアンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を向上させることができる。
(2−7) 本発明のタイヤは、前記タイヤ構成ゴム部材として、未加硫、または半加硫状態のゴムを用いることできる。
このように、前記タイヤ構成ゴム部材として未加硫または半加硫状態のゴムを用いると、タイヤ構成ゴム部材を加硫した際に、粗化処理によってタイヤ骨格体の外周面に形成された粗化凹凸にゴムが流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸に流れ込んだゴム(加硫済み)により、アンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度を向上させることができる。
なお、加硫済みとは、最終製品として必要とされる加硫度に至っている状態をいい、半加硫状態とは、未加硫の状態よりは加硫度が高いが、最終製品として必要とされる加硫度に至っていない状態をいう。
(2−8) 本発明のタイヤは、前記樹脂材料を用いて形成され、外周面に粒子状の投射材を衝突させて該外周面を粗化処理した環状のタイヤ骨格体と、粗化処理された前記外周面に接合剤を介して積層されたタイヤ構成ゴム部材と、を備えるように構成することができる。
このように、粗化処理した環状のタイヤ骨格体を用いると、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度をアンカー効果によって向上させることができる。また、外周面が粗化処理されていることから、接合剤の濡れ性がよい。これにより、タイヤ骨格体の外周面に接合剤が均一な塗布状態で保持され、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との接合強度が確保されて、タイヤ骨格体とタイヤ構成ゴム部材との剥離を抑制することができる。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、上述の第2実施形態に従って、実施例および比較例のタイヤを成形した。この際、タイヤケースを形成する材料については下記表1〜6に記載の材料を用いた。また、各実施例および比較例について、材料の物性評価およびタイヤ性能の評価を下記に従っておこなった。
[ペレットの作製]
各実施例および比較例でタイヤケースに用いられた樹脂材料について、各材料を表1〜6に示す組成(質量基準)で混合した。次いで、東洋精機製作所「LABOPLASTOMILL 50MR」2軸押出し機により前記樹脂材料を混練(混合温度180〜200℃)し、ペレットを得た。なお、一部の比較例においては、混合系とせず、ポリアミド系熱可塑性エラストマーのペレットを用意した。
<引張強さ、破断伸び、引張弾性率、損失係数(Tanδ)の評価>
作製したペレットを用いて、住友重工社製、SE30Dを用い、射出成形を行い、成形温度215℃〜225℃、金型温度50℃とし、12.7mm×127mm、厚さ1.6mmのサンプルを得た。
各サンプルを打ち抜き、JISK6251:1993に規定されるダンベル状試料片(5号形試料片)を作製した。
次いで、島津製作所社製、島津オートグラフAGS−J(5KN)を用いて、引張速度を200mm/minに設定し、前記各ダンベル状試料片の23℃における引張強さ、破断伸び、引張弾性率、損失係数(Tanδ)を測定した。引張強さ及び破断伸びはタイヤの破壊特性の評価の指標とした。
損失係数(Tanδ)はオメトリックス社製 ARESIIIを用い、30℃,20Hz,せん断歪み1%の条件でtanδを測定した。結果を表1に示す。
また、各実施例および比較例について、弾性率とTanδとの関係を図7に示す。図7は、各実施例および比較例について弾性率とTanδとの関係を示すグラフである。




前記各表における略称の説明を下記に示す。
※ ポリアミドエラストマー
・UBESTA「XPA9040X1」宇部興産(株)製(弾性率91MPa)
・UBESTA「XPA9048X1」宇部興産(株)製(弾性率183MPa)
・UBESTA「XPA9055X1」宇部興産(株)製(弾性率303MPa)
・UBESTA「XPA9063X1」宇部興産(株)製(弾性率626MPa)
※ ポリスチレン系樹脂
・テクノABS「ABS130」テクノポリマー(株)製(ABS樹脂:弾性率1853MPa)
・テクノABS「ABS170」テクノポリマー(株)製(ABS樹脂:弾性率1373MPa)
・テクノAES「W245」テクノポリマー(株)製(AES樹脂:弾性率1665MPa)
・EXELLOY「TK10」テクノポリマー(株)製(ABS/PBT/PC樹脂:弾性率>1000MPa)
・PSJ−ポリスチレン「PS680」PSジャパン(株)製(PS樹脂:弾性率>2000MPa)
・スタイラックAS「T8707」旭化成ケミカルズ(株)製(AS樹脂:弾性率>2000MPa)
・スタイラックAS「769」旭化成ケミカルズ(株)製(AS樹脂:弾性率>2000MPa)
※ スチレン系エラストマー(SEBS)
・タフテック「M1913」旭化成ケミカルズ(株)製(酸変性SEBS(相溶剤):酸価10mg(CHONa)/g)
・タフテック「H1041」旭化成ケミカルズ(株)製(未変性SEBS)
※ 相溶剤
・レゼダ「GP−301」東亞合成(株)製(エポキシ基変性アクリル酸樹脂)
表1における比較例1〜4の結果からわかるようにポリアミドエラストマーを単独で用いた場合には、引張弾性率の向上に伴って損失係数(Tanδ)が上昇しているのがわかる。特に引張弾性率を300MPa以上とした比較例3および4では、Tanδが0.121以上と非常に高い値となっている。
これに対し、表2〜6に示すように、各実施例においては引張弾性率がおおよそ200MPa〜500MPaの範囲にありながら最高でも0.093と、弾性率を高めながらTanδの増大を抑制できていることがわかる。
実施例2,7,10,12,15,17及び20の結果から分かるように、ポリアミドエラストマーおよびスチレン系樹脂に加えて酸変性ポリスチレン系エラストマーを加えた実施例においても、ポリアミドエラストマーを単独で用いた比較例2に比して、Tanδを同等に低く維持しながら弾性率が向上していることがわかる。さらにこれら実施例においては破断伸びの値が、酸変性ポリスチレン系エラストマーを含まない実施例1,5,9,11,14,16および19のそれぞれよりも高いことが分かる。
実施例3,8,13,18および21の結果から分かるようにポリアミドエラストマーおよびスチレン系樹脂に加えて未変性ポリスチレン系エラストマーを加えた実施例においても、ポリアミドエラストマーを単独で用いた比較例2に比して、Tanδを同等に低く維持しながら弾性率が向上していることがわかる。さらにこれら実施例においても破断伸びの値が、未変性ポリスチレン系エラストマーを含まない実施例1,5,9,11,14,16および19のそれぞれよりも高いことが分かる。
実施例21〜25の結果から分かるようにポリアミドエラストマーおよびスチレン系樹脂に加えて相溶剤を加えた実施例においては、相溶剤を含まない実施例よりも更に弾性率が高いうえTanδの上昇が著しく抑制されていることが分かる。
また、図7から分かるように各比較例に比して各実施例は、弾性率を高めてもTanδが低く維持されている(Tanδの増加度が低い)ことが分かる。
更に実施例のタイヤは転がり抵抗が少なく、耐熱性に優れていた。
10,200 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
17 タイヤケース(タイヤ骨格体)
24 シール層(シール部)
26 補強コード(補強コード部材)
26A コード部材(補強コード部材)
28 補強コード層
30 トレッド
D 補強コードの直径(補強コード部材の直径)
L 補強コードの埋設量(補強コード部材の埋設量)

Claims (8)

  1. 少なくとも樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、
    前記樹脂材料が、分子中にハードセグメントおよびソフトセグメントを有するポリアミド系熱可塑性エラストマーと、ポリスチレン系樹脂と、を含み、
    前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの引張弾性率(EPAE)と前記ポリスチレン系樹脂の引張弾性率(EPS)とが、下記式(1)を満たし、
    前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回している補強コード部材を有する補強コード層を有し、前記補強コード層として、周方向に巻回している前記補強コード部材を有する層のみ有し、
    前記樹脂材料中のポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系樹脂の総含有量は、前記樹脂材料の総量に対して、50質量%以上であるタイヤ。
    式(1):EPAE<EPS
  2. 前記樹脂材料は、更に、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよび前記ポリスチレン系樹脂に対する相溶剤を含む請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記相溶剤が、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、または、エポキシ基変性(メタ)アクリル樹脂である請求項2に記載のタイヤ。
  4. 前記ポリスチレン系樹脂が、スチレン分子骨格を含む重合体、または、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記ポリスチレン系樹脂が、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体またはその水素添加物;あるいは、アクリロニトリル/スチレン共重合体とポリブタジエンとのブレンド体またはその水素添加物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. 前記樹脂材料は、更に、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタイヤ。
  7. 前記スチレン系熱可塑性エラストマーがポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)である請求項6に記載のタイヤ。
  8. 前記補強コード層において、前記タイヤ骨格体の外周部に前記補強コード部材の少なくとも一部が埋設、或いは、前記タイヤ骨格体を形成する樹脂材料と同種又は別の樹脂材料で前記補強コード部材が被覆された請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のタイヤ。
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