JP2012045634A - 切削インサート - Google Patents
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Abstract
【課題】中切削から切り込み量が極々小さな仕上げ切削でも確実な切屑処理を図る。
【解決手段】切刃4のコーナ部4A内側のすくい面2上に形成した突起部5の壁面5Dからすくい面2にかけて、コーナ部4Aの二等分線Lの両側に一対の凸部7を切刃4側に延出して形成し、これら凸部7に、コーナ部4A側を向いて切刃4側に向かうに従い互いに離間する第1壁面7Aと、コーナ部4A両端に連なる切刃4側を向く第2壁面7Bを、互いの交差稜線Mから離間するに従いすくい面2側に向かう傾斜面として形成し、交差稜線Mを突起部5のコーナ部4A側の頂部5Cより低位置で壁面5Dに交差させ、凸部7からコーナ部4Aにかけてのすくい面2に、コーナ部4Aに向けて段階的に低くなる複数段の底面8A、8Bとコーナ部4A側に向かうに従い低くなるように傾斜した複数段の壁面8C、8Dを有する階段状の凹所8を形成する。
【選択図】図8
【解決手段】切刃4のコーナ部4A内側のすくい面2上に形成した突起部5の壁面5Dからすくい面2にかけて、コーナ部4Aの二等分線Lの両側に一対の凸部7を切刃4側に延出して形成し、これら凸部7に、コーナ部4A側を向いて切刃4側に向かうに従い互いに離間する第1壁面7Aと、コーナ部4A両端に連なる切刃4側を向く第2壁面7Bを、互いの交差稜線Mから離間するに従いすくい面2側に向かう傾斜面として形成し、交差稜線Mを突起部5のコーナ部4A側の頂部5Cより低位置で壁面5Dに交差させ、凸部7からコーナ部4Aにかけてのすくい面2に、コーナ部4Aに向けて段階的に低くなる複数段の底面8A、8Bとコーナ部4A側に向かうに従い低くなるように傾斜した複数段の壁面8C、8Dを有する階段状の凹所8を形成する。
【選択図】図8
Description
本発明は、刃先交換式の旋削工具に取り付けられ、切り込み量の比較的大きい中切削から切り込み量のが極々小さい仕上げ切削においても切屑を確実に処理することが可能な切削インサートに関するものである。
このような切削インサートとして、本発明の発明者らは、特許文献1において、切刃のコーナ部内側のすくい面上に、切刃と間隔をあけて突出する突起部を形成するとともに、この突起部の壁面からすくい面にかけては、コーナ部の二等分線を挟んで両側に一対の凸部を切刃側に延出するように形成し、これら一対の凸部に、切刃のコーナ部側を向いて突起部の壁面から切刃側に向かうに従い互いに離間して延びる第1壁面と、この第1壁面に交差してコーナ部の両端部に連なる切刃側を向く第2壁面とを備えて、これら第1、第2壁面を、互いの交差稜線から離間するに従いすくい面側に向かって傾斜する傾斜面とし、この交差稜線を突起部のコーナ部側における頂部よりも低い位置で突起部の壁面に交差させた切削インサートを提案している。
このように構成された切削インサートによれば、切り込み量の小さい通常の仕上げ切削の際に切刃のコーナ部周辺で生成される切屑は、上記一対の凸部の第1壁面間に流出し、これら第1壁面に案内されて突起部の壁面に衝突させられることにより抵抗を受けてカールさせられ、処理される。ここで、この凸部は、上記第1、第2壁面の交差稜線が突起部のコーナ部側における頂部よりも低い位置で該突起部の壁面に交差させられており、言い換えればこの交差稜線と突起部の壁面との交点よりも突起部の頂部の突出高さが高くされているので、この仕上げ切削の際に生成される切屑がカールされずに突起部を乗り越えて流出するのを防ぐことができる。
また、このような仕上げ切削よりも切り込み量が比較的大きい中切削の際には、切刃のコーナ部から該コーナ部の一方の端部に連なる切刃部分に亙って切屑が生成され、こうして生成された切屑は、コーナ部の上記一方の端部側の凸部の上記第2壁面に接触させられることになるが、上記構成の切削インサートでは、この第2壁面と第1壁面との交差稜線が上述のように突起部の頂部より低い位置で該突起部の壁面に交差させられていることにより、頂部の突出高さや切刃との間隔に関わらず、この第2壁面がすくい面側に向かう角度を小さくすることができる。
従って、上記構成の切削インサートでは、この中切削の際の切屑の接触による抵抗を抑えることができ、しかも凸部が突起部の壁面から延出したものであるために、この第2壁面の突起部側において凸部に充分な肉厚を確保することができるので、この凸部の摩滅を抑制して長期に亙って安定した切屑処理を図ることができる。さらに、この第2壁面の突起部側には該突起部の壁面が屹立することになるので、第2壁面に接触した切屑をこの突起部の壁面に衝突させて確実に処理することができる。
そして、さらに本発明の発明者らは、特許文献2において、特許文献1に記載の切削インサートと同様にコーナ部内側のすくい面上に上述のような突起部と一対の凸部を設けるとともに、これら一対の凸部よりもさらにコーナ部側のすくい面上には、上記二等分線を横切るように延びる後壁部をコーナ部と凸部との中間部に有して、該コーナ部における切刃に対して凹となる凹部を形成した切削インサートを提案している。
このような切削インサートによれば、通常の仕上げ切削から中切削に対しては特許文献1に記載の切削インサートと同様の効果を得ることができるとともに、コーナ部における切刃半径すなわちコーナ半径が小さい場合において、このようなコーナ部を使用する極低切り込みの切削の際には、一対の凸部よりもコーナ部側に形成された凹部に切屑を導入して、これらコーナ部と凸部との中間部に上記二等分線を横切るように配置された凹部の後壁部に衝突させることにより、このようにコーナ部における切刃の半径が小さくても、該コーナ部と後壁部との間隔は確保してこのような極低切り込みの切屑を確実に処理することが可能となる。
しかしながら、上記コーナ部における切刃の半径が、例えば0.2mm以下程度とさらに小さくされていて、このようなコーナ部のみを使用する切り込み量の極々小さい仕上げ切削を行うような場合には、厚さや幅も極々小さい切屑が生成されるため、特許文献1に記載の切削インサートでは勿論、凹部が形成された特許文献2に記載の切削インサートでも、かかる切屑を凹部の後壁部に衝突させるだけでは十分にカールさせて確実に処理することは困難となる。
特に、このようにコーナ部における切刃半径が小さい上に、このコーナ部の両端部に連なる一対の切刃の交差角すなわち刃先角が小さい場合、コーナ部周辺におけるすくい面のスペースが限られるため、そのようなすくい面においてコーナ部の二等分線を挟んだ両側に一対の凸部を切刃側に延出するように形成すると、これらの凸部をあまりコーナ部に近づけることができなくなる。このため、これらの凸部とコーナ部との中間部に位置する上記凹部の後壁部とコーナ部との間隔が大きくなりすぎて、上述のような切り込み量の極々小さな仕上げ切削の切屑を処理することが一層困難となるおそれがある。
本発明は、このような背景の下になされたもので、切り込み量の比較的大きな中切削や切り込み量の小さな通常の仕上げ切削は勿論、コーナ半径がより小さくされて切り込み量が極々小さな仕上げ切削を行う場合でも、確実な切屑処理を図ることが可能な切削インサートを提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、インサート本体のすくい面の周縁にコーナ部を有する切刃が形成され、上記コーナ部の内側の上記すくい面上には、上記切刃との間に間隔をあけて突出する突起部が形成されているとともに、この突起部の壁面から上記すくい面にかけては、上記コーナ部の二等分線を挟んで両側に一対の凸部が上記切刃側に延出するように形成されており、これら一対の凸部は、上記切刃のコーナ部側を向いて上記突起部の壁面から上記切刃側に向かうに従い互いに離間して延びる第1壁面と、この第1壁面に交差して上記コーナ部の両端部に連なる上記切刃側を向く第2壁面とを備えていて、これら第1、第2壁面は、互いの交差稜線から離間するに従い上記すくい面側に向かって傾斜する傾斜面とされており、この交差稜線が上記突起部の上記コーナ部側における頂部よりも低い位置で該突起部の壁面に交差させられているとともに、これら一対の凸部から上記コーナ部にかけての上記すくい面には、該コーナ部に向けて段階的に低くなる複数段の底面と、これらの底面の上記コーナ部とは反対側に形成されて該コーナ部側に向かうに従い漸次低くなるように傾斜した複数段の壁面とを有する階段状の凹所が形成されていることを特徴とする。
このような切削インサートによって切り込み量が比較的大きい中切削を行う際には、特許文献1、2に記載された切削インサートと同様に、切刃のコーナ部から該コーナ部の一方の端部に連なる切刃部分に亙って生成された切屑は、コーナ部の上記一方の端部側の凸部の第2壁面に接触させられ、さらにこの第2壁面の後方側に屹立する上記突起部の壁面に衝突させられて処理することができる。このとき、凸部の第1、第2壁面の交差稜線が突起部の頂部より低い位置で該突起部の壁面に交差させられていることにより、頂部の突出高さや切刃との間隔に関わらず、この第2壁面がすくい面側に向かう角度を小さくすることができるので、中切削の際の切屑の接触による抵抗を抑えることができる。
また、このような中切削よりは切り込み量が小さい仕上げ切削の際に切刃のコーナ部周辺で生成される切屑も、特許文献1、2に記載されたのと同様に、一対の凸部の第1壁面間に流出してこれら第1壁面に案内されるように突起部の壁面に衝突させられ、カールさせられて処理される。そして、この凸部は上述のように第1、第2壁面の交差稜線が突起部のコーナ部側における頂部よりも低い位置で該突起部の壁面に交差させられていて、すなわちこの交差稜線と突起部の壁面との交点よりも突起部の頂部の突出高さが高くされているので、切屑がカールされずに突起部を乗り越えて流出するのを防ぐことができ、確実な切屑処理を図ることができる。
さらに、コーナ部の切刃半径が小さくされて、上記仕上げ切削よりも一層小さな切り込み量の仕上げ切削を行う場合、このコーナ部の切刃により生成された切屑は、特許文献2に記載の切削インサートにおいて凹部に導入されるのと同様に、上記一対の凸部からコーナ部にかけてのすくい面に形成された凹所に導入される。そして、この凹所は、コーナ部に向けて段階的に低くなる複数段の底面と、これらの底面の間に形成されてコーナ部側に向かうに従い漸次低くなるように傾斜した複数段の壁面とを有する階段状に形成されているので、かかる凹所に導入された切屑は、上記切り込み量によるその厚さや幅に応じて、この階段の各段の壁面に衝突し、あるいは壁面と底面との稜線部に摺接して抵抗を受け、カールさせられて分断処理される。
すなわち、このように一層小さな切り込み量のうちでも比較的切り込み量が大きい、極低切り込み程度の切り込み量で生成される厚さや幅も比較的大きい切屑は、階段状の凹所の複数段の底面および壁面のうちコーナ部側に位置する前段側の底面や壁面は乗り越えるものの、コーナ部とは反対側に位置するいずれかの後段側の底面に摺接して抵抗を受け、さらにこの後段側の底面のコーナ部とは反対側に連なって立ち上がる後段側の壁面に衝突してカールさせられ、分断処理される。また、たとえこのコーナ部とは反対側の壁面も乗り越えたとしても、切屑は、中切削よりは切り込み量が小さい程度の仕上げ切削の場合と同様に、一対の凸部の第1壁面に案内されるようにして突起部の壁面に衝突させられて処理される。
一方、例えばコーナ半径が0.2mm以下程度とされて、上記一層小さな切り込み量のうちでも比較的切り込み量が小さい、極々小さな切り込み量で生成される切屑は、その厚さや幅も極々小さく生成されるため、上記階段状の凹所における複数段の底面のうちでもコーナ部寄りの前段側の底面に落ち込んで摺接することにより抵抗を受けてカールさせられ、さらにこの底面のコーナ部とは反対側に連なる前段側の壁面に衝突して分断される。また、たとえこのコーナ部側の底面および壁面では十分に分断されなかったとしても、その後方すなわちコーナ部とは反対側には次の段の壁面がより高い位置に屹立するように配置されているので、この壁面に衝突させられることにより、このような極々小さな切り込み量であっても確実な切屑処理を図ることが可能となる。
しかも、上記構成の切削インサートでは、このようにコーナ半径が小さい上に、コーナ部の両端部に連なる一対の切刃の交差角も小さくて、上記一対の凸部をコーナ部に近づけることができないような場合でも、これらの凸部とコーナ部との間に形成される階段状の凹所の複数段の底面および壁面の段数を多くすることにより、コーナ部とこのコーナ部側の前段の壁面との間隔や各段の壁面同士の間隔、あるいは底面の幅が大きくなりすぎるのを防ぐことができる。このため、上述のような切り込み量の極々小さな仕上げ切削の切屑でも、これが延びきらないうちにコーナ部側のいずれかの段の底面および壁面によって確実に分断処理することが可能となる。
ここで、上記凹所の複数段の壁面は、これらの壁面が上記コーナ部側に向かうに従い漸次低くなるように傾斜する傾斜角が、互いに等しいか、または上記コーナ部側の壁面の傾斜角の方が大きくなるようにすることにより、すなわちコーナ部側の壁面の傾斜角の方が小さくならないようにすることにより、上述のように極々小さな切り込み量で生成された切屑を、傾斜角が小さくないこのコーナ部側の壁面に衝突させることによって一層確実に分断することが可能となる。
また、上記壁面は、上記すくい面に対向する平面視において、上記コーナ部の二等分線に直交するように真っ直ぐ延びていてもよいが、同平面視においてこのコーナ部の二等分線上に位置する部分が該二等分線方向に凹むように形成することにより、切屑の流出方向をこの二等分線に沿うようにして安定させることができるとともに、この壁面に衝突した切屑や、あるいは該壁面とそのコーナ部とは反対側に連なる底面との稜線部に摺接した切屑を、断面凹状に変形させることにより、かかる切屑がカールした際に一層分断させ易くすることが可能となる。
なお、上記構成の切削インサートは、上述のようにコーナ部の半径が小さい場合に効果的であり、特に上記コーナ部の半径が、いわゆるシャープコーナと称される半径0mmのものも含め、0.4mm以下の範囲とされている場合に、上述のような極々小さな切り込み量から中切削程度の切り込み量まで確実な切屑処理を図ることができて、有効である。
以上説明したように、本発明によれば、切り込み量が比較的大きな中切削を行う場合から、コーナ半径がより小さくされて極々小さな切り込み量で仕上げ切削を行う場合まででも、生成される切屑をその厚さや幅に応じて確実に処理することが可能となる。
図1ないし図9は、本発明の第1の実施形態を示すものである。本実施形態において、インサート本体1は超硬合金等の硬質材料により多角形平板状に形成されて、特に本実施形態では正三角形平板状とされており、その一対の正三角形面にすくい面2が形成されるとともに、このすくい面2の周囲に配置される逃げ面3がインサート本体1の厚さ方向(図3〜図5、図7、図9における上下方向)に平行に延びるネガティブタイプのインサートとされている。なお、このインサート本体1は、上記一対の正三角形面が略表裏反転対称形状とされるとともに、この正三角形面の中心線に対しても120°回転対称に形成され、さらに該正三角形の各角部の二等分線(後述する二等分線L)を含む上記厚さ方向に平行な平面に関しても対称な形状に形成されている。
そして、これらすくい面2と逃げ面3との交差稜線部となるすくい面2の周縁には切刃4が形成され、この切刃4はすくい面2がなす正三角形の各角部にコーナ部4Aを有しており、このコーナ部4Aは、本実施形態では上記厚さ方向に見た平面視において半径が0.4mm以下の範囲の凸円弧状をなすとともに該厚さ方向に垂直な平面上に延びている。また、切刃4は、このコーナ部4Aの両端から、上記平面視に該コーナ部4Aの接線として延びるとともに上記厚さ方向にはコーナ部4Aから離間するに従い上記厚さ方向に後退して低くなるように延びる一対の接線部4Bと、この接線部4Bに連なってコーナ部4Aから離間するに従いさらに厚さ方向に漸次後退するように傾斜する一対の傾斜部4Cと、これらの傾斜部4Cのさらに上記コーナ部4Aとは反対側に、上記平面視にこれら接線部4Bおよび傾斜部4Cと一直線上に連なるとともに上記厚さ方向には上記コーナ部4Aが延びる平面よりも一段低い厚さ方向に垂直な平面上に延びる直線部4Dとを備えている。
さらに、上記コーナ部4Aを含めた切刃4の内側のすくい面2上には、切刃4と間隔をあけて、上記厚さ方向に該すくい面2に対して突出する突起部5が形成されている。この突起部5は、上記厚さ方向に垂直な平坦面とされて切刃4よりも該厚さ方向に突出する突出高さの最も高い第1の頂部5Aと、この第1の頂部5Aから切刃4の各コーナ部4Aに向けて段差部5Bを介して厚さ方向に一段後退して、コーナ部4Aにおける切刃4の高さよりも僅かに高くされた、やはり厚さ方向に垂直な平坦面である第2の頂部5Cと、これら第1、第2の頂部5A、5Cに向けてすくい面2の内側に向かうに従い厚さ方向に漸次隆起するように傾斜した壁面5Dとを備えており、また第1の頂部5Aには、すくい面2の中央においてインサート本体1を厚さ方向に貫通するように形成された取付孔6が開口している。
なお、突起部5は、上記平面視には図2や図6に示すようにコーナ部4A側に向かうに従い先細りとなるように形成され、同平面視におけるこのコーナ部4Aの二等分線(すくい面2がなす正三角形の各角部の二等分線)Lに沿った壁面5Dの該コーナ部4Aに臨む部分および上記段差部5Bは、傾斜した円筒面状または第1、第2の頂部5A、5C側に向けて漸次縮径する円錐台面状をなしてこのコーナ部4Aに沿って湾曲する凸曲面とされていて、上述のようにすくい面2の内側に向かうに従い漸次隆起させられている。これに対して、切刃4の上記直線部4Dの内側の壁面5D部分は、該直線部4Dに沿った方向に向けては円錐台面状に凸曲する凸曲面と凹曲する凹曲面とが交互に連続しつつ、すくい面2の内側に向かうに従い第1の頂部5Aに向けて漸次隆起する傾斜面とされている。
また、すくい面2は、切刃4のコーナ部4Aおよび接線部4Bに連なる部分が、該切刃4に直交する断面において内側に向かうに従い漸次後退するポジランドを介して、このポジランドよりも急傾斜ですくい面2の内側に向かうに従い漸次後退するポジすくい面2Aとされている。さらに、切刃4の上記傾斜部4Cの内側においては、このポジすくい面2Aも該切刃4の傾斜にあわせて傾斜させられるとともに、接線部4Bから直線部4Dに向かうに従い、上記ポジランドに連なる部分は漸次傾斜が緩やかとなって上記厚さ方向に垂直なフラットランドとされる一方、このポジランドに連なる部分と切刃4との間には切刃4側に向かうに従い後退傾斜するネガランドが漸次幅広となるように形成され、切刃4のうち上記直線部4Dに連なる部分においては、これらネガランドとフラットランドおよびポジすくい面2Aが一定の傾斜および幅で延び、またこのポジすくい面2Aよりも内側には上記厚さ方向に垂直な平坦面とされたブレーカ底面2Bが形成されていて、このブレーカ底面2Bが突起部5の壁面5Dの外側縁部に交差させられている。
一方、上記コーナ部4Aの周辺において、突起部5の壁面5Dからすくい面2にかけては、上記二等分線Lを挟んで両側に一対の凸部7が切刃4側に延出するように形成されている。これらの凸部7は、切刃4のコーナ部4A側を向き、突起部5の壁面5Dから切刃4側に向かうに従い互いに対向しつつ離間して、切刃4の上記接線部4Bの中ほどに向けて延びる第1壁面7Aと、この第1壁面7Aに交差稜線Mにおいて交差して、一対の凸部7同士で互いに反対向きにそれぞれ切刃4の上記傾斜部4C側に延びる第2壁面4Bとから構成されていて、上記交差稜線M部分には丸めつけをした面取りが施されている。
さらに、この交差稜線Mは、その突起部5の壁面5Dとの交点Pが、該突起部5のコーナ部4A側における第2の頂部5Cよりも上記厚さ方向において僅かに低い位置に配置されており、すなわち当該凸部7は全体的にその上記厚さ方向における突出高さが、突起部5の特にコーナ部4A側の第2の頂部5Cよりも低くされている。また、一対の凸部7の各交点Pは、壁面5Dの周回り方向には、上記コーナ部4Aに臨む上記凸曲面部分と傾斜部4Bの内側に延びる部分との連接部近傍の凸曲面側に位置させられており、これらの凸部7の両第1壁面7A間には、突起部5先端の壁面5Dの傾斜した円筒面状または円錐台面状の上記凸曲面部分が、上記二等分線Lに沿って延びるように残されている。
なお、上記第1壁面7Aは、本実施形態では図8に示すように、突起部5の壁面5Dのうち上記凸曲面部分の湾曲方向両端側部分から、切刃4の接線部4Bと間隔をあけて、該接線部4Bの内側のポジすくい面2Aにかけて延出させられており、交差稜線Mはこのポジすくい面2Aに交点Qで交差させられている。ここで、この第1壁面7Aは、すくい面2から交差稜線M側に向かうに従い、この交差稜線Mに直交する断面において上記厚さ方向に垂直な方向に対して一定の傾斜角で傾斜する傾斜平面とされている。
一方、上記第2壁面7Bは、切刃4の傾斜部4C内側における突起部5の上記第2の頂部5Cに連なる壁面5Dから接線部4B内側の上記ポジすくい面2Aにかけて延出させられており、上記交差稜線Mに直交する断面においては、やはり該交差稜線Mから離間するに従い上記厚さ方向に垂直な方向に対して一定の傾斜角で傾斜する傾斜平面とされていて、この傾斜角は第1壁面7Aの傾斜角より小さくされている。なお、上記平面視において図8に示すようにこの第2壁面7Bは、コーナ部4Aの両端から切刃4の接線部4Bおよび傾斜部4Cに沿って離間する方向に向かうに従い、上記交差稜線Mに直交する方向の幅が漸次大きくなるとともに、ポジすくい面2Aとの交差稜線の切刃4との間隔も漸次大きくなるようにされている。
さらに、交差稜線Mは、その上記交点Q側の部分がすくい面2から概略円弧状をなして凸曲するとともに、交点P側の部分はこの交点Q側の円弧に滑らかに接して上記厚さ方向に垂直に延びる直線状とされ、第2壁面7Bも、この交差稜線Mに沿って、交点Q側では上記傾斜角で傾斜しつつ凸曲するように湾曲する円筒面あるいは円錐面等の凸曲面とされるとともに、この凸曲面から上記交点Pにかけての部分は、この凸曲面に滑らかに接して上記傾斜角のまま傾斜しつつ該交差稜線M方向には上記厚さ方向に垂直な方向に延びる傾斜平面とされていて、交点Pの上記厚さ方向への突出高さは、コーナ部4Aにおける切刃4の高さと略等しくされている。従って、この交差稜線Mは、上記第1壁面7Aに対向する方向から見たときには、長円を長軸方向に沿って分割した略半長円状を呈することになり、上記交点Pは交点Qよりも上記厚さ方向への突出高さが高くされる。
さらにまた、この第2壁面7Bは、上記平面視において切刃4の上記接線部4Bおよび傾斜部4Cに直交する断面においても、交差稜線Mから離間するに従い漸次後退するように傾斜させられており、ただし交点Q側の部分が上述のような凸曲面であることから、この断面における傾斜角はすくい面2側に向けて漸次大きくなってゆく。そして、この傾斜角が最大となる第2壁面7Bとすくい面2との交線上においても、上記断面におけるこの第2壁面7Bの傾斜角は、交差稜線Mに直交する断面における第1壁面7Aの傾斜角よりは小さくなるようにされており、従って上記切刃4に直交する断面において第2壁面7Bは、いずれの部分の傾斜も交差稜線Mに直交する断面における第1壁面7Aの傾斜より緩やかとなる。
そして、これら一対の凸部7から、切刃4のコーナ部4Aおよび接線部4Bに連なるポジすくい面2Aの間にかけてのすくい面2には、該コーナ部4A側に向けて上記厚さ方向の高さが段階的に低くなる複数段の底面8A、8Bと、これら底面8A、8Bの上記コーナ部4Aとは反対側に形成されてコーナ部4A側に向かうに従い上記厚さ方向に漸次低くなるように傾斜した複数段の壁面8C、8Dとを有する階段状の凹所8が形成されている。ここで、本実施形態の凹所8は、コーナ部4A側からすくい面2の内側に向けて順に第1、第2の2段の底面8A、8Bと同じく第1、第2の2段の壁面8C、8Dとが交互に形成された2段の階段状とされている。
この凹所8の各段の底面8A、8Bは、上記厚さ方向に垂直な平面とされている一方、各段の壁面8C、8Dは、上記二等分線Lを含んで上記厚さ方向に延びる平面に直交する傾斜平面状とされている。また、これら複数段の壁面8C、8Dのうち最後段の第2の壁面8Dのすくい面2内側に位置する、一対の凸部7の上記第1壁面7A同士の間の部分も、本実施形態では底面8A、8Bと同じく上記厚さ方向に垂直な平面状のフラット面9とされ、ただしその厚さ方向の位置は最後段の底面8Aよりもさらに一段高くされている。なお、第1の壁面8Cとそのコーナ部4Aとは反対側に連なる第2の底面8Bとの交差稜線部、および第2の壁面8Dと上記フラット面9との交差稜線部には、それぞれ断面凸円弧状の面取りが施されている。
さらに、図9に示すように上記二等分線Lを含んで上記厚さ方向に延びる平面に沿った断面において、これらの壁面8C、8Dがコーナ部4A側に向かうに従い漸次低くなるように傾斜するときの該厚さ方向に垂直な方向に対する傾斜角(本実施形態では壁面8C、8Dの底面8B、フラット面9に対する傾斜角)θは、互いに等しいか、または上記コーナ部4A側の第1の壁面8Cの傾斜角θの方がコーナ部4Aとは反対側の第2の壁面8Dより大きくなるようにされている。なお、この傾斜角θは、各段の壁面8C、8Dについて5°〜60°の範囲のそれぞれ一定角度とされている。
また、各段の壁面8C、8Dの上記厚さ方向の高さ、すなわち第1の底面8Aから第2の底面8Bまでの段差と、第2の底面8Bからフラット面9までの段差は略等しくされ、従って上記平面視における壁面8C、8Dの上記二等分線L方向の幅は、互いに等しいか、またはコーナ部4A側の第1の壁面8Cの幅が、コーナ部4Aとは反対側の第2の壁面8Dの幅よりも僅かに小さくなるようにされる。なお、本実施形態では各段の壁面8C、8Dは、図8に示すように上記平面視において上記二等分線Lに直交する方向に真っ直ぐ延びるように形成されている。さらにまた、底面8A、8Bの上記平面視における上記二等分線Lに沿った部分の幅も、互いに等しいか、またはコーナ部4A側の第1の底面8Aの幅がこれとは反対側の第2の底面8Bの幅より僅かに小さくされている。
このように構成された切削インサートにおいて、切刃4のコーナ部4Aからその一端に連なる接線部4Bおよび傾斜部4Cまでも使用するような切り込み量が比較的大きい中切削の際には、切屑はこれらコーナ部4A、接線部4B、および傾斜部4Cからすくい面2の内側に流出して、一対の凸部7のうち使用に供される切刃4側を向く凸部7の上記第2壁面7Bに接触する。ここで、この凸部7の第2壁面7Bは、その第1壁面7Aとの交差稜線Mを、上記突起部5の第2の頂部5Cよりも低い位置の交点Pでこの突起部5の壁面5Dに交差させるように形成されており、この第2壁面7Bのすくい面2に向かう方向の角度、例えば切刃4に直交する断面における傾斜角を比較的小さくすることができる。
従って、このような中切削の際の切屑はこの第2壁面7Bに接触させつつ、切屑が擦過する際の抵抗を小さく抑えることができ、これにより凸部7がこの第2壁面7Bから早期に摩滅してしまうのを防いで、長寿命の切削インサートを提供することができる。また、この凸部7は突起部5の壁面5Dから延出したものであるので、第2壁面7Bからこの突起部5の壁面5Dまでの間に充分な肉厚を確保することができ、凸部5の摩滅を一層確実に防止することができる。その一方で、こうして交点Pを第2の頂部5Cよりも低い位置に配設することにより、この第2壁面7Bの内側にはさらに突起部5の壁面5Dがその上記角度よりも急角度で屹立することになるので、第2壁面7Bに接触してある程度の抵抗が与えられた切屑は、この壁面5Dに衝突することでさらに抵抗を受けてカールさせられることになり、中切削における切屑処理性が損なわれるのを防ぐことができる。
また、このような中切削よりも切り込み量の小さい仕上げ切削において切刃4のコーナ部4Aから例えば接線部4Bの中ほどまでの間で生成される切屑は、これらコーナ部4Aおよび接線部4Bの内側のすくい面2を擦過して凹所8を乗り越え、一対の凸部7の両第1壁面7A間に流出し、上記二等分線Lに沿ってそのまま、あるいはこの第1壁面7Aに摺接して案内されるようにして、突起部5のコーナ部4Aに臨む壁面5Dの上記凸曲面部に衝突させられ、この壁面5Dから抵抗を受けてカールさせられることにより処理される。このときも、突起部5の第2の頂部5Cはコーナ部4Aおよび凸部7より僅かに突出高さが高くされているので、仕上げ切削の際に生成される肉薄で延び気味となる切屑でも、突起部5を乗り越えて流出することがなく、確実な処理を図ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、この突起部5の第1、第2の頂部5A、5Cは、上記コーナ部4A側の第2の頂部5Cに対して該コーナ部4Aと反対側の第1の頂部5Aが段差部5Bを介して一段突出させられた多段状とされているので、第2の頂部5Cの突出高さが必要以上に高くなることにより切屑が詰まり気味となって抵抗の増大を招くような事態を防止することができる一方で、たとえ延び気味の切屑がこの第2の頂部5Cを乗り越えても、その先の第1の頂部5Aに至る段差部5Bに衝突させられるので、切屑処理性が損なわれることはない。
さらにまた、このような切刃4の接線部4B中ほどまでを使用する仕上げ切削よりも低切り込みで、専ら切刃4のコーナ部4Aから接線部4Bのコーナ部4A側部分で幅や肉厚の小さい切屑が生成されるような場合には、この切屑は、切刃4から上記ポジランドおよびポジすくい面2Aを経て、凸部7よりもコーナ部4A側に位置する階段状の上記凹所8内に導かれることになる。
ここで、このような低切り込みのうちでも、コーナ部4Aから接線部4Bのコーナ部4A側部分までを使用するような、比較的切り込み量が大きい極低切り込み程度の切り込み量で生成される切屑は、幅および厚さも比較的大きくてポジすくい面2Aを擦過するうちに緩やかにカールされ易く、この凹所8の複数段の底面8A、8Bおよび壁面8C、8Dのうち、コーナ部4A側の前段の第1段目の底面8Aおよび壁面8Cは乗り越えるものの、この壁面8Cのコーナ部4Aとは反対側に連なる後段の第2段目の底面8Bに摺接して抵抗を受け、さらにこの底面8Bの後方に立ち上がる第2段目の壁面8Dに衝突してカールさせられ、分断される。
なお、このような極低切り込みの切屑が、たとえこの凹所8の第2段目の底面8Bおよび壁面8Dも乗り越えて、その後方側のフラット面9上に流出したとしても、中切削よりは切り込み量が小さい上記仕上げ切削の場合と同様に、切屑は一対の凸部7の第1壁面7Aに案内されるようにして突起部5の壁面5Dに衝突させられので、確実な切屑処理を図ることができる。
一方、このような低切り込みのうちでも、さらに切り込み量が小さく、半径が0.4mm以下とされた切刃4の専らコーナ部4Aのみが使用されるような、極々小さな切り込み量の仕上げ切削で生成される切屑は、その厚さや幅も極々小さく生成されるためにカールされ難く、ポジすくい面2Aからそのまま階段状の凹所8における複数段の底面8A、8Bのうちコーナ部4A寄りの前段側の第1の底面8Aに落ち込み、この底面8Aと摺接することによって抵抗を受けてカールさせられ、さらにこの第1の底面8Aの後方に立ち上がる前段側の第1の壁面8Cに衝突して分断される。
また、たとえこのような切屑がコーナ部4A側のこれら第1の底面8Aおよび壁面8Cによっては十分に分断されずに前段の壁面8Cを乗り越えて流出したとしても、その後方側すなわちコーナ部4Aとは反対側には、後段側の第2段目の底面8Bが延びるとともに第2段目の壁面8Dが立ち上がっているので、これら第2の壁面8Bに摺接するとともに第2の壁面8Dに衝突させられることにより、このような極々小さな切り込み量で生成される切屑を確実に処理することことが可能となる。
このように、上記構成の切削インサートによれば、切刃4のコーナ部4Aから傾斜部4Cにかけてを使用するような中切削や接線部4Bの中ほど程度までを使用する仕上げ切削は勿論、コーナ部4Aからこれに隣接する側の接線部4Bを使用する極低切り込みの仕上げ切削や、コーナ部4Aのみを使用する極々低切り込みの仕上げ切削まで、どのような切り込み量であっても切屑を確実に処理することが可能となる。そして、特にこのような効果は、上述のような極々小さな切り込み量で切刃4のコーナ部4Aが専ら使用されるような、このコーナ部4Aの半径が、いわゆるシャープコーナと称される半径0mmのものも含めて0.4mm以下、あるいは0.4mm未満の範囲とされた切削インサートに本発明を適用した場合に有効である。
また、本実施形態では、階段状をなす凹所8の複数段の壁面8C、8Dがコーナ部4A側に向かうに従い漸次低くなるように傾斜するときの上記厚さ方向に垂直な方向に対する傾斜角θが、互いに等しいか、またはコーナ部4A側の第1の壁面8Cの傾斜角θの方が大きくなるようにされている。すなわち、これら複数段の壁面8C、8Dでは、コーナ部4C側の前段の壁面4Cの傾斜角θの方が小さくならないようにされており、上述のように極々小さな切り込み量で生成されたカールされ難い切屑を、傾斜角θが小さくならないようにされたこのコーナ部4A側の壁面8Cに衝突させることによって一層確実に分断することが可能となる。
その一方で、コーナ部4Aとは反対側の後段の第2の壁面8Dの傾斜角θは、前段の壁面4Cより大きくならない傾斜角とされるので、上記極低切り込み程度の比較的カールされ易い切屑や、あるいは極々低切り込みの際に第1の底面8Aおよび壁面8Cを乗り越えてある程度の抵抗を受けた切屑が、この第2の壁面8Dに衝突する際に必要以上の抵抗や衝撃を受けるのを避けることができる。このため、このような切屑が第2の壁面8Dにおいて詰まりを生じて円滑な切屑処理を却って損ねたり切削抵抗の増大を招いたりするのも防ぐことができる。なお、本実施形態では、これら第1、第2の壁面8C、8Dが傾斜平面状とされているが、コーナ部4A側に向かうに従い上記厚さ方向に漸次低くなるように傾斜していれば、例えば凹曲面状に形成されていてもよい。
また、上記構成の切削インサートにおいては、上述のようにコーナ部4Aの半径が小さい上に、このコーナ部4Aの両端部に連なる切刃4の一対の接線部4Bないし直線部4Dの交差角が小さくて、コーナ部4A側のいすくい面2のスペースが小さく、このため上記一対の凸部7をコーナ部4Aに近づけて切屑処理を行うことが困難な場合でも、上記階段状の凹所8に形成される各段の底面8A、8Bおよび壁面8C、8Dの段数を多くすることにより、コーナ部4Aから該コーナ部4A側の前段の壁面8Cまでの間隔や、上記二等分線L方向に隣接する壁面8C、8D…同士の間隔、あるいは底面8A、8B…の上記二等分線L方向の幅が大きくなりすぎるのを防ぐことができる。
すなわち、上記第1の実施形態ではインサート本体1が正三角形平板状とされていて、その正三角形面にすくい面2が形成されており、従ってこのすくい面2の周縁に形成される切刃4も、コーナ部4Aの両端部に連なる一対の切刃4の交差角は60°であるが、例えば図10ないし図12に示す本発明の第2の実施形態の切削インサートのように、インサート本体1が、鋭角角部が60°未満の35°である菱形の平板状をなしていて、その一対の菱形面にすくい面2が形成されており、このすくい面2の周縁のうち上記鋭角角部に切刃4のコーナ部4Aが形成されている場合、特にコーナ部4Aの半径が小さいと、一対の凸部7をこのコーナ部4Aに近づけることができなくなって、図11に示すように凸部7を切刃4の上記接線部4Bと傾斜部4Cとの連接部当たりにまでしか形成することができなくなってしまう。なお、この第2の実施形態を初め、後述する第3、第4の実施形態においても、上記第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を簡略化する。
従って、これらの凸部7とコーナ部4Aとの間に形成される凹所8においても、第1の実施形態のように凹所8が第1、第2の各2段の底面8A、8Bおよび壁面8C、8Dによって構成されていたのでは、コーナ部4Aから前段の第1の壁面8Cまでの間隔や第1、第2の壁面8C、8D同士の間隔、あるいは底面8A、8Bの上記二等分線方向の幅が大きくなりすぎ、特に上述のような切り込み量の極々小さな仕上げ切削で生成されるカールされ難い切屑が延び気味となって第1の壁面8Cを乗り越えてしまい、確実な切屑処理を図ることが困難となるおそれが生じる。また、コーナ部4Aから接線部4Bのコーナ部4A側を使用するような極低切り込みの切屑も、第2の底面8Bに摺接するまでの間隔や第2の壁面2Dに衝突するまでの間隔が大きくなるため、処理が不安定となるおそれがある。
ところが、これに対して第2の実施形態では、図11および図12に示すように凹所8が第1〜第3の底面8A、8B、8Eと壁面8C、8D、8Fの3段の階段状とされており、コーナ部4Aから第1の壁面8Cまでの間隔や、この第1の壁面8Cから第2の壁面8Dまでの間隔、あるいは第2、第3の壁面8D、8F間の間隔が大きくなり過ぎるのを防ぐことができるとともに、第1〜第3の底面8A、8B、8Eの上記二等分線L方向の幅も必要以上に大きくなるのを防ぐことができる。
従って、このような第2の実施形態によれば、コーナ部4Aのみが使用されて幅や厚さの極々小さい切屑が生成される場合には、主として第1の底面8Aにより抵抗を与えるとともに第1の壁面8Cに衝突させて切屑を延びきらないうちにカール、分断させ、またたとえこの第1の壁面8Cを切屑が乗り越えても後段の第2、第3の底面8B、8Eおよび壁面8D、8Fにより確実な処理を図るとともに、これよりも生成される切屑の幅や厚さが大きい接線部4Bのコーナ部4A側の部分までの切刃4が使用されるような場合には、主として第2の底面8Bおよび壁面8Dによって切屑を分断させ、さらにこの第2の壁面8Dを切屑が乗り越えても、その後段の第3の底面8Eおよび壁面8Fによって処理し、さらに切り込み量が大きくなった場合には第3の底面8Eおよび壁面8Fと、その後方の凸部7によって処理を図るといった、切刃4の切り込み量に応じた確実な切屑処理を図ることができる。勿論、凹所8を4段以上の階段状としてもよい。
一方、これら第1、第2の実施形態では、階段状をなす凹所8の壁面8C、8D、8Fが、インサート本体1の上記厚さ方向に沿ってすくい面2に対向する平面視において図8や図12に示すように、コーナ部4Aの二等分線Lに直交する方向に真っ直ぐ延びるように形成されていたが、これを、図13および図14に示す第3の実施形態のようにコーナ部4Aがなす凸円弧とは反対に凹円弧面状をなすように形成したり、あるいは図15および図16に示す第4の実施形態のようにコーナ部4Aとは反対側に凹曲折するV字面状をなすように形成したりして、同平面視において図14や図16に示すようにコーナ部4Aの二等分線L上に位置する部分が該二等分線L方向に凹むように形成してもよい。
ここで、これら第3、第4の実施形態では、第1の実施形態と同様に凹所8が2段の底面8A、8Bおよび壁面8C、8Dによって構成されており、このうち第3の実施形態では壁面8C、8Dが略同心の凹円弧面状をなすことにより、第1の底面8Aは上記平面視において扇形を、また第2の底面8Bは径方向に幅をもった円弧面状を呈することになる。また、この第3の実施形態では、第1の壁面8Cがなす円弧の半径はコーナ部4Aの半径より小さくされる一方、第2の壁面8Dがなす円弧の半径はコーナ部4Aの半径と等しいか、これより大きくされている。ただし、これら第1、第2の壁面8C、8Dは、コーナ部4側に向かうに従い上記厚さ方向に漸次低くなるように傾斜させられているので、厳密には凹円錐面状をなすことになる。
一方、第4の実施形態では、上記平面視において第1、第2の壁面8C、8Dが上記二等分線Lに向けて切刃4の両接線部4Bに対し略垂直な方向に延びて、この二等分線L上で凹円錐面状の曲折部を介して曲折することにより、上述のような凹V字面状をなすように形成されている。従って、第1、第2の壁面8C、8Dは二等分線Lの両側でそれぞれ互いに平行に延びるようにされ、また上記平面視において第2の底面8Bはこれら第1、第2の壁面8C、8D間で幅をもった凹V面状を、第1の底面8Aはコーナ部4A側の角部よりもこれとは反対の角部の角度が大きくされた二等分線Lに対称な略四角形状を呈することになる。なお、第1、第2の壁面8C、8Dの上記二等分線L上に位置する凹円錐面状の曲折部は、同平面視において前段側の第1の壁面8Cの曲折部の方が後段側の第2の壁面8Dの曲折部よりも上記二等分線Lに直交する方向に大きく湾曲するように形成されている。
このような第3、第4の実施形態においては、こうして第1の壁面8Cが上記平面視においてコーナ部4Aの二等分線L上でこの二等分線L方向に凹むように形成されいていることにより、極々低切り込みの際に切刃4のコーナ部4Aによって生成された切屑は、上述のようにポジランドを介してポジすくい面2Aから第1の底面8Aを擦過して第1の壁面8Cに衝突する際には、この第1の壁面8Cの凹みに案内されるようにして上記二等分線L上に導かれることになる。このため、例えば倣い旋削のようにコーナ部4Aを中心として切屑の流出方向が変化するような場合に、切屑が第1の壁面8Cを乗り越えて流出しても、そのような切屑を上記二等分線Lに沿って安定して後段の第2の底面8Bおよび壁面8D側に案内して分断処理することができる。
しかも、こうして二等分線L方向に凹むように形成された第1の壁面8Cに衝突することにより、切屑は、第3の実施形態においてはその幅方向の断面が円弧状をなすように、また第4の実施形態においてはその幅方向の断面がV字状をなすように凹状に変形させられるとともに、こうして変形した切屑がその流出方向すなわち長手方向に湾曲させられてカールされるので、切屑に応力を集中させて一層分断させ易くすることができる。
なお、これらの効果は、切刃4のコーナ部4Aから該コーナ部4A側の接線部4Bまでを使用する極低切り込みの切削においても、同様に二等分線L方向に凹むように形成された第2の壁面8Dによって奏することができる。また、第2の実施形態のように、凹所8が3段以上の階段状とされている場合において、その壁面を上記平面視において上記二等分線L方向に凹むように形成してもよい。さらに、こうして凹円弧面状または凹V字面状に凹んだ第1、第2の壁面8C、8Dの上記二等分線L上の部分が、第1、第2の実施形態のように上記平面視において該二等分線Lに直交する方向に真っ直ぐ延びるように形成されていてもよい。
1 インサート本体
2 すくい面
2A ポジすくい面
2B ブレーカ底面
3 逃げ面
4 切刃
4A 切刃4のコーナ部
4B 切刃4の接線部
4C 切刃4の傾斜部
4D 切刃4の直線部
5 突起部
5A 突起部5の第1の頂部
5B 突起部5の段差部
5C 突起部5の第2の頂部
5D 突起部5の壁面
7 凸部
7A 第1壁面
7B 第2壁面
8 凹所
8A、8B、8E 凹所8の第1、第2、第3の底面
8C、8D、8F 凹所8の第1、第2、第3の壁面
9 フラット面
L コーナ部4Aの二等分線
M 第1、第2壁面7A、7Bの交差稜線
P 交差稜線Mと壁面5Bとの交点
Q 交差稜線Mとすくい面2との交点
θ 凹所8の第1、第2の壁面8A、8Bの傾斜角
2 すくい面
2A ポジすくい面
2B ブレーカ底面
3 逃げ面
4 切刃
4A 切刃4のコーナ部
4B 切刃4の接線部
4C 切刃4の傾斜部
4D 切刃4の直線部
5 突起部
5A 突起部5の第1の頂部
5B 突起部5の段差部
5C 突起部5の第2の頂部
5D 突起部5の壁面
7 凸部
7A 第1壁面
7B 第2壁面
8 凹所
8A、8B、8E 凹所8の第1、第2、第3の底面
8C、8D、8F 凹所8の第1、第2、第3の壁面
9 フラット面
L コーナ部4Aの二等分線
M 第1、第2壁面7A、7Bの交差稜線
P 交差稜線Mと壁面5Bとの交点
Q 交差稜線Mとすくい面2との交点
θ 凹所8の第1、第2の壁面8A、8Bの傾斜角
Claims (4)
- インサート本体のすくい面の周縁にコーナ部を有する切刃が形成され、上記コーナ部の内側の上記すくい面上には、上記切刃との間に間隔をあけて突出する突起部が形成されているとともに、この突起部の壁面から上記すくい面にかけては、上記コーナ部の二等分線を挟んで両側に一対の凸部が上記切刃側に延出するように形成されており、これら一対の凸部は、上記切刃のコーナ部側を向いて上記突起部の壁面から上記切刃側に向かうに従い互いに離間して延びる第1壁面と、この第1壁面に交差して上記コーナ部の両端部に連なる上記切刃側を向く第2壁面とを備えていて、これら第1、第2壁面は、互いの交差稜線から離間するに従い上記すくい面側に向かって傾斜する傾斜面とされており、この交差稜線が上記突起部の上記コーナ部側における頂部よりも低い位置で該突起部の壁面に交差させられているとともに、これら一対の凸部から上記コーナ部にかけての上記すくい面には、該コーナ部に向けて段階的に低くなる複数段の底面と、これらの底面の上記コーナ部とは反対側に形成されて該コーナ部側に向かうに従い漸次低くなるように傾斜した複数段の壁面とを有する階段状の凹所が形成されていることを特徴とする切削インサート。
- 上記凹所の複数段の壁面は、これらの壁面が上記コーナ部側に向かうに従い漸次低くなるように傾斜する傾斜角が、互いに等しいか、または上記コーナ部側の壁面の傾斜角の方が大きくなるようにされていることがを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
- 上記壁面は、上記すくい面に対向する平面視において、上記コーナ部の二等分線上に位置する部分が該二等分線方向に凹むようにされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
- 上記コーナ部の半径が0.4mm以下の範囲とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の切削インサート。
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-
2010
- 2010-08-24 JP JP2010187382A patent/JP2012045634A/ja not_active Withdrawn
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