JP2014221500A - 切削インサート - Google Patents
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Abstract
【課題】鋳物や鋼材の高低切り込み切削に亙り切屑処理性と着座安定性を確保する。
【解決手段】表裏の多角形面2の一方がすくい面、他方が着座面とされ、切刃5と間隔をあけて多角形面2に形成された第1、第2の突部8、9は切刃5より突出してインサート厚さ方向に垂直な1平面上にある頂面8A、9Aと、頂面8A、9Aに向けて多角形面2の内側に向かう周面8B、9Bを備え、第1の突部8は切刃5のコーナ刃5Aに隣接して頂面8Aと周面8Bの交差稜線8Cがコーナ刃5A側に向けて切刃5の主切刃5Bに近づく直線状部8Eを有し、第2の突部9は頂面9Aと周面9Bの交差稜線9Cが主切刃5Bの延びる方向に並び主切刃5Bに向けて凸となる少なくとも2つの凸曲線状部9E、9Fを有し、このうち凸曲線状部9E、9Fに接する接線Lがコーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bから離れるように延びている。
【選択図】図4
【解決手段】表裏の多角形面2の一方がすくい面、他方が着座面とされ、切刃5と間隔をあけて多角形面2に形成された第1、第2の突部8、9は切刃5より突出してインサート厚さ方向に垂直な1平面上にある頂面8A、9Aと、頂面8A、9Aに向けて多角形面2の内側に向かう周面8B、9Bを備え、第1の突部8は切刃5のコーナ刃5Aに隣接して頂面8Aと周面8Bの交差稜線8Cがコーナ刃5A側に向けて切刃5の主切刃5Bに近づく直線状部8Eを有し、第2の突部9は頂面9Aと周面9Bの交差稜線9Cが主切刃5Bの延びる方向に並び主切刃5Bに向けて凸となる少なくとも2つの凸曲線状部9E、9Fを有し、このうち凸曲線状部9E、9Fに接する接線Lがコーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bから離れるように延びている。
【選択図】図4
Description
本発明は、鋳鉄等の鋳物や鋼材の切削加工に用いて好適な切削インサートに関するものである。
このような鋳鉄や鋼材の切削加工に用いられる切削インサートとしては、特許文献1、2に記載されているように、多角形板状をなすインサート本体の表裏の多角形面と側面との交差稜線部に切刃が形成され、一方の多角形面がすくい面とされたときに他方の多角形面が刃先交換式バイトのインサート取付座に着座する着座面とされる両面使用可能な表裏反転対称形状の切削インサートが知られている。ここで、これら特許文献1、2に記載された切削インサートでは、上記多角形面に、その周縁に形成されたランド面と、このランド面の内側にブレーカ溝を挟んで形成された中央面と、ランド面と中央面とを連結する連結部とを形成し、これらランド面と中央面と連結部とをインサート本体の厚さ方向に同じ高さにして、着座面とされた多角形面の安定性を確保するようにしている。
また、特許文献3、4にも、両面使用可能な切削インサートにおいて着座面とされた多角形面の安定性を確保しつつ、すくい面とされた多角形面では低切り込みから高切り込みに亙って良好な切屑処理性が得られるようにした切削インサートが提案されている。これら特許文献3、4に記載された切削インサートでは、インサート本体の表裏の多角形面に切刃と間隔をあけてボス面が形成され、このボス面が多角形面に対向する平面視において主切刃の部分では凹凸の波形とされる一方、コーナ刃の部分では、特許文献3に記載の切削インサートにおいてはコーナ刃に向かうに従い先細りとなるように、また特許文献4に記載された切削インサートにおいては略円形のドット部となるように形成されている。
ところが、特許文献1、2に記載された切削インサートのようにインサート本体の多角形面に形成された中央面がランド面とインサート厚さ方向に同じ高さの連結部によって連結されていると、この多角形面がすくい面とされたときにブレーカ溝に収容された切屑が行き場を無くして詰まりを生じるおそれがある。また、特許文献4に記載されているようにコーナ刃の部分でボス面が略円形であると、ボス面とコーナ刃との間の間隔が大きくなり、低切り込みの切削加工において生成される切屑の処理性が損なわれるおそれがあるとともに、切削に使用されるコーナ刃の裏側における着座面とされた多角形面の着座安定性が損なわれて、特に鋳鉄等の鋳物の切削を行うときにインサート本体に断続的な振動を生じて切削精度が損なわれるおそれがある。
一方、特許文献3に記載された切削インサートのように、ボス面がコーナ刃の部分で先細り形状とされている場合には、ボス面をコーナ刃により近づけることができて、低切り込みの際の切屑処理性や切削に使用されるコーナ刃の裏側の着座面における安定性を確保することはできる。しかしながら、この特許文献3に記載された切削インサートでは、上述のように主切刃の部分ではボス面が凹凸の波形とされているので、例えば比較的高い切り込みで鋼材の切削加工を行う場合に、切削に使用される主切刃の裏側で着座安定性を確保しようとして波形を主切刃に近づけると、すくい面とされた多角形面において主切刃により生成された切屑が詰まりを生じるおそれがあり、またこのような切屑詰まりを防ごうとして波形を主切刃から遠ざけると、着座面とされる多角形面の着座安定性が損なわれることになる。
本発明は、このような背景の下になされたもので、鋳物や鋼材の切削加工に用いて低切り込みから高切り込みに亙り良好な切屑処理性を確保することができるとともに、着座安定性にも優れた切削インサートを提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の切削インサートは、表裏の多角形面と、これらの多角形面の周りに配置される側面とを有する多角形板状のインサート本体を備え、上記多角形面のそれぞれと上記側面との交差稜線部には切刃が形成され、上記切刃は、上記インサート本体の表裏に位置する上記多角形面の少なくとも1つずつの角部に配置されて該多角形面に対向するインサート厚さ方向から見た平面視に凸曲線状をなすコーナ刃と、このコーナ刃の少なくとも一端から延びる主切刃とを備え、上記多角形面は互いに、一方の多角形面がすくい面とされたときに他方の多角形面が着座面とされる切削インサートであって、上記多角形面にはそれぞれ、該多角形面から上記インサート厚さ方向に突出する第1、第2の突部が上記切刃と間隔をあけて形成されていて、上記第1、第2の突部は、上記多角形面のそれぞれにおいて、該多角形面の上記切刃よりも突出して上記インサート厚さ方向に垂直な1つの平面上に配置される頂面と、各多角形面から上記頂面に向かうに従い該多角形面の内側に向かうように傾斜する周面とを備えており、上記第1の突部は、上記第2の突部よりも上記コーナ刃に隣接して形成され、上記頂面と上記周面との交差稜線が上記平面視において上記コーナ刃側に向かうに従い上記主切刃に近づくように延びる直線状部を有しているとともに、上記第2の突部は、上記頂面と上記周面との交差稜線が上記平面視において上記主切刃が延びる方向に並んでそれぞれが該主切刃に向けて凸となる少なくとも2つの凸曲線状部を有していて、上記平面視においてこのうち2つの凸曲線状部に接する接線が上記コーナ刃側に向かうに従い上記主切刃から離れるように延びていることを特徴とする。
このように構成された切削インサートにおいては、まず表裏の多角形面に形成される第1、第2の突部が側面との交差稜線部に形成される切刃と間隔をあけているので、すくい面とされた多角形面において切刃により生成された切屑が行き場を無くして詰まりを生じるようなことがない。また、これら第1、第2の突部のうちコーナ刃に隣接した第1の突部は、その頂面と周面との交差稜線が上記平面視において切刃のコーナ刃側に向かうに従い主切刃に近づくように延びる直線状部を有しているので、低切り込みの際にコーナ刃周辺で生成される切屑をこの直線状部に連なる第1の突部の周面に摺接させることによって確実に処理することができるとともに、第1の突部をコーナ刃により近接した位置まで延設することができ、切削に使用されるコーナ刃の裏面において着座安定性を確保して鋳物の切削の際に断続的な振動が生じるのを防ぐことができる。
その一方で、第1の突部に対してコーナ刃から離れた位置に形成される第2の突部は、その頂面と周面との交差稜線部が上記平面視において主切刃が延びる方向に並んでそれぞれが該主切刃に向けて凸となる少なくとも2つの凸曲線状部を有しており、同平面視においてこのうち2つの凸曲線状部に接する接線はコーナ刃側に向かうに従い主切刃から離れるように延びているので、主切刃のある程度の部分を使用して切削加工を行う場合に、着座面とされる多角形面においてはコーナ刃とは反対側の凸曲線状部に連なる第2の突部の頂面を該多角形面の外周側に近づけて着座安定性を確保することができるとともに、すくい面とされる多角形面ではコーナ刃側の凸曲線状部に連なる第2の突部の周面と主切刃との間に間隔をあけて切屑詰まりが生じるのを防ぐことができる。
そして、このような場合にコーナ刃から主切刃に亙って生成された切屑は、第1の突部のコーナ刃側に向かうに従い主切刃に近づく直線状部に連なる周面と、第2の突部の周面のうちコーナ刃側に向かうに従い主切刃から離れる上記接線とこの接線に接する上記2つの凸曲線状部との接点に連なる部分とに摺接し、V字状に折り曲げられるようにして分断されて処理される。このように、切屑は第2の突部の周面には略線接触で摺接することになるので、切削抵抗の増大を防ぐことができる。従って、上記構成の切削インサートによれば、鋳物や鋼材の切削加工において低切り込みから高切り込みの加工条件でも、インサート本体の着座安定性を確保するとともに優れた切屑処理性を得ることができ、円滑な切削加工を行うことが可能となる。
ここで、上記第2の突部の2つの凸曲線状部は、上記平面視における曲率半径が互いに等しくてもよく、またコーナ刃側に位置する凸曲線状部の曲率半径がコーナ刃とは反対側に位置する凸曲線状部の曲率半径より大きくてもよいが、これとは逆にコーナ刃側に位置する凸曲線状部を、コーナ刃とは反対側に位置する凸曲線状部よりも、上記平面視における曲率半径が小さくなるようにすることにより、コーナ刃とは反対側の凸曲線状部では主切刃に近い部分の頂面の面積を大きくして着座安定性の一層の向上を図ることができるとともに、コーナ刃側の凸曲線状部では主切刃や第1の突部との間隔を確保して切屑詰まりを確実に防止することが可能となる。
また、上記第2の突部の頂面と周面との上記交差稜線に、上記平面視において主切刃に対して凹となる凹曲線状部を上記2つの凸曲線状部の間に有するようにして、この凹曲線状部を上記平面視における2つの凸曲線状部の中心よりも主切刃の近くに配置することにより、第2の突部の頂面における主切刃に近接した部分の面積をさらに大きくすることができて、着座安定性をより一層向上させることができる。さらに、上記平面視において第2の突部の2つの凸曲線状部に接する上記接線が、第1の突部の上記直線状部に交差するように配置することにより、高切り込みの際の切屑を第1、第2の突部の双方に摺接させてより確実に分断処理することが可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、鋳物や鋼材の切削加工において、着座面とされる多角形面では突部の頂面をコーナ刃や主切刃に近づけて着座安定性の向上を図り、特に鋳物の切削の際に断続的振動によって切削精度が損なわれるのを防ぐことができるとともに、すくい面とされる多角形面では切屑詰まりを防ぎつつ、低切り込みから高切り込みに亙って安定的かつ良好に切屑を処理することができる。
図1ないし図8は、本発明の一実施形態を示すものであって、切り込み量が中程度の旋削加工に専ら使用される切削インサートに本発明を適用したものである。本実施形態においてインサート本体1は、超硬合金等の硬質材料により形成されて、多角形板状、詳しくは四角形板状、より詳しくは菱形平板状をなしており、表裏の多角形面2とその周囲に配置される本実施形態では4つの側面3とを備えている。多角形面2がなす菱形の鋭角コーナ部Aの挟角は、本実施形態では80°とされている。これら表裏の多角形面2は、一方が切削に使用されるすくい面とされたときに、他方が刃先交換式バイト等の切削工具の工具本体に形成されたインサート取付座への着座面とされる。
また、インサート本体1には、表裏の多角形面2がなす菱形の中心を通るインサート中心線Cを中心とした断面円形の取付孔4が、このインサート中心線C方向すなわちインサート厚さ方向(図3における上下方向)にインサート本体1を貫通するように形成されている。本実施形態では、インサート本体1が、このインサート中心線C回りに180°回転対称な形状に略形成されるとともに、インサート厚さ方向に多角形面2に対向する平面視において多角形面2がなす菱形の対角線に沿った2つの平面に関してそれぞれ面対称形状とされている。さらに、インサート本体1は、これらの平面上に位置してインサート厚さ方向の中央でインサート中心線Cに直交する2つの直線に関してもそれぞれ180°回転対称形状とされ、すなわち表裏の多角形面2に関して表裏反転対称な形状に形成されている。
さらにまた、表裏の多角形面2と側面3との交差稜線部にはそれぞれ切刃5が形成されている。ここで、多角形面2の周回り方向に隣接する側面3同士の交差稜線部は凸曲面状に形成されており、これに伴い菱形をなす多角形面2のそれぞれ表裏に位置する各一対の鋭角コーナ部Aと鈍角コーナ部Bは上記平面視において図2および図4に示すように凸曲線状に形成される。本実施形態では、上記凸曲面は凸円筒面であって鋭角コーナ部Aと鈍角コーナ部Bは凸円弧状に形成され、切刃5は、このうち一対の鋭角コーナ部Aにコーナ刃5Aをそれぞれ備えるとともに、これらのコーナ刃5Aの両端から上記平面視に直線状に延びる1つのコーナ刃5Aに対して2つずつの主切刃5Bを備えている。
従って、側面3は、表裏の多角形面2の一方がすくい面とされたときの切刃5の逃げ面とされる。ここで、この逃げ面とされる側面3は、隣接する側面3同士の上記交差稜線部も含め、インサート厚さ方向に向けてインサート中心線Cに平行に延びるように形成されており、本実施形態の切削インサートは切刃5に逃げ角が付されていないネガティブタイプのインサートとされている。また、切刃5は、表裏の多角形面2のそれぞれにおいて、インサート厚さ方向に垂直な1つの平面上に位置するようにされている。
さらに、多角形面2の外周縁部には、切刃5の内側に連なるランド6と、このランド6のさらに内側に連なるポジすくい面7Aが形成されている。これらランド6とポジすくい面7Aは、それぞれ上記平面視における幅が一定とされて図2に示すように多角形面2の外周縁部を1周するように形成されており、同平面視におけるポジすくい面7Aの幅はランド6の幅よりも大きくされている。
また、本実施形態では、図5ないし図7に示すように、ランド6は多角形面2の内側に向かうに従い一定の傾斜角でインサート厚さ方向に後退傾斜するポジランドとされるとともに、ポジすくい面7Aもやはり多角形面2の内側に向かうに従い一定の傾斜角でインサート厚さ方向に後退傾斜するように形成されている。ただし、このポジすくい面7Aがインサート厚さ方向に垂直な平面に対してなす傾斜角は、ランド6がなす傾斜角よりも大きくされている。さらに、上記ポジすくい面7Aの内側において多角形面2には、本実施形態ではインサート厚さ方向に垂直な平面状のフラットすくい面7Bが形成されている。
そして、このフラットすくい面7Bのさらに内側の多角形面2には、いずれも切刃5と間隔をあけてフラットすくい面7Bからインサート厚さ方向に突出するように、上記コーナ刃5Aに隣接した位置には第1の突部8が形成されるとともに、コーナ刃5Aから離間して該コーナ刃5Aの両端から延びる2つの主切刃5Bに隣接する位置には第2の突部9がそれぞれ形成されている。従って、1つの多角形面2には、一対の鋭角コーナ部Aのそれぞれに1つずつの合計2つの第1の突部8と2つずつの合計4つの第2の突部9が形成され、1つのインサート本体1では合計4つの第1の突部8と合計8つの第2の突部9が形成される。
これら第1、第2の突部8、9はそれぞれ、インサート厚さ方向に垂直な平面状の頂面8A、9Aと、フラットすくい面7Bからこの頂面8A、9Aに延びる周面8B、9Bとを備えている。頂面8A、9Aは、表裏の多角形面2のそれぞれにおいて、切刃5が位置するインサート厚さ方向に垂直な上記平面よりもインサート厚さ方向に突出した、第1、第2の突部8、9同士で1つの平面上に位置していて、インサート厚さ方向に互いに等しい突出高さとされるとともに、多角形面2において最も突出している。
また、周面8B、9Bは、図5ないし図7に示したように互いに等しい一定の傾斜角で頂面8A、9Aに向かうに従い多角形面2の内側に向かうように傾斜している。なお、これらの周面8B、9Bがインサート厚さ方向に垂直な平面に対してなす傾斜角は、ランド6およびポジすくい面7Aがそれぞれインサート厚さ方向に垂直な平面に対してなす傾斜角よりも大きくされている。
従って、本実施形態では、このように周面8B、9Bが互いに等しい一定の傾斜角で傾斜するとともに、頂面8A、9Aとフラットすくい面7Bとが互いに平行となることにより、周面8B、9Bの上記平面視における幅は互いに等しい一定幅となる。また、第1、第2の突部8、9の頂面8A、9Aと周面8B、9Bとの交差稜線8C、9Cは、周面8B、9Bとフラットすくい面7Bとの交差稜線8D、9Dに対して、それぞれ一回り小さな略相似形をなすことになる。
第1の突部8の頂面8Aは、上記平面視においてコーナ刃5A側を向く部分が該コーナ刃5Aに向かうに従い先細りとなる二等辺三角形状をなしており、この頂面8Aと周面8Bとの上記交差稜線8Cは、上記二等辺三角形の二等辺の部分に、コーナ刃5A側に向かうに従い周面8Bが向いた側の主切刃5Bに近づくように延びる直線状部8Eをそれぞれ有している。なお、これらの直線状部8Eが上記平面視になす挟角は、多角形面2の鋭角コーナ部Aの挟角よりも小さくされて、本実施形態では50°とされている。
また、これらの直線状部8Eが交差する上記二等辺三角形のコーナ刃5A側を向く頂点の部分では、周面8Bは頂面8Aに向かうに従い漸次縮径する凸円錐台面状とされ、従ってこの頂点部分において交差稜線8C、8Dは凸円弧状とされる。さらに、上記直線状部8Eのコーナ刃5Aとは反対側の部分でも周面8Bは同様の凸円錐台面状とされて交差稜線8C、8Dは凸円弧状をなしている。ただし、交差稜線8C、8Dがコーナ刃5A側の頂点部分でなす凸円弧の半径は、コーナ刃5Aとは反対側の部分でなす凸円弧の半径よりも十分小さく、またコーナ刃5Aが上記平面視になす凸円弧の半径よりも小さくされている。
なお、1つの多角形面2において合計2つ形成される第1の突部8と取付孔4の開口部との間には、頂面8A、9Aよりも一段凹むとともにフラットすくい面7Bよりはインサート厚さ方向に突出した凹面部が形成されており、一方の第1の突部8側の凹面部には多角形面2の鋭角コーナ部Aにおける上記挟角を示す指標10Aが、また他方の第1の突部8側の凹面部には切削インサートの種別を示す指標10Bが刻設されている。従って、インサート本体1は、これらの指標10A、10Bに関しては非対称形状とされる。
一方、第2の突部9は、その頂面9Aと周面9Bとの上記交差稜線9Cが、上記平面視において各第2の突部9が隣接する主切刃5Bが延びる方向に並んでそれぞれが主切刃5Bに向けて凸となる2つの凸曲線状部9E、9Fを有している。これら2つの凸曲線状部9E、9Fに連なる第2の突部9の周面9Bは、本実施形態ではやはり頂面9A側に向かうに従い漸次縮径する凸円錐台面状とされており、上記凸曲線状部9E、9Fと、上記交差稜線9Dのうち凸曲線状部9E、9Fに連なる周面9Bとフラットすくい面7Bとの交差稜線は、いずれも凸円弧状とされる。
ここで、上記平面視において主切刃5Bから2つの凸曲線状部9E、9Fの中心すなわち凸曲線状部9E、9Fがなす凸円弧の中心までの距離は略等しくされている。これに対して、コーナ刃5A側に位置する第1の凸曲線状部9Eの上記平面視における曲率半径、すなわちこの第1の凸曲線状部9Eが上記平面視になす凸円弧の半径は、コーナ刃5Aとは反対側に位置する第2の凸曲線状部9Fの上記平面視における曲率半径、すなわち第2の凸曲線状部9Fが上記平面視になす凸円弧の半径に対して、主切刃5Bから2つの凸曲線状部9E、9Fの中心までの距離の差よりも小さくされており、これによって第2の凸曲線状部9Fは第1の凸曲線状部9Eよりも主切刃5Bに近い位置までせり出すように形成される。
このように第2の凸曲線状部9Fが第1の凸曲線状部9Eよりも主切刃5Bに近い位置までせり出すことにより、上記平面視においてこれら2つの凸曲線状部9E、9Fに接する接線Lは、コーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bから離れるように傾斜して延びることになる。また、同様に、第2の突部9の周面9Bとフラットすくい面7Bとの交差稜線9Dのうち凸曲線状部9E、9Fに連なる周面9Bとの交差稜線がなす2つの凸円弧に上記平面視において接する接線Mも、接線Lと略平行にコーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bから離れるように延びることになる。
こうして上記平面視における第2の突部9の凸曲線状部9E、9Fの接線Lがコーナ刃5A側に向かうに従い隣接する主切刃5Bから離れるように延びているのに対し、第1の突部8の上記直線状部8Eはコーナ刃5A側に向かうに従い周面8Bが向いた側の同じ主切刃5Bに近づくように延びていることにより、接線Lと直線状部8Eとは同平面視において互いに交差する方向に延びることになる。そして、本実施形態では図4に示すように上記平面視において接線Lが直線状部8Eに交差している。
また、同様に上記接線Mも、第1の突部8の上記交差稜線8Dのうち直線状部8Eに連なる周面8Bとフラットすくい面7Bとの交差稜線に上記平面視において交差している。なお、第2の突部9の上記接線L、Mが隣接する主切刃5Bに対して上記平面視になす傾斜角は、同じ主切刃5B側を向く第1の突部8の直線状部8Eが該主切刃5Bに対して同平面視になす傾斜角よりも、本実施形態では小さくされている。
さらに、第2の突部9の交差稜線9Cには、上記2つの凸曲線状部9E、9Fの間に、上記平面視において第2の突部9が隣接した主切刃5Bに対して凹となる凹曲線状部9Gが、これらの凸曲線状部9E、9Fに接するように形成されている。この凹曲線状部9Gに連なる第2の突部9の周面9Bは、頂面9Aに向かうに従い漸次拡径する凹円錐台面状とされており、従って凹曲線状部9Gは頂面9Aよりも主切刃5B側に中心を有する凹円弧状とされる。また、この凹曲線状部9G自体も、上記平面視において2つの凸曲線状部9E、9Fの上記中心より主切刃5Bの近くに配置されている。
なお、第2の突部9の頂面9Aは、多角形面2の中央部にまで延びており、取付孔4はこの第2の突部9の頂面9Aに開口している。また、この第2の突部9の頂面9Aには、頂面9Aから一段凹む4つの凹面部9Hが、上記平面視に取付孔4の頂面9Aにおける開口部から第2の突部9の各凹曲線状部9Gに向けて延びるように周方向に略等間隔に形成されている。これらの凹面部9Hは互いに同形同大とされ、同平面視に取付孔4側が等脚台形状をなすとともに凹曲線状部9G側は半円状をなしていて、凹曲線状部9Gには達することがないように形成されている。
さらに、本実施形態では、表裏の多角形面2の各一対の鈍角コーナ部Bに隣接する部分に第3の突部11が切刃5と間隔をあけて形成されている。この第3の突部11は、上記平面視に鈍角コーナ部B側が尖った木の葉形をなしており、表裏の多角形面2のそれぞれにおいて第1、第2の突部8、9の頂面8A、9Aとインサート厚さ方向に等しい突出高さで第2の突部9の頂面9Aに面一に連続する頂面11Aと、第1、第2の突部8、9の周面8B、9Bと等しい傾斜角でフラットすくい面7Bから頂面11Aに延び、第2の突部9の周面9Bに連なる周面11Bとを備えている。
なお、この第3の突部11の周面11Bは、第2の突部9の上記第2の凸曲線状部9Fに連なる周面9Bに、上記凹曲線状部9Gに連なる周面9Bと同様に凹円錐台面状をなして連なっており、ただしこの凹円錐台の中心は上記平面視において第1、第2の凸曲線状部9E、9Fの中心よりも主切刃5Bから離れた位置に配置されている。同様に、第1、第2の突部8、9の間にも、指標10A、10Bが刻設された凹面部によって切り欠かれた部分を除いて、フラットすくい面7B側に凹円錐台面状をなす周面が残されて第1、第2の突部8、9の周面8B、9Bに連なっており、この凹円錐台の中心も上記平面視において第1、第2の凸曲線状部9E、9Fの中心より主切刃5Bから離れた位置に配置されている。
このように構成された切削インサートが取り付けられる上記インサート取付座は、上述の刃先交換式バイトのような切削工具の工具本体先端部に形成された凹所であり、多角形面2と合同または相似形の平坦な底面と、本実施形態のようなネガティブタイプのインサートを取り付ける場合にはこの底面から垂直に立ち上がる2つの壁面とを有している。壁面同士は、インサート本体1の多角形面2の鋭角コーナ部Aにおける挟角と等しい角度で交差している。さらに、底面の中央部には、レバーロック等のインサート取付機構のピンが突出している。
このようなインサート取付座に、上記構成の切削インサートは、上述のように表裏の多角形面2の一方がすくい面とされたときに他方が着座面とされ、上記ピンが取付孔4に挿入されながらこの着座面とされた多角形面2が上記底面に対向して着座させられ、次いでインサート取付機構の上記ピンによってインサート本体1が壁面同士の交差角の二等分線方向に引き込まれることにより、鋭角コーナ部Aに交差する2つの側面3が壁面に当接させられて取り付けられる。
このとき、1つの多角形面2においては、第1、第2の突部8、9の頂面8A、9Aと本実施形態では第3の突部11の頂面11Aとが、インサート厚さ方向に最も突出して1つの平面上に位置しているため、これらの頂面8A、9A、11Aがインサート取付座の底面に密着する。そして、すくい面とされた多角形面2の切刃5のうち、工具本体先端部に突出する鋭角コーナ部Aに形成されたコーナ刃5A、およびこのコーナ刃5Aの一端に連なる主切刃5Bが切り込み量に応じて切削に使用される。
ここで、まず上記構成の切削インサートでは、すくい面とされた多角形面2において、第1、第2の突部8、9が切刃5と間隔をあけて形成されていて、特許文献1、2に記載された切削インサートのように多角形面の中央面とランド面とがインサート厚さ方向に同じ高さの連結部によって連結されたりしていないので、切刃5によって生成されて多角形面2上に流れ出た切屑が連結部に遮られることにより行き場を無くして詰まりを生じるようなことがない。
また、これら第1、第2の突部8、9のうちコーナ刃5Aに隣接する第1の突部8は、その頂面8Aと周面8Bとの交差稜線8Cが、コーナ刃5A側に向かうに従い周面8Bが向いた側の主切刃5Bに近づくように延びる直線状部8Eを有しており、特許文献4に記載された切削インサートのようにコーナ刃の部分に円形のドット部が形成されているのに比べて、コーナ刃5Aのより近くまで第1の突部8および上記直線状部8Eに連なる周面8Bを接近させて形成することができる。
そこで、本実施形態の切削インサートは上述したように切り込み量が中程度の旋削加工に専ら使用されるものであるが、これよりも低切り込みで切刃5のうちコーナ刃5Aやその極近くの主切刃5Bのみを用いて鋼材の仕上げ切削加工に使用した場合でも、これらの部位の切刃5によって伸び気味に生成される切屑を速やかに第1の突部8の直線状部8Eに連なる周面8Bに摺接させることによって抵抗を与えてカールさせ、分断して確実に処理することができる。
一方、着座面とされた多角形面2においても、このように第1の突部8をコーナ刃5Aに接近させて形成することができるため、切削に使用されるコーナ刃5Aの裏側に位置する第1の突部8の頂面8Aにより、このコーナ刃5Aに作用する切削負荷を確実に受け止めて着座安定性を確保することができる。従って、鋳鉄等の鋳物の切削を行う場合に切屑が分断されながら生成されることによってインサート本体1に断続的な振動が生じるのを防ぐことができ、このような断続的な振動によって切削精度が損なわれたり、切刃5にチッピング等が生じたりするのを防止することができる。
さらに、上記構成の切削インサートでは、コーナ刃5Aから離間した主切刃5Bに隣接するようにして第2の突部9が形成されており、この第2の突部9の頂面9Aと周面9Bとの交差稜線9Cは、上記平面視において主切刃5Bが延びる方向に並んでそれぞれが主切刃5Bに向けて凸となる2つの凸曲線状部9E、9Fを有している。そして、これらの凸曲線状部9E、9Fのうち、コーナ刃5Aとは反対側に位置する第2の凸曲線状部9Fは、コーナ刃5A側の第1の凸曲線状部9Eよりも主切刃5B側に位置しているため、着座面とされた多角形面2においては、インサート取付座の底面に密着する第2の突部9の頂面9Aのうち第2の凸曲線状部9Fに連なる部分を該多角形面2の外周側に配置することができ、これによってもインサート本体1の着座安定性を確保して円滑な切削加工を行うことができる。
その一方で、すくい面とされる多角形面2では、コーナ刃5A側の第1の凸曲線状部9Eが第2の凸曲線状部9Fよりも主切刃5Bから離れて位置することになるため、本実施形態の切削インサートが専ら使用される、切り込み量が中程度でコーナ刃5Aから主切刃5Bのある程度の部分までが切り込まれる場合においても、この主切刃5Bと第2の突部9の第1の凸曲線状部9Eに連なる周面9Bとの間に間隔を確保することができ、切屑詰まりが生じるのを防止することが可能となる。
そして、このように第2の突部9が形成されることにより、上記平面視に第2の突部9のこれら第1、第2の凸曲線状部9E、9Fに接する接線Lは、コーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bから離れるように延びることになって、逆にコーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bに近づくように延びる第1の突部8の直線状部8Eとの間で、主切刃5Bに対して凹んだV字状を呈することになる。従って、上記構成の切削インサートでは、鋼材等の高切り込みとなる粗切削加工に用いた場合においても、コーナ刃5Aから主切刃5Bの多くの部分によって生成された切屑を、これらV字をなす接線Lと直線状部8Eとに連なる周面8B、9Bに摺接させてV字状に折り曲げてカールさせることにより、確実に分断して処理することができる。
このように、上記構成の切削インサートによれば、低切り込みから高切り込みの範囲に亙る鋳物や鋼材の切削加工において、着座安定性と切屑処理性とを確保して円滑な切削加工を行うことが可能となる。しかも、上述のように第2の突部9では、上記平面視において2つの凸曲線状部9E、9Fに接する接線Lに連なる周面9Bに切屑が摺接することになって、すなわち接線Lと凸曲線状部9E、9Fとの接点に連なる周面9B部分に線接触するように切屑は摺接することになるため、切屑が必要以上に強く周面9Bに押し付けられるのを防ぐことができ、上述のような粗切削加工における切削抵抗の低減を図ることもできる。
また、上述のように上記平面視において第2の突部9の2つの凸曲線状部9E、9Fに接する接線Lがコーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bから離れるようにするのに、本実施形態では、該平面視における主切刃5Bから2つの凸曲線状部9E、9Fの中心すなわち凸曲線状部9E、9Fがなす凸円弧の中心までの距離は略等しくして、コーナ刃5A側の第1の凸曲線状部9Eの曲率半径(凸円弧の半径)が、コーナ刃5Aとは反対側の第2の凸曲線状部9Fの曲率半径(凸円弧の半径)よりも小さくなるようにしている。
これにより、本実施形態によれば、着座面とされる多角形面2においては、該多角形面2の外周側に配置される第2の凸曲線状部9Fに連なる第2の突部9の頂面9A部分の面積を大きくして着座安定性を一層向上させることができるとともに、すくい面とされる多角形面2では、第1の凸曲線状部9Eに連なる周面9Bと主切刃5Bとの間隔や第1の突部8との間隔を確保して切屑詰まりをさらに確実に防止することが可能となる。ただし、上記接線Lがコーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bから離れるようにされていれば、これら2つの凸曲線状部9E、9Fの曲率半径を等しくしたり、上記とは逆に第1の凸曲線状部9Eの曲率半径を第2の凸曲線状部9Fの曲率半径よりも大きくするようにしたりして、これらの凸曲線状部9E、9Fの中心の位置をずらすようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、第2の突部9の頂面9Aと周面9Bとの交差稜線9Cが、上記2つの凸曲線状部9E、9Fの間に、上記平面視において主切刃5Bに対して凹となる凹曲線状部9Gを備えていて、この凹曲線状部9Gは2つの凸曲線状部9E、9Fの中心よりも主切刃5Bの近くに配置されている。従って、例えば凸曲線状部9E、9Fがそのまま角度をもって交差するように形成されているのに比べて、主切刃5B側すなわち多角形面2の外周側における第2の突部9の頂面9Aの面積をさらに大きくすることができ、着座面とされた多角形面2による安定性をより一層向上させることができる。
さらにまた、本実施形態においては、上述のようにコーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bから離れるように延びる第2の突部9の2つの凸曲線状部9E、9Fの接線Lが、上記平面視においてコーナ刃5A側に向かうに従い主切刃5Bに近づくように延びる第1の突部8の直線状部8Eに交差するようにされている。このため、上述した高切り込みの粗切削加工の際に生成される切屑を、上記接線Lに連なる第2の突部9の周面9Bと直線状部8Eに連なる第1の突部8の周面8Bとに片当たりすることなく摺接させることができ、確実に上述のようにV字状に折り曲げて分断、処理することが可能となる。
次に、図9ないし図24は、上記実施形態の第1、第2の変形例を示すものであって、このうち図9ないし図16は、低切り込みの仕上げ旋削加工に専ら使用される切削インサートに本発明を適用した場合を示し、図17ないし図24は、逆に高切り込みの粗旋削加工に専ら使用される切削インサートに本発明を適用した場合を示している。なお、これらの変形例において、図1ないし図8に示した実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。
まず、図9ないし図16に示す第1の変形例では、上記実施形態における第1の突部8の2つの直線状部8Eが上記平面視になす挟角が50°とされていたのに対し、この挟角が40°と小さくされており、これに伴い第1の突部8が上記実施形態よりもコーナ刃5Aの近くにまで延設されている。なお、多角形面2がなす菱形の鋭角コーナ部Aの挟角は上記実施形態と同じく80°である。
また、第1の変形例においても、ランド6が上記平面視に一定の幅で、多角形面2の内側に向かうに従い一定の傾斜角でインサート厚さ方向に後退傾斜するポジランドであるとともに、ポジすくい面7Aも同平面視に一定幅であるのは上記実施形態と同様であるが、ランド6の傾斜角は実施形態よりも大きくされ、ランド6とポジすくい面7Aの幅は上記実施形態よりも小さくされている。なお、ポジすくい面7や第1、第2の突部8、9の周面8B、9Bの傾斜角は実施形態と同様である。さらに、第1、第2の突部8、9の周面8B、9Bの間に凹円錐台面状をなす周面は残されておらず、指標10A、10Bが刻設された凹面部とフラットすくい面7Bとが傾斜平面によって連ねられている。
このような第1の変形例によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる上、上述のように第1の突部8が実施形態よりもコーナ刃5Aの近くにまで延びているので、低切り込みの際に専ら使用される場合にコーナ刃5Aの近傍の切刃5によって生成される切屑を確実に処理することができる。また、ポジランドとされたランド6の傾斜角が上記実施形態よりも大きくされるとともに、このランド6とポジすくい面7Aの幅が実施形態よりも小さくされて、切刃5の切れ味が鋭くされているので、切削抵抗の低減と仕上げ加工の際の加工面粗度の向上を図ることができる。
一方、図17ないし図24に示す第2の変形例では、多角形面2がなす菱形の鋭角コーナ部Aの挟角は上記実施形態および第1の変形例と同じく80°であるのに対し、第1の突部8の2つの直線状部8Eがなす挟角が第1の変形例とは逆に60°と実施形態よりも大きくされており、これに伴い第1の突部8が上記実施形態や第1の変形例よりもコーナ刃5Aや主切刃5Bから離れて形成されている。さらに、この第2の変形例では、第2の突部9の上記接線L、Mが隣接する主切刃5Bに対して上記平面視になす傾斜角が、実施形態や第1の変形例より大きくされるとともに、同平面視において同じ主切刃5B側を向く第1の突部8の直線状部8Eが該主切刃5Bに対してなす傾斜角よりも大きくされている。
また、ランド6はインサート厚さ方向に垂直な平面状をなすフラットランドとされ、ランド6およびポジすくい面7Aの上記平面視における幅も実施形態や第1の変形例より大きくされており、こうしてランド6とポジすくい面7Aが幅広とされることにより、第2の突部9の第2の凸曲線状部9Fに連なる周面9Bは交差稜線9D側において部分的にポジすくい面7Aと交差させられている。なお、ポジすくい面7Aや第1、第2の突部8、9の周面8B、9Bの傾斜角は実施形態や第1の変形例と同様である。
さらに、この第2の変形例においては、指標10A、10Bが刻設された凹面部によって第1、第2の突部8、9の間が切り欠かれてはおらず、第1、第2の突部8、9の頂面8A、9Aが連続しているとともに、周面8B、9Bもフラットすくい面7Bからこの頂面8A、9Aに亙って、頂面8A、9A側に向かうに従い拡径する凹円錐台面状をなす周面によって連ねられている。
このような第2の変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、ランド6がフラットランドとされ、またランド6やポジすくい面7Aも幅広とされているので、高切り込みの粗切削加工の際に切刃5に大きな負荷が作用しても、チッピングや欠損が生じるのを防ぐことができる。さらに、第1の突部8とコーナ刃5Aや主切刃5Bとの間隔が上記実施形態よりも大きくされているので、高切り込みによって生成された切屑でも詰まりを生じるのを一層確実に防止して円滑に処理することができる。さらにまた、第1、第2の突部8、9が連続しているので、第1、第2の突部8、9の強度を高めて耐摩耗性を向上させることもでき、長期に亙って安定した切削加工を行うことができる。
なお、上記実施形態および第1、第2の変形例では、鋭角コーナ部Aの挟角が80°の菱形板状のインサート本体1を備えた切削インサートに本発明を適用した場合について説明したが、例えば図25に示すように挟角が80°以外の菱形板状のインサート本体1を備えた切削インサートに本発明を適用することも可能である。さらに、菱形以外の正方形や長方形のような四角形、あるいは図26に示すような正三角形、もしくは図27に示すような等辺不等角六角形等の他の多角形板状のインサート本体1を備えた切削インサートに本発明を適用することも可能である。ここで、これら図25ないし図27に示す変形例は、上記第1の変形例と同じく低切り込みの仕上げ旋削加工に専ら使用されるものであるが、第1、第2の突部8、9の頂面8A、9Aは第2の変形例と同様に連続しており、ただし凹面部9Hや指標10A、10Bは設けられていない。
また、同じく上記実施形態および第1、第2の変形例では、コーナ刃5Aの両端から主切刃5Bが延びていて、インサート本体1が上記平面視において多角形面2がなす菱形の対角線に沿った平面に関して面対称形状とされた、いわゆる勝手無しの切削インサートに本発明を適用した場合について説明したが、コーナ刃5Aの一端からのみ主切刃5Bが延びていて、インサート本体1が上記平面に関して面対称とされていない、いわゆる勝手付きの切削インサートに本発明を適用することも可能である。
さらにまた、上記実施形態および第1、第2の変形例では、多角形面2のポジすくい面7Aの内側がインサート厚さ方向に垂直なフラットすくい面7Bとされているが、ポジすくい面7Aよりもインサート厚さ方向に垂直な平面に対する傾斜角が緩やかな第2のポジすくい面とされていてもよく、あるいは切刃5に直交する断面が凹曲線状をなす凹曲面であってもよい。このような場合には、接線L、Mは上記平面視に平行とされていなくてもよい。
また、切刃5は、コーナ刃5Aおよび主切刃5Bがともにインサート厚さ方向に垂直な1つの平面上に位置しているが、それぞれの多角形面において第1、第2の突部8、9の頂面8A、9Aがインサート厚さ方向に最も突出した1つの平面上に形成されていれば、例えば主切刃5Bがコーナ刃5Aから離間するに従い連続的あるいは部分的にインサート厚さ方向に後退するように傾斜していてもよい。さらに、ポジすくい面7Aの傾斜角も一定ではなく、例えばコーナ刃5Aから離間するに従い連続的あるいは部分的に小さくなるようにされていてもよい。
さらにまた、上記実施形態および第1、第2の変形例では、第2の突部9の頂面9Aは第1、第2の凸曲線状部9E、9Fに交差する部分が連続しているが、図28や図29に示す変形例のようにこれらの部分が分離していて頂面9Aが不連続となっていてもよい。このうち、図28に示す変形例では、第1の凸曲線状部9Eに交差する頂面9Aが上記平面視に円形をなすようにして、また図29に示す変形例では、第2の凸曲線状部9Fに交差する頂面9Aが上記平面視に円形をなすようにして、1つの主切刃5Bに隣接する第2の突部9がそれぞれ2つに分割されて多角形面2に突出するように形成されている。
なお、図28に示す変形例では第1の変形例と同様に、第1の凸曲線状部9Eを交差稜線9Cに有する分割された第2の突部9は、第1の突部8とも分割されて間隔をあけるように形成されるとともに、第2の凸曲線状部9Fを交差稜線9Cに有する分割された第2の突部9は、第3の突部11と連続するように形成されている。これに対して、図29に示す変形例では、第1の凸曲線状部9Eを交差稜線9Cに有する分割された第2の突部9は第1の突部8に連続するように形成される一方、第2の凸曲線状部9Fを交差稜線9Cに有する分割された第2の突部9は、第3の突部11とも分割されて間隔をあけるように形成されている。なお、これとは逆に、第2の凸曲線状部9Fを有する分割された第2の突部9は第1の突部8に連続するように形成される一方、第1の凸曲線状部9Eを交差稜線9Cに有する分割された第2の突部9は、これらから分割されて間隔をあけるように円錐台状等に形成されていてもよい。
1 インサート本体
2 多角形面
3 側面
4 取付孔
5 切刃
5A コーナ刃
5B 主切刃
6 ランド
7A ポジすくい面
7B フラットすくい面
8 第1の突部
8A 第1の突部8の頂面
8B 第1の突部8の周面
8C 頂面8Aと周面8Bとの交差稜線
8D 周面8Bとフラットすくい面7Bとの交差稜線
8E 直線状部
9 第2の突部
9A 第2の突部9の頂面
9B 第2の突部9の周面
9C 頂面9Aと周面9Bとの交差稜線
9D 周面9Bとフラットすくい面7Bとの交差稜線
9E 第1の凸曲線状部
9F 第2の凸曲線状部
9G 凹曲線状部
11 第3の突部
C インサート中心線
L 多角形面2に対向するインサート厚さ方向から見た平面視において2つの凸曲線状部9E、9Fに接する接線
M 多角形面2に対向するインサート厚さ方向から見た平面視において交差稜線9Dのうち凸曲線状部9E、9Fに連なる周面9Bとの交差稜線がなす2つの凸曲線(凸円弧)に接する接線
2 多角形面
3 側面
4 取付孔
5 切刃
5A コーナ刃
5B 主切刃
6 ランド
7A ポジすくい面
7B フラットすくい面
8 第1の突部
8A 第1の突部8の頂面
8B 第1の突部8の周面
8C 頂面8Aと周面8Bとの交差稜線
8D 周面8Bとフラットすくい面7Bとの交差稜線
8E 直線状部
9 第2の突部
9A 第2の突部9の頂面
9B 第2の突部9の周面
9C 頂面9Aと周面9Bとの交差稜線
9D 周面9Bとフラットすくい面7Bとの交差稜線
9E 第1の凸曲線状部
9F 第2の凸曲線状部
9G 凹曲線状部
11 第3の突部
C インサート中心線
L 多角形面2に対向するインサート厚さ方向から見た平面視において2つの凸曲線状部9E、9Fに接する接線
M 多角形面2に対向するインサート厚さ方向から見た平面視において交差稜線9Dのうち凸曲線状部9E、9Fに連なる周面9Bとの交差稜線がなす2つの凸曲線(凸円弧)に接する接線
Claims (4)
- 表裏の多角形面と、これらの多角形面の周りに配置される側面とを有する多角形板状のインサート本体を備え、
上記多角形面のそれぞれと上記側面との交差稜線部には切刃が形成され、
上記切刃は、上記インサート本体の表裏に位置する上記多角形面の少なくとも1つずつの角部に配置されて該多角形面に対向するインサート厚さ方向から見た平面視に凸曲線状をなすコーナ刃と、このコーナ刃の少なくとも一端から延びる主切刃とを備え、
上記多角形面は互いに、一方の多角形面がすくい面とされたときに他方の多角形面が着座面とされる切削インサートであって、
上記多角形面にはそれぞれ、該多角形面から上記インサート厚さ方向に突出する第1、第2の突部が上記切刃と間隔をあけて形成されていて、
上記第1、第2の突部は、上記多角形面のそれぞれにおいて、該多角形面の上記切刃よりも突出して上記インサート厚さ方向に垂直な1つの平面上に配置される頂面と、各多角形面から上記頂面に向かうに従い該多角形面の内側に向かうように傾斜する周面とを備えており、
上記第1の突部は、上記第2の突部よりも上記コーナ刃に隣接して形成され、上記頂面と上記周面との交差稜線が上記平面視において上記コーナ刃側に向かうに従い上記主切刃に近づくように延びる直線状部を有しているとともに、
上記第2の突部は、上記頂面と上記周面との交差稜線が上記平面視において上記主切刃が延びる方向に並んでそれぞれが該主切刃に向けて凸となる少なくとも2つの凸曲線状部を有していて、上記平面視においてこのうち2つの凸曲線状部に接する接線が上記コーナ刃側に向かうに従い上記主切刃から離れるように延びていることを特徴とする切削インサート。 - 上記第2の突部の上記2つの凸曲線状部は、上記コーナ刃側に位置する凸曲線状部が上記コーナ刃とは反対側に位置する凸曲線状部よりも、上記平面視における曲率半径が小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
- 上記第2の突部の上記頂面と上記周面との上記交差稜線は、上記平面視において上記主切刃に対して凹となる凹曲線状部を上記2つの凸曲線状部の間に有しており、この凹曲線状部は上記平面視における上記2つの凸曲線状部の中心よりも上記主切刃の近くに配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
- 上記平面視において上記第2の突部の上記2つの凸曲線状部に接する上記接線は、上記第1の突部の上記直線状部に交差していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
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Cited By (1)
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-
2013
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