JP2012043622A - 厚膜導体形成用組成物、この組成物を用いて形成された厚膜導体、およびこの厚膜導体を用いたチップ抵抗器 - Google Patents

厚膜導体形成用組成物、この組成物を用いて形成された厚膜導体、およびこの厚膜導体を用いたチップ抵抗器 Download PDF

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Abstract

【課題】耐硫化性と耐半田食われ性にともにすぐれる、鉛フリーの厚膜導体形成用組成物を低コストで提供する。
【解決手段】本発明は、チップ抵抗器の電極として用いられる厚膜導体を形成するための組成物に関する。本発明の組成物は、導電粉末としてAg粉末が、酸化物粉末として、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とが、それぞれ含まれており、かつ、添加物としてカーボン粉末が添加されている。導電粉末100質量部に対し、カーボン粉末が1〜10質量部、前記ガラス粉末が0.1〜15質量部、前記Al23粉末が0.1〜8質量部である。前記ガラス粉末の組成比は、SiO2:20〜60質量%、B23:2〜25質量%、Al23:2〜25質量%、CaO:20〜50質量%、およびLi2O:0.5〜6質量%である。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉛を含有しない厚膜導体形成用組成物に関し、特に、チップ抵抗器の上面電極として用いられる厚膜導体を形成するための組成物に関する。また、この組成物を用いて形成された厚膜導体、さらには、この厚膜導体を少なくとも上面電極に適用したチップ抵抗器に関する。
厚膜技術を用いて厚膜導体を形成する場合、通常、導電率の高い導電粉末を、ガラス粉末などの酸化物粉末とともに、有機ビヒクル中に分散させて、ペースト状の厚膜導体形成用組成物を得て、該厚膜導体形成用組成物を、アルミナ基板などのセラミック基板上に、スクリーン印刷法、その他の塗布手段を用いて所定の形状に塗布し、500℃〜900℃で焼成することが行われている。
厚膜導体形成用組成物を構成する材料のうち、導電粉末としては、導電率の高いAu、Ag、Pd、およびPtから選択される少なくとも1種の金属からなり、平均粒径が10μm以下の金属粉末が用いられている。これらの金属の中では、安価であることから、Ag粉末およびPd粉末が一般的に使用されているが、より良好な導電性の観点から、Ag粉末が導電粉末の主材料として用いられている。
一方、ガラス粉末としては、これまで、軟化点の制御が容易で、化学的耐久性の高いホウケイ酸鉛、またはアルミノホウケイ酸鉛系が用いられていた。しかしながら、最近の環境汚染を防止する観点から、鉛を含有しない厚膜導体形成用組成物が望まれており、ガラス粉末の鉛フリー化の検討が行われている。
このような厚膜導体形成用組成物を用いて形成される厚膜導体は、電子工業で用いられるチップ抵抗器、抵抗ネットワーク、ハイブリッドICなどの電子部品の電極などとして適用されている。このうちのチップ抵抗器は、図1に模式的に示すように、アルミナ基板と、厚膜導体により形成された上面電極と側面電極と裏面電極からなる内部電極と、酸化ルテニウム系厚膜からなる抵抗と、抵抗を覆う絶縁ガラスの保護膜とを備えており、露出した電極面には半田付け性を向上させるために、Niメッキからなる中間電極とSn−Pb半田メッキやこれに代替するSn系合金の鉛フリー半田メッキからなる外部電極とがそれぞれ電解メッキによってさらに形成されている。
現在、導体粉末として主として用いられているAgは、特に硫化に対し非常に弱い材料である。チップ抵抗器では、Niメッキや半田メッキのコーティングにより、Ag系の厚膜導体からなる電極の保護が図られており、通常の使用においてはAgの硫化の問題は生ずることはない。しかしながら、チップ抵抗器を、熱エージングあるいは冷熱サイクルがかかるような過酷な条件下で使用した場合、応力によって絶縁ガラスからなる保護膜と半田メッキおよびNiメッキとの界面に隙間が発生したり、または、抵抗器の製造工程における不具合などを起因として保護膜の位置ズレが生じたりするなどして、内部電極が露出してしまい、空気中のイオウ性ガスによるAgの硫化が生じて、電極が短絡してしまう場合がある。特に火山性のガスの発生する温泉地など、空気中のイオウ性ガスの濃度の高い地域では、Agの硫化による電極の短絡などの問題が生じやすい。
また、製造工程、あるいは実装工程で、チップ抵抗器などの電子部品には半田付けが行なわれるが、その際に内部電極が露出している場合には、Agなどの金属材料が半田中に拡散し、導体部分が消失し、断線してしまう半田食われが生じることがある。半田も、63Sn/37PbなどのSn−Pb系共晶半田から、鉛フリーでSn含有量の高い組成の半田に代替されつつあり、このSn系合金の半田の融点が高いことから、半田付け温度も高くなる傾向がある。このような半田組成の変更や、半田付け温度の上昇にともない、半田食われが今まで以上に発生しやすくなっているという問題もある。
このようなAg系の厚膜導体からなる電極の硫化や半田食われによる短絡に対処する方法としては、導体粉末としてAgにPdを添加する方法が一般的に行われている。たとえば、特開2004−250308号公報は、Agのイオウ性ガスによる硫化を防止するために、耐酸性にすぐれたBi系ガラス粉末を使用するとともに、0.3〜2重量%のPd粉末を添加することを開示している。ただし、硫化に対しては、目視によりAg系の電極の変色を観察するのみであり、その効果についての定量的な議論はなされていない。
しかしながら、Pd粉末自体の使用は、電極の比抵抗値の上昇や電極の膜強度の低下による基板との接触強度の低下、さらに、コストアップを招くといった問題がある。また、特開平7−335402号公報では、電極材料として、Ag被覆のPd粉末を使用して、焼成後の膜の緻密性を向上させるとともに、耐硫化を図っている。しかしながら、このような粉末の使用はさらなるコストアップを招くため、実用面では問題がある。
チップ抵抗器の構造を工夫することで、電極の硫化を防止することも検討されている。たとえば、特開2002−64003号公報の技術では、隙間の発生しやすい部位の上面電極の上に、保護層としてPd含有率が5.0%以上のAg系厚膜導体を形成している。また、特開2003−224001号公報の技術では、同様の保護層として、ルテニウム抵抗体層を形成している。ただし、これらは新たな構造を追加するものであり、チップ抵抗器の小型化やコスト面で問題を生ずる。
また、特開2004−221006号公報や特開2002−324428号公報により教示されるように、導電性を有するカーボンペーストにより形成される保護層を設けることも考えられる。しかしながら、カーボン保護層は、電極自体の導電性を低下させるなどの問題があり、このようなカーボン保護層を設けないで耐硫化を図ることが要請されている。カーボン材料による保護層の形成やカーボン材料の単なる添加によっては、Ag系の厚膜導体における、効果的な耐硫化が図られていないのが現状である。
一方、半田食われに対する対策としては、Ag系の電極材料については、特開2004−327356号公報などに記載があるように、Pdを添加する方法が一般的である。しかしながら、半田食われ対策としては、Pdを2〜20質量部程度まで添加する必要があり、上述のように、電極の比抵抗値の上昇などの種々の問題を生じる。また、これらの添加材料が少ない場合には、Au、PdおよびPtといった添加材料についても、厚膜導体への半田付けに際して、半田食われが生じうる。
このような半田食われに対する対策としては、特開平6−223616号公報に記載されているように、厚膜導体形成用組成物として、PbO−SiO2−CaO−Al23系ガラス粉末と、Al23粉末と、SiO2粉末と、導電粉末とを、有機ビヒクルに分散させたものを用いて、該組成物の焼成時に、アノーサイト(CaAl2Si28)とよばれる針状の結晶相を、厚膜導体の内部に析出させる方法がある。
しかしながら、この厚膜導体形成用組成物では、Pbを含有するガラス粉末を用いるとともに、アノーサイトの生成にこのPbの存在を必須としており、鉛フリー化の厚膜導体におけるアノーサイトの生成を直ちに示唆するものではない。
これに対して、特開平7−97269号公報および特開平2001−114556号公報には、SiO2−B23−Al23−CaO系ガラス粉末と、Al23粉末との含む厚膜導体形成用組成物を焼成することによって、厚膜導体にアノーサイトを析出させることが開示されている。しかしながら、これらの場合、十分な大きさのアノーサイトを析出させるためには、その結晶化温度が高い(ガラスの軟化温度が高い)ことから、900℃以上の高温が必要である。900℃以上の温度で厚膜導体形成用組成物を焼成すると、厚膜導体が過焼結となったり、Agの融点が低いため、Ag系の厚膜導体からなる電極が島状になって、均質な電極の形成が困難になったりするなどの問題がある。
本発明者らは、特開2006−228572号公報において、ガラス系粉末として、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末を用いることにより、ガラスの軟化温度を低下させ、もって900℃未満の焼成によっても、厚膜内部にアノーサイトを均一に析出させることを開示している。この方法によって、耐半田食われ性に関して顕著な向上が認められているが、本発明者によるさらなる評価検討により、主たる導電材料としてAg粉末を用いた厚膜導体形成用組成物を用いてチップ抵抗器の上面電極を形成した場合であって、該チップ抵抗器を上述のようなイオウ性ガスの濃度が高い特殊環境で使用した場合に、経時により上面電極の硫化が生じる可能性が指摘され、その耐硫化性のさらなる改善が要求されている。
特開2004−250308号公報 特開平7−335402号公報 特開2003−224001号公報 特開2004−221006号公報 特開2002−324428号公報 特開2004−327356号公報 特開平6−223616号公報 特開平7−97269号公報 特開平2001−114556号公報 特開2006−228572号公報
本発明は、耐硫化性と耐半田食われ性にともにすぐれる、鉛フリーの厚膜導体形成用組成物を低コストで提供することを目的とする。
本発明の厚膜導体形成用組成物は、導電粉末と、酸化物粉末と、添加物と、有機ビヒクルとからなる厚膜導体形成用組成物であって、前記導電粉末として、少なくともAg粉末が含まれており、前記酸化物粉末として、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とが含まれており、かつ、前記添加物としてカーボン粉末が添加されていることを特徴とする。
前記導電粉末100質量部に対し、前記カーボン粉末が1〜10質量部、前記SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末が0.1〜15質量部、前記Al23粉末が0.1〜8質量部であることが好ましい。
また、前記SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比が、SiO2:20〜60質量%、B23:2〜25質量%、Al23:2〜25質量%、CaO:20〜50質量%、およびLi2O:0.5〜6質量%であることが好ましい。
本発明において、前記Ag粉末100質量部に対し、導電粉末としてのAu、PdおよびPtから選択される少なくとも1種が、0.1〜5質量部さらに添加されていてもよい。
本発明の厚膜導体は、上記の厚膜導体形成用組成物を、セラミック基板に塗布した後、500℃以上、900℃未満の温度で焼成することにより得られ、内部にアノーサイトが均一に析出しており、かつ、前記Li2Oがアノーサイトに固定化されていることを特徴とする。
さらに、本発明のチップ抵抗器は、前記セラミック基板と、該セラミック基板上に形成され、上面電極と側面電極と裏面電極とからなる内部電極と、該セラミック基板および該上面電極上に形成される抵抗膜と、該抵抗膜を覆う絶縁ガラス保護膜と、前記内部電極を覆うNiメッキからなる中間電極と、半田メッキからなる外部電極とを備えるチップ抵抗器であって、少なくとも前記上面電極が本発明の厚膜導体のみから構成されていることを特徴とする。
本発明の厚膜導体形成用組成物により、材料の工夫のみによって、半田食われが防止されるだけでなく、耐硫化性にもすぐれる、鉛フリーの厚膜導体形成用組成物を提供することができる。
この厚膜導体形成用組成物を用いることにより、電子部品、特にチップ抵抗器の電極に使用した場合に、電極を構成する導電材料であるAgの硫化や半田食われが防止できる。また、特別な構造上の工夫や特殊な材料の使用は不要であるため、このような硫化や半田食われによる断線故障の少ない電子部品を、効率よく低コストで提供できるという効果がある。
図1は、本発明が適用されるチップ抵抗器の模式図である。
本発明の厚膜導体形成用組成物は、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とを含有することを特徴とし、導電ペースト焼成時に前記ガラス粉末とAl23粉末とを反応させることにより、アノーサイトが厚膜導体内部に均一に析出している厚膜導体を得ることができる。かかる厚膜導体を用いると、わずかな量の厚膜導体中の貴金属が、半田に溶け出すことにより、アノーサイトが厚膜導体の表面に棘状に露出する。アノーサイトは針状の結晶であり、これが厚膜導体表面に棘状に露出すると、半田が、表面張力によって貴金属に達しなくなり、半田食われが進行しなくなる。
本発明において、酸化物粉末として上記のガラス粉末のほか、Al23粉末を含有させるのは、アノーサイトの厚膜導体内部における均一な析出を実現するためである。すなわち、前記ガラス粉末に、Al23粉末を混合させない場合、得られる厚膜導体とセラミック基板の界面付近に、アノーサイトが多く析出してしまうため、半田食われを抑制する効果が十分に得られない。よって、半田が、表面張力によって貴金属に達しないようにするためには、アノーサイトが厚膜導体内部に均一に析出している必要がある。さらに、半田付けにより露出するアノーサイトの棘の長さが1μm以上、好ましくは3μm以上、必要である。長さが1μm未満の微細な結晶相では、該アノーサイトが厚膜導体中から半田中に移動してしまい、半田食われを抑制する効果が十分に得られなくなる。
アノーサイトは、SiO2−B23−Al23−CaO系ガラス粉末と、Al23粉末との混合物を焼成することによっても、析出させることができる。ただし、この場合に十分な大きさのアノーサイトを析出させるには、900℃以上の高温が必要である。これに対して、本発明では、ガラス粉末中にLi2Oが含有されているため、より低温でもアノーサイトを析出させることを可能としている。
本発明では、導電粉末100質量部に対し、前記Al23粉末を0.1〜8質量部、好ましくは0.5〜3質量部としている。酸化物粉末として使用するAl23粉末が、導電粉末の100質量部に対して0.1質量部より少なくなると、アノーサイトの析出が少なく、半田食われを起こしやすくなる。アノーサイトは、SiとAlとCaの複合酸化物であり、特にAlが十分に供給されないとアノーサイトの析出は生じない。また、アノーサイトの析出は、耐硫化性を発揮させるためにも必要である。すなわち、ガラス粉末に単にカーボン粉末を加えたとしても、耐硫化性は十分に発揮されず、カーボン粉末の添加とアノーサイトの析出との組合せによって、はじめて耐硫化性が十分に発揮されることになる。一方、Al23粉末の添加量が8質量部より多くなると、接触抵抗が大きくなるだけでなく、セラミック基板との接着強度が低下してしまう。
酸化物粉末として使用されるAl23粉末の平均粒径は、3μm以下、好ましくは0.5〜2μmの範囲であることが望ましい。Al23粉末の平均粒径が3μmを超えると、アノーサイトが厚膜導体中に均一に析出しにくくなるばかりでなく、厚膜導体の表面が粗くなり、電子部品の特性を測定するためのプローブとの接触抵抗が大きくなるおそれがある。なお、Al23粉末の形状は特に限定されるものではないが、ガラス粉末との均一混合化、アノーサイトの均一析出化という観点から、球状または粉状のものが好ましい。
本発明において、酸化物粉末として使用されるSiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比は、SiO2:20〜60質量%、B23:2〜25質量%、Al23:2〜25質量%、CaO:20〜50質量%、およびLi2O:0.5〜6質量%であることが好ましい。
ガラス粉末の組成において、SiO2が、20質量%より少なくなると、Siが十分に供給されず、アノーサイトが析出しにくくなり、半田食われおよび硫化を防止できなくなるおそれがある。また、厚膜導体中のガラスの耐候性、耐水性および耐酸性が低下する傾向となる。一方、SiO2が、60質量%より多くなると、ガラスの軟化温度が高くなりすぎて、アノーサイトが析出する温度が高くなる傾向となる。
23が、2質量%より少なくなると、ガラスの軟化温度が高くなりすぎる傾向となる。また、厚膜導体のガラスが脆くなりやすくなってしまう。一方、B23が、25質量%より多くなると、ガラスが分相しやすくなり、厚膜導体中のガラスの耐候性、耐水性および耐酸性も低下するおそれがある。
ガラス粉末の組成において、Al23が、2質量%より少なくなると、同様にアノーサイトが析出しにくくなり、また、厚膜導体中のガラスが分相しやすくなる。一方、Al23が、25質量%より多くなると、ガラスの軟化温度が高くなりすぎ、アノーサイトが析出する温度が高くなりすぎるおそれがある。
CaOが、20質量%より少なくなると、Caの供給が不十分となり、アノーサイトが析出しにくくなる。一方、CaOが、50質量%より多くなると、ガラス化しにくくなる。
Li2Oは、ガラスの軟化温度を低下させる働きがあり、Li2Oの含有量を増やすと、それに応じて、アノーサイトの結晶を大きく成長させることができる。したがって、ガラス粉末の組成において、Li2Oが、0.1質量%よりも少なくなると、低い温度でアノーサイトが析出しにくくなり、また、析出したアノーサイトの大きさも小さくなりやすい。一方、Li2Oが、10質量%より多くなると、ガラスの耐候性、耐水性および耐酸性が低下するおそれがある。なお、Li2Oが、4〜6質量%の範囲にある場合には、厚膜導体形成用組成物に含まれるガラス粉末の含有量が少ない場合でも、得られる厚膜導体の耐半田食われ性が損なわれることなく、その接着強度を向上させることができる。
本発明のSiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比では、Li2Oは、ペースト焼成中に析出したアノーサイトにほとんど取り込まれて、固定化される。したがって、形成された電極間に電位差があっても、Liイオンがマイグレーションしてしまうことはない。
本発明で使用するガラス粉末は、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系であるが、その組成中に他の成分を含むこともでき、軟化点、耐酸性などに応じて、ZnO、BaO、TiO2、ZrO2、Bi23、CuO、MnO2などの成分を適宜選択し、含有させることができる。
本発明において、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の平均粒径は、10μm以下、好ましくは3〜7μmであることが望ましい。平均粒径が10μm以上では、ガラス粉末の軟化が遅れ、電極膜と基板との接着強度が低下する傾向となり、好ましくない。
本発明においては、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の添加量は、導電粉末100質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは3〜8質量部とする。SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末が、導電粉末の100質量部に対して0.1質量部より少なくなると、セラミック基板との接着強度が低下してしまう。また、アノーサイト析出のための材料が十分に供給されないこととなる。一方、15質量部より多くなると、厚膜導体の抵抗値が高くなるばかりでなく、厚膜導体の表面にガラスが浮き、メッキ性、半田の濡れ、および特性評価のためのプローブとの接触抵抗が、劣化するおそれがある。
導電粉末としては、Au、Ag、PdおよびPtから選択される少なくとも1種の貴金属粉末が用いられる。本発明は、Agの硫化を防止しようとするものであるから、本発明の対象となるのは、少なくともAgを含む導電粉末である。ただし、Agに、Au、PdおよびPtから選択される少なくとも1種の貴金属粉末をさらに包含することができる。これらの貴金属の添加は、導電材料として、Agの耐半田食われ性および耐硫化性を向上させる作用を有する。ただし、これらの貴金属は硫化に対して耐性が強いものの、高価な貴金属であることから、本発明ではこのような高価な金属の含有率を下げ、低コストで提供できる厚膜導体形成用組成物を供給することが目的となる。したがって、本発明では、導電粉末として、低コストのAgのみを用いてもよいし、耐硫化性をさらに高める必要がある場合に、これらの貴金属、好ましくはPdまたはPt、特にコスト面からPdをAg100質量部に対して0.1〜5質量部まで添加してもよい。
なお、Pdなどの添加によってAgの硫化が抑制される理由は、Agの硫化はAgの外方からのSの拡散によって起こるためとされ、AgとPdなどが合金化していると、Agが合金表面から硫化表面に徐々に拡散し、硫化物直下の合金部分がPdなどの貴金属リッチ相に変化していくため、硫化していくにしたがって、その硫化速度が減少するためと考えられている。
しかしながら、導電金属成分とガラス成分の混合体である厚膜導体においては、その硫化の度合いは、厚膜導体の組成、たとえばガラス粉末の組成や添加量にも影響されることから、組成物の検討によって低コストかつ低Pd化の実現に向けて日々研究されていることは周知の通りである。すなわち、本発明では、導電粉末としてAgのみの組成であって、Pdを添加していない場合でも、耐硫化性を発揮できる厚膜導体形成用組成物を提供しえる点で、顕著な効果を有するものである。
導電粉末の平均粒径は、焼結性の観点から、10μm以下が望ましい。導電粉末の形状については、粒状、フレーク状など任意の形状が採用でき、混合して使用することができる。その中で、粉状の導電粉末の粉径は、焼結性の観点から、好ましくは0.1〜2μmであることが望ましい。
本発明においては、導電粉末100質量部に対して、カーボン粉末を1〜10質量部、好ましくは3〜7質量部だけ、さらに添加している点に特徴がある。カーボン粉末は、導電性を有することから、広い意味での導電ペーストの分野において、導線粉末として用いられる材料である。ただし、貴金属粉末を用いる厚膜導体形成用組成物においては、その導電材料としての単なる添加は、得られる厚膜導体の本来の導体性能ないしは接着強度を含む電極性能を低下させるものであるため、通常、添加されることはない。また、カーボン粉末を、Agを導体粉末の主材料とするが、アノーサイトが形成されることのない厚膜導体形成用組成物の材料として単に添加した場合に、Agの硫化を好適に防止することはできない。
本発明者の試行錯誤および実験により、導電粉末と、酸化物粉末と、有機ビヒクルとからなる厚膜導体形成用組成物であって、前記導電粉末として、少なくともAg粉末が含まれており、前記酸化物粉末として、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とが含まれている厚膜導体形成用組成物において、添加物としてカーボン粉末をさらに添加することにより、得られる厚膜導体の耐硫化性が向上することが確認されたのである。この効果について確認した後、カーボン粉末を添加した厚膜導体形成用組成物の焼成後の電極膜の断面構造を観察してみたところ、以下のような知見が得られている。
すなわち、添加したカーボン粉末はその作用によって組成物中のガラス粉末の溶融挙動に影響を与えており、ガラスが溶融して粘性が低下することによって、そのガラスがセラミック基板との界面に移動してしまうことを抑制する。これにより、焼成後の電極膜の断面観察では、導体であるAgのマトリックス中に、針状のアノーサイト結晶と、非晶質のガラス成分が網目状に均一に析出しており、Agとガラス酸化物が複合している特徴的な膜構造となっている。このような構造となる理由は明らかではないが、この膜構造がAgを含む電極膜を硫化雰囲気にさらしたときに、Ag表面からイオウの拡散によって進行する硫化銀の生成過程において、イオウの拡散速度を抑制しているものと考えられる。なお、カーボンは、焼成途中で酸素との結合によりCOとなり分解されるため、焼成後の膜構造中では、そのほとんどが消失しているものと考えられる。
本発明に用いるカーボン粉末の種類、形状および大きさについては、特に限定されるのではなく、カーボンインク用途として市販されている一般的な製品を用いることができる。このような製品におけるカーボン粉末の平均粒径は、0.01〜0.5μmの範囲のものが多い。ペースト中に均一に分散させる必要があるため、0.1μm前後の粉末を使用することが好ましい。
また、カーボン粉末の添加量に関しては、導電粉末100質量部に対して、1〜10質量部、好ましくは3〜7質量部とする。1質量部よりも少ないと、得られる厚膜導体の耐硫化性の向上が十分に図られない。10質量部以上の添加では、焼成膜の緻密性が低下し、セラミック基板との接着強度が低下してしまうので、好ましくない。
その他の厚膜導体形成用組成物の材料である有機ビヒクルとしては、従来と同様に、エチルセルロース、メタクリレートなどを、ターピネオール、ブチルカルビトールなどの溶剤に溶解したものを用いることができる。
なお、本発明では、上記の材料粉末のほか、厚膜導体の接着強度や半田濡れ性などを向上させる目的で、従来から用いられる各種粉末、たとえば、Bi23、SiO2、CuO、ZnO、MnO2などの酸化物粉末を添加することは可能である。
本発明の厚膜導体は、上述した本発明の厚膜導体形成用組成物を、セラミック基板に塗布した後、500℃以上、900℃未満の温度、好ましくは820℃〜870℃の温度で焼成することにより得られ、内部にアノーサイトが均一に析出しており、かつ、前記Li2Oがアノーサイトに固定化されていることを特徴とする。
本発明の厚膜導体は、チップ抵抗器のほか、抵抗ネットワーク、ハイブリッドICなどの電子部品の電極として好適に適用される。特に、本発明は、セラミック基板と、該セラミック基板上に形成され、上面電極と側面電極と裏面電極とからなる内部電極と、該セラミック基板および該上面電極上に形成される抵抗膜と、該抵抗膜を覆う絶縁ガラス保護膜と、前記内部電極を覆うNiメッキからなる中間電極と、半田メッキからなる外部電極とを備えるチップ抵抗器に好適に適用される。すなわち、このようなチップ抵抗器はイオウ性雰囲気などイオウ濃度の高い特殊な環境において使用される場合があるが、本発明のチップ抵抗器では、内部電極のうち、少なくとも上面電極が本発明の厚膜導体のみによって構成されており、他の硫化防止のための構造を採り入れる必要もなく、特殊な導体粉末材料を用いることもなく、そのような特殊環境においても電極の硫化が効果的に防止される。
なお、チップ抵抗器などの電子部品における厚膜導体が形成されるセラミック基板としては、アルミナ基板、特に高純度のアルミナ基板が用いられるが、その他、ジルコニア基板なども好適に用いることは可能である。その他の、構成要素については、従来から知られている公知の材料を用いて作成できるので、ここでは詳細な説明を省略する。
(ガラス粉末の組成)
表1に6種類のガラス粉末の組成比(質量%)を示した。これらのうち、ガラス粉末A、B、C、Fが本発明の組成範囲に該当する。一方、ガラス粉末DはLi2Oが含まれず、ガラス粉末EはCaOが含まれず、それぞれ本発明の組成範囲外である。
(厚膜導体形成用組成物の作製)
平均粒径1.5μmの粒状Ag粉末、および平均粒径0.1μmの粒状Pd粉末からなる導電粉末に対して、表1に示した組成で、平均粒径3μmのガラス粉末と、平均粒径0.5μmのAl23粉末と、平均粒径0.1μmのカーボン粉末とを、ターピネオール溶液にエチルセルロース樹脂を溶解して得た有機ビヒクルと混合し、3本ロールミルで混練することにより、ペースト状の厚膜導体形成用組成物を作製した。Ag粉末とPd粉末の合計からなる導電粉末の合計量を100質量部として、有機ビヒクルは導電粉末100質量部に対して25質量部とし、その他の材料に関しては、導電粉末100質量部に対して、表2に記載した質量部とした。
作製した厚膜導体形成用組成物を、96質量%アルミナ基板上にスクリーン印刷し、150℃で乾燥した。乾燥した基板を、ピーク温度850℃で9分間、トータル30分間のベルト炉で焼成し、所定のパターンの厚膜導体膜を形成した。
得られた厚膜導体の膜厚の評価は、2.0mm×2.0mmのパッドについて、触針型の膜厚計を用いて測定することにより行った。
面積抵抗値の評価は、幅0.5mm、長さ50mmの導体パターンの抵抗値をデジタルマルチメータにより測定して、得られた値を面積抵抗値に換算することにより行った。
耐半田食われ性の評価は、次のように行った。まず、幅0.5mm、長さ50mmの焼成した厚膜導体を用いて、270℃に保持した96.5質量%Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cu組成の鉛フリー半田浴中に、10秒間、浸した後、抵抗値を測定する操作を1回として、この操作を繰り返した。測定された抵抗値が1kΩ以上になったことにより、半田食われが起きたことを確認し、半田食われが起きるまで、すなわち測定された抵抗値が1kΩ以上となるまでの繰返し回数を計測し、耐半田食われ性の評価とした。繰り返し回数12回を超えた場合を良好(○)、それ以下の場合を不良(×)とした。
また、耐硫化性の評価は、次のように行なった。イオウ性雰囲気を得るために、市販の機械切削用オイル(イオウ含有)を80℃に保持し、このオイルの中に、焼成された電極基板を浸漬、静置し、硫化を促進させる方法を用いた。評価に使用した機械切削用オイルのイオウ分と塩素分の濃度は、全イオウ分3000質量ppm、全塩素分23.2質量%(イオンクロマトグラフ法による)であった。
耐半田食われ性の評価と同様に、幅0.5mm、長さ50mmの焼成した厚膜導体を用い、まず初期の面積抵抗値を測定した。前述の機械切削用オイルを80℃に保持し、このオイル中に前述の厚膜導体焼成基板を電極が露出したままの状態で浸漬し、30分ごとに基板を取り出し、面積抵抗値を測定した。切削オイル中のイオウにより硫化し電極が銀色から黒変するため、硫化の状態は目視でも確認できる。耐硫化性の判定方法として、オイル浸漬後、面積抵抗値が1Ω/□以上となるまでに要した時間を確認し、浸漬12時間で、面積抵抗値が1Ω/□未満であるものを良好(○)、1Ω/□以上のものを不良(×)とした。
接着強度の評価は、2.0mm×2.0mmのパターンの厚膜導体上に、直径0.65mmのSnメッキ銅線を、96.5質量%Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cu組成の鉛フリー半田を用いて半田付けし、垂直方向に引っ張り、剥離させ、剥離時の引張り力を測定することにより行なった。
Figure 2012043622
(実施例1〜3、比較例1〜3)
表2に示すとおり、Ag粉末とPd粉末の比率(質量比)を99.3:0.7とし、カーボン粉末の添加量を導電粉末100質量部に対して4.0質量部とし、Al23粉末の添加量と、ガラス粉末A、B、C、D、Eを用いて、添加量を3.0〜5.0質量部の範囲として、各材料の組合せとその添加量を変えて、ペースト状の厚膜導体形成用組成物を作製した。測定された厚膜導体の膜厚、面積抵抗値、接着強度、耐半田食われ性および耐硫化性の結果とその評価について、それぞれ表2に示す。
実施例1のガラス粉末Aを用い、その添加量を5.0質量部として得られた厚膜導体は、12回、半田に浸しても、面積抵抗値は10Ω/□以下で、断線することはなく、耐半田食われ性にすぐれていた。また、耐硫化性についても、イオウ含有オイルに、12時間浸漬したのちの面積抵抗値は、1Ω/□以下であり、耐硫化性にもすぐれていた。また、接着強度も58Nとチップ抵抗器の電極用途として十分な強度が得られていた。
実施例2のガラス粉末Bを用い、その添加量を4.0質量部として得られた厚膜導体、および実施例3のガラス粉末Cを用い、その添加量を3.0質量部として得られた厚膜導体についても、同様の結果と評価が得られた。
比較例1の本発明の組成範囲外であり、Li2Oを含まないガラス粉末Dを用い、その添加量を5.0質量部として得られた厚膜導体は、4回目の半田槽浸漬により、面積抵抗値が1kΩ/□以上となり、耐半田食われ性に劣っていた。また、耐硫化性についても、オイル2時間浸漬後の面積抵抗値が1Ω/□以上となり、耐硫化性についても劣っていた。
比較例1のように、Li2Oを含まないガラス粉末を使用する組成物を用いて得た厚膜導体では、900℃未満の焼成温度では、厚膜導体中にアノーサイトが十分に析出および成長しないので、厚膜導体のAgのみならず、Pdについても、完全に半田に食われてしまっている。このことから、Li2Oがアノーサイトの析出および成長を促進させていることが理解される。また、耐硫化性の発現にもアノーサイトの析出が必要であることも理解される。
同様に、比較例2の本発明の組成範囲外であるガラス粉末Eを用い、その添加量を5.0質量部として得られた厚膜導体は、2回目の半田槽浸漬により、面積抵抗値が1kΩ/□以上となり、オイル1.5時間浸漬後の面積抵抗値が1Ω/□以上となり、耐半田食われ性、耐硫化性のいずれについても劣っていた。
比較例2のように、CaOを含まないガラス粉末を使用する組成物を用いて得た厚膜導体でも、Caが供給されず、厚膜導体中にアノーサイトが析出せず、耐半田食われ性および耐硫化性のいずれの効果も発揮されないことが理解される。
比較例3の本発明の組成範囲にあるガラス粉末Aを用い、その添加量を5.0質量部としたが、Al23粉末を添加せずに得られた厚膜導体についても、2回目の半田槽浸漬により、面積抵抗値が1kΩ/□以上となり、オイル8時間浸漬後の面積抵抗値が1Ω/□以上となり、耐半田食われ性、耐硫化性のいずれについても劣っていた。
比較例3のように、酸化物粉末材料としてAl23粉末を含まず、ガラス粉末のみかならなる組成物を用いて得た厚膜導体では、アノーサイトが厚膜導体中に均一に析出せず、厚膜導体とアルミナ基板の界面部に集中的に析出してしまい、耐半田食われ性および耐硫化性のいずれの効果も発揮されないことが理解される。
Figure 2012043622
(実施例4〜6、比較例4)
実施例4、実施例5、実施例6、および比較例4には、本発明の組成範囲であるガラス粉末Fを用いた。ガラス粉末Fは、本発明範囲内のガラス組成に加えて、さらなる導体特性の向上を図るために。Bi23、CuO、MnO2を表2に示す分量だけ添加したものである。それぞれ、ガラスFの添加量を6.3質量部、AgとPdの比率(質量比)を99.3:0.7として、カーボン粉末の添加量を0から6.0質量部まで変化させた。
その結果、これらのガラス材料を用いて作成された厚膜導体において、耐半田食われ性に関しては、いずれも12回半田槽に浸漬しても抵抗値の上昇がなく、良好な結果が得られた。また、接着強度についても、いずれも60Nを超えており、上記の添加材料の添加効果が現れたものと考えられる。
しかしながら、耐硫化性に関して、実施例4〜6は、いずれもオイル12時間浸漬後の面積抵抗値が1Ω/□未満と、面積抵抗値の上昇が抑制されていたが、カーボン粉末が無添加である比較例4では、面積抵抗値がオイル浸漬3.5時間で1Ω/□以上となり、耐硫化性に劣っていた。
(実施例7、8)
実施例7、実施例8は、実施例5の系列であって、Al23粉末の添加量をそれぞれ0.5質量部、3.0質量部としたものである。
その結果、耐半田食われ性に関して、いずれも12回半田槽に浸漬しても面積抵抗値の上昇は認められず、良好な結果が得られており、かつ、耐硫化性についても、オイル浸漬12時間後において面積抵抗値は1Ω/□未満と、良好な結果が得られた。さらに、接着強度も高い結果であった。
(実施例9)
実施例9も、実施例5の系列であって、Pd粉末を添加せずに、導電粉末をAg粉末のみで構成したものである。
その結果、耐半田食われ性に関して、12回半田槽に浸漬しても面積抵抗値の上昇は認められず、良好な結果が得られており、耐硫化性についても、オイル浸漬12時間後において面積抵抗値は1Ω/□未満と、良好な結果が得られた。さらに、接着強度も高い結果であった。
(比較例5〜7)
比較例5、比較例6、比較例7は、それぞれCaOを含まない本発明の組成範囲外のガラス粉末Eを用いて、Al23粉末を1.0質量部添加し、カーボン粉末を無添加とする組成物を用いて得た厚膜導体であり、組成物中のAg粉末とPd粉末の比率を変化させて、この組成におけるPd添加の効果を確認したものである。いずれも、耐半田食われ性や耐硫化性を向上させるPd粉末が添加されているが、アノーサイトの析出がなく、かつ、アノーサイトとカーボンの添加効果による特殊な結晶構造を有しないこれらの比較例の厚膜導体では、いずれも耐半田食われ性は劣っていた。
耐硫化性に関しては、Ag粉末100質量部に対してPd粉末の添加量が7.0質量部である比較例7に関しては、オイル浸漬後12時間での面積抵抗値の上昇は抑制されており、耐硫化性が発揮されているが、それ以下のPd添加量のものでは、耐硫化性についても劣っていた。
本発明範囲の実施例9においてはAgのみの組成で、Pd粉末を添加していなくとも耐硫化性を得ており、その効果は比較例5との比較により十分に理解される。また、比較例7のPdを高い含有量で有する組成との比較により、本発明ではPdの含有量をその1/10以下に抑えても、同等の耐硫化性が得られることが理解される。
以上のように、本発明による厚膜導体形成用組成物を用いることで、低コストで、耐硫化性、耐半田食われ性を実現することが可能となり、Agの硫化による電極の短絡の抑制と、半田付けの際のAgを含む貴金属材料の半田食われによる電極の短絡の抑制の両方を同時に実現する、厚膜導体形成用組成物を提供することが可能となる。よって、本発明の厚膜導体形成用組成物を用いて作成される厚膜導体を用いることで、イオウ性雰囲気などの特殊な環境下におかれた場合でも、安定した性能を発揮しうるチップ抵抗器などの電子部品が低コストで提供されることから、本発明は、チップ部品メーカーを含む電子部品の分野に対して大いに貢献をなすものといえる。

Claims (6)

  1. 導電粉末と、酸化物粉末と、添加物と、有機ビヒクルとからなる厚膜導体形成用組成物であって、前記導電粉末として、少なくともAg粉末が含まれており、前記酸化物粉末として、SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末と、Al23粉末とが含まれており、かつ、前記添加物としてカーボン粉末が添加されていることを特徴とする、厚膜導体形成用組成物。
  2. 前記導電粉末100質量部に対し、前記カーボン粉末が1〜10質量部、前記SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末が0.1〜15質量部、前記Al23粉末が0.1〜8質量部である、請求項1に記載の厚膜導体形成用組成物。
  3. 前記SiO2−B23−Al23−CaO−Li2O系ガラス粉末の組成比が、SiO2:20〜60質量%、B23:2〜25質量%、Al23:2〜25質量%、CaO:20〜50質量%、およびLi2O:0.5〜6質量%である、請求項1または2に記載の厚膜導体形成用組成物。
  4. 前記導電粉末において、前記Ag粉末100質量部に対し、Au、PdおよびPtから選択される少なくとも1種を0.1〜5質量部添加されている、請求項1〜3のいずれかに記載の厚膜導体形成用組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の厚膜導体形成用組成物を、セラミック基板に塗布した後、500℃以上、900℃未満の温度で焼成することにより得られ、内部にアノーサイトが均一に析出しており、かつ、前記Li2Oがアノーサイトに固定化されていることを特徴とする、厚膜導体。
  6. 前記セラミック基板と、該セラミック基板上に形成され、上面電極と側面電極と裏面電極とからなる内部電極と、該セラミック基板および該上面電極上に形成される抵抗膜と、該抵抗膜を覆う絶縁ガラス保護膜と、前記内部電極を覆うNiメッキからなる中間電極と、半田メッキからなる外部電極とを備えるチップ抵抗器であって、少なくとも前記上面電極が請求項5に記載の厚膜導体のみから構成されていることを特徴とする、チップ抵抗器。
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