以下、本実施形態の給湯機1について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の給湯機1は、蓄熱タンクユニット2、ヒートポンプユニット(加熱手段)3を含んで構成されている。
蓄熱タンクユニット2は、貯湯タンク10、一般給湯回路20、浴槽給湯回路30、給湯用加熱回路40、給湯用熱交換器50、熱媒体導入回路60などで構成されている。
ヒートポンプユニット3は、図示していないが、例えば、冷媒(例えば、二酸化炭素)を圧縮して高温・高圧にするコンプレッサと、コンプレッサからの冷媒を凝縮させるとともに貯湯タンク10からの水を熱交換することによって加熱するコンデンサと、コンデンサからの冷媒を膨張させる膨張弁と、大気中の熱を吸熱して膨張した冷媒を蒸発させるエバポレータと、を備えて構成されている。
また、ヒートポンプユニット3は、その熱媒体入口がヒートポンプ往き管4を介して貯湯タンク10の下部と接続され、熱媒体出口がヒートポンプ戻り管5を介して貯湯タンク10の上部に接続されている。なお、図示していないが、例えばヒートポンプユニット3側には、貯湯タンク10とヒートポンプユニット3との間において貯湯タンク10内の熱媒体を循環させる循環ポンプが設けられている。
なお、本実施形態では、貯湯タンク10内の湯水を加熱するための熱源ユニット(加熱手段)としてヒートポンプユニット3を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば電気ヒータによるものであってもよい。
貯湯タンク10は、例えば、熱媒体として湯水(水)を溜める密閉式のタンクであり、略円筒形状を呈し、軸方向が鉛直方向(上下方向)を向くように配置される。また、貯湯タンク10は、保温性能向上のため、その周囲が発泡スチロールなどの断熱材などで覆われている。なお、貯湯タンク10は、密閉式のものに限定されるものではなく、開放型の貯湯タンクであってもよい。
また、貯湯タンク10は、それぞれステンレス鋼などの材料によって、胴板10a、下部鏡板10bおよび上部鏡板10cの3部材で構成されている。
胴板10aは、円筒状に形成され、鉛直方向の上部と下部が開放した形状である。下部鏡板10bは、胴板10aの下部に接合され、上部鏡板10cが胴板10aの上部に接合されて構成される。
下部鏡板10bは、略半球状(おわん型)に形成され、胴板10aの下部に対して下向きに凸となるように接合される。また、上部鏡板10cは、略半球状(おわん型)に形成され、胴板10aの上部に対して上向きに凸になるように接合される。
下部鏡板10bの径方向の中心部O(図2(a)参照)には、ヒートポンプ往き管4(出管)の上流側の一端が接続されている。すなわち、ヒートポンプ往き管4は、下部鏡板10bの最も低い高さ位置に接続されている。また、ヒートポンプ往き管4は、下部鏡板10bの底と接続される位置から鉛直方向下方に延びて形成され、途中で曲がってヒートポンプユニット3に延びている。
なお、ヒートポンプ往き管4には、排出弁4bを備えた排出管4aが分岐して接続されている。なお、排出弁4bは、例えば、手動で開閉するものであり、貯湯タンク10内に汚れが蓄積した場合、または給湯機1を長期間使用しない場合などに開弁させて、貯湯タンク10内の熱媒体(湯水)を外部に抜き取ることができるようになっている。
また、貯湯タンク10には、異なる高さ位置での熱媒体(湯水)の温度を検知する複数のタンク温度センサ11〜15が設けられている。具体的には、貯湯タンク10には、上部から下部にかけて5つのタンク温度センサ11〜15が設けられている。これにより、コントローラ100によって、貯湯タンク10内の湯水の温度分布を把握できるようになっている。
一般給湯回路20は、一般給湯端末に湯を供給する流路であり、給水管(給水回路)21と給湯管22とを備えている。一般給湯端末とは、台所、洗面所、風呂場などの蛇口やシャワー等であり、供給された湯を一度利用して完了するような利用形態のものを意味している。
給水管21は、上流端が給水源に接続され、下流端が後記する給湯用熱交換器50の二次側の給水の入口51aに接続されている。
なお、給水管21が接続される給水源としては、水道に限定されるものではなく、井戸水(地下水)などを挙げることができる。給水源としては、水道を使用したときの給水の種類は水道水であり、地下水を使用したときの給水の種類は井戸水(地下水)である。
ところで、硬度成分(カルシウム、マグネシウムなど)の多い給水を貯湯タンク10に使用して、貯湯タンク10内の湯を一般給湯や浴槽給湯に使用すると、給湯機1を構成する水路の高温部(ヒートポンプユニット3など)においてスケールによる配管の詰まりが生じる問題がある。しかし、本実施形態の給湯機1では、詳細については後記するが、貯湯タンク10の湯を一般給湯や浴槽給湯に使用するものではないため、貯湯タンク10内の湯の入れ替わりを極力少なくすることができる。その結果、本実施形態に係る給湯機1は、硬度成分の少ない水道水(軟水)のみに適用可能なものではなく、硬度成分を多く含む水道水や井戸水(高硬度水)にも適用することが可能なものである。すなわち、本実施形態に係る給湯機1は、軟水であるか高硬度水であるかにかかわらず、幅広い種類の給水に対応することができる。
給湯管22は、上流端が給湯用熱交換器50の二次側の給湯の出口51bに接続され、下流端が各種の一般給湯端末(蛇口、シャワーなど)に接続されている。また、給湯管22には、上流側から順に、流量センサ23、アキュムレータ24が設けられている。
流量センサ23は、給湯管22を流れる湯の流量(一般給湯端末に供給される湯の流量)を検出するものであり、検出される流量に合わせて後記する給湯循環ポンプ44のモータの回転速度を制御する。例えば、給湯温度が40℃に設定されていれば、一般給湯端末からの給湯温度が40℃になるように給湯循環ポンプ44の回転速度を調整する。
アキュムレータ24は、一般給湯端末から出湯したときに、湯の温度を若干下げてから出湯させるバッファとしての機能を有している。これにより、一般給湯端末から給湯設定温度よりも高い温度の湯が出湯されるのを防止できる。また、アキュムレータ24は、一般給湯端末を閉じたときに過度の圧力が上流側に伝達するのを防止する機能も有している。
また、給水管21には、給湯用熱交換器50の上流側に給水温度センサ25が設けられ、給湯管22には、給湯温度センサ26が設けられている。給水温度センサ25は、給湯用熱交換器50に導入される前の給水の温度を検知するものである。給湯温度センサ26は、給湯用熱交換器50から放出される給湯の温度を検知するものである。なお、給湯温度センサ26は、給湯用熱交換器50の出口51bの近傍の給湯管22に設けられ、一般給湯時と浴槽給湯時の給湯温度をそれぞれ検出する共有の温度センサとなっている。
浴槽給湯回路30は、浴槽Bに湯を供給する流路であり、給水管21、風呂注湯管31を備えている。浴槽給湯回路30の給水管21は、一般給湯回路20の給水管21と共有の配管となっている。また、風呂注湯管31は、給湯用熱交換器50の下流の分岐部Sまで給湯管22の一部と共有の配管であり、分岐部Sの下流側が浴槽などに接続されている。なお、浴槽とは、供給された湯を一度利用して完了するのではなく、貯留しておいて後に再度加熱して利用するような利用態様の設備を意味している。
風呂注湯管31には、分岐部Sよりも下流において、上流側から順に、流量調整弁32、電磁弁33、流量センサ34、水位センサ35、浴槽給湯温度センサ36が設けられている。
流量調整弁32は、風呂注湯管31に流れる湯の流量を調整するものであり、コントローラ100によってその開度が適宜制御される。例えば、一般給湯を使用せず浴槽給湯(例えば、湯はり)のみを行う場合には、流量調整弁32の開度を最大に調整し、また浴槽給湯時に一般給湯を使用する場合には、風呂注湯管31の流量が少なくなるようにまたは風呂注湯管31の流量がほぼゼロになるように流量調整弁32の開度を調整する。
電磁弁33は、電磁作動式の遮断弁(ON・OFF弁)であり、コントローラ100によって開閉制御される。電磁弁33を閉じることにより、浴槽への給湯が遮断される。なお、電磁弁33は、浴槽に溜めた浴槽水が一般給湯回路20に逆流しないように逆流防止機能(逆止弁など)を備えている。
流量センサ34は、風呂注湯管31を流れる温水の流量を検出するものである。また、コントローラ100によって流量センサ34の検出値が積算されることにより、浴槽に注がれる温水の給湯量を検知することができる。
水位センサ35は、浴槽に貯留された浴槽水の水位を検知するものである。コントローラ100は、例えば、浴槽給湯時に、水位センサ35によって予め設定された水位に達したことを検知すると、浴槽給湯を停止するようになっている。
浴槽給湯温度センサ36は、浴槽に供給された温水(湯)の温度を検出するものである。
給湯用加熱回路40は、貯湯タンク10に貯留された熱媒体(湯水)を取り出して貯湯タンク10に戻すものであり、給湯熱交換器往き管41と、給湯熱交換器戻り管42,43と、給湯循環ポンプ44とで構成されている。
給湯熱交換器往き管41は、貯湯タンク10内の熱媒体(湯水)を給湯用熱交換器50に供給する流路であり、上流端が貯湯タンク10の上部に接続され、下流端が給湯用熱交換器50の一次側の入口51cに接続されている。
給湯熱交換器戻り管42は、給湯用熱交換器50で熱交換後の熱媒体を貯湯タンク10に戻す流路の一部であり、上流端が給湯用熱交換器50の一次側の出口51dに接続され、下流端が給湯循環ポンプ44の入口に接続されている。
また、給湯熱交換器戻り管41には、他端(下流端)が大気(外気)に開放する逃し弁46を備えた逃し管45が分岐して接続されている。逃し弁46は、貯湯タンク10の耐圧を超えない所定圧力に至ったときに開弁するものであり、コントローラ100によって電気的に制御されるものではなく、前記所定圧力に至ったときに機械的に開弁するようになっている。また、逃し弁46は、開弁後に貯湯タンク10内の圧力が所定圧力を下回ったときに自動的に閉弁するようになっている。
なお、逃し弁46は、機械的に動作するものに限定されず、貯湯タンク10内の圧力を検知する圧力センサを設けて、圧力センサの検出値に基づき(前記と同様な所定圧になったときに)逃し弁46を電気的な制御によって開弁するものであってもよい。
給湯熱交換器戻り管43は、給湯用熱交換器50で熱交換後の熱媒体を貯湯タンク10に戻す流路の一部であり、上流端が給湯循環ポンプ44の出口(吐出口)に接続され、下流端が貯湯タンク10の下部に接続されている。また、給湯熱交換器戻り管43は、貯湯タンク10の下部鏡板10bの径方向の中心部Oよりも径方向外側の位置に接続されている。
給湯循環ポンプ44は、図示しないモータの回転力によって羽根車を回転させることにより、貯湯タンク10内の上部から給湯熱交換器往き管41を介して熱媒体(高温水)を取り出し、給湯熱交換器戻り管42,43を介して貯湯タンク10の下部に戻すようにして循環させるようになっている。
また、給湯循環ポンプ44は、コントローラ100によって図示しないモータの回転速度が制御されることにより、給湯用熱交換器50における二次側の給水への熱伝達率を変化させて、一般給湯時の給湯温度および浴槽給湯時の給湯温度などを調整するようになっている。換言すると、本実施形態の給湯機1は、給湯用熱交換器50によって熱交換された後の給湯(湯)を、給水と混合させて所望の給湯温度(湯)にするような混合弁を備えることはせず、貯湯タンク10から出た湯は、全量貯湯タンク10に戻すようになっている。ただし、湯の温度をより精度よく調整する目的で混合弁を設けるものであってもよい。
給湯用熱交換器50は、給水管21からの給水を、貯湯タンク10の上部から取り出した高温の熱媒体(高温水)と熱交換させて、給水を加熱するようになっている。給湯用熱交換器50によって生成された給湯は、給湯管22を介して一般給湯に使用され、また風呂注湯管31を介して浴槽給湯に使用される。
熱媒体導入回路60は、熱媒体として水が用いられ、給水源からの給水(水道水、井戸水など)を貯湯タンク10に供給(補充)するものであり、タンク入り管61,62、減圧弁63で構成されている。
タンク入り管61は、上流端が給水管21の途中の分岐S1と接続され、下流端が減圧弁63の一次側と接続されている。タンク入り管62は、上流端が減圧弁63の二次側と接続され、下流端が貯湯タンク10の下部の入口10b1と接続されている。したがって、タンク入り管61,62は、給水管21と給湯熱交換器戻り管43とを一つに集約して、貯湯タンク10に接続するものである。
減圧弁63は、給水の圧力(一次圧)を所定の圧力(二次圧)に減圧することで、貯湯タンク10を保護するものである。なお、減圧弁63に設定される所定の圧力は、貯湯タンク10の強度に応じて適宜変更することができる。
なお、本実施形態では、熱媒体導入回路60に減圧弁63を設けた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、減圧弁63とともに給水管21の分岐S1の下流側に別の減圧弁を設ける構成であってもよい。または、減圧弁63とともに、給水管21の分岐S1の上流側(分岐前)に別の減圧弁を設ける構成であってもよい。換言すると、図1に示すように、二次側の給水を減圧しないで一般給湯および浴槽給湯に使用するものに限定されず、二次側(一般給湯回路20、浴槽給湯回路30を通る側)を減圧して給湯するものであってもよい。
このように、本実施形態では、給湯用加熱回路40が閉回路によって構成されているので、一般給湯端末および浴槽に貯湯タンク10内の湯水を放出(使用)しないようになっている。換言すると、一般給湯や浴槽給湯の際に貯湯タンク10内の湯水(熱媒体)を、二次側の給水を加熱するための熱媒体としてのみ利用するようになっている。
なお、コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えて構成され、給湯循環ポンプ44のモータの回転速度、流量調整弁32の開度、電磁弁33の開閉を制御するとともに、流量センサ23,34による各流量、水位センサ35による浴槽水の水位、タンク温度センサ11〜15、給水温度センサ25、給湯温度センサ26、および浴槽給湯温度センサ36による各温度を取得する。
また、コントローラ100には、風呂リモコン101や台所リモコン102が有線または無線により接続されている。風呂リモコン101や台所リモコン102には、給湯機1の起動操作、一般給湯設定温度や浴槽給湯設定温度等の各種運転条件の設定等を行う操作部が設けられている。一般給湯設定温度は、一般給湯端末(蛇口やシャワーなど)から出湯される際の温度であり、浴槽給湯設定温度とは、湯はりなどによって浴槽に貯留される湯の温度である。また、コントローラ100は、風呂リモコン101や台所リモコン102の操作部の操作に基いて、ヒートポンプユニット3、流量調整弁32、電磁弁33、給湯循環ポンプ44を制御する。
図2(a)に示すように、貯湯タンク10内には、タンク入り管62が接続される入口10b1に対向する位置にバッフル板(バッフル)70が設けられている。なお、図2(a)は、貯湯タンク10を溶接によって製造する際の状態の一例を示している。したがって、図2(a)の左右方向が貯湯タンク10の鉛直方向(上下方向)に相当している。
バッフル板70は、貯湯タンク10内の液体を攪拌しないように、タンク入り管61,62から導入される液体の鉛直方向(上下方向)に沿う流れを阻止して水平方向に拡散するものである。バッフル板70は、例えば、円盤状の部材の周縁部に一対の脚部70a(図2(a)では一方のみ図示)が形成されて、各脚部70aが下部鏡板10bの内壁10sに、下部鏡板10bを胴板10aに溶接する前に予め溶接などによって固定される。
これにより、一般給湯時や浴槽給湯時に給湯熱交換器戻り管43を通って貯湯タンク10に戻る戻り水(低温水)がバッフル板70の下面に当たることで、例えば、貯湯タンク10内の上部に溜まった高温水、下部に溜まった低温水、上部と下部の間に溜まった中温水からなる境界層を突き破って、それぞれの境界層が混じり合う(例えば、すべてが中温水となる)のを防止することができる。
また、貯湯タンク10の下部鏡板10bには、入口10b1と対応する位置に、給湯熱交換器戻り管43と接続するための接続管10dが貯湯タンク10から下向きに延びて固定されている。また、同様に、下部鏡板10bにも、出口10b2と対応する位置に、ヒートポンプ往き管4と接続するための直線状の接続管10eが貯湯タンク10から下向きに延びて固定されている。なお、接続管10dは、必ずしも直線状に形成されている必要はなく、断面視においてL字状など他の形状であってもよい。また、貯湯タンク10と給湯熱交換器戻り管43およびヒートポンプ往き管4とを接続できるものであれば、本実施形態の構成に限定されるものではなく、前記のような接続管10d,10eを設けなくてもよい。
なお、バッフル板70の形状や円盤状の部材の向き(傾き)については、下部鏡板10bの形状、入口10b1の位置、給湯熱交換器戻り管43からの戻り水の水圧などに応じて適宜変更することができる。
ところで、本実施形態に係る給湯機1は、胴板10aと下部鏡板10bおよび上部鏡板10cとが溶接によって接合されるものである。溶接手順としては、上部鏡板10cを胴板10aに接合した後、下部鏡板10bを胴板10aに接合するようになっている。したがって、上部鏡板10cを胴板10aに接合する際には、後記する治具120(溶接用治具)を胴板10aの内側に配置して行う。
溶接工法としては、例えばTIG(Tungsten Inert Gas)溶接を選択することができる。ステンレス鋼製の貯湯タンク10の溶接では、例えば、溶接部が空気中の酸素と接触すると、ステンレス鋼に含まれるクロムの酸化により溶接組織中に酸化物が生成するので、溶接時に不活性ガス(アルゴンガスなど)を用いて溶融部を空気から遮蔽する必要がある。さらに、溶接品質を確かなものとするために、溶接側のみだけでなく、溶接部の裏面側も不活性ガスにより空気から遮蔽し、溶接部の裏面側の酸化を防止することも必要となる。
そこで、本実施形態の給湯機1では、図2(a)に示すように、貯湯タンク10を横置きにした状態において、貯湯タンク10の外側の胴板10aと下部鏡板10bとの突合せ部(または重ね合わせ部)に溶接トーチ110を配置し、貯湯タンク10の内側の胴板10aと下部鏡板10bとの突合せ部(または重ね合わせ部)にシールドガス供給用の治具120を配置する。このように、本実施形態では、貯湯タンク10の外側にバーナおよびシールドガス、内側にシールドガスを配置している。
なお、本実施形態では、貯湯タンク10の外側に溶接トーチ110、内側に治具120を配置した場合を例に挙げて説明するが、前記とは逆に貯湯タンク10の内側に溶接トーチ110、外側に治具120を配置して溶接するようにしてもよい。
溶接トーチ110は、軸方向に沿ってタングステン電極が突出するとともにタングステン電極の周囲からシールドガスを噴射するように構成された先端部110aを有している。そして、溶接トーチ110の先端部110aが、胴板10aと下部鏡板10bとの溶接箇所となる境界部分(突合せ部など)に対向するように、溶接トーチ110を保持する治具(不図示)によって位置決めする。
治具120(溶接用治具)は、シールドガスを貯湯タンク10内に導入するシールドガス導入部120aと、該シールドガス導入部120aの先端に設けられたノズル120bとを備えている。治具120は、貯湯タンク10の内側に接続管10eを介して挿入できる径によって形成され、ノズル120bを前記溶接トーチ110の先端部110aと対応する位置に位置決めする。
本実施形態では、溶接トーチ110と治具120がそれぞれ所定の位置に位置決めされ、貯湯タンク10が中心部O(図2(a)参照)を支点として回転するように構成されている。なお、図示していないが、貯湯タンク10には、該貯湯タンク10を横向きで回転支持させる治具(不図示)が設けられている。図2(b)に示すように、溶接トーチ110と治具120とで貯湯タンク10を外側と内側とで挟んだ状態で溶接を開始する。
そして、溶接を開始してから貯湯タンク10を図示時計回り方向に90度回転させることにより、図2(c)に示すように、貯湯タンク10の壁面にビード(溶接痕の盛り上がり)Bが形成される。このようにして、貯湯タンク10を360度回転させることにより、胴板10aと下部鏡板10bとの溶接が完了する。この場合、治具120が貯湯タンク10の径方向の中心部Oから挿入されているので、溶接時に貯湯タンク10を、中心部Oを支点として回転させたとしても、治具120と貯湯タンク10との位置関係が変化することがない。つまり、溶接時に治具120と貯湯タンク10との間の位置を調整する必要がない。
なお、本実施形態では、溶接トーチ110および治具120を位置決めして、貯湯タンク10を回転させて溶接を行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、貯湯タンク10を固定して、溶接トーチ110および治具120を回転させるようにして溶接してもよい。また、貯湯タンク10を横置きにした状態で溶接する場合を例に挙げて説明したが、貯湯タンク10を縦置きにした状態で溶接するようにしてもよい。
また、本実施形態では、TIG溶接を例に挙げて説明したが、MIG(Metal Inert Gas)溶接、MAG(Metal Inert Gas)溶接など貯湯タンク10を高い溶接品質で構成できるものであればTIG溶接に限定されるものではない。
次に、本実施形態の給湯機1の動作について説明する。まず、沸き上げ、一般給湯、浴槽給湯の基本的な動作について図1を参照して説明する。
沸き上げの場合には、例えばタイマーを利用して深夜電力の時間帯において、貯湯タンク10内の熱媒体(低温水)をヒートポンプユニット3によって沸き上げる。すなわち、図示しないポンプを介して貯湯タンク10の下部からヒートポンプ往き管4を介して熱媒体をヒートポンプユニット3に送り、ヒートポンプユニット3によって温められた熱媒体(高温水)を、ヒートポンプ戻り管5を介して貯湯タンク10の上部に戻すことで、貯湯タンク10内には、例えば、下部に低温水、中間部に中温水、上部に高温水が層状に貯留される。なお、貯湯タンク10の全体(ほぼ全体)が高温水となるような沸き上げも可能である。
また、沸き上げ時に、貯湯タンク10内の圧力が前記所定圧力に至った場合には逃し弁46が開弁し、貯湯タンク10内の熱媒体(体積膨張分の湯水)が逃し管45を介して外部に排出される。
また、一般給湯時や浴槽給湯時、給湯用熱交換器50から給湯熱交換器戻り管42,43を通って貯湯タンク10に戻る熱媒体(水)は、給水とほぼ同じ温度になっているため、貯湯タンク10内の温度および圧力は下降する。このように、貯湯タンク10内の圧力が下がることで、逃し弁46から排出された熱媒体と同等量の水(前記体積膨張分の給水)が、タンク入り管61,62から給湯熱交換器戻り管43を介して補給されることになる。したがって、貯湯タンク10内には、逃し弁46から排出された分の熱媒体が自動的に供給されるようになっている。
一般給湯の場合には、流量センサ23によって一般給湯回路20内の流れが検知されると運転が開始される。なお、このとき電磁弁33は閉じており、給湯(湯)が浴槽へ供給されないようになっている。すなわち、コントローラ100は、一般給湯端末(蛇口など)が開動作され、流量センサ23によって一般給湯回路20の流れが検知されると、台所リモコンの操作部に設定された一般給湯設定温度の温水が一般給湯端末から供給されるように、給湯循環ポンプ44が駆動される。
詳述すると、コントローラ100は、タンク温度センサ11で検知される貯湯タンク10から熱媒体を取り出す際の熱媒体の熱媒体温度、給水温度センサ25で検知される給水温度、流量センサ23で検知される流量に基いて、給湯温度センサ26で検知される温度が目標温度となるように給湯循環ポンプ44のモータの回転速度を制御する。例えば、熱媒体温度、給水温度、流量、回転速度の関係のテーブルを複数備え、前記テーブルに基いて回転速度を選択することで、目標温度となるように設定できる。そして、コントローラ100は、一般給湯端末が閉動作されたことが流量センサ23によって検知されることで、給湯循環ポンプ44が停止する。
なお、一般給湯時における給湯温度センサ26での目標温度は、風呂リモコン101や台所リモコン102の操作部で設定される一般給湯設定温度に対応する温度であり、温水が給湯温度センサ26から一般給湯端末に到達するまで(温水が蛇口から出るまで)の間の温度低下等を考慮して、一般給湯設定温度よりも高く設定される。ただし、目標温度と一般給湯設定温度とを同じに設定してもよい。
浴槽給湯の場合には、例えば風呂リモコンの操作部に設けられた湯はり開始の操作スイッチのオン操作によって運転が開始される。なお、運転開始前には、電磁弁33が閉弁し、流量調整弁32の開度が最小に設定されている。
湯はりの運転が開始されると、電磁弁33が開弁し、流量調整弁32の開度が徐々に拡大するように制御され、風呂リモコンの操作部で設定された浴槽給湯設定温度(湯はり温度)の温水が浴槽に供給されるように、給湯循環ポンプ44のモータの回転速度が制御される。
詳述すると、コントローラ100は、給水温度センサ25で検知される給水温度と流量センサ34で検知される流量に基いて、給湯温度センサ26で検知される温度が目標温度となるように給湯循環ポンプ44のモータの回転速度を制御する。そして、コントローラ100は、浴槽に所定量の温水が貯留されたことを流量センサ34の検出値の積算値、または水位センサ35の検出値によって検知することで、給湯循環ポンプ44を停止して、浴槽給湯を終了する。
なお、湯はりの運転終了時には、流量調整弁32の開度が最小に(小さく)なるまで徐々(段階的)に絞られた後、電磁弁33を閉じる。これにより、電磁弁33の上流側に過度な圧力が加わるのを防止できる。逆に、浴槽給湯の開始時には、流量調整弁32を絞った状態で電磁弁33を開弁することにより、負圧の発生によりセンサに不具合が生じるのを防止できる。
また、給湯温度センサ26での目標温度は、風呂リモコン101の操作部で設定される浴槽給湯設定温度に対応する温度であり、温水が給湯温度センサ26から浴槽に到達するまでの間の温度低下等を考慮して、浴槽給湯設定温度よりも高く設定される。ただし、目標温度と浴槽給湯設定温度とが同じであってもよい。
また、一般給湯回路20および浴槽給湯回路30が、給湯用熱交換器50の下流において分岐部Sを介して形成され、分岐部Sの下流に流量調整弁32が設けられているので、浴槽給湯時に一般給湯が作動して、流量調整弁32が絞られる方向に制御されたとしても、一般給湯回路20側の給湯の流量が連動して絞られるのを防止することができる。
また、浴槽給湯としては、湯はりの他、浴槽の湯の温度が低くなった場合に浴槽給湯設定温度よりも高い温度の湯を追加して浴槽の湯の温度を上げる差し湯、浴槽内の湯の水位が低くなった場合に浴槽給湯設定温度の温水を追加する足し湯などを設定できる。
また、図示していないが、本実施形態の給湯機1において、貯湯タンク10内に浴槽に溜められた浴槽水を加熱して再び浴槽に戻す追焚き用の熱交換器を備えるものであってもよい。
以上説明したように、本実施形態の給湯機1は、貯湯タンク10内の湯水(熱媒体)を一般給湯や浴槽給湯に使用せず、給湯用熱交換器50との熱交換によって給湯を行い、給水管21と給湯熱交換器戻り管43とを貯湯タンク10に入る前に1本に集約して貯湯タンク10に接続したものである。これにより、浴槽給湯(湯はりなど)による貯湯タンク10への給水がなくなる(頻度が激減する)、つまり、貯湯タンク10内の水沸き上げ時の膨張容積分が逃し弁46から排出された分のみ貯湯タンク10に水が入るため、給湯熱交換器戻り管43の流れに影響を与えることがなくなり(頻度が激減する)、給湯熱交換器戻り管43の配置に対する制約がなくなる。制約がなくなるとは、給水管21と給湯熱交換器戻り管43とをひとつに集約して貯湯タンク10に接続することが可能になるということである。これにより、給湯温度を安定させることができる。
ところで、図3に示すように、貯湯タンク200内の湯水を一般給湯や浴槽給湯に使用する従来の給湯機では、給湯温度を安定させるため、給水管210と給湯熱交換器戻り管220とを別々に設ける必要があり、部品点数の増加、構造の複雑化、製造作業工数の増加等の問題があった。また、貯湯タンク200内の温度境界層を保つためのバッフル(じゃま板)201,202を、貯湯タンク200内の給水管210の出入口210aと給湯熱交換器戻り管220の出入口220aに対向する位置にそれぞれ設ける必要があり、その結果、貯湯タンク200内に対してバッフル201,202を固定する溶接箇所の増加、溶接箇所の増加による腐食懸念箇所の増加などの問題があった。
そこで、本実施形態では、給水管21と給湯熱交換器戻り管43とをタンク入り管61,62に集約させて貯湯タンク10に接続したので、貯湯タンク10内に設けるバッフル板70をひとつ(一部品)で済ますことが可能になる。その結果、貯湯タンク10の構成が簡素化され、製造作業工数を低減することが可能となる。さらに、バッフル板70が設けられていない貯湯タンク10の溶接治具挿入口(接続管10eの出口10b2)を配管の一部として利用可能となる。よって、バッフル板70を貯湯タンク10(下部鏡板10b)に溶接する際の溶接箇所を減らすことができ、また溶接箇所の減少による腐食懸念箇所を減少させることが可能になる。
また、図3に示すように、従来の給湯機では、胴板200aと、該胴板200aの上部と下部を覆う一対の鏡板200b(上部の鏡板は図示省略)との3部材を溶接することによって貯湯タンク200が構成されている。このような構成の貯湯タンク200を溶接する場合、溶接品質向上のため、タンク外側だけではなく、タンク内側も不活性ガスにより空気から遮断することが行われている。ところが、胴板200aに対して最初に取り付ける上部の鏡板の溶接については、もう一方(下側)の鏡板200bが溶接されていない状態で溶接できるので、溶接用治具を貯湯タンク200の内側に挿入することは容易である。しかし、その後に取り付ける下側の鏡板200bの溶接については、溶接用の治具をタンク内側に挿入するには、給水管210の出入口210aや給湯熱交換器戻り管220の出入口220aを介して挿入する必要がある。しかし、貯湯タンク200内には、出入口210a,220aに対向する位置にバッフル201,202が位置しているので、胴板200aと鏡板200bに給水管210や給湯熱交換器戻り管220を通して溶接用の治具を挿入することができない。このため、貯湯タンク200に給水管210と給湯熱交換器戻り管220が接続される場所とは別の場所に溶接用の治具を挿入するための溶接治具挿入口230が必要となる。しかし、この溶接治具挿入口230は溶接が終了すれば、不要なものとなり、溶接終了後は溶接治具挿入口230に栓240をして溶接などで塞ぐ必要があるため、この部分も腐食懸念箇所となるという問題があった。
そこで、本実施形態では、上部鏡板10cと胴板10aと下部鏡板10bとで3部材で構成される貯湯タンク10において、下部鏡板10bに熱媒体の入口10b1と出口10b2を設けるとともに、入口10b1に対応(対向)する貯湯タンク10内にバッフル板70を設け、出口10b2に貯湯タンク10からのヒートポンプ往き管4(出管)を取り付けたので、治具120(溶接用治具)を挿入するための別(専用)の溶接治具挿入口を不要にでき、溶接腐食懸念箇所が無駄に増えるのを防止できる。
また、本実施形態では、貯湯タンク10を円筒状に形成し、出口10b2を貯湯タンク10の径方向の中心部O(図2(a)参照)に位置するようにしたので、治具120(溶接用治具)を径方向の中心部Oの出口10b2から挿入して、貯湯タンク10を回転させながら、つまり治具120の位置はそのままで貯湯タンク10のみを回転させながら溶接することができるため、溶接作業が容易となる。
また、本実施形態では、貯湯タンク10の中心部Oに出口10b2を設けることで、ヒートポンプ往き管4および排水管4aを貯湯タンク10の最低部に設置することが可能となり、貯湯タンク10内の堆積物をより確実に排出できる。しかも、貯湯タンク10内で最も水温の低い場所(最低部)からヒートポンプユニット3へ水を送ることができ、ヒートポンプユニット3の高効率な沸き上げが可能となる。