JP2012038572A - 正極活物質の剥離方法及びリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 リチウムイオン電池から正極活物質を剥離するに際し、有価金属の溶出を抑制し、回収ロスをなくすことができる正極活物質の剥離方法及びその剥離方法を適用したリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法を提供する。
【解決手段】 リチウムイオン電池を構成する正極活物質を正極基板から剥離する正極活物質の剥離方法であって、リチウムイオン電池を解体して得られた電池解体物を、界面活性剤溶液に浸漬して攪拌することにより、正極基板から正極活物質を剥離する。
【選択図】 なし
【解決手段】 リチウムイオン電池を構成する正極活物質を正極基板から剥離する正極活物質の剥離方法であって、リチウムイオン電池を解体して得られた電池解体物を、界面活性剤溶液に浸漬して攪拌することにより、正極基板から正極活物質を剥離する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、正極活物質の剥離方法及びその剥離方法を適用したリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法に関し、特に、正極活物質に含まれる有価金属の溶出を抑制することができる正極活物質の剥離方法及び有価金属の回収方法に関する。
最近の地球温暖化傾向に対し、電力の有効利用が求められている。その一つの手段として電力貯蔵用2次電池が期待され、また大気汚染防止の立場から自動車用電源として、大型2次電池の早期実用化が期待されている。また、小型2次電池も、コンピュータ等のバックアップ用電源や小型家電機器の電源として、特にデジタルカメラや携帯電話等の電気機器の普及と性能アップに伴って、需要は年々増大の一途を辿る状況にある。
これら2次電池としては、使用する機器に対応した性能の2次電池が要求されるが、一般にリチウムイオン電池が主に使用されている。
このリチウムイオン電池は、アルミニウムや鉄等の金属製の外装缶内に、銅箔からなる負極基板に黒鉛等の負極活物質を固着した負極材、アルミニウム箔からなる正極基板にニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウム等の正極活物質が固着させた正極材、アルミニウムや銅からなる集電体、ポリプロピレンの多孔質フィルム等の樹脂フィルム製セパレータ、及び電解液や電解質等が封入されている。
ところで、リチウムイオン電池の拡大する需要に対して、使用済みのリチウムイオン電池による環境汚染対策の確立が強く要望され、有価金属を回収して有効利用することが検討されている。
上述した構造を備えたリチウムイオン電池から有価金属を回収する方法としては、例えば特許文献1及び2に記載されるような乾式処理又は焼却処理が利用されている。しかしながら、これらの方法は、熱エネルギーの消費が大きいうえ、リチウム(Li)やアルミニウム(Al)を回収できない等の欠点があった。また、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が含有されている場合には、炉材の消耗が著しい等の問題もあった。
このような乾式処理又は焼却処理の問題に対して、特許文献3及び4に記載されているように、湿式処理によって有価金属を回収する方法が提案されている。この湿式処理による方法においては、酸性溶液等を用いて、リチウムイオン電池の解体物を全て溶解して有価金属を回収する全溶解法が提案されている。しかしながら、この全溶解法の場合、大過剰に存在するアルミニウム、銅(Cu)、鉄(Fe)等の元素に薬品が消費されてしまい、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、リチウム等の有価金属を効果的に回収するには経済的ではなかった。
これに対し、リチウムイオン電池から正極材を選択的に剥離して、その正極材から有価金属を効率的に回収する選択剥離法による湿式処理が提案されている。この正極材の選択剥離法においては、まず有価金属が含まれる正極活物質を正極箔(Al等)から剥離するのが最初の化学処理となる。従来、この正極活物質の剥離処理には、硫酸水溶液等の酸性溶液や水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を用いていた。この正極活物質剥離工程で使用する液体は、電解液や有機物等、その後の有価金属の回収に障害となるものが多く含まれており、排水処理が必要となる。したがって、この液体に有価金属を溶出させないことが好ましい。
しかしながら、この剥離工程において、硫酸水溶液等の酸性溶液を用いた場合には、正極活物質に含まれている有価金属の一部が溶出してしまい、その有価金属の回収ロスとなってしまう。一方で、アルカリ溶液を用いた場合には、薬剤の消費量が多くなってしまうとともに、アルカリにより正極材の基板のアルミ箔を溶解してしまい、最終的にアルミを含有する排液を処理することが必要となる。
このように、従来の湿式処理によるリチウムイオン電池からの有価金属回収方法における正極活物質剥離処理では、有価金属の回収ロスや正極箔のAl溶解等を生じさせてしまい、効果的に有価金属の回収ができていなかった。
そこで本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、リチウムイオン電池から正極活物質を剥離するに際し、有価金属の溶出を抑制するとともにその有価金属の回収ロスを防止し、効果的に正極活物質を剥離することができる正極活物質の剥離方法及びその剥離方法を適用したリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、リチウムイオン電池から正極活物質を剥離するに際して、界面活性剤を使用することによって、正極活物質に含まれる有価金属の溶出を防止し、有価金属の回収ロスを抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、リチウムイオン電池を構成する正極活物質を正極基板から剥離する正極活物質の剥離方法であって、前記リチウムイオン電池を解体して得られた電池解体物を、界面活性剤溶液に浸漬して攪拌することにより、正極基板から正極活物質を剥離することを特徴とする。
また、本発明は、リチウムイオン電池から有価金属を回収する有価金属の回収方法であって、前記リチウムイオン電池を解体して得られた電池解体物を、界面活性剤溶液に浸漬して攪拌することにより、正極活物質を正極基板から剥離する工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、リチウムイオン電池を構成する正極活物質を正極基板から剥離する剥離処理において、正極活物質に含まれる有価金属が溶液に溶出することを抑制し、有価金属の回収ロスをなくして、効果的に正極活物質を剥離することができる。
以下、本発明に係る正極活物質の剥離方法及びその剥離方法を適用したリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法について、図面を参照しながら以下の順序で詳細に説明する。
1.本発明の概要
2.リチウムイオン電池からの有価金属回収方法
3.他の実施形態
4.実施例
1.本発明の概要
2.リチウムイオン電池からの有価金属回収方法
3.他の実施形態
4.実施例
<1.本発明の概要>
本発明は、正極活物質の剥離方法及びその剥離方法を適用したリチウムイオン電池から有価金属を回収方法であって、リチウムイオン電池を構成する正極活物質を正極基板(正極箔)から剥離するに際して、界面活性剤を用いて剥離する方法である。
本発明は、正極活物質の剥離方法及びその剥離方法を適用したリチウムイオン電池から有価金属を回収方法であって、リチウムイオン電池を構成する正極活物質を正極基板(正極箔)から剥離するに際して、界面活性剤を用いて剥離する方法である。
従来、有価金属が含まれる正極活物質を正極箔(Al等)から剥離する剥離処理においては、酸性又はアルカリ性の溶液が使用されていた。しかしながら、酸性溶液を用いて正極活物質を剥離させた場合、その酸性溶液に回収すべき有価金属を溶出させてしまい、有価金属の回収ロスを招いていた。また、アルカリ溶液を用いた場合には、溶液を消費量が多くなるとともに、正極箔であるアルミニウム箔を溶解することになってしまうため、アルミニウムを含有した排液となり、特別な排液処理を行うことが必要となっていた。
そこで、本発明では、正極活物質を剥離する剥離処理において、界面活性剤を用いて機械的な攪拌処理を施す。これにより、有価金属が溶液に溶出してその有価金属の回収ロスを招いたり、正極箔のアルミニウムの溶解等を生じさせることなく、効果的に正極活物質を正極基板から剥離することができる。
以下、本発明を適用した、リチウムイオン電池からの有価金属の回収方法に関する実施形態(以下、「本実施の形態」という。)についてさらに詳細に説明する。
<2.リチウムイオン電池からの有価金属回収方法>
まず、本実施の形態におけるリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法を、図1に示す工程図を参照して以下に説明する。図1に示すように、有価金属の回収方法は、破砕・解砕工程S1と、洗浄工程S2と、正極活物質剥離工程S3と、浸出工程S4と、中和工程S5と、硫化工程S6とを有する。なお、リチウムイオン電池からの有価金属の回収方法については、これらの工程に限られるものではなく、適宜変更することができる。
まず、本実施の形態におけるリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法を、図1に示す工程図を参照して以下に説明する。図1に示すように、有価金属の回収方法は、破砕・解砕工程S1と、洗浄工程S2と、正極活物質剥離工程S3と、浸出工程S4と、中和工程S5と、硫化工程S6とを有する。なお、リチウムイオン電池からの有価金属の回収方法については、これらの工程に限られるものではなく、適宜変更することができる。
(1)破砕・解砕工程
破砕・解砕工程S1では、使用済みのリチウムイオン電池から有価金属を回収するために、電池を破砕・解砕することによって解体する。その場合、電池が充電された状態では危険であるため、解体に先立って、電池を放電させることにより無害化することが好ましい。
破砕・解砕工程S1では、使用済みのリチウムイオン電池から有価金属を回収するために、電池を破砕・解砕することによって解体する。その場合、電池が充電された状態では危険であるため、解体に先立って、電池を放電させることにより無害化することが好ましい。
この破砕・解砕工程では、無害化させた電池を、通常の破砕機や解砕機を用いて適度な大きさに解体する。また、外装缶を切断し、内部の正極材や負極材等を分離解体することもできるが、この場合は分離した各部分をさらに適度な大きさに切断することが好ましい。
(2)洗浄工程
洗浄工程S2では、破砕・解砕工程S1を経て得られた電池解体物を、アルコール又は水で洗浄することにより、電解液及び電解質を除去する。リチウムイオン電池には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の有機溶剤や、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)のような電解質が含まれている。そのため、これらを予め除去することで、後述する正極活物質剥離工程S3での浸出液中に有機成分やリン(P)やフッ素(F)等が不純物として混入することを防ぐことができる。
洗浄工程S2では、破砕・解砕工程S1を経て得られた電池解体物を、アルコール又は水で洗浄することにより、電解液及び電解質を除去する。リチウムイオン電池には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の有機溶剤や、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)のような電解質が含まれている。そのため、これらを予め除去することで、後述する正極活物質剥離工程S3での浸出液中に有機成分やリン(P)やフッ素(F)等が不純物として混入することを防ぐことができる。
電池解体物の洗浄にはアルコール又は水を使用し、電池解砕物を好ましくは10〜300g/lの割合で投入して、振盪又は撹拌して有機成分及び電解質を除去する。アルコールとしては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合液が好ましい。一般的にカーボネート類は一般的には水に不溶であるが、炭酸エチレンは水に任意に溶け、その他の有機成分も水に多少の溶解度を有しているため、水でも洗浄可能である。また、アルコール又は水に対する電池解体物の量については、10g/lより少ないと経済的ではなく、また300g/lよりも多くなると電池解体物がかさばって洗浄が難くなる。
電池解体物の洗浄は、複数回繰り返して行うことが好ましい。また、例えば最初にアルコールのみを用いて洗浄した後に水を用いて再度洗浄する等、洗浄液の成分を変えて繰り返し行ってもよい。この洗浄工程により、有機成分及び電解質に由来するリンやフッ素等を後工程に影響を及ぼさない程度にまで除去することができる。
(3)正極活物質剥離工程
正極活物質剥離工程S3では、破砕・解砕工程S1を経て得られた電池解体物について、その正極基板(正極箔)に固着されている正極活物質を剥離して分離する。本実施の形態では、この正極活物質剥離工程S3において、電池解体物を界面活性剤溶液に投入して浸漬し、機械的な攪拌処理を行うことによって正極基板に充填された正極活物質を剥離する。なお、ここで電池解体物とは、電池解体物から正極材部分だけを選び出したものも含む用語であり、この工程においては、電池解体物全てを界面活性剤の溶液に浸漬する場合も、電池解体物から正極材部分だけを選び出して浸漬する場合も含むものとする。
正極活物質剥離工程S3では、破砕・解砕工程S1を経て得られた電池解体物について、その正極基板(正極箔)に固着されている正極活物質を剥離して分離する。本実施の形態では、この正極活物質剥離工程S3において、電池解体物を界面活性剤溶液に投入して浸漬し、機械的な攪拌処理を行うことによって正極基板に充填された正極活物質を剥離する。なお、ここで電池解体物とは、電池解体物から正極材部分だけを選び出したものも含む用語であり、この工程においては、電池解体物全てを界面活性剤の溶液に浸漬する場合も、電池解体物から正極材部分だけを選び出して浸漬する場合も含むものとする。
本実施の形態では、このようにして界面活性剤を含有した溶液を用いて機械的攪拌処理によって正極活物質を剥離させることにより、正極活物質中の有価金属が溶液中に溶出することを抑制し、有価金属の回収ロスを防止することができる。また、正極活物質と正極基板である正極箔(アルミニウム箔)とを固体のままで分離することができ、そのアルミニウムが溶出することをなくし、排液処理等も不要となる。正極基板は、正極基板としてのアルミニウム箔上に、結着剤としてのテフロン(登録商標)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の疎水性化合物が塗布されている。このことから、本実施の形態においては、界面活性剤が、その疎水性化合物の表面や界面から浸透することによって、正極活物質やアルミニウム箔を溶解させることなく、剥離を促進させるものと考えられる。
使用する界面活性剤の種類としては、特に限定されず、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等、いずれの公知の界面活性剤を使用することができ、それらを1種単独又は2種以上を併せて用いることができる。
具体的に、ノニオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンニノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。また、アニオン性界面活性剤として、アルキルジフェニールエーテルジスルフォネート及びその塩、ビスナフタレンスルフォネートおよびその塩、ポリオキシアルキルスルホコハク酸エステル及びその塩、ポリオキシエチレンフェニルエーテルの硫酸エステル及びその塩等が挙げられる。また、カチオン系界面活性剤として、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。その中でも特に、発泡性が低く、pH依存性が少ないという点で、ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤を好適に用いることができる。
また、使用する界面活性剤溶液の濃度としては、1.5〜10重量%とすることが好ましい。添加量を1.5重量%以上とすることにより、正極活物質を高い回収率となるように剥離回収することができる。また、添加量を10重量%以下とすることにより、経済的なロスなく効果的に正極活物質を剥離することができる。
また、界面活性剤溶液のpHとしては、中性とする。なお、この正極活物質剥離工程S3では、界面活性剤を含有する溶液に、アルカリを添加するようにしてもよい。このように、界面活性剤と共にアルカリ溶液を添加して攪拌することにより、正極箔からの正極活物質の剥離を促進させることができる。
添加するアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロキシド、テトラエチルアンモニウムハイドロキシド等を挙げることができる。
また、そのアルカリ溶液の添加量としては、0.3〜1.0Nとすることが好ましい。アルカリ溶液の添加量が0.3N未満の場合では、正極活物質が塗布されていない部分のアルミニウム箔は溶解されるものの、正極活物質は60分経過しても剥離されない。一方、1.0Nより多い場合では、正極活物質が剥離されると同時にアルミニウム箔も溶解されてしまい、正極活物質とアルミニウム箔とを分離することができない。上述したように、アルカリ溶液の添加量を0.3〜1.0Nとすることによって、アルミニウム箔表面の正極活物質が剥がれてから、アルミニウム箔が溶け始めるようになることから、効果的に正極活物質とアルミニウム箔とを分離することができる。特に、アルカリ溶液の添加量を0.4Nとした場合には、正極活物質が剥離されてからアルミニウム箔が溶解されるまでの時間が長くなることから、より効果的に、正極活物質とアルミニウム箔とを分別することができる。
また、リチウムイオン電池を破砕等により解体した際には、その正極材は一般的に薄片となっているため、そのまま界面活性剤溶液に投入してもよいが、予め所定のサイズに切断して界面活性剤溶液に投入してもよい。この場合、切断サイズは特に限定されず処理条件等により適宜変更することが好ましいが、例えば1辺の長さを30mm角以下、好ましくは10mm角以下程度のサイズに切断する。また、切断サイズは細かい方が好ましいが、切断に要する手間やコスト、切断片の飛散によるロスや環境への影響を考慮すると、2mm角以上とすることが好ましい。これにより、薄片状の正極材が界面活性剤溶液中で丸くなったり正極材同士が密着して正極材と界面活性剤との接触が妨げられることを防止でき、効率的な分離を行うことができる。
ここで、上述したように、この正極活物質剥離工程S3では、界面活性剤を含有した溶液に電池解体物を投入し、攪拌・摺動する等の物理的な処理を行うことによって、正極箔から正極活物質を物理的に剥離する。
具体的には、例えば攪拌羽根を備えた周知の攪拌装置を用い、その攪拌装置に界面活性剤の溶液を投入し、その界面活性剤中に電池解体物又は正極材を投入する。
攪拌装置の攪拌速度としては、界面活性剤の種類や添加量によって適宜調整することが好ましいが、例えば300〜850rpmとすることが好ましい。攪拌速度が遅すぎる場合、撹拌効果は充分発揮されず効果的に剥離させることができない。一方で、攪拌速度が速すぎる場合、気泡を巻き込み易くなり好ましくなく、また攪拌羽根によってアルミニウム箔がせん断されて細かくなり、正極活物質に混ざり込むおそれがあるため、効果的に分離できなくなる。
攪拌装置による攪拌時間としては、1〜2時間とすることが好ましい。攪拌時間が短すぎる場合には、高い回収率で正極活物質を回収することができず、一方で攪拌時間が長すぎる場合には、正極活物質と正極箔とを固体のままで分離することができない可能性があり好ましくない。
また、攪拌装置等を用いて攪拌するに際には、攪拌メディアを用いて行うことが好ましい。このようにして、攪拌メディアを用いて攪拌処理することにより、攪拌効率を高めることができ、正極基板から正極活物質を効率的かつ効果的に剥離することができる。
攪拌に用いる攪拌メディアとしては、特に限定されないが、例えば窒化珪素球、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等のセラミック球、クローム球(玉軸受用鋼球)やカーボン球(炭素鋼球)等のスチール球、ステンレス鋼球、窒化チタンや炭窒化チタン等の膜でコーティングされた球等が挙げられる。
攪拌メディアの添加量としては、100〜200gとすることが好ましく、特に170〜200gとすることが好ましい。攪拌メディアの添加量が少なすぎる場合には、高い回収率で正極活物質を回収することができず、また攪拌メディアの添加量が多すぎる場合には、回収率の向上を図ることができず非効率である。
以上のように、本実施の形態においては、この正極活物質剥離工程S3において、電池解体物を界面活性剤溶液に投入し、機械的な攪拌処理を行って篩い分けして、正極基板から分離したニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウム等の正極活物質を回収する。これにより、回収すべき有価金属であるニッケル(Ni)やコバルト(Co)が、溶液中に溶出することを抑制し、有価金属の回収ロスを防ぐことができ、有価金属の回収率を向上させることが可能となる。
なお、電池解体物全てを処理した場合には、負極活物質である黒鉛等の負極粉、及びこれに付随するものも回収する。一方、正極基板や負極基板の部分、アルミニウムや鉄等からなる外装缶部分、ポリプロピレンの多孔質フィルム等の樹脂フィルムからなるセパレータ部分、及びアルミニウムや銅からなる集電体部分等は、分離して各処理工程に供給する。
(4)浸出工程
浸出工程S4では、正極活物質剥離工程S3にて剥離回収された正極活物質を、酸性溶液で浸出してスラリーとする。この浸出工程S4によって、正極活物質を酸性溶液に溶解して、正極活物質を構成する有価金属であるニッケルやコバルト等を金属イオンとする。
浸出工程S4では、正極活物質剥離工程S3にて剥離回収された正極活物質を、酸性溶液で浸出してスラリーとする。この浸出工程S4によって、正極活物質を酸性溶液に溶解して、正極活物質を構成する有価金属であるニッケルやコバルト等を金属イオンとする。
正極活物質の溶解に用いる酸性溶液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸のほか、有機酸等を使用することができる。その中でも、コスト面、作業環境面、及び浸出液からニッケルやコバルト等を回収するという観点から、工業的には硫酸溶液を使用することが好ましい。また、使用する酸性溶液のpHは、少なくとも2以下とすることが好ましく、反応性を考慮すると0.5〜1.5程度に制御することがより好ましい。正極活物質の溶解反応が進むにつれてpHが上昇するので、反応中にも硫酸等の酸を補加して、pHを0.5〜1.5程度に保持することが好ましい。
また、この浸出工程S4では、酸性溶液に、ニッケルメタルや固定炭素含有物等の還元効果の高い金属や化合物を添加することにより、正極活物質からのニッケルやコバルトの浸出率を向上させることができる。使用する固定炭素含有物としては、例えば、黒鉛(固定炭素95%以上)、活性炭(固定炭素90%以上)、石炭(固定炭素30〜95%)、コークス(固定炭素75〜85%)、木炭(固定炭素約85%)等が挙げられる。また、この浸出工程までに回収された負極粉も黒鉛を主成分とするため使用することができ、トータルリサイクルの面から効果的である。
例えばニッケルメタル等の還元効果の高い金属の添加量としては、溶解させる正極活物質のモル数に対して0.5〜2.0倍モルとすることが好ましい。また、酸化還元電位(ORP)(参照電極:銀/塩化銀電極)が、−100〜550mVの範囲となるように、金属を添加したり空気又は酸素を吹き込んで調整することが好ましい。このORP値の範囲に調整しながら還元効果の高い金属を添加することにより、添加した金属を効果的に溶解させることができる。
また、固定炭素含有物の添加量は、一般的には溶解させる正極活物質の重量に対して炭素量の50〜300重量%程度が好ましく、固定炭素含有率の高い黒鉛や負極粉の場合は50〜100重量%程度が好ましい。なお、固定炭素含有物は、溶解反応終了後に回収して再使用することができる。
(5)中和工程
中和工程S5では、浸出工程S4を経て得られた浸出液を中和剤で中和し、正極及び負極の基板に由来する微量のアルミニウム、銅等を分離回収する。
中和工程S5では、浸出工程S4を経て得られた浸出液を中和剤で中和し、正極及び負極の基板に由来する微量のアルミニウム、銅等を分離回収する。
中和剤としては、ソーダ灰や消石灰、水酸化ナトリウム等の一般的な薬剤を用いることができ、これらの薬剤は安価で取り扱いも容易である。
浸出液のpHとしては、上述した中和剤を添加することによって、pH3.0〜5.5に調整することが好ましい。浸出液のpHが3.0未満ではアルミニウム、銅を澱物として分離回収することができない。一方で、浸出液のpHが5.5より高い場合には、ニッケルやコバルトが同時に沈殿してしまい、アルミニウム及び銅の澱物中に含有されるため好ましくない。なお、その他の元素として浸出液に鉄が含有されている場合でも、アルミニウム及び銅と同時に澱物中に分離することができる。
(6)硫化工程
硫化工程S6では、中和工程S5を経て得られた溶液を硫化反応させて、ニッケル・コバルト混合硫化物を生成し、リチウムイオン電池から有価金属であるNi、Coを回収する。
硫化工程S6では、中和工程S5を経て得られた溶液を硫化反応させて、ニッケル・コバルト混合硫化物を生成し、リチウムイオン電池から有価金属であるNi、Coを回収する。
硫化工程S6では、中和工程S5を経て得られた溶液を反応容器に導入し、硫化剤を添加することによって、硫化反応を生じさせる。硫化剤としては、硫化ナトリウムや水硫化ナトリウム等の硫化アルカリを用いることができる。
具体的に、この硫化工程S6では、中和工程S5を経て得られた溶液中に含まれるニッケルイオン(又はコバルトイオン)が、下記(1)式又は(2)式に従って、硫化アルカリによる硫化反応により、硫化物となる。
Ni2+ + NaHS ⇒ NiS + H+ + Na+ ・・・(1)
Ni2+ + Na2S ⇒ NiS + 2Na+ ・・・(2)
Ni2+ + NaHS ⇒ NiS + H+ + Na+ ・・・(1)
Ni2+ + Na2S ⇒ NiS + 2Na+ ・・・(2)
硫化工程S6における硫化剤の添加量としては、溶液中ニッケル及びコバルトの含有量に対して1.0当量以上とすることが好ましい。硫化剤の添加量を0.1当量以上とすることによって、溶液中のニッケル及びコバルトの濃度を0.001g/l以下とすることができる。ただし、操業においては、浸出液中のニッケル及びコバルトの濃度を精確かつ迅速に分析することが困難な場合があることから、それ以上に硫化剤を添加しても反応溶液中のORPの変動がなくなる時点まで硫化剤を添加することがより好ましい。例えば、硫化ナトリウムを硫化剤として添加した場合、その硫化ナトリウム飽和液のORP値は−400mV程度であることから、そのORP値に基づいて添加することが好ましい。これにより、溶液中に浸出されたニッケルやコバルトを確実に硫化させることができ、これら有価金属を高い回収率で回収することができる。
この硫化工程S6における硫化反応に用いる溶液のpHとしては、pH2〜4程度が好ましい。また、硫化工程S6における硫化反応の温度としては、特に限定されるものではないが、70〜95℃とすることが好ましく、80℃程度とすることがより好ましい。硫化反応の温度が70℃未満では、硫化反応速度が遅くなって反応時間が長くなり、一方で温度が95℃より高い場合では、温度を上昇するためのコストがかかる等の経済的な問題点が多い。
以上のように、硫化工程S6における硫化反応により、リチウムイオン電池の正極活物質に含まれていたニッケル、コバルトを、ニッケル・コバルト硫化物(硫化澱物)として回収することができる。
<3.他の実施形態>
本発明は、上述した実施の形態に限れられるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更することができる。
本発明は、上述した実施の形態に限れられるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更することができる。
(硫化工程について他の実施形態)
例えば、上述した硫化工程S6では、硫化アルカリによる硫化反応を行う例について説明したが、硫化剤として硫化水素を用いて硫化反応を生じさせるようにしてもよい。すなわち、硫化水素を用いた硫化反応は、中和工程S5を経て得られた溶液を耐圧性を有する加圧容器からなる反応容器に導入し、その反応容器の気相中に硫化水素を含む硫化用ガスを吹き込んで、液相で硫化水素による硫化反応を生じさせる。
例えば、上述した硫化工程S6では、硫化アルカリによる硫化反応を行う例について説明したが、硫化剤として硫化水素を用いて硫化反応を生じさせるようにしてもよい。すなわち、硫化水素を用いた硫化反応は、中和工程S5を経て得られた溶液を耐圧性を有する加圧容器からなる反応容器に導入し、その反応容器の気相中に硫化水素を含む硫化用ガスを吹き込んで、液相で硫化水素による硫化反応を生じさせる。
この硫化水素を用いた硫化反応は、気相の硫化水素濃度に依存する所定の酸化還元電位のもとで、下記(3)式に従って行われる。
MSO4 + H2S ⇒ MS + H2SO4 (3)
(なお、式中のMは、Ni、Coを表す。)
MSO4 + H2S ⇒ MS + H2SO4 (3)
(なお、式中のMは、Ni、Coを表す。)
前記(3)式の硫化反応の反応容器内の圧力としては、特に限定されるものではないが、100〜300kPaであることが好ましい。また、反応の温度は、特に限定されるものではないが、65〜90℃であることが好ましい。
(ニッケル・コバルト回収についての他の実施形態)
また、本発明に係るリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法は、有価金属であるニッケルやコバルトを、硫化アルカリや硫化水素を用いた硫化反応によって硫化物として回収する方法に限られるものではない。
また、本発明に係るリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法は、有価金属であるニッケルやコバルトを、硫化アルカリや硫化水素を用いた硫化反応によって硫化物として回収する方法に限られるものではない。
具体的には、例えばニッケル・コバルト回収工程として、浸出工程S4を経て得られた母液に、中和剤を添加してpH6.5〜10.0に調整し、ニッケル及びコバルトの澱物を形成させるようにしてもよい。このニッケル・コバルト回収工程により、リチウムイオン電池に含まれているニッケルやコバルトを回収する。ここで用いる中和剤としては、ソーダ灰や消石灰、水酸化ナトリウム等の一般的な薬剤を用いることができる。
(脱P,F除去工程を有する他の実施形態)
また、本発明に係るリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法は、硫化反応等によって有価金属であるニッケル、コバルトを回収するに先立ち、脱P,F工程として、正極活物質の浸出液に含まれている電解液の六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等に由来のリン(P)やフッ素(F)を除去するようにしてもよい。
また、本発明に係るリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法は、硫化反応等によって有価金属であるニッケル、コバルトを回収するに先立ち、脱P,F工程として、正極活物質の浸出液に含まれている電解液の六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等に由来のリン(P)やフッ素(F)を除去するようにしてもよい。
具体的には、正極活物質の浸出液に、Ca化合物、Mg化合物、Al化合物、希土類化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を添加し、浸出液のpHを2.0〜4.0、より好ましくはpH3.0程度に調整する。これにより、洗浄工程S2にて除去されずに浸出液に含有されたPやFのフッ化物やリン酸塩を形成させ沈殿させることができる。そして、浸出液からその沈殿物を除去することにより、効果的にPやFを浸出液から除去することができるので、PやFによる汚染なく、有価金属であるニッケルやコバルトを効果的かつ効率的に回収することができる。
添加するCa化合物、Mg化合物、Al化合物としては、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩等を挙げることができる。また、希土類化合物としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩等を挙げることができる。
<4.実施例>
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
放電済のリチウムイオン電池を二軸破砕機により、1cm角以下の大きさに解体した。この電池解体物10gを300mLの水に浸漬し、水に易溶な表面の付着物を除去して洗浄した。その後、40メッシュの液体ろ過筒を通して解体物とそれに接着されている活物質の重量を測定した。
放電済のリチウムイオン電池を二軸破砕機により、1cm角以下の大きさに解体した。この電池解体物10gを300mLの水に浸漬し、水に易溶な表面の付着物を除去して洗浄した。その後、40メッシュの液体ろ過筒を通して解体物とそれに接着されている活物質の重量を測定した。
次に、これを再度水に戻し、界面活性剤であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(エマルゲンシリーズ、花王株式会社製)を1.8重量%添加した。さらに、直径2mmのビーズ(材質:ジルコニア)135gを攪拌メディアとして添加し、攪拌処理を行った。
攪拌装置(HEIDON スリーワンモーター FBL1200、新東科学株式会社製)を用い、攪拌装置の攪拌羽根による攪拌速度は850rpm、攪拌時間を60分し、界面活性剤中に投入した電池解体物を攪拌処理することによって、電池解体物から正極活物質を剥離回収した。攪拌処理後、目開き1.8mmの篩にて正極活物質(A)とビーズ+箔等の解体物とに分離した。
篩上のビーズ+箔等の解体物は、8mol/lのNaOH50mlに漬け込み、再度目開き1.8mmの篩にてアルミ箔を溶解させ、残留した正極活物質(B)と、ビーズ+箔以外の解体物とに分離した。
(結果)
回収された正極活物質(B)はロスとなることから、下記に示す式(4)により正極活物質の回収率を求めた。
回収率(%)=活物質(A)/(活物質(A)+活物質(B))×100 (4)
その結果、実施例1においては、89.6%と高い回収率で正極活物質を剥離回収することができた。また、このとき篩分けた活物質を含む溶液を目開き1μmの5C濾紙を用いて濾過し、その液を分析したところ、活物質に含まれる主要な有価金属であるCo、Ni、Alは検出下限(1mg/l)未満であった。このことから、回収すべき有価金属を溶液に溶出させることなく、剥離することができたことが分かった。
回収された正極活物質(B)はロスとなることから、下記に示す式(4)により正極活物質の回収率を求めた。
回収率(%)=活物質(A)/(活物質(A)+活物質(B))×100 (4)
その結果、実施例1においては、89.6%と高い回収率で正極活物質を剥離回収することができた。また、このとき篩分けた活物質を含む溶液を目開き1μmの5C濾紙を用いて濾過し、その液を分析したところ、活物質に含まれる主要な有価金属であるCo、Ni、Alは検出下限(1mg/l)未満であった。このことから、回収すべき有価金属を溶液に溶出させることなく、剥離することができたことが分かった。
(比較例1)
比較例1として、上述の実施例1で使用した電池解体物2.67gを水210mlに浸漬し、60分間攪拌を継続して正極活物質の回収率を求めた。すなわち、界面活性剤を用いないで攪拌処理のみを行った場合の回収率を求めた。
比較例1として、上述の実施例1で使用した電池解体物2.67gを水210mlに浸漬し、60分間攪拌を継続して正極活物質の回収率を求めた。すなわち、界面活性剤を用いないで攪拌処理のみを行った場合の回収率を求めた。
その結果、回収率は25%と実施例1に比べて極めて低い値しか得られなかった。
(実施例2)
次に、実施例1と同じ方法で、界面活性剤添加量の違いによる正極活物質の回収率への影響を調べた。界面活性剤の添加量以外の条件や各物量は、実施例1と同様にした。表1に、界面活性剤の添加量と回収率を示す。
次に、実施例1と同じ方法で、界面活性剤添加量の違いによる正極活物質の回収率への影響を調べた。界面活性剤の添加量以外の条件や各物量は、実施例1と同様にした。表1に、界面活性剤の添加量と回収率を示す。
表1に示されるように、界面活性剤添加量を1.8〜9.9重量%とした場合、いずれの場合においても89%以上の回収率を得ることができた。
(比較例2)
比較例2として、実施例1で使用した電池解体物6.35gを水127mlに浸漬し、界面活性剤0.1重量%を添加後、60分間攪拌を継続し、実施例1と同じ方法で回収率を求めた。
比較例2として、実施例1で使用した電池解体物6.35gを水127mlに浸漬し、界面活性剤0.1重量%を添加後、60分間攪拌を継続し、実施例1と同じ方法で回収率を求めた。
その結果、回収率は75%と極めて低かった。
(実施例3)
次に、実施例1と同じ方法で、ビーズ添加量の違いによる正極活物質の回収率への影響を調べた。ビーズの添加量以外の条件や各物量は、実施例1と同様にした。表2に、ビーズの添加量と回収率を示す。
次に、実施例1と同じ方法で、ビーズ添加量の違いによる正極活物質の回収率への影響を調べた。ビーズの添加量以外の条件や各物量は、実施例1と同様にした。表2に、ビーズの添加量と回収率を示す。
表2に示されるように、ビーズの添加量を100〜200gとした場合、いずれの場合においても85%以上の高い回収率で正極活物質を回収することができた。そして、特に、ビーズを170g以上添加した場合には、94%以上もの高い回収率となった。
(実施例4)
次に、実施例1と同じ方法で、攪拌装置による攪拌時間の違いによる正極活物質の回収率の影響を調べた。この実施例4においては、界面活性剤の添加量を3.3重量%添加し、攪拌時間を変えたこと以外の条件や各物量は、実施例1と同様にした。表3に、攪拌時間と回収率を示す。
次に、実施例1と同じ方法で、攪拌装置による攪拌時間の違いによる正極活物質の回収率の影響を調べた。この実施例4においては、界面活性剤の添加量を3.3重量%添加し、攪拌時間を変えたこと以外の条件や各物量は、実施例1と同様にした。表3に、攪拌時間と回収率を示す。
表3に示されるように、攪拌時間が30分では、37.6%と低い回収率となり、効果的に正極活物質を剥離することができなかった。一方で、1時間以上に亘って攪拌を続けると、回収率は89%以上となり、特に2時間に亘って攪拌を継続すると、回収率は95%以上となり、効果的に正極活物質を剥離することができた。
Claims (6)
- リチウムイオン電池を構成する正極活物質を正極基板から剥離する正極活物質の剥離方法であって、
前記リチウムイオン電池を解体して得られる電池解体物を、界面活性剤溶液に浸漬して攪拌することにより、正極基板から正極活物質を剥離することを特徴とする正極活物質の剥離方法。 - 攪拌メディアを用いて攪拌することを特徴とする請求項1記載の正極活物質の剥離方法。
- 前記界面活性剤溶液の濃度は、1.5〜10重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の正極活物質の剥離方法。
- 前記界面活性剤は、ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の正極活物質の剥離方法。
- 前記攪拌の時間は、1時間以上とすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の正極活物質の剥離方法。
- リチウムイオン電池から有価金属を回収する有価金属の回収方法であって、
前記リチウムイオン電池を解体して得られた電池解体物を、界面活性剤溶液に浸漬して攪拌することにより、正極活物質を正極基板から剥離する工程を含むことを特徴とする有価金属の回収方法。
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