JP2012038541A - プラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法、およびプラズモン共鳴型光電変換素子 - Google Patents

プラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法、およびプラズモン共鳴型光電変換素子 Download PDF

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Abstract

【課題】プラズモンにより光を吸収する金属微粒子の腐食や電解質溶液中への溶出が抑えられるプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板上に、透明電極層、金属微粒子層、n型半導体からなる半導体薄膜、および色素の吸着層が順に積層されたカソード電極と、該カソード電極に対向して配置されたカソード電極と、これらの電極間に配設された酸化還元種を含む電解質とを備えたプラズモン共鳴型光電変換素子を製造する方法であり、前記透明基板上に形成された前記透明電極層の上に前記金属微粒子層を形成する工程と、所定の温度に加熱された前記金属微粒子層上に、前記n型半導体の微粒子分散液または該微粒子の前駆体溶液をスプレー法により塗工し、極めて短時間に前記分散液の溶媒を蒸発させ、または前記前駆体を熱分解して前記半導体薄膜を形成する工程を備える
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法、およびこの製造方法により製造されたプラズモン共鳴型光電変換素子に関する。
石炭や石油等の化石燃料に代わり太陽光をエネルギー源として利用するため、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子の開発が広く行われている。そのような光電変換素子としては、例えば、表面に色素を担持させた半導体微粒子層を有する色素増感型太陽電池が、可視光領域の光を利用することができるため理論変換効率が高く、かつ製造コストも安価であるものとして知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載された光電変換素子は、図3に示すように、カソード電極110とアノード電極120とが電解質溶液130を介して対向配置され、アノード電極120は、透明基板121上に透明電極122とn型半導体からなる半導体微粒子層123とが順に形成され、かつ半導体微粒子層123上に色素124が吸着された構造を有する。
しかしながら、特許文献1の光電変換素子においては、色素124の光吸収が少ないため、色素124を担持する半導体微粒子層123を複雑な3次元構造とすることで、色素124の吸着量を多くしており、色素124が高価であるため、材料コストが高くなっていた。また、耐久性の観点から電解質溶液130の固体化あるいはゲル化を行う場合には、n型半導体からなる半導体微粒子層123が複雑な3次元構造を採っているため、n型半導体と固体物質あるいはゲル物質との界面接合が不十分となり、光電変換効率が低下するという問題があった。
また、白金等の金属微粒子を電解質溶液中の色素近傍に配することで、金属微粒子のプラズモン共鳴吸収を利用して光電変換効率を向上させた色素増感型光電変換素子が知られている(例えば、特許文献2)。
特許文献2に記載された光電変換素子では、図4に示すように、カソード電極210とアノード電極220とが電解質溶液230を介して対向配置されており、アノード電極220は、透明基板221上に透明電極222、金属酸化物膜223が順次形成された構造を有する。そして、金属酸化物膜223は、金属酸化物微粒子224とその表面に担持された金属微粒子225および色素226により構成されている。
しかし、特許文献2の光電変換素子では、プラズモン共鳴により光を吸収する金属微粒子225が電解質溶液230により腐食され、電解質溶液230中に溶出してしまうことがあった。特に、銀や銅は腐食されやすく耐久性が低いので、特許文献2の光電変換素子では、金属微粒子225として銀や銅の微粒子を実用上利用することができなかった。また、金属微粒子225と色素226とが接触しやすく、接触が生じると、色素226の励起状態が保てずに光電変換効率が低下する、という可能性も指摘されていた。
さらに、プラズモン共鳴吸収を利用した色素増感型光電変換素子として、銀の微粒子をアモルファスの酸化チタンにより被覆し、その表面に色素を配した構造のものも知られている(例えば、非特許文献1)。
しかし、非特許文献1に記載された光電変換素子は、酸化チタンがアモルファスであり抵抗値が高いため、光電変換効率の向上を図ることが難しかった。また、酸化チタン層を原子層堆積(ALD)法により形成しているため、非常に大きなコストと時間がかかるという問題があった。
特許第2664194号公報 特開2001−35551号公報
Journal of American Chemical Society, 2009, 131, 6407-6409
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、プラズモン共鳴により光電変換効率の増大が図られているので少量の色素使用で高いエネルギーが得られ、かつプラズモンにより光を吸収する金属微粒子の腐食や電解質溶液中への溶出が抑えられるプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法は、透明基板上に、透明電極層、金属微粒子層、n型半導体からなる半導体薄膜、および色素の吸着層が順に積層されたアノード電極と、該アノード電極の前記半導体薄膜に対向して配置されたカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に配設された酸化還元種を含む電解質とを備えたプラズモン共鳴型光電変換素子を製造する方法であり、前記透明基板上に形成された前記透明電極層の上に、前記金属微粒子層を形成する工程と、所定の温度に加熱された前記金属微粒子層上に、前記n型半導体の微粒子分散液または該微粒子の前駆体溶液をスプレー法により塗工し、極めて短時間に前記微粒子分散液の溶媒を蒸発させ、または前記前駆体を熱分解することにより、前記金属微粒子層上に前記半導体薄膜を形成する工程を備えることを特徴とする。
本発明のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法において、前記半導体薄膜の厚さは、5〜200nmであることが好ましい。また、前記金属微粒子の平均粒子径(数平均粒子径)は、5〜500nmであることが好ましい。なお、金属微粒子は真球である場合や真球を上下方向から押しつぶしたような形状である場合など、種々の場合がある。本明細書では、金属微粒子が真球以外の場合は、金属微粒子層を上面から観察し、基板に対して水平方向の直径をもとに(微粒子を擬似的に円として捉えて、その円の直径をもとに)、平均粒子径として記載する。前記半導体薄膜の表面粗さRaは、0.2μm以下であることが好ましい。
さらに、前記金属微粒子層を形成する工程は、前記透明電極層上に無機多孔性薄膜を形成した後、該無機多孔性薄膜の微細孔を埋めるように前記金属微粒子層を形成する工程を有することができる。そして、前記金属微粒子の粒子径は、前記無機多孔性薄膜の前記微細孔の内径により調整されることが好ましい。
また、本発明のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法において、前記金属微粒子層を形成する工程は、金属イオン化合物溶液を原料とする電解析出工程を有することができる。また、前記金属微粒子層を形成する工程は、前記金属を真空蒸着する工程を有することができる。そして、前記金属微粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウムから選ばれる少なくとも1つの金属の微粒子であることが好ましい。また、前記半導体薄膜は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、および酸化タングステンから選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。さらに、前記酸化還元種は、ヨウ素、臭素、塩素、鉄、コバルト、ニッケル、およびマンガンから選ばれる少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。
本発明のプラズモン共鳴型光電変換素子は、前記本発明の製造方法により製造されたことを特徴とするプラズモン共鳴型光電変換素子である。
本発明によれば、透明電極上に形成された金属微粒子層の上に、緻密で表面が平滑(平坦)な半導体薄膜を形成することができるので、そのような半導体薄膜により金属微粒子層を覆うことで、プラズモン共鳴吸収を有する金属微粒子の腐食や電解質溶液中への溶出を抑えることができ、経時的な光電変換効率の低下を防止することができる。また、本発明により得られるプラズモン共鳴型光電変換素子は、金属微粒子のプラズモン共鳴により光電変換効率が増大されるので、少量の色素使用で高い光電変換効率が得られ、コストの低減を図ることができる。さらに、半導体薄膜の表面が平滑であるので、電解質の固体化あるいはゲル化が可能であり、プラズモン共鳴型光電変換素子の全固体化の実現を容易に行うことができる。
本発明の製造方法により製造されるプラズモン共鳴型光電変換素子の一例を示す断面図である。 本発明の製造方法により製造されるプラズモン共鳴型光電変換素子の別の例を示す断面図である。 特許文献1に記載された色素増感型光電変換素子を示す断面図である。 特許文献2に記載されたプラズモン共鳴吸収を利用した色素増感型光電変換素子を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
第1の実施形態
<プラズモン共鳴型光電変換素子>
図1は、本発明の製造方法により製造されるプラズモン共鳴型光電変換素子の一例を示す断面図である。
このプラズモン共鳴型光電変換素子(以下、光電変換素子という。)1は、アノード電極10とカソード電極20とが対向して配置され、これらの間に酸化還元種を含む電解質溶液(以下、酸化還元電解質という。)30が挟持された構造を有する。アノード電極10は、透明基板11と、その上に順に積層された透明電極層12、金属微粒子層13、および半導体薄膜14を有している。半導体薄膜14の表面には色素15が吸着されており、この色素15と、色素15が吸着されていない半導体薄膜14の表面とが、酸化還元電解質30と接触している。
この光電変換素子1においては、金属微粒子層13を構成する金属微粒子13aのプラズモン共鳴・吸収により光電変換効率が増大されるので、色素15が少量でも高い電気エネルギーが得られる。また、金属微粒子層13の表面が半導体薄膜14により覆われており、プラズモン共鳴により光を吸収する金属微粒子13aは酸化還元電解質30と直接接触していないので、金属微粒子13aの腐食や電解質溶液(酸化還元電解質30)中への溶出が抑えられ、光電変換効率の低下が防止される。さらに、アノード電極10とカソード電極20とが対向配置されているため、製造コストの低減や製品の小型化等の点で好ましい。以下、この光電変換素子1を構成する各要素について説明する。
[アノード電極]
アノード電極10は、透明基板11上に、透明電極層12、金属微粒子層13および半導体薄膜14が順に積層されて構成されている。なお、本発明における「透明」とは、照射された光のうちで少なくとも金属微粒子のプラズモン共鳴により吸収される光は透過する、ことを意味する。例えば、プラズモン共鳴により吸収される光以外の波長の光が透過しないものであってもよい。また、金属微粒子のプラズモン共鳴により吸収される波長帯全域の光が透過するのではなく、当該波長帯のうちの一部の波長帯の光が透過する場合も含む。
(透明基板)
透明基板11を構成する材料は、基板表面に照射された光が透過するように透明なものであればよく、例えば、ガラス、アクリル、ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。アノード電極作製時の耐熱性と、得られる光電変換素子1の耐久性が優れる点から、透明基板11はガラス基板であることが好ましい。
透明基板11は、平面形状を有し、厚さが0.05〜10mmであることが好ましい。また、透明基板11は、透明電極層12との間の密着性を高めるために、表面加工が施されたものでもよい。例えば、表面に酸化ケイ素からなるアンダーコート層を有しているものを用いてもよい。
(透明電極層)
透明電極層12は、透明で導電性を有する電極層であり、導電性を有する金属酸化物(以下、金属酸化物(I)という)、または金属薄膜から構成される。
金属酸化物(I)としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)から選ばれる1種または2種以上のものを使用することができる。透明で導電性が高い点から、ITOおよび/またはFTOを使用することが好ましく、ITOを使用することが特に好ましい。
金属薄膜としては、金、銀、白金、銅、パラジウム、およびロジウムから選ばれる少なくとも1種の元素からなる薄膜を使用することができる。透明電極層12は、1種の構成材料からなる単層であっても、2種以上の構成材料からなる複数の層が積層されたものであってもよいが、単層であることが好ましい。
透明電極層12が導電性を有する金属酸化物(I)からなる場合、膜厚は20〜500nmであることが好ましく、25〜400nmであることがより好ましく、50〜400nmであることが特に好ましい。膜厚が20nm以上であれば、十分な導電性を得ることができる。また、膜厚が500nm以下であれば、十分な光の透過率を得ることができる。なお、次に述べる金属微粒子層において、各金属微粒子が接触している場合など、金属微粒子層が導電性を示す場合は、透明電極層の形成を省略してもよい。
(金属微粒子層)
金属微粒子層13は、プラズモン共鳴により光を吸収する金属微粒子13aから構成される層である。金属微粒子層13は、金、銀、銅、白金、パラジウム、およびロジウムから選ばれる少なくとも1種の金属の微粒子からなる薄膜であることが好ましい。金属微粒子層13は、1種の金属微粒子13aからなる単層であっても、2種以上の金属微粒子13aからなる単層であっても、また異なる金属微粒子からなる複数の層が積層された構造であってもよいが、単層であることが好ましい。
金属微粒子13aの平均粒子径(数平均粒子径)は、5〜500nmであることが好ましく、10〜300nmであることがより好ましく、20〜200nmであることが特に好ましい。金属微粒子13aの平均粒子径が前記範囲内であれば、プラズモン共鳴吸収による光電変換効率の増大が起こりやすい。なお、本明細書において、数平均粒子径は、原子間力顕微鏡(AFM)により観察して算出した値をいう。具体的には、観察したAFM像を画像処理して、AFM探針の太さの寄与を差し引き、1μm四方の領域について明度による2値化を行い、粒子分離し、分離した粒子の粒子面積から円相当として粒子径を求め、全粒子径の数平均を求めたものをいう。
(半導体薄膜)
半導体薄膜14は、n型半導体からなる薄膜である。n型半導体としては、金属酸化物(以下、これを金属酸化物(II)という)からなる半導体、または窒化物(ナイトライド)系の半導体が挙げられる。ここで、半導体薄膜14を構成する金属酸化物(II)とは、特に断りのない限り、酸素欠損を有する金属酸化物である。例えば、酸化チタンの場合は、式:TiO2−x(0<x≦1)で表される。
金属酸化物(II)としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、および酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。特に優れた光電効果を有し、高いエネルギー変換効率を達成できる点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を使用することが好ましい。ナイトライド系のn型半導体としては、例えば、GaNが挙げられる。
半導体薄膜14は、1種の構成材料からなる単層であっても、2種以上の構成材料からなる複数の層が積層されたものであってもよいが、単層であることが好ましい。
また、半導体薄膜14は緻密で表面が平坦(平滑)な膜であることが好ましい。半導体薄膜14の組織が緻密であると、酸化還元電解質30(電解質溶液)によって金属微粒子層13が侵食されるのを防ぐことができる。また、半導体薄膜14の表面が平坦であると、金属微粒子層13と色素15との間の距離によって変化する光電変換の増強効果を、容易に最適化することができる。後述する形成方法を採ることで、緻密で表面が平坦な半導体薄膜14を得ることができる。
半導体薄膜14の膜厚は、5〜200nmであることが好ましい。5〜100nmの範囲であることがより好ましく、10〜80nmの範囲が特に好ましい。膜厚が5nm以上であれば、酸化還元電解質30(電解質溶液)による金属微粒子層13の侵食を防ぐことができる。また、膜厚が200nm以下であれば、金属微粒子層13の表面プラズモン共鳴による光電変換の増強効果を得ることができる。
(色素)
色素15は、半導体薄膜14の表面に吸着されており、照射された光を効率よく電気エネルギーに変換するための増感材として働くものである。また、この色素15は、金属微粒子層13の表面プラズモン共鳴による吸収エネルギーとの相互作用によって、光電変換を増強する作用を有する。すなわち、金属微粒子層13のプラズモン共鳴による光エネルギーの吸収と、色素15との共鳴や色素15へのエネルギー移動により、可視光から近赤外領域において色素15の光吸収が増強される効果がある。この色素の光吸収の増強効果により、光電流の増加が引き起こされ、光電変換効率を向上させることができる。
色素15としては、種々の可視光領域と赤外光領域の少なくとも一方に吸収をもつ有機色素、金属錯体色素などが挙げられる。各種の色素の1種または2種以上を選択的に用いることができる。
有機色素としては、例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素などが挙げられる。
金属錯体色素としては、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、TB、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、Rhなどの金属に、有機分子が配位結合した形態のものが挙げられる。フタロシアニン系色素、ルテニウム系色素、クロロフィル系色素などが好ましく用いられる。
また、n型半導体からなる半導体薄膜14に色素15を強固に吸着させるために、分子中に、カルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有する色素が好ましく、特に、カルボン酸基およびカルボン酸無水基を有する色素が好ましい。
[電解質溶液]
酸化還元電解質30は、酸化還元種を含む電解質溶液である。酸化還元種としては、例えば、ハロゲンまたは遷移金属を含み、それ自体が電解質であるものが好ましい。ハロゲンとしては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。遷移金属としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンが挙げられ、これらの金属のシアノ錯体、アンミン錯体、メタロセンを酸化還元種として挙げることができる。
酸化還元電解質30における酸化還元種は、光電変換効率が向上する点から、前記のように、塩素、臭素、ヨウ素、鉄、コバルト、ニッケル、およびマンガンから選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。
酸化還元電解質30として、具体的には、ヨウ素とヨウ化リチウムの混合物、塩化鉄(II)と塩化鉄(III)の混合物、または硫酸鉄(II)と硫酸鉄(III)の混合物を使用することが好ましい。これらの酸化還元電解質30はその酸化還元電位に基づいて、アノード電極10とカソード電極20との間の電荷輸送のための電子メディエータとして作用する。例えば、酸化還元電解質30として、ヨウ素とヨウ化リチウムの混合物を使用した場合は、カソード電極20が三ヨウ化物イオン(I )に電子を放出し、三ヨウ化物イオン(I )はヨウ化物イオン(I)に還元される。このヨウ化物イオン(I)は、色素15に電子を放出して三ヨウ化物イオン(I )に酸化され、こうして電荷が輸送される。また、塩化鉄(II)と塩化鉄(III)の混合物、または硫酸鉄(II)と硫酸鉄(III)の混合物を使用した場合は、カソード電極20が鉄(III)イオンに電子を放出し、鉄(III)イオンは鉄(II)イオンに還元される。この鉄(II)イオンは色素15に電子を放出して、鉄(III)イオンに酸化され、こうして電荷が輸送される。
酸化還元電解質30の溶媒としては、水、アセトニトリル等が使用される。アセトニトリルの使用が好ましい。酸化還元電解質30中の酸化還元種の濃度は、1mmol/L(mM)〜飽和濃度であることが好ましい。酸化還元種の濃度が1mM以上であれば、十分な光電変換効率を容易に得ることができる。
[カソード電極]
カソード電極20としては、例えば、基板表面に金、銀、銅、白金、パラジウム等からなる金属薄膜が形成されたものを使用することができる。また、基板表面に導電性電極層が形成されたもの、基板表面に導電性電極層と金属薄膜とが順に積層・形成されたものを使用することができる。前記基板、導電性電極層、金属薄膜は、前記アノード電極10の構成で記載した、透明基板11、透明電極層12、金属微粒子層13と同等の構成としてもよい。その他、カーボンや金属担持カーボン、導電性高分子を使用することもできる。
導電性高分子としては、例えば、塩素、臭素、またはヨウ素をドープしたポリアセチレン、ポリアセン、ポリピロール、ポリチオフェン、およびそれらの誘導体が挙げられる。
次に、このような構成を有するプラズモン共鳴型光電変換素子を製造する方法について説明する。
<製造方法>
本発明に係る光電変換素子1の製造方法は、アノード電極10を作製する工程と、アノード電極10とカソード電極20とを酸化還元電解質30を介して対向配置する工程とを備えている。アノード電極10を作製する工程は、透明基板11の上(表面)に透明電極層12を形成する工程と、透明電極層12の上に金属微粒子層13を形成する工程と、金属微粒子層13の表面に半導体薄膜14を形成する工程と、半導体薄膜14の表面に色素15を吸着させ、半導体薄膜14に色素15を担持させる工程を有する。
(透明電極層の形成)
透明基板11の上に透明電極層12を形成する方法としては、例えば、ITO膜等の形成に通常用いられているスパッタリングによる方法などが挙げられる。
(金属微粒子層の形成)
透明電極層12の上に金属微粒子層13を形成する方法としては、例えば、金属イオン化合物の溶液を原料として電解析出させる方法(以下、電解析出法という。)、金属コロイド分散液をディップコート等により塗布する方法、所定の金属蒸着材を用いて真空蒸着する方法(以下、真空蒸着法という。)、金属ターゲットを用いたスパッタリングにより形成する方法などを使用することができる。簡便で安価であるという点から、電解析出法または真空蒸着法を使用することが好ましい。
電解析出法は、透明電極層12を作用極、Ag/AgCl電極等を参照極として適切な電位を印加し、作用極である透明電極層12の表面に金属微粒子13aを析出させる方法である。析出させる金属微粒子13aの形状および粒子径は、参照極に対する作用極の電位差、電解析出時間、金属イオン化合物溶液の濃度、共存物質の種類および濃度等を制御することで調整することができる。
電解析出時の参照極に対する作用極の電位差は、−3.0〜+0.5Vであることが好ましく、−2.5〜0.0Vであることがより好ましい。電解析出時間は、5秒〜3時間であることが好ましい。金属イオン化合物溶液の濃度は、1μM〜飽和濃度であることが好ましい。なお、例えばテトラクロロ金酸ナトリウムの水に対する飽和濃度は、1.7M(20℃)である。
金属イオン化合物溶液に、例えば、L−システイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等を共存させることが好ましい。これらを共存させた場合には、金等の金属微粒子の電着に対して異方性粒子の形成を促進する効果が得られる。金属イオン化合物溶液中の共存物質の濃度は、10mM以下であることが好ましい。
(半導体薄膜の形成)
金属微粒子層13の表面に半導体薄膜14を形成するには、金属微粒子13aが酸化還元電解質30(電解質溶液)と接触して溶解することがないように、緻密な半導体薄膜14を形成し得る方法を用いる必要がある。
半導体薄膜14の形成方法としては、前記したn型半導体の微粒子分散液や微粒子の前駆体溶液を塗工し、極めて短時間(好ましくは瞬時)に溶媒を蒸発させるか、あるいは瞬時に前駆体を熱分解する方法を採ることが好ましい。瞬時に分散液の溶媒を蒸発させ、あるいは瞬時に前駆体を熱分解するには、塗工の際に被塗工部(金属微粒子層13)を400℃以上に加熱しておくことが好ましい。一般に、分散液または溶液を塗工する方法としては、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法、ダイコート法、インクジェット法などがあるが、緻密な半導体薄膜14を得るためには、原料となる微粒子分散液や微粒子の前駆体溶液が塗工された瞬間に、微粒子分散液であれば溶媒が瞬時に蒸発・揮発し、微粒子の前駆体溶液であれば前駆体が瞬時に熱分解するように、スプレー法により塗布することが好ましい。
このような方法(以下、スプレー熱分解法と示す。)において、塗工時の被塗工部の温度は400℃〜800℃の範囲が好ましい。被塗工部の温度が400℃よりも低いと、微粒子分散液が瞬時に蒸発・揮発せず、あるいは前駆体が十分に熱分解しないため、緻密な半導体薄膜14を形成することができないおそれがある。被塗工部の温度が800℃以上を超えると、塗工液であるが微粒子分散液が被塗工部に到達する前に溶媒が蒸発してしまったり、あるいは前駆体が熱分解してしまうため、薄膜の形成が困難となる。
半導体微粒子分散液としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、酸化タングステン、GaNの微粒子を、水などの分散媒に分散させた分散液を用いることができる。当該分散液中の半導体微粒子の含有割合は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
半導体微粒子の前駆体としては、チタン、亜鉛、錫、ニオブ、セリウム、タングステンなどの、アルコキシド体、アセチルアセトン錯体、塩化物、硝酸塩などを用いることができる。半導体微粒子の前駆体溶液における前駆体の含有割合は、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
(色素の吸着)
半導体薄膜14の表面に色素15を吸着させるには、色素15の溶液を半導体薄膜14の表面に滴下し室温で乾燥させる方法や、半導体薄膜14までが形成された基材を色素15の溶液に浸漬し室温で乾燥させる方法などを採ることができる。その後、酸化還元種を含む電解質30(電解質溶液)の溶媒と同じ溶媒で洗浄することにより、色素15が十分に吸着されたアノード電極10が得られる。
(対極の設置)
こうして作製されたアノード電極10とカソード電極20とを、アノード電極10の半導体薄膜14側の面がカソード電極20と向き合うように配置してセルを作製し、アノード電極10とカソード電極20との間(セル内部)に酸化還元電解質30(電解質溶液)を注入する。このようにして、アノード電極10とカソード電極20とを酸化還元電解質30を介して対向させて設ける。こうして、光電変換素子1が得られる。
このように構成される本発明の製造方法によれば、透明電極12上に形成された金属微粒子層13の上に、緻密で表面が平坦(平滑)な半導体薄膜14を形成することができるので、金属微粒子13aの腐食や酸化還元電解質30(電解質溶液)への溶出が防止される結果、金属微粒子13aのプラズモン共鳴により光電変換効率が増大され、少量の色素使用で高い変換効率が得られる光電変換素子を得ることができる。また、半導体薄膜14の表面が平坦(平滑)に形成されるので、金属微粒子層13と色素15との間の距離によって変化する光電変換の増強効果を、容易に最適化することができる。さらに、電解質の固体化あるいはゲル化が可能であり、全固体化されたプラズモン共鳴型光電変換素子の提供も可能である。
次に、プラズモン共鳴型光電変換素子の別の例について説明する。
第2の実施形態
<プラズモン共鳴型光電変換素子>
図2は、本発明の実施形態で製造されるプラズモン共鳴型光電変換素子の第2の例を示す断面図である。
この光電変換素子1においては、透明電極層12上に形成された無機多孔性薄膜16の細孔16a内に金属微粒子13aが1つずつ配置されており、微粒子間が隔壁により離隔された金属微粒子層13が形成されている。その他の部分は、図1に示す第1の例と同様に構成されているので、説明を省略する。
(無機多孔性薄膜)
無機多孔性薄膜16は、加熱などにより金属微粒子13a同士が合一し、粒子径が変化(大粒径化)することを防ぐ隔壁として作用する。金属微粒子13aは、粒子径がナノオーダーになると、通常の金属とは異なり融点が低下することが知られている。色素増感型光電変換素子の製造工程では、特にn型半導体からなる半導体薄膜14の形成工程での加熱により、金属微粒子13aが合一しやすい。それを防ぐために、所望の径の細孔16aを有する無機多孔性薄膜16を透明電極層12上に形成した後、電解析出法や真空蒸着法を用いて、この無機多孔性薄膜16の各細孔16a内に金属微粒子13aを1個ずつ形成・配置する。
無機多孔性薄膜16を構成する無機材料としては、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等が好ましく、特に酸化チタン、酸化アルミニウムが好ましい。
このような構成を有する光電変換素子1の製造において、無機多孔性薄膜16は以下に示すようにして形成することができる。それ以外は、図1に示す第1の例と同様に製造することができるので、説明を省略する。
(無機多孔性薄膜の形成)
無機多孔性薄膜16を形成するには、微粒子状の両親媒性ポリマーと無機多孔性薄膜16の原料である前駆体の塗工液を、透明電極層12上に塗工して乾燥させ、両親媒性ポリマーの微粒子と前駆体とを含むゲル状薄膜を形成した後、得られたゲル状薄膜を焼成することにより両親媒性ポリマーを除去し、細孔16aを有する無機多孔性薄膜16を得る。
両親媒性ポリマーとしては、疎水ポリマー部分と親水ポリマー部分からなるブロックコポリマーであれば特に制限はなく、たとえば、スチレン−エチレンオキシドブロックコポリマー、ブタジエン−エチレンオキシドブロックコポリマーを用いることができる。塗工液中の両親媒性ポリマーの含有量は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。無機多孔性薄膜16の前駆体としては、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、および三塩化アルミニウムが好ましい。塗工液中の前駆体の含有量は、0.05〜20質量%が好ましく0.1〜10質量%がより好ましい。
このように製造される光電変換素子1においては、無機多孔性薄膜16が、金属微粒子13a同士が加熱等により合一して粒子径が変化するのを防ぐ働きをするので、金属微粒子13aの大粒径化によるプラズモン共鳴吸収の低下や散乱の増大が抑えられ、光電変換効率の増大が確実に達成される。
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。なお、以下においては、「mol/L」を「M」とも記載する。
実施例1
(アノード電極の作製)
平滑ITO被覆ガラス板(株式会社倉元製作所製;厚さ0.7mm)を縦1.25cm×横4cmに切断した後、界面活性剤(商品名ピュアソフトPS、アズワン株式会社製)の水溶液中に浸漬し、超音波洗浄機で1時間洗浄した。その後、十分水洗し水を取り除いた後、純水中に浸漬し、超音波洗浄機で1時間洗浄した。次いで、加圧空気を噴き付けて表面から水を取り除いた。
次に、透明電極層である平滑ITO被覆の上に、電解析出法によって金微粒子層を形成した。すなわち、NaAuClを2mmol/L(mM)、L−システインを0.125mM、およびHSOを0.5M含む水溶液を電解質溶液とし、窒素置換された状態のもとで、前述の洗浄・乾燥された平滑ITO被覆ガラス板を浸漬した。そして、平滑ITO被覆を作用極、Ag/AgCl電極を参照極とし、参照極に対する作用極の電位差を−0.5Vとして電圧を60秒間印加することによって、平滑ITO被覆の表面に金微粒子を電解析出させた。こうして平滑ITO被覆の上に、金微粒子からなる厚さ20nmの層を形成した。本例の金微粒子は、基板に対して水平方向の直径が、基板に対して鉛直方向の直径よりも大きい微粒子であり、金微粒子層を上面から観察したときの水平方向の直径の平均値は40nmであった。
次いで、こうして形成された金微粒子層の上に、スプレー熱分解法によって酸化チタンを堆積させ、半導体薄膜である酸化チタン層を形成した。すなわち、金微粒子層が形成された平滑ITO被覆ガラス板(以下、ITO/金微粒子電極と示す。)を500℃に加熱されたホットプレート上に載せ、30分間保持した。その後、チタンジイソプロポキシドビスアセチルアセトナートの2−プロパノール溶液(濃度75質量%)を、0.38Mの濃度になるように2−プロパノールで希釈した溶液を、スプレーノズルから1秒間噴射した後、ホットプレート上で1分間焼成し、再度スプレーノズルから1秒間噴射した。その後、500℃のホットプレート上で30分間焼成し、酸化チタン層(厚さ20nm)を形成した。こうして、金微粒子層の上に酸化チタン層が形成されたITO/金微粒子/酸化チタン電極を得た。
次に、ITO/金微粒子/酸化チタン電極の酸化チタン層表面に色素を吸着させた。すなわち、銅クロロフィリンナトリウム10mgに蒸留水0.2gとエタノール4.8gを加えて溶解させた銅クロロフィリンナトリウム溶液を、酸化チタン層表面に0.5μL/cmの塗布量となるようにマイクロピペットで滴下し、30分間室温で乾燥させた。その後、酸チタン層表面をアセトニトリルで洗浄し、色素が吸着されたアノード電極(ITO/金微粒子/酸化チタン/色素電極)を得た。
(電解質溶液の調製)
アセトニトリルに、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.6M、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M溶解させたものを、窒素ガスフローにより脱気し、これを電解質溶液として用いた。
(対極の設置)
中央部に縦5mm×横5mmの開口部を有する膜厚0.5mmのシリコーン樹脂板を、スペーサーとして使用した。このスペーサーを前記アノード電極の色素が吸着された酸化チタン層の上に密着させて配置し、開口部分にパスツールピペットを用いて電解質溶液を滴下した。その上から、対極としてスパッタリングにより白金膜が形成されたITO被覆電極を、白金膜を内側にして部分的に重なるように密着させて配置し、電解質溶液を封入した。こうして、光電変換素子を作製した。セルの全長は縦1.25cm×横7cmであった。
実施例2
透明電極層である平滑ITO被覆の上に、真空蒸着法によって金微粒子層を形成した。それ以外は実施例1と同様にして、光電変換素子を作製した。真空蒸着法による金微粒子層の形成は、真空蒸着器(型番VPC−260F、アルバック機工株式会社製)を使用し、真空度約1×10−3Paで、金微粒子層の平均成長速度を0.02nm/sとして500秒間蒸着して金の層を形成し、次いで加熱することにより、金微粒子からなる層(厚さ45nm)を形成した。本例の金微粒子は、基板に対して水平方向の直径が、基板に対して鉛直方向の直径よりも大きい微粒子であり、金微粒子層を上面から観察したときの水平方向の直径の平均値は90nmであった。
実施例3
平滑ITO被覆の上に、多孔性酸化チタン(TiO)薄膜を形成した後、この酸化チタン薄膜の細孔内に銀微粒子を電解析出させ、銀微粒子層を形成した。それ以外は実施例1と同様にして、光電変換素子を作製した。多孔性酸化チタン薄膜は、以下のようにして形成した。すなわちまず、PS−b−PE(polystyrene-b-polyethyleneoxide)(商品名P4750−SEO、Polymer Source社製;標準ポリスチレン換算重量平均分子量40000)0.24gを、THF9.6g、水0.19gに溶解させた溶液をAとし、TiClを0.0545gとエタノール9.6gを混合した溶液をBとした。溶液AとBを混合したものをディップコート溶液として用いた。ディップコート法により、湿度10%以下の条件下、2.5mm/sの引き上げ速度で平滑ITO被覆ガラス板にディップコート液を成膜した。その後、電気炉により500℃で1時間焼成してPS−b−PEを熱分解し、ITO被覆上に多孔性酸化チタン薄膜(厚さ22nm)を形成した。
銀微粒子の電解析出は以下に示すようにして行った。すなわち、AgNOを2mMとHSOを0.5M含む水溶液を電解質溶液とし、窒素置換された状態のもとで、前記多孔性酸化チタン薄膜の設けられた平滑ITO被覆ガラス板を浸漬した。そして、平滑ITO被覆を作用極、Ag/Ag電極を参照極とし、参照極に対する作用極の電位差を−2.0Vとして電圧を60秒間印加することによって、多孔性酸化チタンの細孔を通して平滑ITO被覆上に銀微粒子を電解析出させた。こうして平滑ITO被覆の上に、銀微粒子からなる厚さ20nmの層を形成した。本例の銀微粒子は、基板に対して水平方向の直径が、基板に対して鉛直方向の直径よりも大きい微粒子であり、銀微粒子層を上面から観察したときの水平方向の直径の平均値は40nmであった。
実施例4
多孔性酸化チタン薄膜の代わりに、多孔性酸化アルミニウム(Al)薄膜を形成した。それ以外は実施例3と同様にして、光電変換素子を作製した。多孔性酸化アルミニウム薄膜は、以下のようにして形成した。すなわちまず、PS−b−PEの0.16gを、THF22gおよびエタノール18gに溶解させた溶液をAとし、AlCl・6HOを1gと15重量%NH水溶液1.34gを混合して2週間以上熟成させた溶液をBとした。溶液AとBを混合したものをディップコート溶液として用いた。ディップコート法により、0.7mm/sの引き上げ速度で平滑ITO被覆ガラス板にディップコート液を成膜した。その後、電気炉により500℃で1時間焼成してPS−b−PEを熱分解し、ITO被覆上に多孔性酸化アルミニウム薄膜(厚さ8nm)を形成した。次いで、実施例3と同様にして、多孔性酸化アルミニウム薄膜の細孔を通して平滑ITO被覆の上に銀微粒子を電解析出させ、銀微粒子からなる厚さ20nmの層を形成した。本例の銀微粒子は、基板に対して水平方向の直径が、基板に対して鉛直方向の直径よりも大きい微粒子であり、銀微粒子層を上面から観察したときの水平方向の直径の平均値は40nmであった。
実施例5
平滑ITO被覆の上に、実施例3と同様にして多孔性酸化チタン薄膜を形成した後、銀を真空蒸着して、酸化チタン薄膜の細孔内に銀微粒子層を形成した。真空蒸着器(型番VPC−260F、アルバック機工株式会社製)を使用し、真空度約1×10−3Paで、銀微粒子層の平均成長速度を0.02nm/sとして1000秒間蒸着し、酸化チタン薄膜の細孔を通して平滑ITO被覆の上に、銀微粒子からなる厚さ70nmの層を形成した。本例の銀微粒子は、基板に対して水平方向の直径が、基板に対して鉛直方向の直径よりも大きい微粒子であり、銀微粒子層を上面から観察したときの水平方向の直径の平均値は130nmであった。
比較例1
実施例1と同様にして基板上に金微粒子層を電解析出法で作製し、その上に酸化チタン層をディップコート法で作製した。酸化チタン層は、チタンアルコキシド(商品番号:NDH−510C、日本曹達社製)をディップコート溶液として用いた。湿度10%未満の条件下で、3.0mm/sの引き上げ速度で成膜し、電気炉で120℃で40分間乾燥した後、500℃で1時間焼成した。これを合計3回繰り返した。
比較例2
実施例1と同様にして基板上に金微粒子層を電解析出法で形成し、その上に酸化チタン層をスピンコート法で形成した。酸化チタンスラリー(商品番号:STS−21、石原産業社製)を75容積%になるように純水で希釈したものをコート液として使用した。基板にこのコート液を0.2mL滴下し、1500rpmの回転速度で成膜した後、電気炉で450℃で1時間焼成を行った。
[入射光子−電流変換効率(IPCE、Incident Photon-Current Conversion Efficiency)測定]
実施例1〜5および比較例1で得られた光電変換素子について、キセノンランプ(LA-251Xe,林時計工業株式会社製)を光源として使用し、光強度を100mW/cmとして測定した。光源にシャープカットフィルタ(SCF-50 S-48Y,シグマ光機株式会社製)を装着して、種々の波長の光をアノード電極のガラス基板側から照射した。光の照射強度は、分光照射システム(M-25,分光計器株式会社製)を用いて、光子数一定(1.0×1015 photons cm−2−1)とした。電気化学測定には、ポテンシオスタット(1280Z, Solartron)を用いた。このときの入射光子−電流変換効率(IPCE)を測定した。但し、IPCEは、光電変換素子に入射してきた光子をどれだけ電流に変換できたかを示しており、下記式により表される。
(IPCE)(%)=X/Y
式中、Xは「単位面積、単位時間あたりに流れる電子数」、Yは「単位面積、単位時間あたりの入射光子数」を意味する。「単位面積、単位時間あたりに流れる電子数」は、計測された電流(短絡電流)を電子数に換算することにより得られ、「単位面積、単位時間あたりの入射光子数」は、光量を光量計で測定して光子数に換算することにより得られる。測定結果を表2に示す。なお、表2の数値は、金属粒子層がないもの(それ以外は実施例1と同じ。)についてのIPCEの値を基準(1.0)として求めたものである。比較例1および比較例2では、測定前に電解質溶液に下地の金微粒子が溶出してしまい、測定自体が不可能だった。
[電解質溶液による金属微粒子層の腐食]
実施例1〜5および比較例1,2で得られた光電変換素子について、アノード電極を構成する金属微粒子層の電解質溶液による腐食の有無を、紫外可視吸収スペクトルを観察することによって確認した。腐食がある場合は、紫外可視吸収スペクトルの強度が減少する。結果を表1に示す。
Figure 2012038541
Figure 2012038541
比較例1のディップコート法や比較例2のスピンコート法で作製したセルは、実施例のスプレー熱分解法で作製したセルと比較して、電解質溶液による腐食のために、金属微粒子が溶出してしまった。これは、酸化チタン層が緻密ではないために、電解質溶液が酸化チタン層内を移動して金属微粒子層に到達して腐食を起こしたためであると考えられる。また、スプレー熱分解法を用いると、金属微粒子種、金属微粒子層形成方法、無機多孔質薄膜の有無に関わらず、電解質溶液による腐食が無いことが分かる。
1…プラズモン共鳴型光電変換素子、10…カソード電極、20…カソード電極、30…酸化還元電解質、11…透明基板、12…透明電極層、13…金属微粒子層、14…半導体薄膜、15…色素、16…無機多孔性薄膜。

Claims (12)

  1. 透明基板上に、透明電極層、金属微粒子層、n型半導体からなる半導体薄膜、および色素の吸着層が順に積層されたアノード電極と、該アノード電極の前記半導体薄膜に対向して配置されたカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に配設された酸化還元種を含む電解質とを備えたプラズモン共鳴型光電変換素子を製造する方法であり、
    前記透明基板上に形成された前記透明電極層の上に、前記金属微粒子層を形成する工程と、
    所定の温度に加熱された前記金属微粒子層上に、前記n型半導体の微粒子分散液または該微粒子の前駆体溶液をスプレー法により塗工し、極めて短時間に前記微粒子分散液の溶媒を蒸発させ、または前記前駆体を熱分解することにより、前記金属微粒子層上に前記半導体薄膜を形成する工程
    を備えることを特徴とするプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  2. 前記半導体薄膜の厚さは、5〜200nmであることを特徴とする請求項1記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  3. 前記金属微粒子層を構成する金属微粒子の平均粒子径(数平均粒子径)は、5〜500nmであることを特徴とする請求項1または2記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  4. 前記半導体薄膜の表面粗さRaは、0.2μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  5. 前記金属微粒子層を形成する工程は、前記透明電極層上に無機多孔性薄膜を形成した後、該無機多孔性薄膜の微細孔を埋めるように前記金属微粒子層を形成する工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  6. 前記金属微粒子の粒子径は、前記無機多孔性薄膜の前記微細孔の内径により調整されることを特徴とする請求項5記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  7. 前記金属微粒子層を形成する工程は、金属イオン化合物溶液を原料とする電解析出工程を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  8. 前記金属微粒子層を形成する工程は、前記金属を真空蒸着する工程を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  9. 前記金属微粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、およびロジウムから選ばれる少なくとも1種の金属の微粒子であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  10. 前記半導体薄膜は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、および酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  11. 前記酸化還元種は、ヨウ素、臭素、塩素、鉄、コバルト、ニッケル、およびマンガンから選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載のプラズモン共鳴型光電変換素子の製造方法。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項記載の製造方法により製造されたプラズモン共鳴型光電変換素子。
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