JP2012037251A - 渦電流探傷方法と渦電流探傷装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
図1(a)において、基準として使用する補正用実キズよりも飽和深さが浅くなる試験周波数により人工キズの被検査体を探傷して得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータ(グラフa)を取得する。次に補正用実キズの被検査体を同じ試験周波数により探傷して補正用実キズのキズ信号の位相PTを取得する。飽和深さDSsにおける飽和位相PSsと補正用実キズの位相PTとの位相差をキズの形状等に起因して発生するキズ信号の位相の補正値を求めるために使用する。
【選択図】図1
Description
まず深さの分かるキズを有する被検査体を所定の試験周波数によって探傷し、得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータを取得する。次に同じ試験周波数を用いて、実際にキズの深さを推定したい被検査体を探傷して、キズ信号の位相を取得する。取得した実キズのキズ信号の位相を人工キズの深さ・キズ信号の位相のデータと比較してキズの深さを推定する(例えば特許文献1参照)。
ここで本願は、上記キズの深さ・位相のデータを取得するために使用する深さの分かるキズを,一般的に人工キズで得ることから,「人工キズ」と呼び、補正値を求める際に使用する実キズを「補正用実キズ」,実際に深さを推定するキズを「深さ推定用実キズ」と呼ぶ。なお補正用と深さ推定用として同一の実キズが使用される場合もある。また人工キズのキズ信号の位相、補正用実キズのキズ信号の位相および深さ推定用実キズのキズ信号の位相は、夫々「人工キズの位相」、「補正用実キズの位相」、「深さ推定用実キズの位相」と呼ぶ。さらに渦電流探傷プローブの励磁コイルに供給する所定周波数の励磁電流を「試験周波数」と呼び、検出コイルにより得られた信号を同期検波して得られる信号を「キズ信号」と呼ぶ。
このグラフを用いて実キズの深さを推定するときは、実キズを探傷して得られたキズ信号の位相を、図5(a)のグラフと比較して実キズの深さを推定する。
なおキズ信号の位相は、キズの深さが深くなるほど大きくなるが、ある深さDt以上ではあまり位相が変化しなくなり(本願では便宜上これを飽和したと表現することとする)、そのときの位相はPtとなる。したがってキズ信号の位相は、キズがDtよりも深くなるとあまり変化せずにほぼ一定の値Ptとなる。またキズ信号の位相が飽和するキズの深さDtは、試験周波数によって異なり、その周波数が低くなるほど深くなる。即ち試験周波数が低くなると、深いキズの深さを推定することが可能となる。
ここで本願は、キズ信号の位相が飽和するときのキズの深さDtを飽和深さと呼び、飽和深さDtのときのキズ信号の位相を飽和位相と呼ぶ。
本願発明は、上記キズの形状等の影響に鑑み、人工キズと実キズの形状等の相違に起因して生じるキズ信号の位相差を求める方法を提供するとともに、その位相差によりキズ信号の位相を補正し、その補正した位相を人工キズの深さ・キズ信号の位相のデータ(例えば図5(a))と比較して実キズの深さを推定する渦電流探傷方法と渦電流探傷装置を提供することを目的とする。
請求項2に記載の渦電流探傷方法は、請求項1に記載の渦電流探傷方法において、前記補正値を求める試験周波数と前記深さ推定用実キズの位相を求める試験周波数は、同じであることを特徴とする。
請求項3に記載の渦電流探傷方法は、請求項1に記載の渦電流探傷方法において、前記深さ推定用実キズのキズ信号の位相を求める試験周波数(Fl)は、前記補正値を求める試験周波数(Fh)より低く、前記深さ推定用実キズの補正した位相は、人工キズの被検査体を前記低い試験周波数(Fl)で探傷して得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータと比較することを特徴とする。
請求項4に記載の渦電流探傷装置は、人工キズにより得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータを記憶する人工キズのデータ記憶部、被検査体を補正用および深さ推定用の試験周波数で探傷する探傷部、補正用および深さ推定用実キズ信号の位相を求める位相算出部、補正用実キズの被検査体を探傷して得られたキズ信号の位相を記憶する補正用実キズの位相記憶部、深さ推定用実キズの被検査体を探傷して得られたキズ信号の位相を記憶する深さ推定用実キズの位相記憶部、人工キズと補正用実キズを探傷して得られた両キズ信号の位相差を算出する位相差算出部およびその位相差を記憶する位相差記憶部、位相差記憶部の位相差を補正して補正値を求める位相差補正部、深さ推定用実キズのキズ信号の位相を前記補正値で補正した位相を前記データと比較して深さ推定用実キズの深さを推定するキズの深さ推定部を備えていることを特徴とする。
そこで、本願発明は、上記位相差を求めるために使用する補正用実キズの深さにおいて位相が飽和する試験周波数を用いて、人工キズと実キズを探傷し、両キズのキズ信号の位相差(飽和位相の差)を求め、その位相差を位相の補正値を求めるのに用いる。深さをもとめようとする実キズの深さは、得られた深さ推定用実キズの位相を補正値により補正し、その補正した位相を人工キズの深さ・キズ信号の位相のデータと比較して推定する。
飽和深さより浅いところでは,深さの変化に対して位相の変化が急激であるため補正値を求めるために補正用実キズの深さを正確に求めた上で対応する人工キズによる位相と比較する必要があるが,本願発明のように飽和深さを使用すれば実キズの深さが飽和深さよりも深いことがわかればよいので正確な深さを測定する必要がない。
図1(a)は、人工キズを形成した被検査体を所定の試験周波数で探傷したときに得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータをグラフaにしたものである。図1(a)において、横軸は、キズの深さを示し、縦軸は、キズ信号の位相を示す。
DSsは、飽和深さ、PSsは、飽和位相である。
試験周波数は、補正用実キズの深さが飽和深さDSs以上となる周波数を選定する。即ち試験周波数は、その試験周波数においてそれ以上キズが深くなっても位相がほとんど変化しなくなる深さよりも補正用実キズの深さが深くなるような試験周波数を選定する。飽和深さDSsより深いキズのキズ信号の位相は、飽和位相PSsになる。即ちキズが飽和深さDSsより深い場合には、キズ信号の位相は、飽和位相PSsになり、ほぼ一定になる。
次に深さ推定用実キズの深さが飽和深さDSsよりも浅く、キズの形状等の条件が被検査体S1と略同じ他の被検査体S2は、上記補正値を用いて人工キズの深さ・キズ信号の位相のデータ(図1(a))と比較することにより、実キズの深さを推定することができる。キズの形状等の条件が略同じ被検査体には、例えば、きしみ割れの発生している鉄道のレール等がある。レールの場合には、探傷条件が同じで同じ種類のキズを対象とするのであれば一度位相の補正値を求めれば、他のレールの探傷にその補正値を使うことができる。
試験周波数は、周波数Fhと周波数Fhよりも低い周波数Flを用い、同一の実キズを補正用と深さ推定用として兼用する。
まず人工キズを形成した被検査体を周波数Fh,Flで周波数以外の条件を同じにして探傷する。得られた人工キズの深さ・キズ信号の位相のデータは、グラフbh、blとなる。グラフbhは、周波数Fhに対応し、グラフblは、周波数Flに対応している。周波数Fhの飽和深さは、DSsh、飽和位相は、PSshであり、周波数Flの飽和深さは、DSslである(キズの深さは、DSsh<DSslとなる)。
周波数Fhは、深さ推定用実キズで深さを推定しようとする最小の深さ以上のキズに対してキズ信号の位相がほとんど変化しなくなる(飽和する)周波数に選定する。即ち周波数Fhは、深さ推定用実キズの最小の深さ以上のキズに対して飽和深さDSshとなるように、また周波数Flは、深さ推定用実キズの最小の深さで飽和しないように、即ち飽和深さDSshよりも深いキズで飽和するように選定する。
キズ信号の位相の補正値は、周波数Fhの試験周波数により得られたキズ信号の位相差(PSsh−PTh)により求める。実キズの深さの推定は、周波数Flの試験周波数により得られたキズ信号の位相を、人工キズの周波数Flのキズの深さ・キズ信号の位相データ(グラフbl)と比較して行うが、補正値は、前記位相差(PSsh−PTh)を用いる。その際補正値は、周波数Fh,Flの周波数比の平方根を用い、(PSsh−PTh)×1/(Fl/Fh)1/2に補正したものを用いる。なおこの補正方法は、浸透深さを求める式1/(πfuρ)1/2(fは試験周波数、uは透磁率、ρは導電率)を考慮したものである。また補正値の補正は、周波数Fh,Flの差が小さい場合には、行わなくてもよい。
図1(b)の場合、周波数Fh,Flの試験周波数による探傷は、同条件で行うから、リフトオフの影響も補正される。
図2(a)は、人工キズを形成した被検査体を試験周波数200kHzにより、リフトオフ0.5mmで探傷して得たキズ信号のキズの深さ・位相のデータに基づいて作成したグラフである。
キズ信号の位相は、理想的には、キズが深くなる程大きくなり、ある深さにおいてピークに達し、以降一定になるが、本実験では、深さが1mm付近でピークに達し、以降減衰する傾向になった。そこでその点を勘案して、飽和深さは、0.6mmとした。飽和深さが0.6mmのときの飽和位相は、約30度である。
次にレールAについて、試験周波数200kHzにより、リフトオフ0.5mmで探傷した結果、キズ信号の位相は、約25度であった。したがってレールAの場合、キズ信号の位相の補正値は、5度(30度−25度)となる。
なおレールAは、探傷後破壊して側定した結果、キズの深さは、1mm以上のキズが複数存在することが確認できており、得られたキズ信号の位相は飽和位相であると考えられる。
キズの深さの推定結果は、第4区分において0.6mm以上、他の区分において0.6mm以下である。
なおレールAは、探傷後破壊して側定した結果、キズの深さは、0.4mm程度であった。
図3(a)は、レールAについて、試験周波数25kHzにより区分毎にキズの深さを推定した結果を示す。
キズ信号の位相の補正値は、図2で求めた補正値5度を、試験周波数の周波数比を用いて、5×1/(25kHz/200kHz)1/2に補正した補正値を用いた。
キズの深さは、リフトオフが大きくなるほど深めに推定される結果となっている。
図3(b)の場合には、リフトオフ毎の深さのバラツキが小さくなる。
人工キズのデータ記憶部21において、人工キズにより得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータが記憶される。探傷部11において補正用および深さ推定用の試験周波数で実キズの被検査体12を探傷してキズ信号を取得する。取得されたキズ信号の位相は位相算出部24により算出され、適切に補正用実キズの位相記憶部22や深さ推定用実キズの位相記憶部23に記憶される。位相差算出部31は、人工キズのデータ記憶部21の飽和深さにおける飽和位相と補正用実キズの位相記憶部22の飽和深さにおける飽和位相から位相差を算出し必要に応じて位相差記憶部32に記憶する。位相差補正部33は、位相差算出部31で求めた位相差を必要に応じて周波数比で補正し、必要に応じて記憶する。キズの深さ推定部34は、人工キズのデータ記憶部21の人工キズの深さ・キズ信号の位相のデータと、位相差補正部33で求めた補正値と深さ推定用実キズ位相記憶部23で記憶した位相から実キズの深さを推定する。推定したキズの深さは、キズの深さ記憶部41に記憶し、必要に応じて表示装置42に表示する。なお人工キズのデータ記憶部21の人工キズの深さ・キズ信号の位相のデータは、事前に別の探傷装置で取得してもよいし、位相算出部24により算出してもよい。またそのデータは、グラフ等の形式で表示装置42に表示することもできる。その場合には、表示装置42のグラフ等を用いて実キズの深さを推定することもできる。
DSs,DSsh,DSsl 飽和深さ
PSs,PSsh 飽和位相
PT 実キズの位相
Claims (4)
- 人工キズの被検査体を所定の試験周波数で探傷して得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータと、深さ推定用実キズの被検査体を前記の試験周波数で探傷して得られたキズ信号の位相を補正値により補正した位相と比較して実キズの深さを推定する渦電流探傷方法において、補正用実キズの深さにおいて位相が飽和する試験周波数により,飽和深さ以上の深さを有する人工キズと補正用実キズを探傷して得られた両キズ信号の位相差を求め、その位相差を使用して補正値を求めることを特徴とする渦電流探傷方法。
- 請求項1に記載の渦電流探傷方法において、前記補正値を求める試験周波数と前記深さ推定用実キズの位相を求める試験周波数が同じであることを特徴とする渦電流探傷方法。
- 請求項1に記載の渦電流探傷方法において、前記深さ推定用実キズのキズ信号の位相を求める試験周波数(Fl)は、前記補正値を求める試験周波数(Fh)より低く、前記深さ推定用実キズの補正した位相は、人工キズの被検査体を前記低い試験周波数(Fl)で探傷して得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータと比較することを特徴とする渦電流探傷方法。
- 人工キズにより得られたキズ信号のキズの深さ・位相のデータを記憶する人工キズのデータ記憶部、被検査体を補正用および深さ推定用の試験周波数で探傷する探傷部、補正用および深さ推定用実キズ信号の位相を求める位相算出部、補正用実キズの被検査体を探傷して得られたキズ信号の位相を記憶する補正用実キズの位相記憶部、深さ推定用実キズの被検査体を探傷して得られたキズ信号の位相を記憶する深さ推定用実キズの位相記憶部、人工キズと補正用実キズを探傷して得られた両キズ信号の位相差を算出する位相差算出部およびその位相差を記憶する位相差記憶部、位相差記憶部の位相差を補正して補正値を求める位相差補正部、深さ推定用実キズのキズ信号の位相を前記補正値で補正した位相を前記データと比較して深さ推定用実キズの深さを推定するキズの深さ推定部を備えていることを特徴とする渦電流探傷装置。
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