JP2010156617A - 渦電流探傷方法と渦電流探傷装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】励磁電源21から高い周波数(例えば400kHz)と低い周波数(例えば32kHz)の励励磁電流を磁コイルECに供給し、同期検波器23l,23hにおいて励磁電流と同じ周波数の搬送波により検出コイルDCの検出信号を検波し、ローパスフィルタ24l,24hによってキズ信号を取り出す。キズ評価装置26は、基準キズにおける両キズ信号の位相角差と被検査体の未知の深さのキズにおける両キズ信号の位相角差とを比較して、被検査体のキズが基準キズより浅いか深いかを推定する。
【選択図】図1
Description
図9(a)は、従来の渦電流探傷装置の構成を示す(例えば特許文献1参照)。図9(b)は、被検査体のキズの深さを示し、図9(c)は、キズ信号の位相を説明するベクトル波形を示す。
渦電流探傷プローブpは、励磁コイルec、キズ信号を検出する検出コイルdc、渦電流探傷プローブpのリフトオフを検出するリフトオフ検出コイルlcからなり、励磁コイルecには、励磁電源11から所定周波数の励磁電流が供給される。検出コイルdcによって検出されたキズ信号(高周波のキズ信号)は、増幅器12を介して同期検波器13へ供給される。同期検波器13は、励磁電流と同じ周波数の搬送波(参照信号)により高周波のキズ信号を検波する。ローパスフィルタ14は、同期検波器13の出力からキズ信号を取り出す。信号処理回路や位相比較器等からなるキズ評価装置16は、深さが未知のキズのキズ信号の位相角を基準キズのキズ信号の位相角と比較して、深さが未知のキズは基準キズより深いか浅いかを推定する。
キズの深さを推定する際、キズ信号の位相角は、渦電流探傷プローブpと被検査体tの距離(リフトオフ)により変わるため、図9(a)の渦電流探傷装置は、リフトオフ測定器15を設けて、リフトオフ検出コイルlcの検出信号に基づいてリフトオフを測定し、そのリフトオフの大きさに応じて増幅器12のゲインを制御して、キズ信号の位相角がリフトオフの影響を受けないようにしている。
被検査体tのキズtk1,tk2,tk3の深さd1,d2,d3が、d1<d2<d3の場合、キズ信号のベクトル波形は、図9(c)のようになる。
ここで図9(c)の縦軸は、キズ信号のY成分Vyを、横軸は、位相が90度異なるX成分Vxを表している。またs1は、深さd1のキズのキズ信号を、s2は、深さd2のキズのキズ信号を、s3は、深さd3のキズのキズ信号を表し、θ1,θ2,θ3は、キズ信号s1,s2,s3の位相角を表している。
キズ信号s1,s2,s3の位相角は、キズの深さd1,d2,d3によって異なるから、例えば深さがd2のキズを基準キズにした場合、位相角θ1は位相角θ2よりも大きい(θ1>θ2)から、キズの深さd1は、d2よりも浅い(d1<d2)と推定し、位相角θ3は位相角θ2よりも小さい(θ3<θ2)から、キズの深さd3は、d2よりも深い(d3>d2)と推定する。このように基準キズの深さが分かっていれば、深さが未知のキズのキズ信号の位相角を基準キズのキズ信号の位相角と比較することにより、被検査体のキズが基準キズより浅いか深いかを推定することができる。
渦電流探傷装置は、例えば図9(a)のものを用いる。励磁電源11から所定周波数の励磁電流を励磁コイルecに供給し、検出コイルdcにより検出されたキズ信号(高周波のキズ信号)を同期検波器13によって検波し、ローパスフィルタ14によりキズ信号を取り出す。キズ評価装置16は、ローパスフィルタ14により取り出されたキズ信号の位相角を検出し、その検出した位相角を用いて未知のキズの深さを推定する。キズの深さの推定は、例えば、事前にキズの深さ推定曲線図(キズ信号の位相角とキズの深さを表す曲線図)を作成しておき、そのキズの深さ推定曲線図を用いて検出したキズ信号の位相角からキズの深さを推定する。またキズの深さは、キズの深さ推定曲線図を用いないで、キズ信号の位相角を用いて計算により推定することもできる。
本願発明は、従来のキズ信号の位相を用いてキズの深さを推定する渦電流探傷方法や渦電流探傷装置における前記問題点に鑑み、その渦電流探傷方法や渦電流探傷装置において、リフトオフ検出手段やキズ信号調整手段を設けることなくリフトオフの影響を低減し、かつキズの形状や渦電流探傷プローブのコイルの形状の影響も低減することを目的とする。
請求項2に記載の渦流探傷方法は、請求項1の渦流探傷方法において、前記二つのキズ信号の位相角差をあらかじめ深さの分かっている基準キズを前記二つの励磁電流で探傷して得られた二つのキズ信号の位相角差と比較してキズの深さを推定することを特徴とする。
請求項3に記載の渦流探傷方法は、請求項2に記載の渦流探傷方法において、前記基準キズは複数であることを特徴とする。
請求項4に記載の渦流探傷方法は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の渦流探傷方法において、前記二つの励磁電流は、前記被検査体のキズの深さに対応して周波数を選定することを特徴とする。
請求項6に記載の渦流探傷装置は、請求項5に記載の渦電流探傷装置において、前記二つの励磁電流は同時に供給することを特徴とする。
請求項7に記載の渦流探傷装置は、請求項5に記載の渦電流探傷装置において、前記二つの励磁電流は時分割で供給し、前記搬送波は励磁電流と同期していることを特徴とする。
請求項8に記載の渦流探傷装置は、請求項5、請求項6又は請求項7に記載の渦電流探傷装置において、前記キズ評価装置は、前記被検査体のキズのキズ信号の位相角差をあらかじめ深さの分かっている基準キズのキズ信号の位相角差と比較してキズの深さを推定することを特徴とする。
請求項9に記載の渦流探傷装置は、請求項8に記載の渦電流探傷装置において、前記基準キズは複数であることを特徴とする。
本願発明は、キズの形状の影響を受けることなくキズの深さを推定できるから、基準キズとして作製した人工キズを使用して実際のキズ深さを推定することができる。また本願発明は、渦電流探傷プローブのコイルの形状の影響を渦電流探傷プローブ毎に、或いは渦電流探傷装置毎に事前に調べてキズ信号の位相の設定を調整する必要がないから、探傷作業が容易になる。
本願発明は、高い周波数と低い周波数の二つの励磁電流を用い、両励磁電流によって発生する二つのキズ信号を用いて、被検査体のキズにおける二つのキズ信号の位相角差を基準キズにおける二つのキズ信号の位相角差と比較してキズの深さを推定するから、リフトオフ、キズの形状や渦電流探傷プローブのコイルの形状ばらつきの影響を受けることなく簡単にキズの深さを推定できる。
本願発明は、高い周波数と低い周波数の二つの励磁電流を時分割で供給し、励磁電流に同期してキズ信号を時分割で取り出すから、渦電流探傷装置の構成が簡単になる。
本願発明は、基準キズを複数設けるから、被検査体のキズが基準キズよりも深いか浅いか或いは同じかを判別するだけで容易にキズの深さを推定することができる。
図1(a)の渦電流探傷装置は、励磁コイルEC、検出コイルDCからなる渦電流探傷プローブP、励磁電源21、増幅器22、同期検波器23l,23h、ローパスフィルタ24h,24l、発振周波数Fhの発振器25h、発振周波数Flの発振器25l、キズ信号を処理して被検査体のキズの深さを推定するキズ評価装置26を備えている。
図1(b)は、図1(a)の渦電流探傷装置により深さを推定するキズの例で、被検査体Tは、深さD1,D2,D3のキズTK1,TK2,TK3を有し、それらのキズの深さは、D1<D2<D3である。
図2は、周波数Fh,Flの励磁電流と搬送波を時分割で供給する渦電流探傷装置の構成を示す。
図2の渦電流探傷装置の基本的構成は、図1の渦電流探傷装置と同じであるから、図1と同じ部分は、同じ符号を使用している。
励磁コイルECには、励磁電源21から高い周波数Fhの励磁電流と低い周波数Flの励磁電流がスイッチSW1の端子T1l,T1hを介して時分割で供給されるとともに、同期検波器23には、発振器25h、25lからスイッチSW2の端子T2l,T2hを介して励磁電流と同じ周波数の搬送波が時分割で供給される。スイッチSW1,SW2は、同期して切り換えられる。
図2の渦電流探傷装置は、同期検波器やローパスフィルタを励磁周波数毎に設ける必要がないから、構成が簡単になる。
図3(a)は、キズの深さDとキズ信号の位相角Θの関係を示し、実線は、低い周波数Flの励磁電流によって発生するキズ信号Slの位相角Θlを示し、破線は、高い周波数Fhの励磁電流によって発生するキズ信号Shの位相角Θhを示す。
キズ信号の位相角Θは、励磁電流の周波数によって異なり、かつキズの深さによって異なる。したがってキズの深さがD1,D2,D3のとき、周波数Fh,Flの励磁電流により発生するキズ信号の位相角差ΔΘ1,ΔΘ2,ΔΘ3は、ΔΘ1>ΔΘ2>ΔΘ3となる。
キズ信号Sl2の位相角Θl2とキズ信号Sh2の位相角Θh2の位相角差ΔΘ2は、ΔΘ2=Θl2−Θh2となる。即ちキズの深さがD2のとき、周波数Fl,Fhの励磁電流によって生じるキズ信号Sl2とキズ信号Sh2の位相角は、ΔΘ2だけ相違している。
励磁電流の周波数Fh,Flは、キズの深さや被検査体の材質によって探傷に適した範囲があるから、それらを勘案して周波数Fh,Flを選定する。
まず図4(a1),(a2)において、基準キズの深さがD2の場合、周波数Fl,Fhの励磁電流によって生じるキズ信号Sl2とキズ信号Sh2の位相角Θl2、Θh2は、図3(b)と同様に図4(a2)のようになる。ここで図4(a2)において、キズ信号Sl2を時計方向へΘl2=Θh2となるように回転して、図4(b2)のようにキズ信号Sh2に重ねる。即ち図4(b1)のように、位相角差ΔΘ2=0に設定する。その場合、キズ信号Sh2を反時計方向へ回転してもよい。
図4,図5のキズの深さの推定方法の場合、基準キズのキズ信号Sl2,Sh2のいずれかを回転して、位相角Θl2,Θh2を同じ大きさ(Θl2=Θh2)に設定するから、ベクトル波形を見れば、一目で被検査体のキズが基準キズより浅いか深いか或いは同じかが分かるから、キズの深さの推定が容易になる。
試験は、基準キズとしてアルミ合金の平板に機械加工により深さ0.8mmのキズを形成したものを用い、被検査体として放電加工により深さ0.5mmと1.0mmのキズを形成したアルミ合金の平板を用いた。励磁電流は、低い周波数Fl=32kHzに、高い周波数Fh=400kHzに設定し、リフトオフは、深さ0.5mmの場合0.1mmに、深さ1.0mmの場合0.2mmに設定した。
図6(a)は、被検査体のキズの深さが0.5mmの場合(被検査体のキズの深さ<基準キズの深さ)のベクトル波形を示し、図6(b)は、図6(a)のベクトル波形の輪郭の概略を示す、
図6から、被検査体のキズが基準キズよりも浅い(0.5mm<0.8mm)ときは、被検査体のキズ信号の位相角は、基準キズのキズ信号の位相角よりも、反時計方向へ進んでいることが分かる。
図7から、被検査体のキズが基準キズよりも深い(1.0mm>0.8mm)ときは、被検査体のキズ信号の位相角は、基準キズのキズ信号の位相角よりも、反時計方向へ遅れていることが分かる。
また試験結果を示す図6、図7のベクトル波形は、図5(a2),(b2)のベクトル波形と同じように被検査体のキズが基準キズより浅いか或いは深いかを表しているから、キズ信号の位相角は、リフトオフ(前者は0.1mm、後者は0.2mm)の影響を受けていないことが分かる。
図8(a)は、図3(a)と同じ図で、キズの深さDとキズ信号の位相角Θの関係を示し、実線は、低い周波数Flの励磁電流によって発生するキズ信号Slの位相角Θlを示し、破線は、高い周波数Fhの励磁電流によって発生するキズ信号Shの位相角Θhを示す。
キズの深さがD1,D2,D3のとき、キズ信号の位相角差は、ΔΘ1,ΔΘ2,ΔΘ3となるから、キズ信号の位相角差ΔΘとキズの深さDの関係は、図8(b)のようにキズの深さ推定線図(キズの深さ推定曲線図)として表すことができる。図8(b)のキズの深さ推定線図を事前に作成しておけば、未知の深さDxのキズ信号の位相角差ΔΘxを検出したとき、その位相角差ΔΘxを用いて深さ推定線図からキズの深さDxを推定できる。
22 増幅器
23,23l、23h 同期検波器
24,24l,24h ローパスフィルタ
25l、25h 発振器
26 キズ評価装置
P 渦電流探傷プローブ
EC 励磁コイル
DC 検出コイル
T 被検査体
Claims (9)
- 被検査体を周波数が異なる二つの励磁電流で探傷し、深さが未知のキズにより得られた二つのキズ信号の位相角差によりキズの深さを推定することを特徴とする渦流探傷方法。
- 請求項1の渦流探傷方法において、前記二つのキズ信号の位相角差をあらかじめ深さの分かっている基準キズを前記二つの励磁電流で探傷して得られた二つのキズ信号の位相角差と比較してキズの深さを推定することを特徴とする渦流探傷方法。
- 請求項2に記載の渦流探傷方法において、前記基準キズは複数であることを特徴とする渦流探傷方法。
- 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の渦流探傷方法において、前記二つの励磁電流は、前記被検査体のキズの深さに対応して周波数を選定することを特徴とする渦流探傷方法。
- 渦電流探傷プローブの渦電流探傷コイルに二つの異なる周波数の励磁電流を供給する励磁電源、夫々の励磁電流の周波数と同じ周波数の二つの搬送波を発生する発振器、発振器から供給される搬送波により渦電流探傷プローブによって検出された検出信号を検波する同期検波器、同期検波器の出力から二つのキズ信号を取り出すフィルタ、二つのキズ信号の位相角差により被検査体のキズの深さを推定するキズ評価装置を備えていることを特徴とする渦電流探傷装置。
- 請求項5に記載の渦電流探傷装置において、前記二つの励磁電流は同時に供給することを特徴とする渦電流探傷装置。
- 請求項5に記載の渦電流探傷装置において、前記二つの励磁電流は時分割で供給し、前記搬送波は励磁電流と同期していることを特徴とする渦電流探傷装置。
- 請求項5、請求項6又は請求項7に記載の渦電流探傷装置において、前記キズ評価装置は、前記被検査体のキズのキズ信号の位相角差をあらかじめ深さの分かっている基準キズのキズ信号の位相角差と比較してキズの深さを推定することを特徴とする渦電流探傷装置。
- 請求項8に記載の渦電流探傷装置において、前記基準キズは複数であることを特徴とする渦電流探傷装置。
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JP2012037251A (ja) * | 2010-08-03 | 2012-02-23 | East Japan Railway Co | 渦電流探傷方法と渦電流探傷装置 |
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