JP5462576B2 - 渦電流探傷装置及びその信号処理方法 - Google Patents

渦電流探傷装置及びその信号処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、渦電流探傷信号を用いて検査対象物におけるきずや材質変化等の特性変化を評価する渦電流探傷装置に関し、特に渦電流プローブ検出信号の予め取得した基準値と実際の検査で取得する検出信号とを比較して、検査対象物の特性変化を評価する渦電流探傷装置及びその信号処理方法に関する。
渦電流探傷検査装置は、渦電流プローブのコイルに交流(励磁電流)を供給して交流磁束を生成させ、渦電流プローブを検査対象物である金属体に近接させることによって渦電流を発生させ、その渦電流の乱れを検出信号として得る。渦電流は検査対象物の導電率や透磁率等で変化することから、検査対象物におけるきずや材質変化等の特性変化を非接触で評価することが可能である。
例えば渦電流プローブを用いて健全な標準試験片から検出された基準検出信号を予め取得して記録し、検査対象物から検出された検出信号と基準検出信号との差分を画面上で表示する。検査者は、表示画面を見て検査対象物の特性変化を確認し、検査対象物の状態を把握することができる。
従来、上記検出信号の表示形態の一つとして、検出信号の振幅及び位相角を表すリサージュ波形が知られている。詳細には、検出信号(電圧)を基準信号の位相と同じX成分Vxと、90度異なるY成分Vyに分解した後、それらVxとVyを縦軸及び横軸にプロットすることで、下記の式(1)及び式(2)に示す検出信号の振幅|V|及び位相角θを表現する。そして、検査者はリサージュ波形の形状から、例えばきず信号等の検出信号が検出されたか否かを判断することが出来る。
|V|=(Vx+Vy−1/2 ・・・(1)
θ=tan−1(Vy/Vx) ・・・(2)
近年、例えば渦電流プローブを検査対象物に沿って移動させる走査機構を用いたり、マルチコイルプローブを採用して、検査対象物を広範囲に検査する方法が利用されている。この場合に、リサージュ波形ではきず信号の検出位置を把握することができないため、例えば検出位置と、各測定地点での検出信号の値(|V|、θ、Vx、Vy)とをグラフの縦軸及び横軸にプロットした図で示すチャート波形あるいはBスコープや、検出位置を座標とする二次元の座標系にて検出信号の値を濃淡で示すCスコープ等が用いられている。
検査対象物の特性を検査する渦電流探傷装置の多くは信号検出に標準比較方式を用いる。これは、同一の渦電流プローブを2つ分離して製作し、一方のプローブを標準になるべき試料にあてがい他方のプローブを検査対象面に設置して、両者で取得される信号の差を検出信号とする。
この検出方式の場合、検査対象面の緩やかな形状変化や、渦電流プローブと検査対象面との距離(リフトオフ)の変動によって起こるノイズ成分が、検出信号に重畳することがある。これにより、上述のチャート波形やCスコープといった表示形態を用いた場合、表示値の限界値を超えたり、表示値の最大値と最小値の差が大きくなったりして、検出信号の観測が困難になる場合が生じる。
このような問題に対して、特許文献1のように、膨張処理及び収縮処理を利用してノイズに対応する検出信号データの低周波成分を除去するフィルター処理を施し、きずなどの存在位置の抽出を精度よく実施できるようにしている。また、非特許文献1記載のように、フーリエ変換及び逆変換に代表される数学的手法に基づいた信号処理法を適用して、検出信号データのノイズ成分を除去するフィルター処理を施し検出信号を目視しやすくすることが行われる。
特開2002−40000号公報
日本非破壊検査協会、非破壊検査技術シリーズ「渦流探傷試験III」(2003)、pp.70−72
しかしながら、特許文献1記載のものは、ノイズに対応する検出信号データの低周波成分は除去されるが、閾値を用いてノイズ信号発生区間を除去し検出信号を零とするため、微小信号の評価や標準試験片等で取得した基準検出信号との比較ができない検出信号が発生する。また、非特許文献1記載のものでは、除去する検出信号データの周波数成分が適切であってもきず信号の波形自体が変形してしまい、標準試験片等で取得した基準検出信号との比較が困難となる。
本発明の目的は、検査対象物の表面形状の違いやリフトオフの変動によって検出信号データにノイズ成分が重畳しても、そのノイズ成分を適切に除去し、かつ、予め測定している基準検出信号と、材質変化等の特性変化などの検出信号とを正確に比較することが可能な渦電流探傷装置およびその信号処理方法を提供することにある。
本発明は、渦電流プローブの検出信号と予め設定された検出信号の基準値とを比較して、検査対象物の特性を検査する渦電流探傷装置において、検出信号が発生する領域を抽出する信号発生領域抽出手段と、検出信号から不要な検出信号の成分を補正する信号補正手段と、検出位置又は検出時間を座標とする座標系にて信号補正した検出信号データを構成する信号分布合成手段とを備え、信号発生領域抽出手段は、検出位置又は検出時間を座標とする座標系にて前記渦電流プローブの検出信号の振幅及び位相角を演算し、検出信号が発生する領域の端部を抽出する端部抽出手段と、前記端部抽出手段で抽出された信号発生領域の端部の検出信号とその検出位置又は検出時間より、信号発生領域の端部以外の中間部を抽出する中間部抽出手段とを備えたことを特徴とする。
また、端部抽出手段は、検出位置又は検出時間が前後する前記渦電流プローブの検出信号を差分演算する差分処理部と、抽出する検出信号の振幅及び位相の情報を入力する入力部とを備え、前記入力部で入力された振幅及び位相の情報に基づき検出信号が発生する領域の端部を抽出することを特徴とする。
中間部抽出手段は、前記端部抽出手段で抽出された信号発生領域の端部のうち、信号発生領域の開始部を決定する開始部決定部と、信号発生領域の終了部を決定する終了部決定部と、信号発生領域の開始部と信号発生領域の終了部とで囲われた領域を抽出する中間部決定部とを備えたことを特徴とする。
また、信号補正手段は、検出信号から検出信号の不要成分を補正する区間を決定する区間決定部と、前記区間決定部で決定した区間毎に区間関数を設定する区間関数設定部と、検出信号から前記区間関数の値を減算する信号減算部とを備えたことを特徴とする。
また、区間決定部は、前記信号発生領域抽出手段で抽出された信号発生領域の検出位置又は検出時間に基づき、区間を決定することを特徴とする。
また、区間関数は、検出信号の不要成分を表しかつ前記区間決定部で決定した区間の両端部での値が、前記両端部の検出信号と等しくなる関数を用いることを特徴とする。また、区間関数は、一次関数を用いることを特徴とする。
また、信号分布合成手段は、前記信号補正手段によって得られた各区間の検出信号データを用いて、前記区間に対応する検出位置又は検出時間に配置したデータを生成するデータ生成部と、前記データ生成部で生成されたデータを出力する出力部とを備えたことを特徴とする。
また、信号分布合成手段は予め設定された検出信号の基準値を持つ基準信号データ記録部と、比較部を備え、渦電流プローブの検出信号と予め設定された検出信号の基準値とを前記比較部で比較して、検査対象物の特性を表示することを特徴とする。
また、信号補正手段は、検出信号から検出に不要なノイズ信号を抽出するノイズ信号抽出部を備え、
前記信号分布合成手段は、前記信号補正手段によって得られたノイズ信号の値を用いて、前記区間に対応する検出位置又は検出時間に配置したデータを生成するデータ生成部と、予め設定されたノイズ信号の基準値を持つ基準ノイズ信号データ記録部と、前記データ生成部で生成されたデータと前記基準ノイズ信号データ記録部のデータを比較する比較部と、比較部で生成されたデータを出力する出力部とを備えたことを特徴とする。
さらに、検出位置又は検出時間を座標に含む座標系にて渦電流プローブの検出信号を用いて検査対象物の特性変化を表示する渦電流探傷装置の信号処理方法において、
検出位置又は検出時間が前後する前記渦電流プローブの検出信号を差分演算し、
抽出する検出信号の振幅及び位相の情報を入力し、
入力された振幅及び位相の情報に基づき、検出信号が発生する領域の端部を抽出し、
抽出された信号発生領域の端部のうち、信号発生領域の開始部と信号発生領域の終了部を決定し、信号発生領域の開始部と終了部とで囲われた領域を抽出し、
前記抽出された信号発生領域の検出位置又は検出時間に基づき前記検出信号から不要成分を除去し補正する区間を決定し、
前記区間毎に区間関数を設けて検出信号から前記区間関数の値を減算し、
前記減算した検出信号の値を用いて前記区間に対応する検出位置又は検出時間に配置したデータを生成し、
生成されたデータを出力表示することを特徴とする。
さらに、渦電流探傷装置の信号処理方法において、生成されたデータを、予め設定された検出信号の基準値とを比較して、検査対象物の特性を検査し表示することを特徴とする。
さらに、検出位置又は検出時間を座標に含む座標系にて渦電流プローブの検出信号を用いて検査対象物の特性変化を表示する渦電流探傷装置の信号処理方法において、
検出位置又は検出時間が前後する前記渦電流プローブの検出信号を差分演算し、
抽出する検出信号の振幅及び位相の情報を入力し、
入力された振幅及び位相の情報に基づき、検出信号が発生する領域の端部を抽出し、
抽出された信号発生領域の端部のうち、信号発生領域の開始部と信号発生領域の終了部を決定し、信号発生領域の開始部と終了部とで囲われた領域を抽出し、
前記抽出された信号発生領域の検出位置又は検出時間に基づき前記検出信号から不要成分を抽出する区間を決定し、
前記検出信号から不要なノイズ信号を抽出し、
前記抽出したノイズ信号の値を用いて前記区間に対応する検出位置又は検出時間に配置したデータを生成し、
生成されたデータを予め設定されたノイズ信号の基準値と比較して出力表示することを特徴とする。
本発明によれば、渦電流探傷装置において検出信号が発生する領域を抽出する信号発生領域抽出手段と、検出信号から不要な検出信号の成分を補正する信号補正手段と、検出位置又は検出時間を座標とする座標系にて信号補正した検出信号データを構成する信号分布合成手段とを備え、信号発生領域抽出手段は検出位置又は検出時間を座標とする座標系にて前記渦電流プローブの検出信号の振幅及び位相角を演算し、検出信号が発生する領域の端部を抽出する端部抽出手段と、前記端部抽出手段で抽出された信号発生領域の端部の検出信号とその検出位置又は検出時間より、信号発生領域の端部以外の中間部を抽出する中間部抽出手段とを備えたことにより、検査対象物の表面形状の違いやリフトオフの変動によって検出信号データにノイズ成分が重畳してもそのノイズ成分を適切に除去でき、材質変化等の特性変化などの検出信号の波形が保持されるので、予め測定している基準検出信号と検出信号とを正確に比較することができる。
本発明の実施例1による渦電流探傷装置のブロック図である。 マルチコイル渦電流プローブの平面図である。 マルチコイル渦電流プローブを有する走査機構の斜視図である。 マルチコイル渦電流プローブで取得した検出データの模式図である。 マルチコイル渦電流プローブで取得した検出データのグラフである。 本発明の実施例1による渦電流探傷信号のグラフである。 本発明の実施例1による渦電流探傷信号の差分信号のグラフである。 本発明の実施例1による渦電流探傷信号処理方法の説明図である。 本発明の実施例1による渦電流探傷信号処理方法の説明図である。 本発明の実施例1による渦電流探傷信号処理方法の説明図である。 本発明の実施例1による渦電流探傷信号処理方法の説明図である。 本発明の実施例2による渦電流探傷装置のブロック図である。 本発明の実施例2による渦電流探傷装置の斜視図である。 本発明の実施例2による渦電流探傷装置の検量図である。 本発明の実施例2による渦電流探傷信号の説明図である。 本発明の実施例3による渦電流探傷装置のブロック図である。 本発明の実施例3による渦電流探傷装置の模式図である。 本発明の実施例3による渦電流探傷装置の検量図である。 本発明の実施例3による渦電流探傷信号の説明図である。
以下に本発の実施例を図面により説明する。
本発明の実施例1を図1〜図8により説明する。なお、図1〜図8において、同一符号は同一部分を示している。
〔検出データ〕
まず、図1〜図3を用いて、検出データについて説明する。図1は、実施例1の渦電流探傷装置の全体構成を示すブロック図である。
図1において、検査装置1は、検査時における渦電流プローブ5の情報と走査機構6の情報を取得し、検出データとして検出データ記録部9で記録する。検出データ記録部9の検出データに対し、信号が発生する領域を抽出する信号発生領域抽出手段2と、検出信号から不要な検出信号の成分を除去して補正する信号補正手段3と、補正した検出信号データを測定位置又は測定時間に対応づけてデータを構成する信号合成手段4を用いて処理し、検出信号に重畳した検査対象物の表面形状やリフトオフによるノイズ成分を除去したデータを生成し、出力部27から出力する。
〔渦電流プローブ〕
渦電流プローブ5は、図2Aに示すように渦電流信号を取得する渦電流のセンサコイル28を基板29に配置している。センサコイルが一つの場合は、渦電流プローブが位置している地点でのスポットデータが取得できる。そのため、渦電流プローブを検査対象物表面形状に沿って二次元ないし三次元的に走査することで検査対象物表面をくまなく検査する。
センサコイル28が複数配置されるマルチチャネル方式の渦電流プローブ5を用いた場合、渦電流プローブが位置している地点に対して、センサコイル28が配置されているエリアでのデータが取得できる。そのため、渦電流プローブを一次元的に走査してもある程度広い範囲の検査対象物表面を一括して検査することができる。検出データ記録部9で記録されている渦電流プローブ5の情報は、プローブ制御部8より得られる渦電流プローブ5の信号値、周波数、信号取得時刻などから構成されている。
走査機構6は、図2Bに示すように検査対象物30の表面に吸盤や磁石等で固定される固定具31を有する枠体32と、枠体32に跨って設置された案内レール33と、案内レール33に対し平行配置されるとともに枠体11に軸支されたネジ棒34と、ネジ棒34を回転駆動するモータ35と、案内レール33に案内されネジ棒34に螺合するスキャナヘッド36とを備えている。スキャナヘッド36において、渦電流プローブ5は押圧バネ37によって検査対象物30の曲面部30aに押し付けられる。
そして、走査制御装置7からの駆動電流信号によってモータ35によりネジ棒34が回転すると、スキャナヘッド36及び渦電流プローブ5は、ネジ棒34及び案内レール33の軸方向に移動する。検出データ記録部9で記録されている走査機構6の情報は、渦電流プローブ5の位置と各位置での時刻、走査方向・距離・速度などから構成されている。
〔プローブ検出信号〕
図3A、図3Bは、表面に凹凸ときずとを有する金属面を渦電流プローブで測定した例を示し、図3Aは検査対象面の状態を表す模式図、図3Bは図3Aの検出信号を示すグラフである。一般的な渦電流探傷法の検出信号は、検出信号を基準信号の位相と同じX成分Vxと、これと位相が90度異なるY成分Vyが対として得られる。ここでは、検出信号を補正する方法を記述するため、X成分あるいはY成分のいずれか一つを図示する。
検査表面30aには、凸部30b、凹部30d、きず部30c、30eが存在しており、図3A上の破線30fに沿った検査対象物30の縦断面30gは、検査対象物の深さの形状を表している。このような場合、図3Bのグラフに示すように渦電流プローブ5の検出信号波形38は、検出位置の検査対象物の表面の状態やきずに依存して変化する(ここで、プローブを定速移動させる場合は、図3Bの横軸は検出時間としてもよい)。
きず検査の場合、きず周辺の検出信号の高さできずの深さなどの寸法を評価するのが一般的である。例えば、きずがない位置で取得した信号レベルを基準値39として、この基準値39から信号のピーク値40a、40bで評価する。しかしながら、検査対象物30に凸凹部などの形状変化がある場合、検出信号に凸凹部などの形状変化に起因するノイズが検出信号に重畳する。きずに起因する信号の始点は、図3Bの中の矢印39a、39bであるので、きずの深さに対応する検出信号の高さは41a、41bに示す値が正しいが、検出信号にノイズが重畳すると、基準値39とピーク値40a、40bとの間の値で評価されるため、検出信号の高さは42a、42bとなり、正確なきず信号の評価を実施することが難しくなる。
従来の探傷検査では、検査員がグラフ上から主観的に39a又は39bを決定し、検出信号のデータ全体を上下に平行移動することで39a又は39bを基準線の信号レベルに補正する「バランス処理」と呼ばれる操作を実施し、検出信号の高さの評価を実施し易くなるようにしていた。この方法では主観的処理による誤差が避けられない。
きずに起因する信号以外の信号成分の除去方法として、従来から測定位置を空間軸とした空間周波数の分析に基づく方法などが用いられているが、周期的関数である正弦波に基づく分析法では、不要なノイズ成分の信号のみならずきず信号のピーク値40a、40bに対しても数値的な減算および増算が実行され、さらにピーク値が現れる検出位置又は検出時間の位置をずらしてしまう可能性がある。そのため、検出信号の高さ42a、42bの値、また、きず信号のピーク値40a、40bの周辺の検出信号波形38が分析に依って変わってしまっていた。
本実施例によれば、図1に示した構成により、検査対象物の表面形状の違いやリフトオフの変動によって検出信号データにノイズ成分が重畳しても、そのノイズ成分を適切に除去でき、検出信号の波形が保持することができる。
〔検出データ処理〕
次に、検出データの処理の流れについて説明する。図1において、検査装置1の検出データ記録部9に記録されている検出データは、信号発生領域抽出手段2と信号補正手段3へ送られる。信号発生領域抽出手段2で検出信号が発生する領域を抽出した後、抽出した結果である信号発生領域データは、信号補正手段3へ送られる。信号補正手段3で信号発生領域データに基づき、検出データの補正が実行される。その後、信号補正手段3で補正された補正信号データは、信号分布合成手段4へ送られ、検出信号の検出位置又は検出時間に対応して信号波形データ及び画像データを生成し、出力部27で出力する。
〔信号発生領域抽出手段〕
信号発生領域抽出手段2は、端部抽出手段10で検出信号が発生する領域の端部を抽出し、次に、信号発生領域の端部の検出信号とその検出位置あるいは検出時間に基づき、中間部抽出手段11で信号発生領域の端部以外の中間部を抽出し、信号発生領域の端部と中間部を統合することで信号発生領域を抽出する。抽出した信号発生領域は、信号発生領域データ記録部12に記録され、信号補正手段3へ送られる。
〔端部抽出手段〕
図1において、信号発生領域抽出手段2の端部抽出手段10は、差分処理部13で検出位置又は検出時間が前後する渦電流プローブ5の検出信号を差分演算し、端部データとして端部データ記録部14に記録する。端部データは、検出信号と、端部抽出条件を満たす差分演算後の検出信号と、検出位置又は検出時間などで構成されている
図4A、図4Bは、図3Bに示した渦電流プローブ5の検出信号波形38を例に、端部抽出手段10の機能を図示したグラフである。図4Aは、図3Bと同一の検出信号波形38のグラフであり、図4Bは、検出信号波形38を差分処理部13で処理して得られた差分信号波形43のグラフである。ここで、検出信号を離散量としてみれば差分処理であるが、連続量としてみれば微分処理と考えても良い。
検出データ記録部9で記録された検出信号データに対し、検出位置又は検出時間が前後する検出信号の差分をとると、検出信号波形38において検出信号値が変化率の高い検出位置又は検出時間で、差分信号波形43は大きな値を取る。また、検出信号波形38が増加している部分で差分信号は正の値になり、検出信号波形38が減少している部分で差分信号波形43は負の値になる。
検査対象物表面30の形状変化に起因する検出信号44a、44bの変化率に比べてきず信号のピーク値40a、40bの付近の変化率は非常に高く、図4Bの例では、きず信号付近に振幅の大きい正負の対となる波形45a、45bが得られることがわかる。また、その正負対の位置はきずに起因する信号の両端部に現れる。この現象を利用して、検出信号の評価が不要な形状変化に起因する検出信号44a、44bを除去し、検出信号の評価が必要な検出信号40a、40b周辺の検出信号を取り出すために、検出信号の端部を抽出する。
検出信号の端部を抽出する条件は、入力部15によって入力され端部抽出条件記録部16に記録される。入力部15からの入力方法は、検査員が入力機器を用いてマニュアルで端部抽出条件を設定する方法や、予め実験的に決定した端部抽出条件を記録媒体や電子ファイルから入力する方法がある。端部抽出条件は、検出信号値とその位相値、差分信号値とその位相値、検出位置及び検出時間で構成されている。
最も簡素で有効な実施形態は、検出信号波形の変化率に注目し差分信号値に閾値46の条件を与えるものである。すなわち、図4Bの正負の閾値46以上の絶対値をもつ差分信号波形43を取り出す。その結果、きず信号の端部の検出位置又は時間を抽出することができる。端部の検出信号、差分信号、検出位置又は検出時間より構成されている端部データは、端部データ記録部14に記録される。
なお、端部抽出条件として差分処理した後の位相情報に基づいて抽出すれば、同様の効果に加えて、位相情報に伴って信号種の選定機能を付与することが可能である。また、検出位置又は検出時間が前後する検出信号の差分をとる差分処理部として、例えば検出信号を予め差分して出力する渦電流プローブを用いてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
〔中間部抽出手段〕
図1において、中間部抽出手段11は、端部抽出手段10で得られた端部データに基づき、開始部決定部17と、終了部決定部18とで、検出信号の開始部と、検出信号の終了部とを決定する。次いで、決定した検出信号の開始部の検出位置又は検出時間と、検出信号の終了部の検出位置又は検出時間とに基づき、中間部決定手段19で検出信号の開始部の検出位置又は検出時間と、検出信号の終了部の検出位置又は検出時間との間で挟まれる中間部の領域を抽出する。
開始部決定部17で決定した検出信号の開始部と、終了部決定部18で決定した検出信号の終了部と、中間部決定部19で決定した検出信号の前記中間部の領域を抽出した結果は、信号発生領域データ記録部12で信号発生領域データとして統合され記録される。信号発生領域データは、前記開始部、終了部、中間部における検出信号と、差分演算後の検出信号と、検出位置又は検出時間などで構成されている。
図5は、図3Bに示した渦電流プローブ5の検出信号波形38を例に、中間部抽出手段11の機能を図示したものである。差分処理部13で得られた差分信号に基づき得られた端部データで差分信号波形43のうち、正の値47a、47bは、検出信号波形38の増加部であり、負の値48a、48bは、検出信号波形38の減少部である。これより、正の値47a、47bの部分を開始部決定部17で検出信号の開始部49a、49bとして抽出する。一方、負の値48a、48bの部分を終了部決定部18で検出信号の終了部50a、50bとして抽出する。
なお、検出信号の値が、減少した後増大するようなデータを用いた場合、差分信号は負正の対になるため、負の値は開始部で正の値は終了部となる。したがって、正負を逆転して実施する。この場合も上記同様の効果を得ることができる。
開始部49a、49bと、終了部50a、50bと、それ以外の部分とを示すデータの管理は、値51、52、53などの数値を割り当てた指標を作成する。開始部49a、49bと終了部50a、50bを抽出した後、開始部49a、49bと終了部50a、50bの検出位置又は時間に基づき、開始部と終了部の間で挟まれる中間部の領域を中間部決定部19で抽出する。
中間部決定部19で決定した中間部と、それ以外の部分とを示すデータの管理は、例えば値55、56などの数値を割り当てた指標を作成する。最終的に、開始部決定部17、終了部決定部18、中間部決定部19で抽出された検出位置又は検出時間を統合して、値58、59で信号発生領域とそれ以外の領域を区別し、信号発生領域データ記録部12に保存する。信号発生領域データは、開始部49a、49bと、終了部50a、50b、中間部54a、54bにおける検出信号、差分信号、検出位置又は検出時間、一連の開始部と、終了部と、中間部とで構成される組みを示す57a、57bで構成されている。
きずや形状変化が存在する部分を通過する際、検出信号は、渦電流プローブ5の走査方向に対して増加(または減少)し、さらに、渦電流プローブ5を走査していくと、検出信号は、減少(または増加)する。
この性質を利用して、検出位置又は検出時間が前方のデータ位置から、後方のデータ位置に向かって開始部の指標を探査する。引き続き、検出位置又は検出時間が前方のデータ位置から、後方のデータ位置に向かって終了部の指標を探査する。探索された開始部の指標から終了部の指標の間を中間部54a、54bとして決定する。
なお、上記の手順と逆に、検出位置又は検出時間が後方のデータ位置から前方のデータ位置に向かって終了部の指標を探査することもできる。引き続き、検出位置又は検出時間が後方のデータ位置から前方のデータ位置に向かって、開始部の指標を探査する。探索された終了部の指標から開始部の指標の間を中間部54a、54bとして決定してもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
〔信号補正手段〕
信号補正手段3は、検出信号から補正したい検出信号成分を補正することを目的に、信号発生領域データ記録部12に記録されている信号発生領域のデータに基づき、区間決定部20で、補正する信号の区間を決定し区間記録部21に記録し、その区間の検出信号に基づき、区間関数設定部22によって補正したい検出信号成分を表わす区間関数を決定する。区間関数の決定は、予めサンプルを用意してもよく、演算により算出しても良い。その後、検出データ記録部に記録されている検出信号と、区間記録部21に記録されている区間毎に設定された区間関数との差を信号減算部23で求め、検出信号を補正する。その結果は、補正信号データ記録部24に記録される。補正信号データは、補正後の検出信号データと検出位置及び検出時間で構成されている。
〔検出信号の補正〕
図6と図7は、図3Bに示した渦電流プローブ5の検出信号波形38と、図5に示した信号発生領域のデータに基づいて、検出信号の補正を行った例である。
区間決定部20では、信号発生領域抽出手段2で得られた信号発生領域57a、57bの両端の検出位置又は検出時間より、その検出位置又は検出時間における検出信号60a〜60fを取り出す。取り出した信号のうち隣接する二点間を補正する区間61a〜61eとして区間記録部21に記録する。このとき、検出信号波形38の両端60a、60fを区間決定に利用する検出信号としてもよい。
区間関数設定部22には、区間記録部21に記録されている区間毎に補正したい検出信号を表現する関数が保持されている。図7に図示する例は、最も簡素で緩やかに変化するノイズ信号成分を効果的に表現する関数として、区間の端部を一次関数(直線)でつないだ場合の区間関数を示す。一次関数は、二点の検出信号があれば関数のパラメータ、すなわち傾きと定数項が決まる。具体的に記述すれば、区間61aの区間関数62aは、二個の検出信号点60a、60bを用いて、検出信号値vを検出位置又は検出時間の関数xで式(3)のように表現する。
v=((va−vb)/(xa−xb))×(x−xa)+va・・・(3)
同様に、区間61bの区間関数62bは式(4)となり、
v=((vb−vc)/(xb−xc))×(x−xb)+vb・・・(4)
各区間の両端の検出信号値をつなぐ関数となる。
信号減算部23は、区間決定部20で決定した区間毎に区間関数を用意した後、対応する区間の検出信号38と区間関数設定手段22で用意した区間関数の値との差を、検出位置又は検出時間毎に求める。信号減算部23で処理した結果、区間関数22の検出信号成分が補正された補正信号波形63が得られ、補正信号データ記録部に記録される。
このとき、区間関数22として、各区間の両端の検出信号が元来の検出信号と等しい場合、対応する検出位置又は検出時間における信号減算部23の結果は零になるため、補正信号波形63において、各区間の両端における検出信号の値は基準線39と等しくなる。これにより、きず信号のピーク値64a、64bと基準線39との差、すなわち、検出信号の高さ65a、65bは、従来行われていたバランス処理を必要とせずに、直接検出信号を評価することが可能となる。
また、補正された補正信号波形63は元来の検出信号波形38の変化の形をほぼ保持することができるため、検出信号波形38がもつ検出信号の情報をほぼ保持でき、これにより詳細な検出信号の解析が実施できる。
なお、区間関数として、区間の両端の検出信号値によって決定できる一次関数を用いた例を示したが、これに限定されない。任意に用意された関数を用いたり、対象区間内に非一つ又は複数の検出信号の参照点を設けて、高次関数の係数を決定し、それらを利用したりしてもよい。この場合、利用する区間関数の性質に応じた検出信号の補正が可能となる。
〔信号分布合成手段〕
信号分布合成手段4は、信号補正手段3で得られた各区間の補正信号データを補正信号データ記録部24から読み込み、実際の検出位置又は検出時間に対応した位置又は時間に、補正後のデータを割り当てたデータを生成するデータ生成部25、および、データ生成部25で生成したデータを記録するデータ記録部26で構成され、データ記録部26に記録されているデータは、出力部27から出力される。
図8は、信号分布合成手段4の機能の例を図示したものである。データ生成部25では、信号補正手段3で補正信号データの波形63を、例えば位置Xと位置Yで構成される座標系の画像データ66において、検出信号が得られた位置を示す破線67へ展開したデータを生成し、生成したデータはデータ記録部26へ記録し、出力部27で出力される。出力部27は、ディスプレイ画面、プリンタ紙への出力など画像データ、波形データを観測することが可能な出力形式を有する。図8は、出力部27としてディスプレイ画面に2次元画像を表示した例を示している。波形63の検出信号の高さに対応付けて、画像の画素に輝度68を割り当て表示している。
以上説明したように、検査対象物の表面形状の違いやリフトオフの変動によって検出信号データにノイズ成分が重畳してもそのノイズ成分のみを除去して、材質変化等の特性変化などの検出信号の波形の情報がそのまま保持されるため、詳細な検出信号の解析が実施できる効果が得られる。
本発明の実施例2を図9〜図11により説明する。図9は、実施例2における渦電流探傷装置の全体構成を表すブロック図である。図9において、検査装置1は検査時における渦電流プローブ5の情報と走査機構6の情報を取得し、検出データとして検出データ記録部9で記録する。この検出データ記録部9の検出データに対し、信号が発生する領域を抽出する信号発生領域抽出手段2と、検出信号から不要な検出信号の成分を補正する信号補正手段3と、信号補正した検出信号データを測定時間及び測定位置に対応づけてデータを構成する信号合成手段4を用いて処理し、検出信号に重畳した検査対象物の表面形状やリフトオフによるノイズ成分を除去したデータを生成し、データ記録部26に記録する。
さらに、予め設定された検出信号の基準値を記録している基準信号データ記録部69を新たに設け、予め設定された検出信号の基準値とデータ記録部26に記録されているノイズ成分を除去したデータとの比較を比較部70で実行し、出力装置71に出力する。
基準信号データ記録部69に記録されている基準信号データは、例えば、きず信号、リフトオフ信号、材質の特性の信号など、検出信号の種類で区別された基準信号データで構成されている。
図10Aは、金属板72にきず深さやきず長さが既知であるきず73を渦電流プローブ5で測定する様子を示す。図10Bは、渦電流プローブ5の検出信号を振幅74と位相75で表現したリサージュ波形において、きず深さが異なる複数のきず73を用いた場合に、検出される検出信号の軌跡76a〜76cを示す。さまざまな深さのきず73を測定した場合、深さの浅いきずの検出信号の振幅74は小さく、深さの深いきずの検出信号は、振幅74は大きくなる(渦電流探傷の原理上、ある深さで振幅74が飽和する)。
これを利用して、検出される検出信号の軌跡の先端76a〜76cを繋いで作成する検量線76を基準信号データ記録部69に記録しておき、比較部70で、検量線76とデータ記録部26の検出信号データを比較してきず深さを推定し、検出位置に対応するきず深さを出力装置71で表示することができる。また、基準となる検出信号に対する比を表示装置71で表示することで、試験対象物の良否の判定を実施することができる。
図11は、ある深さのきず信号を基準信号として、その基準信号との割合を画像66の輝度77として表示装置71で表示した例である。検査員は、このような表示データに基づいて、検出信号の評価を簡便に実施することができるようになる。
以上説明したように、検査対象物の表面形状の違いやリフトオフの変動によって検出信号データにノイズ成分が重畳してもそのノイズ成分のみを除去でき、材質変化等の特性変化などの検出信号の波形の情報が保持され、予め測定している基準検出信号と、検出信号とを正確に比較することができ、検出信号の基準値と測定値とを正確に比較することを可能とすることができる。
本発明の実施例3を図12〜図14により説明する。図12は、実施例3における渦電流探傷装置の全体構成を表すブロック図である。図12において、検査装置1は、検査時における渦電流プローブ5の情報と走査機構6の情報を取得し、検出データとして検出データ記録部9で記録している。
検出データ記録部9で記録している検出データに対し、信号補正手段3にはあらたに検出信号から不要な検出信号成分を抽出するノイズ信号抽出部78及びノイズ信号抽出部78で抽出したノイズ信号データを記録するノイズ信号データ記録部79とを設ける。
次に、抽出したノイズ信号成分のデータを測定時間又は測定位置に対応づけてデータを構成する信号合成手段4を用いて処理し、検出信号に重畳した検査対象物の表面形状やリフトオフによるノイズ成分を抽出したデータを生成する。さらに、予め設定された検出信号の基準ノイズ値を記録している基準ノイズ信号データ記録部80を新たに設け、データ記録部26に記録されているノイズ成分を抽出したデータとの比較を比較部70で実行し、出力装置71に出力する。
基準ノイズ信号データ記録部80に記録されている基準信号データは、例えば、リフトオフノイズ、形状ノイズ、材質ノイズなど、ノイズ信号の種類で区別された基準ノイズ信号データで構成されている。
図13A、図13Bは、基準ノイズ信号データ記録部80に記録されている基準ノイズ信号データの例として、金属板81と渦電流プローブ5との間隔(リフトオフ)を変えて測定したリフトオフノイズの検出信号を利用した場合を示している。図13Aは、金属板81渦電流プローブ5との間隔を変化させて検出信号を測定している様子を示す。図13Bは、渦電流プローブ5の検出信号を振幅と位相で表現したリサージュ波形において、リフトオフが異なる場合、検出される検出信号の軌跡82a〜82eを示す。さまざまなリフトオフを測定した場合、リフトオフの小さい検出信号の振幅は小さく、リフトオフが大きい検出信号は振幅が大きくなる(渦電流探傷の原理上、あるリフトオフで振幅が飽和する)。
これを利用して、検出される検出信号の軌跡82a〜82eを繋いで作成するリフトオフの検量線82を基準ノイズ信号データ記録部80に記録しておき、比較部70で、検量線82とデータ記録部26に記録している検出信号データと比較することで、渦電流プローブ5のノイズとしてのリフトオフ量を推定し、出力装置71で検出位置に対応して表示することができる。また、基準となるノイズ信号の高さに対する比を表示装置71で表示することで、測定データのノイズ成分の分析や、検出データの確かさの良否の判定を実施することができる。
図14は、あるリフトオフ量の検出信号を基準信号として、その基準信号との割合を画像83の輝度84として表示装置71で表示した例である。リフトオフノイズが重畳している部分にのみ高い画像輝度が見られる画像が得られる。検査員は、このような表示データに基づいて、検出信号の評価を簡便に実施することができるようになる。
以上説明したように、実施例3は、検査対象物の表面形状の違いやリフトオフの変動によって検出信号データに重畳したノイズ成分を抽出することができ、予め測定している基準ノイズ信号と、検出信号とを正確に比較することができ、ノイズ信号の基準値と測定値とを正確に比較することを可能とし、ノイズ信号成分を評価しながら検査する検査方法を提供することができる。
1・・・検査装置
2・・・信号発生領域抽出手段
3・・・信号補正手段
4・・・信号合成手段
5・・・渦電流プローブ
6・・・走査機構
7・・・検査査制御装置
8・・・プローブ制御部
9・・・検出データ記録部
10・・・端部抽出手段
11・・・間部抽出手段
12・・・信号発生領域データ記録部
13・・・差分処理部
14・・・端部データ記憶部
15・・・入力部
16・・・端部抽出条件記憶部
17・・・開始部決定部
18・・・終了部決定部
19・・・中間部決定部
20・・・区間決定部
21・・・区間記憶部
22・・・区間関数設定部
23・・・信号減算部
24・・・信号減算データ記録部
25・・・データ生成部
26・・・データ記録部
27・・・出力部
28・・・渦電流センサ
30・・・検査対象物
49・・・開始部
50・・・終了部
54・・・中間部
57・・・信号発生領域
60・・・検出信号
61・・・区間
62・・・区間関数
69・・・基準信号データ記録部
70・・・比較部
71・・・出力装置
73・・・きず
75・・・位相
78・・・ノイズ信号抽出部
79・・・ノイズ信号データ記録部
80・・・基準ノイズ信号データ記録部

Claims (11)

  1. 渦電流プローブの検出信号と予め設定された検出信号の基準値とを比較して、検査対象物の特性を検査する渦電流探傷装置において、
    検出信号が発生する領域を抽出する信号発生領域抽出手段と、検出信号から不要な検出信号の成分を補正する信号補正手段と、検出位置又は検出時間を座標とする座標系にて信号補正した検出信号データを構成する信号分布合成手段とを備え、
    前記信号発生領域抽出手段は、検出位置又は検出時間を座標とする座標系にて前記渦電流プローブの検出信号の振幅及び位相角を演算し、検出信号が発生する領域の端部を抽出する端部抽出手段と、前記端部抽出手段で抽出された信号発生領域の端部の検出信号とその検出位置又は検出時間より、信号発生領域の端部以外の中間部を抽出する中間部抽出手段とを備え
    前記信号補正手段は、検出信号から検出信号の不要成分を補正する区間を決定する区間決定部と、前記区間決定部で決定した区間毎に区間関数を設定する区間関数設定部と、検出信号から前記区間関数の値を減算する信号減算部とを備え、前記区間の端部を一次関数からなる区間関数でつないで、前記検出信号波形の変化の形をほぼ保持した補正信号波形を得ることを特徴とする渦電流探傷装置。
  2. 請求項1記載の渦電流探傷装置において、
    前記端部抽出手段は、検出位置又は検出時間が前後する前記渦電流プローブの検出信号を差分演算する差分処理部と、抽出する検出信号の振幅及び位相の情報を入力する入力部とを備え、前記入力部で入力された振幅及び位相の情報に基づき検出信号が発生する領域の端部を抽出することを特徴とする渦電流探傷装置。
  3. 請求項1記載の渦電流探傷装置において、
    前記中間部抽出手段は、前記端部抽出手段で抽出された信号発生領域の端部のうち、信号発生領域の開始部を決定する開始部決定部と、信号発生領域の終了部を決定する終了部決定部と、信号発生領域の開始部と信号発生領域の終了部とで囲われた領域を抽出する中間部決定部とを備えたことを特徴とする渦電流探傷装置。
  4. 請求項記載の渦電流探傷装置において、
    前記区間決定部は、前記信号発生領域抽出手段で抽出された信号発生領域の検出位置又は検出時間に基づき、区間を決定することを特徴とする渦電流探傷装置。
  5. 請求項記載の渦電流探傷装置において、
    前記区間関数は、検出信号の不要成分を表しかつ前記区間決定部で決定した区間の両端部での値が、前記両端部の検出信号と等しくなる関数を用いることを特徴とする渦電流探傷装置。
  6. 請求項1記載の渦電流探傷装置において、
    前記信号分布合成手段は、前記信号補正手段によって得られた各区間の検出信号データを用いて、前記区間に対応する検出位置又は検出時間に配置したデータを生成するデータ生成部と、前記データ生成部で生成されたデータを出力する出力部とを備えたことを特徴とする渦電流探傷装置。
  7. 請求項1記載の渦電流探傷装置において、
    前記信号分布合成手段は予め設定された検出信号の基準値を持つ基準信号データ記録部と、比較部を備え、渦電流プローブの検出信号と予め設定された検出信号の基準値とを前記比較部で比較して、検査対象物の特性を表示することを特徴とする渦電流探傷信号表示装置。
  8. 請求項記載の渦電流探傷装置において、
    前記信号補正手段は、検出信号から検出に不要なノイズ信号を抽出するノイズ信号抽出部を備え、
    前記信号分布合成手段は、前記信号補正手段によって得られたノイズ信号の値を用いて、前記区間に対応する検出位置又は検出時間に配置したデータを生成するデータ生成部と、予め設定されたノイズ信号の基準値を持つ基準ノイズ信号データ記録部と、前記データ生成部で生成されたデータと前記基準ノイズ信号データ記録部のデータを比較する比較部と、比較部で生成されたデータを出力する出力部とを備えたことを特徴とする渦電流探傷装置。
  9. 検出位置又は検出時間を座標に含む座標系にて渦電流プローブの検出信号を用いて検査対象物の特性変化を表示する渦電流探傷装置の信号処理方法において、
    検出位置又は検出時間が前後する前記渦電流プローブの検出信号を差分演算し、
    抽出する検出信号の振幅及び位相の情報を入力し、
    入力された振幅及び位相の情報に基づき、検出信号が発生する領域の端部を抽出し、
    抽出された信号発生領域の端部のうち、信号発生領域の開始部と信号発生領域の終了部を決定し、信号発生領域の開始部と終了部とで囲われた領域を抽出し、
    前記抽出された信号発生領域の検出位置又は検出時間に基づき前記検出信号から不要成分を除去し補正する区間を決定し、
    前記区間毎に一次関数からなる区間関数を設けて検出信号から前記区間関数の値を減算して前記検出信号波形の変化の形をほぼ保持して補正した検出信号波形を得たのち、
    前記減算した検出信号の値を用いて前記区間に対応する検出位置又は検出時間に配置したデータを生成し、
    生成されたデータを出力表示することを特徴とする渦電流探傷装置の信号処理方法。
  10. 請求項9記載の渦電流探傷装置の信号処理方法において、
    生成されたデータを、予め設定された検出信号の基準値とを比較して、検査対象物の特性を検査し表示することを特徴とする渦電流探傷装置の信号処理方法。
  11. 請求項9記載の渦電流探傷装置の信号処理方法において、
    検出位置又は検出時間が前後する前記渦電流プローブの検出信号を差分演算し、
    抽出する検出信号の振幅及び位相の情報を入力し、
    入力された振幅及び位相の情報に基づき、検出信号が発生する領域の端部を抽出し、
    抽出された信号発生領域の端部のうち、信号発生領域の開始部と信号発生領域の終了部
    を決定し、信号発生領域の開始部と終了部とで囲われた領域を抽出し、
    前記抽出された信号発生領域の検出位置又は検出時間に基づき前記検出信号から不要成
    分を抽出する区間を決定し、
    前記検出信号から不要なノイズ信号を抽出し、
    前記抽出したノイズ信号の値を用いて前記区間に対応する検出位置又は検出時間に配置
    したデータを生成し、
    生成されたデータを予め設定されたノイズ信号の基準値と比較して出力表示することを
    特徴とする渦電流探傷装置の信号処理方法。
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