JP2012026140A - 建具 - Google Patents

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バグワドカ ニナド
Hisafumi Konya
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Abstract

【課題】枠体や面材の小型化を図ることができ閉鎖時に隠蔽可能な丁番を備えた建具を提供すること。
【解決手段】ドア枠2に扉3を支持する丁番10において、枠側ケース20に第1リンク40が回動自在に支持され、この第1リンク40の他端側に第2リンク50が軸支されることで、枠側ケース20の見付け寸法を最小化することができるとともに、扉側ケース30の案内溝37に第3リンク60の他端側がスライド自在に支持されることで、扉側ケース30の見込み寸法を最小化することができる。従って、縦枠4の見付け寸法および扉3の見込み寸法をそれぞれ最小化することができ、効率的にドア枠2および扉3の小型化を図ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、建具に関し、詳しくは、枠体に開閉自在に支持される面材を備えた建具に関する。
従来、枠体に扉や障子(面材)が開閉自在に支持されたドアや窓等の建具において、面材の吊元側を枠体の縦枠に支持する丁番(蝶番)としては、ヒンジ部分が縦枠や面材の面外に突出したものが一般的である。一方、面材の閉鎖状態において、縦枠と面材の吊元側縦框との間に隠蔽されて見えないように構成されたドアヒンジ(隠し丁番)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のドアヒンジは、枠側に一端が軸支されて他端が框側にスライド支持された第1ヒンジと、框側に一端が軸支されて他端が枠側にスライド支持された第2ヒンジとを有し、これら第1および第2のヒンジの中間部分が回動自在に連結されている。そして、枠側の収容体には、第2のヒンジの他端をスライド支持するS字状の案内凹部が設けられ、框側の収容体には、第1のヒンジの他端をスライド支持するS字状の案内凹部が設けられている。
特開2007−56666号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載された従来のドアヒンジでは、枠側および框側の両方にそれぞれS字状の案内凹部が形成されているため、これらの案内凹部が形成される収容体のサイズが大きくなってしまい、枠の見付け寸法や框の見込み寸法(面材の厚さ寸法)が大型化するという問題がある。すなわち、案内凹部の長さ寸法やS字状の曲がり寸法などが制約を受けると、面材を180°まで開放することができなくなったり、開閉軌跡が枠体と干渉することから面材の支持位置が限定されてしまったりなど、建具の機能や設置の自由度が低下することとなる。このため、建具の機能や設置の自由度を確保するためには、収容体および収容体を取り付ける枠や框を所定のサイズ以上とする必要があり、その小型化には限界があった。
本発明の目的は、枠体や面材の小型化を図ることができ閉鎖時に隠蔽可能な丁番を備えた建具を提供することにある。
本発明の建具は、枠体と、この枠体に開閉自在に支持される面材と、この面材を枠体に支持する丁番とを備えた建具であって、前記丁番は、前記枠体および面材の一方に固定される第1支持部および他方に固定される第2支持部と、前記第1支持部に設けられる第1軸部と、前記第1軸部に一端側が軸支される第1リンクと、前記第1リンクの他端側に設けられる第2軸部と、前記第1支持部にて前記第1軸部から所定間隔離れて設けられる第3軸部と、前記第2支持部に設けられる第4軸部と、前記第2軸部に一端側が軸支されて前記第4軸部に他端側が軸支される第2リンクと、前記第2リンクの中間位置に設けられる第5軸部と、前記第3軸部に一端側が軸支されて中間位置が前記第5軸部に軸支される第3リンクと、前記第3リンクの他端側に設けられる第6軸部と、前記第2支持部に設けられて前記第6軸部をスライド自在に支持するスライド支持部とを備えて構成されていることを特徴とする。
この際、本発明の建具では、前記第1支持部は、前記枠体の見込み面に埋没して固定される枠側支持部で構成され、前記第2支持部は、前記面材の吊り元側見込み面に埋没して固定される面材側支持部で構成されていることが好ましい。
以上の本発明によれば、枠側支持部において、第1軸部に第1リンクの一端側を軸支するとともに、この第1リンクの他端側に第2軸部を介して第2リンクを軸支することで、枠側にて第2リンクをスライド自在に支持する必要がなくなり、枠側支持部の見付け方向寸法を最小化することができる。すなわち、スライド溝等によって第2リンクの一端側をスライド自在に支持する場合には、スライド溝の長さ寸法以上の見付け寸法を枠側支持部が有している必要があるのに対し、回動自在に設けた第1リンクに第2リンクを軸支させる本発明の構成によれば、第1リンクの他端側(第2軸部側)は、枠側支持部の見付け寸法内に限らずに枠側支持部からはみ出す位置まで回動させることができ、これにより枠側支持部の見付け寸法を最小化することができる。一方、通常、面材の厚さ寸法と比較して枠体の見込み寸法が十分に大きいことが一般的であるため、第1リンクを用いた支持構造によって枠側支持部の見込み寸法が多少大きくなっても、枠体の見込み寸法に影響することは少なく、枠体の小型化を阻害することはない。
また、本発明によれば、面材側支持部において、第3リンクの他端側に設けられる第6軸部をスライド支持部でスライド自在に支持することで、前記第1リンクのように回動自在な他のリンクによって第3リンクの他端側(第6軸部)を支持する必要がなくなり、面材側支持部の見込み寸法を最小化することができる。すなわち、面材側支持部に他のリンクを設けて第3リンクの他端側を支持する場合には、他のリンクの長さ寸法に応じて面材側支持部の見込み寸法を大きくする必要があるのに対し、スライド支持部を設けた本発明の構成によれば、面材の見付け方向(面内方向)に沿ったスライド支持部の長さ寸法が事実上制約を受けないことから、面材側支持部の見付け寸法が大きくなったとしても見込み寸法を最小化することができる。
以上のように、枠側支持部に第1リンクを備えるとともに面材側支持部にスライド支持部を備えた丁番を用いることで、枠体の見付け寸法および面材の見込み寸法をそれぞれ最小化することができ、効率的に枠体および面材の小型化を図ることができる。
なお、前記面材に固定される面材側支持部によって前記第1支持部が構成され、前記枠体に固定される枠側支持部によって前記第2支持部が構成されてもよく、この場合には、枠体の見込み寸法が最小化できるとともに、面材の框などの見付け寸法が最小化できる。
さらに、前記枠側支持部によって前記第1支持部が構成され、前記面材側支持部によって前記第2支持部が構成された場合において、本発明の建具では、前記スライド支持部が前記面材の見付け方向に沿って直線状に形成された案内溝で構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、面材の見付け方向に沿った直線状の案内溝でスライド支持部を構成することで、スライド支持部を長く形成しても面材側支持部の見込み寸法に影響しないことから、面材側支持部の見込み寸法を最小化しつつ、面材の開放側に大きな開閉軌跡で面材を開閉させることができ、枠体の見込み方向に対する面材のセットバック寸法を拡大することができる。すなわち、スライド支持部を長く形成することで、面材側支持部に対する第3リンクの他端側の移動量が大きくでき、従って、面材開放時に回動した第3リンクから開放側への面材移動量(セットバック寸法と同義)を拡大することができる。これにより、閉鎖時における枠体に対する面材の見込み方向位置を閉鎖側にセットバックさせたとしても、枠体と干渉することなく面材を適正に開閉させることができ、面材の支持位置の自由度を高めることができる。
さらに、本発明の建具では、前記第1軸部から前記第2軸部までの軸間距離Aと前記第2軸部から前記第5軸部までの軸間距離Bとを加えた合計距離(A+B)が、前記第1軸部から前記第3軸部までの軸間距離Cと前記第3軸部から前記第5軸部までの軸間距離Dとを加えた合計距離(C+D)よりも大きく形成され(A+B>C+D)ていることが好ましい。
このような構成によれば、軸間距離A,Bの合計距離を軸間距離C,Dの合計距離よりも大きく形成する(A+B>C+D)ことで、面材を開閉する際の各リンク同士の交差角度を所定範囲に維持しつつ、所定の回動軌跡で面材を開閉させることができる。これとは逆に、A+B<C+Dとなるように各軸間距離が設定された場合には、各リンク同士の交差角度が所定範囲を超えてしまい、リンク同士が逆折れ現象を起こして面材が開閉不能に陥ったり、あるいは所定の回動軌跡で開閉できずに面材と枠体とが衝突してしまったりなど、建具の機能を確保できなくなる可能性がある。本発明では、各軸間距離を前記所定の範囲に設定することで、建具の機能や設置の自由度を確保することができるとともに、前述のように枠体および面材の小型化を図ることができる。
また、本発明の建具では、前記第2リンクにおける前記第4軸部と第5軸部とを結ぶ直線と、前記第3リンクにおける前記第5軸部と第6軸部とを結ぶ直線とが、前記面材の閉鎖状態から全開状態に渡って互いに一直線上に重ならないように構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、第2リンクの第4軸部側と第3リンクの第6軸部側とが一直線上に重ならない、すなわち、第4軸部と第6軸部との位置関係が面材の閉鎖状態から全開状態に至るまで反転しないようにすることで、第2リンクと第3リンクの逆転現象を防止することができ、面材が開閉不能に陥ることなく良好な開閉状態を維持することができる。
本発明の実施形態に係る建具を拡大して示す横断面図である。 前記建具に設けられる丁番を示す斜視図である。 前記丁番の分解斜視図である。 前記丁番の動作を示す概略平面図である。 図4に続く前記丁番の動作を示す概略平面図である。 前記丁番の動作における軌跡を示す概略平面図である。 前記丁番の各部形状を説明する概略平面図である。 前記丁番の動作を説明する図である。 変形例に係る丁番の動作を説明する図である。 他の変形例に係る丁番の動作を説明する図である。 前記実施形態における丁番の各部形状を説明する概略平面図である。 前記丁番の動作を説明する図である。 さらに他の変形例に係る丁番の動作を説明する図である。
以下、本発明の一実施形態に係る建具としてのドア1を図面に基づいて説明する。
図1において、ドア1は、建物の開口部に設けられて一方側の第1空間と他方側の第2空間とを仕切る開き形式の出入り口であって、枠体としてのドア枠2と、このドア枠2に開閉自在に支持される面材としての扉3とを備えて構成されている。ドア枠2は、木製等の上枠(不図示)や左右の縦枠4等を有して構成され、扉3は、木製等の板状体で構成されている。そして、扉3は、吊元側の縦枠4に丁番10を介して開閉可能に支持され、図1に示す閉鎖状態から第1空間側(図1の上方)に向かって開放され、図中反時計回りに180°以上の開放角度まで開放可能に構成されている。丁番10は、扉3の閉鎖状態において、縦枠4の見込み面4Aと扉3の吊り元側見込み面3Aとの間に隠蔽され、第1空間や第2空間から見えない(あるいは見えにくい)ように構成された隠し丁番である。また、閉鎖状態において、扉3の第1空間側(開放側)の側面3Bは、縦枠4の第1空間側の見付け面4Bから第2空間側に所定寸法Sだけセットバックして設けられている。
図2、図3にも示すように、丁番10は、縦枠4の見込み面4Aに埋没して縦枠4に固定される枠側支持部(第1支持部)としての枠側ケース20と、扉3の吊り元側見込み面3Aに埋没して扉3に固定される面材側支持部(第2支持部)としての扉側ケース30と、枠側ケース20に回動自在に支持される第1リンク40と、第1リンク40と扉側ケース30とに回動自在に連結される第2リンク50と、枠側ケース20に回動自在に連結されるとともに扉側ケース30にスライド自在に支持される第3リンク60とを備えて構成されている。さらに、丁番10は、枠側ケース20に設けられて第1リンク40を軸支する第1軸部11と、第1リンク40と第2リンク50とを回動自在に連結する第2軸部12と、枠側ケース20に設けられて第3リンク60を軸支する第3軸部13と、扉側ケース30に設けられて第2リンク50を軸支する第4軸部14と、第2リンク50と第3リンク60とを回動自在に連結する第5軸部15と、扉側ケース30に設けられて第3リンク60をスライド自在に軸支する第6軸部16とを備えて構成されている。
枠側ケース20は、縦枠4に固定される金属製の枠側固定部材21と、枠側固定部材21の内側に設けられて第1軸部11および第3軸部13を支持する金属製の枠側ブラケット22と、枠側ブラケット22の内側に設けられて第1リンク40や第2リンク50と摺動する樹脂製の枠側スペーサ23とを有して構成されている。この枠側ケース20において、枠側ブラケット22は、偏心ピン24によって枠側固定部材21に対して位置調節可能に設けられるとともに、2本のビス25によって枠側固定部材21に固定される。また、枠側ブラケット22の上下のフランジには、それぞれ第1軸部11および第3軸部13を挿通させる挿通孔26,27が形成され、枠側スペーサ23には、それぞれ第1軸部11および第3軸部13を挿通させる挿通孔28,29が形成されている。そして、挿通孔26,28に第1軸部11を挿通し、挿通孔27,29に第3軸部13を挿通した状態で、枠側固定部材21に枠側ブラケット22を固定することで、第1軸部11および第3軸部13が枠側ケース20に支持されるようになっている。
扉側ケース30は、扉3に固定される金属製の扉側固定部材31と、扉側固定部材31の上下に設けられて第6軸部16を抜け出さないように支持する金属製の支持プレート32と、扉側固定部材31の上下のフランジ内側に設けられて第6軸部16をスライド支持する一対のスライドブッシュ33とを有して構成されている。扉側固定部材31の上下のフランジには、それぞれ扉3の見付け方向(図1の左右方向)に長く形成された長孔34と、第4軸部14を挿通させる挿通孔35とが形成されている。また、扉側固定部材31における第1空間側の側面先端部には、第4軸部14を挿通させて支持する軸支部36が形成されている。また、スライドブッシュ33には、長孔34に挿入されるとともに第6軸部16の端部をスライド支持するスライド支持部としての案内溝37と、第4軸部14を挿通させる挿通孔38とが形成されている。そして、挿通孔35,38および軸支部36に挿通した第4軸部14の先端にE形止め輪39を係合させることで、第4軸部14が扉側ケース30に支持され、案内溝37に第6軸部16を挿通した状態で、扉側固定部材31に支持プレート32を固定することで、第6軸部16が扉側ケース30に支持されるようになっている。
第1リンク40は、金属板材を曲げ加工して形成されたもので、その一端側には、第1軸部11を挿通させる第1軸支部41が形成され、他端側には、第2軸部12を挿通させる第2軸支部42が形成されている。そして、第1軸支部41を枠側スペーサ23の上下の挿通孔28間に位置させた状態で、挿通孔26,28および第1軸支部41に第1軸部11を挿通させることで、第1リンク40が枠側ケース20に回動自在に支持されるようになっている。
第2リンク50は、金属製の第2リンク本体51と、第2リンク本体51の内側に設けられて第1リンク40や扉側ケース30と摺動する樹脂製の第2リンクスペーサ52とを有して構成されている。第2リンク本体51および第2リンクスペーサ52には、その一端側にて第2軸部12を挿通させる挿通孔53,54と、他端側にて第4軸部14を挿通させる挿通孔55,56と、中間位置にて第5軸部15を挿通させる挿通孔57,58とが形成されている。このような第2リンク50は、挿通孔53,54を第2軸支部42と同軸に位置させて第2軸部12を挿通させるとともに、挿通孔55,56を軸支部36および挿通孔35と同軸に位置させて第4軸部14を挿通させることで、第1リンク40と扉側ケース30とにそれぞれ回動自在に連結されるようになっている。
第3リンク60は、金属製の第3リンク本体61と、第3リンク本体61の内側に設けられて第2リンク50と摺動する樹脂製の第3リンクスペーサ62と、第3軸部13を挿通させる筒状ブッシュ63とを有して構成されている。第3リンク本体61および第3リンクスペーサ62には、その一端側にて第3軸部13を挿通させる挿通孔64,65と、他端側にて第6軸部16を挿通させる挿通孔66と、中間位置にて第5軸部15を挿通させる挿通孔67,68とが形成されている。このような第3リンク60は、挿通孔64,65および筒状ブッシュ63を挿通孔27,29と同軸に位置させて第3軸部13を挿通させることで、枠側ケース20と回動自在に連結されるとともに、挿通孔66を案内溝37の幅内に位置させて第6軸部16を挿通させることで、扉側ケース30と回動自在かつスライド自在に連結されるようになっている。さらに、第2リンク50および第3リンク60は、挿通孔57,58と挿通孔67,68とを同軸に位置させて第5軸部15を挿通させることで、互いに回動自在に連結されるようになっている。
以上のような丁番10の動作について、図4〜図6も参照して説明する。
ここで、図4(A)は、扉3の閉鎖状態における丁番10を示し、図4(B)は、閉鎖状態から扉3を45°まで開放した状態を示し、図4(C)、図5(C)は、閉鎖状態から扉3を90°まで開放した状態を示し、図5(D)は、閉鎖状態から扉3を135°まで開放した状態を示し、図5(E)は、閉鎖状態から扉3を180°まで開放した状態を示している。また、図6は、閉鎖状態から扉3を180°まで開放する際の第2軸部12の軌跡K1、第5軸部15の軌跡K2、第4軸部14の軌跡K3、および第6軸部16の軌跡K4を示している。
図4〜図6に示すように、第1リンク40は、その一端側である不動の第1軸部11を中心に回動し、他端側である第2軸部12が軌跡K1のように円弧を描いて縦枠4の見込み方向一方側(第1空間側)かつ見付け方向内側に移動する。また、第3リンク60は、その一端側である不動の第3軸部13を中心に回動し、中間位置である第5軸部15が軌跡K2のように円弧を描いて移動し、他端側である第6軸部16も軌跡K4のように円弧を描いて縦枠4の見込み方向一方側(第1空間側)かつ見付け方向外側に移動する。この際、第6軸部16は、案内溝37に沿って扉3の見付け方向内側から外側へ向かってスライド移動する。このように回動する第1リンク40および第3リンク60に連結された第2リンク50は、その一端側が第2軸部12の軌跡K1上を移動するとともに、中間位置が第5軸部15の軌跡K2上を移動することから、これらの移動に連動して決定される軌跡K3上を他端側である第4軸部14が移動することとなる。このように軌跡K3上を移動する第4軸部14と案内溝37に沿って移動する第6軸部16との距離によって、扉3の開放角度が規定され、扉3の閉鎖状態(開放角度が0°)では第4軸部14と第6軸部16とが最も離隔し、扉3の全開状態(開放角度が180°)では第4軸部14と第6軸部16とが最も接近するようになっている。
次に、図7〜図10に基づいて、本実施形態の丁番10と比較例の丁番100,200とで各リンクの長さ(軸間距離)を変化させ、それぞれの丁番の動作を比較した結果を説明する。
ここで、図7は、丁番10における第1〜第3の各リンク30,40,50をそれぞれ直線または折れ線に簡略化したもので、第1リンク40を一点鎖線の直線である第1リンク40Aで表し、第2リンク50を実線の折れ線である第2リンク50Aで表し、第3リンク60を破線の折れ線である第3リンク60Aで表している。図8は、本実施形態の丁番10における各リンク40A,50A,60Aの移動状況を示す図であり、図9は、比較例としての丁番100における各リンク40A,50A,60Aの移動状況を示す図である。図10は、他の比較例としての丁番200における各リンク40A,50A,60Aの移動状況を示す図である。
また、軸間距離としては、図7に示すように、第1リンク40Aの長さである第1軸部11から第2軸部12までの距離を軸間距離A、第2軸部12から第5軸部15までの距離を軸間距離B、第3軸部13から第5軸部15までの距離を軸間距離C、第1軸部11から第3軸部13までの距離を軸間距離Dで表している。さらに、第2リンク50Aのうち第5軸部15と第4軸部14とを結ぶ辺を辺E、第3リンク60Aのうち第5軸部15と第6軸部16とを結ぶ辺を辺Fで表している。
図8に示す本実施形態の丁番10では、各軸間距離A〜Dの関係が次式(1)の範囲に設定されている。すなわち、軸間距離Aと軸間距離Bとを加えた合計距離(A+B)が、軸間距離Cと軸間距離Dとを加えた合計距離(C+D)よりも大きく形成され、第2リンク50Aの辺Eよりも第3リンク60Aの辺Fの方が大きく形成されている。
A+B>C+D …(1)
このような丁番10によれば、扉3の閉鎖状態(図8(A) に示す開放角度が0°の状態)から全開状態(図8(G)に示す開放角度が180°の状態)に至るまで、第2軸部12を挟んだ第1リンク40Aと第2リンク50Aとが成す角度が180°以下であり、第1軸部11と第5軸部15とを結ぶ直線に第2軸部12が重ならずかつ超えない、すなわち各軸部11,12,15,13同士の逆転現象が発生しないようになっている。さらに、丁番10によれば、第2リンク50Aの辺Eと第3リンク60Aの辺Fとの関係が、扉3の閉鎖状態から全開状態まで逆転することがなく、全開状態において、第6軸部16が第4軸部14よりも見付け方向外側かつ見込み方向一方側(第1空間側)まで移動するものの、辺Fが辺Eを追い越すことがなく、第4軸部14と第6軸部16との逆転現象も発生しないようになっている。
図9に示す比較例の丁番100では、各軸間距離A〜Dの関係が次式(2)の範囲に設定されている。すなわち、軸間距離Aと軸間距離Bとを加えた合計距離(A+B)が、軸間距離Cと軸間距離Dとを加えた合計距離(C+D)よりも小さく形成されている。
A+B<C+D …(2)
このような丁番100では、図9(E)に示すように、第1軸部11と第2軸部12と第5軸部15とが一直線状に位置する状態となり、図9(E)に示すように、第2軸部12が第1軸部11と第5軸部15とを結ぶ直線よりも見込み方向一方側(第1空間側)へ移動する逆転現象が発生し、すなわち第1リンク40Aと第2リンク50Aとが逆折れ状態となり扉3が開閉操作不能に陥ってしまう。さらに、丁番100では、図9(C)に示すように、開放角度が90°を超えた状態で、第2リンク50Aの辺Eを第3リンク60Aの辺Fを追い越してしまい、この状態でさらに扉3を開放すると、開放角度は大きくなるものの扉3の吊り元側が見付け方向内側に移動するような腰折れ現象が発生し、扉3が縦枠4に衝突する不具合も生じることになってしまう。
図10に示す比較例の丁番200は、第2リンク50Aの辺Eと第3リンク60Aの辺Fとを略同一の長さ寸法に設定した上で、本実施形態の丁番10と同じ扉3の開放軌跡を付与したものである。
このような丁番200では、図10(D)に示すように、全開状態において第2リンク50Aの辺Eと第3リンク60Aの辺Fとが重なり第4軸部14と第6軸部16とが重なってしまうことから、各軸部14,16の支持構造が複雑になる上、前述の丁番100と同様に、開放した扉3が不安定になって縦枠4に衝突したり、開閉操作不能に陥ってしまったりなどの不具合が生じることになってしまう。
次に、図11〜図13に基づいて、本実施形態の丁番10と比較例の丁番300とで各リンクの関係(交差角度)を変化させ、それぞれの丁番の動作を比較した結果を説明する。
ここで、図11は、前記図7と同様に、第1リンク40を一点鎖線の直線である第1リンク40Aで表し、第2リンク50を実線の折れ線である第2リンク50Aで表し、第3リンク60を破線の折れ線である第3リンク60Aで表している。また、図11における各軸間距離A〜Dと第2リンク50Aの辺Eおよび第3リンク60Aの辺Fとは、図7と同様であり、第2リンク50Aのうち第2軸部12と第5軸部15とを結ぶ辺を辺G、第3リンク60Aのうち第3軸部13と第5軸部15とを結ぶ辺を辺Hで表すとともに、辺Gと辺Hとの交差角度を角度θで表している。図12は、本実施形態の丁番10における各リンク40A,50A,60Aの移動状況を示す図であり、図13は、比較例としての丁番300における各リンク40A,50A,60Aの移動状況を示す図であって、図12、図13には、特に、第4軸部14および第6軸部16の移動軌跡が示されている。
図11〜図13において、本実施形態の丁番10は、角度θが以下の式(3)を満足するように各部寸法が設定され、比較例の丁番300は、式(3)を満足しない、つまり角度θが式(3)の右辺よりも大きくなるように設定されている。
θ≦cos-1{[C2+B2−(A−D)2]/(2BC)} …(3)
図12に示すように本実施形態の丁番10によれば、扉3の閉鎖状態から全開状態(開放角度が180°)に至るまで、第2リンク50Aの辺Eと第3リンク60Aの辺Fとが一直線上に重ならない、つまり第4軸部14が辺Fを超えないようになっている。すなわち、第4軸部14と第6軸部16との距離が、閉鎖状態から全開状態に向かって徐々に小さくなるように動作することで、前述したように逆転現象が発生しないようになっている。ここで、前記角度θを式(3)の右辺と同一に設定した場合には、全開状態を超えた状態において辺E,Fが略一直線上に重なることとなり、従って、角度θが式(3)の右辺と同一の場合が全開状態(180°)まで逆転現象が発生しないための境界値となり、式(3)の右辺よりも角度θが小さければ逆転現象の発生を確実に防止できるようになっている。
一方、図13に示すように、丁番300では、扉3の閉鎖状態と全開状態との間の状態である開閉途中位置(開放角度が90°よりも若干小さい位置)において、辺Eと辺Fとが重なり、つまり第4軸部14と第5軸部15と第6軸部16とが一直線上に位置し、この状態で、第4軸部14と第6軸部16との距離が極小値となる。そして、第4〜第6の軸部14〜16が一直線上に重なった位置よりも全開状態側に扉3を開放すると、第3リンク60Aの辺Fが第2リンク50Aの辺Eを追い越すとともに、第4軸部14と第6軸部16との距離が増加することとなる。このような逆転現象が発生すると、扉3の上部と下部とにそれぞれ設けた丁番300において、各々が支持する扉3の自重によって第4軸部14と第6軸部16とに異なる方向の水平力が作用することで、扉3が面外方向に捻れるように移動してしまう。このため、全開状態から扉3を閉鎖しようとしても各リンク40,50,60が互いに引っ掛かったり、いずれかのリンク40,50,60が突っ張ったりして、扉3が閉鎖できなくなるという不具合が生じることとなる。
これに対して、各リンク40,50,60の逆転現象が発生しないように設定された本実施形態の丁番10によれば、扉3の開閉動作を確実に実施できるようになっている。
以上のような本実施形態によれば、丁番10において、枠側ケース20に第1リンク40が回動自在に支持され、この第1リンク40の他端側に第2リンク50が軸支されることで、枠側ケース20の見付け寸法を最小化することができるとともに、扉側ケース30の案内溝37に第3リンク60の他端側がスライド自在に支持されることで、扉側ケース30の見込み寸法を最小化することができる。従って、縦枠4の見付け寸法および扉3の見込み寸法をそれぞれ最小化することができ、効率的にドア枠2および扉3の小型化を図ることができる。さらに、丁番10における各軸間距離A〜Dや各リンク50,60の辺E,Fの長さ寸法を所定の関係に設定したり、各リンク50,60の辺G,Hの交差角度θを所定範囲に設定したりすることで、各軸部11〜16の逆転現象を防止して扉3とドア枠2との衝突を防止することができ、扉3の開閉操作を円滑に実施することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態において、ドア枠2や扉3が木製の内装用建具を例示したが、これに限らず、本発明の建具は、枠体や面材が金属製の枠材や框材を有した開き窓や玄関ドア等の建具であってもよい。その場合には、前記第1空間が屋外空間で前記第2空間が屋内空間である外開き形式の建具であってもよいし、逆に前記第1空間が屋内空間で前記第2空間が屋外空間である内開き形式の建具であってもよい。
また、前記実施形態の丁番10では、扉側ケース30において、第6軸部16の端部をスライド支持するスライド支持部としての案内溝37を採用したが、スライド支持部としては、案内溝37に限らず、レールなどの適宜な構造が採用可能である。また、スライド支持部は、第6軸部を面材の見付け方向に沿って案内するものに限らず、面材の見付け方向と若干の傾斜を有して案内するものでもよいし、緩やかな曲線に沿って案内するものでもよい。
また、前記実施形態では、枠側支持部としての枠側ケース20を第1支持部とし、面材側支持部としての扉側ケース30を第2支持部としたが、これに限らず、第1軸部11や第3軸部13が設けられる第1支持部を面材側に固定し、第4軸部14や第6軸部16が設けられる第2支持部を枠側に固定してもよい。
さらに、前記実施形態では、枠側ケース20が縦枠4の見込み面4Aに埋没して固定され、扉側ケース30が扉3の吊り元側見込み面3Aに埋没して固定される隠し丁番としての丁番10について説明したが、本発明の建具に用いられる丁番は隠し丁番に限らず、枠体や面材における露出面に第1支持部や第2支持部が固定されたものであってもよい。
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
1…ドア(建具)、2…ドア枠(枠体)、3…扉(面材)、10…丁番、11…第1軸部、12…第2軸部、13…第3軸部、14…第4軸部、15…第5軸部、16…第6軸部、20…枠側ケース(枠側支持部、第1支持部)、30…扉側ケース(面材側支持部、第2支持部)、37…案内溝(スライド支持部)、40…第1リンク、50…第2リンク、60…第3リンク。

Claims (5)

  1. 枠体と、この枠体に開閉自在に支持される面材と、この面材を枠体に支持する丁番とを備えた建具であって、
    前記丁番は、
    前記枠体および面材の一方に固定される第1支持部および他方に固定される第2支持部と、
    前記第1支持部に設けられる第1軸部と、
    前記第1軸部に一端側が軸支される第1リンクと、
    前記第1リンクの他端側に設けられる第2軸部と、
    前記第1支持部にて前記第1軸部から所定間隔離れて設けられる第3軸部と、
    前記第2支持部に設けられる第4軸部と、
    前記第2軸部に一端側が軸支されて前記第4軸部に他端側が軸支される第2リンクと、
    前記第2リンクの中間位置に設けられる第5軸部と、
    前記第3軸部に一端側が軸支されて中間位置が前記第5軸部に軸支される第3リンクと、
    前記第3リンクの他端側に設けられる第6軸部と、
    前記第2支持部に設けられて前記第6軸部をスライド自在に支持するスライド支持部とを備えて構成されている建具。
  2. 前記第1支持部は、前記枠体の見込み面に埋没して固定される枠側支持部で構成され、
    前記第2支持部は、前記面材の吊り元側見込み面に埋没して固定される面材側支持部で構成されている請求項1に記載の建具。
  3. 前記スライド支持部が前記面材の見付け方向に沿って直線状に形成された案内溝で構成されている請求項2に記載の建具。
  4. 前記第1軸部から前記第2軸部までの軸間距離Aと前記第2軸部から前記第5軸部までの軸間距離Bとを加えた合計距離(A+B)が、前記第1軸部から前記第3軸部までの軸間距離Cと前記第3軸部から前記第5軸部までの軸間距離Dとを加えた合計距離(C+D)よりも大きく形成され(A+B>C+D)ている請求項1から請求項3のいずれかに記載の建具。
  5. 前記第2リンクにおける前記第4軸部と第5軸部とを結ぶ直線と、前記第3リンクにおける前記第5軸部と第6軸部とを結ぶ直線とが、前記面材の閉鎖状態から全開状態に渡って互いに一直線上に重ならないように構成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の建具。
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