JP2012025924A - 液状エポキシ樹脂組成物及び該液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物で封止された半導体装置 - Google Patents

液状エポキシ樹脂組成物及び該液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物で封止された半導体装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、大型半導体チップ(大型ダイ)でも下部の狭い空間にスムーズに流入することができる組成物であって、該組成物の硬化物は高い耐熱性及び高い強靭性をもち半田リフロー時にクラックが発生しにくい硬化物となる液状エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 液状エポキシ樹脂組成物であって、少なくとも、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、(B)硬化剤、(C)無機充填剤、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂、及び(E)フッ素系樹脂を含むものであることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、半導体素子封止用液状エポキシ樹脂組成物に関し、詳細には、エポキシ樹脂とシリコーン骨格を含み、成型性に優れ、アンダーフィル剤として用いてもボイドが発生しにくく、該液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は耐熱衝撃性が高く、半導体素子の表面との密着性、耐湿性に優れた硬化物となる液状エポキシ樹脂組成物に関する。
電気機器の小型化、薄型、軽量化、高機能化に伴い、半導体チップ実装方法もピン挿入型パッケージ及び表面実装型パッケージを用いるピン挿入タイプから、パッケージングされた半導体チップを使用せず、ベア(裸)の半導体チップを実装基板に実装する表面実装(ベアチップ実装)が主流となってきている。ベアチップ実装により電子部品を小型、薄型、軽量化が可能となり、さらに、パッケージ品と比べて高密度実装が可能となり、半導体チップと回路基板の接触距離が短くできるためより高速なシステムへ対応できる電子部品を製造することが可能となる。このようなベアチップ実装の接続技術は大別してワイヤボンディング方式、フリップチップ方式がある。ワイヤボンディング方式はベアチップと実装基板をボンディングワイヤーで接続して実装する方式であり、フリップチップ方式は半導体チップの電極パッド上に突起状電極(バンプ)が形成され、相対する実装基板上の電極パッドに対してベアチップ(半導体チップ)を位置合わせして実装する方式である。
ワイヤボンディング方式と比較するとフリップチップ方式は、さらなる小面積化と電気特性向上が可能である。一方で、フリップチップ方式では、半導体チップを実装基板へ半田接続させる時、半導体チップと実装基板の熱膨張係数差に由来する応力が接続部を破壊し、半導体装置の生産性が低下するという問題が伴う。そこで、この接続部の破壊を防ぐために、半導体チップと実装基板間の空隙に封止剤(アンダーフィル剤)を流入し、補強することが行われる。しかしながら、近年の半導体素子の高集積化に伴う半導体チップサイズ(ダイサイズ)の大型化により、封止剤が不均一に流入し半導体チップ(ダイ)と基板の間にボイドが発生するという問題、半田リフロー時に半導体チップと封止剤にかかる応力が増大し封止剤と半導体チップ(ダイ)及び実装基板の界面(接続部)での剥離が生じるという問題、及び半導体チップ実装時に封止剤にクラックが入るという問題が顕著になり著しく生産性を低下させることになっていた。そのため、従来の封止剤よりも半導体チップ(ダイ)下部の狭い空間にスムーズに流入しボイドを発生させない性質を有する封止剤の開発が強く望まれている。
更に、溶融温度が鉛含有の半田より高い鉛代替半田が普及していることに伴い、従来の耐熱性に乏しい封止剤では、不良が発生し大きな問題となっている。このようにリフローの温度が260〜270℃まで高くなると、従来問題のなかったパッケージもリフロー時にクラックが発生したり、半導体チップ界面、実装基板界面との剥離が発生したり、その後の冷熱サイクルが数百回以上経過すると樹脂又は実装基板、半導体チップ、バンプ部にクラックが発生するという問題が起こるようになった。そのため、従来の封止剤よりも硬化させた後は強靭性、耐熱衝撃性を有する封止剤の開発が強く望まれている。
上記問題を解決するものとして、ボイド改善を目的として、消泡効果のあるジメチルシリコーンの添加することが知られている(特許文献1)。しかしながら、シリコーンの消泡効果はシリコーンが低い表面張力を有することに関係するため、ジメチルシリコーンを単純に添加してしまうとエポキシ樹脂系には混ざらずハジキを起こすことが問題となる。また、ハジキが起こさずシリコーンとエポキシ樹脂を相溶させるにはシリコーンをポリエーテルやポリエステルで変性させることが知られている(特許文献2)。しかしながら、該変性シリコーンは260〜270℃では容易に分解反応を起こしてしまうため、強靭性、耐熱衝撃性を有する封止剤には至っていない。さらに、耐熱衝撃性などの信頼性を改善するためにシリコーン変性エポキシ樹脂を添加した樹脂組成物が知られている(特許文献3)。しかしながら、該組成物の場合、半導体チップ(ダイ)下部の狭い空間にスムーズに流入する性質を犠牲としており結局ボイドが発生しやすい問題があった。従って、上記問題の根本的解決はなされていなかった。
特開平10−101761号公報 特開2010−116515号公報 特開平5−291436号公報
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、液状エポキシ樹脂組成物が大型半導体チップ(大型ダイ)でも下部の狭い空間にスムーズに流入することができる上、該液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は高い耐熱衝撃性及び高い強靭性をもち半田リフロー時においてもクラックが発生しにくい硬化物となる液状エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明では、
液状エポキシ樹脂組成物であって、少なくとも、
(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、
(B)硬化剤、
(C)無機充填剤、
(D)下記平均組成式(1)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂、及び
Figure 2012025924
(上記式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、Qは炭素原子数3〜6のアルキレン基、オキシアルキレン基、及びヒドロキシオキシアルキレン基のいずれかであり、rは4〜199の整数、pは1〜10の整数、qは1〜10の整数である。)
(E)下記一般式(2)で示されるフッ素系樹脂
Figure 2012025924
を含むものであることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物を提供する。
このように、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、(B)硬化剤、(C)無機充填剤、上記平均組成式(1)で示される(D)シリコーン変性エポキシ樹脂、及び上記一般式(2)で示される(E)フッ素系樹脂を含む液状エポキシ樹脂組成物とすることで、大型半導体チップ(大型ダイ)でも下部の狭い空間にスムーズに流入することができる組成物となり、該液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は高い耐熱衝撃性及び高い強靭性をもち半田リフロー時においてもクラックが発生しにくい硬化物となる。
また、前記(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物として、一種又は二種以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び下記エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物のいずれかを含むことが好ましい。
Figure 2012025924
(式中、Rは炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、nは1〜4の整数である。)
このように、一種又は二種以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び上記エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物のいずれかを含む(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物を含むことで、前記液状エポキシ樹脂組成物はより成型性が良好で、半導体チップと実装基板の間の空隙に流入しやすい液状エポキシ樹脂組成物となり、該液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は高い耐熱衝撃性及び高い強靭性をもつ硬化物となる。
さらに、前記(D)シリコーン変性エポキシ樹脂として、上記平均組成式(1)において、Rが水素原子、Rがメチル基、rが70〜109の整数、p及びqが2〜5の整数、Qが{−OCH−CH(OH)−CH−O−CHCHCH−}で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
このように、上記平均組成式(1)において、Rが水素原子、Rがメチル基、rが70〜109の整数、p及びqが2〜5の整数、Qが{−OCH−CH(OH)−CH−O−CHCHCH−}で示される(D)シリコーン変性エポキシ樹脂は、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物や(E)フッ素系樹脂との相溶性がよく、また、より消泡効果のあるジメチルシリコーン骨格を有することになるため、液状エポキシ樹脂組成物を半導体チップ(ダイ)下部に流入したときにおけるボイドの発生をよりよく抑制することができる。
また、前記(B)硬化剤として、芳香族アミン系硬化剤であって、一種又は二種以上の下記一般式(3)、(4)、(5)及び(6)のいずれかで示される硬化剤を含むことが好ましい。
Figure 2012025924
(式中、R〜Rは、同一又は異なる炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、CHS−基、及びCS−基のいずれかである。)
このように、(B)硬化剤として、芳香族アミン系硬化物であって、一種又は二種以上の一般式(3)、(4)、(5)及び(6)のいずれかで示される硬化剤を用いることで、目的に適した硬化条件を満たすことができ、硬化を良好に進行させることができ、また、適切な硬化条件により硬化させた該液状エポキシ樹脂組成物の硬化物はより優れた耐熱衝撃性と、強靭性を有するものとなる。
さらに、前記液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物で封止された半導体装置を提供することができる。
このように、前記液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物で封止された半導体装置は耐熱衝撃性及び強靭性を有する硬化物で実装基盤と半導体チップを接着したものとなり半田リフロー時においてもクラック等が発生しにくく、また基盤と半導体チップ(ダイ)の間にはボイドが発生しにくい半導体装置となる。
以上説明したように、本発明の半導体装置用液状エポキシ樹脂組成物は、大型半導体チップ(大型ダイ)下部の狭い空間にも均一かつスムーズに流入することができ、ボイドが発生しにくい液状エポキシ樹脂組成物であって、該液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は強靭性が高く、半導体素子、基盤との密着性に優れ、耐熱衝撃性に優れ、半田リフロー時においてもクラック等が発生しにくい硬化物を与えることができる液状エポキシ樹脂組成物を提供することができる。この液状エポキシ樹脂組成物をアンダーフィル剤として使用したフリップチップ方式の半導体装置は半導体チップ(ダイ)と実装基板の間のボイドの発生を抑制でき、硬化物は強靭性及び耐熱衝撃性に優れるため半田リフロー時においてもクラック等が発生しにくい信頼性の高い半導体装置となる。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前述のように、強靭性、耐熱衝撃性を有する上、半導体チップ(ダイ)下部の狭い空間にスムーズに流入することができ、ボイドが発生しにくい性質を有する封止剤の開発が強く望まれている。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、半導体チップ(ダイ)下部の狭い空間に均一かつスムーズに流入する液状エポキシ樹脂組成物には低表面張力性を有する化合物が相溶性よく混在することが重要となることを知見し、少なくとも、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、(B)硬化剤、(C)無機質充填剤、(D)エポキシ樹脂骨格とシリコーン骨格からなるシリコーン変性エポキシ樹脂(下記平均組成式(1))、及び(E)シリコーン骨格とフッ素樹脂骨格を有するフッ素系樹脂(下記一般式(2))を含む液状エポキシ樹脂組成物であれば、それぞれの化合物の相溶性がよく、低表面張力性を有するため大型半導体チップ(大型ダイ)と実装基板との間に均一かつスムーズに流入することを見出し、流入時にボイドの発生が抑制されることを見出し、さらに、該シリコーン変性エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は高い耐熱衝撃性だけでなく、著しく強靭性値の高い硬化物となることを見出し、本発明を完成させた。以下、詳細に説明していく。
上記課題を解決するため、本発明では、
液状エポキシ樹脂組成物であって、少なくとも、
(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、
(B)硬化剤、
(C)無機充填剤、
(D)下記平均組成式(1)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂、及び
Figure 2012025924
(上記式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、Qは炭素原子数3〜6のアルキレン基、オキシアルキレン基、及びヒドロキシオキシアルキレン基のいずれかであり、rは4〜199の整数、pは1〜10の整数、qは1〜10の整数である。)
(E)下記一般式(2)で示されるフッ素系樹脂
Figure 2012025924
を含むものであることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物を提供する。
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、(B)硬化剤、(C)無機質充填剤、(D)上記平均組成式(1)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂、及び(E)上記一般式(2)で示されるフッ素系樹脂を必須成分として含有している。
(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物
(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物としては、1分子中にエポキシ基が少なくとも2以上含まれていれば特に制限されないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の樹脂(高分子化合物)、下記エポキシ化合物等の低分子化合物及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び下記エポキシ化合物が好ましい。(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物は一種単独で用いても、二種以上を併せて用いてもよい。
Figure 2012025924
上記エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物において、Rは炭素原子数1〜20であり、好ましくは炭素原子数1〜10、更に好ましくは炭素原子数1〜3の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等が挙げられる。また、nは1〜4の整数、特に好ましくは1又は2である。
(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物の含有量は、液状エポキシ樹脂組成物の全エポキシ化合物((D)成分は除く)中25質量%以上〜100質量%、より好ましくは50質量%〜100質量%、更に好ましくは75質量%〜100質量%である。25質量%以上であれば組成物の粘度上昇を抑制できる、硬化物の耐熱性低下も抑制できるため好ましい。このような(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物の例としては、日本化薬社製MRGE等が挙げられる。
(B)硬化剤
(B)硬化剤としては、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物及び(D)シリコーン変性エポキシ樹脂を硬化させるもの又は硬化を促進するものであれば特に制限されず、例えば、アミン系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、アミジン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、及び有機リン系硬化剤等が挙げられ、好ましくは、アミン系硬化剤である。アミン系硬化剤としては下記一般式(3)〜(6)で示される芳香族アミン系硬化剤が好ましい。(B)硬化剤は一種単独で用いても、二種以上を併せて用いてもよい。
Figure 2012025924
(式中、R〜Rは、同一又は異なる炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、CHS−基及びCS−基のいずれかである。)
上記R〜Rは、同一又は異なる炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、CHS−基及びCS−基のいずれかであり、特に炭素原子数1〜3のものが好ましい。一価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基や、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したフロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基を挙げることができる。特に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、プロペニル基が好ましい。
また、上記一般式(3)〜(6)で示される芳香族アミン系硬化剤は、通常、常温で固体であり、そのまま添加すると樹脂粘度が上昇し、作業性が著しく悪くなるため、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物及び(D)シリコーン変性エポキシ樹脂と反応しない温度で、溶融混合することが好ましい。特に、70〜150℃の温度範囲で1〜2時間(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物及び(D)シリコーン変性エポキシ樹脂と溶融混合することが望ましい。混合温度が70℃以上であれば芳香族アミン系硬化剤が十分相溶しやすくなり、150℃以下であれば(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物及び(D)シリコーン変性エポキシ樹脂と反応することを抑制でき粘度上昇を防ぐことができる。また、混合時間が1時間以上であれば芳香族アミン系硬化剤が十分相溶し、粘度上昇も抑制でき、2時間以下であればエポキシ樹脂と反応することも抑制でき、粘度上昇を防ぐことができる。
他のアミン系硬化剤としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルトリメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン等の窒素原子に結合する置換基としてアルキル基やアラルキル基を有するアミン化合物が挙げられ、アミジン系硬化剤としては、例えば1,8−ジアザヒシクロ[5.4.0]ウンデセン−7及びそのフェノール塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩などのシクロアミジン化合物やその有機酸との塩、シクロアミジン化合物と4級ホウ素化合物との塩又は錯塩等が挙げられる。
なお、本発明の(B)硬化剤として用いられるアミン系硬化剤の添加量は、[(B)硬化剤として用いられるアミン系硬化剤のアミノ基のモル量/{(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物中のエポキシ基もしくはオキセタン基のモル量+(D)シリコーン変性エポキシ樹脂中のエポキシ基のモル量}]を、0.7〜1.2とすることができ、好ましくは0.7〜1.1、更に好ましくは0.80〜1.05とすることができる。添加モル比が0.7以上であれば未反応のアミノ基が残存することを抑制でき、ガラス転移温度の低下を防ぎ、あるいは密着性の低下を防ぐことができるため好ましい。一方、添加モル比が1.2以下であれば硬化物が硬く脆くなることを抑制でき、リフロー時又は温度サイクル時にクラックが発生することを抑制することができるため好ましい。
イミダゾール系硬化剤としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
有機リン系硬化剤としては、例えばトリフェニルホスフィン等のトリオルガノホスフィン化合物やテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の4級ホスホニウム塩などが挙げられる。
本発明の(B)硬化剤として用いられるイミダゾール系硬化剤及び有機リン系硬化剤等の添加量は、[(B)硬化剤のモル量/{(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物中のエポキシ基もしくはオキセタン基のモル量+(D)シリコーン変性エポキシ樹脂中のエポキシ基のモル量}]を、0.7〜1.2とすることができ、好ましくは0.7〜1.1、更に好ましくは0.80〜1.05とすることができる。添加モル比が0.7以上であれば未反応のアミノ基が残存することを抑制できる、ガラス転移温度の低下を防ぎ、あるいは密着性の低下を防ぐことができるため好ましい。一方、添加モル比が1.2以下であれば硬化物が硬く脆くなることを抑制でき、リフロー時又は温度サイクル時にクラックが発生することを抑制することができるため好ましい。
また、酸無水物系硬化剤としては、例えばメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3、4―ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−1,2,3,6−テトラハイドロフタル酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物が挙げられる。
本発明の(B)硬化剤として用いられる酸無水物硬化剤の添加量は、[(B)硬化剤中の酸無水物基(即ち、−CO−O−CO−基)のモル量/{(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物中のエポキシ基もしくはオキセタン基のモル量+(D)シリコーン変性エポキシ樹脂中のエポキシ基のモル量}]を、0.3〜0.7モルの範囲とすることが好ましく、更に好ましくは0.4〜0.6モルの範囲である。0.3モル以上であれば硬化性が十分となり、0.7モル以下であれば未反応の酸無水物が残存することもなく好ましく、ガラス転移温度の低下を防ぐことができるため好ましい。
(C)無機充填剤
無機充填剤(C)としては、公知各種の無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、チッカアルミ、チッカ珪素、マグネシア、マグネシウムシリケート、アルミニウムなどが挙げられる。中でも真球状の溶融シリカが、組成物の低粘度化の点から好ましく、更には、ゾルゲル法又は爆燃法で製造された球状シリカが好ましい。(C)無機充填剤は一種単独で用いても、二種以上を併せて用いてもよい。
無機充填剤は、樹脂との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを添加することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。ここで表面処理に用いるカップリング剤の添加量及び表面処理方法については、特に制限されるものではない。
無機充填剤の粒径は、半導体装置のギャップサイズ、即ち実装基板と半導体チップ(ダイ)との隙間の幅に依存して、適宜調整することが好ましい。ギャップサイズは、典型的には、10〜200μm程度であるが、この場合、アンダーフィル剤の粘度及び硬化物の線膨張係数の点から、平均粒径が0.1〜5μm、好ましくは0.5〜2μmである。平均粒径が0.1μm以上であれば、組成物の粘度上昇を抑制でき、ギャップ内へ侵入が容易になり好ましく、5μm以下であれば、充填剤が侵入を阻害することなく、未充填部分の発生を抑制できるため好ましい。
さらに、無機充填剤の粒度分布は、該ギャップサイズの1/2以上の粒径のものが、無機充填剤全体の0.1質量%以下、特に0.08質量%以下を占める粒度分布であることが好ましい。さらに、好ましくは、前記粒度分布に加え、さらにギャップサイズに対して平均粒径(d50:メジアン径)が約1/10以下、ギャップサイズに対して最大粒径(d98:98%累積径)が1/2以下となる粒度分布を持つ無機充填剤を用いることが好ましい。なお、無機充填剤の粒径及び粒度分布は、レーザー光回折法による粒度分布測定により得ることができる。また、ギャップサイズに対して1/2以上の粒径のものの測定方法としては、例えば、無機充填剤と純水を1:9(質量)の割合で混合し、超音波処理を行って凝集物を十分崩し、これをギャップサイズの1/2の目開きのフィルターで篩い、篩上の残量を秤量する粒径検査方法を用いることができる。
上記無機充填剤の粒径及び無機充填剤の粒度分布をコントロールするためには、ゾルゲル法又は爆燃法による球状シリカの製造が好ましい。ゾルゲル法又は爆燃法により製造された球状シリカは、溶融シリカに比べて真球状であり、粒度分布も容易に設計できるメリットがある。なお、ゾルゲル法及び爆燃法は、従来公知の方法であってよい。
無機充填剤全体の80質量%以上、特に90〜100質量%、とりわけ95〜100質量%が、ゾルゲル法又は爆燃法で製造された球状シリカであることが好ましい。ゾルゲル法又は爆燃法で製造された球状シリカが80質量%以上であれば、液状エポキシ樹脂組成物の流動性が良いため好ましい。
無機充填剤(C)の添加量としては、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物100質量部に対して50〜500質量部とすることが好ましく、より好ましくは100〜400質量部の範囲である。50質量部以上であば、硬化物の熱膨張係数が大きくならず好ましい。500質量部以下であれば、組成物の粘度が高くなり過ぎず、ギャップへの侵入性を損ねないため好ましい。
(D)シリコーン変性エポキシ樹脂
本発明の液状エポキシ樹脂組成物に含まれる(D)シリコーン変性エポキシ樹脂(下記平均組成式(1))は、扱いやすく良好な硬化物を与えるエポキシ樹脂骨格(A骨格)と低表面張力性を付与するシリコーン骨格(B骨格)とを有するABAブロックコポリマーである。(D)シリコーン変性エポキシ樹脂はシリコーン骨格が低表面張力性を有するため、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂を有する液状エポキシ樹脂組成物は半導体チップ(ダイ)下部の狭い空間にスムーズに流入できる特性を持ち、かつ消泡性に優れる上、高温で熱分解反応を起こしにくいものとなる。さらに、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂は同一分子内にエポキシ骨格を有するため、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物との相溶性もよくハジキが起こりにくい上、液状エポキシ樹脂組成物が硬化する反応にも寄与するため強靭性を有する硬化物の生成に寄与する。結果として、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂を含む本発明の液状エポキシ樹脂組成物は大型半導体チップ(大型ダイ)のアンダーフィル封止剤として用いてもボイドの発生を抑制できる上、強靭性、耐熱衝撃性を有する硬化物を与えることができる。(D)シリコーン変性エポキシ樹脂は一種単独で用いても、二種以上を併せて用いてもよい。
Figure 2012025924
上記式中、上記式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基、好ましくは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、好ましくはメチル基、である。Qは炭素原子数3〜6のアルキレン基、オキシアルキレン基、又はヒドロキシオキシアルキレン基であり、例えば、(−CHCHCH−)、(−O−CHCHCH−)又は(−OCH−CH(OH)−CH−O−CHCHCH−)である。rは4〜199の整数、好ましくは19〜130、より好ましくは70〜109の整数であり、pは1〜10の整数好ましくは2〜5の整数、qは1〜10の整数、好ましくは2〜5の整数である。特に、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂として、上記平均組成式(1)において、Rが水素原子、Rがメチル基、rが70〜109の整数、p及びqが2〜5の整数、Qが−OCH−CH(OH)−CH−O−CHCHCH−で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂が好ましい。
(D)シリコーン変性エポキシ樹脂の添加量は、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物100質量部に対して、ジオルガノポリシロキサン単位の質量が1〜20質量部となるようにすることができ、特に2〜15質量部含まれるように添加することが好ましく、これにより、硬化物の応力を低下し及び基板への密着性も向上することができる。ここで、ジオルガノポリシロキサン単位の質量は、下記式で示される。
[ジオルガノポリシロキサン単位の質量={(D)シリコーン変性エポキシ樹脂のジオルガノポリシロキサン部分の分子量/(D)シリコーン変性エポキシ樹脂の分子量}×(D)シリコーン変性エポキシ樹脂の添加量]
(E)フッ素系樹脂
本発明の液状エポキシ樹脂組成物に含まれる(E)フッ素系樹脂(下記一般式(2))は、低表面張力性を付与するシリコーン骨格(B骨格)と低表面張力性を有し、非常に化学的に安定なフッ素樹脂骨格(ポリヘキサフルオロプロピレンオキサイド骨格)(C骨格)を有するBCブロックコポリマーである。(E)フッ素系樹脂はシリコーン骨格が低表面張力性を有するため、(E)フッ素系樹脂を有する液状エポキシ樹脂組成物は半導体チップ(ダイ)下部の狭い空間に均一かつスムーズに流入できる特性を持ち、消泡性に優れる上、高温で熱分解反応を起こしにくいものとなる。また、(E)フッ素系樹脂は同様のシリコーン骨格を有する(D)シリコーン変性エポキシ樹脂と相溶性が良いため、一般的に相溶性の低いフッ素樹脂骨格を有していたとしても本発明の液状エポキシ樹脂組成物中に混在しやすい。さらに、(E)フッ素系樹脂は低表面張力性を有し、非常に化学的に安定なフッ素樹脂骨格を有するため、(E)フッ素系樹脂を有する液状エポキシ樹脂組成物は半導体チップ(ダイ)下部の狭い空間に均一なスピードで浸入できる特性を持つものとなり、その上耐熱性、耐薬品性、撥水性、撥油性及び耐候性に優れる硬化物を与えることができる。結果として、(E)フッ素系樹脂を含む本発明の液状エポキシ樹脂組成物は大型半導体チップ(大型ダイ)のアンダーフィル封止剤として用いてもボイドの発生を抑制できる上、強靭性、耐熱衝撃性を有する硬化物を与えることができる。
Figure 2012025924
該フッ素樹脂の添加量は、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、(B)硬化剤、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂の総質量100質量部に対して、0.02〜0.5質量部となるようにすることができ、特に0.05〜0.5質量部含まれるように添加することが好ましい。0.02質量部以上であれば(E)フッ素系樹脂の低表面張力が発現しボイド発生抑制効果が高まるため好ましく、0.5質量部以下であれば、表面張力が低くなりすぎて液状エポキシ樹脂組成物の半導体チップ(ダイ)下部への浸入を阻害してしまい未充填を起こすことも抑制できるため好ましい。
また、(E)フッ素系樹脂は、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物との相溶が悪く分離してしまう可能性があるので、事前に(D)シリコーン変性エポキシ樹脂に相溶させておくことが好ましい。このように、事前に(D)シリコーン変性エポキシ樹脂に相溶させておけば(E)フッ素系樹脂が液状エポキシ樹脂組成物中で分離することを抑制することができるため、均一な液状エポキシ樹脂組成物を得ることができる。液状エポキシ樹脂組成物が均一なものであれば半導体チップ(ダイ)下部の狭い空間にも均一なスピードで侵入できる特性を持つ液状エポキシ樹脂組成物とすることができる。
その他の添加剤
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲であれば更に必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。例えば、該液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の応力を低減する目的でシリコーンゴム、シリコーンオイル、液状ポリブタジエンゴム、メタクリル酸メチル―ブタジエン―スチレン等の可撓性樹脂、接着性向上用炭素官能性シラン、酸化防止剤を本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。また、溶剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、カルナバワックス、高級脂肪酸、合成ワックス等のワックス類、カーボンブラック等の着色剤、ハロゲントラップ剤等の添加剤を添加することができる。その他の添加剤は一種単独で用いても、二種以上を併せて用いてもよい。
液状エポキシ樹脂組成物の調整
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、(B)硬化剤、(C)無機充填剤、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂、(E)フッ素系樹脂、必要に応じてその他の添加剤を同時に又は別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶解、混合、分散させることにより得ることができる。特に、(E)フッ素系樹脂は(D)シリコーン変性エポキシ樹脂と相溶させてから、(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、(B)硬化剤、(C)無機充填剤、必要に応じてその他の添加剤に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶解、混合、分散させることが好ましい。このように、事前に(D)シリコーン変性エポキシ樹脂に相溶させておけば(E)フッ素系樹脂が液状エポキシ樹脂組成物中で分離することを抑制することができるため、均一な液状エポキシ樹脂組成物を得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を用いることができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
液状エポキシ樹脂組成物の硬化法
本発明の液状エポキシ樹脂組成物の硬化方法は、公知の方法であってよいが、好ましくは、先に100〜120℃、0.5時間以上、特に好ましくは0.5〜2時間、その後130〜250℃、0.5時間以上、特に好ましくは0.5〜5時間の条件で熱オーブンキュア(硬化)を行う。100〜120℃での加熱が0.5時間以上であれば、硬化後のボイド発生を抑制できるため好ましい。また130〜250℃での加熱が0.5時間以上であれば、十分な硬化物特性が得られるため好ましい。
半導体装置の製造方法
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は各種封止剤として用いることができ、例えば、リードフレーム、基盤、パッケージ上に搭載された半導体素子及びその周辺の電極配線などを封止する封止剤、アンダーフィル剤等として用いることが挙げられる。本発明の液状エポキシ樹脂組成物を硬化して作製する半導体装置の製造方法は公知の方法を用いることができる。特に、アンダーフィル剤(フリップチップにおける樹脂封止剤)として用いることが好ましく、アンダーフィルとしての一般的な半導体装置の製造方法としては、チップの一辺もしくは二辺から塗布し、液状エポキシ樹脂組成物を毛細管現象を利用した自然注入により充填後、オーブンなどで加熱し樹脂を硬化させて完了する。毛細管現象を利用した液状エポキシ樹脂組成物の充填中は、パッケージを昇温させ樹脂の粘度を下げることで充填時間を短くすることができる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
表1に示す成分を3本ロールを用いて均一に混練することにより、実施例、比較例の液状エポキシ樹脂組成物を得た。これらの液状エポキシ樹脂組成物を用いて以下に示す実験をおこなったその結果を表1に示す。なお、各成分は下記のとおりである。
(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物
(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物として、(イ)YDF8170:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製)、及び(ロ)下記式で示される3官能型エポキシ樹脂(jER630LSD:ジャパンエポキシレジン株式会社製)を用いた。
Figure 2012025924
(B)硬化剤
(B)硬化剤として、(ハ)アミン系硬化剤:カヤハードA−A(日本化薬(株)製)又は(ニ)酸無水物系硬化剤:リカシッドMH700(新日本理化(株)製)を用いた。
(C)無機質充填剤
(C)無機質充填剤として、シランカップリング剤 KBM403、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)で処理した球状シリカであって、下記粒径検査方法において、フィルター1残量(粒径25μm以上)が0.01質量%、平均粒径2.5μmの爆燃法で製造された球状シリカを用いた。
(D)シリコーン変性エポキシ樹脂
(D)シリコーン変性エポキシ樹脂として、下記一般式(7)で示されるエポキシ樹脂と下記一般式(8)で示されるシリコーンを付加反応させることで得られたシリコーン変性エポキシ樹脂を用いた。
Figure 2012025924
(E)フッ素系樹脂
(E)フッ素系樹脂として、下記一般式(2)であらわされるX−71−1410NS (信越化学工業(株)製)を用いた。
Figure 2012025924
その他の添加剤
その他の添加剤として、カーボンブラック デンカブラック(電気化学工業(株)製)を用いた。
シリカ粒径検査方法
無機充填剤として用いる球状シリカの粒径及び粒度分布は、レーザー光回折法による粒度分布測定により得ることができる。また、ギャップサイズの1/2以上の粒径の球状シリカの測定方法としては、シリカと純水を1:9(質量)の割合で混合し、超音波処理を行って凝集物を十分崩し、フィルター1(目開き25μm)又はフィルター2(目開き10μm)で篩い、篩上に残った球状シリカ残量を秤量して行った。測定は5回行い、その平均値を測定値として質量%で算出した。
液状エポキシ樹脂組成物の粘度測定
BH型回転粘度計を用いて4rpmの回転数で25℃における粘度を測定した。
液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物のTg(ガラス転移温度)測定
液状エポキシ樹脂組成物を常温から10℃/分で昇温して、200〜260℃の温度で、30秒以上5分以下保持して硬化物を得た。該硬化物を、常温まで冷却して、5mm×5mm×15mmの試験片を切り出して、TMA(熱機械分析装置)により、毎分5℃で昇温してTgを測定した。
液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の強靭性値K 1c 測定
各樹脂組成物を120℃で0.5時間硬化し、165℃で3時間硬化して、得られた硬化物について、ASTM D5045に基づき、常温の強靭性値K1cを測定した。
試験用半導体装置の作成
厚さ42.5×42.5mm×1.0mmのBT樹脂基板上に、20×20×0.725mmの半田バンプ付シリコンチップをギャップサイズが、約60μmになるように設置されたフリップチップ型半導体装置のギャップに、実施例1〜3、比較例1〜4の各々の液状エポキシ樹脂組成物を110℃の熱版の上で樹脂を浸入させたあと、120℃で0.5時間硬化し、165℃で3時間硬化する温度条件で液状エポキシ樹脂組成物を硬化させることで試験用半導体装置を作成した。実施例1〜3、比較例1〜4の各々の組成物の硬化物からなる半導体装置について以下の試験を行うことでボイド発生率、強靭性、及び耐熱衝撃性を判定した。
試験用半導体装置のボイドテスト
超音波映像診断機、C−SAM(SONIX社製)を用いて試験用半導体装置のボイドの有無を調べた。ボイド発生率を表2に示す。ボイド発生率は、[{ボイドが発生した試験用半導体装置/試験した試験用半導体装置の総数}×100]として求めた。
試験用半導体装置のプレッシャークッカーテスト
試験用半導体装置を、30℃/65%RH(Relative Humidity)の条件下で192時間(JEDECレベル3の条件)置いた後に、最高温度265℃に設定したIRリフロー炉を5回通した後の、クラックの有無を、超音波映像診断機、C−SAM(SONIX社製)を用いて調べた。次いで、プレッシャークッカー中、121℃/2.1atmの環境下に336時間置いた後の剥離の有無を、上記同様に調べた。クラックが観察されたチップの割合(%)を表2に示す。クラックが観察されたチップの割合(%)は、[{クラックが発生した試験用半導体装置/試験した試験用半導体装置の総数}×100]として求めた。
試験用半導体装置の耐熱衝撃性テスト
上記方法で得られた試験用半導体装置を、30℃/65%RHの条件下に192時間置いて、最高温度265℃に設定したIRリフロー炉を5回通した後、−55℃で10分、125℃で10分を1サイクルとし、500及び1000サイクル後のクラックの有無を、超音波映像診断機、C−SAM(SONIX社製)を用いて調べた。クラックが観察されたチップの割合(%)を表2に示す。クラックが観察されたチップの割合(%)は、[{クラックが発生した試験用半導体装置/試験した試験用半導体装置の総数}×100]として求めた。
Figure 2012025924
比較例1、2、3、及び4において示されるように、本発明の必須成分を含有しない液状エポキシ樹脂組成物を硬化させて作製した半導体装置は、耐熱衝撃性に劣りクラック発生率が高く(比較例1及び4)、またボイド発生率が高い(比較例2及び3)ことが明らかとなった。一方で、実施例において示されるように、本発明の(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、(B)硬化剤、(C)無機充填剤、(D)上記平均組成式(1)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂、(E)上記一般式(2)で示されるフッ素系樹脂を含む液状エポキシ樹脂組成物を硬化させて作製した半導体装置は、ボイドの発生は起こらず、かつクラック発生も起こらず耐熱衝撃性に優れていることが明らかとなった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
(E)フッ素系樹脂
(E)フッ素系樹脂として、下記一般式(2)であらわされるX−43−1410(信越化学工業(株)製)を用いた。
Figure 2012025924

Claims (5)

  1. 液状エポキシ樹脂組成物であって、少なくとも、
    (A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物、
    (B)硬化剤、
    (C)無機充填剤、
    (D)下記平均組成式(1)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂、及び
    Figure 2012025924
    (上記式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、Qは炭素原子数3〜6のアルキレン基、オキシアルキレン基、及びヒドロキシオキシアルキレン基のいずれかであり、rは4〜199の整数、pは1〜10の整数、qは1〜10の整数である。)
    (E)下記一般式(2)で示されるフッ素系樹脂
    Figure 2012025924
    を含むものであることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物。
  2. 前記(A)エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物として、一種又は二種以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び下記エポキシ基を少なくとも2以上有する化合物のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2012025924
    (式中、Rは炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、nは1〜4の整数である。)
  3. 前記(D)シリコーン変性エポキシ樹脂として、平均組成式(1)において、Rが水素原子、Rがメチル基、rが70〜109の整数、p及びqが2〜5の整数、Qが−OCH−CH(OH)−CH−O−CHCHCH−で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
  4. 前記(B)硬化剤として、芳香族アミン系硬化剤であって、一種又は二種以上の下記一般式(3)、(4)、(5)及び(6)のいずれかで示される硬化剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液状エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2012025924
    (式中、R〜Rは、同一又は異なる炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、CHS−基、及びCS−基のいずれかである。)
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液状エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物で封止された半導体装置。
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