JP2012018830A - 太陽光集電ケーブル - Google Patents

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Abstract

【課題】PSE規格で外被に求められる物理特性(伸び、抗張力、老化後の伸び残率と抗張力残率)及び加熱変形性と、難燃性とを満たしつつ、擦過等によるいわゆる白化が生じない良好な外観を有する太陽光集電ケーブルを提供する。
【解決手段】外側絶縁層30と、ポリエチレンからなる内側絶縁層20とを備えた二層構造の絶縁層で導体10が被覆された太陽光集電ケーブル1であって、前記外側絶縁層30が、合成水酸化マグネシウム(A)とベース樹脂(B)とを(A)/(B)=1〜1.6の質量比で含有し、該ベース樹脂が、ポリオレフィン系樹脂(C)とスチレン系熱可塑性エラストマー(D)とを(C)/(D)=70/30〜90/10の質量比で含有し、該ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂(E)とエチレン‐アクリル酸エチル共重合体(F)とを(E)/(F)=2/6〜3/5の質量比で含有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は太陽光集電ケーブルに係り、詳細には二層構造の絶縁層で被覆された太陽光集電ケーブルに関する。
近年、エネルギー資源の枯渇や大気中のCO2増加のような環境問題及びエネルギー問題への関心の高まりから、クリーンなエネルギーの開発が望まれており、なかでも太陽電池を用いた太陽光発電システムは新しいエネルギー源として実用化が進められている。
このような太陽光発電システムに用いられる太陽光集電ケーブルは、屋外環境での使用が前提となるため、使用可能温度の広さ、耐紫外線性、フレキシブル性に加え、機械的強度や、二重絶縁又は強化絶縁であることが要求されており、また該太陽光集電ケーブルは、電気用品安全法(PSE規格)に適合したケーブルであることも求められている。
PSE規格が要求する項目には、導体や絶縁体についての要求項目のほかに、外被(シース)について、物理特性(伸び、抗張力、老化後の伸び残率と抗張力残率)と加熱変形を規定する項目がある。さらに発火事故などに際してケーブルを伝って火が広がることを防ぐため、PSE規格では難燃性であることを求めている。
難燃性電線としては、特許文献1に記載のノンハロゲン難燃電線がある。
特開2001−160324号公報
しかしながら、これらのケーブルでは、上述の難燃性を実現するために外層に水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属酸化物を混和する必要があり、この金属酸化物を含有するケーブルは、擦れたときにその部分が白くなる現象、いわゆる白化が起こるために外観不良となる問題点を有する。
本発明は、従来の太陽光集電ケーブルにおける上記課題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、PSE規格で外被に求められる物理特性(伸び、抗張力、老化後の伸び残率と抗張力残率)及び加熱変形性と、難燃性とを満たしつつ、擦過等によるいわゆる白化が生じない良好な外観を有する太陽光集電ケーブルを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、導体に絶縁層を二重被覆したケーブルにおいて、外側絶縁層を構成する樹脂に一定の比率で合成水酸化マグネシウムを含有させ、且つ、外側絶縁層を構成する樹脂の組成を特定のものとすることで、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の太陽光集電ケーブルは、外側絶縁層と、ポリエチレンからなる内側絶縁層とを備えた二層構造の絶縁層で導体が被覆された太陽光集電ケーブルであって、前記外側絶縁層が、合成水酸化マグネシウム(A)とベース樹脂(B)とを(A)/(B)=1〜1.6の質量比で含有し、該ベース樹脂が、ポリオレフィン系樹脂(C)とスチレン系熱可塑性エラストマー(D)とを(C)/(D)=70/30〜90/10の質量比で含有し、該ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂(E)とエチレン‐アクリル酸エチル共重合体(F)とを(E)/(F)=2/6〜3/5の質量比で含有することを特徴とする(請求項1)。
また、本発明の太陽光集電ケーブルは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、SEBS(スチレン‐エチレンブチレン‐スチレン共重合体)であることを特徴とする(請求項2)。
本発明によれば、外側絶縁層と、ポリエチレンからなる内側絶縁層とを備えた二層構造の絶縁層で導体が被覆され、前記外側絶縁層が、合成水酸化マグネシウム(A)とベース樹脂(B)とを(A)/(B)=1〜1.6の質量比で含有し、該ベース樹脂が、ポリオレフィン系樹脂(C)とスチレン系熱可塑性エラストマー(D)とを(C)/(D)=70/30〜90/10の質量比で含有し、該ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂(E)とエチレン‐アクリル酸エチル共重合体(F)とを(E)/(F)=2/6〜3/5の質量比で含有することで、PSE規格で外被に求められる物理特性(伸び、抗張力、老化後の伸び残率と抗張力残率)及び加熱変形性と、難燃性とを満たしつつ、擦過等によるいわゆる白化が生じない良好な外観を有する太陽光集電ケーブルを提供することができる。
本発明の太陽光集電ケーブルの一例を示す概略断面斜視図である。
以下、本発明の太陽光集電ケーブルについて、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の太陽光集電ケーブルの一例を示す概略断面斜視図である。
太陽光集電ケーブル1は、内側絶縁層20と、その外周に積層された外側絶縁層30とを備えた二重構造の絶縁層によって、導体10が被覆された形状を有する。太陽光発電システムにおいては、通常、1.5m程度の長さのものが、二本一組で用いられる。
導体10のサイズは、断面積が2.0〜6.0mmであることが好ましく、PSE規格を考慮すると、公称断面積が2.0mm、3.5mm、その構成は、7本撚り/素線径0.6mm、7本撚り/素線径0.8mmであることが好ましい。材質は、例えば軟銅とすることができる。
内側絶縁層20のサイズは、PSE規格を考慮すると、厚さが0.7〜1.2mm、外径が3.4〜5.1mmであることが好ましい。内側絶縁層20の材質はポリエチレンである。内側絶縁層20を純粋なポリエチレンとすることで、良好な電気特性を実現することができる。
外側絶縁層30のサイズは、PSE規格を考慮すると、厚さが1.5mmであることが好ましく、仕上外径が6.4〜8.1mmであることが好ましい。
外側絶縁層30は、難燃剤として合成水酸化マグネシウムを含有する。市販されている合成水酸化マグネシウムとしては、例えば協和化学工業(株)製のキスマ(商標)を挙げることができる。ここで、難燃剤を合成水酸化マグネシウムと限定したのは、特定の含有割合となるように添加することによって、ケーブルが擦れた場合の白化を生じることなく難燃性を実現できるからである。合成水酸化マグネシウムは表面処理されていてもよい。一方、通常使用される水酸化アルミニウムや天然水酸化マグネシウムなどの金属酸化物は、難燃性を得るためには有効であるが、難燃性が得られる量を添加した場合、ケーブルの擦過箇所が白くなるため、難燃性と外観の良さを両立することができない。
合成水酸化マグネシウムは、外側絶縁層30のベース樹脂に対して1〜1.6の質量比、で含有される。1未満では所望の難燃性を得ることができず、1.6を超えると成形時の押出性が悪くなる。
外側絶縁層30のベース樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(C)とスチレン系熱可塑性エラストマー(D)とを含有する。その質量比は、(C)/(D)=70/30〜90/10である。ポリオレフィン系樹脂の含有比率が、ポリオレフィン系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーの合計量の90質量%を超えると、難燃性に劣る傾向が見られるとともに所望の抗張力が得られない。一方、70質量%未満であると外側絶縁層30に白化が発生する。
上記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂(E)とエチレン‐アクリル酸エチル共重合体(F)とを(E)/(F)=2/6〜3/5の質量比で含有する。ポリプロピレン系樹脂の含有比率が、ポリプロピレン系樹脂とエチレン‐アクリル酸エチル共重合体の合計量の2/8未満では、所望の抗張力を得ることができず、3/8を超えると難燃性と伸びに劣るものとなる。
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定はされないが、エチレンプロピレン共重合体またはポリプロピレンにエチレン−プロピレンゴム(EPDM、EPR)を溶融混練したものが好ましい。エチレンプロピレン共重合体にEPDM、EPRを溶融混練したものが特に好ましい。十分な耐熱性や強度を有しながら、配線時に作業しやすい柔軟性を付与できるためである。ポリプロピレン系樹脂としては上記のような樹脂成分とゴム成分を溶融混練して合成するコンパウンドTPOタイプ(TPO:オレフィン系熱可塑性エラストマー)の他に、リアクターTPOタイプも用いることができる。リアクターTPOは、ポリマー重合時にハード部であるマトリックス樹脂にソフト部であるゴム成分を分散させたオレフィン系熱可塑性エラストマーであり、上記の樹脂成分とゴム成分を溶融混練して合成するコンパウンドTPOに対して、樹脂成分とゴム成分を同一の重合場で重合させてTPOとするものである。本発明においてはマトリックス部分がポリプロピレンのものを使用することができる。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定はされないが、SEBS(スチレン‐エチレンブチレン‐スチレン共重合体)またはSEBC(スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体)であることが好ましい。スチレン成分の芳香環が入ることで、燃焼時の殻作り性が向上し、難燃試験に合格しやすくなる。また、エチレン−ブタジエン成分を有するため、ポリオレフィン系樹脂と混合したときにポリオレフィン系樹脂の伸びや強度を悪化させることがなく、ポリオレフィン系樹脂を単独で使用した場合よりも抗張力を良化することができる。
上記エチレン‐アクリル酸エチル共重合体としては、特に限定されないが、アクリル酸エチルの含有割合が10〜25質量%のものを好適に挙げられ、アクリル酸エチルの含有割合が15質量%程度のものが特に好ましい。水酸化マグネシウムの分散性が向上するためである。アクリル酸エチルの含有量が少ない場合十分に水酸化マグネシウムを分散させることができず、伸びが得られない、水酸化マグネシウムの凝集が発生するなどの問題が発生する。
外側絶縁層30のベース樹脂は、更に必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、加工性改良剤、その他の改質剤などを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記太陽光集電ケーブル1は、押出被覆により内側絶縁層20、外側絶縁層30の順に導体10を被覆することによって得られる。また、内側絶縁層20に用いられるポリエチレンは、電子線や紫外線照射等の方法により架橋されることが好ましい。
なお、押出被覆は、それぞれの組成物をロール、バンバリー、押出機などで混練し、得られたペレットコンパウンドと導体とをクロスヘッドダイを付設した従来公知の電線用押出機で電線被覆押出成形することなどにより行うことができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(1)太陽光集電ケーブルの作製
表1に示す組成による外被をそれぞれ外側絶縁層として用いた実施例1〜5及び比較例1〜6の太陽光集電ケーブルを作製した。各ケーブルにつき、表2に示す仕上がり外径の異なる2種のケーブル(ケーブル1、2)をそれぞれ作製した。
得られた各ケーブルおよび評価を表1に示す。尚、実施例1〜5及び比較例1〜6のいずれについても、仕上がり外径の異なるケーブル(ケーブル1、2)であっても同じ結果となるため、纏めて表1に示す。
上記各例の太陽光集電ケーブルについて行った各種特性の評価方法は、下記の通りである。
[難燃試験]
難燃性は、60°傾斜難燃により評価した。
60°傾斜難燃については、ケーブルに炎を30秒間当て、着火したら直ぐに炎を取り去り、60秒以内に消えた場合を合格とした。
[外被の伸び]
ケーブルから外側絶縁層部分を取出し、JIS C3005:2000の4.16に従って測定した。試験機はJIS B 7721に規定された試験機を用いた。管状試験片を試験機のチャックに取り付け、引っ張り速さ200mm/min.で引張り、切断時の標線間の長さを測定し、以下の式により伸びを算出し、350%を超えたものを合格とした。試験は室温で行い、n=3で判定した。
(式)ε=(l−l/l)×100
上記式中、εは伸び(%)、lは切断時の標線間の長さ(mm)、lは標線間の長さ(mm)である。
[外被の老化後伸び残率]
ケーブルから取出した外側絶縁層について、老化(90℃×4日)後、伸びを測定、算出し、老化前の伸びと比して残率が65%を超えたものを合格とした。なお残率は以下の式により算出し、n=3で行い判定した。
(式)X=(C/C)×100
上記式中、Xは残率(%)、Cは老化後の値、Cは老化前の平均値である。
[外被の抗張力]
ケーブルから外側絶縁層部分を取出し、JIS C3005:2000の4.16に従って測定した。試験機はJIS B 7721に規定された試験機を用いた。管状試験片を試験機のチャックに取り付け、引っ張り速さ200mm/min.で引張り、最大引張荷重を測定し、以下の式により抗張力を算出し、10MPaを超えたものを合格とした。試験は室温で行い、n=3で判定した。
(式)δ=F/A
上記式中、δは抗張力(MPa)、Fは最大引張荷重(N)、Aは試験片の断面積(mm)である。
[外被の老化後抗張力残率]
ケーブルから取出した外側絶縁層について、老化(90℃×4日)後、抗張力を測定、算出し、老化前の抗張力と比して残率が80%を超えたものを合格とした。なお抗張力の算出にあたって、試験片の断面積は老化前の値を用いた。また残率は以下の式により算出し、n=3で行い判定した。
(式)X=(C/C)×100
上記式中、Xは残率(%)、Cは老化後の値、Cは老化前の平均値である。
[外被の加熱変形]
ケーブルを30mmの長さに切断し、導線及び内側絶縁層を取り除いて、外側絶縁層の管状試験片を得た。該管状試験片を、JISC3005:2000 4.23に従って加熱温度75℃、荷重1kgとして加熱変形を測定した。残率が90%を超えたものを合格とした。n=3で行い判定した。
[白化の有無]
ケーブルを製造してボビンに巻き取った。ボビンの胴を抜いて束として10mを目視観察して白化箇所を探した。1mあたり白化箇所が1カ所または観察されないものを白化無し、とした。それを超える白化箇所が観察されたものは白化有りとした。
実施例1〜4は、PSE規格で外被に求められる物理特性(伸び、抗張力、老化後の伸び残率と抗張力残率)、加熱変形性、難燃性、白化が生じない良好な外観特性のいずれにも優れる良好な結果が得られる。
比較例1および比較例2は、天然の水酸化マグネシウムを使用したため白化が生じる結果となる。さらに比較例2については、ポリプロピレン系樹脂としてホモポリプロピレンを使用したため、エチレンプロピレンブロック共重合体を用いた比較例1に対して難燃性とともに伸びが劣る結果となる。
比較例3はスチレン系熱可塑性エラストマーであるSEBSを含まないことから抗張力が得られず、一方、比較例4のようにスチレン系熱可塑性エラストマーであるSEBSを入れすぎると白化が生じる結果となる。尚、比較例3はスチレン系熱可塑性エラストマーであるSEBSは含まないものの、ポリオレフィン系樹脂中におけるポリプロピレン系樹脂とエチレン-アクリル酸エチル共重合体の配合比率が良好であるため、難燃性は問題ないレベルである。
比較例5および6は、ポリオレフィン系樹脂中におけるポリプロピレン系樹脂とエチレン-アクリル酸エチル共重合体の配合比率を変えた実験例であり、ポリプロピレン系樹脂を特定比率を超えて含有する比較例5では難燃性に劣るとともに伸びが悪く、一方、エチレン-アクリル酸エチル共重合体を特定比率を超えて含有する比較例6では抗張力に劣る結果となる。
また、比較例1〜6は白化箇所が1mあたり数個(5個程度)観察された。ケーブルを巻き取るときにケーブルどうしが擦れたり、ケーブルがガイドローラと擦れることでケーブルに白い筋(数cmの長さ)が付くことがあるが、それを白化箇所とした。
1…太陽光集電ケーブル、10…導体、20…内側絶縁層、30…外側絶縁層。

Claims (2)

  1. 外側絶縁層と、ポリエチレンからなる内側絶縁層とを備えた二層構造の絶縁層で導体が被覆された太陽光集電ケーブルであって、
    前記外側絶縁層が、合成水酸化マグネシウム(A)とベース樹脂(B)とを(A)/(B)=1〜1.6の質量比で含有し、
    該ベース樹脂が、ポリオレフィン系樹脂(C)とスチレン系熱可塑性エラストマー(D)とを(C)/(D)=70/30〜90/10の質量比で含有し、
    該ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂(E)とエチレン‐アクリル酸エチル共重合体(F)とを(E)/(F)=2/6〜3/5の質量比で含有することを特徴とする太陽光集電ケーブル。
  2. 前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、SEBS(スチレン‐エチレンブチレン‐スチレン共重合体)であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光集電ケーブル。
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