JP2012018380A - 回折光学素子、光学系、及び、光学機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】回折格子の格子壁面にて不要光の発生を抑制する回折光学素子を提供する。
【解決手段】本発明の回折光学素子は、第1の格子面と第1の格子壁面とを備えた第1の回折格子と、前記第1の格子壁面に配置された遮光部材と、第2の格子面と第2の格子壁面とを備え、該第2の格子面が前記第1の格子面と接し、かつ、該第2の格子壁面が前記遮光部材と接するように配置された第2の回折格子とを有し、前記遮光部材を構成する材料の消衰係数kが0.001<k<0.5を満たすように構成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、不要光の発生を抑制する回折光学素子に関する。
光学系のレンズに用いられる回折光学素子において、2つの回折格子を密着配置し、各回折格子を構成する材料と格子高さを適切に設定することで広い波長帯域で高い回折効率を得ることが知られている。この格子面と格子壁面を備えた回折光学素子の格子壁面に入射する光束は、格子壁面で反射や屈折するなど格子面の場合とは異なる振る舞いをし、不要光(フレア)が発生する。特許文献1、2には、格子壁面での不要光を抑制するように構成された回折光学素子が開示されている。特許文献1、2に開示された回折光学素子は、格子壁面に不透明膜または吸収膜等の遮光手段を備え、格子壁面に入射する光束を遮光し、格子壁面で発生する不要光を抑制する。特許文献3は、厳密結合波解析(RCWA:Regorous Coupled Wave Analysis)を使用した回折効率の計算について開示している。
特開2003−240931号公報 特開2004−126394号公報 特開2009−217139号公報
しかしながら、特許文献1、2には、不要光の発生原因の十分な開示はなく、また、吸収膜に関して透過、反射、吸収の程度についての具体的な構成について開示されていない。このため、不要光を効果的に抑制することができない。
そこで本発明は、回折格子の格子壁面にて不要光の発生を抑制する回折光学素子を提供する。
本発明の一側面としての回折光学素子は、第1の格子面と第1の格子壁面とを備えた第1の回折格子と、前記第1の格子壁面に配置された遮光部材と、第2の格子面と第2の格子壁面とを備え、該第2の格子面が前記第1の格子面と接し、かつ、該第2の格子壁面が前記遮光部材と接するように配置された第2の回折格子とを有し、前記遮光部材を構成する材料の消衰係数kが0.001<k<0.5を満たすように構成されている。
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
本発明によれば、回折格子の格子壁面にて不要光の発生を抑制する回折光学素子を提供することができる。
実施例1における回折光学素子の概略図である。 実施例1における回折光学素子の拡大断面図である。 実施例1における回折光学部の拡大断面図である。 実施例1の回折光学素子において、入射角度+10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例1の回折光学素子において、入射角度−10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例2の回折光学素子において、入射角度±10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例3における回折光学部の拡大断面図である。 実施例3の回折光学素子において、入射角度±10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例4の回折光学素子において、入射角度±10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例5における回折光学部の拡大断面図である。 実施例5の回折光学素子において、入射角度±10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例6における回折光学部の拡大断面図である。 実施例6の回折光学素子において、入射角度±10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例7の回折光学素子において、入射角度±10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例7における回折光学素子の画面外入射+10度の光束に対する不要光の伝播の様子を示す模式図である。 実施例8の回折光学素子において、入射角度±10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例9の回折光学素子において、入射角度±10度の光束に対する回折効率のグラフである。 実施例10における回折光学素子の画面外入射+10度の光束に対する不要光の伝播の様子を示す模式図である。 実施例10における回折光学素子の画面外入射+10度の光束に対する不要光の伝播の様子を示す模式図である。 実施例11における撮影光学系の概略断面図である。 実施例12における観察光学系の概略断面図である。 比較例1における回折光学素子の画面外入射+10度の光束に対する回折効率のグラフである。 比較例1における回折光学素子の画面外入射+10度の光束に対する不要光の伝播の様子を示す模式図である。 比較例1における回折光学素子の画面外入射−10度の光束に対する回折効率のグラフである。 比較例1における回折光学素子の画面外入射−10度の光束に対する不要光の伝播の様子を示す模式図である。 比較例における回折光学素子の構造と画面外入射光束との関係を示す模式図である。 比較例2における回折光学素子の画面外入射+10度の光束に対する回折効率のグラフである。 比較例2における回折光学素子の画面外入射−10度の光束に対する回折効率のグラフである。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
まず、本発明の実施例1における回折光学素子について説明する。図1は、本実施例における回折光学素子の概略図(正面図及び側面図)である。回折光学素子1は、平板又はレンズより構成される基板2、3に挟まれた回折格子部10を備えて構成される。本実施例では、回折格子部10が設けられる基板2、3の面は、曲面となっている。回折格子部10は、光軸Oを中心とした同心円状の回折格子形状であり、レンズ作用を有する。
図2は、図1のA−A’面を切断して拡大した回折光学素子1の拡大断面図である。格子形状を分かりやすくするために、図2は格子深さ方向にデフォルメされた図となっている。また、格子数も実際よりは少なく描かれている。以降に説明する断面図についても同様である。図2に示されるように、回折光学素子1の回折格子部10は、第1の回折格子11、第2の回折格子12、及び、遮光部材20を備えて構成される。第1の回折格子11は、格子面11a(第1の格子面)と格子壁面11b(第1の格子壁面)とを備え、第1の屈折率を有する。第2の回折格子12は、格子面12a(第2の格子面)と格子壁面12b(第2の格子壁面)とを備える。第2の回折格子12は、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する。第1の回折格子11の格子面11aは、第2の回折格子12の格子面12aと接している(密着している)。遮光部材20は、格子壁面11b、12bとの間に配置され、膜形状構造を有する。格子壁面11bは遮光部材20の一方の面に接し、格子壁面12bは遮光部材20の他方の面に接している。
図1及び図2に示されるように、第1の回折格子11及び第2の回折格子12は、それぞれ格子面11a、12aと格子壁面11b、12bから構成される同心円状のブレーズ構造の回折格子である。そして、光軸Oから円の外周に近づくに従って格子ピッチを徐々に変化させることにより、レンズ作用(光の収斂作用や発散作用)を有するように構成されている。また、格子面11a、12a及び格子壁面11b、12bは、遮光部材20を介して互いに隙間なく接しており、第1の回折格子11及び第2の回折格子12は、全体で1つの回折光学部10として作用する。また、回折光学部10をブレーズ構造にすることで、回折光学素子1に入射した光(入射光)は、回折格子部10で回折せずに透過する0次回折方向に対し、特定の回折次数(本実施例では+1次)方向に集中して回折する。
また、本実施例の回折光学素子1の使用波長領域は可視域である。このため、可視領域全体で設計次数の回折光の回折効率が高くなるように、第1の回折格子11及び第2の回折格子12を構成する材料及び格子高さdが選択される。すなわち、複数の回折格子(第1の回折格子11、第2の回折格子12)を通過する光の最大光路長差(回折部の山と谷の光学光路長差の最大値)が使用波長域内で、その波長の整数倍付近となるように、各回折格子の材料及び格子高さdが決定される。このように回折格子の材料及び形状を適切に設定することにより、使用波長全域で高い回折効率が得られる。
続いて、本実施例における回折光学素子1の素子構成および不要光について説明する。図3(a)は、本実施例における回折光学部10の拡大断面図である。図3(a)において、光軸Oに対して入射角ωで入射した斜入射光束B,B’は、それぞれ光軸Oから図の上方向に数えてm番目、図の下方向に数えてm番目の回折格子であるm格子、m’格子に入射する。画面外光束B,B’のm格子、m’格子に対しての入射角度は主光線方向に対して角度ωi、ωi’である。また、格子壁面1b、1b’方向は主光線方向と等しい場合としている。本実施例では、斜入射光束B,B’の入射角ωは、略+10度とする。
図3(b)は、回折光学部10をさらに拡大した拡大断面図である。本実施例では、第1の回折格子11の材料として、フッ素アクリル系紫外線硬化樹脂にITO微粒子を混合させた樹脂(nd=1.481、νd=20.7、θgF=0.404、n550=1.483)が用いられる。また、第2の回折格子12の材料として、アクリル系紫外線硬化樹脂(nd=1.524、νd=51.6、θgF=0.539、n550=1.524)が用いられる。それぞれの回折格子の格子高さdは13.51μm、設計次数は+1次とする。また、不要光を低減させるため、膜形状の遮光部材20が格子壁面1b、1b’に沿って設けられている。遮光部材20は、格子壁面1b、1b’に沿って均一な厚さの薄膜形状を有し、m格子の格子壁面1bで発生する全反射を防止し、かつ、m’格子の格子壁面1b’で発生する透過光を減少させる機能を有する。遮光部材20を構成する材料は、屈折率n=1.5、消衰係数k=0.1を有する吸収材料で、膜形状の幅wは0.2μmである。
ここで、設計入射角度(図3(b)のa:0度)より下向きの斜入射角度で回折光学素子1に入射する光束(図3(b)のb、図3(a)のB)を想定する。図4は、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおける厳密結合波解析(RCWA:Regorous Coupled Wave Analysis)による計算結果である。図4において、入射角は図3(b)の下向きを正の方向としている。図4(a)は、設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図4(b)は、図4(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について示した結果である。回折角は、図3(b)の下向きを正の方向としている。図4(a)に示されるように、設計次数である+1次回折光の回折効率が集中しているが、回折効率は95.41%である。残りの不要光は、図4(b)に示されるように、特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播している。この不要光は、略−10度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.0077%である。本実施例では、この不要光のピークの回折効率が大幅に低減する。これは、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、高屈折率媒質側(第2の屈折率を有する第2の回折格子12)から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制されていることを意味する。この結果、不要光が大幅に減少する。
次に、設計入射角度よりも上向きの斜入射角度で回折光学素子1に入射する光束(図3(b)のc、図3(a)のB’)を想定する。図5は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。入射角は、図3(b)の下向きを正の方向としている(図3(a)のm’格子では上向きが正の方向となる)。図5(a)は、設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図5(b)は、図5(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について示した結果である。回折角は、図3(b)の下向きを正の方向としている(図3(a)のm’格子では上向きが正の方向となる)。図5(a)に示されるように、設計次数である+1次回折光の回折効率が集中しており、回折効率は95.16%である。残りの不要光は、図5(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は、略−13度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.056%である。また、略+10度方向にもピークを有し、このピークの回折効率は0.016%である。本実施例の構成によれば、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、低屈折率媒質側(第1の屈折率を有する第1の回折格子11)から格子壁面に入射した光束の一部が遮光部材20によって抑制される。この結果、不要光が減少する。
以上のように、本実施例の回折光学素子において、斜入射光束が入射した場合、格子壁面に遮光部材を設けることにより、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射光が抑制される。さらに、低屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の透過光が遮光部材によって抑制される。このように、遮光部材は格子壁面によって分離される高屈折率媒質(第2の回折格子12)と低屈折率媒質(第1の回折格子11)の界面で発生する全反射光および透過光を抑制する。本実施例の回折格子によれば、不要光を減少させることができるため、結像面に到達する不要光が小さくなり、像性能の低下を抑制することが可能となる。
なお、ここでは格子ピッチ100μmとしている。さらに格子ピッチの広い輪帯においては壁面の寄与が小さくなるため、設計次数の回折効率は高く、不要光の回折効率は低くなる。また、図示してはいないが、この不要光の伝播方向については格子ピッチに依存せず、伝播方向は同じであった。このため、ひとつの基準として格子ピッチ100μmの回折効率を示している。
本実施例において、遮光部材20の製造方法は特に限定されない。一例として、第1の回折格子11又は第2の回折格子12の製造後、格子壁面にのみ遮光部材を構成する材料を斜め方向から選択的に蒸着手法等で形成する方法がある。また、マスクパターンを用いて選択的に蒸着手法等で形成する方法や、インクジェットプロセスを用いて格子壁面部のみに直接形成する方法等を用いることもできる。また、その他のウエットプロセスを用いて格子壁面部のみに選択的に塗布する方法を用いることもできる。さらに、第1の回折格子11又は第2の回折格子12の製造後、格子斜面部(格子面)にのみ犠牲材料を選択的に形成してから回折格子全域に遮光部材を構成する材料を形成し、格子面において犠牲材料と遮光部材を構成する材料を除去する方法等を用いてもよい。また、第1の回折格子11又は第2の回折格子12の製造後、回折格子全域に遮光部材を構成する材料を形成してから選択エッチング等により格子面のみ選択的に除去する方法等を用いることもできる。本実施例では設計次数を+1次にしているが、+1次以外の設計次数であっても同様の効果が得られるため、設計次数には限定されない。また本実施例では、第1の回折格子11と第2の回折格子12との屈折率の関係がn11<n22である場合について説明したが、屈折率の関係がn11>n22である場合についても、同様の効果が得られる。
次に、本発明の実施例2における回折光学素子について説明する。本実施例の回折光学素子では、遮光部材を構成する材料およびその幅が実施例1とは異なる。本実施例の遮光部材を構成する材料は、屈折率n=1.5、消衰係数k=0.01を有する吸収材料で、遮光部材20の幅wは2.0μmである。回折光学素子の他の構成は実施例1と同様であるため、それらの説明は省略する。
ここで、設計入射角度より下向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定して図6(a)に、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示す。設計次数である+1次回折光の回折効率は91.62%である。残りの不要光は、図6(a)に示されるように、多くのピークを有する不要光となって伝播する。本実施例の構成によれば、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制されるため、略−10度方向の不要光のピークはほぼ見られない。
なお、遮光部材の幅wが2.0μmと実施例1より厚い。このため、第1の回折格子11および第2の回折格子12の位相差が生じ、+5度から+15度までの+1回折光を除く比較的低次(低角度)回折光および略+18度、略+20度の比較的大きなピークの回折光が生じる。これらの比較的低次(低角度)の回折光は、太陽等の高輝度光源が画面外光が入射した場合、結像面に到達して像性能を低下させることはまれであるため、その影響は小さい。また−10度以上に小さい不要光ピークが見られるが、これらの不要光は僅かな量である。このため、回折光学素子全体として、不要光を減少させることができる。
次に、設計入射角度より上向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図6(b)は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は91.52%である。残りの不要光は、図6(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は略−20度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.033%である。また、略+10度方向にもピークを有し、このピークの回折効率は0.023%である。本実施例では、−角度方向の不要光のピークを低減させることができるため、全不要光は減少する。
以上のように、本実施例の回折光学素子では、画面外光束が入射した場合、格子壁面に遮光部材を設けることにより、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制される。さらに、低屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の透過光束が遮光部材によって抑制される。このため、不要光が減少することで結像面に到達する不要光が小さくなるため、像性能の低下を抑制することが可能となる。
本実施例の遮光部材20を構成する材料としては、例えば、樹脂にブラックカーボン等の炭素系微粒子や金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩等の金属化合物微粒子や顔料、染料等を分散させた材料が用いられる。また、微細構造により同等の効果をもつ構造やカーボンナノチューブ等を用いてもよい。このとき、回折格子の屈折率、消衰係数に合わせて材料を構成することが好ましい。
遮光部材を構成する材料の屈折率は、2つの回折格子の屈折率のうち低い屈折率(例えば、第1の回折格子11の第1の屈折率)より高い場合に全反射光の抑制効果が大きいため、より好ましい。
また、遮光部材20を構成する材料の消衰係数kが0.001以下の場合、全反射光を抑制させるために膜厚wが厚くなる。このため、第1の回折格子11及び第2の回折格子12の位相差が生じて設計回折効率が劣化するため、好ましくない。一方、遮光部材20を構成する材料の消衰係数kが0.5以上の場合、設計入射角度より上向きの斜入射角度で入射する光束の反射光が増加してフレア光が増加するため、好ましくない。従って、遮光部材20を構成する材料の消衰係数kは、以下の式(1)を満足することが好ましい。
0.001<k<0.5 … (1)
式(1)は、不要光を抑制するため条件式であるが、遮光部材20の効果をより高くするには、遮光部材20を構成する材料の消衰係数kは以下の式(2)を満足することがより好ましい。
0.005<k<0.3 … (2)
次に、本発明の実施例3における回折光学素子について説明する。本実施例において、遮光部材は、互いに異なる複数の材料からなる部材を積層して構成された複数の膜形状構造を有する点で、上記各実施例とは異なる。図7は、本実施例における回折格子部の拡大断面図である。図7に示されるように、本実施例では、不要光を抑制するための手段として、格子壁面に沿って膜形状構造を有する遮光部材21、22、23が第2の回折格子12の格子壁面側から積層して設けられている。それぞれの遮光部材21、22、23は、格子壁面に沿って均一な厚さの薄膜形状構造を有する。遮光部材21、22、23は、3層合わせて、m格子の格子壁面で発生する全反射を防止し、かつ、m’格子の格子壁面で発生する透過光を減少させる機能を有する。遮光部材21を構成する材料は、屈折率n=1.55、消衰係数k=0.03を有する吸収材料で、遮光部材21の幅w1は0.2μmである。遮光部材22を構成する材料は、屈折率n=1.40、消衰係数k=0.09を有する吸収材料で、遮光部材22の幅w2は0.25μmである。遮光部材23を構成する材料は、屈折率n=1.53、消衰係数k=0.03を有する吸収材料で、遮光部材23の幅w3は0.15μmである。このような3層構造の遮光部材21、22、23は、高屈折率媒質側から低屈折率媒質側に斜入射光が入射した場合おける全反射を低減し、低屈折率媒質側から高屈折率媒質側に入射した場合における透過および反射を低減するように設計されている。
ここで、設計入射角度より下向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図8(a)は、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。図8設計次数である+1次回折光の回折効率は91.52%である。残りの不要光は、図8(a)に示されるように不要光となって伝播する。本実施例の構成によれば、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制される。+5度から+15度までの+1回折光を除く比較的低次の回折光は、遮光部材21、22、23の幅w1+w2+w3が実施例1の遮光部材20の幅wよりも厚く、第1の回折格子11及び第2の回折格子12の位相差が生じているために発生している。これらの比較的低次の回折光は、太陽等の高輝度光源が画面外光が入射した場合に、結像面に到達して像性能を低下させることはまれであるため、その影響は小さい。
次に、設計入射角度より上向きに斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図8(b)は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光は94.12%である。残りの不要光は、図8(b)に示されるように不要光となって伝播する。格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、低屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の一部が反射し、残りの透過光束が遮光部材によって抑制されるため、不要光が減少する。
なお、本実施例の構成は、遮光部材の層の数や屈折率、消衰係数、膜厚の各パラメータには限定されず、これらのパラメータを適宜設計することにより不要光を減少させることができる。
次に、本発明の実施例4における回折光学素子について説明する。本実施例は、回折格子材料および格子高さが実施例1〜3と異なる。以下、本実施例における回折光学素子の素子構成および不要光について説明する。本実施例の回折光学部の構成は、図3(a)及び図3(b)に示される実施例1の回折光学部10と同様である。第1の回折格子11の材料としてフッ素アクリル系紫外線硬化樹脂にITO微粒子を混合させた樹脂(nd=1.504、νd=16.3、θgF=0.390、n550=1.511)が用いられる。また第2の回折格子12の材料としては、アクリル系紫外線硬化樹脂にZrO2微粒子を混合させた樹脂(nd=1.567、νd=47.0、θgF=0.569、n550=1.570)が用いられる。格子高さdは9.29μm、設計次数は+1次である。遮光部材20を構成する材料は、屈折率n=1.55、消衰係数k=0.1を有する吸収材料で、遮光部材20の幅wは0.2μmである。
ここで、設計入射角度より下向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図9(a)は、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は96.89%である。残りの不要光は、図9(a)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。本実施例の構成によれば、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制されるため、不要光を減少させることができる。
次に、設計入射角度より上向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図9(b)は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は96.69%である。残りの不要光は、図9(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は略−15度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.029%である。また、略+10度方向にもピークを有し、このピークの回折効率は0.0075%である。本実施例の構成によれば、低屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の一部が反射して残りの透過光束が遮光部材によって抑制されるため、不要光を減少させることできる。
本実施例における回折格子の材料として、樹脂材料および微粒子を分散させた材料が用いられているが、これに限定されるものではない。例えば、樹脂材料等の有機材料、ガラス材料、光学結晶材料、セラミックス材料等を用いてもよい。また、微粒子を分散させる微粒子材料としては、酸化物、金属、セラミックス、複合物、混合物のいずれかの無機微粒子材料を用いてもよく、微粒子材料に限定されるものではない。また、微粒子材料の平均粒子径は、回折光学素子への入射光の波長(使用波長又は設計波長)の1/4以下であることが好ましい。これよりも粒子径が大きくなると、微粒子材料を樹脂材料に混合した際に、レイリー散乱が大きくなる可能性が生じる。また、上記微粒子材料を混合する樹脂材料としては、紫外線硬化樹脂であって、アクリル系、フッ素系、ビニル系、エポキシ系のいずれかの有機樹脂が用いられ、これらの樹脂材料に限定されるものではない。
次に、本発明の実施例5における回折光学素子について説明する。本実施例は、遮光部材の幅が格子壁面(第1の格子壁面、第2の格子壁面)の位置(高さ)に応じて異なっている点で、実施例1〜4とは異なる。すなわち、本実施例の遮光部材は、格子壁面に沿って均一な厚さ(幅)を有していない。図10は、本実施例における回折格子部の拡大断面図である。回折格子を構成する材料、格子高さd、及び、設計次数は、実施例4と同様である。
本実施例の遮光部材24は、格子壁面に沿って均一な膜形状ではなく、回折格子の頂点から、遮光部材の厚さが幅w4まで厚くなる構造を有する。遮光部材24は、m格子の格子壁面で発生する全反射を防止し、かつ、m’格子の格子壁面で発生する透過光を減少させる機能を有する。遮光部材24を構成する材料は屈折率n=1.55、消衰係数k=0.1を有する吸収材料であり、遮光部材24の幅w4は0.2μmである。
ここで、設計入射角度より下向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図11(a)は、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は97.28%である。残りの不要光は、図11(a)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は略−10度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.0046%である。本実施例の構成によれば、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制されるため、不要光を減少させることができる。
次に、設計入射角度より上向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図11(b)は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は96.66%である。残りの不要光は、図11(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は略−15度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.042%である。また略+10度方向にもピークを有し、このピークの回折効率は0.0061%である。本実施例の構成によれば、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束が透過するのを抑制するため、不要光を減少させることができる。
本実施例において、遮光部材24は第2の回折格子12の格子壁面に対して傾いて設けられているが、これに限定されるものではない。遮光部材24を第1の回折格子11の格子壁面に対して傾いて設けてもよい。また本実施例において、遮光部材24の幅(厚さ)は入射側が薄く、射出側が厚い構造となっているが、これに限定されるものではない。入射側が厚く、射出側が薄い構造でも構わない。また、格子壁面の位置によって遮光部材24の厚さが任意に変化した構造であっても同様の効果が得られる。
次に、本発明の実施例6における回折光学素子について説明する。本実施例の遮光部材25は、格子壁面の所定の位置をからその幅(厚さ)が徐々に厚くなるように構成されている。図12は、本実施例における回折格子部の拡大断面図である。回折格子を構成する材料、格子高さd、及び、設計次数は、実施例4、5と同様である。
本実施例の遮光部材25は、格子壁面に沿って均一な膜形状ではなく、回折格子の格子壁面の高さd5の位置から、遮光部材25が幅w5まで厚くなる構造を有する。遮光部材25は、m格子の格子壁面で発生する全反射を防止し、かつ、m’格子の格子壁面で発生する透過光を減少させる機能を有する。遮光部材25を構成する材料は屈折率n=1.55、消衰係数k=0.1を有する吸収材料であり、高さd5は6.96μm、幅w5は0.2μmとする。
ここで、設計入射角度より下向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図13(a)は、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は97.36%である。残りの不要光は、図13(a)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は略−10度方向にピークを有し、ピークの回折効率は0.0083%である。本実施例の構成によっても、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射を抑制し、不要光を減少させることができる。
次に、設計入射角度より上向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図13(b)は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は96.25%である。残りの不要光は、図13(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は略−15度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.052%である。また略+10度方向にもピークを有し、このピークの回折効率は0.0057%である。本実施例の構成によれば、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束が透過するのを抑制し、不要光を減少させることができる。また、回折光学素子の製造上の製造公差、量産性やコスト等を考慮して製造手段を選択することができる。
本実施例において、格子高さdに対する遮光部材の高さd5の割合が小さくなるほど、遮光部材25は小さくなる。格子高さdに対する遮光部材の厚さd5の割合が50%以上とすることで、十分な不要光の抑制効果が得られる。また、実施例6では第2の回折格子12の格子壁面に対して遮光部材25が傾いて設けられているが、逆側の第1の回折格子11の格子壁面に対して遮光部材25が傾いて設けられていても効果は同様であり、これに限定されない。また、実施例6で遮光部材25の構造が入射側が薄く、射出側が厚い構造となっているが、これに限定されず、入射側が厚く、射出側が薄い構造でも構わない。また、格子壁面の位置によって遮光部材25の厚さが任意に変化した構造であっても同様の効果が得られるため、これらの構造に限定されない。
次に、本発明の実施例7における回折光学素子について説明する。本実施例の回折光学素子では、遮光部材を構成する材料およびその幅が実施例1、2とは異なる。本実施例の遮光部材を構成する材料は、屈折率n=1.524、消衰係数k=0.1を有する吸収材料で、遮光部材20の幅wは0.1μmである。回折光学素子の他の構成は実施例1、2と同様であるため、それらの説明は省略する。
まず、設計入射角度より下向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図14(a)は、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は95.28%である。残りの不要光は、図14(a)に示されるように不要光となって伝播している。本実施例は、実施例1と同様に、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、高屈折率媒質側(第2の屈折率を有する第2の回折格子12)から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制されていることを意味する。この結果、不要光が大幅に減少する。
次に、設計入射角度より上向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図14(b)は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は95.37%である。残りの不要光は、図14(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は、略−14度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.069%である。また、略+10度方向にもピークを有し、このピークの回折効率は0.013%である。本実施例は、実施例1と同様に、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、低屈折率媒質側(第1の屈折率を有する第1の回折格子11)から格子壁面に入射した光束の一部が遮光部材20によって抑制される。この結果、不要光が減少する。
以上のように、本実施例の回折光学素子において、斜入射光束が入射した場合、格子壁面に遮光部材を設けることにより、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射光が抑制される。さらに、低屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の透過光が遮光部材によって抑制される。このように、遮光部材は格子壁面によって分離される高屈折率媒質と低屈折率媒質の界面で発生する全反射光および透過光を抑制する。本実施例の回折格子によれば、不要光を減少させることができるため、結像面に到達する不要光が小さくなり、像性能の低下を抑制することが可能となる。
本実施例の遮光部材を構成する材料の屈折率は、2つの回折格子の屈折率のうち高い屈折率(例えば、第2の回折格子12の屈折率)とほぼ同じである。このため、図15に示されるように、設計入射角度より下向きの斜入射角度で格子壁面に入射する光束は、比較例のように全反射せずに遮光部材内部に侵入する。この結果、遮光部材内部でより吸収され、不要光が大幅に減少することになる。さらに、遮光部材を構成する材料の屈折率は、2つの回折格子の屈折率のうち低い屈折率(例えば、第1の回折格子11の屈折率)より高い。このため、遮光部材内部に侵入した光束は、低い屈折率との界面で全反射し、再度遮光部材内部に留まることになり、効率良く格子壁面に入射する光束を吸収することができる。
次に、本発明の実施例8における回折光学素子について説明する。本実施例の回折光学素子では、遮光部材を構成する材料およびその幅が実施例1、2、7とは異なる。本実施例の遮光部材を構成する材料は、屈折率n=1.6、消衰係数k=0.1を有する吸収材料で、遮光部材20の幅wは0.1μmである。回折光学素子の他の構成は実施例1、2と同様であるため、それらの説明は省略する。
まず、設計入射角度より下向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図16(a)は、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は95.39%である。残りの不要光は、図16(a)に示されるように、特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播している。この不要光は、略−10度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.0055%である。本実施例は、実施例1と同様に、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、高屈折率媒質側(第2の屈折率を有する第2の回折格子12)から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制されていることを意味する。この結果、不要光が大幅に減少する。
次に、設計入射角度より上向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図16(b)は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は91.15%である。残りの不要光は、図16(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は、略−13度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.065%である。また、略+10度方向にもピークを有し、このピークの回折効率は0.016%である。本実施例は実施例1と同様に、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、低屈折率媒質側(第1の屈折率を有する第1の回折格子11)から格子壁面に入射した光束の一部が遮光部材20によって抑制される。この結果、不要光が減少する。
以上のように、本実施例の回折光学素子において、斜入射光束が入射した場合、格子壁面に遮光部材を設けることにより、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射光が抑制される。さらに、低屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の透過光が遮光部材によって抑制される。このように、遮光部材は格子壁面によって分離される高屈折率媒質と低屈折率媒質の界面で発生する全反射光および透過光を抑制する。本実施例の回折格子によれば、不要光を減少させることができるため、結像面に到達する不要光が小さくなり、像性能の低下を抑制することが可能となる。
本実施例の遮光部材を構成する材料の屈折率は、2つの回折格子の屈折率のうち高い屈折率(例えば、第2の回折格子12の屈折率)より高い。このため、実施例7の図15と同様に、設計入射角度より下向きの斜入射角度で格子壁面に入射する光束は、比較例のように全反射せずに遮光部材内部に侵入する。この結果、遮光部材内部でより吸収され、不要光が大幅に減少することになる。さらに、遮光部材を構成する材料の屈折率は、2つの回折格子の屈折率のうち低い屈折率(例えば、第1の回折格子11の屈折率)より高いため、遮光部材内部に侵入した光束は、低い屈折率との界面で全反射し、再度遮光部材内部に留まることになる。つまり、2つの回折格子と遮光部材が導波路構造の関係になっており、効率良く格子壁面に入射する光束を吸収することができる。
次に、本発明の実施例9における回折光学素子について説明する。本実施例の回折光学素子では、遮光部材を構成する材料およびその幅が実施例1、2、7、8とは異なる。本実施例の遮光部材を構成する材料は、屈折率n=1.65、消衰係数k=0.1を有する吸収材料で、遮光部材20の幅wは0.1μmである。回折光学素子の他の構成は実施例1、2と同様であるため、それらの説明は省略する。
まず、設計入射角度より下向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図17(a)は、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は95.31%である。残りの不要光は、図17(a)に示されるように、特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播している。この不要光は、略−10度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.015%である。本実施例は、実施例1と同様に、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、高屈折率媒質側(第2の屈折率を有する第2の回折格子12)から格子壁面に入射した光束の全反射が抑制されていることを意味する。この結果、不要光が大幅に減少する。
次に、設計入射角度より上向きの斜入射角度で回折光学素子に入射する光束を想定する。図17(b)は、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率は95.06%である。残りの不要光は、図17(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は、略−13度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.061%である。また、略+10度方向にもピークを有し、このピークの回折効率は0.019%である。本実施例は実施例1と同様に、格子壁面に設けた薄膜形状の遮光部材によって、低屈折率媒質側(第1の屈折率を有する第1の回折格子11)から格子壁面に入射した光束の一部が遮光部材20によって抑制される。この結果、不要光が減少する。
以上のように、本実施例の回折光学素子において、斜入射光束が入射した場合、格子壁面に遮光部材を設けることにより、高屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の全反射光が抑制される。さらに、低屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の透過光が遮光部材によって抑制される。このように、遮光部材は格子壁面によって分離される高屈折率媒質と低屈折率媒質の界面で発生する全反射光および透過光を抑制する。本実施例の回折格子によれば、不要光を減少させることができるため、結像面に到達する不要光が小さくなり、像性能の低下を抑制することが可能となる。
本実施例の遮光部材を構成する材料の屈折率は、2つの回折格子の屈折率のうち高い屈折率(例えば、第2の回折格子12の屈折率)より高い。このため、実施例8と同様に効率良く格子壁面に入射する光束を吸収することができる。
実施例7〜9から、遮光部材の屈折率nd3と回折格子の屈折率nd2との関係が以下の式を満足することが好ましいことを見出した。
|nd3−nd2| < 0.2 … (3)
ただし、nd3は遮光部材のd線での屈折率、nd2は2つの回折格子の屈折率のうちの高い屈折率である。この関係を満たさない場合、2つの回折格子の屈折率のうち高い屈折率と遮光部材の界面の反射が大きくなるため、遮光部材で吸収することが困難となり好ましくない。
以上述べた実施例1〜9について、表1を参照して説明する。表1は、実施例1〜9の回折光学素子に用いられる第1の回折格子の材料及びその材料のd線での屈折率nd1、アッベ数vd1、部分分散比θgF1、波長550nmの屈折率n1_550を示す。また、第2の回折格子の材料およびその材料のd線での屈折率nd2、アッベ数vd2、波長550nmの屈折率nd2_550を示す。さらに、実施例1〜6の回折光学素子の格子高さd、遮光部材を構成する材料の屈折率、消衰係数、遮光部材の膜形状を示す。
表1より、遮光部材を構成する材料の消衰係数kは0.001より大きく0.5より小さいことが好ましい。さらに遮光部材の効果をより高めるには、遮光部材を構成する材料の消衰係数kは0.005より大きく0.3より小さいことがより好ましい。また、遮光部材を構成する材料の屈折率は回折格子を構成する材料のうちの低い材料より高いほうがより好ましい。また、遮光部材を構成する材料の屈折率と回折格子を構成する材料のうちの高い材料の屈折率との差の絶対値は、0.2より小さいことが好ましい。また、遮光部材は格子壁面に均一な厚さの膜形状であっても、回折格子の頂点から厚くなる構造、壁面部の途中の位置から厚くなる構造でもよいが、格子壁面全域に形成されるほうがより効果が大きく、より好ましい。
また、遮光部材の幅が大きくなると、第1の回折格子と第2の回折格子の位相の不整合領域が拡大し、比較的低次数の不要回折光の回折効率が増加し、設計次数の回折効率が低下する。この薄膜の幅が大きくなると像性能が無視できないほど低下してしまう。このため、遮光部材全体の幅Wと格子ピッチPとの関係は、以下の式を満足すればよいことを見出した。
W/P < 0.07 … (4)
ここで、遮光部材全体の幅Wは実施例3のような多層膜の場合は各薄膜の和、実施例5、6のような厚層化する場合は最も幅が厚い部分の幅となる。また、式(4)の左辺が0.03より小さいほうが、第1の回折格子と第2の回折格子の位相の不整合領域が小さいため、より好ましい。
次に、本発明の実施例10における回折光学素子について説明する。本実施例において、遮光部材と格子壁面の界面の形状が異なる点で、上記各実施例とは異なる。図18は、本実施例における回折格子部の拡大断面図である。図18に示されるように、本実施例では、2つの回折格子のうち屈折率の大きい格子(第2の回折格子12)と遮光部材との界面の形状が波長以下の微細凹凸形状を有する。遮光部材は上記実施例の何れかの材料または構造を用いることができ、図18では単一膜形状の場合を示している。
波長以下の微細凹凸形状は、屈折率が連続的に変化する媒質として動作し、特に消衰係数も連続的に変化する。消衰係数が異なる界面の反射も抑制できるため、2つの回折格子のうち屈折率の大きい格子(第2の回折格子12)と遮光部材との界面反射を低減することができる。このため、設計入射角度より下向きの斜入射角度で格子壁面に入射する光束は界面で反射することなく遮光部材内部に侵入するため、効率良く格子壁面に入射する光束を吸収することができる。
微細凹凸形状のピッチpは、1次反射回折光が発生することは好ましくない。このため、2つの回折格子のうち屈折率の大きい格子の使用波長帯域の最短波長における屈折率n2、1次反射回折光の回折角θ2、入射角θ1、使用波長帯域の最短波長λの関係は、以下の回折の式になる。
n2(sinθ2+sinθ1)=λ/P
これを、式変形すると以下のように表される。
sinθ2=λ/(n2×p)−sinθ1
反射回折光が第2回折格子の方向(射出側方向)に回折しなければよく、また、sinθ1を想定している画面外光の入射角度(入射角度は+10度だが、微細凹凸形状に対しての入射角度は+80度になる)から近似すると、以下のように表される。
λ/n2×p−0.98 < 0
これより、微細凹凸形状のピッチpは、以下の関係を満たすことが好ましい。
p < 0.98×λ/n2 … (5)
なお、本実施例の使用波長帯域は可視波長帯域のため、使用波長帯域の最短波長λは400nmである。また、微細凹凸形状のピッチpは、格子壁面全体で均一ピッチでなく、異なっていてもよい。
また、本実施例において、微細凹凸構造の製造方法は特に限定されない。一例として、第2の回折格子12の製造の際に、格子壁面部に微細凹凸を設けた金型を用いて、回折格子を成形する方法がある。また、微細凹凸構造のない第2の回折格子12を製造した後に格子壁面部のみを微細凹凸加工を施してもよい。格子壁面部に微細凹凸を設けた第2の回折格子12を製造した後、格子壁面にのみに上に示した手法を例に遮光部材を形成することにより製造することができる。
また、図19に示されるように、2つの回折格子のうち屈折率の大きい格子(第2の回折格子12)と遮光部材と間の媒質が波長以下の微細凹凸形状を有する場合にも、界面反射を低減することができる。この場合の微細凹凸形状を有する媒質の作製方法は、斜め方向からの選択的蒸着、マスクパターンを用いた選択的蒸着、インクジェットプロセスを用いた直接形成、犠牲層を用いた選択形成する、等の製造方法によって形成することができる。
また実施例1〜10では回折光学素子として、2つの回折格子を密着配置すると共に、各回折格子を構成する材料や回折格子の高さを適切に設定することにより構成された密着2層DOEが用いられている。ただし、これに限定されるものではなく、さらに回折格子を積層した積層DOEに応用可能である。
また、前記回折光学素子の遮光部材が中心領域から周辺領域で変化させることで最も適した回折光学素子を得ることができる。また、上記各実施例では、格子壁面に遮光部材を設けていることに加えて、設計次数を+1次以外の次数にする、格子壁面角度をシフトさせる、格子壁面形状を階段状にさせる等の組合せで使用することもできる。
(比較例1)
以下、実施例1乃至3および7乃至9に対する比較例1としての回折光学素子について説明する。比較例1としての回折光学素子は、回折格子の材料および格子高さは実施例1〜3と同様で、格子壁面部に不要光抑制手段が設けられていない場合である。
この回折光学素子の設計入射角度より下向きの斜入射角度で入射する光束を想定して、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図22に示す。図22(a)は、設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。図22(b)は、図22(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。図22(a)に示されるように、設計次数である+1次回折光の回折効率が集中し、回折効率は95.62%で設計入射角度である0度から傾いているため100%より低下している。残りの不要光は、図22(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播している。この不要光は、略−10度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.038%である。この伝播方向は格子壁面に入射する画面外入射角度+10度光束の成分が全反射にして伝播する射出方向−10度方向と略等しい。格子壁面に対しては、高屈折率材料側から低屈折率材料側に臨界角76.7度以上の+80度で入射するため、全反射が発生している。また、この不要光は、略−10度方向のピークから高角度範囲に広がっている。この現象は、図23に示されるように、入射光束のうち格子壁面付近に入射する成分b’が格子壁面において全反射して−10度方向に伝播し、さらに全反射射出方向中心に不要光が広がって伝播していると考えらえる。この不要光の回折光は像面に到達するため、像性能の低下を招く。
次に、この回折光学素子の設計入射角度より上向きの斜入射角度で入射する光束を想定して、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図24に示す。図24(a)は、設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図24(b)は、図24(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。図24(a)に示されるように、設計次数である+1次回折光の回折効率が集中し、回折効率は95.48%で設計入射角度である0度から傾いているため100%より低下している。残りの不要光は、図24(b)に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播している。この不要光は、略−15度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.112%である。また、略+10度方向にも小さなピークを有し、このピークの回折効率は0.0033%である。この伝播方向は、格子壁面に入射する画面外入射角度−10度光束の透過光の射出方向−16.6度と反射光の射出方向+9.5度に略等しい。また、格子壁面に対しては、低屈折率材料側から高屈折率材料側に+80度で入射するため、透過光の透過率は94%、反射光の反射光は6%であり、略−15度方向のピークが大きく、略+10度方向のピークが小さいことと対応している。また、この不要光は、ピークから高角度範囲に広がっている。これより、図25に示されるように、入射光束のうち格子壁面付近に入射する成分c’が格子壁面において透過光と反射光に別れて伝播し、さらに各ピークを中心に広がって伝播していると考えられる。特に、透過光による不要光の回折光が大きく、この不要光が像面に到達するため、像性能の低下を招く。
比較例としての回折光学素子を適用した光学系において、画面外入射角略10度の光束が入射した場合、図26に示すm格子については格子壁面の全反射による不要光が発生し、m’格子については格子壁面の透過光による不要光が発生する。これらは、像性能を低下させる要因となる。実際に回折光学素子及び光学系を構成して実写したところ、像面に不要光が到達して像性能の低下が確認された。
(比較例2)
以下、実施例4乃至6に対する比較例2としての回折光学素子について説明する。比較例2としての回折光学素子は、回折格子の材料および格子高さは実施例4〜6と同様で、格子壁面部に不要光抑制手段が設けられていない場合である。
この回折光学素子の設計入射角度より下向きの斜入射角度で入射する光束を想定して、入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図27に示す。図27は縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率が集中し、回折効率は97.11%で設計入射角度である0度から傾いているため100%より低下している。残りの不要光は、図27に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播している。この不要光は、略−10度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.025%である。この伝播方向は格子壁面に入射する画面外入射角度+10度光束の成分が全反射にして伝播する射出方向−10度方向と略等しい。格子壁面に対しては、高屈折率材料側から低屈折率材料側に臨界角74.2度以上の+80度で入射するため、全反射が発生している。また、この不要光は、略−10度方向のピークから高角度範囲に広がっている。この現象は、図23に示されるように、入射光束のうち格子壁面付近に入射する成分b’が格子壁面において全反射して−10度方向に伝播し、さらに全反射射出方向中心に不要光が広がって伝播していると考えらえる。この不要光の回折光は像面に到達するため、像性能の低下を招く。
次に、この回折光学素子の設計入射角度より上向きの斜入射角度で入射する光束を想定して、入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図28に示す。図28は、縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。設計次数である+1次回折光の回折効率が集中し、回折効率は96.97%で設計入射角度である0度から傾いているため100%より低下している。残りの不要光は、図28に示されるように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播している。この不要光は、略−17度方向にピークを有し、このピークの回折効率は0.056%である。また、略+10度方向にも小さなピークを有し、このピークの回折効率は0.0024%である。この伝播方向は、格子壁面に入射する画面外入射角度−10度光束の透過光の射出方向−18.6度と反射光の射出方向+9.5度に略等しい。また、格子壁面に対しては、低屈折率材料側から高屈折率材料側に+80度で入射するため、透過光の透過率は91%、反射光の反射光は9%であり、略−17度方向のピークが大きく、略+10度方向のピークが小さいことと対応している。また、この不要光は、ピークから高角度範囲に広がっている。これより、図25に示されるように、入射光束のうち格子壁面付近に入射する成分c’が格子壁面において透過光と反射光に別れて伝播し、さらに各ピークを中心に広がって伝播していると考えられる。特に、透過光による不要光の回折光が大きく、この不要光が像面に到達するため、像性能の低下を招く。
比較例としての回折光学素子を適用した光学系において、画面外入射角略10度の光束が入射した場合、図26に示すm格子については格子壁面の全反射による不要光が発生し、m’格子については格子壁面の透過光による不要光が発生する。これらは、像性能を低下させる要因となる。実際に回折光学素子及び光学系を構成して実写したところ、像面に不要光が到達して像性能の低下が確認された。
次に、本発明の実施例11について説明する。図20は、カメラ等の撮影光学系(光学系)の概略断面図である。図20において、101は撮影レンズで、前述した各実施例の回折光学素子1、絞り40、及び、屈折光学素子42を備える。41は結像面であるフィルムまたはCCD等の結像面である。特に、回折光学素子1の各回折格子部に入射する光束の入射角の分布の重心(図形の重心と同じ)が包絡面の回折格子の中心での面法線に対し、回折格子部の中心よりに分布するようにしている。このような光学系に本実施例の回折光学素子を適用すれば、格子壁面に光束が入射した場合でも、不要光の発生が大幅に改善されているため、フレアが少なく解像力も高い高性能な撮影レンズが得られる。また各実施例の回折光学素子は簡便に製造可能であるため、量産性に優れた安価な光学系を提供できる。図20では、前玉のレンズの貼り合せ面に回折光学素子1を設けたが、これに限定するものではなく、レンズ表面に設けても良く、また、撮影レンズ内に複数の回折光学素子を用いてもよい。また本実施例では、光学機器としてのカメラの撮影レンズの場合を示したが、これに限定するものではない。本実施例の光学系は、ビデオカメラの撮影レンズ、事務機のイメージスキャナーや、デジタル複写機のリーダーレンズなど広波長域で使用される結像光学系(光学機器)にも適用可能である。
次に、本発明の実施例12について説明する。図21は、双眼鏡等の観察光学系(光学系)の概略断面図である。図21において、1は回折光学素子である対物レンズ、104は像を正立させるための像反転手段としてのプリズム、105は接眼レンズ(屈折光学素子)、106は評価面(瞳面)である。回折光学素子1は、対物レンズの結像面41での色収差等を補正するために用いられる。各実施例の回折光学素子を適用すれば、格子壁面に光束が入射した場合でも、不要光の発生が大幅に改善されているので、フレアが少なく解像力も高い高性能な対物レンズが得られる。また、各実施例の回折光学素子は、簡便に製造可能であるため、量産性に優れた安価な観察光学系を提供できる。本実施例では、対物レンズ1に回折光学素子を形成した場合を示したが、これに限定するものではなく、プリズム表面や接眼レンズ内の位置であっても同様の効果が得られる。結像面より物体側に設けると、対物レンズのみでの色収差低減効果があるため、肉眼の観察系の場合すくなくとも対物レンズ側に設けることが望ましい。また本実施例では、光学機器として双眼鏡の場合を示したが、これに限定されるものではない。光学機器として、地上望遠鏡や天体観測用望遠鏡などであってもよく、またレンズシャッターカメラやビデオカメラなどの光学式のファインダーにも適用可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
1:回折光学素子
11:第1の回折格子
12:第2の回折格子
11a、12a:格子面
11b、12b:格子壁面
20、21、22、23、24、25:遮光部材

Claims (13)

  1. 第1の格子面と第1の格子壁面とを備えた第1の回折格子と、
    前記第1の格子壁面に配置された遮光部材と、
    第2の格子面と第2の格子壁面とを備え、該第2の格子面が前記第1の格子面と接し、
    かつ、該第2の格子壁面が前記遮光部材と接するように配置された第2の回折格子と、を有し、
    前記遮光部材を構成する材料の消衰係数kが以下の式を満たすことを特徴とする回折光学素子。
    0.001<k<0.5
  2. 前記第1の回折格子は第1の屈折率を有し、
    前記第2の回折格子は、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有し、
    前記遮光部材は、前記第1の格子壁面と前記第2の格子壁面における入射光束の全反射光および透過光を抑制させることを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
  3. 前記遮光部材は、前記第1の格子壁面と前記第2の格子壁面との間に配置された膜形状構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回折光学素子。
  4. 前記遮光部材を構成する材料の屈折率は、前記第1の回折格子または前記第2の回折格子を構成する材料のうち低い屈折率を有する材料の該屈折率より高いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  5. 前記遮光部材を構成する材料のd線の屈折率nd3、及び、前記第1の回折格子または前記第2の回折格子を構成する材料のうち高い屈折率を有する材料のd線の屈折率nd2は、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回折光学素子。
    |nd3−nd2| < 0.2
  6. 前記遮光部材の全体の幅W及び格子ピッチPは、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回折光学素子。
    W/P < 0.07
  7. 前記遮光部材は、互いに異なる複数の材料からなる部材を積層して構成された複数の膜形状構造であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  8. 前記遮光部材の幅は、前記第1の格子壁面と前記第2の格子壁面の位置に応じて異なっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  9. 前記第1の回折格子または前記第2の回折格子を構成する材料のうち高い屈折率を有する回折格子の格子壁面と前記遮光部材との界面に、波長以下の微細構造が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  10. 前記第1の回折格子または前記第2の回折格子を構成する材料のうち高い屈折率を有する回折格子の格子壁面と前記遮光部材との間の媒質には、波長以下の微細構造が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  11. 前記微細構造のピッチp、前記第1の回折格子または前記第2の回折格子を構成する材料のうち高い屈折率を有する材料の使用波長帯域の最短波長の屈折率n2、及び使用波長帯域の最短波長λが以下の関係を満たすことを特徴とする請求項9又は10に記載の回折光学素子。
    p < 0.98×λ/n2
  12. 屈折光学素子と、
    請求項1乃至11のいずれか1項に記載の回折光学素子と、を有することを特徴とする光学系。
  13. 請求項12に記載の光学系を有することを特徴とする光学機器。
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