JP2019074551A - 回折光学素子、光学系、および、撮像装置 - Google Patents

回折光学素子、光学系、および、撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】径方向の位置に応じて膜の特性を適切に設定することにより光学性能を向上させた回折光学素子を提供する。【解決手段】回折光学素子(1)は、第1の格子面(8a)および第1の格子壁面(8b)を備えた第1の回折格子(8)と、第2の格子面(9a)および第2の格子壁面(9b)を備えた第2の回折格子(9)と、第1の格子壁面と第2の格子壁面とに接する薄膜(10)とを有し、設計波長λd(nm)の光に対して、第1の回折格子および第2の回折格子のそれぞれの屈折率n1、n2、薄膜の有効径内における屈折率nha、第m輪帯(m=1、2、…)における薄膜の屈折率nhm及び膜厚dm(nm)、第m輪帯における薄膜と第1の回折格子との位相差Pm=(nhm−n1)×dm/λd、位相差Pmの最大値Pmax、有効径における薄膜と第1の回折格子との位相差Peは、所定の条件を満足する。【選択図】図2

Description

本発明は、光学系に適して用いられる回折光学素子に関する。
特許文献1には、回折格子の壁面部に格子材料とは異なる材料層を設けることにより、設計入射光束とは異なる斜入射光束が入射したときに発生する不要光を低減した回折光学素子が開示されている。また、特許文献2には、回折格子の壁面部に格子材料とは異なる材料層を設けることにより、回折効率を向上させた回折光学素子が開示されている。
特開2014−170109号公報 国際公開第2011/099550号
しかしながら、特許文献1および特許文献2には、回折光学素子の径方向の位置に応じて壁面部の膜の特性を適切に設定することが開示されていない。このため、回折光学素子の光学性能を向上させることができない。
そこで本発明は、径方向の位置に応じて膜の特性を適切に設定することにより光学性能を向上させた回折光学素子、光学系、および、撮像装置を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての回折光学素子は、第1の格子面および第1の格子壁面を備えた第1の回折格子と、第2の格子面および第2の格子壁面を備えた第2の回折格子と、前記第1の格子壁面と前記第2の格子壁面とに接する薄膜とを有し、設計波長λd(nm)の光に対して、第1の回折格子および第2の回折格子のそれぞれの屈折率n1、n2、薄膜の有効径内における屈折率nha、第m輪帯(m=1、2、…)における薄膜の屈折率nhm及び膜厚dm(nm)、第m輪帯における薄膜と第1の回折格子との位相差Pm=(nhm−n1)×dm/λd、位相差Pmの最大値Pmax、前記有効径における前記薄膜と前記第1の回折格子との位相差Peは、所定の条件を満足する。
本発明の他の側面としての光学系は、前記回折光学素子を有し、最も物体側の面から前記回折光学素子の回折面までの距離Ld、および、前記最も物体側の面の光線有効径E0は、所定の条件を満足する。
本発明の他の側面としての撮像装置は、前記光学系と、前記光学系により形成された像を受光する撮像素子とを有する。
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
本発明によれば、径方向の位置に応じて膜の特性を適切に設定することにより光学性能を向上させた回折光学素子、光学系、および、撮像装置を提供することができる。
実施例1における回折光学素子の正面図および側面図である。 実施例1における回折光学素子の部分断面図である。 実施例1における回折格子へ斜入射光線が入射している状態を示す断面図である。 実施例1における回折格子へ斜入射光線が入射した際の回折効率を示す図である。 比較例としての回折格子へ斜入射光線が入射した際の回折効率を示す図である。 実施例1における回折格子の壁面誘電体膜の特性を示す図である。 実施例2における回折光学素子の正面図および側面図である。 実施例2における回折光学素子の部分断面図である。 実施例2における回折格子の壁面誘電体膜の特性を示す図である。 実施例3における回折格子の壁面誘電体膜の特性を示す図である。 実施例4における回折光学素子の部分断面図である。 実施例5における光学系の光路図である。 実施例6における光学系の光路図である。 実施例7における観察光学系の構成図である。 実施例8における撮像装置の概略図である。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1および図2を参照して、本発明の実施例1における回折光学素子の構成について説明する。図1(a)は、本実施例の回折光学素子1の正面図、図1(b)は回折光学素子1の側面図である。図2は、回折光学素子1を図1(a)中のA−A’線で切断したときの断面形状の一部を拡大した部分拡大図である。ただし、図2は格子深さ方向にデフォルメされた図として示されている。
図1および図2に示されるように、回折光学素子1は、第1の素子部2と第2の素子部3とを備えて構成される。また、第1の回折格子8と第2の回折格子9は、誘電体薄膜10を挟んで密着して積層されている。図2に示されるように、第1の素子部2は、第1の透明基板4と第1の格子ベース部6と第1の回折格子8とを備えて構成される。第1の回折格子8は第1の格子ベース部6と一体的に形成されており、第1の格子ベース部6と第1の回折格子8は第1の格子形成層を構成する。第2の素子部3は、第2の透明基板5と第2の格子ベース部7と第2の回折格子9とを備えて構成される。第2の回折格子9は第2の格子ベース部7と一体的に形成されており、第2の格子ベース部7と第2の回折格子9は第2の格子形成層を構成する。第1の回折格子8と第2の回折格子9は、第1の回折格子8の格子斜面(第1の格子面)8aと第2の回折格子9の格子斜面(第2の格子面)9aとを互いに密着して積層されている。第1の回折格子8の格子壁面(第1の格子壁面)8bと第2の回折格子9の格子壁面(第2の格子壁面)9bとの間には、誘電体薄膜(薄膜)10が設けられている。誘電体薄膜10は、格子壁面8bおよび格子壁面9bの両方と接している。
第1の素子部2および第2の素子部3の全体で、1つの回折光学素子1として作用する。第1の回折格子8および第2の回折格子9は、光軸Oを中心とした同心円状の格子形状を有し、径方向における格子ピッチが変化することによりレンズ作用を有する。本実施例において、回折光学素子1に入射させる光の波長領域、すなわち使用波長領域は可視領域であり、第1の回折格子8および第2の回折格子9を構成する材料および格子厚さは、可視領域全体で1次の回折光の回折効率が高くなるように選択される。
次に、回折光学素子1の具体的な構成について説明する。図2に示される回折光学素子1において、第1の回折格子8を形成する第1の材料として、アクリル系樹脂にZrO微粒子を混合させた樹脂(Nd=1.619、N55=1.6216、νd=44.3、θgF=0.569)が用いられる。一方、第2の回折格子9を形成する第2の材料として、アクリル系樹脂にITO微粒子を混合させた樹脂(Nd=1.565、N55=1.5718、νd=19.2、θgF=0.425)が用いられる。
格子壁面部の誘電体薄膜10としては、AlとZrOの混合材料の薄膜が用いられており、格子壁面上の膜厚(誘電体薄膜10の膜厚)は、回折光学素子1の径方向における位置に応じて変化する。また、回折光学素子1の径方向における位置に応じて屈折率が変化する。なお各実施例において、アッベ数νdおよび部分分散比θgFのそれぞれの定義は、一般に用いられる定義と同じである。すなわち、フラウンホーファー線のg線、F線、d線、C線に対する屈折率をそれぞれNg、NF、Nd、NCとするとき、アッベ数νdおよび部分分散比θgFはそれぞれ以下の式(a)、(b)で表される。
νd=(Nd−1)/(NF−NC) … (a)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC) … (b)
N55は波長550nmにおける屈折率である。第1の格子ベース部6の厚さは40μm、第2の格子ベース部7の厚さは2μm、回折ピッチPは100〜3000μm、格子高さd1は10.96〜11.00μmである。
次に、本実施例の回折光学素子1の位相差と回折効率との関係について説明する。本実施例の回折光学素子1において、波長λの場合に回折次数mの回折光の回折効率が最大となる条件は、光路長差Φ(λ)が以下の条件式(c)を満足することである。
Φ(λ)=−(n02−n01)×d1=mλ … (c)
条件式(c)において、n01は第1の回折格子8を形成する材料の波長λの光に対する屈折率、n02は第2の回折格子9を形成する材料の波長λの光に対する屈折率である。d1は第1の回折格子8および第2の回折格子9のそれぞれの格子厚さである。
図2中の0次回折光から下向きに回折する光の回折次数を負の回折次数、0次回折光から上向きに回折する光の回折次数を正の回折次数とする。このとき、図2に示されるような入射側の第1の回折格子8の格子厚さが図2中の下から上に増加する格子形状を有する回折格子の場合、条件式(c)における格子厚d1の符号は、正となる。また、任意の波長λでの回折効率η(λ)は、以下の式(d)で表すことができる。
η(λ)=sinc〔π{m−Φ(λ)/λ}〕 … (d)
式(d)において、mは評価すべき回折光の次数、Φ(λ)は波長λの光に対する回折光学素子1の1つの単位格子における光路長差である。また、sinc(x)は、{sin(x)/x}で表される関数である。なお、本実施例の回折光学素子1の設計波長は550nmである。本実施例の回折光学素子1において、格子高さd1=10.96μmのときに視波長域で最も回折効率が高い状態となる。
本実施例において、第1の回折格子8および第2の回折格子9は互いに異なる材料により形成されている。第2の回折格子9は低屈折率高分散材料から構成され、第1の回折格子8は第2の回折格子9よりも高い屈折率を有する高屈折率低分散材料から構成されている。以下の条件式(1)、(2)、および(3)を満足することにより、高い回折効率を得ることができる。
νd1>35 … (1)
νd2<25 … (2)
0.960≦(n1d−n2d)×d/(m×λd)≦1.040 … (3)
条件式(1)〜(3)において、d線における第1の回折格子8および第2の回折格子9を構成する材料の屈折率をそれぞれn1d、n2d、アッべ数をνd1、νd2、格子高さをd、設計次数をmとする。
次に、本実施例における回折格子の壁面部に設けられた誘電体薄膜10について説明する。誘電体薄膜10は、格子壁面に沿って略均一な厚さを有し、第1の回折格子8と第2の回折格子9との境界面の少なくとも一部に配置されている。本実施例において、誘電体薄膜10は、第1の回折格子8の壁面部と第2の回折格子9の壁面部との間に密着接合されている。誘電体薄膜10は、格子壁面付近に入射する光束がその内部に閉じ込められ、光導波路になっている。
回折光学素子1に光導波路効果を持たせるには、設計波長λd(nm)の光に対して、誘電体薄膜10の有効径内における屈折率(平均屈折率)nha、第1の回折格子8および第2の回折格子9の屈折率n1、n2が以下の条件式(4)を満足することが好ましい。ここで有効径とは、光束が通過する領域の光軸Oからの最大径である。
n2<n1<nha … (4)
条件式(4)に加えて、比屈折率差Δが以下の条件式(5)を満足することが好ましい。これにより、設計入射角度で入射する光束の設計次数の回折効率を向上し、設計次数±1次の回折効率を低減させ、かつ斜入射角度で入射する光束による不要光のうち、結像面に到達する不要光を低減させ、かつ波長特性および偏光特性を低減することができる。
0.005<Δ<0.090 … (5)
ただし、比屈折率差Δは以下の式(5a)より求められる。
条件式(5)の下限を満足することにより、斜入射角度で入射する光束による不要光のうち、結像面に到達する不要光を低減させることができる。また、条件式(5)の上限を満足することにより、偏光依存性を低減することができる。
好ましくは、条件式(5)は、以下の条件式(5b)を満足する。
0.010<Δ<0.080 … (5b)
誘電体薄膜10、第1の回折格子8、および、第2の回折格子9を構成する材料は非対称3層平板導波路を構成するため、導波モードが以下の式(6)、(7)で表される固有値方程式を満たすことが知られている。式(6)はTE偏光、式(7)はTM偏光に関する。
式(6)、(7)において、kは以下の式(8)で表される。
また、非対称3層平板導波路の単一モードが発生するカットオフ幅は、TE偏光が式(8a)、TM偏光が式(8b)でそれぞれ表される。
式(8a)、(8b)において、κc、δcは以下の式(9)で表される。
本実施例において、壁面部の誘電体薄膜10の膜幅dmと式(11)のTE偏光とTM偏光の単一モードが発生するカットオフ幅の平均Wcが以下の条件式(10)を満足することが好ましい。これにより、設計入射角度で入射する光束の設計次数の回折効率が向上し、設計次数±1次の回折効率を低減させることができる。また、斜入射角度で入射する光束による不要光のうち、結像面に到達する不要光を低減させ、かつ波長特性および偏光特性を低減することができる。
0.500≦dm/Wc≦2.000 … (10)
式(10)において、カットオフ幅の平均Wcは、以下の式(11)で表される。
好ましくは、条件式(10)は、以下の条件式(10a)を満足する。
0.750≦dm/Wc≦1.750 … (10a)
本発明の回折光学素子においては、壁面部の誘電体薄膜10からなる導波路の屈折率と第1の回折格子8の高屈折率材料との位相差を適切に制御する。これにより、誘電体薄膜10が設けられていない場合は不要光となっていた光を光導波路内に閉じ込め、導波モードと回折格子の位相整合させることができる。
その結果、設計次数の回折効率を向上や斜入射角度(画面外光入射角度)で入射する光束による不要光のうち、結像面に到達する不要光を低減することができる。好ましくは、少なくとも一つ以上の第m輪帯に関し、壁面部の位相差Pmaは、以下の条件式(12)を満足する。ここで、第m輪帯とは、回折格子の格子番号であり、光軸中心から光軸中心に対して垂直方向に離れる順に付される格子番号(m=1、2、…)である。
0.013<Pma<0.035 … (12)
式(12)において、Pma=(nhm−n1)×dm/λdで与えられる。ここで、nhmは第m輪帯における格子壁面上の誘電体薄膜10の屈折率、dmは第m輪帯における格子壁面上の誘電体薄膜10の膜厚(nm)、λdは設計波長(nm)である。設計波長λdは、回折光学素子1の使用波長の平均値付近の値であり、具体的には、使用波長の平均値をλave(nm)とするとき、以下の条件式(13)を満足する波長範囲にある。
0.900<λd/λave<1.100 … (13)
本実施例の回折光学素子は可視域において使用され、その使用波長は400nm〜700nm、使用波長の平均値λaveは550nmである。条件式(12)の上限を超えるかまたは下限を下回ると、導波モードの最適条件から外れるため、光の閉じ込め効果が少なくなり、例えば斜入射角度(画面外光入射角度)で入射する光束による不要光のうち、結像面に到達する不要光の低減効果が少なくなる。
好ましくは、条件式(12)、以下の条件式(12a)を満足する。
0.015<Pma<0.030 … (12a)
より好ましくは、条件式(12)は、以下の条件式(12b)を満足する。
0.017<Pma<0.026 … (12b)
次に、本実施例の回折光学素子1に斜入射角度(画面外光入射角度)で入射した光束による不要光の振る舞いについて、厳密波動計算のうち厳密結合波解析(RCWA:Regorous Coupled Wave Analysis)を用いて説明する。図3は、RCWAで計算した回折格子の断面図である。図3に示される断面図は、図1(b)に示される回折光学素子1の下側の部分断面図に相当する。
回折光学素子1の格子先端を連ねた包絡面の面法線と格子壁面がなす角度θtは15°であり、角度θtは回折光学素子1に入射する有効光束(撮影に使用する光束)の重心角度と略一致するように設定されている。また回折光学素子1において、像面に到達する出射光線角度は、角度θt=15°で入射した光線の出射角度の方向に相当し、回折光学素子1の格子先端を連ねた包絡面の面法線に対して、15.5°前後の方向となる。
回折光学素子1は、回折ピッチが100μm、格子高さd1tが10.65μmであり、1次の回折光が最大の強度となるように最適化されており、正の屈折力を有する。第1の回折格子8および第2の回折格子9の格子材料は、図2を参照して説明した材料と同じである。格子壁面上の誘電体薄膜10は、波長550nmにおける屈折率が1.7460、膜厚が99nmである。
図3の回折光学素子1の格子壁面に対し、斜入射角度(画面外光入射角度)で入射した光束(図3中の光線1、光線2)の2つの光線においてRCWA計算を行う。図3中の上側から入射する光線1は、回折光学素子1の格子先端を連ねた包絡面の面法線に対して25°で入射している。図3中の下側から入射する光線2は、回折光学素子1の格子先端を連ねた包絡面の面法線に対して5°で入射している。それぞれの光線の波長は550nmである。
図4(a)は、光線1(25°)における、出射角度に対する回折効率を示す。同様に、図4(b)は、光線2(5°)における、出射角度に対する回折効率を示す。また、比較例として、図3と同様の回折光学素子の構成において、誘電体薄膜10を設けていない回折光学素子(格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差が小さい構成)についても、同様のRCWAによる回折効率の計算を行う。図5(a)は、比較例としての回折光学素子に関し、光線1(25°)における出射角度に対する回折効率を示す。同様に、図5(b)は、比較例としての回折光学素子に関し、光線2(5°)における出射角度に対する回折効率を示す。
図4および図5から分かるように、光線1に関しては、格子壁面部に所望の誘電体薄膜10を設けることにより不要回折光の光量が若干増加している。一方、光線2に関しては、不要回折光の光量が大幅に低減しているため、全体として不要回折光を減らすことができる。また、本実施例の回折光学素子1に関しては、格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差を回折光学素子1の径方向の位置に応じて変化させている。すなわち、回折光学素子1の周辺部において格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差を減らすような構成としている。
ここで、回折光学素子1の周辺部において格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差を減らすことによる効果について説明する。図3に示されるような回折光学素子1の場合、回折光学素子1の周辺部に近くなるほど回折光学素子1を保持する鏡筒や、回折光学素子1より入射側に配置したレンズ等により、入射光線が遮蔽されやすくなる。すなわち、光線2のような格子壁面部に対して光軸と反対側から入射する光線は、周辺部に近くなるほど遮蔽されやすくなる。逆に、光線1のような格子壁面部に対して光軸側から入射する光線は、周辺部においても遮蔽されにくい。このため、回折光学素子1の周辺部においては、光線1のような格子壁面部に対して光軸側から入射する光線の割合が多くなる。
そこで、回折光学素子1の周辺部において、格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差を減らすことにより、図4(a)に示される不要光の光量から図5(a)に示される不要光の光量へシフトさせ、不要な回折光量を低減することができる。具体的には、以下の条件式(14)を満足する。
−0.500<Pe/Pmax<0.700 … (14)
条件式(14)において、Pmは第m輪帯(m=1、2、…)のそれぞれにおける格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差、Pmaxは全輪帯の位相差Pmの最大値である。Peは、有効径(光線最大有効径部)における誘電体薄膜10と第1の回折格子8との位相差である。
条件式(14)の上限を超えると、回折光学素子1の周辺部において格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差が増加し、不要回折光の光量が増加してしまう。一方、条件式(14)の下限値を下回ると、格子壁面上の屈折率が小さくなり過ぎ、誘電体薄膜10内での導波モードがくずれ、不要回折光の光量が増加してしまう。
好ましくは、条件式(14)は、以下の条件式(14a)を満足する。
−0.400<Pe/Pmax<0.600 … (14a)
より好ましくは、条件式(14)は、以下の条件式(14b)を満足する。
−0.200<Pe/Pmax<0.400 … (14b)
また、有効径における位相差Peが以下の条件式(15)を満足することにより、周辺部の位相差を低減することができ、不要回折光の光量を低減することができるため、好ましい。
−0.015<Pe<0.018 … (15)
好ましくは、条件式(15)は、以下の条件式(15a)を満足する。
−0.005<Pe<0.012 … (15a)
本実施例の回折光学素子1において、有効径の8割から10割の範囲の輪帯における壁面上の位相差Pmの平均値をPedgとするとき、以下の条件式(16)を満足することが好ましい。
−0.005<Pedg<0.021 … (16)
条件式(16)を満足することにより、最周辺部だけでなく周辺部の広い領域において、不要回折光の光量の低減効果を最適化することができる。
好ましくは、条件式(16)は、以下の条件式(16a)を満足する。
0.000<Pedg<0.019 … (16a)
また、本実施例の回折光学素子1に関して、周辺部においては前述したように光軸から離れた側からの入射光線を遮蔽しやすいが、中心部においては入射光線の遮蔽効果は少なくなる。このため、中心部においては、格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差を確保して、導波モードが成り立つ範囲とすることにより、図4および図5を参照して説明したように、全体として不要回折光を低減することができる。具体的には、有効径の2割から6割の範囲の輪帯における壁面上の位相差Pmの平均値をPcntとするとき、以下の条件式(17)を満足する。
0.013<Pcnt<0.035 … (17)
好ましくは、条件式(17)は、以下の条件式(17a)を満足する。
0.017<Pcnt<0.026 … (17a)
条件式(17)を満足することにより、中心部の広い領域において、不要回折光の光量を低減することができる。有効径の0割(光軸)から2割の範囲においても、条件式(17)の範囲を満足することが好ましい。ただし、光軸付近の回折格子は格子ピッチが広いため、不要回折光の強度が小さい。このため、条件式(17)の範囲を超えたとしても不要回折光の影響が小さい。また、光軸付近においては、誘電体薄膜10の制御が難しくなるため、位相差Pmの制御範囲を緩和することにより、容易に回折光学素子1を製造することができる。
以上の関係を満足する誘電体薄膜10の材料および膜幅を適切に設定することにより、本実施例の効果を得ることができるため、誘電体薄膜10の材料は特に限定されるものではない。また、誘電体薄膜10の製造方法も特に限定されるものではない。例えば、第2の回折格子9を製造し、その後、誘電体薄膜10を選択的に形成してもよい。具体的には、誘電体薄膜10を構成する材料を真空蒸着等の物理蒸着手法やスピンコート法等で薄膜形状に成膜した後、リソグラフィー手法やナノインプリント法等によるによるパターニングしてエッチング手法等で選択的に形成する手法を用いることができる。また、マスクパターンを用いて選択的に蒸着手法等で形成する方法等を用いることができる。また、回折光学素子1の輪帯毎に薄膜の幅、屈折率、または形状を変えることにより輪帯毎に制御してもよい。いずれの製法においても、格子壁面部と格子斜面部の誘電体薄膜10とを同じ原材料とすることにより、壁面部と斜面部を同時に形成することが可能になり、より簡素な製造方法となるため好ましい。
本実施例の回折光学素子1において、周辺部における格子壁面上の誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差を小さくしている。位相差を小さくする方法としては、誘電体薄膜10の厚さを減らす方法と、誘電体薄膜10の屈折率を小さくする方法があるが、膜厚と屈折率とを同時に制御して位相差を所望の値に制御することは困難である。このため、回折光学素子1の周辺部の位相差を小さくする際に、誘電体薄膜10の膜厚を主体的に制御して周辺部の位相差を小さくするか、誘電体薄膜10の屈折率を主体的に制御して周辺部の位相差を小さくするかのいずれか一方を選択する。これにより、回折光学素子1を容易に製造することができる。
図6(a)は、本実施例の回折光学素子1の径方向の位置における、壁面部の誘電体薄膜10の屈折率を示す。図6(b)は、壁面部の誘電体薄膜10の膜厚を示す。図6(c)は、壁面部の誘電体薄膜10の位相差Pmを示す。図6(a)、図6(b)、図6(c)において、横軸は径方向の比率を示し、0は光軸上を表し、1は光線有効径を示している。図6(b)において、膜厚dmは実線で示し、式(11)から計算されるカットオフ幅Wcは破線で示している。
本実施例の回折光学素子1において、壁面部の誘電体薄膜10の膜厚dmを光線最大径の9割付近の位置から最大有効径となる位置へ徐々に減らすことにより、周辺部において壁面部の誘電体薄膜10の位相差Pmを減らしている。このため、周辺部の不要回折光を低減することができる。光軸付近から光線最大径の9割付近の範囲においては、所望の位相差を確保した構成となっているため、斜入射光束が入射した際の不要回折光を良好に低減することが可能となる。
膜厚の制御により壁面部の誘電体薄膜10の位相差を制御する場合、格子壁面上の誘電体薄膜10の膜厚の最大値をdmax、光線最大有効径部における格子壁面上の誘電体薄膜の膜厚をdeとするとき、以下の条件式(18)を満足することが好ましい。
0.000≦de/dmax<0.700 … (18)
より好ましくは、条件式(18)は、以下の条件式(18a)を満足する。
0.000≦de/dmax<0.500 … (18a)
次に、本発明の実施例2における回折光学素子について説明する。実施例1の回折光学素子は、光線入射側から高屈折率低分散材料、低屈折率高分散材料からなる格子の順に構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
図7(a)は、本実施例における回折光学素子1aの正面図であり、図7(b)は回折光学素子1aの側面図である。図8は、図7(a)に示される回折光学素子1aをA−A’線で切断したときの断面形状の一部を拡大して示している。ただし、図8は格子深さ方向にデフォルメされた図となっている。本実施例の回折光学素子1aは、実施例1の回折光学素子1と同様に、それぞれ異なる材料からなる第1の素子部2a(第1の回折格子8)および第2の素子部3b(第2の回折格子9)が誘電体薄膜10を挟んで密着して積層されている。図8に示される回折光学素子1aにおいて、光線出射側の第2の回折格子9を形成する第2の材料として、アクリル系樹脂にZrO微粒子を混合させた樹脂(Nd=1.619、N55=1.6216、νd=44.3、θgF=0.569)が用いられる。一方、第1の回折格子8を形成する第1の材料として、アクリル系樹脂にITO微粒子を混合させた樹脂(Nd=1.565、N55=1.5718、νd=19.2、θgF=0.425)が用いられる。
第1の材料からなる第1の格子ベース部6の厚さは40μm、第2の材料からなる第2の格子ベース部7の厚さは2μm、回折ピッチPは100〜3000μm、格子高さd1は10.96〜11.00μmである。格子壁面部の誘電体薄膜10としては、AlとZrOの混合材料の薄膜が用いられており、回折光学素子1aの径方向の位置に応じて格子壁面上の膜厚が変化している。また、回折光学素子1aの径方向の位置に応じて屈折率もわずかに変化している。本実施例の回折光学素子1aにおいても、実施例1の回折光学素子1と同様に、回折光学素子の周辺部の誘電体薄膜10の厚さを薄くすることにより、誘電体薄膜10の位相差Pmを小さくして不要回折光を低減することができる。
図9(a)は、本実施例の回折光学素子1aの径方向の位置における、誘電体薄膜10の屈折率を示す。図9(b)は、誘電体薄膜10の膜厚を示す。図9(c)は、誘電体薄膜10の位相差Pmを示す。図9(a)、図9(b)、図9(c)において、横軸は径方向の比率を示し、0は光軸上を表し、1は光線有効径を示している。図9(b)において、膜厚dmは実線で示し、式(11)から計算されるカットオフ幅Wcは破線で示している。
本実施例の回折光学素子1aにおいて、誘電体薄膜10の膜厚を光線最大径の7割付近の位置から最大有効径となる位置へ徐々に減らすことにより、周辺部において誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差Pmを小さくしている。このため、周辺部の不要回折光を低減することができる。また、光軸付近から光線最大径の7割付近の範囲においては、所望の位相差を確保した構成となっているため、斜入射光束が入射した際の不要回折光を良好に低減することが可能である。
次に、本発明の実施例3における回折光学素子について説明する。前述の回折光学素子1aにおいては、周辺部の膜厚を減らすことにより、壁面部における誘電体薄膜10と第1の回折格子8との間の位相差Pmを小さくしているが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施例の回折光学素子において、第1の回折格子8および第2の回折格子9は実施例2の構成と同じであり、壁面部の誘電体薄膜10の特性を変更した構成となっている。
図10(a)は、本実施例の回折光学素子の径方向の位置における、壁面部の誘電体薄膜10の屈折率を示す。図10(b)は、誘電体薄膜10の膜厚を示す。図10(c)は、誘電体薄膜10の位相差Pmを示す。図10(a)、図10(b)、図10(c)において、横軸は径方向の比率を示し、0は光軸上を表し、1は光線有効径を示している。図10(b)において、膜厚dmは実線で示し、式(11)から計算されるカットオフ幅Wcは破線で示している。図10(a)〜(c)に示されるように、本実施例の回折光学素子は、回折光学素子の周辺部の誘電体薄膜10の屈折率を小さくすることにより、誘電体薄膜10の位相差Pmを小さくし、斜入射光束が入射した際の不要回折光を低減している。
本実施例のように、屈折率を制御することで壁面部の誘電体薄膜10の位相差を制御する場合、以下の条件式(19)を満足することが好ましい。
−0.500<ΔNe/ΔNmax<0.700 … (19)
条件式(19)において、ΔNmaxは格子壁面上の誘電体薄膜10の屈折率と第1の回折格子8の屈折率との差の最大値、ΔNeは有効径における格子壁面上の誘電体薄膜10の屈折率と第1の回折格子8の屈折率との差である。より好ましくは、式(19)は、以下の条件式(19a)を満足する。
−0.200<ΔNe/ΔNmax<0.500 … (19a)
表1は、実施例1〜3の回折光学素子の各条件式に対応する値を示す。
次に、本発明の実施例4における回折光学素子について説明する。実施例1〜3の回折光学素子においては、格子壁面部のみに誘電体薄膜10が形成された構成であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
図11は、本実施例における回折光学素子1bの断面図である。本実施例の回折光学素子1bにおいて、第1の回折格子8の格子斜面8aと第2の回折格子9の格子斜面9aとの間に、誘電体薄膜10aを密着して積層させている。また、第1の回折格子8の格子壁面8bと第2の回折格子8の格子壁面9bとの間に、誘電体薄膜10bを密着して積層させている。
本実施例のように格子斜面8aと格子斜面9aとが互いに密着していない構成でも、前述の条件式(1)〜(19)を満足することにより、回折光学素子1bに斜入射光束が入射した場合に像面に不要回折光が到達することを抑制することができる。格子斜面部の誘電体薄膜10aと格子壁面部の誘電体薄膜10bは、同一の材料または異なる材料のいずれであってもよい。
次に、図12を参照して、本発明の実施例5における光学系について説明する。図12は、回折光学素子Ldo(実施例1〜4の回折光学素子に相当)を有する光学系100aの光路図である。
本実施例の光学系100aは、焦点距離f=780mm、Fナンバー=5.8、最大像高Y=21.6mmである。光学系100は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1、フォーカス群LF、開口絞りSP、および、負の屈折力を有する第2レンズ群L2を有する。IPは像面である。光学系100aは、フォーカシングの際に、フォーカス群LFを像側に移動することにより、近距離物体への合焦が可能である。また、第1レンズ群L1は、レンズL11および回折光学素子Ldoを有する。
図12において、R0は軸上光束、R1は最大像高となる軸外光束、R2は回折光学素子Ldoに入射する画面外光束(最大像高光束以上の入射角度で入射する光束)をそれぞれ示す。光学系100aにおいて、回折光学素子Ldoを物体側のレンズL11から離れた位置に配置しているため、像高が図12中の上側にシフトして光束の入射角度が大きくなるにつれて、回折光学素子Ldoの図12中の下側に当たる光線の範囲が狭くなっている。このため、図3を参照して説明した光線2のように格子壁面に対して光軸Oと反対側から入射する光束が、回折光学素子Ldoよりも物体側のレンズL11により遮光されて回折光学素子Ldoの周辺部に入射しなくなる。すなわち光学系100aは、軸上光束の回折光学素子Ldoにおける最大有効径よりも最大像高光束の回折光学素子Ldoにおける最大有効径の方が小さい。このため、条件式(14)のように回折光学素子の周辺部の位相差を小さくしたことによる不要光の低減効果を効果的に得ることができる。
本実施例において、最も物体側の面から回折面までの距離をLd(mm)、最も物体側の面の光線有効径をE0(mm)とするとき、以下の条件式(20)を満足することが好ましい。
0.300<E0/Ld<2.000 … (20)
条件式(20)の上限値を上回ると、回折光学素子Ldoよりも物体側のレンズL11による入射光束の遮蔽効果が小さくなり、不要光の低減効果が小さくなる。一方、条件式(20)の下限値を下回ると、回折光学素子Ldoによる収差補正効果が小さくなるため、光学系100aの諸収差の影響を受けることになる。
また、本実施例の回折光学素子Ldoは、開口絞りSPよりも物体側に配置されることが好ましい。開口絞りSPよりも像側に回折光学素子Ldoを配置すると、画面外光束が回折光学素子Ldoに入射しにくくなる。このため、回折光学素子Ldoの周辺部における、壁面部の位相差を小さくしても十分な不要光の低減効果が得られにくい。また不要光の低減効果が得られた場合でも、効果が得られる画角が一部の画角のみとなり、好ましくない。
次に、図13を参照して、本発明の実施例6における光学系について説明する。図12は、回折光学素子Ldo(前述の各実施例の回折光学素子に相当)を有する光学系100bの光路図である。
本実施例の光学系100bは、焦点距離f=196mm、Fナンバー=2.05、最大像高Y=21.6mmである。光学系100bは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1、フォーカス群LF、開口絞りSP、および、正の屈折力を有する第2レンズ群L2を有する。IPは像面である。光学系100bは、フォーカシングの際に、フォーカス群LFを像側に移動することにより、近距離物体への合焦が可能である。また、第1レンズ群L1は、レンズL11、および、回折光学素子Ldo(実施例1〜4の回折光学素子に相当)を有する。
図13において、R0は軸上光束、R1は最大像高となる軸外光束をそれぞれ示す。光学系100bにおいて、回折光学素子Ldoを物体側のレンズL11から離れた位置に配置しているため、像高が図13中の上側にシフトして光束の入射角度が大きくなるにつれて、回折光学素子Ldoの図13中の下側に当たる光線の範囲が狭くなっている。このため、図3を参照して説明した光線2のように格子壁面に対して光軸Oと反対側から入射する光束が、回折光学素子Ldoよりも物体側のレンズL11により遮光されて回折光学素子Ldoの周辺部に入射しなくなる。回折光学素子の周辺部の位相差を小さくしたことによる不要光の低減効果を効果的に得ることができる。
表2は、実施例5および実施例6の光学系100a、100bの各条件式に対応する値を示す。
なお実施例5および実施例6において、光学系100a、100bには1つの回折光学素子Ldoが配置されているが、これに限定されるものではなく、光学系100a、100bに複数の回折光学素子Ldoを配置してもよい。
次に、図14を参照して、本発明の実施例7における双眼鏡の観察光学系について説明する。図14は、観察光学系110の構成図である。
図14において、103は結像面、104は対物レンズ、105は倒立像を正立させるためのプリズム、106は接眼レンズ、107は瞳面である。対物レンズ104は、レンズL11および回折光学素子Ldo(実施例1〜4の回折光学素子に相当)を有する。回折光学素子Ldoは、対物レンズ104の結像面103での色収差等を補正する目的で設けられている。観察光学系110は、実施例1〜4にて説明したように、回折効率特性が従来に比べて大幅に改善されているため、フレア光が少なく低周波数での解像力も高く、高い光学性能を有する。なお本実施例では、平板ガラス面に回折光学素子Ldoを設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、回折光学素子Ldoをレンズの凹面又は凸面上に設けてもよい。また、観察光学系110に複数の回折光学素子Ldoを配置してもよい。
また本実施例では、対物レンズ104に回折光学素子Ldoを設けているが、これに限定されるものではなく、プリズム105の表面や接眼レンズ106内に開設光学素子Ldoを設けることもでき、この場合にも前述と同様の効果が得られる。ただし、回折光学素子Ldoを結像面103よりも物体側に設けることにより、対物レンズ104における色収差低減効果がある。このため、肉眼の観察系の場合、少なくとも対物レンズ104に回折光学素子Ldoを設けることが好ましい。なお本実施例では、双眼鏡の観察光学系110について説明したが、回折光学素子Ldoは、地上望遠鏡や天体観測用望遠鏡等の観察光学系にも適用可能である。また回折光学素子Ldoは、レンズシャッターカメラやビデオカメラなどの光学式ファインダにも適用可能である。これらの場合にも、前述と同様の効果が得られる。
次に、図15を参照して、本発明の実施例8における撮像装置について説明する。図15は、撮像装置120の概略図である。撮像装置120は、実施例1〜4の回折光学素子を有する光学系を撮像光学系として用いたデジタルスチルカメラである。
図15において、125はカメラ本体、121は撮像光学系である。122は、カメラ本体125に内蔵され、撮像光学系121により形成された被写体像(光学像)を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)である。123は撮像素子122によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリ、124は液晶ディスプレイパネル等により構成され、撮像素子122上に形成された被写体像を観察するためのファインダである。このように各実施例の回折光学素子を備えた撮像光学系を用いることにより、フレアやゴーストが少ない、高い光学性能を有する撮像装置を実現することができる。
各実施例によれば、簡素な構成の回折光学素子において可視域全域で高い回折効率を得ると共に、設計入射光束とは異なる斜入射光束が回折光学素子に入射したときの、不要光の低減効果が場所ごとに最適化された回折光学素子を得ることができる。また、回折光学素子を光学系中に用いることにより、色収差等の諸収差やフレアが良好に低減された光学系を得ることができる。このため各実施例によれば、径方向の位置に応じて膜の特性を適切に設定することにより光学性能を向上させた回折光学素子、光学系、および、撮像装置を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
1 回折光学素子
8 第1の回折格子
9 第2の回折格子
10 誘電体薄膜(薄膜)

Claims (12)

  1. 第1の格子面および第1の格子壁面を備えた第1の回折格子と、
    第2の格子面および第2の格子壁面を備えた第2の回折格子と、
    前記第1の格子壁面と前記第2の格子壁面とに接する薄膜と、を有し、
    設計波長λd(nm)の光に対して、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子の屈折率をそれぞれn1、n2、前記薄膜の有効径内における屈折率をnha、第m輪帯(m=1、2、…)における前記薄膜の屈折率及び膜厚(nm)をそれぞれnhm、dm、前記第m輪帯における前記薄膜と前記第1の回折格子との位相差をPm=(nhm−n1)×dm/λd、前記位相差Pmの最大値をPmax、前記有効径における前記薄膜と前記第1の回折格子との位相差をPeとするとき、
    n2<n1<nha
    −0.500<Pe/Pmax<0.700
    なる条件式を満足することを特徴とする回折光学素子。
  2. 少なくとも一つ以上の前記第m輪帯に関する前記薄膜と前記第1の回折格子との間の位相差Pmaは、
    0.013<Pma<0.035
    なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
  3. 前記有効径の2割から6割の範囲の輪帯に関する前記位相差Pmの平均値をPcntとするとき、
    0.013<Pcnt<0.035
    なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の回折光学素子。
  4. 前記位相差Peは、
    −0.015<Pe<0.018
    なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  5. 前記有効径の8割から10割の範囲の輪帯における前記位相差Pmの平均値をPedgとするとき、
    −0.005<Pedg<0.021
    なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  6. 前記薄膜の膜厚の最大値をdmax、および、前記有効径における前記薄膜の膜厚をdeとするとき、
    0.000≦de/dmax< 0.700
    なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  7. 前記薄膜の屈折率と前記第1の回折格子の屈折率との差の最大値をΔNmax、および、前記有効径における前記薄膜の屈折率と前記第1の回折格子の屈折率との差をΔNeとするとき、
    −0.500<ΔNe/ΔNmax<0.700
    なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回折光学素子を有し、
    最も物体側の面から前記回折光学素子の回折面までの距離をLd、および、前記最も物体側の面の光線有効径をE0とするとき、
    0.300<E0/Ld<2.000
    なる条件式を満足することを特徴とする光学系。
  9. 最大像高光束の回折光学素子における最大有効径は、軸上光束の前記回折光学素子における最大有効径よりも小さいことを特徴とする請求項8に記載の光学系。
  10. 更に絞りを有することを特徴とする請求項8または9に記載の光学系。
  11. 前記回折光学素子は、前記絞りよりも物体側に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の光学系。
  12. 請求項8乃至11のいずれか1項に記載の光学系と、
    前記光学系により形成された像を受光する撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
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