JP2012013415A - 統合失調症マーカー及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】統合失調症特異的なバイオマーカー及びその用途を提供すること。
【解決手段】アネキシンA5、微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1、EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2、チューブリン・フォールディング・コファクターB、無機ピロフォスファターゼ、グルタレドキシン-3、プラスチン-2、熱ショックタンパク質90β、ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1、ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素、熱ショック70kDaタンパク質4L、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3等からなる群より選択される統合失調症マーカー及びそれを利用した統合失調症の検査法等が提供される。
【選択図】図6

Description

本発明は統合失調症の検査に有用な統合失調症マーカーに関する。詳しくは、統合失調症の発症可能性の判定に利用可能なバイオマーカー及びそれを利用した統合失調症の検査法等に関する。
統合失調症は、思春期・青年期に発症する慢性・進行性の精神疾患であり、陽性症状(幻覚や妄想、まとまりに欠ける会話や行動など)、陰性症状(感情の平板化、思考の貧困、意欲の低下など)及び認知障害(注意障害、作業記憶の低下、実行機能障害など)を主な症状とする。統合失調症は遺伝的要因と環境的要因が関与する多因子疾患と考えられているが、統合失調症の病態の分子生物学的機序に関しては依然として不明な部分が多く、結果として生化学的な検査法は見出されていない。
統合失調症の診断は、医師の問診や患者の訴えを基にした症候学によって行われており、生化学的な検査による診断法は確立していない。統合失調症は発症後数年で病勢が進行し、非可逆的な障害が引き起こされ、社会的機能の永続的な障害が生じると考えられているが、診断に有用な検査法がないため治療的介入が遅れ、その結果、難治化している症例が少なくないのが現状である。統合失調症の診断に有用な検査法の開発が切望されているが、当該疾患は脳内分子の異常によって発症すると考えられる一方で脳の分子病態を検知することは極めて困難であり、検査法の開発は進んでいない。
Arcos-Burgos M. et al., Am J Hum Genet 77,6 p937-44,2005 Lewis CM. et al., Am J Hum Genet 73, 34-48, 2003 Badner JA. and Gershon ES., Mol Psychiatry 7, 405-11, 2002
双生児研究などの結果から、遺伝要因が統合失調症の発症に大きく関与していることが明らかにされている。これまでに、統合失調症患者と健常者を用いた遺伝子解析によって、統合失調症の発症に関与すると示唆されるいくつかの候補遺伝子が同定されているが(例えば非特許文献1〜3)、これらの遺伝子と統合失調症の病態を明確化する手掛かりは少なく、疾患の発症分子機構が解明されるには至っていない。その結果、本疾患の病態生理は依然として不明であり、生化学的な検査を基にした診断法が確立していないのが現状である。そこで本発明は、統合失調症特異的なバイオマーカーを提供するとともに、その用途として統合失調症の検査に有用な技術を提供することを課題とする。より具体的には、本発明の課題は、統合失調症の検査に有用なバイオマーカー、当該バイオマーカーを利用した検査法、及び当該検査法に利用される検査試薬などを提供することにある。
統合失調症は脳の機能異常によって発症すると考えられるが、脳におけるタンパク質の発現変化を診断に用いることは現実的でない。一方で末梢血液は生化学的検査に繁用されている。本発明者らは末梢血液に含まれるリンパ球に注目した。即ち、末梢血から採取したリンパ球を不死化してリンパ芽球様細胞を用いれば、治療薬や併発する身体疾患、更には採血時点における日内変動などの状態依存性因子による影響を最小化した検討が可能であると考えた。このような着眼点に基づき、患者群と健常者群のタンパク質発現プロファイルを比較することにした。詳細な検討の結果、発現レベルに有意な差を認める複数のタンパク質が同定された。即ち、統合失調症特異的な発現変化を示すタンパク質を特定することに成功した。また、特定したタンパク質の殆どは脳内でも発現が認められるものであり、統合失調症の病態形成に深く関与している可能性が強く示唆された。下記の本発明は主として以上の成果に基づく。
[1]アネキシンA5、微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1、EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2、チューブリン・フォールディング・コファクターB、無機ピロフォスファターゼ、グルタレドキシン-3、プラスチン-2、熱ショックタンパク質90β、ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1、ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素、熱ショック70kDaタンパク質4L、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム、βラクタマーゼ様タンパク質2、推定デオキシリボヌクレアーゼTATDN1、液胞タンパク質選別関連タンパク質35、インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1、キネシン様タンパク質KIF11、伸長因子1-γ、免疫グロブリンmu鎖C領域、免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質、免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO及び免疫グロブリン重鎖V-III領域GAからなる群より選択される、いずれかのタンパク質分子からなる、統合失調症マーカー。
[2]アネキシンA5、微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1、EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2、チューブリン・フォールディング・コファクターB、無機ピロフォスファターゼ、グルタレドキシン-3、プラスチン-2、熱ショックタンパク質90β、ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1、ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素、熱ショック70kDaタンパク質4L、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム、βラクタマーゼ様タンパク質2、推定デオキシリボヌクレアーゼTATDN1、液胞タンパク質選別関連タンパク質35、インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1、キネシン様タンパク質KIF11、伸長因子1-γ、免疫グロブリンmu鎖C領域、免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質、免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO及び免疫グロブリン重鎖V-III領域GAからなる群より選択される一又は二以上のタンパク質分子についての検体中レベルを指標として用いることを特徴とする、統合失調症検査法。
[3]以下のステップ(1)〜(3)を含む、[2]に記載の統合失調症検査法:
(1)被検者由来の検体を用意するステップ;
(2)前記検体中の前記一又は二以上のタンパク質分子を検出するステップ;及び
(3)検出結果に基づいて、統合失調症の現在又は将来の発症可能性を判定するステップ。
[4]アネキシンA5、微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1、EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2、チューブリン・フォールディング・コファクターB、無機ピロフォスファターゼ、グルタレドキシン-3、プラスチン-2の検出値、熱ショックタンパク質90β、ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1、ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素、熱ショック70kDaタンパク質4L、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム、βラクタマーゼ様タンパク質2、及び推定デオキシリボヌクレアーゼTATDN1については、検出値が低いと発症可能性が高いとの基準、又は検出できないと発症可能性が高いとの基準に従い、
液胞タンパク質選別関連タンパク質35、インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1、キネシン様タンパク質KIF11、伸長因子1-γ、免疫グロブリンmu鎖C領域、免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質、免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO、及び免疫グロブリン重鎖V-III領域GAについては、検出値が高いと発症可能性が高いとの基準、又は検出できると発症可能性が高いとの基準に従い、ステップ(3)の判定を行う、[3]に記載の方法。
[5]ステップ(2)で得られた検出値と対照検体の検出値との比較に基づきステップ(3)の判定を行う、[3]又は[4]に記載の統合失調症検査法。
[6]ステップ(2)で得られた検出値と、同一の被検者から過去に採取された検体中の検出値との比較に基づきステップ(3)の判定を行う、[3]又は[4]に記載の統合失調症検査法。
[7]前記検体が血液、血漿、血清、口腔粘膜、鼻粘膜又は皮膚である、[2]〜[6]のいずれか一項に記載の統合失調症検査法。
[8]前記検体が、被検者から採取した血液リンパ球を不死化したリンパ球芽様細胞である、[2]〜[6]のいずれか一項に記載の統合失調症検査法。
[9]前記検体が、被検者から採取した血液細胞である、[2]〜[6]のいずれか一項に記載の統合失調症検査法。
[10][1]に記載の統合失調症マーカーに特異的結合性を示す物質からなる、統合失調症検査試薬。
[11]前記物質が抗体である、[10]に記載の統合失調症検査試薬。
[12][10]又は[11]に記載の統合失調症検査試薬を含む、統合失調症検査用キット。
リンパ芽球様細胞株の調製法の概略。 解析対象の背景及び株化に要した日数を示す表。 二次元ディファレンシャル電気泳動(2D-DIGE)によるプロテオーム解析の概略。 プロテオーム解析結果の概要。合計1174スポットの中から20スポットが選択された。質量分析の結果、以下の22種類のタンパク質が同定された。 (1)アネキシンA5(Annexin A5、遺伝子シンボルANXA5);(2)微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1(Microtubule-associated protein RP/EB family member 1、遺伝子シンボルMAPRE1);(3)EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2(EF-hand domain-containing protein D2、遺伝子シンボルEFHD2);(4)チューブリン・フォールディング・コファクターB(Tubulin folding cofactor B、遺伝子シンボルTBCB);(5)無機ピロフォスファターゼ(Inorganic pyrophosphatase、遺伝子シンボルPPA1);(6)グルタレドキシン-3(Glutaredoxin-3、遺伝子シンボルGLRX3);(7)プラスチン-2(Plastin-2、遺伝子シンボルLCP1);(8)熱ショックタンパク質90β(Heat shock protein HSP 90-beta (HSP 90)、遺伝子シンボルHSP90AB1);(9)ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1(Pyridoxal-dependent decarboxylase domain-containing protein 1、遺伝子シンボルPDXDC1);(10)ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1(Ubiquitin carboxyl-terminal hydrolase isozyme L1 (UCH-L1)、遺伝子シンボルUCHL1);(11)アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Adenine phosphoribosyltransferase (APRT)、遺伝子シンボルAPRT);(12)細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素(Histidyl-tRNA synthetase, cytoplasmic、遺伝子シンボルHARS);(13)ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素(Uroporphyrinogen decarboxylase (URO-D, UPD)、遺伝子シンボルUROD);(14)熱ショック70kDaタンパク質4L(Heat shock 70 kDa protein 4L、遺伝子シンボルHSPA4L);(15)三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3(Trifunctional purine biosynthetic protein adenosine-3、遺伝子シンボルGART)及び三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム(ISOFORM SHORT of Trifunctional purine biosynthetic protein adenosine-3、遺伝子シンボルGART);(16)βラクタマーゼ様タンパク質2(Beta-lactamase-like protein 2、遺伝子シンボルLACTB2);(17)推定デオキシリボヌクレアーゼTATDN1(Putative deoxyribonuclease TATDN1、遺伝子シンボルTATDN1);(18)液胞タンパク質選別関連タンパク質35(Vacuolar protein sorting-associated protein 35VPS35);(19)インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1(Interferon-induced GTP-binding protein Mx1、遺伝子シンボルMX1);(20)キネシン様タンパク質KIF11(Kinesin-like protein KIF11、遺伝子シンボルKIF11);(21)伸長因子1-γ(Elongation factor 1-gamma (EF-1-gamma)、遺伝子シンボルEEF1G);(22)免疫グロブリンmu鎖C領域(Ig mu chain C region、遺伝子シンボルIGHM)、免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質(Ig mu heavy chain disease protein、遺伝子シンボルIGHM)、免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO(Ig heavy chain V-III region BRO、遺伝子シンボルIGHM)及び免疫グロブリン重鎖V-III領域GA(Ig heavy chain V-III region GA、遺伝子シンボルIGHM) 2D-DIGEの結果(ゲルのイメージ)。 同定された22種類のタンパク質をまとめた表。タンパク質名、対応する遺伝子シンボル等を示した。データベース検索により、ヒト脳、マウス脳での発現の有無も調べた(+は発現あり、−は発現なし、を表す)。
(本発明の第1の局面:統合失調症マーカー)
本発明の第1の局面は統合失調症のバイオマーカー(以下、「本発明のバイオマーカー」とも呼ぶ)に関する。本発明のバイオマーカーは統合失調症の現在又は将来の発症可能性を評価する上で有用な指標である。「現在の発症可能性」は、検査時において統合失調症を発症しているか否か又は発症している確率を表すことになる。他方、「将来の発症可能性」は統合失調症を将来発症する可能性(リスク)を表す。「統合失調症」とは精神機能の分裂を基本とする精神疾患群の総称である。世界保健機構(WHO)の疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)によれば妄想型、破瓜型、緊張型、鑑別不能型、統合失調症後抑うつ、残遺型、単純型に分類されている。
本発明のバイオマーカーは、統合失調症との相関を認めたタンパク質分子からなる。該当するタンパク質分子を以下に示す。括弧内は各分子の遺伝子シンボル及び該当配列番号である。尚、説明の便宜上、以降の説明では遺伝子シンボルを用いて各タンパク質分子を表す。
アネキシンA5(ANXA5、配列番号1);
微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1(MAPRE1、配列番号2);
EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2(EFHD2、配列番号3);
チューブリン・フォールディング・コファクターB(TBCB、配列番号4);
無機ピロフォスファターゼ(PPA1、配列番号5);
グルタレドキシン-3(GLRX3、配列番号6);
プラスチン-2(LCP1、配列番号7);
熱ショックタンパク質90β(HSP90AB1、配列番号8);
ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1(PDXDC1、配列番号9);
ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1(UCHL1、配列番号10);
アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT、配列番号11);
細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素(HARS、配列番号12);
ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素(UROD、配列番号13);
熱ショック70kDaタンパク質4L(HSPA4L、配列番号14);
三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3(GART、配列番号15);
三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム(GART、配列番号16);
βラクタマーゼ様タンパク質2(LACTB2、配列番号17);
推定デオキシリボヌクレアーゼTATDN1(TATDN1、配列番号18);
液胞タンパク質選別関連タンパク質35(VPS35、配列番号19);
インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1(MX1、配列番号20);
キネシン様タンパク質KIF11(KIF11、配列番号21);
伸長因子1-γ(EEF1G、配列番号22);
免疫グロブリンmu鎖C領域(IGHM、配列番号23);
免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質(IGHM、配列番号24);
免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO(IGHM、配列番号25);
免疫グロブリン重鎖V-III領域GA(IGHM、配列番号26)
(本発明の第2の局面:統合失調症検査法)
本発明の第2の局面は上記本発明のバイオマーカーの用途に関し、統合失調症の現在又は将来の発症可能性を検査する方法(以下、「本発明の検査法」とも呼ぶ)を提供する。本発明の検査法は、統合失調症を現在発症しているか否かを判定するための手段として、或いは統合失調症を将来発症する可能性を判定するための手段として有用である。本発明の検査法は統合失調症を診断するために有用な情報を与える。本発明の検査法によれば統合失調症の発症可能性を簡便且つ客観的に判定することが可能となる。
ところで、統合失調症などの精神病が発症してから薬物療法が開始されるまでの時間的遅れのことを未治療精神病期間(Duration of untreated psychosis;DUP)と呼ぶ。DUPが長いほど臨床的転帰が不良であることが知られている。一方、発症からの数年間は予後を左右する重要な時期であり、臨界期(critical period)と呼ばれる。本発明者らの研究グループは、DUPが長いほど、左の上側頭回の一部である側頭平面の体積が小さいことを報告した(Takahashi et al.: Psychiatry Res Neuroimaging 154: 209-219, 2007)。この知見は、病初期(臨界期)の未治療期間に脳形態変化が進行すること、そして、DUPを短くするだけでなく、臨界期における神経生物学的変化を改善する早期介入が極めて重要であることを示唆する。本発明の検査法は統合失調症のスクリーニングにも利用できるものであり、統合失調症の早期発見・早期治療にも役立つ。
本発明の検査法では、被検者由来の検体中における、本発明のバイオマーカーのレベルが指標として用いられる。ここでの「レベル」は、典型的には「量」ないし「濃度」を意味する。但し、慣例及び技術常識に従い、検出対象の分子を検出できるか否か(即ち見かけ上の存在の有無)を表す場合にも用語「レベル」が用いられる。好ましくは上記26種類(遺伝子の数としては22種類)のバイオマーカーから選択される2種以上のバイオマーカーを指標として併用し、検査結果を得る。基本的には、併用するバイオマーカーの種類が多い程、検査精度や信頼性等が向上する。そこで、好ましくは5種以上、更に好ましくは10種以上、より一層好ましくは15種以上のバイオマーカーを併用する。尚、求められる精度や検査の簡便性等を考慮し、採用するバイオマーカーの数、種類を決定すればよい。また、同種のタンパク質(即ち、遺伝子シンボルGARTで特定される上記二つのタンパク質、及び遺伝子シンボルIGHMで特定される上記4つのタンパク質)については、原則、その中のいずれか一つを採用すればよい。
ここで、患者群と健常者群のサンプルを用いた統計的解析において特に低いp値を示したANXA5、MAPRE1、EFHD2、TBCB、PPA1、UCHL1、APRT、VPS35、MX1及びKIF11は特に有用であると評価できる。そこで好ましい一態様では、これらの中から選択される一又は二以上のタンパク質分子のレベルを指標とする。また、患者群と健常者群の間で発現レベルの顕著な差を認めたUCHL1、HSPA4L、VPS35、MX1、KIF11及びIGHMも注目に値する。そこで他の一態様では、これらの中から選択される一又は二以上のタンパク質分子のレベルを指標とする。一方、脳内でも発現を認めたANXA5、MAPRE1、EFHD2、TBCB、PPA1、GLRX3、HSP90AB1、PDXDC1、UCHL1、APRT、HARS、UROD、HSPA4L、GART、LACTB2、TATDN1、VPS35、MX1、KIF11及びEEF1Gは、統合失調症の病態形成に深く関与している可能性が高く、特に有用であるといえる。そこで好ましい一態様では、これらの中から選択される一又は二以上のタンパク質分子のレベルを指標とする。
本発明の検査法では以下のステップを行う。
(1)被検者由来の検体を用意するステップ
(2)前記検体中の前記一又は二以上のタンパク質分子(即ち、採用した一又は二以上のバイオマーカー)を検出するステップ
(3)検出結果に基づいて、統合失調症の現在又は将来の発症可能性を判定するステップ
ステップ(1)では被検者由来の検体を用意する。検体としては被検者の血液、血漿、血清、口腔粘膜、鼻粘膜、皮膚等を用いることができる。好ましくは、被検者から採取した血液リンパ球を不死化したリンパ球芽様細胞を検体とする。「リンパ球芽様細胞」とは、成熟リンパ球に分化する前の細胞に類似した細胞であり、血液から分離したリンパ球をエプスタイン・バールウイルスにより不死化させることによって調製することができる。株化されたリンパ球芽様細胞は、新鮮血液細胞に比べ、疾患の特徴・形質をより反映したタンパク質発現プロファイルを示すといえる。従って、リンパ球芽様細胞を検体とすれば、本来示すべき発現プロファイル(即ち、本件出法で検出されるべき発現プロファイル)を、当該疾患以外の要素である採取時の被検者の状態(状態依存性因子)がマスクすることを防止できる。その結果、疾患の特徴・形質をより反映した信頼度の高い検査結果が得られる。一方、被検者由来から採取した血液細胞を検体として用いることにしてもよい。この態様では株化の操作などが不要になることから、より簡便な検査が可能となる。血液細胞から分離したリンパ球、B細胞又はT細胞を検体としてもよい。尚、継代培養後の細胞を用いることにしてもよい。
被検者は特に限定されない。即ち、統合失調症の現在又は将来の発症可能性(即ち、統合失調症を発症している可能性の有無、統合失調症を発症している可能性の程度、統合失調症を将来発症する可能性の程度)の判定が必要な者に対して広く本発明を適用することができる。例えば、医師の問診などによって統合失調症であると診断された患者に対して本発明を適用した場合、タンパク質の発現レベルという客観的な指標に基づいて当該診断の当否を判定することができる。即ち、本発明の検査法によれば従来の診断を補助或いは裏付ける情報が得られる。当該情報は、より適切な治療方針の決定に有益であり、治療効果の向上や患者のQOL(Quality of Life、生活の質)の向上を促す。一方、罹患状態のモニターに本発明を利用し、難治化、重篤化、再発等の防止を図ることもできる。
家族背景などから統合失調症の罹患リスクが高いと推定される者(高リスク者)も好適な被検者である。このような被検者に対して統合失調症の症状が現れる前に本発明を適用することは、発症の阻止又は遅延或いは早期の治療介入を可能にする。統合失調症の罹患リスクが高い者を特定する目的にも本発明は有用である。このような特定は、例えば、予防的措置や生活習慣の改善等による発症可能性(罹患可能性)の低下を可能にする。自覚症状がない者など、従来の診断では統合失調症であるか否かの判定が不能又は困難な者も本発明の好適な被験者である。尚、健康診断の一項目として本発明を実施することにしてもよい。
ステップ(2)では検体中のバイオマーカーを検出する。バイオマーカーのレベルを厳密に定量することは必須でない。即ち、後続のステップ(3)において統合失調症の発症可能性が判定可能となる程度にバイオマーカーのレベルを検出すればよい。例えば、検体中のバイオマーカーのレベルが所定の基準値を超えるか否かが判別可能なように検出を行うこともできる。
バイオマーカーの検出方法は特に限定されないが、好ましくは免疫学的手法を利用する。免疫学的手法によれば迅速且つ感度のよい検出が可能である。また、操作も簡便である。免疫学的手法による測定では、採用するバイオマーカーに特異的結合性を有する物質を使用する。当該物質としては通常は抗体が用いられるが、当該バイオマーカーに特異的結合性を有し、その結合量を測定可能な物質であれば抗体に限らず採用できる。尚、市販の抗体に限らず、免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して新たに調製した抗体を使用してもよい。
測定法として、ラテックス凝集法、蛍光免疫測定法(FIA法)、酵素免疫測定法(EIA法)、放射免疫測定法(RIA法)、ウエスタンブロット法を例示することができる。好ましい測定法としては、FIA法及びEIA法(ELISA法を含む)を挙げることができる。これらの方法によれば高感度、迅速且つ簡便に検出可能である。FIA法では蛍光標識した抗体を用い、蛍光をシグナルとして抗原抗体複合体(免疫複合体)を検出する。一方、EIA法では酵素標識した抗体を用い、酵素反応に基づく発色ないし発光をシグナルとして免疫複合体を検出する。
ELISA法は検出感度が高いことや特異性が高いこと、定量性に優れること、操作が簡便であること、多検体の同時処理に適することなど、多くの利点を有する。ELISA法を利用する場合の具体的な操作法の一例を以下に示す。まず、抗バイオマーカー抗体を不溶性支持体に固定化する。具体的には例えばマイクロプレートの表面を抗バイオマーカーモノクローナル抗体で感作する(コートする)。このように固相化した抗体に対して検体を接触させる。この操作の結果、固相化した抗バイオマーカー抗体に対する抗原(バイオマーカーであるタンパク質分子)が検体中に存在していれば免疫複合体が形成される。洗浄操作によって非特異的結合成分を除去した後、酵素を結合させた抗体を添加することで免疫複合体を標識し、次いで酵素の基質を反応させて発色させる。そして、発色量を指標として免疫複合体を検出する。尚、ELISA法の詳細については数多くの成書や論文に記載されており、各方法の実験手順や実験条件を設定する際にはそれらを参考にできる。尚、非競合法に限らず、競合法(検体とともに抗原を添加して競合させる方法)を用いることにしてもよい。また、検体中のバイオマーカーを標識化抗体で直接検出する方法を採用しても、或いはサンドイッチ法を採用してもよい。サンドイッチ法では、エピトープの異なる2種類の抗体(捕捉用抗体及び検出用抗体)が用いられる。
プロテインアレイやプロテインチップ等、多数の検体を同時に検出可能な手段を用いることにしてもよい。プローブには例えば標的のバイオマーカー特異的な抗体が用いられる。
ステップ(3)では、検出結果に基づいて統合失調症の現在又は将来の発症可能性を判定する。精度のよい判定を可能にするため、ステップ(2)で得られた検出値を対照検体(コントロール)の検出値と比較した上で判定を行うとよい。発症可能性の判定は定性的、定量的のいずれであってもよい。尚、ここでの判定は、その判定基準から明らかな通り、医師や検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。
本発明では、原則として、各バイオマーカーについて以下の基準が採用される。言うまでもないが、「検出値が低いと発症可能性が高い」との基準は「検出値が高いと発症可能性が低い」との基準と同義である(その他の基準についても同様)。
「検出値が低いと発症可能性が高い」との基準、又は「検出できないと発症可能性が高い」との基準を採用するバイオマーカー:ANXA5、MAPRE1、EFHD2、TBCB、PPA1、GLRX3、LCP1、HSP90AB1、PDXDC1、UCHL1、APRT、HARS、UROD、HSPA4L、GART(三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3又は三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム)、LACTB2、TATDN1
「検出値が高いと発症可能性が高い」との基準、又は「検出できる発症可能性が高い」との基準を採用するバイオマーカー:VPS35、MX1、KIF11、EEF1G、IGHM(免疫グロブリンmu鎖C領域、免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質、免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO又は免疫グロブリン重鎖V-III領域GA)
定性的判定と定量的判定の具体例を以下に示す。尚、説明の便宜上、発現レベルの上昇が統合失調症の発症と相関するバイオマーカー(例えばVPS35やIGHM)と、発現レベルの低下が統合失調症の発症と相関するバイオマーカー(例えばUCHL1やHSPA4L)の二種類のバイオマーカーを用いた場合を例とした。バイオマーカーの使用数が異なる他の態様もこの例に準じて判定基準を設定することができる。
(定性的判定の例1)
基準値よりもバイオマーカー1の検出値(検体中レベル)が高く、且つ基準値よりもバイオマーカー2の検出値(検体中レベル)が低いときに「発症可能性が高い」と判定し、基準値よりもバイオマーカー1の検出値(検体中レベル)が低く、且つ基準値よりもバイオマーカー2の検出値(検体中レベル)が高いときに「発症可能性が低い」と判定する。
(定性的判定の例2)
バイオマーカー1を検出でき(反応性を認め)、且つバイオマーカー2を検出できない(反応性を認めない)ときに「発症可能性が高い」と判定し、バイオマーカー1を検出できず、且つバイオマーカー2を検出できたときに「発症可能性が低い」と判定する。
(定量的判定の例)
以下に示すように検出値の範囲毎に発症可能性(%)を予め設定しておき、検出値から発症可能性(%)を判定する。
バイオマーカー1の検出値がa〜b、バイオマーカー2の検出値がa’〜b’:発症可能性は10%以下
バイオマーカー1の検出値b〜c、バイオマーカー2の検出値b’〜c ’:発症可能性は10%〜30%
バイオマーカー1の検出値c〜d、バイオマーカー2の検出値c’〜d’:発症可能性は30%〜50%
バイオマーカー1の検出値d〜e、バイオマーカー2の検出値d’〜e ’:発症可能性は50%〜70%
バイオマーカー1の検出値e〜f、バイオマーカー2の検出値e’〜f ’:発症可能性は70%〜90%
二種類以上のバイオマーカーを組み合わせて用いる場合には、以下の(1)又は(2)の判定手法を採用してもよい。
(1)組合せに含まれるバイオマーカーの全てに関して陽性(カットオフ値以上)である場合を陽性(例えば発症可能性50%以上)と判定し、それ以外の場合を陰性(例えば発症可能性50%未満)と判定する。
(2)組合せに含まれるバイオマーカーの一つでも陽性(カットオフ値以上)の場合を陽性(例えば発症可能性50%以上)と判定し、それ以外の場合を陰性(例えば発症可能性50%未満)と判定する。
通常、組み合わせるバイオマーカーの種類及び数によって診断(検出)感度及び診断(検出)特異度が異なる。従って、目的に合わせて最適なバイオマーカーの組合せを選択するとよい。例えば、診断感度の高い組合せはスクリーニング的な検査に適する。対照的に、診断特異度の高い組み合わせは、より信頼性の高い判定が必要な検査(例えば2次検査や3次検査)に適する。診断感度及び診断特異度のバランスの異なる判定法を組み合わせることによって、効率化や確度ないし信頼性の向上を図ることが可能である。例えば、高い診断感度を与えるバイオマーカーの組合せを用いて陽性対象を絞り込んだ後(一次検査、スクリーニング検査)、高い診断特異度を与えるバイオマーカーの組合せを用いて最終的な判定を行う(2次検査)。このような2段階の判定に限らず、3段階以上の判定を行うことも可能である。
判定区分の数、及び各判定区分に関連付けられるバイオマーカーのレベル及び判定結果はいずれも上記の例に何らとらわれることなく、予備実験等を通して任意に設定することができる。例えば、所定の閾値を境界として発症可能性の高低を判定する場合の「閾値」や、発症可能性の高低に係る区分に関連づける「バイオマーカーのレベル範囲」は、多数の検体を用いた統計的解析によって決定することができる。統計処理を利用して解析する場合には、一般に、高リスク群と低リスク群を設定することが有効である。高リスク群としては例えば、統合失調症患者の集団や家系に統合失調症患者の多い者の集団が該当し、低リスク群としては例えば、健常者の集団や家系に統合失調者患者のいない者の集団が該当する。
本発明の一態様では、同一の被検者について、ある時点で測定されたバイオマーカーのレベルと、過去に測定されたバイオマーカーのレベルとを比較し、バイオマーカーのレベルの増減の有無及び/又は増減の程度を調べる。その結果得られる、バイオマーカーの発レベル変化に関するデータは統合失調症の発症可能性の変化をモニターするために有用な情報となる。即ち、バイオマーカーレベルの変動を根拠として、前回の検査から今回の検査までの間に発症可能性が高くなった又は低くなった或いは変化がないとの判定を行うことができる。このような評価を統合失調症の治療と並行して行えば、治療効果の確認が行えることはもとより、統合失調症の再発の兆候を事前に把握することができる。これによって、より適切な治療方針の決定が可能となる。このように本発明は、治療効果の最大化及び患者のQOL(生活の質)向上に多大な貢献をし得る。
(本発明の第3の局面:統合失調症の発症可能性検査用試薬及びキット)
本発明はさらに、統合失調症の発症可能性を検査するための試薬及びキットも提供する。本発明の試薬は本発明のバイオマーカーに特異的結合性を示す物質(以下、「結合分子」と呼ぶ)からなる。結合分子の例として、バイオマーカーを特異的に認識する抗体、核酸アプタマー及びペプチドアプタマーを挙げることができる。結合分子は、採用するバイオマーカーに対する特異的結合性を有する限り、その種類や由来などは特に限定されない。また、抗体の場合、ポリクローナル抗体、オリゴクローナル抗体(数種〜数十種の抗体の混合物)、及びモノクローナル抗体のいずれでもよい。ポリクローナル抗体又はオリゴクローナル抗体としては、動物免疫して得た抗血清由来のIgG画分のほか、抗原によるアフィニティー精製抗体を使用できる。抗MIP1α抗体が、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv抗体などの抗体断片であってもよい。
結合分子は常法で調製すればよい。市販品が入手可能であれば、当該市販品を用いても良い。例えば、抗体であれば免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することができる。免疫学的手法によるポリクローナル抗体の調製は次の手順で行うことができる。抗原(バイオマーカー又はその一部)を調製し、これを用いてウサギ等の動物に免疫を施す。生体試料を精製することにより抗原を得ることができる。また、組換え型抗原を用いることもできる。組換え型抗原は、例えば、バイオマーカーをコードする遺伝子(遺伝子の一部であってもよい)を、ベクターを用いて適当な宿主に導入し、得られた組換え細胞内で発現させることにより調製することができる。
免疫惹起作用を増強するために、キャリアタンパク質を結合させた抗原を用いてもよい。キャリアタンパク質としてはKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)、BSA(Bovine Serum Albumin)、OVA(Ovalbumin)などが使用される。キャリアタンパク質の結合にはカルボジイミド法、グルタルアルデヒド法、ジアゾ縮合法、MBS(マレイミドベンゾイルオキシコハク酸イミド)法などを使用できる。一方、MIP1α(又はその一部)を、GST、βガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク、又はヒスチジン(His)タグ等との融合タンパク質として発現させた抗原を用いることもできる。このような融合タンパク質は、汎用的な方法により簡便に精製することができる。
必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で採血し、遠心処理などによって血清を得る。得られた抗血清をアフィニティー精製し、ポリクローナル抗体とする。
一方、モノクローナル抗体については次の手順で調製することができる。まず、上記と同様の手順で免疫操作を実施する。必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で免疫動物から抗体産生細胞を摘出する。次に、得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合してハイブリドーマを得る。続いて、このハイブリドーマをモノクローナル化した後、目的タンパク質に対して高い特異性を有する抗体を産生するクローンを選択する。選択されたクローンの培養液を精製することによって目的の抗体が得られる。一方、ハイブリドーマを所望数以上に増殖させた後、これを動物(例えばマウス)の腹腔内に移植し、腹水内で増殖させて腹水を精製することにより目的の抗体を取得することもできる。上記培養液の精製又は腹水の精製には、プロテインG、プロテインA等を用いたアフィニティークロマトグラフィーが好適に用いられる。また、抗原を固相化したアフィニティークロマトグラフィーを用いることもできる。更には、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、硫安分画、及び遠心分離等の方法を用いることもできる。これらの方法は単独ないし任意に組み合わされて用いられる。
バイオマーカーへの特異的結合性を保持することを条件として、得られた抗体に種々の改変を施すことができる。このような改変抗体を本発明の試薬としてもよい。
特異的結合分子として標識化抗体を使用すれば、標識量を指標に結合抗体量を直接検出することが可能である。従って、より簡便な検査法を構築できる。その反面、標識物質を結合させた抗体を用意する必要があることに加えて、検出感度が一般に低くなるという問題点がある。そこで、標識物質を結合させた二次抗体を利用する方法、二次抗体と標識物質を結合させたポリマーを利用する方法など、間接的検出方法を利用することが好ましい。ここでの二次抗体とは、採用するバイオマーカーに特異的な抗体に対して特異的結合性を有する抗体である。例えば、バイオマーカーに特異的な抗体をウサギ抗体として調製した場合には抗ウサギIgG抗体を二次抗体として使用することができる。ウサギやヤギ、マウスなど様々な種の抗体に対して使用可能な標識二次抗体が市販されており(例えばフナコシ株式会社やコスモ・バイオ株式会社など)、本発明の試薬に応じて適切なものを適宜選択して使用することができる。
標識物質の例は、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素などの酵素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)及びユーロピウムなどの蛍光物質、ルミノール、イソルミノール及びアクリジニウム誘導体などの化学発光物質、NADなどの補酵素、ビオチン、並びに131I及び125Iなどの放射性物質である。
一態様では、本発明の試薬はその用途に合わせて固相化されている。固相化に用いる不溶性支持体は特に限定されない。例えばポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂や、ガラス等の水に不溶性の物質からなる不溶性支持体を用いることができる。不溶性支持体への抗体の担持は物理吸着又は化学吸着によって行うことができる。
本発明のキットは主要構成要素として本発明の試薬を含む。検査法を実施する際に使用するその他の試薬(緩衝液、ブロッキング用試薬、酵素の基質、発色試薬など)及び/又は装置ないし器具(容器、反応装置、蛍光リーダーなど)をキットに含めてもよい。また、標準試料としてバイオマーカーであるタンパク質分子又はその断片をキットに含めることが好ましい。尚、通常、本発明のキットには取り扱い説明書が添付される。
統合失調症関連分子の同定を目指して本研究を行った。統合失調症に関しては、過去に死後脳を用いたプロテオーム解析が行われているが、死後変化および治療薬の影響を受けている等の可能性を否定できないという問題がある。本研究では、統合失調症患者の末梢血液からリンパ芽球様細胞株を樹立し、二次元電気泳動法によりタンパク質の発現変化について網羅的に解析することにした。リンパ芽球様細胞株を用いることにより、治療薬や併発する身体疾患、更には採血時点における日内変動などの状態依存性因子による影響を最小化した検討が可能と考えられる。
1.リンパ芽球様細胞株の樹立方法(図1)
解析対象とした統合失調症患者(schizophrenia; SCZ)及び健常者(control; CON)の背景を図2に示す。統合失調症患者及び健常者の末梢血5 mLに生理食塩水(saline; SAL;大塚製薬株式会社,東京)5 mLを加えて希釈し、Ficoll-Paque PLUS(GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)液3.5 mLを加えた15 mLチューブ(15 mL Conical Tube; BD Falcon, San Jose, CA, USA)に重層し、室温で670×g(1900 rpm; KN-70;久保田商事株式会社, 東京)、30分間遠心分離した。遠心後、上層を除去した後、リンパ球細胞を含む中間層を採取し、生理食塩水(大塚製薬株式会社)10 mLで懸濁し、室温で418×g(1500 rpm; KN-70)、15分間遠心した。上清を除去し、白色沈渣に液体基礎培地5 mL加え懸濁後、室温で418×g(1500 rpm; KN-70)、15分間遠心した。上清を除去し、得られたリンパ球細胞を芽球化用培地5 mLに懸濁して37℃、5% CO2下にて培養を開始した。
液体基礎培地の組成は、RPMI1640培地[炭酸水素ナトリウム, L-グルタミン (+); Invitrogen, Carlsbad, CA, USA] にペニシリン(penicillin)‐ストレプトマイシン(streptomycin)溶液(10,000U/10,000μg/mL, GIBCO)、酒石酸チロシン(tyrosine tartarate; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)をそれぞれペニシリン50μg/ml、ストレプトマイシン50μg/ml、チロシン50 mg/mLとなるように添加した。継代には、液体基礎培地に牛胎仔血清(featal bovine serum; FBS; Invitrogen, Lot # 1299344)の濃度が20%および10%となるように添加した20% FBS培地および10% FBS培地を作成し、使用した。芽球化用培地は、20% FBS培地4 mLに、エプスタイン・バールウイルス(Epstein-Barr virus; EBV)ろ過液1 mLとシクロスポリンA(cyclosporin A; CyA; サンディミュン注射液; Novartis Pharmaceuticals, New York, NY, USA)を2μg/mLとなるように添加した。
継代は、週に2回培地交換を行い、最初の2週間は20% FBS培地で培養し、その後10% FBS 培地を用いて培養した。細胞がコロニーを形成するのを確認し(約4週間経過後)、凍結した。
凍結は、培養液を懸濁して50 mLチューブ(50 mL Conical Tube; BD Falcon)に採取し、室温で225×g(1100 rpm; KN-70)、5分間遠心した。上清を除去し、セルバンカー1(十慈フィールド株式会社, 東京)10 mLを加えて懸濁し、2 mLクライオジェニックバイアル(ガンマ線滅菌済, インナーキャップ; BD Falcon)に細胞懸濁液1 mLずつ分注した後、液体窒素中で凍結保存した。
2.リンパ芽球様細胞株からのタンパク質の抽出およびタンパク質の精製
液体窒素中に凍結保存した性別および年齢を一致させた統合失調症患者と健常者のリンパ芽球様細胞株を同時に融解し、室温で225×g(1100 rpm; KN-70)、5分間遠心した。上清を除去し、20% FBS培地10 mLを加えて懸濁し、室温で225×g(1100 rpm; KN-70)、5分間遠心した。この操作をもう一度繰り返すことで保存液(セルバンカー1)を除去した後、20% FBS培地で培養を開始した。継代は、週に2回培地交換を行い、最初の7日間は20% FBS 培地で培養し、その後10% FBS培地を用いて14日間培養した。継代の際には、培養日時および細胞濃度が3×105 cells/mLとなるように細胞数を調節することで、サンプル間の培養条件を統一させた。このようにして、同一培養条件で21日間の継代培養を行った細胞からタンパク質を抽出した。細胞懸濁液30 mLを室温で190×g(1000 rpm; KN-70; 久保田商事株式会社, 東京)、5分間遠心した後、リン酸緩衝液生理食塩水(phosphate buffer saline; PBS)10 mLで3回洗浄[室温, 190×g (1000 rpm; KN-70), 5分間遠心]し、上清を除去して白色沈渣にPBS 1 mLを添加し、4℃で1372×g(3800 rpm; himac CT13R; 日立工機株式会社, 東京)、5分間遠心し、試薬を添加して細胞を破砕した。氷冷下30分間インキュベートした後、4℃で16060×g(13000 rpm)、20分間遠心して上清を回収し、メタノール(関東化学, 東京)、アセトン(関東化学)を用いてタンパク質を精製し(メタノール−アセトン沈殿法)、解析に使用するまで-80℃にて保存した。
3.2D-DIGE法によるタンパク質発現の比較解析(図3)
精製したタンパク質を2D-DIGE法により発現変化の直接比較を行った。統合失調症患者および対照健常者サンプルのタンパク質をCy3またはCy5(CyDye DIGE Fluor minimal dyes; GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA) で蛍光標識し、解析する全てのサンプルの等量混合物として作成した内部標準(internal standard; IS)をCy2(CyDye DIGE Fluor minimal dyes; GE Healthcare)で蛍光標識した。Cy3、Cy5およびCy2で標識したタンパク質の30μg相当量を混合した後、ドライストリップゲル(24 cm Immobiline DryStrip pH 3-10 NL; GE Healthcare)にアプライし、一次元目の電気泳動である等電点電気泳動(isoelectric focusing; IEF)を行った。IEFにはEttan IPGphor 3 IEF system(Ettan IPGphor 3 Isoelectric Focusing Unit; GE Healthcare)を用いた。IEFは20℃で行い、泳動条件は12時間のドライストリップゲルの再膨潤化反応(rehydration)の後、30 V−2時間、100 V−1時間、200 V−5分間の後、8時間30分グラジエントをかけて8000 Vまで電圧を上昇させ、8000 V−7時間30分泳動を行った。二次元目はEttan DALTsix(GE Healthcare)を用いて、SDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate-polyaclylamide gel electophoresis)を行った。10%ポリアクリルアミドゲル(24×20×0.1 cm)を用い、30℃にて10 mA/gel、80 V、1 W/gelで1時間、12 mA/gel、150 V、2 W/gelで泳動の先端がゲルの端に到達するまで(15〜17時間) 泳動した。蛍光画像解析装置(Typhoon Trio; GE Healthcare)を用いて、Cy3、Cy5およびCy2で標識したそれぞれのタンパク質の泳動像を可視化した。ゲル内のタンパク質スポット検出とゲル間の差異解析は、2次元電気泳動解析ソフトウェア(PDQuest Advanced Version 8.0; Bio-Rad, Hercules, CA, USA)を用いて発現量比較解析を行った。統合失調症患者に特異的なタンパク質の発現があることも考慮し、個々の泳動像上に存在する全てのタンパク質スポットを解析対象とした。内部標準ゲルを基準とした各タンパク質スポットの発現量を求めることでゲル間における発現強度の違いを補正し、統合失調症患者群と健常者群間のタンパク質スポットの発現量を比較した。
1174スポット中、発現量の有意な差異(p<0.05)を認めたスポットは20であった(図4、5)。発現に差異の認められたこれらのタンパク質スポットについては、Peptide mass fingerprinting (PMF) 法による同定を試みた。
4.PMF法によるタンパク質の同定
上記2.において作成した内部標準サンプルの100μg相当量を標識せずにドライストリップゲル(24 cm Immobiline DryStrip pH 3-10 NL; GE Healthcare)にアプライし、同様の方法で二次元電気泳動を行い、銀染色法によりタンパク質スポットを可視化した。電気泳動後、ゲルを一晩固定液[30% メタノール(関東化学) / 10% 酢酸(関東化学) 液]に浸した。20%エタノール(関東化学)液で40分間洗浄した後、滅菌精製水(MilliQ)で5分間ずつ3回洗浄した。増感剤[0.02% チオ硫酸ナトリウム(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) 液]に2分間浸し、滅菌精製水(MilliQ)で30分間ずつ3回洗浄した後、染色液[0.2% AgNO3 (Sigma-Aldrich) 液]に25分間浸した。滅菌精製水(MilliQ)で1分間ずつ3回洗浄した後、発色液[3% Na2CO3 (Sigma-Aldrich) / 0.001% チオ硫酸ナトリウム (Sigma-Aldrich) / 0.05 v/v %ホルマリン (Wako, 大阪) 液]に2分程度浸し、停止液[1.4% Na2-EDTA (Sigma-Aldrich) 液]に10分浸した。候補タンパク質のスポットを一つずつ切り出し、0.02%チオ硫酸ナトリウム / 0.2%フェリシアン化カリウム液で脱銀染色を行った。アセトニトリルで脱水した後、Speed Vac(VC-36R; TAITEC, 埼玉)を用いて乾燥し、10mM DTT液[100mMジチオトレイトール (DTT, Wako) : 100mM NH4HCO3 =1:9液]と100mM iodoacetoamide液[100mM NH4HCO3 1mLにiodoacetoamide (Wako) 18mgを添加]によるシステイン残基のアルキル化を行った。アセトニトリルで脱水した後、Speed Vac(VC-36R)を用いて乾燥し、50倍希釈したtrypsin(Trypsin Gold, Mass Spectrometry Grade; Promega, WI, USA)を用いて一晩タンパク質のトリプシン消化を行った。0.1% Trifluoroacetic acid(TFA)を含む50% アセトニトリルでペプチド抽出を行い、質量分析装置[HPLC: MAGIC2002 (Michrom Bioresources, Inc., CA, USA)、ハイスループットLC/MS用オートサンプラー: HTC-PAL(CTC Analytics AG, Switzerland)、Ion trap MS: LCQ Advantage(Thermo Fisher Scientific Ltd., MA, USA)]によるMSスペクトルの測定を行った。得られたMS/MSデータを基に、タンパク質同定ソフト(MASCOT; Matrix Science, MA, USA)により、Swiss-ProtとTrEMBLのデータベースと照合することでタンパク質の同定を行った(図5)。また、脳での発現の有無も確認した(図5)。
同定結果を図6に示す。20スポットから、22種類のタンパク質(同一の遺伝子にコードされるタンパク質群はまとめて一つとした)が同定された。統合失調症患者群において発現上昇を認めたタンパク質が5個(最も発現上昇したものは約1.8倍の発現レベル)、逆に発現低下を認めるタンパク質が17個(最も発現低下したものは約0.5倍の発現レベル)であった。尚、ANXA5、MAPRE1、EFHD2、TBCB、PPA1、UCHL1、APRT、VPS35、MX1及びKIF11のp値は特に低く、統合失調症と強い相関があることを示唆する。また、UCHL1、HSPA4L、VPS35、MX1、KIF11及びIGHMは、発現レベルが患者群と健常者群の間で顕著に相違し、統合失調症の病態形成への深い関与を窺わせる。
以上のように、統合失調症特異的な発現変化を示すタンパク質(遺伝子の数として22種類)を同定することに成功した。これらのタンパク質は、統合失調症の病態形成に関与していることが予想されるものであり、統合失調症の発症可能性の指標として有用といえる。尚、同定されたタンパク質の殆ど(LCP1とIGHM以外)は脳内でも発現が認められる(図6)。このように脳内での発現を認めるタンパク質は統合失調症の病態形成に深く関与している可能性が高く、特に有用であると考えられる。
本発明の検査法は、統合失調症の発症可能性を簡便且つ客観的に判定することを可能にする。本発明の検査法は、統合失調症を発症しているか否かを判定するための手段として有用である。また、将来発症する可能性を把握するための手段としても有用である。本発明の検査法を利用した早期発見・早期治療によって、統合失調症の難治化、重篤化(病勢の進行)、再発等の防止を図ることが期待される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (12)

  1. アネキシンA5、微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1、EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2、チューブリン・フォールディング・コファクターB、無機ピロフォスファターゼ、グルタレドキシン-3、プラスチン-2、熱ショックタンパク質90β、ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1、ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素、熱ショック70kDaタンパク質4L、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム、βラクタマーゼ様タンパク質2、推定デオキシリボヌクレアーゼTATDN1、液胞タンパク質選別関連タンパク質35、インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1、キネシン様タンパク質KIF11、伸長因子1-γ、免疫グロブリンmu鎖C領域、免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質、免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO及び免疫グロブリン重鎖V-III領域GAからなる群より選択される、いずれかのタンパク質分子からなる、統合失調症マーカー。
  2. アネキシンA5、微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1、EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2、チューブリン・フォールディング・コファクターB、無機ピロフォスファターゼ、グルタレドキシン-3、プラスチン-2、熱ショックタンパク質90β、ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1、ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素、熱ショック70kDaタンパク質4L、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム、βラクタマーゼ様タンパク質2、推定デオキシリボヌクレアーゼTATDN1、液胞タンパク質選別関連タンパク質35、インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1、キネシン様タンパク質KIF11、伸長因子1-γ、免疫グロブリンmu鎖C領域、免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質、免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO及び免疫グロブリン重鎖V-III領域GAからなる群より選択される一又は二以上のタンパク質分子についての検体中レベルを指標として用いることを特徴とする、統合失調症検査法。
  3. 以下のステップ(1)〜(3)を含む、請求項2に記載の統合失調症検査法:
    (1)被検者由来の検体を用意するステップ;
    (2)前記検体中の前記一又は二以上のタンパク質分子を検出するステップ;及び
    (3)検出結果に基づいて、統合失調症の現在又は将来の発症可能性を判定するステップ。
  4. アネキシンA5、微小管関連タンパク質RP/EBファミリー・メンバー1、EF-ハンド・ドメイン含有タンパク質D2、チューブリン・フォールディング・コファクターB、無機ピロフォスファターゼ、グルタレドキシン-3、プラスチン-2の検出値、熱ショックタンパク質90β、ピリドキサール依存性脱炭酸酵素ドメイン含有タンパク質1、ユビキチン・カルボキシル末端加水分解酵素アイソザイムL1、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞質性ヒスチジルtRNA合成酵素、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素、熱ショック70kDaタンパク質4L、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3、三官能基プリン生合成タンパク質アデノシン-3 ショートアイソフォーム、βラクタマーゼ様タンパク質2、及び推定デオキシリボヌクレアーゼTATDN1については、検出値が低いと発症可能性が高いとの基準、又は検出できないと発症可能性が高いとの基準に従い、
    液胞タンパク質選別関連タンパク質35、インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1、キネシン様タンパク質KIF11、伸長因子1-γ、免疫グロブリンmu鎖C領域、免疫グロブリンmu重鎖疾患タンパク質、免疫グロブリン重鎖V-III領域BRO、及び免疫グロブリン重鎖V-III領域GAについては、検出値が高いと発症可能性が高いとの基準、又は検出できると発症可能性が高いとの基準に従い、ステップ(3)の判定を行う、請求項3に記載の方法。
  5. ステップ(2)で得られた検出値と対照検体の検出値との比較に基づきステップ(3)の判定を行う、請求項3又は4に記載の統合失調症検査法。
  6. ステップ(2)で得られた検出値と、同一の被検者から過去に採取された検体中の検出値との比較に基づきステップ(3)の判定を行う、請求項3又は4に記載の統合失調症検査法。
  7. 前記検体が血液、血漿、血清、口腔粘膜、鼻粘膜又は皮膚である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の統合失調症検査法。
  8. 前記検体が、被検者から採取した血液リンパ球を不死化したリンパ球芽様細胞である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の統合失調症検査法。
  9. 前記検体が、被検者から採取した血液細胞である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の統合失調症検査法。
  10. 請求項1に記載の統合失調症マーカーに特異的結合性を示す物質からなる、統合失調症検査試薬。
  11. 前記物質が抗体である、請求項10に記載の統合失調症検査試薬。
  12. 請求項10又は11に記載の統合失調症検査試薬を含む、統合失調症検査用キット。
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