JP2012005494A - 人工ヨシ原 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヨシを汽水域の塩分でも枯れないように植栽して、汽水域に人工的なヨシ原を創出する。
【解決手段】汽水域Aを人工ヨシ原Bの予定区域に、石塁11aなどの透水性の堤11を築く。堤11の内側に、ヨシの植栽土壌12を入れ、その地盤高を平均潮位より高めに設定して、土壌間隙水の塩分を実用塩分で14PSU以下になるようにする。かかる植栽土壌12にヨシを株植えして人工ヨシ原Bを構築する。
【選択図】図1

Description

本発明は、淡水と海水とが混じり合った汽水域に、人工的にヨシを植栽する技術に関し、特に塩分被害を受けずにヨシの生育環境を人工的に創出する技術である。
近年、水環境の汚染が著しく、大きな社会問題となっている。例えば、大きな湖などでは、湖周辺の宅地化が急速に進み、住環境から流される洗濯水などの生活排水、雑排水により湖が富栄養化してその汚染が進行している。豊富な漁業資源により支えられていた湖など沿岸漁業も、水質の悪化に伴う急激な漁業資源の減少に伴い、廃業を余儀なくされている場合も見られる。
かかる汚染状況の改善は、急務の課題であり、今までに多数の改善手法が提案されてきた。かかる種々の改善手法が提案されるなかで、最近、水辺植物であるヨシの水質浄化に果たす役割が見直されている。従来は、湖や川などの周辺に、群落をなして自然に生えていたヨシも、近年の湖、川周辺の宅地化に伴いその多くは姿を消している。
しかし、ヨシ原の群落により、ヨシ原が存在する湖などの水質の自然浄化が行われていたことが、最近の研究で分かってきた。
そこで、水質の悪化した湖などでは、人工的にヨシ原を再現する取り組みが行われるようになってきた。従来のヨシ原を人工的に造成しようとする試みは、周囲と区画する堰堤または土塁を築き、かかる堰堤または土塁の内側に、植栽土壌を入れて、この植栽土壌にヨシを株または地下茎などにより植え付けることにより行われていた。
因みに、ヨシは、漢字で「葦」と記載し、「あし」とも呼ばれる。
しかし、上記従来構成の人工的なヨシ原の造成方法では、川や、淡水湖などの淡水水域では十分にヨシの生育方法が確立されているものの、淡水と海水とが混ざった汽水域での造成にはそのまま適用できない場合も多かった。ヨシの生育が、汽水中の塩分により阻害されるためである。
従来、ヨシ原を人工的に造成しようとする現地の汽水中の塩分、および潮位変動などに対して、ヨシを植え付ける植栽床の構造(土質、地盤高さ)については、どのような構成が好ましいかという明確な基準はなかった。淡水域での植栽状況を試行錯誤的に当てはめて、汽水域でのヨシ原復元がなされてきたのである。
そのため、汽水域に設けた従来構成の人工ヨシ原では、汽水中の塩分などの影響を受け、ヨシが水中の塩分により枯れたりなどして、確実にヨシを生育することが困難であった。すなわち、従来は、ヨシの塩分耐性、適地選定の基準が明確でなかったのである。
本発明者らは、かかるヨシ原造成に際しての基準を明確にして、ヨシの生育に対する塩分の被害を最小限にくい止め、確実なヨシ原の造成を積極的に図り、自然な形での水質浄化を強く進める必要があると考えた。
併せて、従来構成の人工ヨシ原では、植栽土壌として、園芸などで使用する造園用土が使用されており、広範なヨシ原の造成を行うに当たっては、施工コストの低減という観点から割高であると本発明者は考えた。園芸用土を使用せずに、施工コストの低減化が積極的に図れる使用土壌の検討も必要と考えた。
また、従来は、硫化物を多く含む底泥などは、ヨシの根圏が嫌気化するためヨシの生育が困難となることが指摘されていた。しかし、航路確保などのために浚渫される浚渫土を利用することができれば、施工コストの観点からは極めて有利である。そこで、本発明者は、かかる浚渫土の利用についての検討も必要と考えた。
本発明の目的は、ヨシが汽水域の塩分でも枯れないように植栽して、汽水域に人工的なヨシ原を創出することにある。
本発明の人工ヨシ原は、汽水域に人工的にヨシ原を造成する人工ヨシ原であって、ヨシを植栽する植栽土壌と、前記植栽土壌を囲み、前記植栽土壌の流亡を防止する透水性の土壌流亡防止堤とを有することを特徴とする。
本発明の人工ヨシ原は、汽水域に人工的にヨシ原を造成する人工ヨシ原であって、ヨシを植栽する植栽土壌と、前記植栽土壌を囲む透水性の堤とを有することを特徴とする。
本発明の人工ヨシ原は、前記堤と、前記植栽土壌との間には、前記植栽土壌の流亡を防止する土壌流亡防止層が介在されていることを特徴とする。
本発明の人工ヨシ原は、前記植栽土壌は、前記ヨシの地下茎が植栽される植栽床土壌と、前記植栽床土壌の下に設けられる植栽床下土壌とから構成されることを特徴とする。
本発明の人工ヨシ原は、前記植栽床土壌は、シルト・粘土混じり砂質土、あるいは小礫混じり砂質土であることを特徴とする。
本発明により、表層の塩分の低い部分が少ない汽水域においても、ヨシ根圏への塩分の影響を減らし、確実にヨシを活着させることができる。
本発明により汽水域の当該地域に最適な地盤高の設計基準が明確にされるので、ヨシの生育可能な地盤高の低い部分にまで確実にヨシを植栽することができる。
本発明では、植栽土壌に浚渫により発生する底泥も使用することができる。硫化物を含む底泥、透水性の良くないシルト・粘土分の多い底泥などをも使用することができ、園芸用土を使用することなく低コストの人工ヨシ原の造成を行うことができる。
本発明により、閉鎖性の汽水域の水際にヨシ原を造成することができるため、かかる閉鎖性の汽水域の水質浄化をこのヨシ原で行うことができる。
本発明では、造成予定地の汽水域の表層塩分、潮位などの環境条件からヨシ根圏の地下水塩分を算出して地盤高を設定することができるので、表層塩分によるヨシの生育限界を評価する従来とは異なり、適切な人工ヨシ原の造成が行える。
本発明では、汽水域の表層の塩分に対するヨシ原根圏の地下水の塩分低下量、および干出水没を考慮した上でのヨシ根圏の地下水の塩分状況に合わせて地盤高を設定することができるので、従来の表層塩分に基づくヨシの生育限界評価からではヨシの生育が不可能と考えられていた高塩分表層の汽水域においても、ヨシ原を人工的に造成することができる。
本発明の人工ヨシ原の造成状況を示す斜視図である。 図1に示す人工ヨシ原のA−A線で切断した断面図である。 実験区域の設定環境を示す説明図である。 ヨシ植栽実験区の概要を表形式で示す説明図である。 ヨシ植栽実験区の地下水位の変動状況を示すグラフである。 実験区ごとの月平均潮位、日平均水深、日平均水没時間を表形式で示す説明図である。 ヨシ植栽土壌間隙水中の平均塩分を示すグラフ図である。 ヨシ植栽土壌間隙水中の平均塩分の様子を表形式で示す説明図である。 ヨシの地上部の生長量調査対照区の設定状況を示す説明図である。 ヨシの地上部の調査地点の状況を表形式で示す説明図である。 (A)、(B)は、対照区における地上茎平均本数、平均茎丈延長からみた生長量を示すグラフ図である。(C)、(D)は、実験区における地上茎平均本数、平均茎丈延長からみた生長量を示すグラフ図である。 (A)、(B)は、対照区における地上部平均新鮮重量、平均乾燥重量からみた生長量を示すグラフ図である。(C)、(D)は、実験区における地上部平均新鮮重量、平均乾燥重量からみた生長量を示すグラフ図である。 実験区のヨシの地下茎の生長量を表形式で示す説明図である。 (A)はヨシの平均地上茎丈を示すグラフ図であり、(B)はヨシの平均本数を示すグラフ図である。 実験区および対照区における実測値を表形式で示す説明図である。 実施例2における人工ヨシ原の構成を示す斜視図である。 (A)、(B)は、植栽土壌に透水性の良好な土壌を用いた場合の図16に示す人工ヨシ原の断面図である。 (A)、(B)は、植栽土壌に透水性の良好でない土壌を用いた場合の図16に示す人工ヨシ原の断面図である。 実施例3に示す排水路を設けた構成の人工ヨシ原の斜視図である。 (A)、(B)は、図19に示す人工ヨシ原の断面図である。 (A)、(B)、(C)は、排水路の変形例をそれぞれ示す。 (A)は実施例4に示す浮島状態に形成した人工ヨシ原の斜視図であり、(B)は断面図である。 植栽土壌の間隙水の塩分測定の状況を示す説明図である。 塩分低下量と月平均干出率×月別降水量との相関を示すグラフ図である。 地表下20cmの地下水の塩分月平均値を示すグラフ図である。 ヨシ地上部の生産量を示すグラフ図である。 天然ヨシ原根圏の月平均干出率を示すグラフ図である。 根圏干出率とヨシ生産量との関係を示す相関図である。 見かけの地表下20cmの地下水の塩分(干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分)の算出結果を示すグラフ図である。 ヨシ根圏の干出率を考慮しない場合の地表下20cmの地下水塩分を8月度に連続測定した実測値を示すグラフ図である。 ヨシ根圏の干出率を考慮しない場合の地表下20cmの地下水塩分を9月度に連続測定した実測値を示すグラフ図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の人工ヨシ原の造成状況を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線で切断した様子を示す断面図である。
図1に示す場合には、汽水湖などの汽水域Aの水際のコンクリート護岸10を背にして、人工ヨシ原Bが設けられている。人工ヨシ原Bは、図1に示すように、コンクリート護岸10に沿った所定範囲の前方を略コ字形に透水性の堤11が築かれ、内側に植栽土壌12が設けられて構成されている。図1に示す場合には、堤11は、石塁11aに構成されている。
石塁11a(11)は、汽水域Aのコンクリート護岸10側の水際、すなわち、コンクリート護岸10の構築位置から所定距離汽水域Aの沖側に向けて構築され、所定距離沖側に進んだ地点で、コンクリート護岸10に沿って構築され、所定長さ構築した地点で、コンクリート護岸10に向けて構築され、上方から見た場合に略コ字形になるように構築されている。
石塁11aは、図2に示すように、捨石13を、汽水域Aの漸次深くなる原地地盤である底面14に沿って、中央部が盛り上がるように断面山形に積み上げて構築すればよい。捨石13で築いた石塁11aを堤11として使用することにより、積み上げた捨石13の隙間を通して水が通り抜け、堤11の透水性が確保できる。石塁11aの中央部の高さは、植栽土壌12の地表レベルに合わせて設定しておけばよい。
図2の断面図に示すように、石塁11aの内側には、石塁11aの内面に沿って所定の厚さで土壌流亡防止層15が構築されている。土壌流亡防止層15は、例えば、砂を充填した土嚢、あるいは砕石などを積み上げて構築すればよい。かかる構成の土壌流亡防止層15の高さは、植栽土壌12の高さに合わせて構築されている。
石塁11aに構成した堤11により植栽土壌12の波浪などによる浸食が防止される。併せて、石塁11aを構成する捨石13の隙間から水が石塁11aの外側と内側とを行き来することで、透水性が確保されている。植栽土壌12の表面が冠水し、その後水が引いた状態で水が溜まると、そのままの状態では干出時に植栽土壌の塩分が濃縮されて高くなるが、かかる干出時でも、堤11に透水性を持たせておけば、水が堤11を通って植栽土壌12内に通ってくるので塩分が高くならないように抑えることができる。
堤11の内側に設けた土壌流亡防止層15により植栽土壌12の流亡をより効果的に抑えることができる。なお、堤11の透水性を確保できる構造であれば、上記構成の石塁11a以外の構成であってもよい。石塁11a以外の堤11を構成することにより、十分な透水性を確保することができると共に、土壌流亡防止機能をも持たせることができれば、前記説明の土壌流亡防止層15の構成を設けなくても構わない。かかる構成については、後記する実施例4で詳細に述べる。
内側に土壌流亡防止層15を設けた石塁11aにより囲まれた範囲には、植栽土壌12が入れられている。植栽土壌12は、図2に示すように、植栽床下土壌12aと、植栽床土壌12bとから構成されている。植栽床下土壌12aには、砂利、砕石、砂質土など透水性の良好な土壌を使用すればよい。このようにして透水性を確保することにより、石塁11aを通過する汽水域Aの水を、さらに植栽土壌12内に進入させて通過してきた水を浄化させることができる。
また、ヨシ植栽床下土壌12aの透水性を良好にすることにより、その上のヨシ植栽床土壌12bの透水性も併せて良好にすることができ、ヨシCの根の周りが好気的となり、ヨシの地下茎の発達を良くすることもできる。
このように植栽床下土壌12aに透水性の良好な土壌を使用することが、植栽床土壌12bの透水性を確保するためには好ましいが、しかし、植栽床土壌12bに、ヨシの地下茎の発達に必要な透水性を十分に確保できる土壌を使用することができれば、植栽床下土壌12aには、透水性の低い、あるいは透水性のない土壌を使用しても構わない。
また、堤11は、ヨシ原の外側に向けて、穏やかな緩い勾配が付けられている。これは、ヨシ原周囲からハゼ類などの魚類、アシワラガニなどの甲殻類、カワザンショウガイなどの貝類のような生物がヨシ原内に進入し易いようにするためである。かかる底生生物の進入を確保することで、自然のヨシ原に見られる生物環境の復元が行われる。単に水質浄化の目的だけではなく、自然の生物環境を復元することで、豊かな生態系の再現が図れるのである。堤の内外で大きな段差を設けては、かかる生物の進入が図れない。
かかる植栽床下土壌12aは、汽水域Aの底面14に沿って投入され、植栽床土壌12bの地表面12cからの深度が25cm以上低いレベルで平らになるように投入される。このようにして平らになるように投入された植栽床下土壌12aの上に、地盤高さが、平均潮位より高くなるように植栽床土壌12bを平らに入れる。
植栽床土壌12bは、地表面12cから25cm以上の深度範囲に設けられ、ヨシCの地下茎の生長が促進される土壌を客土して投入すればよい。客土としては、例えば、建設残土や、汽水湖の航路確保のために浚渫する浚渫土壌などを使用することができる。植栽床土壌12bとして使用する土壌の土質は、例えば、砂質土、あるいはシルト・粘土分を含んだ砂泥質土、小礫混じりの砂質土で透水性の良好なものが好ましい。透水性としては、少なくとも1×10-4cm/s以上あることが望ましい。
砂分を含まない礫、略粘性土100%の土質は好ましくない。砂分を含まない礫では、土壌空隙率が大きくなり、根が生長してもヨシが不安定になりやすいため好ましくない。粘土などの略粘性土100%では、透水性がなく、好気的環境を必要とするヨシCの地下茎の根圏の環境を嫌気的とすることや、干出時間が長い時期では粘性土が硬化するため、地下茎の発達を遅らすばかりでなく、場合によっては根腐れを発生する虞もあり、その使用は好ましくない。
さらには、汽水域Aの塩分が高い場合には、例えば、表層の塩分を塩分実用単位で14PSUを基準値として、この基準値より高い場合には、地盤高を、例えば汽水域Aの4月から8月までの5カ月間の月平均潮位より高く設定することが好ましい。かかる地盤高を設定しておけば、ヨシCの生長が見込まれる、すなわち生長率が高い4月から8月までの時期は、植栽床土壌12b内へ進入する汽水に基づくヨシの生育に及ぼす塩分の影響を極力少なくすることができる。
上記構成では、平均潮位として月平均潮位を地盤高の設定基準としたが、平均を算出する期間を月に限定する必要はなく、現地の状況に合わせて平均的な潮位が算出できる期間を設定して構わない。
かかる平均潮位は、塩分のヨシの生育に及ぼす影響を極力抑えようとするために、地盤高をどの程度の高さに設定すれば良いかの基準を設定するために求める値である。そのため、平均潮位は、ヨシの地上茎の生長期間の潮位の動向を示すことができる期間内であることが必要である。
前述の説明では、4月〜8月までの5カ月間の月平均潮位としたのは、日本におけるヨシの生育が著しいヨシの生長期間が、大体4月〜8月までであるためである。かかる期間の塩分の影響を抑制することにより、ヨシの生長を極力阻害しないで済むこととなる。
従って、人工ヨシ原の造成地の地理的状況によって、例えば、寒冷地環境、温暖環境、あるいは日本国内の環境か、あるいは外国の環境なのかによっても、さらには、ヨシの種類によっても、かかる平均潮位を算出する期間は変わり得るものであり、厳密には個々の条件に合わせた設定をすればよい。
造成地域、あるいはヨシの種類により、生長期間は各々異なる場合も考えられ、例えば、4月〜8月の期間範囲よりも短い期間となる場合も、あるいは長期間となる場合も、さらには、算出期間が全く上記期間範囲に重ならない場合も考えられるのである。要は、造成予定地におけるヨシの生長期間を十分に把握して、その期間内で平均潮位を求めるようにすればよい。
因みに、上記4月〜8月の期間は、ヨシ(Phragmites communis )を植栽した場合であるが、日本国内では、ほぼかかる期間内であれば、自生するヨシの生長期間の見積としては十分な期間であると考えられる。
しかし、汽水域Aの表層の塩分の低い部分が水深の深い処まで形成される場合には、4月から8月頃までの表層の月平均塩分が塩分実用単位で14PSU以下の水深が植栽床土壌12の下面以下になるように設定すれば、その分、地盤高を低く設定することができる。
汽水域の表層としては、例えば、植栽土壌厚と同等にすればよく、0〜0.25mの範囲を想定すればよい。かかる表層の平均塩分として、月平均塩分を地盤高の設定の基準としたが、上記平均潮位の説明でも述べたように、平均をかかる月平均塩分に限定する必要はない。現地の汽水状況に合わせて表層範囲を設定し、その平均的な塩分が把握できる期間を設定すればよい。さらに、かかる平均塩分の算出期間においても、前述の平均潮位の算出に関する説明と同様に、ヨシの生長期間の平均塩分が求められるように算出すべきであることは言うまでもない。
塩分を塩分実用単位で14PSUであればよいという点に関しては、ヨシの生育に関しては、塩分はより少ない方が好ましいため、その最大塩分値を設定しておくことが、汽水域で人工的にヨシ原を造成するに際しては、重要なことである。実験により、14PSUであれば十分に良好なヨシの生長が見られるということである。14PSU以下とは、0、若しくは0に限りなく近い値でも構わないということで、かかる場合は淡水域における人工ヨシ原の造成に繋がることとなる。
従来は、かかる汽水域の表層の塩分と、ヨシの植栽土壌の地盤高との関係が明らかにはされておらず、本発明者により初めて明らかにされたものである。これにより、汽水域でも、塩分により生育を阻害されることなくヨシ原を人工的に造成することができることとなる。
植栽床土壌12bの地表面は、極力平らに形成して、大きな不陸部分を形成しないように留意することが必要である。これは、地表面に汽水の水たまりが極力できないようにするためである。水たまりができると、干出時に水たまりの塩分が濃縮され、ヨシCの生育に影響する可能性があるためで、かかる影響を極力排除するためである。
かかる構成の本発明の人工ヨシ原造成地のヨシ生育に関する有効性について、以下実験により検証した。検証に際しては、実際の汽水湖に実験区域を設定して行った。
実験は、図3に示すように、湖西市知波田の前河岸沖で、松見ヶ浦に注いでいる今川河口に堆積した干潟の北寄りにヨシ植栽実験区として設定した。今川と前河岸水路に挟まれた干潟の内、岸中央より東へ50m、南北30mの範囲に設定した。
かかる範囲に設定した実験区は、図4に示す表−1のような概要を有している。実験区をA〜Dまで区画し、ヨシを植える植栽土壌の床形状を、全て直径5mの盛土高0.5mの円形台状に形成した。土壌構成は、シルト・粘土分の少ない砂礫質で透水係数が10-3cm/sec以上の土壌Xと、シルト・粘土分の多い砂質土で透水係数が10-5cm/sec以下の土壌Yとに構成した。
実験区A、Cには、土壌Xを使用し、実験区B、Dには、土壌Yを使用した。さらに、地盤高の影響をみるために、ヨシの植栽床土壌の造成高を、実験区A、Bでは、TP. +0.15mとし、実験区C、Dでは、TP. 0.00mに設定した。なお、TP. は、Tokyo Peilの略であり、東京湾平均海面を示す。
併せて、実験区A〜Dの状況の有効性を、天然ヨシ原と比較するため、現場の汽水域に対照区Eを設けた。対照区Eでは、ヨシ床形状は、原地形のままとした。土壌構成は、原地形では砂質土であり、地盤高はTP. 0mと同程度であることが確認された。
(実験1)
本実験では、かかる構成の実験区A〜D、および対照区Eにおけるヨシの生育環境について調べた。ヨシの生育環境におけるヨシの植栽土壌の地下水位の変動状況を比較した。その結果を、図5のグラフに示す。図中、途中にグラフの欠損部分があるが、ここは地盤高より潮位の高い部分で、地下水位の変動は求められない部分である。
図5のグラフは、縦軸に地下水位を、横軸に測定日時をとった。地下水位の上下高の差が大きい程、水の出入りの大きさを示す透水厚が大きいと判断できる。図5からは、砂質土壌にヨシの根が発達した天然ヨシ原は透水厚が大きく、また砂質土を主体に構成した実験区A、Cの透水厚が大きかった。一方、シルト・粘土分の多い土壌で造成したヨシ原の実験区B、Dは、地下水位の変化が乏しく、透水厚が小さかった。
すなわち、図5のグラフからは、ヨシの植栽土壌への水の出入りは、対照区Eの天然ヨシ原、実験区A、Cが大きく、次いで実験区B、Dであることが分かる。
(実験2)
本実験では、ヨシの植栽床土壌の干出水没時間などに関して調査した。月別平均潮位、日平均水深、日平均水没時間の調査結果は、図6の表−2に示した。表−2からは、ヨシの植栽床土壌の地盤高の違いにより、ヨシ植栽床土壌の水没時間が異なることがはっきり分かる。
地盤の高い方の実験区A、Bでは、ヨシの生育が見込まれる9月頃までは、平均潮位が地盤高より低く、10月のみ平均潮位が地盤高より高かった。すなわち、平均的に干出していたこととなる。6月から9月までの平均潮位は、地表から0〜20cmの深さであり、植栽したヨシの株根の当たる高さに相当していた。
従って、降雨の見込まれるこれらの期間において、汽水表層の塩分の低い部分が、ヨシ株根の根圏の土壌深度にほぼ位置していたことが地下茎の発達に影響したと考えられる。すなわち、ヨシの生育環境における塩分は、実験区A、Bは、実験区C、D、対照区Eに比較して低いことが分かる。
一方、日水没時間の月平均値は、9月まで10時間以下であり、年間でも最も平均潮位が上昇するのに加えて異常潮位が記録された10月を除いて、11月以降も12時間以下であった。すなわち、低塩分で、且つ水没時間も短いこととなる。
地盤の低い方の実験区C、Dについては、7月から11月までが、平均潮位が地盤高以上であり、それ以外の月では、地盤高以下であることが分かる。つまり、ヨシが生長する9月頃までは、平均潮位が地盤高より高く、日平均水没時間は10〜15時間であった。すなわち、ヨシの生育環境における塩分は、実験区A、Bに比べて、高塩分に長時間曝される環境であると言える。
対照区Eも、実験区C、Dと同様に、7月〜11月までは平均潮位が地盤高よりも高い状況であった。
(実験3)
本実験では、土壌間隙水中の塩分について検証した。ヨシの植栽床土壌間隙水の塩分連続測定データの一部を、図7に示す。塩分測定は、観測孔を植栽土壌表面から所定深度で穿孔し、孔内の水中塩分を測定した。図7に示すデータは、9月に測定した値である。
なお、図中、途中の欠損部分は、測定器のメンテナンスのため測定ができなかった部分である。土壌構成が同様な実験区同士で比較すると、地盤高の比較的高い実験区A、Bの方が、地盤高の低い実験区C、Dより土壌間隙水の塩分が低いことが分かる。
かかる結果を、図8の表−3に示した。土壌間隙水の実用塩分の月別平均値の結果からは、地盤高の高い実験区A、Bでは、植栽した6月から8月までは、13.1〜13.3PSU以下であり、9月においても約20PSU以下であった。
一方、地盤の低い実験区C、Dでは、8月でそれぞれ16.8PSU、19.6PSUであり、9月においてはそれぞれ22.2PSU、24.8PSUであった。
すなわち、土壌Xで造成した実験区A、Cとの比較では、実験区Aの方が、実用塩分が低いことが分かる。6月から翌年の1月までの8カ月の平均値では、実験区Aの方が、4.6PSU実験区Cより低いことが分かる。同様に、土壌Yで造成した実験区B、Dとの比較では、実験区Bの方が、実験区Dよりも、3.1PSU低いことが分かる。
なお、9月、11月、12月、1月では、月平均潮位より実験区A、Bの造成高が高かったにもかかわらず、植栽床土壌の間隙水中の塩分が、塩分実用単位で14PSUより高くなっている。これは、この時期の降雨が少なく実験区域の表層まで塩分が上昇し、汽水域が形成されなかったためと考えられる。
以上の結果より、ヨシの植栽床土壌の地盤高の違いにより、土壌間隙水中の塩分に差異が見られることが分かった。すなわち、地盤高の高さの設定如何で、ヨシの植栽床土壌中の塩分量を少なくすることもでき、汽水域におけるヨシの生育に適った塩分状況の設定が可能であることが分かる。
また、地盤高による影響は、透水性の違いによる影響に比べて大きいことが、同一地盤高で造成し、植栽床土壌の異なる実験区A、B並びに実験区C、Dとの土壌間隙水の塩分差と、地盤高の異なる実験区の土壌間隙水の塩分差との比較から明確に分かる。
以上の実験1〜3によって、土壌Xで地盤高の高い実験区Aは、実験区C、Dに比して、透水厚が大きく、且つ、ヨシの生長が見込まれる9月頃までの平均潮位より地盤高は高く、且つ月平均水没時間も短く、且つ、土壌間隙水の塩分も低いことが確認された。
(実験4)
本実験では、上記実験区A〜D、および対照区におけるヨシの生長量の比較を行った。なお、実験区との比較のために設ける対照区として、図9、図10の表−4に示すように、X1 −X1 線、X2 −X2 線、Y1 −Y1 線、Y2 −Y2 線で囲まれた所定範囲の実験区画の今川に近い側に、地盤高および河川との位置関係により、対照区1〜対照区4までの4箇所を設定した。
ヨシの生育状況の確認は、ヨシの平均本数(本/m2 )、平均茎丈(m/m2 )、刈り取り後速やかに現地で測定される平均新鮮重量(kg/m2 )、刈り取り後105℃で乾燥して測定される平均乾燥重量(kg/m2 )の観点から、調査した。なお、実験区については、実験区内のヨシを全て刈り取り、植え付けた株当たりの平均値で評価した。また、対照区については、50×50cmの枠内のヨシを刈り取り、単位面積当たりの平均値で評価した。
先ず、天然ヨシ原(対照区)における状況を調査した。その結果は、図11(A)、(B)、図12(A)、(B)から、図11(A)に示す平均本数を除いて、今川上流域の方が対照区(1)〜(4)より全て良好なことが分かる。
今川上流域は淡水ヨシ原であり、対照区は全て汽水域におけるヨシ原であることから、淡水ヨシ原の方が汽水域のヨシ原より生長が良好であることが分かる。また、対照区1〜4では、対照区2における生長が良好であることが分かる。これは、地盤高が低く、今川から流入する河川水との接触時間が長いことが原因と考えられる。
なお、対照区3は、対照区2より今川よりにあるが、地盤高が対照区2より高いため、今川流入水との接触時間が短く、その分生長量が対照区2より小さいものと考えられる。
すなわち、対照区の調査結果より、ヨシの生育密度、地上茎の茎丈、収量(乾燥重量)のいずれも、今川の河川水が直接流入する区域の生育が最も良かったことから、ヨシの生育に塩分が影響することが確認されたのである。
次に、実験区A〜Dにおけるヨシの生長量を、上記対照区の観察視点と同様の視点から比較した。
ヨシを植栽する場合、ヨシの植栽床土壌の地盤高が生育に影響することが確認された。地盤高を高く設定した実験区A、Bについては、地上部、地下部(地下茎)いずれでも生育状況が良好であった。一方、地盤高を低く設定した実験区C、Dでは、地上部、地下部(地下茎)のいずれでも生育状況は良くなく、特に地下茎の発育が不良であった。
すなわち、図11(C)、(D)、図12(C)、(D)の結果から、生長量の大きい順に実験区を並べると、A>B>C>Dの順になることが分かる。すなわち、ヨシの生育環境における塩分の影響が少ない順に生長量が大きくなっていることが分かる。かかる結果は、対照区で得られたヨシの生育には塩分が生長阻害要因となるとの考察からも納得できる結果であった。
ヨシを植栽する場合には、土質の違いにより地上部の最終生産量に差が出ることが確認された。シルト・粘土分の少ない実験区A、C(シルト・粘土分2〜4重量%)の方が、シルト・粘土分の多い実験区B、D(シルト・粘土分18〜21重量)より1.2〜1.5倍多いことが確認された。
なお、地下茎については、株当たりの本数は、シルト・粘土分の少ない実験区A、Cの方がそれぞれ実験区B、Dと比較すると、多い結果となったが、大きな差は認められなかった。
かかる状況は、図13に示す表−5からも確認できる。表−5には、ヨシは一株から複数本の地下茎が生えるため、各実験区では3株ずつ地下茎を掘り出して、その成長状況を確認した。土被りとは、地表から地下茎上面までの深さに相当する。また、各株について、株からの茎長さ、株の中心から茎先端までの距離をそれぞれ測定した。
株植えしたヨシの地下茎が発達する土壌深度は、地表から平均値で8〜13cmで、最大でも実験区Bの23cmであった。対照区(天然ヨシ原)において、土壌コアサンプル調査した結果からもヨシの地下茎は地表から約20cmの範囲で確認できた。
ヨシ株から植え付け後に発達した地下茎は、土中で分岐しながら生長している状況は見られたが、それらの地下茎から分岐して地上茎に生長したものは殆どなかった。株植えしたヨシの生長は、最初の年には植え付けた株からの地上部(茎、葉、穂)の発達と、地下茎の支脈の延長であると考えられる。従って、植え付けた株と株の間における地下茎の分岐と地上部の生長は、地下茎の発達状態により植え付けた次の年以降になると考えられる。
植え付け後の翌年に、実験区A、B、C、Dのそれぞれにおいて、ヨシの生育状況を観察した。地盤高の高い実験区A、Bではヨシの生長が観察されたが、実験区C、Dでは殆どの株が生長しなかった。かかる生育状況を、図14(A)、(B)に示す。図14(A)では面積当たりの平均地上茎丈を、図14(B)では面積当たりの平均本数を示している。なお、地上茎丈および本数は、各実験区の中央付近の平均的な株を5株ずつ選定し、その株を中心に50×50cmの枠内の地上茎丈、本数をそれぞれ3カ月毎に測定した。
図14(A)、(B)から明らかなように、地盤高の高い実験区A、Bの方が、地盤高の低い実験区C、Dより生育本数も多く、且つ、地上茎丈も大きいことが確認される。かかる結果は、地盤高が低い実験区C、Dの方が、実験区A、Bに比べて、潮の干満に対する水没時間が長かったため、塩分被害をより多く受けたものと考えられる。
また、図14(A)、(B)のいずれの場合にも、実験区Aの方が実験区Bの場合よりも生長が良好であることが確認できた。そこで、図14に示す実験期間における地下水位の変動を、前記図5に示すと同様に観察した結果、シルト・粘度成分の多い土壌で形成された実験区Bでは、その透水厚さ、すなわち地下水位の変動巾は5cm未満であることが分かった。
そこで、図14に示す結果と、かかる地下水位の変動との結果の双方を考慮することにより、潮の干満との関係において、すなわち潮汐の変動に伴う地下水位の変動巾は、地表下5cmより深い深度範囲まで行なわれるように構成することが好ましいことが確認された。
また、実験区A、B、C、Dおよび対照区Eについては、当初、図4に示す表1のように設定したが、その後、図15の表6に示すように、土壌状況などを詳細に実測した。表6の結果からは、植栽土壌の粒度(%)に関して、75mm未満2mm以上の平均粒径を有する礫分、2mm未満75μm以上の平均粒径を有する砂分、75μm未満の平均粒径のシルト・粘土分についてそれぞれの混合割合を実測した。併せて、透水係数(cm/sec)、湿潤密度(g/cm3 )、乾燥密度(g/cm3 )、地盤高(TP.m)についても実測した。
図15に示す表6をも含めた以上の結果を踏まえ、且つ、人工的に植栽したヨシの最良の生長状況が確認された実験区A、および対照区Eの状況に基づけば、植栽土壌は、ヨシの地下茎の発達する深度を考慮して地表下25cmの深さまでは、透水係数が1×10-4cm/sの土壌で形成されていることが好ましいことが分かる。
また、透水性の良好でない土壌、例えば実験区B、Dなどの結果からは、植栽土壌として、地表下25cmの深さまでを透水係数が1×10-6〜1×10-4cm/sの土壌で形成した場合には、植栽土壌には、地表下5cmより深い深度まで地下水位の変動を起こす排水層及び/または排水路を設けるなどして、潮汐の干満による塩分の影響を小さくするための補完処置が必要と考えられる。
上記一連の実験を通して、浜名湖のような汽水湖で人工的にヨシ原を造成するに際してのヨシの生育条件の基準を得ることができ、これに基づき本発明の人工ヨシ原、およびその造成方法が構成されているのである。
本実施例2では、植栽土壌に上記のように透水性の良好な土壌を使用した場合に提案できる人工ヨシ原の構成と、透水性の良好でない土壌を使用した場合に提案できる人工ヨシ原の構成のそれぞれについて説明する。
植栽土壌に上記のように透水係数が1×10-4cm/s以上の土壌を使用した場合は、例えば、図16、17に示すように、人工ヨシ原Bを構成することができる。図16に示す構成は、図1に示すと同様に、コンクリート護岸10を背後に、略コ字形に堤11で囲って形成されている。なお、以下、図中の符合は、図1、2と同様の構成を示す場合には、同じ符合を使用することとする。
堤11は、捨石13を積み上げ石塁11aに構成しておけばよい。石塁11a内側には、砂を充填した土嚢、あるいは砕石などを積み上げた土壌流亡防止層15が設けられている。このようにして形成された土壌流亡防止層15の内側に、上記透水係数を満足する植栽土壌12が入れられている。図17(A)の断面図に示すように、コンクリート護岸10から汽水域Aの漸次深くなる原地地盤である底面14に沿って、上面が平らになるように基盤20を設け、その上に植栽土壌12が入れられている。
基盤20は、前記実施例1で示したと同様の植栽床下土壌12aに形成しても良いし、あるいはそれ以外の構成に形成しても構わない。図16、17に示す場合には、植栽土壌12に透水係数が大きい良好な透水性土壌を使用しているため、下げ潮時に地下水を排除して、ヨシ床の地表面から5cm以上地下水位を下げることができ、塩分被害を小さく抑えることができる。
次に、植栽土壌12に、透水係数が1×10-6〜1×10-4cm/sの土壌を使用した場合には、かかる植栽土壌12には、地表下5cmより深い深度まで地下水位の変動を起こすことができる排水可能な層を設けて、潮汐の干満により塩分の影響を小さくする補完処置が必要となる。
図18に示す場合には、図17に示す構成の基盤20を排水層21に代えた構成である。植栽土壌12の透水性が良好でないため、植栽土壌12の下に排水層21を設けることにより、植栽土壌12の下に設けた排水層21から下げ潮時に地下水を排除し、ヨシ床である植栽土壌12の地表面12cから5cm以上地下水位を下げる。
かかる排水層21は、例えば、砂利、あるいは砕石、あるいは粗砂などの透水性の良好な排水材を使用すればよい。なお、排水材の粒径が大きくても、排水層21の上に設けた植栽土壌12の流亡は、土壌流亡防止層15によりくい止められる。
排水層21は、前記実施例1の図2における植栽床下土壌12aを排水層21に、植栽床土壌12bを上記透水係数を有する土壌に置き換えて成立する構成である。
本実施例3では、植栽土壌12に、透水係数が1×10-6〜1×10-4cm/sの透水性の良好でない土壌を使用した場合において、かかる植栽土壌12に排水路22を設けた構成について説明する。
図19に示すように、コンクリート護岸10を背にして、前記実施例1の図1に示すようにして、人工ヨシ原Bが形成されている。植栽土壌12面には、排水溝22aが排水路22として設けられている。排水溝22a(22)は、例えば、1〜3m間隔で、並行に複数本設けておけばよい。なお、かかる排水溝22aの敷設方向は、図19に示すように、複数本が並行になるようにしなくてもよく、例えば、格子状に複数本の排水溝22aが交差するように設けても構わない。
かかる排水溝22aを設ける構成では、図20(A)の断面図に示すように、植栽土壌12の下に排水層21を設けなくても構わない。排水溝22aにより、植栽土壌12の排水性が十分に確保されているため、植栽土壌12に透水性の良好な土壌を使用した前記図17のような構成を採用することができる。
また、排水溝22aは、図20(B)の断面図に示すように、例えば、植栽土壌12の層厚に併せた深さを有するように構成しておけばよい。さらに、排水溝22aの先端は、そのまま土壌流亡防止層15に突き当てておけばよい。
排水溝22aの断面形状は、図20に示すように、断面角形でも、あるいは図21(A)に示すように、断面逆台形状に形成しても構わない。要は、植栽土壌の排水性の改善に資する形状であればよい。
排水路22としては、上記排水溝22a以外の構成であっても構わない。例えば、図21(B)に示すように、植栽土壌12に敷設した排水溝22a内に、砂利、あるいは砕石、あるいは粗砂などの排水材23を充填するようにしてもよい。上記排水材23の目が粗く、周囲の植栽土壌12が排水材23の目の間から流出する心配がある場合には、かかる排水材23の周囲を、図21(B)に示すように、ネット、あるいは透水性フィルムなど吸出し防止材24で包めばよい。あるいは、土嚢に排水材23を詰めてこれを排水溝22a内に充填するようにしてもよい。
排水路22の変形例としては、例えば、図21(C)に示すように、排水溝22a内に、管壁の周囲に複数の貫通孔を設けた有孔管22bを上記排水材23で埋める構成としてもよい。
上記実施例4では、透水性の堤11、堤11内の土壌流亡防止層15をそれぞれ設け、その内側に植栽土壌12を入れた場合について説明したが、透水性の土壌流亡防止堤25を設けることにより、岸から離れた汽水湖の任意の位置に浮島状に人工ヨシ原を構成する場合について説明する。
図22(A)、(B)に示すように、本実施の形態の人工ヨシ原Bは、汽水湖中にそれぞれ独立に離ればなれに設けられている。それぞれの人工ヨシ原Bは、土壌流亡防止堤25で周囲が囲まれた中に、植栽土壌12が入れられて構成されている。土壌流亡防止堤25は、砂利、砕石、砂質土などの透水性の良好な排水材23を、透水性容器に充填して構成されている。
図22に示す場合には、透水性容器として土嚢25a(25)を使用した。土嚢25に上記排水材を詰めて、円環状にそれぞれの互いに隙間が開かないように配置して、透水性の土壌流亡防止堤25が形成されている。かかる土壌流亡防止堤25に囲まれた範囲に、植栽土壌12が入れられている。
植栽土壌12には、例えば、上記説明のように透水係数が1×10-4cm/s以上の土壌を使用すればよい。さらに、植栽土壌12の下には、基盤20を設けて、ヨシの地下茎の生育深度である少なくとも層厚25cmの植栽土壌12を支持できるようにしておけばよい。かかる構成では、基盤20には、コンクリート盤、あるいは難透水性土壌などを使用しても構わない。このようにして、本発明の実施の形態では、浮島状態に、人工ヨシ原を構築することができる。
なお、浮島状態に形成した人工ヨシ原Bにおける植栽土壌の間隙水の塩分測定は、図23に示すように、前記実施例1の実験3と同様に行なえばよい。すなわち、植栽土壌12に、塩化ビニール管を観測孔31として通す。塩化ビニール管の植栽土壌12内に埋設する部分は、管壁周囲に複数の穴を設けた有孔部31aに構成しておき、有孔部31aの管内には、塩分センサ32を設けておく。かかる構成の観測孔31内の塩分センサ32により、植栽土壌12の間隙水における塩分状況をリアルタイムで観測することができる。
前記実施例1〜4からも分かるように、人工ヨシ原の造成に際しては、塩分被害を極力抑制するために人工ヨシ原の地盤高の設定が極めて重要であることが確認された。そこで、本実施の形態では、かかる地盤高の設定を、システマティックに行える手法を提案するものである。
汽水域の塩性湿地におけるヨシの生育環境については、D.S.Ranwellらにより、J.Ecol.,52,627−642(1964)に、干出水没する場合は汽水域の表層の塩分が12PSUでヨシの生育が減衰し、13.5PSUが生育限界であり、常時冠水している場合は7.6PSUが生育限界であると報告されている。また、港湾技術研究所の実験では、汽水域の表層の塩分が10PSU以上で生育に影響が現れ、20PSUが限界であると報告されている。
このように従来より報告されているヨシに対する塩分の影響は、汽水域の表層の塩分に基づき評価されており、かかる評価を基準として人工ヨシ原を造成しようとすると、造成予定地の汽水域の表層塩分の調査を行い、この条件で適合するか否かの判定が行われることとなる。
しかし、前記実施例1〜4を通しての説明でも明らかなように、本発明者の実験を通して、ヨシの生育に及ぼす塩分の影響は、植栽されるヨシの根圏における地下水の塩分が重要な判断指標となることが分かる。すなわち、ヨシ原の生育環境の評価としては、ヨシ根圏の地下水の塩分の大小で判断する必要があり、前記従来の報告にある汽水域の表層塩分の大小では、十分に評価できないのである。
かかる点に関しては、湖水表層の塩分とヨシ根圏の地下水の塩分とではその値が異なる事実、および前記報告からはヨシの生育限界を超えていると思われる表層塩分の高塩分水域でも、実際に良好なヨシの生育が見られる事実などを通して、首肯されることである。
本発明者は、かかる知見から、人工ヨシ原の造成には、前記従来報告に基づく汽水域の表層塩分を基準とした評価方法では、十分なヨシの生育環境の評価は行えず、かかる基準では適切な人工ヨシ原の造成手順を確立することはできないと考えた。
さらに、ヨシの生育は、ヨシがその根圏から水分とともに種々の栄養素を摂取するなどして行われるものであることや、地下茎が発達、分岐して生長することから、ヨシの生育に塩分が及ぼす影響は、かかるヨシ根圏の地下水の塩分状況に左右されるものと、本発明者は考えた。しかし、上記従来文献では、塩分被害についてのかかるヨシ根圏における塩分状況が大きな影響を及ぼすとの明確な認識は見られず、汽水域の表層塩分から判断したヨシの生育限界が報告されているに過ぎない。
また、本発明者は、ヨシ原が塩分の影響を受ける汽水域の場合、潮汐により潮位が変動するため、その変動に合わせてヨシ根圏が干出水没することとなるが、ヨシ根圏の地下水の塩分状況には、かかる干出水没を考慮する必要があるのではないかと考えた。ヨシ根圏の干出率がヨシの生育にどの程度の影響を及ぼすかについては従来報告はなく、かかる点の造成手順への考慮も新たに確立させる必要があると考えた。
このように湖水表層の塩分に基づく従来の造成方法では、汽水域における人工ヨシ原の造成における地盤高をどの程度に設定したらよいかの精確な判断が行えないのである。そこで、本発明者は、ヨシ原の根圏における塩分、すなわちヨシ根圏の地下水の塩分と、ヨシ根圏の干出率との双方を考慮した形での地盤高の設定方法を新たに提案した。
本発明の人工ヨシ原造成方法では、人工ヨシ原の地盤高の設定を、造成予定地の汽水域の状況に合わせて、ヨシ根圏干出率算出工程と、ヨシ根圏地下水塩分算出工程と、干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分算出工程とから求めることができる。
すなわち、ヨシ根圏干出率算出工程では、造成予定地の汽水域の潮汐により変動する潮位に対して、造成予定の人工ヨシ原の地盤高を仮設定して、かかる場合におけるヨシ根圏の干出率を求める工程である。
干出率(D:%表示)は造成予定地のヨシ原を造成したとする場合の潮汐により潮位が変動するのに対してのヨシ根圏の月平均干出率で示せばよい。かかる月平均干出率の算出に際しては、精確には、造成予定地周辺のヨシ原の地下茎の調査をして、実際のヨシ根圏の土壌深度を求めておく必要があるが、これまでの天然ヨシ原の調査結果からは、便宜上地表下20cmをヨシ根圏と設定しておけばよい。
しかし、かかるヨシ根圏の土壌深度は、ヨシ原の置かれる状況で多少の変動はあるもので、実地調査の結果からも、ヨシ根圏が地表下25cmまで達している場合も見られており、状況に応じて、20〜25cmの範囲の深度にヨシ根圏を設定して干出率を求めるようにしても構わない。
かかる干出率(D)を潮位データから算出するには次のようにして行う。潮位データは、既存資料がなければ現地で計測する必要がある。なるべく年間のデータを取得することが好ましいが、例えば、年間のデータの入手が困難であればヨシの生長期間である3月下旬〜9月頃のデータを取得すればよい。また、別の方法として、現地で最低でも1カ月間潮位計測を行い、計画地付近の検潮所のデータより年間の潮位を試算する方法もある。
なお、ヨシの生長期間としての上記3月下旬〜9月頃という期間設定は、あくまで日本における平均的なヨシの生長期間を採用したものである。ヨシの生長期間は、実際のヨシの生育環境の違いにより当然に上記平均的期間からのずれは想定されるため、上記3月下旬から9月頃に限定する必要はなく、必要に応じて具体的な生長期間の設定を適宜に変更し得ることは当然である。
潮位に関しては、連続計測により潮位データを直接入手する場合を除いては、入手可能な潮位データは、干潮、満潮の両潮位および時刻、平均潮位のみである。そのためかかるデータから、月平均干出率を求めるには、先ず任意の時刻の潮位を算出する必要がある。
例えば、10分毎の潮位を算出し、かかる潮位データから、想定するヨシ原の地盤高のヨシ根圏(例えば、前記の如く地表下20cmとすればよい)の日干出時間(h/日)を求め、これから日干出率(%;h/24h)を求めることができる。このようにして求めた日干出率の月平均を求めることにより、月平均干出率(%)を求めることができる。かかる平均干出率の算出に際しては、状況に応じて、月平均でなくても、ヨシが生長する期間、例えば3月下旬から9月頃の期間の平均干出率を採用することも考えられる。
次に、ヨシ根圏地下水塩分算出工程では、かかる干出率(D)を使用して、造成予定地の汽水域の表層塩分から、前記造成予定地にヨシ原を造成したとする場合のヨシ根圏の地下水塩分を求める。
造成予定地の汽水域における表層塩分(A)は、次のようにして求めることができる。すなわち、先ず、当該汽水域における既存の塩分データの有無を確認して使用可能なデータがあればそれを利用する。しかし、使用可能な既存データがない場合には現地で計測して求めることとなる。極力、年間のデータを取得するのが好ましいが、年間のデータ取得が困難である場合には、ヨシの生育期間である3月下旬から9月頃までのデータを取得すればよい。
一方、造成予定地の汽水域に人工ヨシ原を造成したとする場合のかかるヨシ根圏に相当する土壌深度での地下水塩分(B)は、汽水域の上記表層塩分Aに比べて低いことが本発明者の実験により確認されている。これは、潮位の上昇による塩分の高い汽水域の水の地下水への侵入に対して、雨水などの地下浸透、降雨による汽水域の表層の淡水化などにより、地下水の塩分が希釈されるためと考えられる。
そこで、表層塩分(A)とヨシ根圏の地下水塩分(B)との上記関係を考慮して、本発明者は、ΔS=a(D×R)+bなる実験式が成立することを見出した。ここで、ΔSは、造成予定地の汽水の表層塩分(A:PSU表示)と、かかる造成予定地に人工ヨシ原を造成したとする場合のヨシ根圏の地下水塩分(B:PSU表示)との差として示される塩分低下量(PSU)を示す。かかるΔSは、月別塩分低下量として示せばよい。因みに、ΔS=A−Bなる関係式が成立している。
Dは、前記ヨシ根圏干出率算出工程で算出された干出率である。Rは造成予定地における月別降水量(mm/月)である。気象データなどから取得することができる。あるいは、現地で実際に計測するようにしても一向に構わない。
a、bは、造成予定地の汽水域ごとに定まる値であり、事前調査、あるいは類似汽水域のヨシ原のデータを使用して求める。例えば、造成予定地で実際にΔSと、D×Rの値を求めておき、ΔSと(D×R)とをプロットして得られた直線の傾きからaを、切片からbを求めることができる。
例えば、図24は、浜名湖松見ヶ浦で調査した天然ヨシ原の4〜9月における塩分低下量と月平均干出率×月別降水量との相関を示すグラフ図であるが、かかるグラフから、a=0.0671、b=2.1097と求めることができる。あるいは、類似汽水域で、かかるデータが既に求められていれば、それを利用しても構わない。
次に、干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分算出工程で、ヨシ根圏干出率算出工程で求められた干出率(D)と、前記ヨシ根圏地下水塩分算出工程で求めた前記ヨシ根圏の地下水塩分(B)とから、ヨシの生育限界を見極めるのにより適合したヨシ根圏の地下水塩分(C)の月平均値を求める。かかるヨシの生育限界の見極めにより適合したヨシ根圏の地下水塩分(C)は、Bで示されるヨシ根圏の地下水塩分と区別するため、以下、干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)と呼ぶことにする。
かかる干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)が、ヨシ根圏が干出している期間、すなわち、ヨシ根圏より地下水位が低下する期間のヨシ根圏の地下水の塩分を0と見做して算出された塩分値である。本発明者は、実験を通して、かかる0見做しを行うことにより、ヨシの根圏の地下水の塩分状況と実際のヨシの生育状況と符合性を説明できることを見出した。
そこで、かかる干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)の値が、ヨシの塩分に対する生育限界を満たしているか否かを判定することにより、適切な地盤高の設定が行えることとなる。干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分C(PSU)と、前記干出率D(%)、ヨシ根圏地下水塩分B(PSU)との間には、B(1−D/100)=Cという関係式を考えることができる。
一方、干出率Dの算出に際しては、地盤高(H:TP.m)を種々仮設定した上で求めているため、上記干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)も、種々の地盤高に合わせて、複数算出されることとなる。そこで、複数算出された上記干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)のうち、前記生育限界を満たす場合に対応した地盤高が、造成しようとする人工ヨシ原の適切な地盤高となる。
なお、かかる干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)としては、ヨシの生長期間の4〜9カ月の期間の月平均値が、本発明者の実験を通して、前記の如く14PSU以下となるように設定しておけばよいことが確認された。なお、干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)の値としては、ヨシが生育できる状況であれば、14PSUより大きい値を設定しても構わない。かかる場合には、設定した干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)の値に見合った干出率Dを前記式より逆算して、かかる干出率Dに見合う地盤高Hを求めればよい。
上記本発明に関わる地盤高の設定方法は、以下に説明する実際の浜名湖松見ヶ浦での実証結果から見出されたものである。
図25は、浜名湖松見ヶ浦で実施した天然ヨシ原の根圏地下水の塩分月平均値を示すグラフ図である。図26は、各調査地点での天然ヨシ原の単位面積当たりのヨシ生産量示す。図27は、天然ヨシ原の月平均干出率を示すグラフ図である。図28は、根圏干出率とヨシ生産量との相関関係を示す。図29は、干出率を考慮したみかけの地表下20cmの地下水の塩分月平均値(干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分に同じ)を示すグラフ図である。図30、31は、地表下20cmのヨシ根圏の地下水塩分(B)の8月、9月における変動状況をそれぞれ示すグラフ図である。
図25からは、ヨシ根圏地下水塩分(B)は、利木海岸天然ヨシ原が生育限界である今川河口ヨシ原生際より高いという結果が得られたが、しかし、単位面積当たりの生産量は、ヨシ根圏地下水塩分(B)の高い利木海岸天然ヨシ原の方が、今川河口ヨシ原生際より多いことが図26から確認できる。
一方、図27の月平均の干出率(D)からは、利木海岸天然ヨシ原の方が、今川河口ヨシ原生際より格段に干出率(D)が高いことが確認される。そこで、かかる干出率(D)の差が、塩分が高い利木海岸天然ヨシ原のヨシ生産量がヨシ根圏の地下水塩分(B)の小さい今川河口ヨシ原生際より多くなった要因と考えられた。
そこで、地表下20cmをヨシ根圏と想定した場合の干出率(D)と、ヨシ生産量との間の相関を調べた。その結果は、図28に示すように、良好な相関関係を示すことが確認された。かかる図28の結果は、干出率の算出に際しては、本来的には周囲のヨシの根圏の調査を行い、ヨシ根圏の適切な土壌深度求めておく必要があるが、簡便には、地表下20cmをヨシ根圏と見做して一般的には干出率(D)を求めることができるとした仮定が有効であることをも意味している。
また、ヨシ根圏の地下水塩分の算出に際しては、干出率を十分に考慮するとともに、干出している期間は地下水の塩分濃度を0と見做すことにより、より精度の高い干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)の算出した結果を、図29に示す。
図29の結果は、干出率、および上記0見做しを一切考慮しないヨシ根圏の地下水塩分(B)を示す図25とは異なり、利木海岸表層>今川河口ヨシ原生際>今川河口ヨシ原内>利木海岸天然ヨシ原の順に干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)は小さくなり、図26に示す結果と一致することが分かる。
かかる結果から、ヨシ根圏の地下水の塩分がヨシの生育に大きく影響するとともに、かかるヨシ根圏の地下水の塩分に関しては、ヨシ根圏の干出率を考慮しなければならず、さらにヨシ根圏が干出している期間の地下水塩分を0と見做すことが好ましいことが確認される。なお、前記図25に対応して、8月、9月におけるヨシ根圏の地下水の塩分状況を連続測定した結果を図30、31に示す。かかる結果は、実測データのグラフ図であり、地下水塩分(地表下20cm)が0になる期間は、ヨシ根圏が干出していることを示している。
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で必要に応じて変更してもよい。
例えば、上記実験では、ヨシの種としてヨシ(Phragmites communis )を植栽した場合について説明したが、日本国内に自生するその他の種のヨシにも適用できると考えられる。例えば、ツルヨシ(Phragmites japonica )、セイタカヨシ(Phragmites Karka)、ウラハグサ(Phragmites marca)などのヨシ属に属する植物への適用が考えられる。種の選定に当たっては、例えば、人工ヨシ原の造成地域付近に自生しているヨシを選定して植栽するようにすれば、造成地域周辺の生態系を維持できる点で好ましい。
また、植栽床土壌については、透水性が良好なことが好ましいことを説明したが、本発明の構成では、植栽床下土壌についてはヨシの地下茎が生育する土壌ではないので、土質は特に制限されない。例えば、極端に透水性がよくない粘性土、例えば100%ヘドロでも利用することができる。航路確保のために、汽水湖の湖底浚渫により得られた底泥などの浚渫土を使用することもできる。地盤高の設定により干出時間が確保できるため、底泥中の硫化物を干出時に気散させて、硫化物の影響を緩和させることができ、本発明の構成では底泥の使用も可能となるのである。また、建設残土を使用すれば、施工コストの点で有利である。
前記実施例4では、浮島状態に人工ヨシ原を構成する場合については説明したが、前記実施例1などと同様に、例えばコンクリート護岸を背景にして人工ヨシ原を構成する場合にも前記実施例4は適用できる。
さらには、前記実施例1〜3の構成でも、実施例4と同様に、浮島状態の人工ヨシ原に適用できることは勿論である。
10 コンクリート護岸
11 堤
12 植栽土壌
13 捨石
14 底面
15 土壌流亡防止層
20 基盤
21 排水層
22 排水路
22a 排水溝
22b 有孔管
23 排水材
24 吸出し防止材
25 土壌流亡防止堤
25a 土嚢
31 観測孔
31a 有孔管部

Claims (5)

  1. 汽水域に人工的にヨシ原を造成する人工ヨシ原であって、
    ヨシを植栽する植栽土壌と、
    前記植栽土壌を囲み、前記植栽土壌の流亡を防止する透水性の土壌流亡防止堤とを有することを特徴とする人工ヨシ原。
  2. 汽水域に人工的にヨシ原を造成する人工ヨシ原であって、
    ヨシを植栽する植栽土壌と、
    前記植栽土壌を囲む透水性の堤とを有することを特徴とする人工ヨシ原。
  3. 請求項2記載の人工ヨシ原において、
    前記堤と、前記植栽土壌との間には、前記植栽土壌の流亡を防止する土壌流亡防止層が介在されていることを特徴とする人工ヨシ原。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の人工ヨシ原において、
    前記植栽土壌は、前記ヨシの地下茎が植栽される植栽床土壌と、前記植栽床土壌の下に設けられる植栽床下土壌とから構成されることを特徴とする人工ヨシ原。
  5. 請求項4記載の人工ヨシ原において、
    前記植栽床土壌は、シルト・粘土混じり砂質土、あるいは小礫混じり砂質土であることを特徴とする人工ヨシ原。
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