JP2012000844A - スクリーン印刷用メッシュ部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】スキージが引っ掛かりやすいためにペーストを均等に引き伸ばし難い原因となるスキージ接触面での凹凸部がなく、厚さが比較的薄く、メッシュ部材として必要で均一な強度を有し、高精細な印刷に必要なメッシュ数を有するスクリーン印刷用メッシュ部材を提供する。
【解決手段】本発明のスクリーン印刷用メッシュ部材は、スクリーン印刷用メッシュ部材であって、圧延金属箔に多数の孔を開けることにより作製されると共に、線部を構成する少なくとも片面が平坦であり、作製したメッシュ部材から幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張速度:10mm/分で引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cmあたりに換算した引張強度が20N/cm以上であり、メッシュ数が250(本/インチ)以上であり、更に開口率が、25%以上、所定の関係式で規定される値以下である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明のスクリーン印刷用メッシュ部材は、スクリーン印刷用メッシュ部材であって、圧延金属箔に多数の孔を開けることにより作製されると共に、線部を構成する少なくとも片面が平坦であり、作製したメッシュ部材から幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張速度:10mm/分で引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cmあたりに換算した引張強度が20N/cm以上であり、メッシュ数が250(本/インチ)以上であり、更に開口率が、25%以上、所定の関係式で規定される値以下である。
【選択図】なし
Description
本発明は、スクリーン印刷に用いられるメッシュ部材に関するものであり、印刷膜厚の薄い高精細なスクリーン印刷を実現するため、或は印刷の高低差が少なく、印刷幅のばらつきが少ない印刷を実現するために用いられるスクリーン印刷用メッシュ部材に関するものである。
電子部品をスクリーン印刷により製造することが広く実施されており、例えばセラミックコンデンサ、ICタグなどに適用されている。近年の電子部品の薄型化、高集積化の傾向から、印刷膜厚をより薄く、或は印刷の幅をより細くすることが求められている。
図1は、スクリーン印刷に通常使いられている印刷版の一部拡大説明図である。金属またはポリエステルからなる細線1を編んだメッシュ部材(メッシュ織物)を、スクリーン枠(図示せず)に張った後、全面に樹脂4(感光性乳剤)を塗布してからマスクで覆い、印刷しない部分のみに露光して、感光性乳剤4を硬化させ、印刷したい部分の感光性乳剤4を除去し、印刷版5を作製する[図中、2はメッシュ部材の開口部(メッシュ開口部)を示す]。
スクリーン印刷においては、図2に示すように、スキージ6を移動させることにより印刷パターン部3(前記図1参照)のメッシュ開口部2にインク7(ペースト)を充填すると共に、印刷対象物8にペースト7を付着させる。スキージ6が通過した後は、印刷版の張力(テンション)により印刷版5(前記図1参照)と印刷対象物8が離れるが、ペースト7は印刷対象物8に残り、感光性乳剤4が除去されたパターン通りに印刷される。印刷された直後のペースト7は、メッシュ開口部2に対応する部分には厚く、細線1に対応する部分は薄くなっているが[図2(b)]、ペースト7の粘性と表面張力により平坦化(レべリング)する[図2(c)]。この際、印刷版5のメッシュ開口部2を越えてペースト7が広がることとなる。このペーストの広がりを印刷の滲みと称す[図2中、7aで示す]。
印刷膜厚(印刷対象物8に塗布されたペースト7の厚さd1)は、印刷版5の厚さと、メッシュ部材の開口率(開口部2の合計面積比率)によって決定され、同じ印刷面積の場合、印刷膜厚(μm)=印刷版の厚さ(μm)×開口率(%)の関係が成り立つことが知られている。感光性乳剤4の厚さを含む印刷版の厚さは、メッシュ部材の厚さより薄くは出来ないので、薄い印刷版を得るためにメッシュ部材の厚さを薄くする努力がなされてきた。
開口率を小さくすることも印刷膜厚を薄くすることに繋がるが、開口率を小さくするとペースト7が印刷対象物に残る量が少なくなるため、ペースト7の不連続(印刷かすれ)が生じることにもなる。こうしたことから、開口率はある値以上を確保する必要があり、その上で印刷版の厚さを薄くすること、即ちメッシュ部材の厚さを薄くすることが印刷膜厚を薄くするために最も重要な要件となっている。印刷版5の厚さとメッシュ部材の厚さが同じとしたときの計算上の印刷膜厚と、メッシュ部材の厚みおよび開口率との関係を参考までに表1に示す。
また、印刷パターン幅やパターンの間隔が狭い印刷を行う場合は、ペースト7の量が多過ぎると滲みが大きくなるため、ペースト7の量を必要最低限に抑える必要がある。こうした観点からも、印刷版の厚さ(即ち、対応するメッシュ部材の厚さ)は薄いほど高精細の印刷が可能となる。
スクリーン印刷用メッシュ部材は、感光性乳剤4を平板に保つためと感光性乳剤4の強度を補強するために用いられるものである。こうしたメッシュ部材は、金属やポリエステルからなる細線1を機械で編んで作製されるのが一般的であるために、その表面には凹凸部が存在することが避けがたい。そのため、メッシュ部材に固定された感光性乳剤4も、その表面は平坦ではなく凹凸部を持つことになり、スキージ6が引っ掛かりやすいためペースト7を均等に引き伸ばし難いといった短所がある。また、感光性乳剤4を塗布して露光する際に光が細線1の表面にあたり、反射方向が変わるために、本来硬化させないパターン部の感光性乳剤4まで硬化させてしまい、印刷パターン部の幅が不均一になることがある。
一方、前記図2に示した状態から、ペースト7が完全に平坦化せず、印刷高さ(印刷対象物8に塗布されたペースト7の厚さd1)が不均一(印刷の高低差が大きく)になることがある。これはメッシュの痕が残って見えることから、一般的に「メッシュ痕」と呼ばれている。特に高粘度ペーストを使用した場合に、メッシュ痕が残りやすくなる。また、スクリーン印刷用メッシュ部材は、上記のように金属やポリエステルからなる細線を機械で編んで作製されるのが一般的であるために、その表面には凹凸部が存在することが避けがたく、メッシュ痕が残りやすい状況である。
細線1を編んだメッシュ部材(メッシュ織物)では、通常13〜40μm径の素線を編んだ30〜90μm厚みのものが用いられている。厚みが薄いメッシュ部材を得るために、出来るだけ細い素線を採用する工夫がなされており、例えば特許文献1には、線径が10〜21μm未満のオーステナイト系ステンレス鋼製の極細線1を編んだメッシュ部材(金属メッシュ織物)が提案されている。しかしながら、素線を極細化しただけの金属メッシュ織物では、素線の交差部ではその厚さが細線1の径の2倍となるため、その表面に凹凸部が存在することが避けがたい状況である。
特許文献2には、金属メッシュ織物を圧延加工によって交差部を平坦状にした圧延平坦部の少なくとも一部を研磨等によって面取りし、メッシュ部材の厚さを薄くする技術が提案されている。この技術によれば、圧延加工後の細線径:18.8μmで厚さ24.5μmのメッシュ部材を研磨することにより、メッシュ部材の厚さを21.8μmまで薄くすることが示されている(実施例)。しかしながら、こうした技術では金属細線も研磨により減径(研磨後の線径:18.2μm)しており、これ以上研磨してメッシュの厚さを薄くすると、メッシュ部材の強度が不足しスクリーン枠に張ることが出来なくなることが危惧される。また研磨が不均一な場合には、研磨による減径が進み過ぎ、強度の低い部分ができるためにメッシュ部材が破断する恐れがある。
表面に凹凸部がないメッシュ部材を使用すれば、メッシュ痕が残りにくく、印刷の高低差を少なくできることが期待できる。表面に凹凸部のないメッシュ部材を製造する方法としては、電鋳法(電解析出)によりニッケルなどをメッシュ状に堆積させ、スクリーン印刷用のメッシュ部材とする方法も提案されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、電鋳法により作製したメッシュ部材(以下、これを「電鋳メッシュ」と呼ぶことがある)は、比較的薄い印刷膜厚で高精度なスクリーン印刷に適用するメッシュ部材としては以下のような問題を有している。
電鋳法では、ニッケルなどの金属を含む電解溶液(電解浴)中で電圧をかけることにより、正電荷の金属イオンがアノード電極に移動し、移動した金属イオンが堆積(電着)して金属の膜を形成するものである。この原理は広く使われている金属めっきと同じ原理である。電鋳法においては、電圧や時間を調整することによって、厚みの異なる電鋳膜を得ることができる。電極側の金属が析出する基板が平板の場合には、金属箔となるが、作製したい形状の基板(母型)を用いて電鋳すると、様々な形状の電鋳品を得ることができる。一定の間隔で凸部を有する基板を用いて、凸部の隙間にニッケルなどの金属を析出させ、凸部の上面以下で電着を止めると線部と開口部を有するメッシュ形状の金属箔ができる。これを基板から剥がすことにより、線部と開口部を有する電鋳メッシュを得ることができる。
めっき法や電鋳法により作製した金属膜や金属箔には、内部応力が残留することが知られており、この応力は残留応力や電着応力とも呼ばれ、メッシュ部材の強度等に大きな影響を及ぼすと考えられている。同じ種類の電鋳浴からの電鋳であっても、電着応力に差が生じると共に強度も異なるものとなる。またメッシュ部材の強度を高めるために、ニッケルにコバルトなどを含有させることもあるが、このような合金中でも内部の電着応力などが問題となり、電鋳メッシュごとの強度が大きく異なることが知られている。こうしたことから、電鋳メッシュでは強度のばらつきが大きくなり、部分的に強度の低いメッシュ部材となる可能性が懸念される。
電鋳メッシュは、基板の形状や表面構造を忠実に複製するために、基板を作製する際に生じたわずかなバリ、傷や亀裂までも転写してしまうことになる。即ち、基板表面にバリがあると、基板のバリを転写したわずかな傷や亀裂が存在することとなる。このような傷や亀裂の存在は、メッシュ部材を引っ張った際に、その部分に応力が集中してメッシュ部材が破損しやすくなる。また、基板表面の傷や亀裂を転写して、メッシュ部材の表面に突起形状が存在すると、印刷時のスキージとの接触の繰り返しにより突起形状部が取り除かれ、突起形状部が取り除かれた後の傷や亀裂からメッシュ部材が破断する恐れがある。
更に、電鋳メッシュは基板からメッシュ部材を剥がす必要があるため、基材からメッシュ部材を剥がす際に線と線が交差する部分に亀裂が入りやすいという欠点もある。特に、厚さが薄い状態(例えば25μm以下)でメッシュ数の多いメッシュ部材を電鋳法で作製すると、線幅が狭く、厚みが薄いために、基板からの剥離中に線部に亀裂が入ることが多い。メッシュ部材の表面に傷や亀裂があると、メッシュ部材を張ったときやスキージで印刷するときなどに傷や亀裂部分に応力が集中するため、傷や亀裂部分からメッシュ部材が破断することがある。
ニッケルなどの電解箔にエッチングなどで孔開け加工したものをメッシュ部材とすることも考えられるが、電鋳法によるメッシュ部材と同様に強度のばらつきが生じる恐れがある。実際に電解箔に孔開け加工してメッシュ部材を作製し、引張り試験を実施したところ、強度のばらつきが大きいことが確認できた。またスクリーン印刷用メッシュ部材は、その基本的な特性として、印刷幅のばらつきを小さくすることも必要であり、こうした特性が発揮できないと、高精細な印刷が実現できないものとなる。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その第一の目的は、スキージが引っ掛かりやすいためにペーストを均等に引き伸ばし難い原因となるスキージ接触面での凹凸部がなく、厚さが比較的薄く、メッシュ部材として必要で均一な強度を有し、高精細な印刷に必要なメッシュ数を有するスクリーン印刷用メッシュ部材を提供することにある。
本発明の第二の目的は、高粘度のペーストを利用した場合でも、印刷の高低差が少なく、且つ印刷幅のばらつきが少ない印刷を実現でき、メッシュ部材として必要で均一な強度を有するスクリーン印刷用メッシュ部材を提供することにある。
上記第一の目的を達成することのできた本発明に係るスクリーン印刷用メッシュ部材とは、スクリーン印刷用メッシュ部材であって、圧延金属箔に多数の孔を開けることにより作製されると共に、線部を構成する少なくとも片面が平坦であり、作製したメッシュ部材から幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張速度:10mm/分で引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cmあたりに換算した引張強度が20N/cm以上であり、メッシュ数が250(本/インチ)以上であり、更に開口率が、25%以上、下記(1)式で規定される値以下である点に要旨を有するものである。
上記第二の目的を達成することのできた本発明に係るスクリーン印刷用メッシュ部材とは、スクリーン印刷用メッシュ部材であって、圧延金属箔に多数の孔を開けることにより作製されると共に、線部を構成する少なくとも片面が平坦であり、作製したメッシュ部材から幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張速度:10mm/分で引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cmあたりに換算した引張強度が20N/cm以上であり、開口率が、25%以上、上記(1)式で規定される値以下であり、且つ線部が相互に交差する部分が略T字型である点に要旨を有するものである。
本発明のスクリーン印刷用メッシュ部材における好ましい実施形態としては、(a)孔の外観形状が、印刷対象物に向かって広がるように形成されたものであること、(b)線部の方向が印刷方向に対して傾斜させたものであること、(c)厚みが5μm以上、100μm以下であること、等の構成が挙げられる。
また本発明のスクリーン印刷用メッシュ部材の素材となる圧延金属箔としては、特に限定されるものではないが、ステンレス鋼、チタン若しくはチタン合金、ニッケル若しくはニッケル合金、銅若しくは銅合金、およびアルミ合金のいずれかが挙げられる。
本発明のスクリーン印刷用メッシュ部材によれば、スキージが引っ掛かりやすいためペーストを均等に引き伸ばし難い原因となるスキージ接触面での凹凸部がなく、厚さが比較的薄く、メッシュ部材として必要で均一な強度を有し、高精細な印刷に必要なメッシュ数を有するスクリーン印刷用メッシュ部材、或は高粘度のペーストを利用した場合でも、印刷の高低差が少なく、且つ印刷幅のばらつきが少ない印刷を実現でき、メッシュ部材として必要で均一な強度を有するスクリーン印刷用メッシュ部材が実現できた。
上記の課題を解決するために、本発明者らは様々な角度から検討を重ねた。その結果、素材として圧延により製造された金属箔(以下、「圧延金属箔」と呼ぶ)を用い、この圧延金属箔に孔開け加工を施してメッシュ部材を構成することにより、線部を構成する少なくとも片面(スキージが接触する面)が平坦で、厚さが比較的薄く(例えば25μm以下)、しかも強度のばらつきがなく、高精細な印刷に必要なメッシュ数を有し、上記第一の目的に適うスクリーン印刷用メッシュ部材が実現できることを見出し、本発明を完成した。
本発明のメッシュ部材では、その素材として圧延金属箔を用いることが重要な要件である。このような圧延金属箔は、その表面が平坦で、厚みが薄く均一であり、高い引張強さを有すると共に、強度のばらつきが極めて少なく、こうした圧延金属箔を素材としてメッシュ部材を作製した場合には、厚みや強度のばらつきが殆どないものとなる。
また、メッシュ部材の厚さは圧延金属箔の厚さに反映することになるので、厚さが25μm以下の圧延金属箔に、同じ開口部(孔)の形状で多数の孔開け加工をすることにより、ペーストが透過するための開口部(孔)と、メッシュ部材にした場合の強度を維持するための線部(後記図3の1aで示す)を有する、厚さが25μm以下のメッシュ部材が実現できる。
上記のような圧延金属箔に孔開け加工して厚さが例えば25μm以下のメッシュ部材を構成することにより、図3に示すように、スキージ6が接触するメッシュ部材や感光性乳剤4の表面が平坦でスキージ6の動きが滑らかであるため[図3(a)]、ペーストを均等に引き伸ばし易いと共に[図3(b)]、印刷膜厚d2が薄い高精細なパターンの印刷を行うことができる[図3(c)]。尚、このときの印刷膜厚d2は、厚さが25μm以下で且つ開口率が60%以下のメッシュ部材によって、計算上15μm以下にできることになる(前記表1参照)。
上述のごとく、メッシュ部材の厚みを薄くするほど、印刷膜厚も薄くできるが、現在の圧延技術では厚さが5μm未満の圧延金属箔は安定して入手することが極めて困難である。また圧延金属箔厚さが5μm未満となると、メッシュ部材として必要な強度を確保するためには十分な開口率を得ることが出来なくなる。こうしたことから、本発明のメッシュ部材の厚さは5μm以上、25μm以下のものとなる。
本発明によれば、メッシュ部材に要求される強度特性を満足するものとなるが、このときの強度に関する研究の経緯は次の通りである。まず厚さの異なる(厚さ5μm以上、25μm以下)のステンレス鋼箔に、エッチングによって孔開け加工を施し、開口率の異なる各種メッシュ部材を作製した。このときのメッシュ部材の作製においては、マスクに開口パターンを描画し、圧延ステンレス鋼箔にレジストを塗布した後に、マスクの開口パターンを露光、現像した。その後エッチングにより孔開け加工した後に、レジストを剥離して各種メッシュ部材を作製した。
作製したメッシュ部材(後記表2の試験No.1〜11)の厚さを、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製)で測定した。また光学顕微鏡観察によって、線部1aを構成する面(即ち、スキージが接触する面)が平坦であることを確認すると共に、撮影した顕微鏡画像を汎用画像処理ソフト(ナノシクテム株式会社製)により、線幅(線部1aの幅)と開口幅(孔の幅)を測定し、ピッチ(線幅と開口幅の合計)からメッシュ数(本/インチ)を計算した。また開口幅とピッチから、開口率[開口幅(μm)2/ピッチ(μm)2×100(%)]を算出した。更に、単位幅当りの開口部間の線部の断面積に相当する[単位幅当りの最小断面積](mm2/cm)を、10mm×厚さ(mm)×(1−√開口率(%))÷1cmの計算式から算出した。尚、上記「√開口率(%)」とは、例えば開口率が50%の場合は、√(0.5)として計算することを意味する。
また作製したメッシュ部材から、幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張試験機(株式会社オリエンテック製)を用いて、引張速度:10mm/分で引張試験を実施した。引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cm当りに換算したものを単位幅当りの引張強度として求めた。
上記の結果[メッシュの厚さ(μm)、メッシュ数(本/インチ)、単位幅当りの最小断面積(mm2/cm)、開口率(%)、単位幅当りの引張強度(N/cm)]を、下記表2に示す(表2に示した「負荷試験」については、後述する)。尚、作製した全てのメッシュ部材は、スキージが接触する面の線部1aは平坦であることが確認できた。
上記引張試験の結果から、本発明者らが、メッシュ部材の引張強度に影響を及ぼしている要因を解析したところ、圧延金属箔に孔開け加工して作製したメッシュ部材の単位幅当りの引張強度(N/cm)は、単位幅当りの最小断面積(mm2/cm)に比例することを見出した。単位幅当りの最小断面積(mm2/cm)と、単位幅当りの引張強度(N/cm)の関係を図4に示す。即ち、印刷版作製時にメッシュ部材を引張った際に、最も応力が大きくなるのは、断面積が最も小さい開口部間の線部であり、圧延金属箔に孔開け加工して作製したメッシュ部材では、その単位幅当りの引張強度は単位幅当りの最小断面積に比例することになる。
メッシュ部材を作製する前の圧延金属箔の強度は、通常引張強さ(N/mm2)で表され、圧延金属箔の種類により特定の引張強さを示すことから、圧延金属箔から作製したメッシュ部材の単位幅当りの引張強度(N/cm)の計算上の最大値は、[圧延金属箔の引張強さ(N/mm2)]×[単位幅当りの最小断面積(mm2/cm)]となる。
本発明者らは、作製したメッシュ部材が、薄い印刷膜厚で高精細なスクリーン印刷版用メッシュ部材としての強度を有するかを評価するために負荷試験を行った。このときの負荷試験では、印刷版のアルミ枠にメッシュ部材を張った状態でスキージの印圧(押圧荷重)に耐えられるかを模擬的に評価するために、印刷版のアルミ枠を模擬した金属製クランプでメッシュ部材の四辺を挟み、スクリーン印刷版作製と同様に、テンションゲージ(株式会社プロテック製)をメッシュ部材の中央部に置いてメッシュ部材の沈み込み量(mm)を計測しながら、メッシュ部材を挟んだクランプを移動させてメッシュ部材を張った。メッシュ部材を張った状態で、圧縮試験機(インストロン社製)を用いてチャックに挟んだスクリーン印刷用ウレタンゴム製のスキージをスクリーン印刷時と同様にメッシュ部材に押しあて、メッシュ部材にかかる張力とスキージの印圧に耐えられるかを観察した。メッシュ部材の線部が破れるときは、メッシュ部材全体が破損するため、観察は目視により行い、メッシュ部材の線部に破れがなかった場合を「○」、メッシュ部材の線部が1箇所でも破れた場合を「×」と判定した。その結果、を上記表2に併記した。
負荷試験の結果、作製したメッシュ部材のうち、試験No.1、2(図4に示した比較例)は破損したが、試験No.3〜11(図4に示した実施例)では破損しなかった。メッシュ部材が破損したもの(試験No.1、2)の単位幅当りの引張強度はいずれも20N/cm未満であり、単位幅当りの引張強度が20N/cm以上を有するその他のメッシュ部材(試験No.3〜11)は、いずれも破損しなかった。この試験の結果から、メッシュ部材の単位幅当りの引張強度を20N/cm以上とすることにより、スクリーン印刷に用いることができるメッシュ部材が実現できることが判明した。この結果から、メッシュ部材の引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cm当りに換算した単位幅当りの引張強度を20N/cm以上と規定した。
本発明者らは、スクリーン印刷用メッシュ部材のメッシュ数と印刷精度の関係についても検討した。その結果、高粘度のペーストを用いた方が、印刷滲みが少なくなって、高精度の印刷が実現できるのであるが、こうした高精度の印刷を実現するためには、メッシュ数を250(本/インチ)以上にする必要がある。こうしたことから、本発明のメッシュ部材では、そのメッシュ数は微細なパターンを印刷することができる250(本/インチ)以上の細かさを有するものとした。圧延金属箔に孔を開けたメッシュ数が250(本/インチ)以上のメッシュ部材は、線幅と開口幅の合計であるピッチを100μm以下とすることにより得ることができる。
圧延金属箔に孔開け加工したメッシュ部材は、開口率が小さいほど強度は高くなるが、開口率が小さくなると開口部におけるペーストの充填量が少なくなって、印刷かすれが発生することがある。そこで開口率を変えたメッシュ部材を試作し、スクリーン印刷用印刷版を作製して印刷試験を行ったところ、開口率25%未満では印刷かすれが発生するが、開口率25%以上では良好な印刷ができることが分かった。
前述のとおり、メッシュ部材の単位幅当りの引張強度(N/cm)の計算上の最大値は、[圧延金属箔の引張強さ(N/mm2)]×[単位幅当りの最小断面積(mm2/cm)]であり、単位幅当りの最小断面積は10mm×厚さ(mm)×(1−√開口率(%))÷1cmであることから、単位幅当りの引張強度(N/cm)の計算上の最大値は、圧延金属箔の引張強さ(N/mm2)×10mm×厚さ(mm)×(1−√開口率(%))÷1cmとなり、開口率が大きいほど単位幅当りの引張強度(N/cm)の計算上の最大値は小さくなる。
メッシュ部材の負荷試験の結果から、スクリーン印刷用のメッシュ部材としては単位幅当りの引張強度が20N/cm以上必要であることから、厚みが異なる場合でも少なくとも単位幅当りの引張強度が20N/cmとなる開口率(計算上の最大開口率)以下の開口率とする必要がある。計算上の最大開口率は、20N/cm=圧延金属箔の引張強さ(N/mm2)×10mm×厚さ(mm)×(1−√開口率(%))÷1cmの関係式から算出できるため、計算上の最大開口率は、下記(1)式で算出できることになる。
即ち、メッシュ部材の開口率は、スクリーン印刷に必要な開口率である25%以上を確保するとともに、単位幅当りの引張強度20N/cm以上を確保するために、上記(1)式で算出される計算上の最大開口率以下とする必要がある。
メッシュ部材の開口率を25%以上とすると共に、上記(1)式で算出される計算上の最大開口率以下とした場合に、単位幅当りの引張強度が20N/cm以上を確保できるかを検討した。このとき用いたステンレス箔の引張強さは1430N/mm2であることから、ステンレス箔からなるメッシュ部材の計算上の最大開口率は[1−20(N/cm)÷1430(N/mm2)÷厚さ(mm)÷10]2×100(%)で算出でき、厚さが6μmでは開口率:59%、厚さが10μmでは開口率:74%、厚さが11μmでは開口率:76%、厚さが21μmでは開口率:87%となる。検討の結果、上記試験No.3〜11のメッシュ部材では、いずれも計算上の最大開口率以下となっており、単位幅当りの引張強度が20N/cm以上であった。試験No.1,2のものでは、いずれも厚さ6μmでの計算上の最大開口率である59%を超える開口率となっており、単位幅当りの引張強度が20N/cm未満であった。
本発明のメッシュ部材において、多数形成される孔の形状(開口形状)については、限定するものではなく、例えば円形や六角形(全体形状がハニカム状)でもよいが、図5のAに示すような四角形状(メッシュ部材の全体形状が格子状)が、開口率を確保しながら強度を保持する上で好適である。
また孔の外観形状についても、限定するものではないが、印刷対象物に向かって広がるように形成されたものであることが好ましい。図6は、こうした形状を説明するための図である。図6(a)は、孔9の側壁が印刷対象物に向かって(図6の下方に向かって)垂直となる通常の孔の外観形状を示したものであり、図6(b)〜(d)は線部1aの断面形状を様々に工夫することによって、孔の外観形状を印刷対象物に向かって広がるように形成したものである。このうち、図6(b)は線部1aの断面形状を逆台形状となるように、図6(c)は線部1aの断面形状が半円形状、図6(d)は線部1aの断面形状が三角形状であることを夫々示している。
これらの形状のうち、通常の孔の形状[図6(a)]に比べて、印刷対象物に向かって広がるように形成されたものである場合には[図6(b)〜(d)]、ペーストの回り込みが良好なものとなるために、ペーストの粘度をあげることができ、印刷時の滲みをより少なくすることができる。
こうした形状の孔を形成するには、例えば圧延金属箔の片面側にのみにレジストを塗布後、孔の開口パターンを露光・現像し、低濃度のエッチング液を使ってレジストを塗布した片面側のみからエッチングすることで、圧延金属箔の片面をより多く溶かすことにより、上記のような各種外観形状の孔9を形成することができる。尚、孔の形状を印刷対象物に向かって広がるように形成した場合のメッシュ部材の開口率は、スキージ面側と印刷対象物面側の開口率の平均値とする。
従来の金属細線を編んでメッシュ部材とする製品の多くがステンレス鋼細線を採用しており、ペーストなどの周辺部材がステンレス鋼のメッシュ部材を前提に作られているため、素材となる圧延金属箔はステンレス鋼(ステンレス箔)が最も実用的である。ステンレス箔よりも強度の低いチタン箔、ニッケル箔、銅箔、アルミ合金箔(Al95%〜98%)の引張試験を実施し、引張強さ(N/mm2)を測定した。測定した引張強さから、厚さ15μmの場合と最も強度が得られる厚さ25μmの場合での計算上の最大開口率を算出し、計算上の最大開口率が印刷かすれのない印刷に必要な開口率:25%以上となっているかを検討した。
チタン箔、ニッケル箔、銅箔、アルミ合金箔の引張強さから算出した厚さ:15μmと厚さ:25μmの場合の最大開口率は下記表3に示す通りであった。検討の結果、厚さ:15μmと厚さ:25μmの場合には、全ての圧延金属箔の計算上の開口率はスクリーン印刷用メッシュ部材として必要な開口率:25%以上が確保できていた。この結果から、ステンレス鋼の他、チタン若しくはチタン合金、ニッケルおよびニッケル合金、銅若しくは銅合金、アルミ合金が本発明品を作製するための圧延金属箔として実用可能であることが分かる。尚、本発明で圧延金属箔の素材として用いることのできるチタン合金、ニッケル合金、銅合金、アルミ合金とは、箔状にできるものであれば良く、例えばチタン合金であればJISH4600 80種等、ニッケル合金であればJISCS2520(1986)NCHRW1等、銅合金であればJISH3130 C1720R−H等、アルミ合金であればJISH4000 5052等が挙げられる。また、このような圧延金属箔は、一般的に市販されており、容易に入手できる。
本発明者らは、上記第二の目的を達成するためにも検討を重ねた。その結果、素材として圧延により製造された金属箔(圧延金属箔)を用い、この圧延金属箔に、メッシュ部材を構成する線部が相互に交差する部分の形状(交差形状)を略T字型となるように孔開け加工を施してメッシュ部材を構成することにより、線部を構成する面が平坦で、印刷の高低差が少なく、且つ印刷幅のばらつきが少なく、しかも必要で均一な強度を有し、上記第二の目的に適うスクリーン印刷用メッシュ部材が実現できることを見出し、本発明を完成した。
圧延金属箔に同じ開口部(孔)の形状で多数の孔開け加工をすることにより、ペーストが透過するための開口部(孔)と、メッシュ部材にした場合の強度を維持するための線部を有する、表面に凹凸のないメッシュ部材が実現できる。圧延金属箔に孔開け加工して表面に凹凸がないメッシュ部材を作製し、ステンレス細線を編んだメッシュ部材と印刷の高低差を比較した。その結果、圧延金属箔に孔開け加工して作製したメッシュ部材は、ステンレス細線を編んだメッシュ部材に比べて、印刷の高低差が少ない印刷が実現できることが分かった。
図7は、孔の形状(開口形状)を示す説明図である。図7(a)は、線部1aが相互に交差する部分がT字型である形状であり、図7(b)は、線部1aが相互に交差する部分の形状がT字型であって、孔の隅部にR形状(丸み)を付与したものである。圧延金属箔に孔開け加工する際に、線部1aが相互に交差する部分が十字型である場合(前記図5)、線部1aが相互に交差する部分の面積が大きくなり、スクリーン印刷を行った際に線部1の下部にペーストが回り込みにくく、印刷幅にばらつきが生じやすくなる。そこで、本発明のメッシュ部材では、線部1aが相互に交差する部分がT字型になるように孔開け加工し[図7(a)および(b)]、よりペーストの回り込みを良好にし、印刷幅のばらつきを少なくできたのである。
本発明のメッシュ部材では、図7(a)および(b)に示したように、線部1aが相互に交差する部分がT字型になるような開口形状を想定したものであるが、例えば図7(c)に示すように、線部1aが相互に交差する部分が「Y字型」に近い状態になる場合をも含むものであり、こうした形状であっても上記の効果を発揮できるものとなる。こうした観点から、本発明では線部1aが相互に交差する部分の形状を「略T字型」と表現した。以下では、Y字型に近い状態も含め、一括して「T字型」と呼ぶことがある。
尚、本発明のメッシュ部材において、多数形成される孔の形状(開口形状)については、限定するものではなく、前記図7(a)、(b)のAに示したような四角形状、前記図7(c)のBに示したような六角形状の他、円形であってもよいが、開口率を確保しながら強度を保持する観点からすれば、四角形状であることが好ましい。
上記のように圧延金属箔に、線部の交差形状がT字型となるように多数の孔を孔開け加工してメッシュ部材を構成することにより、図8に示すように、スキージ6が接触するメッシュ部材や感光性乳剤4の表面が平坦でスキージ6の動きが滑らかとなると共に[図8(a)]、ペーストの回り込みも良好となり、ペースト7を均等に引き伸ばし易くなると共に[図8(b)]、印刷膜厚d2の高低差のない、印刷幅のばらつきが小さい高精細なパターンの印刷を行うことができる[図8(c)]。
孔の外観形状についても、限定するものではないが、上記と同様に、印刷対象物に向かって広がるように形成されたものであることが好ましい。前記図8は、孔2の外観形状が印刷面側(図8の下側)に向かって広がるように形成されている状態も示している(図8の上側はスキージ側)。図8は、線部1aの断面形状を様々に工夫することによって、孔の外観形状を印刷対象物に向かって広がるように形成したものである。このように、印刷対象物に向かって広がるように形成されたものである場合には、ペーストの回り込みが良好なものとなるために、ペーストの粘度をあげることができ、印刷時の滲みをより少なくすることができる。こうした形状の孔を形成するには、例えば圧延金属箔の片面側にのみにレジストを塗布後、孔の開口パターンを露光・現像し、低濃度のエッチング液を使ってレジストを塗布した片面側のみからエッチングすることで、圧延金属箔の片面をより多く溶かすことにより、上記のような各種外観形状の孔2を形成することができる。
本発明のメッシュ部材は、圧延金属箔の全面に亘って多数の孔を孔開け加工することを基本的に想定したものであるが、印刷対象物の印刷領域に相当する部分以外に、印刷対象物の非印刷領域に相当する部分を有する場合には、非印刷領域に相当する部分には孔が開けられていないものや、非印刷領域に相当する部分には印刷領域に相当する部分における孔の開口率よりも小さい開口率で多数の孔が開けられたものも製作可能である(後記実施例)。また、前記印刷領域に相当する圧延金属箔の部分と、該非印刷領域に相当する圧延金属箔の部分の境界の輪郭は、少なくとも一部が丸みを帯びたものにすると、応力集中によってメッシュ部材が破断することを防止できるものとなる。尚、メッシュ部材から引張試験片を切り出す場合には、印刷領域から切り出すものとする。但し、印刷領域が小さく、幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出すことができない場合には、非印刷領域を含んで切り出してもよいが、印刷領域が試験片の中央になるように切り出す。
メッシュ部材の線部の方向がスキージの移動方向(即ち、印刷方向)と並行若しくは垂直となっている場合には、メッシュ部材の線部の下部にペーストが回り込まず印刷かすれが生じやすい。そのため、メッシュ部材をアルミニウム枠に張る場合には、メッシュ部材の線部の方向をスキージの移動方向に対して傾斜させた状態として張ることが望ましい。以下では、このように傾斜させた状態を「バイアス」と表現する。例えば、「バイアス22.5度」とは、線部の方向をスキージの移動方向(印刷方向)に対して22.5度傾斜させた状態を意味する。
本発明によれば、メッシュ部材に要求される強度特性を満足するものとなるが、このときの強度に関する研究の経緯は次の通りである。まず厚さの異なる(厚さ6〜21μm)のステンレス鋼箔に、エッチングによって孔開け加工を施し、開口率および交差形状の異なる各種メッシュ部材を作製した。このときのメッシュ部材の作製においては、マスクに開口パターンを描画し、圧延ステンレス鋼箔にレジストを塗布した後に、マスクの開口パターンを露光、現像した。その後エッチングにより孔開け加工した後に、レジストを剥離して各種メッシュ部材を作製した。
そして、圧延金属箔に交差形状が十字型の孔開け加工を行なって作製したメッシュ部材[前記図5]の線部1aを引張り方向に対してバイアス0度(バイアスがない場合)、22.5度(孔の形状が四角形の場合は67.5度でもある)で引張った場合の、単位幅あたりの最小断面積(mm2/cm)と単位幅当りの引張強度(N/cm)の関係も調べた(試験No.1〜12:このうち試験No.1〜11のものは前記表2に示した試験No.1〜11と実質同じ)。このとき、線部1aが交差する部分がT字型で、且つバイアスが0、22.5度または67.5度になるように圧延金属箔に孔開け加工したメッシュ部材[前記図7(b)]についても、同様の試験を行なった(試験No.13〜20)。
作製したメッシュ部材(後記表4の試験No.1〜20)の厚さを、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製)で測定した。また光学顕微鏡観察によって、線部1aを構成する面(即ち、スキージが接触する面)が平坦であることを確認すると共に、撮影した顕微鏡画像を汎用画像処理ソフト(ナノシクテム株式会社製)により、線幅(線部1aの幅)と開口幅(孔の幅)を測定し、ピッチ(線幅と開口幅の合計)からメッシュ数(本/インチ)を計算した。また開口幅とピッチから、開口率[開口幅(μm)2/ピッチ(μm)2×100(%)]を算出した。更に、単位幅当りの開口部間の線部の断面積に相当する[単位幅当りの最小断面積](mm2/cm)を、10mm×厚さ(mm)×(1−√開口率(%))÷1cmの計算式から算出した。
また作製したメッシュ部材から、幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張試験機(株式会社オリエンテック製)を用いて引張速度:10mm/分で引張試験を実施した。引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cm当りに換算したものを単位幅当りの引張強度として求めた。
上記の結果[メッシュの厚さ(μm)、メッシュ数(本/インチ)、単位幅当りの最小断面積(mm2/cm)、開口率(%)、単位幅当りの引張強度(N/cm)]を、下記表4に示す。尚、作製した全てのメッシュ部材は、スキージが接触する面の線部1aは平坦であることが確認できた。
上記引張試験の結果から、本発明者らが、メッシュ部材の引張強度に影響を及ぼしている要因を解析したところ、圧延金属箔に孔開け加工して作製したメッシュ部材の単位幅当りの引張強度(N/cm)は、線部の交差形状やバイアスにかかわらず、単位幅当りの最小断面積(mm2/cm)に比例することを見出した。単位幅当りの最小断面積(mm2/cm)と、単位幅当りの引張強度(N/cm)の関係を図9に示す(◆は試験No.1〜12、▲は試験No.13〜20)。
例えば、板に存在する円孔の応力集中係数は、円孔の直径a÷ピッチW(a/W)の比が大きくなるほど低下することが知られている(例えば、西田正孝著、「応力集中」第16頁、昭和42年発行、森北出版株式会社)。しかしながら、荷重を受け持つ部分の面積は減るため、この兼ね合いで破断に対する耐性が決まることになる。圧延金属箔に孔開け加工して作製したメッシュ部材の場合も、同様に孔の直径a/ピッチW比(a/W)による応力集中係数と、荷重を受け持つ部分(メッシュ部材の線部)の面積の兼ね合いで破断に対する耐性が決まると考えられる。但し、スクリーン印刷用メッシュ部材においては、孔は必ずしも円ではない。またバイアスをとって(傾斜させて)アルミニウム枠に張ることがある。更に、線部の交差形状が略T字型の場合もあり、これらの場合においても同様に、応力集中係数と円孔の直径a÷ピッチW(a/W)の比の関係が成り立つかは明らかではない。しかしながら、上記引張試験の結果から、メッシュ部材の孔が配列およびバイアスがいずれの場合でも、単位幅あたりの最小断面積(mm2/cm)は単位幅当りの引張強度(N/cm)に比例すると言える。
線部の交差形状がT字型のメッシュ部材の印刷性を評価するために、ステンレス鋼箔にエッチングによって孔開け加工を施して製作したメッシュ部材を用いて印刷試験を実施した。メッシュ部材の厚さは21μm、メッシュ数は125(本/インチ)、開口率は56%、バイアスは22.5度または67.5度とした。印刷パターン幅を200μmとし、導電性銀ペーストで印刷した後、印刷幅をマイクロスコープ(キーエンス製VHX−2000)で測定した。その結果を下記表5に示すが、印刷幅の最大値と最小値の差(「印刷幅のばらつき」と呼ぶことがある)は、線部の交差形状がT字型の方が、十字型に比べて小さくできることが確認できた。
また、印刷パターン部の幅を40、60、80、100(μm)とし、5本の印刷ライン(長さ:各7mm)の印刷かすれ(断線)の箇所を観察し、平均値を算出した。このときのメッシュ部材の厚さは、21μm、メッシュ数は250(本/インチ)、開口率は57%、バイアスは22.5度とした。その結果を下記表6に示すが、印刷パターン幅が40μmおよび60μmにおいては、線部の交差形状が十字型よりもT字型である方が、印刷かすれ(断線)が少ないことが分かる。
本発明者らは、作製したメッシュ部材が、薄い印刷膜厚で高精細なスクリーン印刷版用メッシュ部材としての強度を有するかを評価するために負荷試験を行った。このときの負荷試験では、印刷版のアルミ枠にメッシュ部材を張った状態でスキージの印圧(押圧荷重)に耐えられるかを模擬的に評価するために、印刷版のアルミ枠を模擬した金属製クランプでメッシュ部材の四辺を挟み、スクリーン印刷版作製と同様に、テンションゲージ(株式会社プロテック製)をメッシュ部材の中央部に置いてメッシュ部材の沈み込み量(mm)を計測しながら、メッシュ部材を挟んだクランプを移動させてメッシュ部材を張った。メッシュ部材を張った状態で、圧縮試験機(インストロン社製)を用いてチャックに挟んだスクリーン印刷用ウレタンゴム製のスキージをスクリーン印刷時と同様にメッシュ部材に押しあて、メッシュ部材にかかる張力とスキージの印圧に耐えられるかを観察した。メッシュ部材の線部が破れるときは、メッシュ部材全体が破損するため、観察は目視により行い、メッシュ部材の線部に破れがなかった場合を「○」、メッシュ部材の線部が1箇所でも破れた場合を「×」と判定した。その結果を、上記表4に併記した。
負荷試験の結果、作製したメッシュ部材のうち、試験No.1、2は破損したが、試験No.3〜20では破損しなかった。メッシュ部材が破損したもの(試験No.1、2)の単位幅当りの引張強度はいずれも20N/cm未満であり、単位幅当りの引張強度が20N/cm以上を有するその他のメッシュ部材(試験No.3〜20)は、いずれも破損しなかった。この試験の結果から、メッシュ部材の単位幅当りの引張強度を20N/cm以上とすることにより、スクリーン印刷に用いることができるメッシュ部材が実現できることが判明した。この結果から、メッシュ部材の引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cm当りに換算した単位幅当りの引張強度を20N/cm以上と規定した。
圧延金属箔に孔開け加工したメッシュ部材は、開口率が小さいほど強度は高くなるが、開口率が小さくなると開口部におけるペーストの充填量が少なくなって、印刷かすれが発生することがある。そこで開口率を変えたメッシュ部材を試作し、スクリーン印刷用印刷版を作製して印刷試験を行ったところ、開口率25%未満では印刷かすれが発生するが、開口率25%以上では良好な印刷ができることが分かった。
メッシュ部材の開口率は、スクリーン印刷に必要な開口率である25%以上を確保するとともに、単位幅当りの引張強度20N/cm以上を確保するために、上記(1)式で算出される計算上の最大開口率以下とする必要がある。
メッシュ部材の開口率を25%以上とすると共に、上記(1)式で算出される計算上の最大開口率以下とした場合に、単位幅当りの引張強度が20N/cm以上を確保できるかを検討した。このとき用いたステンレス箔の引張強さは1430N/mm2であることから、ステンレス箔からなるメッシュ部材の計算上の最大開口率は[1−20(N/cm)÷1430(N/mm2)÷厚さ(mm)÷10]2×100(%)で算出でき、厚さが6μmでは開口率:59%、厚さが10μmでは開口率:74%、厚さが11μmでは開口率:76%、厚さが21μmでは開口率:87%となる。検討の結果、上記試験No.3〜20のメッシュ部材では、いずれも計算上の最大開口率以下となっており、単位幅当りの引張強度が20N/cm以上であった。試験No.1、2のものでは、いずれも厚さ6μmでの計算上の最大開口率である59%を超える開口率となっており、単位幅当りの引張強度が20N/cm未満であった。
メッシュ部材の厚みを薄くするほど、メッシュ痕が残りにくく印刷高さを均一することが期待できるが、現在の圧延技術では厚さが5μm未満の圧延金属箔は安定して入手することが極めて困難である。また圧延金属箔厚さが5μm未満となると、メッシュ部材として必要な強度を確保するためには十分な開口率を得ることが出来なくなる。また、圧延金属箔の厚みが100μmを超えると微細で精度の高い孔開け加工が困難となる。こうしたことから、本発明のメッシュ部材の厚さは5μm以上、100μm以下が適している。このうち、印刷膜厚が薄く、印刷パターン幅が細く、高精細な印刷には25μm以下が好適である。
印刷パターン幅が細く、高精細な印刷を行う場合には、メッシュ数を250(本/インチ)以上とすることが好ましいが、このメッシュ数はその用途・目的に応じて、適時設定することができる。また圧延金属箔に孔を開けたメッシュ数が250(本/インチ)以上のメッシュ部材は、線幅と開口幅の合計であるピッチを100μm以下とすることにより得ることができる。
素材となる圧延金属箔に多数の孔を形成する方法については、エッチング加工、ショットブラスト加工、レーザー加工等を採用できる。本発明者らは、圧延金属箔に孔開け加工するために、エッチング加工、ショットブラスト加工、レーザー加工を試みた。各加工法の研究の結果、いずれの方法でも孔開けすることはできるが、開口の精度や速度の点からエッチング加工による孔開けが最も好適である。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[実施例1]
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより開口部の形状が四角形(但し、線部の交差形状が十字型)の孔開け加工してメッシュ部材を得た。このときのメッシュ部材の線部(図3、6に示した1a)は平坦であり、厚さは10μm、開口率は53%、メッシュ数は420(本/インチ)となっている。このメッシュ部材の詳細な作製方法は次の通りである。まずマスクに四角形状の開口パターン(ピッチ60μm)を描画し、ステンレス鋼圧延箔にフォトレジストを塗布し、パターンを露光した後に現像した。現像後、エッチングにより孔開け加工し、最後にフォトレジストを剥離することによりメッシュ部材を得た。このメッシュ部材を用いて実際の印刷を行ったところ、メッシュ部材の破れも無く印刷膜厚5μmの印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図10(図面代用顕微鏡写真)に示す。
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより開口部の形状が四角形(但し、線部の交差形状が十字型)の孔開け加工してメッシュ部材を得た。このときのメッシュ部材の線部(図3、6に示した1a)は平坦であり、厚さは10μm、開口率は53%、メッシュ数は420(本/インチ)となっている。このメッシュ部材の詳細な作製方法は次の通りである。まずマスクに四角形状の開口パターン(ピッチ60μm)を描画し、ステンレス鋼圧延箔にフォトレジストを塗布し、パターンを露光した後に現像した。現像後、エッチングにより孔開け加工し、最後にフォトレジストを剥離することによりメッシュ部材を得た。このメッシュ部材を用いて実際の印刷を行ったところ、メッシュ部材の破れも無く印刷膜厚5μmの印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図10(図面代用顕微鏡写真)に示す。
[実施例2]
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより開口部の形状が丸型(但し、線部の交差形状が十字型)の孔開け加工してメッシュ部材を得た。得られたメッシュ部材の線部は平坦で、厚さは10μm、開口率は47%、メッシュ数は250(本/インチ)となっている。このメッシュ部材の詳細な作製方法は次の通りである。まずマスクに丸形状の開口パターン(ピッチ100μm)を描画した後に、ステンレス鋼圧延箔にフォトレジストを塗布し、パターンを露光した後に現像した。現像後、エッチングにより孔開け加工し、最後にフォトレジストを剥離することによりメッシュ部材を得た。このメッシュ部材を用いて実際の印刷を行ったところ、メッシュ部材の破れも無く印刷膜厚5μmの印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図11(図面代用顕微鏡写真)に示す。
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより開口部の形状が丸型(但し、線部の交差形状が十字型)の孔開け加工してメッシュ部材を得た。得られたメッシュ部材の線部は平坦で、厚さは10μm、開口率は47%、メッシュ数は250(本/インチ)となっている。このメッシュ部材の詳細な作製方法は次の通りである。まずマスクに丸形状の開口パターン(ピッチ100μm)を描画した後に、ステンレス鋼圧延箔にフォトレジストを塗布し、パターンを露光した後に現像した。現像後、エッチングにより孔開け加工し、最後にフォトレジストを剥離することによりメッシュ部材を得た。このメッシュ部材を用いて実際の印刷を行ったところ、メッシュ部材の破れも無く印刷膜厚5μmの印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図11(図面代用顕微鏡写真)に示す。
[実施例3]
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより開口部の形状が丸型(但し、線部の交差形状が十字型)の孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは21μm、開口率は55%、メッシュ数は250(本/インチ)となっている。このメッシュ部材の詳細な作製方法は次の通りである。まずマスクに丸形状の開口パターン(ピッチ100μm)を描画した後に、ステンレス鋼圧延箔にフォトレジストを塗布し、パターンを露光した後に現像した。現像後、エッチングにより孔開け加工し、最後にフォトレジストを剥離することによりメッシュ部材を得た。このメッシュ部材を用いて実際の印刷を行ったところ、メッシュ部材の破れも無く印刷膜厚12μmの印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図12(図面代用顕微鏡写真)に示す。
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより開口部の形状が丸型(但し、線部の交差形状が十字型)の孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは21μm、開口率は55%、メッシュ数は250(本/インチ)となっている。このメッシュ部材の詳細な作製方法は次の通りである。まずマスクに丸形状の開口パターン(ピッチ100μm)を描画した後に、ステンレス鋼圧延箔にフォトレジストを塗布し、パターンを露光した後に現像した。現像後、エッチングにより孔開け加工し、最後にフォトレジストを剥離することによりメッシュ部材を得た。このメッシュ部材を用いて実際の印刷を行ったところ、メッシュ部材の破れも無く印刷膜厚12μmの印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図12(図面代用顕微鏡写真)に示す。
[実施例4]
めっき法により作製された金属箔(電解箔)に孔開け加工した電解箔メッシュ部材と、本発明の圧延金属箔メッシュ部材の強度を比較検討するために、電解箔および圧延箔に孔開け加工したメッシュ部材の引張試験を行った。市販の電解ニッケル箔(福田金属箔粉工業株式会社製、Ni:99%以上)と圧延ニッケル箔(東洋精箔株式会社製、規格VNi−H)に、線部の交差形状が十字型となるようにエッチングで孔開け加工し、電解箔を加工したメッシュ部材(線部を構成する両面が平坦、厚さ25μm、メッシュ数250(本/インチ)、開口率62%、孔の側壁が垂直)と、圧延ニッケル箔を加工したメッシュ部材(線部を構成する両面が平坦、厚さ20μm、メッシュ数250(本/インチ)、開口率67%、孔の側壁が垂直)を作製した。作製したメッシュ部材から、幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張速度:10mm/分で引張試験を実施した。
めっき法により作製された金属箔(電解箔)に孔開け加工した電解箔メッシュ部材と、本発明の圧延金属箔メッシュ部材の強度を比較検討するために、電解箔および圧延箔に孔開け加工したメッシュ部材の引張試験を行った。市販の電解ニッケル箔(福田金属箔粉工業株式会社製、Ni:99%以上)と圧延ニッケル箔(東洋精箔株式会社製、規格VNi−H)に、線部の交差形状が十字型となるようにエッチングで孔開け加工し、電解箔を加工したメッシュ部材(線部を構成する両面が平坦、厚さ25μm、メッシュ数250(本/インチ)、開口率62%、孔の側壁が垂直)と、圧延ニッケル箔を加工したメッシュ部材(線部を構成する両面が平坦、厚さ20μm、メッシュ数250(本/インチ)、開口率67%、孔の側壁が垂直)を作製した。作製したメッシュ部材から、幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張速度:10mm/分で引張試験を実施した。
図13に各試験片の単位幅当りの引張強度を示す。従来の電解ニッケル箔メッシュ部材は、試験片ごとの単位幅当りの引張強度のばらつきが本発明の圧延ニッケル箔メッシュ部材よりも大きかった。
この結果より、圧延金属箔に孔開け加工することにより強度のばらつきが少ないメッシュ部材を実現できることが分かる。また、各試験片の単位幅当りの引張強度の平均値は電解ニッケル箔メッシュ部材が18N/cm、圧延ニッケル箔メッシュ部材が28N/cmであった。圧延ニッケル箔メッシュ部材のほうが、電解ニッケル箔メッシュ部材よりも厚みは薄く、開口率も大きいにもかかわらず、高い強度が得られた。
[実施例5]
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより線部の交差形状がT字型になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部(図6〜8に示した1a)は平坦であり、厚さは21μm、開口率は63%、メッシュ数は250(本/インチ)となっている。また、孔の形状は、印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより線部の交差形状がT字型になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部(図6〜8に示した1a)は平坦であり、厚さは21μm、開口率は63%、メッシュ数は250(本/インチ)となっている。また、孔の形状は、印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。
このメッシュ部材の詳細な作製方法は次の通りである。まずマスクに四角形状の開口パターン(ピッチ100μm)を描画し、ステンレス鋼圧延箔にフォトレジストを塗布し、パターンを露光した後に現像した。現像後、エッチングにより孔開け加工し、最後にフォトレジストを剥離することによりメッシュ部材を得た(この作製方法については、下記実施例6〜9についても基本的に同じであるが、ピッチはメッシュ数ごとに決定することになる)。
このメッシュ部材をバイアス22.5度でアルミニウム枠に張り、印刷版を作製した。このメッシュ部材を用いて、印刷パターン幅80μmの印刷板を作製して実際の印刷を行ったところ、印刷かすれがなく、印刷の高低差が8.3μmと小さく、印刷幅のばらつきも5.6μmと小さい印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図14(図面代用顕微鏡写真)に示す。
実施例5で得られたメッシュ部材と、比較品である金属メッシュ織物を比較するために、メッシュ数325本(本/インチ)のステンレス鋼製細線を編んだメッシュ織物を用いて、同様に印刷パターン幅80μmの印刷板を作製し、印刷を行なった。その結果を、下記表7に示すが、ステンレス鋼製細線を編んだメッシュ織物では、印刷かすれはなかったが、印刷の高低差が20.7μmと大きく、印刷幅のばらつきも20.9μmと実施例よりも大きくなっている。
[実施例6]
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより線部の交差形状がT字型になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは16μm、開口率は57%、メッシュ数は320(本/インチ)、バイアスは67.5度となっている。また、孔の形状は、印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより線部の交差形状がT字型になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは16μm、開口率は57%、メッシュ数は320(本/インチ)、バイアスは67.5度となっている。また、孔の形状は、印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。
このメッシュ部材を用いて、印刷パターン幅80μmの印刷版を作製して実際の印刷を行ったところ、印刷かすれがなく、印刷の高低差が5.7μmと小さく、印刷幅のばらつきも9.5μmと小さい印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図15(図面代用顕微鏡写真)に示す。
[実施例7]
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより開口部の形状が四角形で、線部の交差形状がT字型になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは21μm、開口率は68%、メッシュ数は250(本/インチ)、バイアスは22.5度となっている。また、孔の形状は、印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより開口部の形状が四角形で、線部の交差形状がT字型になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは21μm、開口率は68%、メッシュ数は250(本/インチ)、バイアスは22.5度となっている。また、孔の形状は、印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。
このメッシュ部材を用いて、印刷パターン幅60μmの印刷版を作製して実際の印刷を行ったところ、印刷かすれがなく、印刷の高低差が6.9μmと小さく、印刷幅のばらつきも6.6μmと小さい印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図16(図面代用顕微鏡写真)に示す。
[実施例8]
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより孔の開口形状が六角形で、線部の交差形状が略T字型(Y字型に近い状態)になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは16μm、開口率は50%、メッシュ数は320(本/インチ)、バイアスは22.5度となっている。また、孔の外観形状は、印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。尚、印刷領域以外の非印刷領域の開口率は20%と印刷領域の開口率よりも低くなっている。
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより孔の開口形状が六角形で、線部の交差形状が略T字型(Y字型に近い状態)になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは16μm、開口率は50%、メッシュ数は320(本/インチ)、バイアスは22.5度となっている。また、孔の外観形状は、印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。尚、印刷領域以外の非印刷領域の開口率は20%と印刷領域の開口率よりも低くなっている。
このメッシュ部材を用いて、印刷パターン幅100μmの印刷版を作製して実際の印刷を行ったところ、印刷かすれがなく、印刷の高低差が5.3μmと小さく、印刷幅のばらつきも6.7μmと小さい印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図17(図面代用顕微鏡写真)に示す。
[実施例9]
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより孔の形状が四角形で、線部の交差形状が略T字型(Y字型に近い状態)になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは20μm、開口率は55%、メッシュ数は320(本/インチ)、バイアスは22.5度となっている。尚、孔の形状は、印刷面側に向かって印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。また、印刷領域のみ孔開け加工している。
市販のステンレス鋼圧延箔(東洋精箔株式会社製:規格SUS304−H)を用い、エッチングにより孔の形状が四角形で、線部の交差形状が略T字型(Y字型に近い状態)になるように孔開け加工してメッシュ部材を得た。メッシュ部材の線部は平坦で、厚さは20μm、開口率は55%、メッシュ数は320(本/インチ)、バイアスは22.5度となっている。尚、孔の形状は、印刷面側に向かって印刷面側に向かって開口が広がる形状となっている。また、印刷領域のみ孔開け加工している。
このメッシュ部材を用いて、印刷パターン幅80μmの印刷版を作製して実際の印刷を行ったところ、印刷かすれがなく、印刷の高低差が5.1μmと小さく、印刷幅のばらつきも4.7μmと小さい印刷が可能なことが確認できた。このとき得られたメッシュ部材の形状を図18(図面代用顕微鏡写真)に示す。
1 細線
1a 線部
2 開口部
3 印刷パターン部
4 樹脂(感光性乳剤)
5 印刷版
6 スキージ
7 インク(ペースト)
7a 滲み
8 印刷対象物
1a 線部
2 開口部
3 印刷パターン部
4 樹脂(感光性乳剤)
5 印刷版
6 スキージ
7 インク(ペースト)
7a 滲み
8 印刷対象物
Claims (6)
- スクリーン印刷用メッシュ部材であって、圧延金属箔に多数の孔を開けることにより作製されると共に、線部を構成する少なくとも片面が平坦であり、作製したメッシュ部材から幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張速度:10mm/分で引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cmあたりに換算した引張強度が20N/cm以上であり、メッシュ数が250(本/インチ)以上であり、更に開口率が、25%以上、下記(1)式で規定される値以下であることを特徴とするスクリーン印刷用メッシュ部材。
- スクリーン印刷用メッシュ部材であって、圧延金属箔に多数の孔を開けることにより作製されると共に、線部を構成する少なくとも片面が平坦であり、作製したメッシュ部材から幅:15mm、標点距離:100mmの試験片を切り出し、引張速度:10mm/分で引張試験を行ったときの破断荷重(N)を引張試験片の幅1cmあたりに換算した引張強度が20N/cm以上であり、開口率が、25%以上、下記(1)式で規定される値以下であり、且つ線部が相互に交差する部分が略T字型であることを特徴とするスクリーン印刷用メッシュ部材。
- 孔の外観形状が、印刷対象物に向かって広がるように形成されたものである請求項1または2に記載のメッシュ部材。
- 線部の方向が印刷方向に対して傾斜させたものである請求項1〜3のいずれかに記載のメッシュ部材。
- 厚みが5μm以上、100μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のメッシュ部材。
- 前記圧延金属箔は、ステンレス鋼、チタン若しくはチタン合金、ニッケル若しくはニッケル合金、銅若しくは銅合金、およびアルミ合金のいずれかからなるものである請求項1〜5のいずれかに記載のメッシュ部材。
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