一つの態様において、セラミックからなる物品の製造方法が開示され、この方法は、少なくとも一種類の先駆体無機成分と、少なくとも一種類のバインダとを混合して可塑化された混合物を形成し、この場合、上記バインダは少なくとも一種類の蛋白質材料を含み、次いで上記可塑化された混合物から未焼成体を形成することを含む。未焼成体とは、乾燥または湿潤可能な、焼結されていない物体を意味する。バッチまたは未焼成体内において、上記セラミック先駆体は、セラミック形成用成分またはセラミック自体となることができる。このセラミック先駆体は、例えば、シリカの原料またはアルミナの原料等の酸化物原料、あるいはムライト等のセラミックを含ませることができる。いくつかの実施の形態においては、上記可塑化された混合物が押出し成形されて未焼成体を形成する。いくつかの実施の形態においては、上記可塑化された混合物が少なくとも25℃のTONSETを有する。いくつかの実施の形態においては、上記可塑化された混合物は、剪断整形されて、少なくとも1.9トン毎平方フィート(約2kg/cm2)の湿潤強度を有する未焼成体を形成する。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、この混合物全体の重量に対して25重量%未満の水を含む。いくつかの実施の形態においては、上記未焼成体の加熱によって上記無機成分がセラミックを形成し、このセラミックは、コージェライト、ムライト、アルミナ、燐酸ジルコニウム、炭化珪素、窒化珪素、シリカ、およびチタン酸アルミニウムからなる群から選ばれる。いくつかの実施の形態においては、上記無機成分が反応して反応生成物を形成し、この場合のセラミックはその反応の反応生成物である。いくつかの実施の形態においては、上記加熱がキュアまたは焼結を含む。いくつかの実施の形態においては、上記無機成分が、シリカ、アルミナ、またはチタニア、またはこれらの混合物の原料を含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、MgO,Al2O3,またはSiO2の原料を含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機を通じて押出し成形され、上記未焼成体が2トン毎平方フィート(約2.1kg/cm2)の湿潤強度を有する。上記未焼成体は加熱されてセラミックを形成するのが好ましい。いくつかの実施の形態においては、上記バインダがさらにメチルセルロースを含む。いくつかの実施の形態においては、上記バインダがグルテンおよびメチルセルロースを含む。
別の態様においては、セラミック物品の製造方法が開示されており、この方法は、少なくとも一種類の先駆体無機成分と、少なくとも一種類のバインダとを混合して可塑化された混合物を形成し、この場合、上記バインダは少なくとも一種類の蛋白質材料を含み、次いで上記可塑化された混合物から未焼成体を形成し、そしてこの未焼成体を、この未焼成体がセラミック物品に転移するのに十分な時間および温度において加熱することを含む。いくつかの実施の形態においては、このセラミック物品が、コージェライト、チタン酸アルミニウム、またはSiC、またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が、グルテン、グリアジン、グリテニン、グロブリン、およびアルブミンからなる群から選ばれる。いくつかの実施の形態においては、上記バインダがさらにメチルセルロースを含む。いくつかの実施の形態においては、上記バインダがグルテンである。いくつかの実施の形態においては、上記未焼成体の形成が、上記可塑化された混合物を押し出して、ハニカム構造を有する押出し成形品にすることを含む。
さらに別の態様において、セラミックからなる物品を形成するための未焼成体が開示されており、この未焼成体は、少なくとも一種類のセラミック先駆体(セラミック形成用)無機成分および少なくとも一種類の蛋白質材料を含む。いくつかの実施の形態においては、上記未焼成体がハニカム構造を有する。
未焼成体はセラミック材料の調製に用いるために作製されることができる。この未焼成体は、先ず少なくとも一種類のセラミック先駆体無機成分と、少なくとも一種類の蛋白質材料を含む少なくとも一種類のバインダとを含むバッチ材料を一緒に混合することによって形成される。バッチ材料は、可塑化された混合物を形成する態様で水等の溶媒と混合される。この可塑化された混合物は次に未焼成体に成形される。この未焼成体は乾かされ、次いでこの乾かされた材料は加熱されて焼結されたセラミック材料を形成する。
蛋白質材料を含むバインダを用いて可塑化された混合物を形成すると、このようなバインダは、未焼成体が形成されるときに発生する熱に対して特に耐性を有するので、可塑化された混合物を極めて速い速度で未焼成体に形成することが可能になる。例えば、押出し成形のような高速の未焼成体形成においては、形成工程中に温度が上昇するときであってもバインダは高粘性になりそうにもない。その結果、可塑化された混合物は、極度に粘り気が多くなることなく、高速で押し出されることが可能になり、これにより、高流動量において未焼成体を形成するときに必要になることが多い高い圧力を低下させることができる。
一般的に、「可塑化された混合物」とは、押出し成形等によって整形されることが可能な複数の成分の完全な混合物であり、無機成分、バインダ、および液状ビヒクルまたは溶媒を含み、さらに随意的に、一種類または複数種類の気孔形成剤および一種類または複数種類の滑剤、またはそれらの双方を含む。いくつかの実施の形態においては、上記可塑化された混合物が、無機成分、バインダ、水等の液状ビヒクル、一種類または複数種類の気孔形成剤、および一種類または複数種類の滑剤を含む。可塑化されたとは、混合物が塑性を保証すべく十分に乾いていることを意味する。すなわち、混合物は多すぎる液体、特に溶媒を含んでいてはならず、したがって、材料は適正に可塑化された状態に達することができる。可塑性は、添加される液体の量をコントロールすることによって、または混合物を溶媒過剰な状態にした後にこの混合物が乾かされて塑性が与えられることによって、可塑性が得られる。可塑化された混合物は、容易に未焼成体に形成されることができる。十分な剪断によって、未焼成体は高度の剛性を有し、しかも蛋白質材料を含まないバインダから形成された混合物に比較して、剪断されている間における粘性は低く保たれる。
一つの実施の形態において、上記無機成分は、コージェライト、ムライト、アルミナ、燐酸ジルコニウム、炭化珪素、窒化珪素、シリカ、およびチタン酸アルミニウムからなる群から選ばれる。いくつかの実施の形態においては、上記可塑化された混合物が、Al2O3,SrO2,Si,SiC,Si3N4,SiO2,ZnO,B2O3,BaO,La2O3,TiO2、B2O3およびP2O5からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物からなる原料を含む無機粉末の少なくとも一つを含む。
一つの実施の形態において、上記可塑化された混合物を形成するために用いられる無機粉末は、加熱によってチタン酸アルミニウムを形成する少なくとも一つの原料を含み、これらの実施の形態においては、上記無機粉末が、シリカ、アルミナ、およびチタニアの原料を含んでいることが好ましい。
別の実施の形態において、上記可塑化された混合物を形成するために用いられる無機粉末は、加熱によってコージェライトを形成する少なくとも一つの原料を含み、これらの実施の形態においては、上記無機粉末が、MgO,Al2O3,およびSiO2の原料を含んでいることが好ましい。
いくつかの実施の形態においては、上記無機粉末がアルミナ(Al2O3)の原料を含み、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記可塑化された混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して10重量%から55重量%までのアルミナを含んでいることが好ましく、上記混合物が15重量%から50重量%までのアルミナを含んでいることがより好ましく、上記混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して20重量%から40重量%までのアルミナを含んでいることがさらに好ましい。
いくつかの実施の形態においては、上記無機粉末がチタニアの原料を含み、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記可塑化された混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して10重量%から40重量%までのチタニアを含んでいることが好ましく、上記混合物が15重量%から35重量%までのチタニアを含んでいることがより好ましく、上記混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して20重量%から30重量%までのチタニアを含んでいることがさらに好ましい。複数の実施の形態のうちの一組においては、上記可塑化された混合物が未焼成体に形成され、次いでこの未焼成体は焼成されて、米国特許第7,001,861号明細書に記載されているように、チタン酸アルミニウムを含むセラミック物品を形成する。
いくつかの実施の形態においては、上記無機粉末がMgOの原料を含み、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記可塑化された混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して4重量%から25重量%までのMgOを含んでいることが好ましく、上記混合物が5重量%から20重量%までのMgOを含んでいることがより好ましく、上記混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して6重量%から15重量%までのMgOを含んでいることがさらに好ましい。
いくつかの実施の形態においては、上記混合物がMgOを含んでおり、これらの実施の形態のうちのいくつかは、少なくとも一部のMgOが、NiO,CoO,FeO,MnOおよびTiO2からなる群から選択された少なくとも一種類の化合物に置換される。
いくつかの実施の形態においては、上記無機粉末がシリカ(SiO2)の原料を含み、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記可塑化された混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して2重量%から15重量%までのシリカ原料を含んでおり、上記可塑化された混合物が3重量%から12重量%までのシリカ原料を含んでおり、いくつかの実施の形態においては、上記可塑化された記混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して4重量%から10重量%までのシリカ原料を含んでいる。複数の実施の形態のうちの一組においては、これらの比率のシリカ原料が、シリカ、アルミナおよびチタニアの原料を含むバッチ内に存在する。
別の実施の形態においては、上記可塑化された記混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して25重量%から55重量%までのシリカ(SiO2)を含んでおり、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記可塑化された混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して28重量%から50重量%までのシリカを含んでおり、上記可塑化された混合物が、この可塑化された混合物全体の重量に対して30重量%から45重量%までのシリカを含んでいる。複数の実施の形態のうちの一組においては、これらの比率のシリカ原料が、MgO,Al2O3およびSiO2の原料を含むバッチ内に存在する。
上記バインダは蛋白質材料を含む。この蛋白質材料は、蛋白質および蛋白質含有化合物、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施の形態においては、この蛋白質材料が一種類のみの蛋白質を含む。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が、グルテン等の一種類のみの蛋白質含有化合物を含む。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が、一種類のみの蛋白質および一種類のみの蛋白質含有化合物を含む。いくつかの実施の形態においては、上記バインダがさらに、セルロースを主成分とする化合物、例えばメチルセルロース等を含む。いくつかの実施の形態においては、2重量%から8重量%までの上記バインダが全無機バッチ成分に対して上乗せ添加され、これらの実施の形態のうちのいくつかは、全無機バッチ成分に対して3重量%から6重量%までの上記バインダが上乗せ添加され、これらの実施の形態のうちのいくつかは、全無機バッチ成分に対して3.5重量%から5重量%までの上記バインダが上乗せ添加される。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が上記バインダの25重量%を超える部分を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの40重量%を超える部分を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの50重量%を超える部分を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの75重量%を超える部分を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの90重量%を超える部分を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの95重量%を超える部分を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの100重量%を構成する。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が上記バインダの75重量%未満を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの60重量%未満を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの50重量%未満を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの40重量%未満を構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの25重量%未満を構成する。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が上記バインダの25重量から75重量%までを構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの30重量から70重量%までを構成し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が上記バインダの40重量から60重量%までを構成する。いくつかの実施の形態においては、無機バッチ材料に対する上乗せ重量%で表現すると、上記バインダが、2.25重量%のメチルセルロースおよび2.25重量%のグルテンからなる。別の実施の形態においては、無機バッチ材料に対する上乗せ重量%で表現すると、上記バインダが、1.0重量%のメチルセルロースおよび3.5重量%のグルテンからなる。
上記バインダは、上記可塑化された混合物のゲル化または、特にゲル化の発現(ゲル化発現温度TONSETで示される)を効果的に達成またはコントロールするために、蛋白質材料を十分に含んでいなければならない。いくつかの実施の形態においては、上記バインダが、このバインダの全重量に対して少なくとも10重量%の蛋白質材料を含み、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記バインダが少なくとも20重量%の蛋白質材料を含み、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記バインダが少なくとも25重量%の蛋白質材料を含む。
いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が高い分子量を有し、いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が少なくとも5kD(キロダルトン)の分子量を有し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が少なくとも10kDの分子量を有し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が少なくとも20kDの分子量を有する。
上記蛋白質材料の分子量は、前記未焼成体の形成に関して悪影響を与えるために高過ぎてはならない。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が1,000kDを超えない分子量を有し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が900kDを超えない分子量を有し、これらの実施の形態のうちのいくつかは、上記蛋白質材料が800kDを超えない分子量を有する。
蛋白質材料を含むバインダは、高温におけるゲル化に対して高い耐性を有し得る。典型的なゲル化温度は、バインダ要素が熱転移相に耐える点と定義する。この熱転移が生じると、粘性または剛性が望ましくなく増大する結果となる。上記バインダは他の材料と混合されて可塑化された混合物を形成しているために、バッチのゲル化温度を測定することはより実際的である。
バッチのゲル化温度効果は発現温度として効果的に測定することができる。ここで用いられている「バッチ」とは、一緒に混合され次いで未焼成体に整形される可塑化された混合物を形成する化合物の混合物を意味する。ここで報告されている発現温度(TONSET)を測定するために、細管温度走査を用いてバッチサンプル(すなわち、可塑化された混合物)のバッチ硬化温度が測定される。Malvern RH7 細管レオメータが用いられて、タングステン・カーバイドからなる2個のOEM細管ダイを通じてバッチ材料を押し出す。一方のダイはL/dが16(直径1mm)であるが、他方のダイはL/dが0.25のオリフィス・ダイである。可塑化された混合物からなるバッチは、1℃/分の昇温速度において12.7mm/秒の直線的押出し速度で押し出される。
上記オリフィス・ダイからのデータは、このようなダイが昇温時の平坦な基準線圧力を生成させるために、TONSETを決定に用いることができる。走査の初期温度よりも5度高い温度において開始すると、圧力は次の15度に亘って平均化される。この15℃ウインドウに亘る平均圧力はPavgと呼ばれる。基準線圧力は上記15度ウインドウから確立されることができる。一旦Pavgが得られると、この値よりも15%高い圧力が計算される。TONSETは1.15Pavgにおける温度として採用される。バインダのゲル点近傍で動作する押出し成形機においては、安定圧力よりも15%高い押出し圧力の上昇が、バインダの転移に関連しているバッチのレオロジーにおける大きな変化を示す。
複数の実施の形態において、上記可塑化された混合物が少なくとも25℃のTONSETを有し、いくつかの実施の形態においては、上記可塑化された混合物が少なくとも35℃のTONSETを有し、いくつかの実施の形態においては、TONSETが少なくとも40℃である。
いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料がグルテンである。いくつかの実施の形態においては、このグルテンが蛋白質の少なくとも50重量%を占め、いくつかの実施の形態においては、このグルテンが蛋白質の少なくとも75重量%を占め、いくつかの実施の形態においては、このグルテンが蛋白質の少なくとも85重量%を占める。他の適当な蛋白質材料の例は、グリアジン、グルテニン、グロブリン、およびアルブミンである。
グリアジンは、野菜蛋白質であるプロラミンである。一例において、小麦のグリアジンは、約52.7%の炭素、約17.7%の窒素、約21.7%の酸素、約6.9%の水素、および約1.0%の硫黄を含み、18種類のアミノ酸からなり、約40重量%はグルタミン酸である。
グルテニンは、小麦粉においてかなりのパーセンテージを占める蛋白質の一つである。グルテニンは18種類のアミノ酸からなる。
グロブリンは、50%飽和硫酸アンモニウムの添加によって沈殿せしめられる血清蛋白質の不均質基の一員の一般名称であり、したがって、正常血清中に最大濃度で存在する蛋白質であるアルブミンとは異なっている。グロブリンは、一般的に熱によって凝固し、水には不溶であり、中性の塩類溶液、強酸および強アルカリに溶ける。
アルブミンは、熱によって直ちに凝固することができる広く存在する水溶性蛋白質である。アルブミンはさらに、αアミノ酸またはその誘導体に加水分解する。
いくつかの実施の形態において、上記蛋白質材料は蛋白質の少なくとも約80重量%を占める。別の実施の形態においては、上記蛋白質材料は約5から約15重量%までの脂質を含んでいる。さらに別の実施の形態においては、上記蛋白質材料は約0.5から約10重量%までの炭化水和物を含んでいる。
いくつかの実施の形態において、上記蛋白質材料は、乾燥状態(約0.1重量%よりも少ない水分しか含まない)において測定された場合に、蛋白質材料粒子のほぼ全て(好ましくは粒子の少なくとも99%)が約250μmよりも小さい粒子サイズ分布を有する。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料が150μm以内の平均粒子サイズを有する。いくつかの実施の形態においては、上記蛋白質材料粒子の殆ど全て(好ましくは粒子の少なくとも99%)が約250μmよりも小さく、かつ上記蛋白質材料が150μm以内の平均粒子サイズを有する。
上記蛋白質材料は、蛋白質または蛋白質含有化合物の外に他の要素を含むことができる。これらの要素は、単純な混合物としての結合を含む化学的または機械的結合の何れかを通じて蛋白質部分と結合することができる。
いくつかの実施の形態において、上記バインダは、さらに少なくとも一種類のセルロースを主成分とする化合物を含む。この少なくとも一種類のセルロースを主成分とする化合物は、メチルセルロース、エチルヒドロキシ・エチルセルロース、ヒドロキシブチル・メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、ヒドロキシエチル・メチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびナトリウム・カルボキシメチルセルロース、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるのが好ましい。
いくつかの実施の形態において、上記バインダは、このバインダの全重量を基準として90重量%未満の何れかのセルロースを主成分とする化合物を含み、これらの実施の形態のいくつかは80重量%未満の何れかのセルロースを主成分とする化合物を含み、これらの実施の形態のいくつかは、もし存在すれば、このバインダの全重量を基準として75重量%未満の何れかのセルロースを主成分とする化合物を含む。いくつかの実施の形態において、上記バインダ内におけるセルロースを主成分とする化合物の全含有量は、もし存在すれば、このバインダの全重量を基準として90重量%未満であり、これらの実施の形態のいくつかは、上記バインダ内におけるセルロースを主成分とする化合物の全含有量は、もし存在すれば、80重量%未満であり、これらの実施の形態のいくつかは、上記バインダ内におけるセルロースを主成分とする化合物の全含有量は、もし存在すれば、このバインダの全重量を基準として75重量%未満である。
この混合物は、滑剤、可塑剤、気孔形成剤、および溶媒からなる群から選ばれた少なくとも一種類の処理助剤をさらに含む。この混合物は、溶媒として水を含むことが好ましい。この混合物は、未焼成体の形成に先立って、適正に可塑化された状態になることができるように、過剰の溶媒(例えば水)を含んでいてはならない。いくつかの実施の形態においては、可塑化された混合物は、この混合物の全重量に対して25重量%未満の溶媒を含み、これらの実施の形態のいくつかは、この混合物が20重量%未満の溶媒を含み、これらの実施の形態のいくつかは、この混合物がこの混合物の全重量に対して15重量%未満の溶媒を含む。いくつかの実施の形態においては、この混合物がこの混合物の全重量に対して25重量%未満の水を含み、これらの実施の形態のいくつかは、この混合物が20重量%未満の水を含み、これらの実施の形態のいくつかは、この混合物がこの混合物の全重量に対して15重量%未満の水を含む。
上記可塑化された混合物から形成された未焼成体は、この混合物が、一軸スクリューまたは二軸スクリュウ押出し機等のスクリュウ押出し機を通過すること等によって、上記可塑化された混合物に対して剪断等による応力が印加されることによって形成されることが好ましい。形成された上記未焼成体は、自立性を有し、かつ高い剛性を示すことができる。
ここで用いられているように、湿潤強度は、ELE国際硬度計29−3729によって測定される。上記可塑化された混合物は、少なくとも1.5トン/平方フィート(約13.9kg/cm2)の湿潤強度を有することが好ましく、2.0トン/平方フィート(約21.5kg/cm2)の湿潤強度を有することがより好ましく、2.5トン/平方フィート(約26.9kg/cm2)の湿潤強度を有することがさらに好ましい。
くつかの実施の形態において、上記可塑化された混合物は、先ず溶媒内における最初の混合によって調製されて、溶媒は、例えば炉内乾燥または吹付け乾燥によって混合物から除去される。
くつかの実施の形態において、上記無機粉末は上記バインダと混合され、次いで溶媒が加えられて上記可塑化された混合物を形成する。この可塑化された混合物は、次いで未焼成体に形成される。上記バインダ系の各要素は、上記セラミック材料と上記バインダ系とが良く混じっていることが好ましい混合物を調製するために、上記無機粉末とともに混合される。例えば、上記バインダ系の全ての要素が先に互いに混合され、次いでこのバインダ混合物が上記無機粉末と混合されてもよい。これに代えて、上記バインダ系の複数の要素が上記無機粉末に逐次加えられても、あるいは、上記バインダ系の2種類またはそれ以上の要素が先に混合された混合物が加えられてもよい。上記無機粉末と上記バインダ要素とは、例えば混練によって均質に混合される。
得られた可塑化された混合物は、次いで例えば特に押出しダイを通した押出し成形、射出成形、鋳込み成形、遠心鋳造、圧力鋳造、または乾式プレスによって未焼成体に整形されることができる。くつかの実施の形態において、成形工程は、得られる未焼成体に対して高度の剪断を与える。
上記調製された未焼成体は、次いで熱風乾燥、マイクロウェーブ乾燥、または誘電乾燥によって乾かされる。
焼成条件は、具体的な組成、未焼成体のサイズ、および機器の性質に応じて異なる。いくつかの実施の形態において、上記焼成条件は、上記未焼成体を約1350℃から約1450℃までの温度に加熱し、かつこの範囲内の温度を約6時間から約16時間保ち、次いで、形成されたセラミック物品を室温まで冷却することを含む。いくつかの実施の形態において、上記未焼成体は、米国特許第7,001,861号明細書に記載されているように焼成されて、チタン酸アルミニウムを含むセラミック物品を形成する。
上記未焼成体から生成されたセラミック物品は、触媒支持体または流通基体、あるいは微粒子フィルタ(例えばディーゼル微粒子フィルタ)等の排気流の処理に用いられることができる。このセラミックは、多孔質であることが好ましい。
いくつかの実施の形態において、上記セラミック物品は、ハニカム構造体等の多セル構造体である。ハニカムは、入口端(面)または出口端(面)、ならびにセルすなわちセルチャンネルを画成する多数の壁を有する。壁流通式フィルタにおいては上記壁が多孔質である。ハニカムのセル密度は、例えば約10セル/平方インチ(1.5セル/cm2)から約600セル/平方インチ(93セル/cm2)の範囲とすることができる。
上記多セル構造体は、この構造体内へ延びる多数の気孔を備えた両面を有していることが好ましい。一つの実施の形態において、上記セルの少なくとも一部には栓が施されている。いくつかの実施の形態において、上記施栓はセルの一端で行なわれている。いくつかの実施の形態において、入口端では施栓されていないセルの出口端が施栓される。
施栓形式ハニカム・フィルタにおいて、排気流は、入口端が開放されているセルを通じて構造体内へ流入し、次いで多孔質の壁を通り抜け、そして出口端が開放されているセルを通じて構造体外へ流出する。チャンネルの施栓(例えば交互チャンネル施栓)によって形成される排気流通路は、排気流が、このフィルタを出る以前に多孔質の壁を通り抜けるように処理されることを必要とするために、一般に「ウォールフロー・フィルタ」と呼ばれている。クロスフロー構造を用いることもできる。
本発明は下記の実施例によってさらに明瞭になるであろう。
原料としての無機粉末が一緒に混合されることによって、乾燥した粉末からなるバッチが形成された。次に上記原料は、気孔形成剤およびバインダを含む添加物とともにリトルフォード・ミキサ内で混合されて等質の乾燥した混合物を得た。上記に替えて他の適当なミキサを用いてもよい。次に上記バッチは、可塑化ミキサ(または粉砕機)内に移され、可塑化されたバッチを形成するのに十分な量の水が加えられた。随意的に、上記リトルフォード・ミキサまたはその他の適当なミキサ内で上記無機粉末、気孔形成剤、およびバインダが乾燥状態で混合された後にこの乾燥した混合物に水が加えられてもよい。得られた混合物は約10〜15分間ブレンドされて可塑化された混合物になる。この可塑化された混合物は、次に押出し成形された未焼成体を形成する。この未焼成体に関する湿潤強度およびT
ONSETが測定された。一方の組の結果が表1に示され、かつ他方の組の結果が表2に示されている。
表1および表2は、バインダの全量(例えばメチルセルロース+グルテン)における蛋白質材料(例えばグルテン)の量が増大する程、湿潤強度が増大することを示している。同様に、バインダの全量における蛋白質材料の量が増大する程、TONSETが上昇している。蛋白質材料を含むバッチに関しては、メチルセルロースを主成分とするバインダ(蛋白質材料を含まない)のみを含むバッチに比較してTONSETが上昇する。これに加えて、可塑化された材料が押し出されているとき、および湿潤強度が増大されているときの時間全体に亘って、圧力の実質的な増大は観察されなかった。
以上、種々の代表的かつ好ましい実施の形態に関して本発明の原理および動作モードが説明された。当業者が理解しているように、請求項により定義された本発明全体は、ここには具体的に含まれていない他の好ましい実施の形態をも包含するものである。