JP2011506706A - 防炎性耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物 - Google Patents

防炎性耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、(A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、38〜99.3重量部、(B)ゴム変性グラフトポリマー、0.5〜12重量部、(C)ホスフィン酸の塩、0.1〜25重量部、および(D)タルク0.1〜25重量部(それぞれの成分A、B、CおよびDの重量部は、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)を含有するポリカーボネート組成物に関する。このポリカーボネート組成物は、高い加熱撓み温度と、良好な防炎性と、優れた機械的性質と、良好な耐薬品性と、良好な加水分解抵抗と、の最適な組み合わせを特徴とする。本発明は、更に、上記ポリカーボネート組成物の成形物品の製造への使用並びに前記成形物品にも関する。

Description

本発明は、ホスフィン酸の塩およびタルクを含有する耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物、このポリカーボネート組成物の成形物品の製造への使用、並びに成形物品そのものに関する。
WO−A 2005/044906は、次リン酸の金属塩少なくとも1種類並びに芳香族ポリカーボネート樹脂および芳香族ポリカーボネート樹脂とゴム含量5〜15%のスチレン含有グラフトコポリマー樹脂との混合物の少なくとも1種類を含有する熱可塑性成形組成物を開示している。スチレン含有グラフトコポリマーの含量は10〜40wt.%である。得られる成形組成物は、良好な耐燃性、加工条件のもとでの高い熱安定性および良好な耐候性が認められている。低いゴム含量のために、他の特性、特に機械特性はレベルが低い。
WO−A 1999/57192は、ポリエステルまたはポリカーボネート5〜96wt.%、ホスフィン酸塩および/またはジホスフィン酸塩および/またはそのポリマー1〜30wt.%、少なくとも1種類のリン含有有機防炎加工剤1〜30wt.%、並びに可能な別の添加剤を含有する熱可塑性成形組成物を開示している。
DE−A 102004049342は、熱可塑性ポリマー10〜98wt.%、高度分枝ポリカーボネートまたは高度分枝ポリエステルまたはそれらの混合物0.01〜50wt.%、P含有化合物またはN含有化合物またはP−N縮合体またはそれらの混合物の群から選択されるハロゲンを含まない防炎加工剤1〜40wt.%、および可能な別の添加剤を含有する熱可塑性成形組成物を開示している。
特開2001−335699は、スチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリフェニレンエーテル樹脂から選択される2種類以上の熱可塑性樹脂並びに1種類以上の無機ホスフィン酸塩または有機ホスフィン酸塩、並びに可能な別の添加剤を含有する防炎加工樹脂組成物を記載している。
特開2001−261973(ダイセル化学工業株式会社)は、熱可塑性樹脂と無機または有機ホスフィン酸塩との組成物を開示している。PBTとホスフィン酸カルシウムとPTFEとの組み合わせが実施例として挙げられている。
特開2002−161211は、熱可塑性樹脂と防炎加工剤(例えばホスフィン酸塩、リン酸塩およびそれらの誘導体)との組成物を開示している。PBTとABSとポリオキシフェニレンとホスフィン酸カルシウムとオルガノホスフェートとグラスファイバーとの組み合わせが実施例として挙げられている。
ポリカーボネート/ABSブレンドの先行技術で常套の防炎加工剤は、有機芳香族リン酸エステルである。有機芳香族リン酸エステルは低分子量の形態であっても、様々なオリゴマーの混合物の形態であってもオリゴマーと低分子量化合物との混合物の形態であってもよい(例えばWO−A 99/16828およびWO−A 00/31173)。防炎加工剤としての良好な活性は、不都合なことに上記化合物のポリマー成分に対する高い可塑化作用によって打ち消されるので、これらの成形組成物の加熱撓み温度は多くの用途に十分でない。
本発明の目的は、高い加熱撓み温度と、良好な防炎性と、優れた機械的性質と、良好な耐薬品性および加水分解抵抗と、の最適な組み合わせを有する耐衝撃性改良ポリカーボネート成形組成物を提供することである。
意外なことに、(A)ポリカーボネート、(B)ゴム変性グラフトポリマー、(C)ホスフィン酸の塩および(D)タルクを含有する成形組成物または組成物が所望の特性プロファイルを有することがわかった。
従って、意外なことに、
(A) 芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、38〜99.3重量部、好ましくは61〜97重量部、特に好ましくは71〜84重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)、
(B) ゴム変性グラフトポリマー、0.5〜12重量部、好ましくは1〜9重量部、特に好ましくは2〜5重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)、
(C) ホスフィン酸の塩、0.1〜25重量部、好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは7〜12重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)、
(D) タルク、0.1〜25重量部、好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは7〜12重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)、
(E) ゴムを含まないビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート、0〜20重量部(成分A+B+C+Dの重量部の合計100に対する。)を含有し、好ましくは本発明の組成物はゴムを含まないビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレートを含まず、
(F) 添加剤、0〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計100に対する。)
(本明細書中の重量部は全て、組成物中の成分A+B+C+Dの重量部の合計が100になるように標準化されている。)
を含有する組成物が、上記技術的目標を達成することがわかった。
高すぎる成分B含量は、燃焼特性および加熱撓み温度(ビカーB)が減損されるという欠点を有する。
成分A
本発明に好適な成分Aの芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって製造できる(芳香族ポリカーボネートの製造に関しては、例えば、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964年およびDE−AS 1 495 626、DE−A 2 232 877、DE−A 2 703 376、DE−A 2 714 544、DE−A 3 000 610およびDE−A 3 832 396参照。芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えばDE−A 3 077 934参照。)。
芳香族ポリカーボネートは、例えばジフェノールと、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物との、要すれば連鎖停止剤、例えばモノフェノールを使用し、要すれば三官能価以上の分枝剤、例えばトリフェノールもしくはテトラフェノールを使用する界面法による反応によって製造される。ジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートとの反応による溶融重合法による製造も同様に可能である。
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造に好適なジフェノールは、式(I)
Figure 2011506706
〔式中、
A は、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい別の芳香環が縮合していてもよいC〜C12−アリーレン、または式(II)もしくは(III)
Figure 2011506706
の基であり、
B は、それぞれC〜C12−アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素および/もしくは臭素であり、
x は、それぞれ互いに独立して0、1または2であり、
p は、1または0であり、
およびR は、それぞれのXに対して個々に選択され、互いに独立して、水素またはC〜C−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
は、炭素であり、
m は、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、但し少なくとも1つの原子Xにおいて、RおよびRは同時にアルキルである。〕
のジフェノールである。
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシルフェニル)スルホンおよびα,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピル−ベンゼンおよびそれらの核臭素化および/または核塩素化誘導体である。
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびそれらの二−および四臭素化または塩素化誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
ジフェノールは、単独で使用されても所望の混合物として使用されてもよい。ジフェノールは文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって得られる。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、更に長鎖アルキルフェノール、例えば4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]−フェノール、DE−A 2 842 005に記載の4−(1,3−テトラメチルブチル)−フェノールまたはアルキル置換基中に全部で8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソ−オクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、一般的に、使用される特定のジフェノールのモルの合計に対して0.5mol%〜10mol%である。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの平均重量平均分子量(M、例えばGPC、超遠心法または散乱光測定によって測定される。)は、10,000〜200,000g/mol、好ましくは15,000〜80,000g/mol、特に好ましくは24,000〜32,000g/molである。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは既知の方法で、特に好ましくは、用いられるジフェノールの合計に対して0.05〜2.0mol%の3官能価以上の化合物、例えば3以上のフェノール性基を有する化合物、の混和によって分枝されていてもよい。
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートの両方が好適である。ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサン、用いられるジフェノールの総量に対して1〜25wt.%、好ましくは2.5〜25wt.%、を本発明の成分Aのコポリカーボネートの製造に用いてもよい。これらは既知であり(US 3 419 634)、文献で知られている方法によって製造されうる。ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートの製造は、DE−A 3 334 782に記載されている。
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、ビスフェノールAと、ジフェノールのモルの合計に対して15mol%以下の好ましいか特に好ましいと言及されている別のジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、とのコポリカーボネートである。
芳香族ポリエステルカーボネートの製造用の芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
イソフタル酸の二酸二塩化物とテレフタル酸の二酸二塩化物との、1:20〜20:1の比の混合物が特に好ましい。
炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンを更にポリエステルカーボネートの製造における二官能性酸誘導体として併用する。
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する可能な連鎖停止剤は、既に言及したモノフェノールに加えて、更にそれらのクロロ炭酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物であって、任意にC〜C22−アルキル基またはハロゲン原子によって置換されていてもよいもの、および脂肪族C〜C22−モノカルボン酸塩化物である。
連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合はジフェノールのモルに対して、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合はジカルボン酸二塩化物のモルに対して、それぞれ、0.1〜10mol%である。
芳香族ポリエステルカーボネートは、更に、混入芳香族ヒドロキシカルボン酸を含んでいてもよい。
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖であっても既知の方法で分枝されていてもよい(この関連で、DE−A 2 940 024およびDE−A 3 007 934参照。)。
使用されうる分枝剤は、例えば、三官能価以上のカルボン酸塩化物、例えば、トリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物もしくはピロメリット酸四塩化物、0.01〜1.0mol%(用いられるジカルボン酸二塩化物に対する。)、または三官能価以上のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル]−フェノキシ)−メタンまたは1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]−ベンゼン、用いられるジフェノールに対して0.01〜1.0mol%である。フェノール系分枝剤は、最初に、ジフェノールと共に導入され、酸塩化物分枝剤は、酸二塩化物と共に導入される。
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の含量は、所望の通り変更されうる。好ましくは、カーボネート基の含量は、エステル基とカーボネート基との合計に対して、100mol%以下、特に80mol%以下、特に好ましくは50mol%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル分とカーボネート分の両方が重縮合物中にブロックの形態で存在してもランダムに分散されていてもよい。
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32である(塩化メチレン溶液100mL中のポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート0.5gの溶液において25℃において測定される。)。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは単独で使用されても所望の混合物で使用されてもよい。
成分B
成分Bは、
B.1 B.2上の少なくとも1種類のビニルモノマー、5〜95wt.%、好ましくは30〜90wt.%、
B.2 ジエンゴム、EP(D)Mゴム(すなわち、エチレン/プロピレンおよび任意にジエンベースのゴム)およびアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、シリコーン/アクリレート、クロロプレンおよびエチレン/酢酸ビニルゴムからなる群から選択される少なくとも1種類のグラフトベース、95〜5wt.%、好ましくは70〜10wt.%
の1種類以上のグラフトポリマーを含む。
グラフトベースB.2の平均粒度(d50値)は、概して0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜1μmである。
モノマーB.1は、好ましくは、
B.1.1 ビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびp−クロロスチレン)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル(例えばメチルメタクリレートおよびエチルメタクリレート)、50〜99重量部と、
B.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸C〜C−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸およびN−フェニル−マレイミド、1〜50重量部と
の混合物である。
好ましいモノマーB.1.1は、スチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも1種類のモノマーから選択され、好ましいモノマーB.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートの少なくとも1種類のモノマーから選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1スチレンおよびB.1.2アクリロニトリルである。
好ましいグラフトベースB.2は、シリコーン/アクリレートゴム、ジエンゴム(例えばブタジエンおよびイソプレンベースのジエンゴム)またはジエンゴムの混合物である。本発明との関連でジエンゴムは、ジエンゴム同士またはジエンゴムと別の共重合性モノマー(例えばB.1.1およびB.1.2のモノマー。)との混合物のコポリマーを意味するとも理解される。グラフトベースB.2のガラス転移温度は、概して10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−10℃未満である。
特に好ましいポリマーBは、例えばDE−OS 2 035 390(=US 3 644 574)またはDE−OS 2 248 242(=GB 1 409 275)およびUllmanns,Enzyklopaedie der Technischen Chemie,第19巻(1980年),280頁以降に記載されているように、例えば、ABSポリマー(エマルジョン、バルクおよびサスペンションABS)である。グラフトベースB.2のゲル含量は、エマルジョン重合で製造されるグラフトベースB.2の場合、少なくとも20wt.%、好ましくは少なくとも40wt.%である(トルエン中で測定。)。
好ましくは、成分B.1とB.2とのグラフトポリマーは、コア−シェル構造を有し、成分B.1がシェル(更にケーシングとも云う。)を形成し、成分B.2がコアを形成する(例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH−Verlag,第A21巻,1992年,635頁および656頁参照。)。
グラフトポリマーBは、フリーラジカル重合によって、例えばエマルジョン、サスペンション、溶液またはバルク重合によって、好ましくはエマルジョンまたはバルク重合によって製造される。
特に好適なグラフトゴムは、US 4 937 285に記載の有機ヒドロペルオキシドとアスコルビン酸との開始剤システムを用いるレドックス開始によるエマルジョン重合法で製造されるABSポリマーである。
知られているように、グラフトモノマーはグラフト反応中にグラフトベース上に必ずしも完全にグラフトする必要がないので、本発明によると、グラフトポリマーBは、グラフトベースの存在下におけるグラフトモノマーの(共)重合によって製造される生成物および更にワークアップ中に得られる生成物を意味するとも理解される。
ポリマーBのB.2の好適なアクリレートゴムは、好ましくは、アクリル酸アルキルエステルと、要すれば別の重合性エチレン性不飽和モノマー、B.2に対して40wt.%以下、とのポリマーである。好ましい重合性アクリル酸エステルとしては、C〜C−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル、ハロアルキルエステル、好ましくはハロ−C〜C−アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、およびこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
架橋のために、1よりも多くの重合性二重結合を有するモノマーを共重合させてもよい。架橋モノマーの好ましい例は、C原子を3〜8個有する不飽和モノカルボン酸とC原子を3〜12個有する不飽和一価アルコールまたはOH基2〜4個およびC原子2〜20個を有する飽和ポリオールとのエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレートおよびアリルメタクリレート;多価不飽和複素環化合物、例えばトリビニルおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えばジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン;更にトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3つのエチレン性不飽和基を含む複素環化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマー、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンおよびトリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、グラフトベースB.2に対して好ましくは0.02〜5wt.%、特に0.05〜2wt.%である。少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、量をグラフトベースB.2の1wt.%未満に制限することが有利である。
アクリル酸エステルに加えて任意にグラフトベースB.2の製造に役立ちうる好ましい「別の」重合性エチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンである。グラフトベースB.2として好ましいアクリレートゴムは、ゲル含量少なくとも60wt.%のエマルジョンポリマーである。
B.2の好適なシリコーンゴムは、例えばUS 2891920およびUS 3294725に記載されているように、エマルジョン重合によって製造することができる。B.2の別の好適なグラフトベースは、例えばDE−OS 3 704 657、DE−OS 3 704 655、DE−OS 3 631 540およびDE−OS 3 631 539に記載されているように、グラフト活性部位を有するシリコーンゴムである。
本発明によると、シリコーン/アクリレートゴムもまたグラフトベースB.2として好適である。上記シリコーン/アクリレートゴムは、シリコーンゴム分10〜90wt.%およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム分90〜10wt.%を含むグラフト活性部位を有するコンポジットゴムであり、上記2種類のゴム成分はコンポジットゴム中で互いに浸透して実質的に互いに分離できない。コンポジットゴム中のシリコーンゴム成分の含量が高すぎると、完成樹脂組成物は表面特性が不利であり、あまり容易に着色できない。一方、コンポジットゴム中のポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分の含量が高すぎると、完成樹脂組成物の衝撃強さが悪影響を受ける。シリコーン/アクリレートゴムは既知であり、例えばUS 5,807,914、EP 430134およびUS 4888388に記載されている。B.1メチルメタクリレートとB.2シリコーン/アクリレートコンポジットゴムとのエマルジョン重合において製造されるグラフトポリマーが好ましく使用される。
好ましい態様では、成分(B)のグラフトポリマーは、バルク、溶液またはバルク−サスペンション重合法で製造され、ゴム含量(このグラフトポリマー中の成分B.2の含量に相当する。)16〜25wt.%、好ましくは17〜19wt.%およびそれぞれグラフトシェルのモノマーに対して22〜27wt.%の少なくとも1種類のB.1.2モノマーと73〜78wt.%の少なくとも一種類の成分B.1.1のモノマーを含むグラフトシェルを有するグラフトポリマーである。グラフトポリマーは、非常に好ましくは、グラフトベースB.2(コア)としてのブタジエン/スチレンブロックコポリマーゴムおよびスチレン(B.1.1)とアクリロニトリル(B.1.2)とのシェルを含む。このグラフトポリマーのゲル含量(アセトン中で測定。)は20〜30wt.%、好ましくは22〜26wt.%である。本発明によるグラフトポリマーのゴム含量が16wt.%よりも低いと、機械的特性、特にノッチ付衝撃強さ、および耐薬品性が多くの用途に不十分なレベルであるという欠点がある。
グラフトベースB.2のゲル含量は、好適な溶媒中で25℃において決定される(M.Hoffmann,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I und II,Georg Thieme−Verlag,シュトゥットガルト1977年)。
平均粒度d50はその上下にそれぞれ50wt.%の粒子が存在する直径である。これは、超遠心測定によって決定されうる(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid,Z.und Z.Polymere 250(1972年),782〜1796)。
成分C
本発明との関連で、ホスフィン酸の塩(成分C)は、ホスフィン酸と所望の金属カチオンとの塩を意味すると理解されるべきである。金属カチオンが異なる塩の混合物を使用してもよい。金属カチオンは、周期表の第1主族の金属のカチオン(アルカリ金属、好ましくはLi、Na、K)、第2主族の金属のカチオン(アルカリ土類金属;好ましくはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、特に好ましくはCa2+)または第3主族の金属のカチオン(ホウ素族の元素;好ましくはAl3+)および/または第2、7もしくは8亜族の金属のカチオン(好ましくはZn2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+)である。
好ましくは、式(IV)
Figure 2011506706
〔式中、
m+ は、周期表の第1主族の金属カチオン(アルカリ金属;m=1)、第2主族の金属カチオン(アルカリ土類金属;m=2)または第3主族の金属カチオン(m=3)または第2、7もしくは8亜族の金属カチオン(mは1〜6の整数、好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは2または3である。)である。〕
のホスフィン酸の塩またはその混合物を使用する。
特に好ましくは、式(IV)において、
m=1の場合、金属カチオンMは、Li、Na、Kであり、
m=2の場合、金属カチオンM2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+であり、
m=3の場合、金属カチオンM3+は、Al3+であり、
Ca2+(m=2)およびAl3+(m=3)が非常に好ましい。
好ましい態様では、ホスフィン酸塩(成分C)の平均粒度d50は80μm未満、好ましくは60μm未満であり、d50は特に好ましくは10μm〜55μmである。平均粒度d50は、その上下にそれぞれ50wt.%の粒子が存在する直径である。平均粒度d50が異なる塩の混合物を使用してもよい。
ホスフィン酸塩の粒度d50へのこれらの要求は、それぞれ、ホスフィン酸塩の防炎性を増加させる技術的効果に関連する。
ホスフィン酸塩は、単独で使用しても別のリン含有防炎加工剤との組み合わせで使用してもよい。本発明による組成物は、好ましくは、モノマーおよびオリゴマーリン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンの群から選択されるリン含有防炎加工剤を含まない。これらの別のリン含有防炎加工剤、例えばモノマーおよびオリゴマーリン酸エステルおよびホスホン酸エステル、はホスフィン酸塩と比較して、成形組成物の加熱撓み温度を低下させるという欠点を有する。
成分D
タルクは、天然由来または合成によって作られたタルクを意味すると理解される。
純粋なタルクの化学組成は3MgO・4SiO・HOであり、従って、MgO含量が31.9wt.%であり、SiO含量が63.4wt.%であり、化学結合水の含量は4.8wt.%である。これは層構造を有するシリケートである。
天然由来のタルク材料は、概して、上記純粋なタルクの組成を有さない。なぜなら、天然由来のタルク材料は、一部のマグネシウムの別の元素による置換によって、一部のケイ素の例えばアルミニウムによる置換によって、および/または他の鉱物、例えばドロマイト、マグネサイトおよびクロライトと互いに交わって成長することによって汚染されるからである。
特定の種類のタルクが好ましく用いられる。本発明の好ましい態様の特定の種類のタルクは、MgO含量28〜35wt.%、好ましくは30〜33wt.%、特に好ましくは30.5〜32wt.%およびSiO含量55〜65wt.%、好ましくは58〜64wt.%、特に好ましくは60〜62.5wt.%を特徴とする特に高い純度によって区別される。好ましいタイプのタルクは、更に、Al含量5wt.%未満、特に好ましくは1wt.%未満、特に0.7wt.%未満によっても区別される。この定義に相当する市販のタイプのタルクは、例えばLuzenac Naintsch Mineralwerke GmbH(オーストリアのグラーツ)製のLuzenacTMA3である。本発明の好ましい態様のこの純度要求に合わないタイプのタルクは、例えばLuzenac Naintsch Mineralwerke GmbHによって市販されているLuzenac SE−Standard、Luzenac SE−Super、Luzenac SE−Micro並びにLuzenac ST 10、15、20、30および60である。
平均粒度d50が0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μm、特に好ましくは1.1〜5μm、とりわけ1.15〜2.5μmの微粉砕タイプの形態の本発明によるタルクの使用が特に有利である。平均粒度d50は、その上下にそれぞれ50wt.%の粒子が存在する直径である。平均粒度d50が異なるタイプのタルクの混合物もまた用いられうる。これらのタルクの平均粒度d50の要求は、それぞれ生じる成形組成物の機械的性質を改良する技術的効果と関連する。
タルクは、表面が処理されていてもよく、例えばポリマーとの良好な相溶性を確実にするためにシラン化されていてもよい。成形組成物の加工および製造を考慮すると、圧縮(compacted)タルクの使用もまた有利である。
成分E
成分Eは、1種類以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーE.1および/またはポリアルキレンテレフタレートE.2を含む。
好適なビニル(コ)ポリマーE.1は、ビニル芳香族化合物、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)の群からの少なくとも1種類のモノマーのポリマーである。特に好適な(コ)ポリマーは、
E.1.1 ビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびp−クロロスチレン、および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレートおよびエチルメタクリレート、50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部と、
E.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)(例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)、1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部と
の(コ)ポリマーである。
ビニル(コ)ポリマーE.1は、樹脂状であり、熱可塑性であり、ゴムを含まない。E.1.1スチレンとE.1.2アクリロニトリルとのコポリマーが特に好ましい。
E.1の(コ)ポリマーは、既知であり、フリーラジカル重合によって、特にエマルジョン、サスペンション、溶液またはバルク重合によって製造されうる。上記(コ)ポリマーは、好ましくは平均分子量M(重量平均、光散乱または沈殿法によって測定される。)が15,000〜200,000である。
成分E.2のポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体、例えばジメチルエステルまたは無水物、と、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールとの反応生成物および反応生成物の混合物である。
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に対して少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%のテレフタル酸基と、ジオール成分に対して少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%のエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールの基と、を含む。
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、C原子を8〜14個有する別の芳香族もしくは脂環式ジカルボン酸、またはC原子を4〜12個有する脂肪族ジカルボン酸の基、例えばフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸およびシクロヘキサン二酢酸の基を、20mol%以下、好ましくは10mol%以下含んでいてもよい。
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコールもしくはブタン−1,4−ジオールの基に加えて、C原子を3〜12個有する別の脂肪族ジオールまたはC原子を6〜21個有する脂環式ジオールの基、例えばプロパン−1,3−ジオール、2−エチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−エチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパン(DE−A 2 407 674、2 407 776および2 715 932)の基を20mol%以下、好ましくは10mol%以下含んでいてもよい。
ポリアルキレンテレフタレートを、例えばDE−A 1 900 270およびUS 3 692 744による比較的少量の3−もしくは4−価アルコールまたは3−もしくは4−塩基カルボン酸、の混和によって分枝してもよい。好ましい分枝剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールである。
テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えばジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールとのみから製造されたポリアルキレンテレフタレートおよびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、ポリエチレンテレフタレート1〜50wt.%、好ましくは1〜30wt.%およびポリブチレンテレフタレート50〜99wt.%、好ましくは70〜99wt.%を含む。
一般的に好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートの極限粘度は0.4〜1.5dL/g、好ましくは0.5〜1.2dL/gである(フェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で25℃においてUbbelohde粘度計において測定。)。
ポリアルキレンテレフタレートは既知の方法によって製造されうる(例えば、Kunststoff−Handbuch,第VIII巻,695頁以降,Carl−Hanser−Verlag,ミュンヘン1973年参照。)。
成分F
本発明の組成物は、更に、成分(F)の市販の添加剤、例えば防炎性相乗剤、アンチドリップ剤(例えばフッ素化ポリオレフィン、シリコーンおよびアラミド繊維の物質クラスの化合物)、滑剤および離型剤(例えばペンタエリトリトールテトラステアレート)、成核剤、安定剤、帯電防止剤(例えば導電性カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブおよび有機帯電防止剤、例えばポリアルキレンエーテル、アルキルスルホネートまたはポリアミド含有ポリマー)、酸、充填剤および強化物質(例えばグラスファイバーまたはカーボンファイバー、マイカ、カオリン、タルク、CaCOおよびガラスフレーク)および染料および顔料を含有していてもよい。
成形組成物および成形物品の製造
本発明による熱可塑性成形組成物は、特定の成分を既知の方法で混合し、この混合物を260℃〜300℃の温度で常套のユニット、例えば内部ニーダー、押出機および二軸押出機、において溶融配合し、溶融押出することによって製造される。
個々の成分の混合は、既知の方法で連続的にまたは同時に、特に約20℃(室温)においてまたは高温において行われうる。
同様に、本発明は、成形組成物の製造方法およびこの成形組成物の成形物品の製造への使用および成形品そのものも提供する。
本発明による成形組成物はあらゆるタイプの成形物品の製造に使用されうる。上記成形物品は、射出成形法、押出成形法およびブロー成形法によって製造されうる。別の加工形態は、予め製造されたシートまたはフィルムからの熱成形による成形物品の製造である。
そのような成形物品の例は、フィルム、プロファイル、あらゆるタイプのハウジング部品、例えば屋内電気器具、例えばテレビ、果汁圧搾機、コーヒーマシーンおよびミキサー用のハウジング部品;オフィス機器、例えばモニタ、フラットスクリーン、ノートパソコン、プリンタおよびコピー機用のハウジング部品;シート、チューブ、電気設備コンジット、ウィンドウ、ドアおよび建築部門用の別のプロファイル(屋内仕上げ材および屋外用途)および電気部品および電子部品(例えばスイッチ、プラグおよびソケット)、および実用車用の、特に自動車分野用の、車体または屋内部品である。
本発明による成形組成物は、更に、特に、例えば下記成形物品または成形品の製造にも使用できる:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび別の自動車用の屋内仕上げ部品、小型変圧器を含む電気設備のハウジング、情報の処理および伝達用の装置のハウジング、医療機器のハウジングおよびライニング、マッサージ器具およびそのハウジング、子供用乗物玩具、平壁要素(planar wall elements)、安全装置およびテレビ用のハウジング、断熱輸送容器、衛生設備および浴室用の成形品、通気口用のカバー格子および園芸用品用ハウジング。
下記実施例は、本発明を更に説明するのに役立つ。
成分A−1
重量平均分子量M27,500g/mol(GPCによって測定。)のビスフェノールAベースの直鎖ポリカーボネート。
成分A−2
重量平均分子量M約17,000〜19,000g/mol(GPCによって測定。)のビスフェノールAベースの直鎖ポリカーボネート。
成分A−3
相対溶液粘度ηrel=1.34(溶媒としてのCHCl中で25℃において濃度0.5g/100mLで測定。)の、イサチンビスクレゾールをビスフェノールAとイサチンビスクレゾールとのmol%の合計に対して0.3mol%用いることによって分枝されたビスフェノールAベースの分枝ポリカーボネート。
成分B−1
アクリロニトリル24wt.%とスチレン76wt.%との混合物、ABSポリマーに対して82wt.%の、スチレン含量26wt.%のポリブタジエン/スチレンブロックコポリマーゴム、ABSポリマーに対して18wt.%の存在下におけるバルク重合によって製造されるコア−シェル構造を有するABSポリマー。このABSポリマーのゲル含量は24wt.%である(アセトン中で測定。)。
成分B−2
耐衝撃性改良剤、メチルメタクリレート変性シリコーン/アクリレートゴム、三菱レイヨン株式会社製のMetablenTMSX 005、CAS 143106−82−5。
成分C
成分C−1(比較)
ビスフェノールAベースのオリゴホスフェート
Figure 2011506706
成分C−2
平均粒度d50=50μmのホスフィン酸カルシウム
成分D−1
タルク、Imi Fabi製のMgO含量31.0wt.%、SiO含量61.5wt.%およびAl含量0.4wt.%の、平均粒度d50=0.5μmのHTP UltraTM
成分D−2
タルク、Luzenac/Rio Tinto製のMgO含量32wt.%、SiO含量61wt.%およびAl含量0.3wt.%の、平均粒度d50=1.0μmのJetfineTM3CA。
成分F
成分F−1: ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
成分F−2: ペンタエリトリトールテトラステアレート
成分F−3: Irganox B900(製造業者:スイス国バーゼル在Ciba Specialty Chemicals Inc.)
成形組成物の製造および試験
表1に示される出発物質を、二軸押出機(ZSK−25)(Werner und Pfleiderer)において回転速度225rpmおよび処理量20kg/時間でマシーン温度260℃において配合し、グラニュール化する。完成グラニュールを射出成形マシーンにおいて処理して対応試験片を生じる(溶融温度240℃、金型温度80℃、メルトフロント速度240mm/秒)。
DIN EN ISO 180/1A(ノッチ付きアイゾッド衝撃強さa)、DIN EN ISO 527(引張弾性率および破断点伸び)、DIN ISO 306(ビカー軟化温度、50Nの負荷および加熱速度120K/時間を用いる方法B)、ISO 11443(溶融粘度)、DIN EN ISO 1133(メルト・ボリューム・フロー・レートMVR)およびUL 94 V(寸法127×12.7×1.5mmのバーにおいて測定。)に準拠して同定を行う。
加水分解試験:ISO 1133に準拠してグラニュールの95℃および100%相対大気湿度における貯蔵(1d=1日、2d=2日、5d=5日、6d=6日、7d=7日)後に240℃においてプランジャー負荷5kgを用いて測定されるMVRの変化がこのようにして製造される組成物の加水分解抵抗の尺度の役割を果たす。対応する貯蔵の前のMVR値を表1中で「出発試験片のMVR値」と示す。
耐薬品性(ESC特性)では、室温におけるトルエン/イソプロパノール(60/40容積部)中での試験片の貯蔵後の、エッジファイバーの伸び率(edge fibre elongation)2.4%における破断までの時間を示す。
本発明による組成物3および4は、比較例1および2と比較して、改良されたビカー加熱撓み温度、短いあと燃え時間、良好なESC特性、高い引張弾性率および良好な引裂強さ、並びに高い加水分解抵抗を有する。この技術的効果は、比較例において、本発明のホスフィン酸カルシウムの代わりにオリゴホスフェートが防炎加工剤として用いられるという違いに起因する。
本発明による組成物6は、良好なビカー加熱撓み温度が変化せずに、比較例5と比較して、短いあと燃え時間および良好なESC特性を有する。この技術的効果は、比較例5にタルクが含まれないという違いに起因する。
本発明による組成物8は、比較例7と比較して、改良されたビカー加熱撓み温度、短いあと燃え時間、高い引張弾性率および良好な引裂強さを有する。この技術的効果は、比較例において、本発明のホスフィン酸カルシウムの代わりにオリゴホスフェートが防炎加工剤として用いられるという違いに起因する。
Figure 2011506706
Figure 2011506706

Claims (21)

  1. (A) 芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、38〜99.3重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)、
    (B) ゴム変性グラフトポリマー、0.5〜12重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)、
    (C) ホスフィン酸の塩、0.1〜25重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)、および
    (D)タルク、0.1〜25重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)
    を含有する組成物。
  2. 成分(B)のゴム変性グラフトポリマーを2〜5重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)含有する、請求項1に記載の組成物。
  3. ホスフィン酸の塩を7〜12重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)含有する、請求項1または2に記載の組成物。
  4. タルクを7〜12重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計に対する。)含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 成分(E)としてゴムを含まないビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレートを0〜20重量部(成分A+B+C+Dの重量部の合計100に対する。)含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. ゴムを含まないビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレートを含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 成分(F)として添加剤を0〜50重量部(それぞれ、成分A+B+C+Dの重量部の合計100に対する。)含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 成分(B)として、
    B.1 B.2上の少なくとも1種類のビニルモノマー、5〜95wt.%、
    B.2 ジエンゴム、EP(D)Mゴム(すなわち、エチレン/プロピレンおよび任意にジエンベースのゴム)およびアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、シリコーン/アクリレート、クロロプレンおよびエチレン/酢酸ビニルゴムからなる群から選択される少なくとも1種類のグラフトベース、95〜5wt.%
    の1種類以上のグラフトポリマーを含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. B.1として、
    B.1.1 ビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族化合物および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、50〜99重量部と、
    B.1.2 ビニルシアニドおよび/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステルおよび/または不飽和カルボン酸の誘導体、1〜50重量部と、
    の混合物を含有する、請求項8に記載の組成物。
  10. バルク、溶液またはバルク−サスペンション重合法で製造され、ゴム含量16〜25wt.%並びにそれぞれグラフトシェルのモノマーに対して少なくとも1種類のB.1.2のモノマー22〜27wt.%および少なくとも1種類のB.1.1のモノマー73〜78wt.%を含むグラフトシェルを有する成分(B)のグラフトポリマーを含有する、請求項8または9に記載の組成物。
  11. 該グラフトポリマーがグラフトベースB.2としてのブタジエン/スチレンブロックコポリマーゴムおよびスチレン(B.1.1)とアクリロニトリル(B.1.2)とのシェルを含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 成分(B)としてB.1メチルメタクリレートとB.2シリコーン/アクリレートコンポジットゴムとを用いるエマルジョン重合で製造されるグラフトポリマーを含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
  13. 成分(C)として、金属カチオンがLi、Na、K、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Al3+、Zn2+、Mn2+、Fe2+および/またはFe3+であるホスフィン酸の塩またはその混合物を含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
  14. ホスフィン酸の塩またはその混合物として、式(IV)
    Figure 2011506706
    〔式中、
    m+ は、周期表の第1主族(アルカリ金属;m=1)、第2主族(アルカリ土類金属;m=2)または第3主族(m=3)または第2、7もしくは8亜族(mは1〜6の整数である。)の金属カチオンである。〕
    のホスフィン酸の塩を含有する、請求項13に記載の組成物。
  15. m+=Ca2+およびm=2であるかまたはMm+=Al3+およびm=3である、請求項14に記載の組成物。
  16. 該ホスフィン酸塩(成分C)の平均粒度d50が80μm未満である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
  17. 該組成物が、モノマーおよびオリゴマーリン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンの群から選択されるリン含有防炎加工剤を含まない、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
  18. 成分(F)の市販の添加剤が防炎相乗剤、アンチドリップ剤、滑剤および離型剤、成核剤、安定剤、帯電防止剤、酸、充填剤および強化物質および染料および顔料である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
  19. 成形物品の製造への、請求項1〜18に記載の組成物の使用。
  20. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物を含有する成形物品。
  21. 該成形物品が乗用車、鉄道車両、航空機もしくは水中の乗物の部品であることを特徴とする、請求項20に記載の成形物品。
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