以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における静電噴霧装置の模式図である。
本実施の形態において、静電噴霧装置100は以下の構成からなる。
容器101は隔壁によって外部と仕切られ、隔壁を通じて外部との物質の出入りは行なわれない。容器101の形状は直方体でも良いし、多面体、紡錘形、球形、流路状でも良い。また容器101の寸法について、容器101の容積は試料気体の総流入量に比べて十分小さいことが好ましい。たとえば試料気体の総流入量が300ccの場合には、容器の容積は6cc以下が好ましい。さらに容器101の材料は吸着ガスや内蔵ガスの少ないものが望ましい。ステンレスやアルミなどの金属が最も好ましいが、ガラス、シリコンなどの他の無機材料でもよいし、アクリルやポリエチレンテレフタレート、テフロン(登録商標)などのプラスチックでもよい。また、これらを組み合わせて容器を構成しても良い。なお容器101は堅固であることが好ましいが、エアーバック、バルーン、フレキシブルチューブ、シリンジなどのように柔軟もしくは可動性があっても良い。
注入口102は容器101の一端に設けられている。注入口102は容器101へ試料気体を注入するために用いられる。注入口102を設ける位置について、試料気体が容器101の内部へすみやかに注入される場所であれば良い。たとえば容器101が直方体の場合には、注入口102は容器101の隅よりも面中央部が好ましい。なお本発明は、注入口102の形状、寸法、材料を限定しない。注入口102の形状は図1に示すように直管状であっても良いし、途中に分岐を設けても良い。さらに注入口102は一箇所であっても良いし、複数箇所でも良い。
排出口103は容器101の他端に設けられている。排出口103は容器101を満たした試料気体のうち、余剰な試料気体を排出するために用いられる。排出口103を設ける位置については、容器101を満たした試料気体のうち余剰分が容器101から排出される場所であれば良い。なお本発明は、排出口103の形状、寸法、材料を限定しない。排出口103の形状は図1に示すように直管状であっても良いし、途中に分岐を設けても良い。さらに排出口103は一箇所であっても良いし、複数箇所でも良い。
霧化電極部104は、容器101の内部に設けられている。霧化電極部104は、容器101の内部にあって試料気体に接触する位置にあれば良い。例えば、図1に示すように容器101の底部中央に設けられていることが好ましい。なお、霧化電極部104と容器101との接する面積は小さいほうが熱伝導を抑えられるため好ましい。
霧化電極部104の形状は針状であることが好ましい。針の長さは3mm以上10mm以下が好ましい。また、針の直径は0.5mm以上1.0mm以下が好ましい。針の直径は先端から根元まで同一でも良いし、根元よりも先端の方が細くなっていてもよい。針の数は1本であることが好ましいが、複数あっても良い。
さらに、霧化電極部104の材料は良熱伝導材料が好ましく、金属であることが最も好ましい。具体的には銅、真鍮、アルミ、ニッケル、タングステンなどの単体金属でも良いし、これらを二種類以上組み合わせたステンレスのような合金や金属間化合物であっても良い。さらにこれらの霧化電極部104の表面を保護するために、金、白金など化学的に安定な金属薄膜や他の良熱伝導材料で被覆しても良い。
第一冷却部105は、霧化電極部104の近傍に設けられている。第一冷却部105により霧化電極部104を冷却する。なお、第一冷却部105は熱電素子であることが最も好ましいが、水のような冷媒を使ったヒートパイプでも良いし、空気熱交換素子でも良いし、冷却ファンでも良い。第一冷却部105の冷却面の表面積は、大きいほど効率よく霧化電極部104を冷却することができる。したがって、第一冷却部105の大きさを霧化電極部104との接触面積を最大にするようにしても良いし、第一冷却部105の冷却面の外周面に凹凸加工を施しても良いし、第一冷却部105の冷却面の外周面に多孔体を設けても良い。第一冷却部105は、1つでも良いし、複数でも良い。
なお、第一冷却部105は霧化電極部104に直接接触していることが好ましく、熱伝導性シート、熱伝導性樹脂、金属板、グリースなど熱伝導体を介して接触させても良い。また第一冷却部105と霧化電極部104は常時接触していることが好ましいが、適宜、物理的または熱的に分離できても良い。
対向電極部106は、霧化電極部104に相対するように設けられている。対向電極部106は霧化電極部104と対になって静電噴霧するために用いられる。対向電極部106と霧化電極部104の先端の距離は、3mm以上4mm以下であることが好ましい。対向電極部106の形状は円環状が最も好ましい。図1において円環状の対向電極部106は断面で表してある。針状の霧化電極部104の延長線上に円環状の対向電極部106の中心があることが最も好ましい。なお、対向電極部106の形状は長方形、台形など多角形でも良く、帯電微粒子が通過する貫通孔のようなスリット106aが開いていれば良い。なお、本発明において対向電極部106の厚みは限定しない。さらに本発明において、貫通孔の断面積、形状、数は限定しない。
対向電極部106の材料は金属であることが好ましい。具体的には鉄、銅、亜鉛、クロム、アルミ、ニッケル、タングステンなどの単体金属でも良いし、これらを二種類以上組み合わせたステンレス又は真鍮のような合金、金属間化合物であっても良い。さらにこの対向電極部106の表面を保護するために、金、白金などの化学的に安定な金属薄膜や他の良熱伝導材料で被覆しても良い。
収集電極部107は対向電極部106の近傍に設けられている。また、収集電極部107と霧化電極部104の間に対向電極部106が設けられていることが好ましい。さらに、収集電極部107と対向電極部106の貫通孔と霧化電極部104は、ほぼ一直線上に設けられていることが好ましい。対向電極部107は容器101の天井に設けられていることが好ましく、霧化電極部104は容器101の底部に設けられていることが好ましく、対向電極部106は収集電極部107と霧化電極部104の間に設けられていることが好ましい。収集電極部107は静電噴霧された帯電微粒子を静電気力により収集するために用いられる。
収集電極部107の形状は針状であることが好ましい。針の長さは3mm以上10mm以下が好ましい。また、針の直径は0.5mm以上1.0mm以下が好ましい。針の直径は、先端から根元まで同一でも良いし、根元よりも先端の方が細くなっていてもよい。なお、本発明において、収集電極部107の先端から対向電極部106までの距離は限定しない。さらに、収集電極部107の材料は良熱伝導材料が好ましく、金属であることが最も好ましい。具体的にはステンレス、銅、真鍮、アルミ、ニッケル、タングステンなどの単体金属でも良いし、これらを二種類以上組み合わせた合金や金属間化合物であっても良い。また、これらの収集電極部107の表面を保護するために、金、白金などの化学的に安定な金属薄膜や他の良熱伝導材料で被覆しても良い。
なお、収集電極部107の最先端の形状は電界が集中することが好ましいので、円錐形でも良いし、四角錐形でも良いし、三角錐形でも良いし、他の先鋭な形状でも良い。また、針状の収集電極部107は中実であることが最も好ましいが、パイプのように中空であっても良い。収集電極部107は1つであっても良いし、複数あっても良い。
さらに、収集電極部107の先端は下方を向いていることが好ましい。収集電極部107の先端を下方へ向けることで、静電噴霧された溶液が重力により先端へ移動しやすいので好ましい。
第二冷却部108は、収集電極部107の近傍に設けられている。第二冷却部108は収集電極部107を冷却するために用いられる。なお、第二冷却部108は熱電素子であることが最も好ましいが、水のような冷媒を使ったヒートパイプでも良いし、空気熱交換素子でも良いし、冷却ファンでも良い。第二冷却部108の冷却面の表面積は、大きいほど効率よく収集電極部107を冷却することができる。したがって第二冷却部108の大きさを収集電極部107との接触面積を最大にするようにしても良いし、第二冷却部108の冷却面の外周面に凹凸加工を施しても良いし、第二冷却部108の冷却面の外周面に多孔体を設けても良い。第二冷却部108は、1つでも良いし、複数でも良い。
なお、第二冷却部108は収集電極部107に直接接触していることが好ましく、熱伝導性シート、熱伝導性樹脂、金属板、グリースなど熱伝導体を介して接触させても良い。また第二冷却部108と収集電極部107は常時接触していることが好ましいが、適宜、物理的または熱的に分離できても良い。
また、第二冷却部108と第一冷却部105は独立に制御できることが最も好ましいが、第一冷却部105と第二冷却部108をひとつにしても良い。第一冷却部105と第二冷却部108の大きさ、種類、数量は同じでも良いし、異なっていても良い。
注入口102および排出口103には、バルブ109aおよびバルブ109bが設けられていることが好ましい。これらのバルブ109aおよび109bにより容器101を閉鎖可能にすることが好ましい。なお、本発明ではバルブ109aおよび109bの材料、位置、種類を限定しない。さらに、注入口102および排出口103のコンダクタンスが十分小さければ容器101は閉鎖しているのとほぼ同様の効果が得られる。
図2〜図4は、本発明の実施の形態1における試料気体の収集方法を示す説明図である。なお、図2〜図4において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
まず、注入工程では水201と化学物質202a、202bからなる試料気体203が注入口102を通じて容器101へ注入される。図2(a)は注入工程を表す。なお容器101の内部が試料気体203によって満たされたかどうかを判別するために、容器101の内部に試料気体検出部を設けても良い。その試料気体検出部は一つでも良いし、複数でも良い。なお、本発明において試料気体検出部の種類、位置は限定しない。
また、注入工程において試料気体203の注入手段は、注入口102側から加圧して注入することが好ましいが、排出口103側を減圧して注入しても良い。
さらに、注入工程において試料気体203を容器101へ注入する前に、容器101の内部には清浄な空気が満たされていることが好ましい。なお、容器101の内部には乾燥窒素やその他の不活性ガスが満たされていても良いし、試料気体と同程度の湿度を有する標準ガスや、較正用ガスが満たされていても良い。
また、注入工程において余剰な試料気体203は排出口103から排出される。
注入工程における試料気体203の注入と排出は、バルブ109aおよびバルブ109bで制御される。また注入口102には、容器101への異物混入を防ぐためのトラップを設けても良い。
なお、簡便のため図2(a)において化学物質202a、202bは2種類だけ記載しているが、試料気体203は2種類以上の成分を含んでいても良い。
次に、第一冷却工程では、第一冷却部105により霧化電極部104が冷却される。図2(b)は第一冷却工程を表す。なお、図2(b)において、第一冷却部105が霧化電極部104を冷却する様子を表すために、第一冷却部105に接続される直流電源で表示した。しかし本発明では、第一冷却工程は第一冷却部105へ直流電源が接続されることに限定しない。
前記注入工程の後で第一冷却工程を行うことにより、試料気体以外の冷却凝縮を抑えることができる。第一冷却工程では霧化電極部104以外の部分、たとえば容器101も冷却されないよう、熱伝導を小さくすることが好ましい。熱伝導を小さくするために、霧化電極部104と容器101との接触面積を小さくすることが最も好ましい。あるいは霧化電極部104と容器101との接触部に熱伝導係数の小さい材料を介在させても良い。
次に第一凝縮工程では、冷却された霧化電極部104の外周面において、水201と化学物質202aと化学物質202bを含む第一凝縮液204が形成される。図2(c)は第一凝縮工程を表す。
なお、この第一凝縮工程では、第一凝縮液204の量が過剰にならないよう、第一冷却部105により霧化電極部104の温度を適宜制御することが好ましい。
次に帯電微粒子化工程では、第一凝縮液204から多数の帯電微粒子205を形成する。図3(a)は帯電微粒子化工程を表す。なお帯電微粒子の形態は、分子が数千個からなる微粒子であることが最も好ましいが、1個〜数百個からなるクラスタであっても良いし、数万個以上からなる液滴であっても良い。またはこれらの2種類以上が混在していても良い。
また、帯電微粒子205には、電気的に中性な分子の他に、化学物質由来のイオンまたはラジカルが含まれていても良い。またはこれらが混在していても良い。帯電微粒子205は負に帯電していることがより好ましいが、正に帯電していても良い。
帯電微粒子化する方法は、静電噴霧が最も好ましい。ここで、静電噴霧の原理を簡単に説明しておく。霧化電極部104と対向電極部106の間に印加された電圧によって霧化電極部104先端へ第一凝縮液204が搬送される。クーロン引力により第一凝縮液204の液面が対向電極部106方向へ円錐状に盛り上がる。この盛り上がった円錐状の液体はテーラーコーンと呼ばれている。さらに霧化電極部104の外周面で凝縮が進むと、円錐状の第一凝縮液204が成長して、第一凝縮液204の先端に電荷が集中してクーロン力が増大する。このクーロン力が水の表面張力を超えると第一凝縮液204が分裂、飛散して、帯電微粒子205を形成する。以上が静電噴霧の原理である。
帯電微粒子化工程において、霧化電極部104と対向電極部106の間には4kV以上6kV以下の電圧が印加されることが好ましい。
なお、本発明は帯電微粒子205の直径を限定しないが、帯電微粒子の安定性の観点から2nm以上30nm以下が好ましい。
帯電微粒子205に付加される帯電量は、微粒子1個あたり電荷素量(1.6x10−19C)と同量であることが最も好ましいが、電荷素量より大きくても良い。
次に電圧印加工程では、対向電極部106に対して収集電極部107へ電圧を印加する。図3(b)は電圧印加工程を表す。元来、直径2nm以上30nm程度の帯電微粒子205は静電気力により反発するため拡散しやすいが、収集電極部107の形状を針状にすることで、帯電微粒子205の大半は静電気力の集中により収集電極部107の先端近傍へ容易に集まる。なお、帯電微粒子205が負の電荷を持つ場合、対向電極部106に対して収集電極部107に直流正電圧を印加することが好ましい。電圧印加は連続的であることが好ましいが、パルス的でも良い。
次に第二冷却工程では、第二冷却部108により収集電極部107が冷却される。図3(c)は第二冷却工程を表す。前記電圧印加工程の後で第二冷却工程を行うことにより、収集電極部107の先端近傍へ集中する帯電微粒子205を冷却することができる。
次に第二凝縮工程では、収集電極部107の先端近傍で大半の帯電微粒子205が凝縮され、第二凝縮液206が生成される。図4は第二凝縮工程を表す。第二凝縮工程の結果、第二凝縮液206が収集電極部107の全面に広がるのを抑制できる。
なお、本発明の実施の形態において、収集電極部107は、第二冷却部108によって水蒸気の結露点以下に冷却されることが好ましい。収集電極部107の近傍に温度計を設けて、収集電極部107の温度を計測しても良い。また収集電極部107の温度を制御しても良い。
また、本発明の実施の形態において、収集電極部107を加熱して、第二凝縮液206を蒸発させることが好ましい。加熱時の収集電極部107の温度は、水の結露点以上が好ましい。これにより、不要時に試料気体が収集電極部107へ凝縮するのを防止できる。
さらに、本発明の実施の形態において、熱電素子に印加する電圧の極性を反転させることで、第二冷却部108の冷却面を発熱面に変えることが好ましい。これにより、収集電極部107を加熱することができるため、第二凝縮液206を簡便に蒸発させることができる。
また、本発明の実施の形態において、対向電極部106は水蒸気の結露点以上であることが好ましい。対向電極部106を水蒸気の結露点以上に保つことにより、対向電極部106の外周面に帯電微粒子205が凝縮されるのを抑制できる。対向電極部106を水蒸気の結露点以上に保つため、対向電極部106に加熱機構を設けても良い。
帯電微粒子205は、水201および試料気体の成分である化学物質202a、202bを含んでいることが好ましい。帯電微粒子中の水と試料気体の成分の重量比率は、試料気体中の水と試料気体の成分の重量比率と同じでも良いし、異なっていても良い。
また、本実施の形態において、試料気体の成分は揮発性有機化合物(特に、分子量15以上500以下の揮発性有機化合物)であることが好ましい。揮発性有機化合物は、ケトン類、アミン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、アルデヒド類、エステル類、有機酸、硫化水素、メチルメルカプタン、ジスルフィドなどが好ましい。あるいは、これらの物質またはアルカン、アルケン、アルキン、ジエン、脂環式炭化水素、アレン、エーテル、カルボニル、カルバニオ、タンパク、多核芳香族、複素環、有機誘導体、生物分子、代謝物、イソプレン、イソプレノイドおよびその誘導体などでも良い。
さらに、本発明の実施の形態において、収集電極部107は、除電されることが好ましい。たとえば帯電微粒子205が負に帯電している場合、収集電極部107へ試料気体成分が収集されるにつれ、収集電極部107は負に帯電する。この帯電量が過剰な場合、収集電極部107の先端付近に帯電微粒子205を収集するのに困難を生じるので、除電できるようにすることが好ましい。なお、除電は、常時行なっても良いし、適宜行なっても良い。
また、本発明の実施の形態において、収集電極部107は、接地可能であることが好ましい。なお、本発明では接地方法を限定しない。
さらに、本発明の実施の形態において、収集電極部107の先端に、第二凝縮液206を保持する貯留部を備えていることが好ましい。収集電極部107の先端に貯留部を設けることにより、収集電極部107の全面に第二凝縮液206が広がるのを抑制できる。貯留部として収集電極部107の先端に凹凸構造を設けても良い。凹凸構造を設けることにより、液体との接触面積を増加やし、第二凝縮液206を保持できる。また貯留部の形状は球形でも良いし、紡錘形でも良いし、その他の多角体形でも良い。貯留部が球形の場合、その直径は1mm以上2mm以下であることが好ましい。また、貯留部として、多孔質体、ナノフォーム、ゲルなどの吸水手段を設けても良い。あるいは収集電極107の先端の外周面を親水処理しても良い。親水処理として、ガラスや酸化チタンなどの親水材料を成膜しても良いし、シラノール基やカルボキシル基、アミノ基、リン酸基などの親水基を末端にもつ有機分子を吸着もしくは結合させても良い。
さらに、本発明の実施の形態において、収集電極部107の先端に化学物質検出部を備えていることが好ましい。なお、化学物質検出部は、ガスクロマトグラフでも良いし、他の化学物質検出器を用いても良い。例えば、MOSFET(金属−酸化物−半導体電界効果トランジスタ)、ISFET(イオン感応型電界効果トランジスタ),バイポーラトランジスタ、有機薄膜トランジスタ、オプトード、金属酸化物半導体センサ、水晶マイクロバランス(QCM)、表面弾性波(SAW)素子、固体電解質ガスセンサ、電気化学電池センサ、表面波プラズモン共鳴(SPR)、ラングミュアブロジェット膜(LB膜)センサなどのセンサでも良い。あるいは、高速液体クロマトグラフ、質量分析装置、核磁気共鳴装置、LC−IT−TOFMS、SHIFT−MSなどでも良い。また化学物質検出部は1箇所でも良いし、複数箇所でも良い。さらに複数の化学物質検出部を設ける場合、同一種類でもよいし複数種類を組み合わせても良い。なお収集電極部107と化学物質検出部の間には第二凝縮液206を搬送する手段が設けられていても良い。
また、本発明の実施の形態において、試料気体収集方法を生体分子分析装置に用いても良い。生体分子はケトン類、アミン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、アルデヒド類、エステル類、有機酸、硫化水素、メチルメルカプタン、ジスルフィドなどが好ましい。あるいは、これらの物質またはアルカン、アルケン、アルキン、ジエン、脂環式炭化水素、アレン、エーテル、カルボニル、カルバニオ、タンパク、多核芳香族、複素環、有機誘導体、生物分子、代謝物、イソプレン、イソプレノイドおよびその誘導体などでも良いし、その他の生体由来の有機化合物でも良い。
本発明の実施の形態では、収集側の電極で凝縮液が広がらないように、電圧印加工程により針状の収集電極部107の先端近傍へ帯電微粒子205を集中させた後、第二冷却工程を行なうことで、第二凝縮工程において第二凝縮液206を得ることができる。電圧印加工程の後に第二冷却工程を行なうことで、第二冷却工程の後に電圧印加工程を行なう場合よりも、第二凝縮液206の濃度を高めることができる。
なお、本発明の実施の形態は、静電噴霧を利用した従来のマイナスイオンミスト発生装置の形態とは大きく異なる。すなわち、従来のマイナスイオンミスト発生装置は、帯電微粒子の直径が数nm〜数十nmと非常に小さい。そのためナノメータサイズの帯電微粒子は(1)空気中に10分間程度と比較的長時間浮遊する、(2)拡散性が高い、という性質を持つ。これらのマイナスイオンミストの性質は肌や毛髪の保湿器、脱臭器へ適用するには大きな利点となる。しかし、これらの性質は本発明の目的である化学物質の収集には欠点となる。したがって通常は、化学物質を収集するために、ナノメータサイズの帯電微粒子を生成する静電噴霧法を利用するという発想は生まれない。しかし、本実施の形態に記載した方法を用いれば、たとえナノメータサイズの帯電微粒子が浮遊性や拡散性を有していても、効率的に化学物質を収集することができる。
さらに、本発明の実施の形態において、容器101の材料にプラスチックを用いる場合、テフロン(登録商標)が最も好ましく、アクリル樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、フッ素樹脂、PDMSなどでも良い。また、容器101の材料にプラスチックを用いる場合、容器101の内壁には金属薄膜をコーティングすることがより好ましい。金属薄膜はアルミ薄膜が安価でガスバリア性に優れるため最も好ましいが、他の金属薄膜でも良い。またはこれらを2種類以上組み合わせても良い。
また、本発明の実施の形態において、容器101の材料に無機材料を用いる場合、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、窒化シリコン、アルミナ、シリコンカーバイドなどの無機物でも良いし、シリコン表面に二酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルなどの絶縁体薄膜を形成したものを用いても良い。またはこれらを2種類以上組み合わせても良い。
さらに、注入口102および排出口103に設けたバルブ109aおよびバルブ109bは、試料気体の流れを制御する制御弁を設けても良いし、制御弁は逆止弁でも良いし、ストップバルブでも良い。
また、注入口102および排出口103には試料気体の流量を計測する計測器を設けても良い。計測器は積算流量計でも良いし、マスフローメータでも良いし、他の流量計測器を用いても良い。
さらに、注入工程では、注入口102側を加圧する場合、ダイアフラムポンプやペリスタティックポンプやシリンジポンプなど電動ポンプを用いて注入しても良いし、シリンジやスポイドを使って手動で注入しても良い。
また、注入工程では、排出口103側を減圧する場合、ダイアフラムポンプやペリスタティックポンプやシリンジポンプなど電動ポンプを用いて注入しても良いし、シリンジを使って手動で注入しても良い。
さらに、第一冷却部105および第二冷却部108の放熱部には放熱フィンを設けても良い。あるいは放熱部を水冷しても良いし、空冷しても良いし、熱電素子で冷却しても良いし、他の冷却方法を用いても良い。またこれらを2種類以上組み合わせても良い。
また、霧化電極部104には金属を用いることが最も好ましいが、他の良電気伝導性、良熱伝導性を示す材料でも良い。
さらに、本発明の実施の形態において、霧化電極部104は1つでも良いし、複数あっても良い。霧化電極部104を複数個設ける場合には、直線状などのように一次元的に配列しても良いし、円周状、放物線状、楕円周状、正方格子状、斜方格子状、最密充填格子状、放射状、ランダム状などのように二次元的に配列しても良いし、球面状、放物曲面状、楕円曲面状などのように三次元的に配列しても良い。
また、収集電極部107には金属を用いることが最も好ましいが、他の良電気伝導性、良熱伝導性を示す材料でも良い。
また、本発明の実施の形態において、収集電極部107は1つでも良いし、複数あっても良い。収集電極部107を複数個設ける場合には、直線状などのように一次元的に配列しても良いし、円周状、放物線状、楕円周状、正方格子状、斜方格子状、最密充填格子状、放射状、ランダム状などのように二次元的に配列しても良いし、球面状、放物曲面状、楕円曲面状などのように三次元的に配列しても良い。
(実施の形態2)
図5〜図7は、本発明の実施の形態2における試料気体の収集方法を示す説明図である。図5〜図7において、図1〜図4と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
まず、注入工程では水201と化学物質202a、202bからなる試料気体203が注入口102を通じて容器101へ注入される。図5(a)は注入工程を表す。なお容器101の内部が試料気体203によって満たされたかどうかを判別するために、容器101の内部に試料気体検出部を設けても良い。その試料気体検出部は一つでも良いし、複数でも良い。なお、本発明において試料気体検出部の種類、位置は限定しない。
また、注入工程において試料気体203の注入手段は、注入口102側から加圧して注入することが好ましいが、排出口103側を減圧して注入しても良い。
さらに、注入工程において試料気体203を容器101へ注入する前に、容器101の内部には清浄な空気が満たされていることが好ましい。なお、容器101の内部には乾燥窒素やその他の不活性ガスが満たされていても良いし、試料気体と同程度の湿度を有する標準ガスや、較正用ガスが満たされていても良い。
また、注入工程において余剰な試料気体203は排出口103から排出される。
注入工程における試料気体203の注入、排出はバルブ109a、バルブ109bで制御される。また注入口102には、容器101への異物混入を防ぐためのトラップを設けても良い。
なお、簡便のため図5(a)において化学物質202a、202bは2種類だけ記載しているが、試料気体203は2種類以上の成分を含んでいても良い。
次に、第一冷却工程では、第一冷却部105により霧化電極部104が冷却される。図5(b)は第一冷却工程を表す。なお、前記注入工程の後で第一冷却工程を行うことにより、試料気体以外の冷却凝縮を抑えることができる。第一冷却工程では霧化電極部104以外の部分、たとえば容器101も冷却されないよう、熱伝導を小さくすることが好ましい。熱伝導を小さくするために、霧化電極部104と容器101との接触面積を小さくすることが最も好ましい。あるいは霧化電極部104と容器101との接触部に熱伝導係数の小さい材料を介在させても良い。
第一凝縮工程では、冷却された霧化電極部104の外周面において、水201および化学物質202a、202bを含む第一凝縮液204が形成される。図5(c)は第一凝縮工程を表す。
なお、この第一凝縮工程では、第一凝縮液204の量が過剰にならないよう、第一冷却部105により霧化電極部104の温度を適宜制御することが好ましい。
本実施の形態において、第一凝縮工程により第一凝縮液204が十分形成されたとき、バルブ109aおよびバルブ109bを閉じる。これ以降、容器101と外部との間で気体は出入りしない。したがって、容器101内の気流は抑えられる。
次に帯電微粒子化工程では、第一凝縮液204から多数の帯電微粒子205を形成する。図6(a)は帯電微粒子化工程を表す。なお帯電微粒子の形態は、分子が数千個からなる微粒子であることが最も好ましいが、1個〜数百個からなるクラスタであっても良いし、数万個以上からなる液滴であっても良い。またはこれらの2種類以上が混在していても良い。
図6(a)において、バルブ109aおよびバルブ109bが黒く塗られているのは、閉じていることを表している。
また、帯電微粒子205には、電気的に中性な分子の他に、化学物質由来のイオンまたはラジカルが含まれていても良い。またはこれらが混在していても良い。帯電微粒子205はマイナスに荷電していることがより好ましいが、プラスに荷電していても良い。
帯電微粒子化工程において、霧化電極部104と対向電極部106の間には4kV以上6kV以下の電圧が印加されることが好ましい。
なお、本発明は帯電微粒子205の直径を限定しないが、帯電微粒子の安定性の観点から2nm以上30nm以下が好ましい。
帯電微粒子205に付加される帯電量は、微粒子1個あたり電荷素量(1.6x10−19C)と同量であることが最も好ましいが、電荷素量より大きくても良い。
次に電圧印加工程では、対向電極部106に対して収集電極部107へ電圧を印加する。図6(b)は電圧印加工程を表す。元来、直径2nm以上30nm程度の帯電微粒子205は静電気力により反発するため拡散しやすいが、収集電極部107の形状を針状にすることで、帯電微粒子205の大半は静電気力の集中により収集電極部107の先端近傍へ容易に集まる。なお、帯電微粒子205が負の電荷を持つ場合、対向電極部106に対して収集電極部107に直流正電圧を印加することが好ましい。電圧印加は連続的であることが好ましいが、パルス的でも良い。
次に第二冷却工程では、第二冷却部108により収集電極部107が冷却される。図6(c)は第二冷却工程を表す。前記電圧印加工程の後で第二冷却工程を行うことにより、収集電極部107の先端近傍へ集中する帯電微粒子205を冷却することができる。
第二凝縮工程では、収集電極部107の先端近傍で大半の帯電微粒子205が凝縮され、第二凝縮液206が生成される。図7は第二凝縮工程を表す。第二凝縮工程の結果、第二凝縮液206が収集電極部107の全面に広がるのを抑制できる。
なお、本実施の形態において、帯電微粒子化工程以降、容器101は閉鎖されている。したがって、試料気体203の流入時に発生する気流により帯電微粒子205の運動が擾乱されるのを防ぐ。なぜなら、帯電微粒子205は主に静電気力で運動することが好ましいためである。その結果、収集電極部107の先端へ帯電微粒子205を集めやすくなる。
(実施の形態3)
図8〜図10は、本発明の実施の形態3における試料気体の収集方法を示す説明図である。図8〜図10において、図1〜図4と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
まず、注入工程では水201と化学物質202a、202bからなる試料気体203が注入口102を通じて容器101へ注入される。図8(a)は注入工程を表す。なお容器101の内部が試料気体203によって満たされたかどうかを判別するために、容器101の内部に試料気体検出部を設けても良い。その試料気体検出部は一つでも良いし、複数でも良い。なお、本発明において試料気体検出部の種類、位置は限定しない。
また、注入工程において試料気体203の注入手段は、注入口102側から加圧して注入することが好ましいが、排出口103側を減圧して注入しても良い。
さらに、注入工程において試料気体203を容器101へ注入する前に、容器101の内部には清浄な空気が満たされていることが好ましい。なお、容器101の内部には乾燥窒素やその他の不活性ガスが満たされていても良いし、試料気体と同程度の湿度を有する標準ガスや、較正用ガスが満たされていても良い。
また、注入工程において余剰な試料気体203は排出口103から排出される。
注入工程における試料気体203の注入、排出はバルブ109a、バルブ109bで制御される。また注入口102には、容器101への異物混入を防ぐためのトラップを設けても良い。
なお、簡便のため図8(a)において化学物質202a、202bは2種類だけ記載しているが、試料気体203は2種類以上の成分を含んでいても良い。
本実施の形態において、注入工程により試料気体203が容器101で均一に満たされた後、バルブ109aおよびバルブ109bを閉じる。これにより容器101と外部との間で気体は出入りしない。
次に、第一冷却工程では、第一冷却部105により霧化電極部104が冷却される。図8(b)は第一冷却工程を表す。なお、前記注入工程の後で第一冷却工程を行うことにより、試料気体以外の冷却凝縮を抑えることができる。第一冷却工程では霧化電極部104以外の部分、たとえば容器101も冷却されないよう、熱伝導を小さくすることが好ましい。熱伝導を小さくするために、霧化電極部104と容器101との接触面積を小さくすることが最も好ましい。あるいは霧化電極部104と容器101との接触部に熱伝導係数の小さい材料を介在させても良い。
第一凝縮工程では、冷却された霧化電極部104の外周面において、水201および化学物質202a、202bを含む第一凝縮液204が形成される。図8(c)は第一凝縮工程を表す。
なお、この第一凝縮工程では、第一凝縮液204の量が過剰にならないよう、第一冷却部105により霧化電極部104の温度を適宜制御することが好ましい。
次に帯電微粒子化工程では、第一凝縮液204から多数の帯電微粒子205を形成する。図9(a)は帯電微粒子化工程を表す。なお帯電微粒子の形態は、分子が数千個からなる微粒子であることが最も好ましいが、1個〜数百個からなるクラスタであっても良いし、数万個以上からなる液滴であっても良い。またはこれらの2種類以上が混在していても良い。
また、帯電微粒子205には、電気的に中性な分子の他に、化学物質由来のイオンまたはラジカルが含まれていても良い。またはこれらが混在していても良い。帯電微粒子205はマイナスに荷電していることがより好ましいが、プラスに荷電していても良い。
帯電微粒子化工程において、霧化電極部104と対向電極部106の間には4kV以上6kV以下の電圧が印加されることが好ましい。
なお、本発明は帯電微粒子205の直径を限定しないが、帯電微粒子の安定性の観点から2nm以上30nm以下が好ましい。
帯電微粒子205に付加される帯電量は、微粒子1個あたり電荷素量(1.6x10−19C)と同量であることが最も好ましいが、電荷素量より大きくても良い。
なお、本実施の形態において、第一冷却工程以後、容器101は閉鎖されている。したがって、帯電微粒子205は容器101の外部へ流失しない。
次に電圧印加工程では、対向電極部106に対して収集電極部107へ電圧を印加する。図9(b)は電圧印加工程を表す。元来、直径2nm以上30nm程度の帯電微粒子205は静電気力により反発するため拡散しやすいが、収集電極部107の形状を針状にすることで、帯電微粒子205の大半は静電気力の集中により収集電極部107の先端近傍へ容易に集まる。なお、帯電微粒子205が負の電荷を持つ場合、対向電極部106に対して収集電極部107に直流正電圧を印加することが好ましい。電圧印加は連続的であることが好ましいが、パルス的でも良い。
次に第二冷却工程では、第二冷却部108により収集電極部107が冷却される。図9(c)は第二冷却工程を表す。前記電圧印加工程の後で第二冷却工程を行うことにより、収集電極部107の先端近傍へ集中する帯電微粒子205を冷却することができる。
第二凝縮工程では、収集電極部107の先端近傍で大半の帯電微粒子205が凝縮され、第二凝縮液206が生成される。図10は第二凝縮工程を表す。第二凝縮工程の結果、第二凝縮液206が収集電極部107の全面に広がるのを抑制できる。
なお、試料気体203は、電気的に中性であるから、針状の収集電極部107の先端のみならず側面においても、帯電微粒子化されず直接に凝縮液となる。しかし、本発明の実施の形態では第一冷却工程以後、容器101は閉鎖されているので、新たな試料気体203の流入はない。したがって、試料気体203が直接、収集電極部107上で凝縮液となる割合は少なくなり、収集電極部107の全面に広がるのを抑制する。
さらに、本発明の実施の形態において、帯電微粒子205は容器101から流出しない。このとき、容器101の中の帯電微粒子205の数は多くなるため、収集電極部107の先端に第二凝縮液206が集まる。その結果、収集電極部107全体に広がるのを抑制
する。
(実施例1)
容器101は厚み0.5mmの透明アクリル樹脂板で作製した。容器101は32mmx17mmx12mmの直方体とした。容器101を透明体で作製することは、凝縮液の形成過程が観察できるためより好ましい。また容器101は一体成型しても良い。
注入口102は、容器101の一端に直径3mmの貫通穴を形成し、外径3mmのシリコーンチューブを接続した。なお、本発明では注入口102の形成方法を限定しない。容器101を一体成型するときに同時に形成しても良いし、切削加工で形成しても良いし、ドライエッチング、ホットエンボス、ナノインプリントなど他の一般的な形成方法を用いても良い。
排出口103は容器101の他端に直径3mmの貫通穴を形成し、外径3mmのシリコーンチューブを接続した。なお、本発明では排出口103の形成方法を限定しない。容器101を一体成型するときに同時に形成しても良いし、切削加工で形成しても良いし、ドライエッチング、ホットエンボス、ナノインプリントなど他の一般的な形成方法を用いても良い。
霧化電極部104としてステンレス製針を、容器101の内部に設けた。ステンレス製針の長さは3mm、直径は最も太い部分で0.79mm、最も細い部分で0.5mmであった。またステンレス製針の先端には直径0.72mmの球を設け、安定して帯電微粒子化工程を行なえるようにした。さらに球の最先端には直径100μmの半球状の突起を設けた。霧化電極部104の一端には電圧印加用の導線を接続した。なお、霧化電極部104を、容器101の底部に設けた。また、霧化電極部104の先端部が上方を向くように、設けた。
第一冷却部105として熱電素子を霧化電極部104の近傍に設けた。熱電素子の大きさは14mmx14mmx1mmであった。最大吸熱は0.9W、最大温度差は69℃の熱電素子を用いた。熱電素子の冷却面は、セラミックス材で被覆した。セラミックス材はその表面に微細な凹凸や多孔体構造を有するため、接触する物体を効率的に冷却することができる。なお、第一冷却部105と霧化電極部104は熱伝導性ペーストを介して接続した。
対向電極部106は、霧化電極部104の先端から3mm離れたところに設けた。対向電極部106の形状は外径12mm、内径8mm、厚さ0.47mmの円環状のステンレス板を用いた。対向電極部106の一端には電圧印加用の導線を接続した。
収集電極部107としてステンレス製針を対向電極部106の近傍に設けた。ステンレス製針の長さは3mm、直径は最も太い部分で0.79mm、最も細い部分で0.5mmであった。またステンレス製針の先端には直径0.72mmの球を設けた。さらに球の最先端には直径100μmの半球状の突起を設けた。なお、収集電極部107の先端は下方へ向けて設置した。収集電極部107の一端には電圧印加用の導線を接続した。
第二冷却部108として熱電素子を収集電極部107の近傍に設けた。熱電素子の大きさは14mmx14mmx1mmであった。最大吸熱は0.9W、最大温度差は69℃の熱電素子を用いた。熱電素子の冷却面は、セラミックス材で被覆した。セラミックス材はその表面に微細な凹凸や多孔体構造を有するため、接触する物体を効率的に冷却することができる。なお、第二冷却部108と収集電極部107は熱伝導性ペーストを介して接続した。
次に、静電噴霧装置の操作手順を説明する。
注入工程では、試料気体を注入口102から容器101へ注入した。本実施例において容器101の容積は6.5mLであって、500mL/分の流速で試料気体を注入した。
なお、本実施例においては、試料気体として、乾燥窒素ガスを水および酢酸0.3%水溶液へ順次導入し、バブリングして得たガスを用いた。
注入工程において試料気体を容器101へ注入する前には、容器101の内部には乾燥窒素ガスを満たしておいた。
また、注入工程において余剰な試料気体は排出口103を通じて排出した。
次に、第一冷却工程として、熱電素子により霧化電極部104を冷却した。霧化電極部104の温度は動作前に26℃であったが、30秒後には15℃まで低下した。なお、霧化電極部104の温度測定はKタイプの熱電対を用いて行った。霧化電極部104の温度は水の結露点以下に冷却されることが好ましい。
そして、第一凝縮工程において、霧化電極部104の外周面には熱電素子動作開始5秒後に第一凝縮液204が形成され始めた。第一凝縮液204の形成初期段階では直径10μm以下の液滴であるが、時間の経過とともに液滴は成長し、熱電素子動作開始10秒後には十分な液量を得た。なお、霧化電極部104における第一凝縮液204の形成はマイクロスコープ(KEYENCE社製、VH−6300)を用いて観察した。
次に、帯電微粒子化工程として、第一凝縮液204を多数の帯電微粒子205にした。帯電微粒子化205は静電噴霧で行なった。なお、前述の実施の形態1でも述べたように、静電噴霧の初期段階で、コロナ放電が発生するが、本発明の帯電微粒子化工程にはこれも含めても良い。
帯電微粒子205の安定性の観点から、帯電微粒子205の直径は2nm以上30nm以下であることが好ましい。帯電微粒子205は1個ずつ単独で存在することが好ましいが、複数個が結合していても良い。
なお、帯電微粒子化工程において、霧化電極部104と対向電極部106の間にはDC5kVを印加した。この時、霧化電極部104を陰極、対向電極部106を陽極とした。霧化電極部104を陽極、対向電極106を陰極としても同様の効果が得られるが、帯電微粒子化工程は比較的不安定であった。
帯電微粒子化工程では、霧化電極部104の先端にテーラーコーンと呼ばれる円錐形の水柱が形成され、その水柱の先端から化学物質を含む多数の帯電微粒子が放出された。図11はテーラーコーンおよび帯電微粒子の生成を説明する図である。テーラーコーン301を形成する第一凝縮液302は霧化電極部104の先端方向へと順次搬送された。テーラーコーン301の最先端すなわち電界が集中する場所から帯電微粒子303が形成された。
なお、帯電微粒子化工程では、霧化電極部104と対向電極部106の間に流れる電流を計測した。過剰な電流が流れた場合には、霧化電極部104と対向電極部106との間の電圧印加を中断または印加電圧を減少させた。
次に電圧印加工程では、対向電極部106と収集電極部107の間にDC500Vを印加した。電圧印加工程により、帯電微粒子205を収集電極部107の先端近傍へ静電気力により収集することができる。なお本実施例では、対向電極部106に対して収集電極部107に正電圧を印加した。対向電極部106と収集電極部107の間に印加する電圧の大きさは、0V以上5kV以下が好ましく、0V以上500V以下がより好ましい。なお、帯電微粒子205が負に帯電している場合、収集電極部107へ正電圧を印加することが最も好ましい。
次に、第二冷却工程として、収集電極部107を第二冷却部108で冷却した。収集電極部107の温度は動作前に26℃であったが、30秒後には15℃まで低下した。なお、収集電極部107の温度測定はKタイプの熱電対を用いて行った。また、収集電極部107の温度は水の結露点以下に冷却されることが好ましい。第二冷却工程を電圧印加工程の後で行なうことにより、収集電極部107の先端近傍で大半の帯電微粒子205を冷却することができる。
第二凝縮工程において、収集電極部107の先端近傍へ帯電微粒子205を凝縮させ、第二凝縮液206を得た。なお、収集電極部107の温度は第二凝縮液206の生成量に応じて適宜制御することが好ましい。また帯電微粒子205の寿命の観点から、遅くとも帯電微粒子工程開始10分後までに第二凝縮工程を開始することが好ましい。
図12(a)および図12(b)は、それぞれ第二凝縮工程における収集電極部107の様子を表した説明図および最先端部の光学顕微鏡写真である。図12(a)および図12(b)が示すように、収集電極部107の先端近傍に第二凝縮液401を収集することができた。なお、第二凝縮液401自身にも静電気力が加わり、液滴が広がるのを抑制した。さらに、収集電極部107の先端は下方を向いて設けられているために、第二凝縮液401に重力が加わり、液滴が広がるのを抑制した。
第二凝縮工程の後、収集電極部107の先端近傍には第二凝縮液206が約1μL蓄積できた。注入工程から第二凝縮工程までの所要時間は2分間であった。
なお、第二凝縮液206の中に酢酸が含まれていることを確かめるため、第二凝縮液206をシリンジで採取し、ガスクロマトグラフ分析を行なった。分析にはジーエルサイエンス社製のGC−4000を用いた。
図13は第二凝縮液206の分析結果である。縦軸は酢酸のガスクロマトグラムのピーク面積を表しており、ピーク面積が大きいほど第二凝縮液206中に含まれる酢酸の濃度が高いことを意味する。横軸は、対向電極部106に対して収集電極部107へ印加する電圧Vcである。なお収集電圧Vcの符号は、対向電極部を陰極、収集電極部を陽極とした場合には正とする。
図13が示すように、第二凝縮液206には酢酸が含まれていた。また、収集電圧Vcが大きくなるほど、第二凝縮液206中の酢酸の濃度は増大する傾向にあり、Vc=0VとVc=500Vを比べると、第二凝縮液206中の酢酸濃度は約2倍となり、本発明により、静電噴霧された溶液が濃縮されるという副次的な効果があることも分かった。
図13の結果によると、電圧印加工程の後で第二冷却工程を行なうことは、より効率的であることを示している。Vc=500Vでの結果は、電圧印加工程の後に第二冷却工程を行なうことに対応する。Vc=0Vでの結果は、第二冷却工程の後に電圧印加工程を行なうことに対応する。電圧印加工程の後に第二冷却工程を行なう場合、第二冷却工程の後に電圧印加工程を行なう場合に比べて、第二凝縮液206の濃度は高かった。したがって、第二冷却工程を電圧印加工程の後に行なうことが好ましい。
なお、分析条件は以下のとおりであった。分析カラムにはキャピラリカラムを用いた。キャピラリカラムの内径は0.53mm、長さは30mであった。キャリアガスはヘリウムであった。オーブン温度は160℃とした。インジェクション温度および水素炎イオン化検出器(FID)温度はそれぞれ250℃であった。
分析後は、収集電極部107を容器101から取り外し、メタノールで洗浄した。
また、収集電極部107に付着した第二凝縮液206を除去するために、収集電極部107を加熱した。収集電極部107の加熱には、熱電素子を用いた。なお、この熱電素子は第二冷却工程において収集電極部107を冷却した時と同種類のものを用いた。収集電極部107を加熱する時、熱電素子に加える電圧の極性は、収集電極部107を冷却した時と反転した。
さらに、帯電微粒子化工程または電圧印加工程において、収集電極部107の除電を行なった。除電は収集電極部107を接地することで行なった。
また、注入工程から第二凝縮工程に至るまで、対向電極部106の温度は水の結露点以上に保った。これにより対向電極部106の外周面に凝縮液が生成する現象は見られなかった。
(実施例2)
実施例1と同じ構成要素について説明を省略し、静電噴霧装置の操作手順のみを説明する。
注入工程では、試料気体を注入口102から容器101へ注入した。本実施例において容器101の容積は6.5mLであって、500mL/分の流速で試料気体を注入した。
なお、本実施例においては、試料気体として、乾燥窒素ガスを水および酢酸0.3%水溶液へ順次導入し、バブリングして得たガスを用いた。
注入工程において試料気体を容器101へ注入する前には、容器101の内部には乾燥窒素ガスを満たしておいた。
また、注入工程において余剰な試料気体は排出口103を通じて排出した。
次に、第一冷却工程として、熱電素子により霧化電極部104を冷却した。霧化電極部104の温度は動作前に26℃であったが、30秒後には15℃まで低下した。なお、霧化電極部104の温度測定はKタイプの熱電対を用いて行った。霧化電極部104の温度は水の結露点以下に冷却されることが好ましい。
そして、第一凝縮工程において、霧化電極部104の外周面には熱電素子動作開始5秒後に第一凝縮液204が形成され始めた。第一凝縮液204の形成初期段階では直径10μm以下の液滴であるが、時間の経過とともに液滴は成長し、熱電素子動作開始10秒後には十分な液量を得た。なお、霧化電極部104における第一凝縮液204の形成はマイクロスコープ(KEYENCE社製、VH−6300)を用いて観察した。
帯電微粒子化工程を開始する前に、注入口102および排出口103に設けられている、バルブ109aおよび109bを閉じた。これにより容器101への試料気体203の注入工程を終了した。
次に、帯電微粒子化工程として、第一凝縮液204を多数の帯電微粒子205にした。帯電微粒子化205は静電噴霧で行なった。なお、前述の実施の形態1でも述べたように、静電噴霧の初期段階で、コロナ放電が発生するが、本発明の帯電微粒子化工程にはこれも含めても良い。
帯電微粒子205の安定性の観点から、帯電微粒子205の直径は2nm以上30nm以下であることが好ましい。帯電微粒子205は1個ずつ単独で存在することが好ましいが、複数個が結合していても良い。
なお、帯電微粒子化工程において、霧化電極部104と対向電極部106の間にはDC5kVを印加した。この時、霧化電極部104を陰極、対向電極部106を陽極とした。
帯電微粒子化工程では、霧化電極部104の先端にテーラーコーンと呼ばれる円錐形の水柱が形成され、その水柱の先端から化学物質を含む多数の帯電微粒子が放出された。
なお、帯電微粒子化工程では、霧化電極部104と対向電極部106の間に流れる電流を計測した。過剰な電流が流れた場合には、霧化電極部104と対向電極部106との間の電圧印加を中断または印加電圧を減少させた。
次に、電圧印加工程では、対向電極部106と収集電極部107の間にDC500Vを印加した。電圧印加工程により、帯電微粒子205を収集電極部107の先端近傍へ静電気力により収集することができる。なお本実施例では、対向電極部106に対して収集電極部107に正電圧を印加した。対向電極部106と収集電極部107の間に印加する電圧の大きさは、0V以上5kV以下が好ましく、0V以上500V以下がより好ましい。なお、帯電微粒子205が負に帯電している場合、収集電極部107へ正電圧を印加することが最も好ましい。
次に、収集電極部107を第二冷却部108で冷却した。収集電極部107の温度は動作前に26℃であったが、30秒後には15℃まで低下した。なお、収集電極部107の温度測定はKタイプの熱電対を用いて行った。また、収集電極部107の温度は水の結露点以下に冷却されることが好ましい。
第二凝縮工程において、収集電極部107の先端近傍へ帯電微粒子205を凝縮させ、第二凝縮液206を得た。なお、収集電極部107の温度は第二凝縮液206の生成量に応じて適宜制御することが好ましい。また帯電微粒子205の寿命の観点から、遅くとも帯電微粒子工程開始10分後までに第二凝縮工程を開始することが好ましい。
第二凝縮工程の後、収集電極部107の先端近傍には第二凝縮液206が約1μL蓄積できた。
(実施例3)
実施例1と同じ構成要素について説明を省略し、静電噴霧装置の操作手順のみを説明する。
注入工程では、試料気体を注入口102から容器101へ注入した。本実施例において容器101の容積は6.5mLであって、500mL/分の流速で試料気体を注入した。
なお、本実施例においては、試料気体として、乾燥窒素ガスを水および酢酸0.3%水溶液へ順次導入し、バブリングして得たガスを用いた。
注入工程において試料気体を容器101へ注入する前には、容器101の内部には乾燥窒素ガスを満たしておいた。
また、注入工程において余剰な試料気体は排出口103を通じて排出した。
第一冷却工程を開始する前に、注入口102および排出口103のそれぞれに設けられている、バルブ109aおよび109bを閉じた。これにより容器101への試料気体203の注入工程を終了した。
次に、第一冷却工程として、熱電素子により霧化電極部104を冷却した。霧化電極部104の温度は動作前に26℃であったが、30秒後には15℃まで低下した。なお、霧化電極部104の温度測定はKタイプの熱電対を用いて行った。霧化電極部104の温度は水の結露点以下に冷却されることが好ましい。
そして、第一凝縮工程において、霧化電極部104の外周面には熱電素子動作開始5秒後に第一凝縮液204が形成され始めた。第一凝縮液204の形成初期段階では直径10μm以下の液滴であるが、時間の経過とともに液滴は成長し、熱電素子動作開始10秒後には十分な液量を得た。なお、霧化電極部104における第一凝縮液204の形成はマイクロスコープ(KEYENCE社製、VH−6300)を用いて観察した。
次に、帯電微粒子化工程として、第一凝縮液204を多数の帯電微粒子205にした。帯電微粒子化205は静電噴霧で行なった。なお、前述の実施の形態1でも述べたように、静電噴霧の初期段階で、コロナ放電が発生するが、本発明の帯電微粒子化工程にはこれも含めても良い。
帯電微粒子205の安定性の観点から、帯電微粒子205の直径は2nm以上30nm以下であることが好ましい。帯電微粒子205は1個ずつ単独で存在することが好ましいが、複数個が結合していても良い。
なお、帯電微粒子化工程において、霧化電極部104と対向電極部106の間にはDC5kVを印加した。この時、霧化電極部104を陰極、対向電極部106を陽極とした。
帯電微粒子化工程では、霧化電極部104の先端にテーラーコーンと呼ばれる円錐形の水柱が形成され、その水柱の先端から化学物質を含む多数の帯電微粒子が放出された。
なお、帯電微粒子化工程では、霧化電極部104と対向電極部106の間に流れる電流を計測した。過剰な電流が流れた場合には、霧化電極部104と対向電極部106との間の電圧印加を中断または印加電圧を減少させた。
次に、電圧印加工程では、対向電極部106と収集電極部107の間にDC500Vを印加した。電圧印加工程により、帯電微粒子205を収集電極部107の先端近傍へ静電気力により収集することができる。なお本実施例では、対向電極部106に対して収集電極部107に正電圧を印加した。対向電極106と収集電極部107の間に印加する電圧の大きさは、0V以上5kV以下が好ましく、0V以上500V以下がより好ましい。なお、帯電微粒子205が負に帯電している場合、収集電極部107へ正電圧を印加することが最も好ましい。
次に、収集電極部107を第二冷却部108で冷却した。収集電極部107の温度は動作前に26℃であったが、30秒後には15℃まで低下した。なお、収集電極部107の温度測定はKタイプの熱電対を用いて行った。また、収集電極部107の温度は水の結露点以下に冷却されることが好ましい。
第二凝縮工程において、収集電極部107の先端近傍へ帯電微粒子205を凝縮させ、第二凝縮液206を得た。なお、収集電極部107の温度は第二凝縮液206の生成量に応じて適宜制御することが好ましい。また帯電微粒子205の寿命の観点から、遅くとも帯電微粒子工程開始10分後までに第二凝縮工程を開始することが好ましい。
第二凝縮工程の後、収集電極部107の先端近傍には第二凝縮液206が約1μL蓄積できた。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。