JP2011500559A - イチイ属の形成層または前形成層由来植物幹細胞株を含む抗癌組成物 - Google Patents

イチイ属の形成層または前形成層由来植物幹細胞株を含む抗癌組成物 Download PDF

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Abstract

本発明はイチイ属の形成層または前形成層由来細胞株(cell line)、その破砕物、その抽出物またはその培養液を有効性分として含む癌の予防または治療用組成物に関する。本発明による細胞株、その破砕物、その抽出物またはその培養液は既存の薬物治療剤の副作用を最小化して、人体に安全であり、かつ癌の成長に直接係わって癌の死滅を誘導し、癌発生時に現れる新生血管形成を抑制させる抗癌活性を示すため、癌の予防、治療及び症状緩和に有用である。

Description

本発明はイチイ属の形成層、または前形成層由来細胞株(cell line)、その破砕物、その抽出物またはその培養液を有効性分として含む癌の予防または治療用組成物に関する。
アポトーシス(apoptosis)は、細胞内部において予定された信号に従ってあらゆる遺伝子及び蛋白質の発現と活性が調節されて起こる能動的な死であり、その過程を通して生成されたアポトソーム(apoptosome)は周辺の細胞やマクロファージ等の食細胞作用によって除去されることによって、炎症を誘発しない。このようなアポトーシスは生命体の多様な正常生理的現象において頻繁に観察されるが、多くの疾患の発病過程にも深く係わっていると知られている。即ち、異常アポトーシスの発生は脳神経退行性疾患(neurogegenerative disorder)、免疫系異常(immune disorder)、そして心臓血管系疾患(cardiovascular disease)等の原因となる可能性があり、細胞死滅の非正常的な抑制は癌の原因になる。
アポトーシスが正常な調節過程から抜け出して、非正常的に生じたり抑制されて現れる疾病をより詳しく調べると、p53、p16及びBcl−2等の遺伝子の異常発現によって誘導される癌、HIV ヘルペス及びインフルエンザ(influenza)ウィルスによる感染症、I型糖尿病(Type 1 diabetes)、リューマチ関節炎(Rheumatoid arthritis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)と筋無力症(Myasthenia gravis)等のような自己免疫疾患がある。個体を構成する各細胞のアポトーシスは、遺伝的に損傷を受けた細胞や分化刺激剤によって不適切な分化の誘導による腫瘍の進行を防ぐために、これらの異常細胞を個体から除去するための手段、即ち回復不可能な遺伝的傷を持った細胞を個体から除去するための一般的な手段である。この概念は一般的に使用される抗癌剤が癌細胞の増殖抑制と係わるアポトーシス過程を介して、癌細胞の死滅を誘導するという事実によってサポートされている(Barry, M.A. et al., Biochem Pharmacol., 40:2353, 1990; Hickman, J.A., Cancer Metastasis Rev., 11:121, 1992)。
従って、アポトーシスのプロセスの攪乱は、損傷した細胞、及び損傷が始まった細胞の生存とそれらの細胞の成長を誘導するため、アポトーシスの抑制は発癌過程において重要な役割を果たす。それと共に、癌予防効果がある物質はこのような異常細胞の死滅を誘導し、これらによるアポトーシスの誘発は少なくともこれらの癌予防活性と係わっていると報告されて来た(Fesus, L., J. Cell Biochem., 22:151, 1995; Reddy, B.S., Cancer Res., 57:420, 1997)。
一方、癌の発生の機序や治療に対する研究のために莫大な研究費を投資してきたが、いまだに癌は難治性疾病として残り、多くの治療法は副作用を招くことが明らかになっている(Goodman et al., Cancer Res., 9:2295, 1987)。従って、癌を抑制する新しい薬品研究及び製剤開発に多くの努力を注いでおり、特に副作用の少ない天然物における抗癌物質の開発に関する研究に関心が集中している。
本発明者のうちの一部は脱分化による変異の問題を解決して安定的に増殖が可能であり遺伝的安全性が高い形成層または前形成層由来細胞株の提供方法を開発して、前記細胞株のうちのイチイ属由来細胞株を培養する場合パクリタキセル(paclitaxel)が高収率で得られることを確認した後、国際特許出願(PCT/KR2006/001544号)した経緯があるが、イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株自体の抗癌効果はまだ報告されていない状態である。
そこで、本発明者は既存の抗癌剤の副作用を最小化して抗癌活性が優秀な天然物由来抗癌組成物を開発しようと鋭意努力した結果、イチイ属の形成層または前形成層から誘導された同質な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液が癌細胞死滅活性を示すことを確認して、本発明の完成に至った。
国際特許出願PCT/KR2006/001544号 韓国登録特許第0533120号
本発明の目的は既存の抗癌剤の副作用を最小化した癌の予防及び治療活性を示す天然物由来組成物を提供することにある。
課題を達成するための手段
前記目的を達成するために、本発明はイチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を持つ細胞株(cell line)、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を含む癌の予防または治療用医薬組成物を提供する:
(a)多数個の液泡(vacuole)を持つ形態学的特徴を示し;
(b)先天的未分化状態(innately undifferentiated)であり;及び
(c)同質な細胞株(homogeneous cell line)である。
本発明はさらに、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を含む癌の予防または改善用機能性食品を提供する。
本発明はまたさらに、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つの癌の予防または治療用用途を提供する。
本発明はまたさらに、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を利用することを特徴とする癌の予防または治療方法を提供する。
本発明の他の特徴及び具現例は次の詳細な説明及び添付された特許請求範囲からより一層明らかになる。
本発明による細胞株の誘導過程、前形成層及び形成層の層分離後の様子及び脱分化された細胞とイチイ属の前形成層由来細胞との間の比較を示す写真である。 皮膚線維芽細胞(HDF)にHで処理して老化を誘導する際に、本発明による細胞株抽出物の抗酸化活性を示すROS量を比較したグラフとDCFH蛍光撮影写真である(p−WE:前形成層蒸留水抽出物、C−WE:形成層蒸留水抽出物)。 本発明による細胞株を投与してから2週間後の対照群と細胞株投与群のマウスの癌組織の大きさを外観的に比較した写真である。 本発明による細胞株を投与してから3週間の対照群及び細胞株投与群の癌組織の体積を示すグラフである。 本発明による細胞株を投与してから3週間後の対照群と細胞株投与群のマウスから癌組織を摘出して撮影した写真である。 本発明による細胞株を投与してから3週間後、癌組織を摘出して内部組織を撮影した写真である。 本発明による細胞株抽出物を各癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に大腸癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に肺癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に前立腺癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に骨癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に口腔癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に皮膚癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に白血病細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に子宮癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に皮膚癌(ヒト)細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に膵臓癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に乳癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に胃癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に腎臓癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のメタノール抽出物を濃度毎に肝臓癌細胞株に処理後、細胞死滅の程度を示した写真である。 本発明による細胞株のパクリタキセル含有有無の分析結果を示すグラフである。
他に定義されない限り、本明細書において使われた全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野において熟練した専門家によって、通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書において使われた命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常使われている。
本発明の詳細な説明などに使われる主要用語の正義は次のようになる。
本願において「形成層(cambium)」とは、植物の幹と根を太くして、植物が体積生長できるようにする組織である。形成層は細胞分裂が最も活発に起きる分裂組織であり、植物組織培養の切片体として使用時、細胞の高速かつ大量生産が可能であると報告されている(韓国登録特許第0533120号)。
本願において「前形成層(procambium)」とは、始原細胞群から派生した1次分裂組織をいい、1次分裂組織の形成層は中間に永久組織の介入なしにこれから由来する。
本願において「破砕物」とは、細胞を、界面活性剤(detergent)などを利用した化学的方法または物理的方法などで破砕して得た細胞溶解物を意味し、細胞株の「抽出物」とは細胞を溶媒に溶かして、分離した物質であり、蒸留または蒸発を利用して濃縮される。
本願において「先天的未分化状態(innately undifferentiated)」とは、脱分化過程を経て未分化状態で存在するのではない、本来から分化前状態を維持することをいう。
本発明は一観点において、イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を有効性分として含む癌の予防または治療用組成物に関する。
本発明によるイチイ属の形成層または前形成層由来細胞株は(a)多数個の液泡(vacuole)を持つ形態学的特徴を示し;(b)先天的未分化状態(innately undifferentiated)であり;及び(c)同質な細胞株(homogeneous cell line)であることを特徴とする。また、さらに(a)懸濁培養時に単細胞状態で存在し;(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株と比べて、生長速度が速く、安定するように培養され;及び(c)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株と比べて、生物反応器でおいてシェアストレス(shear stress)に対して低い感受性を有することを特徴とする。
本発明において、前記細胞株は以下の工程を含む分離方法によって取得されたことを特徴とする:
(a)イチイ属の形成層または前形成層含有組織を取得する工程;
(b)前記取得された形成層または前形成層含有組織を培養して、形成層または前形成層から増殖する形成層または前形成層の層(cambium or procambium layer)と、前記形成層または前形成層以外の部分から無定形に増殖するカルス層を誘導する工程;及び
(c)前記形成層または前形成層の層(cambium or procambium layer)から細胞株(cell line)を回収する工程。
この時、前記工程(c)は3〜5重量%の原糖(raw sugar)または砂糖;及びジャスモン酸メチル(methyl jasmonate)、真菌類抽出物、細菌類抽出物、酵母(yeast)抽出物、キトサン、グルコマンナン(glucomannan)、グルカン(glucan)、フェニルアラニン(phenylalanine)、安息香酸(benzoic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、アラキドン酸(arachidonic acid)、STS、モバロナロネイトN−ベンゾリグリシン(mevalonalonate N−benzolyglycine)、ABA、SNP、IPP、BHT、CCC、エセフォン(ethephon)、馬尿酸(hippuric acid)、硝酸二アンモニウムセリウム(ammonium ceric nitrate)、AgNO、硫酸バナジル(vanadyl sulfate)、p−アミノ安息香酸(p−aminobenzoic acid)、ブラシノステロイド(brassinosteroids)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、及び酢酸ナトリウム(sodium acetate)からなる群から選択される物質;を含む培地で増殖させた後、前記増殖した細胞株を回収するのが望ましい。この時、前記ジャスモン酸メチルは110〜100μMの含有量で含むのが望ましい。
本発明において使用した培地は、通常の植物組織培養のための培地であり、例えば、N6培地、SH培地、MS培地、AA培地、LS培地、B5培地、WPM培地、LP培地、White培地、GD培地、DKW培地、DCR培地などがあるが、これに限定されるのではない。
本発明において、前記抽出物は、蒸留水、アルコール、アセトン、DMSO(Dimethyl Sulfoxide)及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を利用して抽出されることを特徴としている。
本発明の一実施例においては本発明によるイチイ属の形成層由来細胞株及び前形成層由来細胞株がHによって誘導される活性酸素種を抑制する効果があることを確認して、抗酸化効果があることを確認した。体内において生成された酸素種(ROS)は、細胞内DNA、蛋白質及び脂質など、細胞を構成する分子と結合して、細胞突然変異を起こして細胞の正常機能を阻害することによって癌組織形成に係わっているため、癌を予防する効果があることが確認できた。
本発明の他の実施例においては、本発明によるイチイ属の形成層由来細胞株及び前形成層由来細胞株をマウスに投与した後、癌組織を摘出して観察した結果、本発明によるイチイ属の形成層由来細胞株及び前形成層由来細胞株が癌組織の成長を阻害して抗癌機序の一環として血管生成を抑制させ、免疫細胞の癌組織内の流入を高めることを確認した。
本発明の他の実施例においては、さらに、大腸癌、口腔上皮癌、肺癌、前立腺癌、骨癌、白血病、子宮癌、皮膚癌、膵臓癌、乳癌、胃癌、腎臓癌、及び肝臓癌の細胞株に対して各々前記細胞株の蒸留水抽出物、メタノール抽出物及びアセトン抽出物を処理して、癌細胞死滅効果を確認した。即ち、本発明による細胞株抽出物はこれに限定されないが、大腸癌、口腔上皮癌、肺癌、前立腺癌、骨癌、白血病、子宮癌、皮膚癌、膵臓癌、乳癌、胃癌、腎臓癌、及び肝臓癌の治療及び予防に効果的であることが明らかになった。
従って、本発明においては前記細胞株破砕物及びその培養液を含む組成物が癌の予防及び治療効果を示すことを提示する具体的な実施例がないとしても、前記のように調べた通り前記細胞株及びその抽出物が癌の予防及び治療に活性を持つのを確認しており、本発明による細胞株破砕物及びその培養液を含む組成物の場合においても癌の予防及び治療効果を示せるということは当業界において通常の知識を有する者には明らかである。
本発明の他の実施例においてはさらに、本発明の細胞株のパクリタキセル含有の有無を測定した。本発明による細胞株を、エリシターを含む培地で培養した場合、高い濃度でパクリタキセルを生産することができるが、パクリタキセル生産が可能な条件で培養しないかまたは生産しないように特定条件で処理した本発明による細胞株は、パクリタキセルを含むか否かを実験してLC dataを分析した結果、パクリタキセルを含まないことが明らかになり、これはイチイ属から生産されると分かったパクリタキセルの作用ではない本細胞株自体の抗癌活性特性であると思われる。また、本発明による細胞株は経口投与時にも効果があるのが特徴として現れるため、経口投与時効果がなくて、注射剤で使用されているパクリタキセルの作用と認められない。
本発明による細胞株、その破砕物、その抽出物、及びその培養液のいずれか一つ以上を含む癌の予防または治療用組成物は、前記細胞株、その破砕物、その抽出物、及びその培養液のいずれか一つ以上を各々単独で含むか一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含んで医薬組成物として提供可能であり、前記細胞株または細胞株の破砕物、抽出物または培養液は、疾患及びその重症の程度、患者の年令、体重、健康状態、性別、投与経路、及び治療期間などにより適切な薬学的に有効量で医薬組成物に含まれることができる。
前記において「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容されヒトに投与される時、通常胃腸障害、目まいのようなアレルギー反応またはこれと類似する反応を起こさない組成物をいう。前記担体、賦形剤、及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポルビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
前記医薬組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、及び防腐剤などをさらに含んでもよい。また、本発明の医薬組成物は哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出を提供することができるように、当業界に公知の方法を用いて、剤形化される。剤形は粉末、顆粒、錠剤、乳剤、シロップ、エアゾール、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であってもよい。
本発明はまた他の観点において、前記イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株、その破砕物、その抽出物、及びその培養液のいずれか一つ以上を含む癌の予防または改善用機能性食品に関する。
本願において「機能性食品」とは、一般食品に本発明による細胞株、その細胞株の破砕物、抽出物または培養液を添加することによって、機能性の向上した食品を意味する。例えば、本発明の細胞株または細胞株抽出物の抗癌効果を利用して、癌の予防及び改善用機能性食品を製造することができる。
本発明の機能性食品は多様な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤、ペプチド酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含んでもよい。
以下、実施例を介して本発明をより一層詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するものであって、下記実施例は多様な他の形態に変形されるため、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないのは、当業界において通常の知識を有する者には明白である。
特に、下記実施例においてはイチイ属の形成層または前形成層由来細胞株及びその抽出物の癌の予防及び抑制効果を確認したが、その破砕物またはその培養液を使用しても同様の結果が得られるということは当業界において通常知識を有する者には明白である。
[実施例1]イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株の製造
1−1:植物材料の準備
イチイ属の一種(Taxus spp.)の小枝及び幹を各々採取した後、直ちに抗酸化剤100mg/L−アスコルビン酸(L−ascorbic acid、DUCHEFA、The Netherlands)溶液に沈積して輸送・保管した。
その後、1%ベノミル(benomyl、Dongbu Hannong Chemical、Korea)、1%ダコニール(daconil、Dongbu Hannong Chemical、Korea)、1%ストレプトマイシン(sterptomycin sulphate、DUCHEFA、The Netherlands)、0.1%セフォタキシン(cefotaxime sodium DUCHEFA、The Netherlands)の混合溶液に24時間前処理後、フェノール化合物(phenolic compound)と残存化学物質を取り除くために水道水(tap water)で30分間洗浄した。そして、70%エタノール(ethanol、DC Chemical、Korea)に1分、30%過酸化水素(hydrogen peroxide、LG Chemical、Korea)に15分、1%CLOROX溶液に15分、及び3%CLOROX溶液に5分の表面殺菌後、3〜4回洗浄した。
1−2:小枝及び幹から前形成層及び形成層組織分離
前記殺菌過程を経た小枝及び幹の外側組織を縦方向に引っ張ると簡単に剥がれた。剥がれた組織は木部、前形成層(小枝)または形成層(幹)、師部、皮層、表皮で構成されるが、剥がれた組織の最内側組織、即ち、木部が培地面に当たるように培養した。
1−3:イチイ属の前形成層及び形成層由来細胞株誘導工程
初期培養4〜7日目に前形成層及び形成層から細胞分裂が肉眼上で観察され、培養15日目以後に師部、皮層及び表皮で形成された層から脱分化による無定形のカルスが誘導され始めた。しかし、培養期間中ずっと木部は細胞分裂が起きず、形成層の層(layer)との分離が自然に行われた。培養30日経過後、形成層の層(layer)と師部を含んだ上層、即ち無定形のカルス層に分離し始め(図1(a))、2層が自然に分離する時まで待って完全分離されると各々異なるシャーレ(Petri dish)に分離培養した(図1(b))。図1(a)において上部は師部・皮層・表皮を含む組織を、中間部は形成層を、底部は木部を各々示し、矢印は形成層の層と師部・皮層・表皮を含む組織間の分離を示す。また、図1(b)においてAは細胞間の分裂における差により不規則に増殖する師部・皮層・表皮を含む組織由来細胞株を、Bは細胞間の分裂が均一であって、一定の板状で増殖する形成層由来細胞株を、Cは細胞分裂が起きない木部を示す。また、図1(c)は前形成層由来細胞株を誘導する様子を示す。図1(c)においてAは培養30日後小枝を調べたものであり、前形成層(bottom)が1次師部、皮層、表皮で構成された組織から由来したカルス細胞と分離するのを示す写真で、Bは培養35日後の写真であり誘導された前形成層の層を分離して培養した様子を示し、Cは培養40日後の写真であり前形成層の層を分離した後1次師部、皮層、表皮から構成された組織のカルスが増殖する様子を示す。
前記のように分離した後、生長率が良い白くてやわらかくなった部分を誘導培地と同じ新しい培地に21日目毎に継代した。
一方、前形成層及び形成層由来細胞株のみを誘導するために使用した培地を表1に示す。
培地に生長調節剤としてオーキシン(Auxin)を1〜3mg/Lの濃度で添加した。培養は25±1℃に調節された暗室で実施された。
一方、比較のため、イチイ属の胚(embryo)と葉(needle)切片体を消毒した後、前記表1の培地で培養した。その結果、胚(embryo)と葉(needle)切片体は脱分化によってカルスが形成することを観察できた。胚及び葉切片体から誘導されたカルスは師部を含む組織と同様に多くの細胞間の分裂速度の差によって不定形になり、生長率が不安定で、褐変し易い傾向を示す。褐変及び凝集した胚及び葉切片体から誘導されたカルスは自身が分泌するフェノール化合物によって生長が鈍くなって最後には壊死した。即ち、6ケ月後から胚(embryo)と葉(needle)から誘導されたカルスは維持及び培養が難しかった。それに対して、前形成層及び形成層由来細胞は20ヶ月以上の長期培養時において細胞の生長率、生長パターン、及び凝集度が変わることなく安定的に維持されて、大量培養が可能であった。
1−4:分離した細胞株の増殖工程及び特性観察
前記前形成層及び形成層由来細胞株を下記表2の液状培地が含まれたフラスコに入れて、暗条件で25±1℃で100rpmの回転式攪拌機(shaker)で培養した。継代培養周期は2週間に固定することによって培養細胞が常に対数生長期状態で高い活力を維持できるようにした。
一方、胚及び葉由来カルス(callus)も前記表2の培地2で培養して、本発明による前形成層及び形成層由来細胞株と比較した。
細胞凝集度(biological microscope CX31、Olympus、Japan)を調べたところ、表3と同様に本発明による細胞株は懸濁培養時90%以上の単細胞状態で存在することが確認でき、図1(d)に示すように、多数個の液泡(vacuole)を持つ形態学的特徴を示し、未分化状態であることが確認できた。図1(d)のイチイ属の前形成層由来細胞において矢印で表示された部分が液泡を示す。
一方、大量培養の可能性を調べるために、3Lの内容積を有する空気浮揚式生物反応器(airlift bioreactor、ソンウォンサイテク、Korea)で胚(embryo)・葉(needle)由来カルスと前形成層及び形成層由来細胞を培養した。培地は表2の液状培地を使用し、暗条件で25±1℃で一定に維持した。
その結果、表4に示されたように、本発明によるイチイ属の前形成層及び形成層由来細胞培養物の倍加時間は4〜5日であり、フラスコと反応器との間に差が生じないか却って短縮されたことが示されたのに対して、異質な細胞株の胚(embryo)・葉(needles)由来培養物の倍加時間(doubling time)はフラスコ12日に対して反応器(reactor)では21日と長くなったことが分かった。即ち、フラスコ培養時に本発明による細胞株が2〜3倍程度の高い増殖率を示すことを確認し、大量反応器においては本発明による細胞株が形成層または前形成層以外の組織由来細胞株と比べて、5〜6倍の高い増殖率を示すことを確認した。これは他組織由来の異質な細胞株は反応器内における生長輪生成と培養中の植物培養体凝集性と細胞壁が固く、剪斷に対する感受性で細胞生存率(cell viability)が急激に減少したのが原因であると判断された。
本発明によるイチイ属の前形成層及び形成層由来細胞株は生物反応器内の生長輪面積を非常に小さく形成して、培養器に簡単な刺激を与えて培地を動かすと内壁のリング(ring)が簡単に除去された。また凝集が小さく、多くの液泡(vacuole)を持っていて、剪断に対する感受性が弱く、細胞生存率(cell viability)の低下をもたらさないことが明らかになった。即ち、本発明による細胞株は大量培養のための生物反応器で攪拌作用に伴うシェアストレスに対し低い感受性を有するため、生物反応器内で急速かつ大量生長が可能であることを確認した。この時、フラスコ培養時の増殖率差と大量培養器における増殖率差を考慮すると、本発明によるイチイ属の前形成層または形成層由来細胞株がイチイ属の前形成層または形成層以外の組織由来細胞株と比べて、シェアストレスに対し2〜3倍の低い感受性を有することが分かった。
1−5:糖及びジャスモン酸メチルの処理
前記実施例1−4のように14日間懸濁培養した細胞株を滅菌水に原糖3〜5重量%(g/L)及びジャスモン酸メチル100μMを添加した培地で10日間暗培養した後、細胞を回収して次の実験を行った。
[実施例2]イチイ属の前形成層または形成層由来細胞株の抽出物製造
実施例1において製造された細胞株から次の通り工程毎に有効物質を抽出した。
(i)培養液を取り除いた前記細胞株500gに500mLの蒸留水を加えて、50℃で6時間攪拌させながら溶解させた。
(ii)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離させ、上層液を取ることによって蒸留水可溶性物質を得た。
(iii)前記蒸留水可溶性物質を得た後、残った蒸留水不溶性物質に500mLのメタノール(methanol)を添加して、室温で6時間攪拌して溶解させた。
(iv)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離して、上層液を取ることによってメタノール可溶性物質を得た。
(v)前記メタノール可溶性物質を得た後、残ったメタノール不溶性物質に500mLのアセトン(acetone)を添加して、室温で6時間攪拌して溶解させた。
(vi)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離して、上層液を取ることによってアセトン可溶性物質を得た。
(vii)前記で得た蒸留水、メタノール、アセトン可溶性物質を、回転真空濃縮機を利用して濃縮した。
(viii)濃縮試料を、凍結乾燥器を利用して乾燥させて、細胞培養液、メタノール、アセトンに溶かして、蒸留水抽出物、メタノール抽出物、アセトン抽出物を得た。
[実施例3]イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株抽出物の抗酸化活性測定
抗酸化効果と癌の予防との相関関係が知られており、本発明による細胞株が癌を予防する効果があるか調べるために次の実験を行った。
3−1:皮膚線維芽(HDF、Human diploid fibroblast)細胞培養
HDF細胞は胎児の陰茎包皮から分離培養した。細胞培養液はDMEM(Invitroge Gibco life tech. Vienna、Austriea)培地に56℃で30分間加熱して、非動化した牛胎児血清(FBS、Hyclone、Logan、Utah、USA)を10%、ペニシリン(penicillin)(100unit/mL)とストレプトマイシン(streptomycin)(100μg/mL)及び300μg/mL−グルタミンを添加して調製した。細胞は前記培養液を使用して、37℃、95%湿度、5%COインキュベーターで培養し、通常細胞が互いに融合する直前である3〜4日間隔で継代培養し、継代培養により20継代以下の若い(Young)細胞、21−49継代のmiddle細胞と50継代系以上の老化細胞とに分けた。
3−2:H によって誘導される活性酸素種測定
前記皮膚線維芽細胞(HDF cell)に実施例2で取得した抽出物中蒸留水抽出物を利用して、活性酸素種を誘導するHを処理した時、活性酸素種を阻害するか否かを確認するために、活性酸素種(ROS:reactive oxygen species)を測定する実験を行った。
細胞内活性酸素の測定は活性酸素に敏感なDCFDA(2'、7'−dichlorofluorescin diacetate、Fluka Cat 35847 Molecular Probes、USA)蛍光dyeを使用してFacscan analysisを利用して分析した。各々のPDによるHDF細胞を100mmプレートに育てた後、5μM濃度のDCFDAを暗所の状態で処理して、30分間37℃で反応させた後、PBSで2回洗浄後、トリプシン−EDTA処理で細胞を回収した。以後900rpmで4分間遠心分離して、細胞を集めた後各々細胞10,000個当り活性酸素を測定した(図2(a)、(b))。
5×10の細胞を6ウェルプレートに分株後、各実験によりHを単独で処理し、実施例2で取得した抽出物を共に処理した。実施例2において取得した抽出物中蒸留水抽出物を10〜100μg/mL処理したが、望ましくは蒸留水抽出物50μg/mL処理した後、HBSS(Hank’s balanced salt solution)で2〜3回洗浄して、再度HBSSに30分程度安定化させた。10μMのDCFDA(Molecular Probes USA)で処理後、暗所の状態で、37℃で1時間染色し、HBSSで3回洗浄後、蛍光顕微鏡で観察した(図2(c))。
HDF細胞にH200μMと実施例2で取得した細胞株の蒸留水抽出物を10〜100μg/mLで処理したが、望ましくは50μg/mLを処理して細胞の形態の変化程度を観察した。
を細胞に処理して24時間経過すると、HDF細胞は酸化的ストレスによって、活性酸素(ROS)を発生するようになる。非蛍光性であるDCFDAは活性酸素によって酸化されて、強い蛍光を示すDFCになるため、これを測定することができる。本実施例においては、測定のためにFACS CAlibur(Becton Dickinson Analytic Flow Cytometer、USA)を使用した。
その結果、図2に示したように、イチイ属の形成層由来細胞株抽出物及びイチイ属の前形成層由来細胞株抽出物は共に活性酸素種(ROS)の生成が抑制されることが示された(P−WE:前形成層蒸留水抽出物、C−WE:形成層蒸留水抽出物)。即ち、二つの細胞株抽出物は共に活性酸素種の生成を抑制することを確認することができた。
優れた抗酸化力を有する物質は、細胞酸化による細胞損傷を抑制する有効物質であり、体内において生成された酸素種(ROS)は細胞内DNA、蛋白質及び脂質など細胞を構成する分子と結合して、細胞突然変異を起こして細胞に正常な機能を阻害することによって癌組織形成に係わるようになる。
従って、前記実験において本発明によるイチイ属の形成層由来細胞株及び前形成層由来細胞株が、抗酸化効果があることを確認し、本発明によるイチイ属の形成層由来細胞株及び前形成層由来細胞株が癌を予防する効果があることが示された。
[実施例4]イチイ属の形成層及び前形成層から誘導される細胞株の投与に伴う抗癌活性効果
(1)実験にはDamool Science(大田市儒城区老隠洞)から購入したBalb/Cマウスを一般的な動物飼育規定に従って飼育した。通常6周齢のマウスを購入して、5日ほど適応させた後、1×10個のCT−26大腸癌細胞株(韓国細胞株銀行 KCLB80009)を、背中の右側部分の皮下に注入した。
癌細胞導入して3日前後に、殆どのマウスには粟の大きさの癌細胞の成長が観察されて、従って3日目から実施例1から分離した形成層由来細胞株と前形成層由来細胞株を各々自由に給餌させた。対照群は通常の栄養分が含まれていた飼料を給餌させて、前記細胞株投与は同じ飼料を細かく砕いた後、1:1の割合で前記細胞株を添加して、同様形の飼料に作った後、自由給餌させた。この時、細胞株の1日平均投与量はマウス1匹当り細胞生中量(fresh weight)2〜3gであった。その他全ての仕様条件は同様にし、3週間後の癌細胞の大きさを観察した。実験には対照群と前記細胞株給与群を15匹ずつ(形成層由来細胞株7匹、前形成層由来細胞株8匹)にし、この実験を3回行った。
(2)細胞株投与後3週間における癌細胞の大きさ観察結果
本発明による細胞株投与後2週経過時点においてモデルマウスにおける癌組織の大きさを観察した結果、図3に示したように、対照群と比べて、形成層由来細胞株及び前形成層由来細胞株を投与した細胞株投与群において癌組織の成長が阻害されるのを確認することができた。
また、図4に示したように、細胞株投与後3週経過した時点において細胞株投与群における癌組織の体積は100mm程度であるが、対照群は細胞株投与群の6倍以上の体積を有することが示された。それと共に図5に示したように、癌組織を摘出して撮影した結果、外見的にその体積に大きい差があることが分かった。摘出された癌組織の重さを測定した結果、対照群の平均重さは2.16gであるのに対して、細胞株投与群においては癌組織の平均重さが0.21gであって約1/10であると分かった。これにより癌細胞の全般的な成長を阻害することを確認でき、癌の予防及び治療効果があることが分かった。
(3)一方、前記対照群と細胞株投与群において癌組織摘出後、倍率を変えて内部組織を観察して、その結果は図6に示した。
観察結果、対照群においては全般的にアポトーシス(apoptosis)と呼ばれる細胞死滅を示す部分がなく、全領域において組織が緻密で分裂中の細胞(図6(a)のb部分)が多い特徴を示した。このような分裂状態の細胞が多いことは対照群においては癌組織が成長し続けて膨張していることを意味する。
しかし、細胞株投与群においては組織が緻密でなく、アポトーシスボディ(apoptosis body、図6(b)のc部分)と呼ばれる核が凝縮されたり多くの組織に分裂している様子が観察される細胞が殆どであった。このようなアポトーシスボディ(aoptosis body)は対照群においては殆ど現れない。
その他に非常に特徴的な現象を示すのは赤血球の染色で(図6(a)のa部分)、これは組織内の血管を断片的に示すもので、対照群においては多くの血管が見られるが細胞株投与群においては全く見られない。また、細胞株投与群の場合、免疫細胞と予測される丸い核が見られる細胞が相当部分観察されており(図6(b)のd部分)、これは対照群においては殆ど見られなかった。
そこで、本発明のイチイ属の形成層または前形成層から誘導される細胞株は、癌の成長に直接係わって、細胞死滅を誘導することによって癌組織の全般的な成長を制御させて癌を予防する効果及び治療する効果があることが確認できた。また、癌発生時に現れる新生血管形成を抑制させ、免疫細胞の癌組織内の流入を高めて、強い免疫作用を誘導することによって強い抗癌活性を示すことが分かる。
[実施例5]イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株抽出物の製造及び癌細胞死滅活性
(1)癌細胞培養
− ヒト癌細胞株:口腔上皮癌細胞株(KB cell、韓国細胞株銀行 KCLB10017)、肺癌細胞株(HCC95、韓国細胞株銀行 KCLB70095)、前立腺癌細胞株(PC−3、韓国細胞株銀行 KCLB21435)、骨癌細胞株(U2−OS、韓国細胞株銀行 KCLB30096)、白血病細胞株(K−562、韓国細胞株銀行 KCLB10243)、子宮癌細胞株(HeLa、韓国細胞株銀行 KCLB10002)、皮膚癌細胞株(HT1080、韓国細胞株銀行 KCLB10121)、膵臓癌細胞株(MIA CaPa−2、韓国細胞株銀行 KCLB21420)、乳癌細胞株(MCF−7、韓国細胞株銀行 KCLB30022)、胃癌細胞株(AGS、韓国細胞株銀行 KCLB21739)、腎臓癌細胞株(Caki−1、韓国細胞株銀行 KCLB30046)、肝臓癌細胞株(HepG2、韓国細胞株銀行、KCLB88065)
− マウス癌細胞株:皮膚癌細胞株(B16F10、韓国細胞株銀行 KCLB8008)、大腸癌細胞株(CT−26、韓国細胞株銀行 KCLB80009)
− 細胞培養:前記癌細胞株は細胞によりRPMIとDMEM培地で培養した。培養液には56℃で30分間加熱して、非動化した牛胎児血清(FBS)を10%、ペニシリン(100unit/mL)とストレプトマイシン(100μg/mL)及び300μg/mL−グルタミンを添加した。細胞株は前記培養液を使用して37℃、95%湿度、5%COインキュベーターで培養し、通常細胞が互いに融合する直前である3〜4日間隔をおいて継代培養し実験には30継代以下の細胞だけを使用した。
− 抽出物の処理及び細胞死滅活性測定:6ウェルプレートの培養容器に1×10個の細胞を各々培養して、細胞が容器に完全に付着される6時間後に蒸留水、メタノール、アセトン抽出物(150、400、800μg/mL培養液)で処理後、1日目から3日目まで細胞死滅の程度を実験した。細胞の増殖はMTT(3−[4、5−dimethylthiazol−2−yl]−2、5−diphenyltetrazolium bromide)方法で測定した。
成長の低下程度は何も処理しない陰性対照群(control)、メタノールとアセトンを添加させた対照群(vehicle)、そして抗癌剤でイチイ属由来パクリタキセル(paclitaxel、sigma)で処理した陽性対照群と相互比較した。与えられた時間により37℃で加温した細胞培養液で2回洗浄後、MTT溶液(5mg/mL without phenol red)1mLを加えて、4時間再培養させた。上層液を取り除いて生成されたformazen沈殿物にDMSOを1mL入れて溶解させ、570nmで吸光度を測定した。生存細胞数は処理3日目に50%メタノールで固定して、付着された生存細胞はクリスタルバイオレット(crystal violet)染色して観察した。
(2)抽出物処理に伴う実験の結果
− 蒸留水、メタノール、アセトン抽出物(800μg/mL)を各々の細胞に処理させて、処理3日目の生存細胞
各々の抽出物は培養液を取り除いて蒸留水、エタノール、アセトンの順で各々溶かした後、細胞に処理させた結果、殆どの実験細胞においてメタノール抽出物が最も高い細胞死滅活性を示し、これは10μg/mLの濃度のパクリタキセルで処理した陽性対照群(図7のTaxol(パクリタキセル、paclitaxel))と類似する死滅効果を示した。
次に蒸留水とアセトン抽出物も死滅効果を示したが全般的にメタノール抽出物に比較して低い活性を示した。それに対して、メタノール(methanol)とアセトン(acetone)だけを処理した対照群(図7のvehicle)は細胞死滅に全く影響を及ぼさなかった。
これにより細胞株の抽出物には癌細胞死滅活性を示す物質が含まれていることが分かった。次の工程においてはメタノール抽出物を濃度毎に処理して、死滅の程度を実験した。
− メタノール抽出物の濃度毎処理に伴う細胞死滅活性
メタノール抽出物を200mg/mLの濃度でメタノールに溶かして、実験細胞株に培養液1mLに150、400、800μgの濃度で添加させた。添加1日目から3日目まで1日間隔で細胞成長をMTT方法で測定し、3日目における生存細胞はメタノール固定後クリスタルバイオレット(crystal violet)染色した。14個の癌細胞株の結果は図8乃至図21に示した通りである。
前記結果から本発明によるイチイ属の形成層または前形成層由来細胞株のメタノール抽出物は濃度依存的に14個の癌細胞において細胞死滅活性を示す。800μg/mLの濃度は全ての細胞株において強い活性を示し、これは陽性対照群であるパクリタキセル(paclitaxel 10μg/mL)の細胞死滅と似たような結果を示した。それに対して、CT−26(図8)とB16F10(図13)においては陽性対照群よりも高い細胞死滅活性を示す。それは、陽性対照群において使用されたパクリタキセル及び本発明による細胞株のメタノール抽出物の量的な差は実験に使用したパクリタキセルは純粋精製された物質であるのに対して、細胞株の抽出物は多くの化合物が混ざり合った状態に起因するものである。従って、純粋精製過程を経ると本発明による細胞株の細胞死滅活性はより一層向上すると判断される。
[実施例6]イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株のパクリタキセル含有有無調査
一方、本発明による細胞株の抗癌活性がパクリタキセルによる活性でないことを立証するために次のように本発明による細胞株のパクリタキセル含有の有無を調べた。
本実験に使用されたパクリタキセル(paclitaxel、Taxol)標準試料はsigmaから購入し移動相としてはJ.T. Baker社のHPLC用water、acetonitrile、methanolを0.2μmフィルターで濾過した後に使用した。
前記実施例1において製造された細胞株0.2gをMeOH 0.4mL入れて5分間vortex後、1時間の間室温から抽出した。この抽出液を13,000rpmで5分間遠心分離後、0.2μmフィルターで濾過した後UPLCで定量分析した。
UPLC(Waters、MA、USA)分析は、UPLC BEH C18 column(100mm×2.1 mmi.d、1.7μm)を利用して、標準試料と比較して定量分析した。移動相としては水とアセトニトリルの勾配で、流速は0.4mL、UV 227nmで検出した。
吸光度227nm及び280nmでパクリタキセル標準試料(taxol standard)をUPLCで分析した結果、図22(a)に示すように保持時間(retention time)が4.67分に現れた。それと共に、227nmと280nmでUV absorbance ratioが約0.05になるとパクリタキセルであると報告されていたが(Castor & Tyler 1993)、本実験においてパクリタキセル標準試料を測定した結果、A(280nm)/A(227nm)=0.048であった。
これに対して、本発明による細胞株(sample)を吸光度227nmと280nmにおいてUPLCで分析した結果、図22(b)に示すようにretention timeが4.70分に現れた。それと共に、細胞株(Sample)抽出物測定結果、227nmと280nmでUV absorbance ratioが、A(280nm)/A(227nm)=1.24であり、パクリタキセルが含まれていないことが分かった。
さらにパクリタキセル標準試料と本発明による細胞株抽出液のPDA spectrumsを分析した結果、図22(c)及び(d)に示したように本発明による細胞株にパクリタキセルが含まれていないことが示された。
[実施例7]医薬製剤製造例
[製剤例1]錠剤の製造
実施例1において製造された細胞株抽出物100mgをトウモロコシ澱粉100mg、乳糖100mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合して、通常の錠剤製造方法により製造した。
[製剤例2]カプセル剤の製造
実施例1において製造された細胞株抽出物500mgを軟質ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
[製剤例3]シロップ剤の製造
実施例1において製造された細胞株1g、異性化糖10g、マンニトール5g、適量の精製水の含有量で通常の液製剤の製造方法により100mLのシロップ剤を製造した。
[製剤例4]注射剤の製造
実施例1において製造された細胞株抽出物200mgをポリオキシエチレン水素化カストロオイルを含む生理食塩水200mgに加熱溶解させて、混合抽出物を0.1%の濃度で含む注射剤を製造した。
[実施例8]機能性食品の製造:機能性飲料の製造
[製造例1]
実施例1において製造した細胞株200mgを96mLの水に溶解させた後、補助剤としてビタミンC500mg、矯味剤としてクエン酸、オリゴ糖を各々1g加え、保存材として安息香酸ナトリウム0.05gを加えた後、精製水を加えて、全量を100mLにして機能性飲料を製造した。
[製造例2]
実施例1において製造した細胞株抽出物200mgを96mLの水に溶解させた後、補助制としてビタミンC500mg、矯味剤としてクエン酸、オリゴ糖を各々1g加え、保存材として安息香酸ナトリウム0.05gを加えた後、精製水を加えて、全量を100mLにして機能性飲料を製造した。
産業上利用の可能性
以上説明したように、本発明による細胞株、その破砕物、その抽出物、及びその培養液は天然物由来組成物として既存の薬品治療剤の副作用を最小化して、人体に安全であり、かつ癌の成長に直接係わって、癌細胞死滅を誘導して、癌発生時に現れる新生血管形成を抑制させる抗癌活性を示すため、癌の予防、治療、及び症状緩和に有用な長所がある。
以上で本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者には、このような具体的技術は単に望ましい実施様態に過ぎない。これによって、本発明の範囲が制限されるのではない点は明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項及びそれらの等価物によって定義されるべきである。

Claims (9)

  1. イチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を持つ細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を含む癌の予防または治療用医薬組成物:
    (a)多数個の液泡を持つ形態学的特徴を示し;
    (b)先天的未分化状態であり;及び
    (c)同質な細胞株である。
  2. 前記細胞株は以下の特性をさらに持つことを特徴とする請求項1に記載の癌の予防または治療用医薬組成物:
    (a)懸濁培養時に単細胞状態で存在し;
    (b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株と比べて、生長速度が速く、安定するように培養され;及び
    (c)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株と比べて、生物反応器でおいてシェアストレスに対して低い感受性を有する。
  3. 前記細胞株は以下の工程を含む分離方法によって取得されたことを特徴とする請求項1に記載の癌の予防または治療用医薬組成物:
    (a)イチイ属の形成層または前形成層含有組織を取得する工程;
    (b)前記取得された形成層または前形成層含有組織を培養して、形成層または前形成層から増殖する形成層または前形成層の層と、前記形成層または前形成層以外の部分から無定形に増殖するカルス層を誘導する工程;及び
    (c)前記形成層または前形成層の層から細胞株を回収する工程。
  4. 前記工程(c)は3〜5重量%の原糖または砂糖;及びジャスモン酸メチル、真菌類抽出物、細菌類抽出物、酵母抽出物、キトサン、グルコマンナン、グルカン、フェニルアラニン、安息香酸、サリチル酸、アラキドン酸、STS、モバロナロネイトN−ベンゾリグリシン、ABA、SNP、IPP、BHT、CCC、エセフォン、馬尿酸、硝酸二アンモニウムセリウム、AgNO、硫酸バナジル、p−アミノ安息香酸)、ブラシノステロイド(、アルギン酸ナトリウム)、及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される物質;を含む培地で増殖させた後、前記増殖した細胞株を回収することを特徴とする請求項3に記載の癌の予防または治療用医薬組成物。
  5. 前記抽出物は、蒸留水、アルコール、アセトン、DMSO及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を利用して抽出されることを特徴とする請求項1に記載の癌の予防または治療用医薬組成物。
  6. 前記癌は大腸癌、口腔上皮癌、肺癌、前立腺癌、骨癌、白血病、子宮癌、皮膚癌、膵臓癌、乳癌、胃癌、腎臓癌、及び肝臓癌のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の癌の予防または治療用医薬組成物。
  7. イチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を持つ細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を含む癌の予防または改善用機能性食品:
    (a)多数個の液泡を持つ形態学的特徴を示し;
    (b)先天的未分化状態であり;及び
    (c)同質な細胞株である。
  8. 前記細胞株は以下の特性をさらに持つことを特徴とする請求項7に記載の癌の予防または改善用機能性食品:
    (a)懸濁培養時に単細胞状態で存在し;
    (b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株と比べて、生長速度が速く、安定するように培養され;及び
    (c)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株と比べて、生物反応器でおいてシェアストレスに対して低い感受性を有する。
  9. 前記細胞株は以下の工程を含む分離方法によって取得されたことを特徴とする請求項7に記載の癌の予防または改善用機能性食品:
    (a)イチイ属の形成層または前形成層含有組織を取得する工程;
    (b)前記取得された形成層または前形成層含有組織を培養して、形成層または前形成層から増殖する形成層または前形成層の層と、前記形成層または前形成層以外の部分から無定形に増殖するカルス層を誘導する工程;及び
    (c)前記形成層または前形成層の層から細胞株を回収する工程。
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