JP2011500073A - 突然変異IgGFcフラグメントと融合した単一IFN−ベータ - Google Patents

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Abstract

本発明は、2つのサブユニットを含む突然変異IgG Fcドメインと融合した単一IFN−ベータを含むタンパク質タンパク質に関し、該第一のサブユニットがIFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgG Fc腕部を含み、第二のサブユニットが単一IFN−ベータタンパク質と連結した突然変異IgG Fc腕部を含み、そして該突然変異IgG Fcドメインがイムノグロブリンガンマ−1 Fcドメインであり、更に該Fcドメインが少なくとも5つの突然変異を有する。

Description

本発明は、突然変異IgG Fcフラグメントと融合した単一(single)IFN−ベータ(以下、sIFNベータ−IgGFcmutと称する)、これをコードするヌクレオチド、これを含むベクター及び発現ベクター、これを用いて形質転換した宿主細胞、並びにこれらの医薬としての使用、及び特にこれらの多発性硬化症治療における使用に関する。該突然変異IgG Fcフラグメントと融合した単一IFN−ベータは2つのサブユニットを有し、第一のサブユニットはIFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgG Fc腕部を含み、そして第二のサブユニットは単一IFN−ベータタンパク質と連結した突然変異IgG Fc腕部を含む。
所望のタンパク質、例えばエリスロポエチン(EPO)等と連結したイムノグロブリン(Ig)のFcフラグメントを含むタンパク質が、恐らく、成人肺に存在し、イムノグロブリンのFcフラグメントを認識し、これと結合し、これを捕えるMHCクラスI型Fc受容体のFcRnとの結合を通じて、吸入投与に供されることが報告されている(cf Spiekermann GM et al. 2002)。タンパク質をイムノグロブリンFcフラグメントと融合することにより、FcRnにより認識され得るハイブリッドタンパク質が得られる。前記イムノグロブリンFcフラグメントは、抗体重鎖のヒンジ領域(H)並びに第二ドメイン(CH)及び第三ドメイン(CH)を含む2つの同一の腕部から構成される。
FcRnは、成体(ヒトは該当するが、げっ歯類は該当しない)上皮組織において活性であり、小腸内腔、肺気道、鼻腔表面、膣表面、結腸及び直腸表面において発現している(US 6,485,726)。FcRn結合パートナーを含むタンパク質(例えばIgG、Fcフラグメントを含む融合タンパク質)は、FcRnにより上皮障壁を通過して効率的に輸送され、それにより、所望の治療用分子の非襲侵的な全身投与方法が提供される。
イムノグロブリン(例えばIgG)のFcフラグメント(Fcドメインとも称される)は、イムノグロブリン(IgG)又は前記Fcドメインを含む融合タンパク質(IgGFc)の投与に関与する、いわゆるエフェクター作用に寄与することが知られている。そのようなエフェクター作用は、Fc受容体(FcγR)との相互作用を解する、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び補体成分1q(C1q)との結合による補体依存性細胞傷害(CDC)を含む。IgGアイソフォームは、異なるレベルのエフェクター作用をもたらす。ヒトIgG1及びIgG3は強力なADCC及びCDC効果を有するが、ヒトIgG2は弱いADCC及びCDC効果をもたらす。ヒトIgG4は、ADCC効果が弱く、CDC効果は生じない。
ADCCにおいて、抗体(例えばIgG)のFc領域は、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージ等の免疫エフェクター差異簿の表面のFc受容体(FcγR)と結合し、標的細胞のファゴサイトーシス又は溶解を引き起こす。
CDCにおいて、抗体(例えばIgG)は、細胞表面の補体カスケードを起動することにより、標的細胞を殺傷する。IgGアイソフォームの作用又は機能のレベルは、IgG4<IgG2<IgG1<IgG3の順に増大する。
インターフェロンは、感染細胞が天然に分泌し、1957年に初めて同定された。それらの名称は、ウイルスの複製及び生産を「妨げる(インターフェア)」ことに由来する。インターフェロンベータは、現在多発性硬化症の治療に使用される周知のインターフェロンである。
例えば2個のFcRn結合パートナー等の2個のイムノグロブリン定常領域の部分に対して1個の生体活性分子を有するモノマー−ダイマーハイブリッドが既に報告されている(WO 2005/001025)が、ホモダイマー(本明細書中では単にダイマーとも称される)又は2コピー以上の生体活性分子を有するより高次のマルチマーよりも効果的に機能及び輸送され得る。インターフェロンベータのモノマー−ダイマーハイブリッドは、WO 2005/001025に開示されている。
第一の側面において、本発明は、変異IgG Fcドメインと融合した単一IFN−ベータ(以下本明細書中でsIFNベータ−IgGFcmutと称する)を提供する。本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは2つのサブユニットで構成され、第一のサブユニットがIFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgGFc腕部(Fcmut腕部)を含み、そして第二のサブユニットが単一IFN−ベータタンパク質と連結している突然変異IgG Fc腕部(sIFNベータ−Fcmut腕部)を含み、該突然変異IgG Fcドメイン(IgGFcmut)が、イムノグロブリンガンマ(IgG)−1 Fcドメインであり、Kabatらにより定義されたEUインデックスの位置表記(Kabat, E. A. et al. 1991)で234、235、237、330、及び331が突然変異している。該突然変異の導入は、ADCC及びCDCの低下を引き起こす。好ましい態様において、前記突然変異はL234A、L235E、G237A、A330S及びP331Sである。もう一つの側面において、本発明は、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutをコードする、例えばDNA等のポリヌクレオチド、該DNAを含むベクター、及びより具体的には発現ベクターを提供する。
もう一つの側面において、本発明は、例えばトランスフェクション等により、本発明のベクター、特に発現ベクターを含有するものとなった宿主細胞、好ましくはCHO細胞を提供する。
もう一つの側面において、本発明は、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutを含む医薬組成物、及びその医薬としての、特に多発性硬化症治療のための使用を提供する。
もう一つの側面において、本発明は、有毛細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病、多発性硬化症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、HIV並びに/又はエプスタイン・バー(Epstein Barr)、ヘルペスウイルス、及び/若しくはパピローマウイルスから選択されるウイルスにより引き起こされる感染の予防及び/又は治療用の医薬の製造における、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutの使用を提供する。
もう一つの側面において、本発明は、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutの製造方法を提供し、該方法は、本発明の宿主細胞、好ましくはCHO細胞の培養、及び本発明のsIFNベータ−IgGFcmutの単離を含む。
発明の詳細な説明
本発明は、肺を通じて、経口的に、又は皮下的に取り込まれて送達され得る、突然変異IgG Fcドメインと融合した単一IFN−ベータ(以下、sIFNベータ−IgGFcmutと称する)に関する。本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、循環系の中でなおも高い血清レベル及び半減期を維持しつつ、Fcエフェクター作用を低下させ、良好な生体活性を示す。
第一の側面において、本発明は、2つのサブユニットを含むsIFNベータ−IgGFcmutを提供し、第一のサブユニットがIFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgGFc腕部(Fcmut腕部)を含み、そして第二のサブユニットが単一IFN−ベータタンパク質と連結している突然変異IgG Fc腕部(sIFNベータ−Fcmut腕部)を含み、そして第二のサブユニットが単一IFN−ベータタンパク質と連結している突然変異IgG Fc腕部(sIFNベータ−Fcmut腕部)を含み、該突然変異IgG Fcドメイン(IgGFcmut)が、イムノグロブリンガンマ(IgG)−1 Fcドメインであり、Kabatらにより定義されたEUインデックスの位置表記(Kabat, E. A. et al. 1991)で234、235、237、330、及び331が突然変異している。該突然変異の導入は、ADCC及びCDCの低下を引き起こす。好ましい態様において、前記突然変異はL234A、L235E、G237A、A330S及びP331Sである。突然変異の位置を表す値の混乱を避けるため、以下の表1において、本発明の幾つかの配列番号とEUインデックスとの間のアミノ酸の位置の対応を記載する。
Figure 2011500073
集団中で異なるアロタイプのIgG1が見出される。配列番号1に挙げられるヒトIgG1の重鎖定常領域は、Uniprotにおいて、「G1M(non−1)マーカー」と称されるアロタイプである(受入番号P01857)。本発明に記載される突然変異は、集団中に見出される全ての異なるアロタイプについで作製され得る。従って、本発明は、特定のアロタイプに限定されるべきではない。本発明において、Fcドメインは「G1M(non−1)マーカー」アロタイプに由来するものであった(実施例1を参照)が、そのFcドメインは、他のいずれのアロタイプに由来するものであってもよい。
ADCC及びCDCを低下させるために、EUインデックスの位置表記で少なくとも234、235、237、330、及び331を突然変異させたイムノグロブリンガンマ(IgG)−1 Fcドメインを、本明細書中で、IgGFcmutと称する場合がある。IFN−ベータタンパク質と連結していないIgGFcmutの腕部を、本明細書中で、Fcmut腕部と称する場合がある。単一IFN−ベータタンパク質と連結しているIgGFcmutの腕部を、IFNベータ−Fcmut腕部と称する場合がある(図1)。好ましい態様において、IgGFcmutにおける突然変異は、L234A、L235E、G237A、A330S及びP331Sである。
本明細書中で、Fcドメインは、Fcフラグメント、Fc−部分又はFc領域と称される場合画ある。本明細書中で、「Fcドメイン」、「Fcフラグメント」、「Fc−部分」、又は「Fc領域」という用語は相互置換可能であり、同一の意味を有するものとして解釈されるべきである。
本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、WO 2005/001025に記載のIFN−ベータのモノマー−ダイマータンパク質と同様の生体活性を示す。IFN−ベータの生体活性は、典型的には、例えば実施例5に記載される抗ウイルスアッセイにおいて測定される。
本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を低下又は阻害する。例えば、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、Fc受容体であるFcγRI、CD64、IIA、IIB、IIIA及び/又はIIIBとの結合を低下又は阻害し、及び/又はC1qとの結合を低下又は阻害する。更に、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、FcRnの結合特性(又は親和性)を維持している。本発明のsIFNベータ−IgGFcmutがADCC及びCDCを低下又は阻害しつつFcRn結合が維持されるのは、Fcドメインに5つの突然変異が存在するためである。本発明は、ADCC及びCDCを低下又は阻害しつつ、同等の生体活性及び同等の結合特性を示すsIFNベータ−IgGFcmutを提供する。
本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、吸入により、又は皮下投与により投与され得る。
本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、循環系中の血清レベル及び半減期が高い(生体液中の存在時間が延長する)ため、皮下ルートが好ましい投与方法となる。
本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、プロテインA又はプロテインGアフィニティーグロマトグラフィーを使用することにより精製することができる。
本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、Fc領域中に少なくとも5つの突然変異を含む。この態様において、ADCC及びCDCが顕著に阻害され、又は顕著に低下する。
本発明は、2つのサブユニットを含むsIFNベータ−IgGFcmutを提供し、該第一のサブユニットがIFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgG Fc腕部(Fcmut腕部)を含み、第二のサブユニットが単一IFN−ベータタンパク質と連結した同一のIgG Fcドメインの突然変異Fc腕部(IFNベータ−Fcmut腕部)を含み、該突然変異IgG Fcドメイン(IgGFcmut)が、イムノグロブリンガンマ(IgG)−1 Fcドメインであり、EUインデックスの位置表記で少なくとも234、235、237、330、及び331が突然変異している。該突然変異の導入は、ADCC及びCDCの低下を引き起こす。好ましい態様において、前記突然変異はL234A、L235E、G237A、A330S及びP331Sである。
好ましい態様において、Fcドメインは、EUインデックスの位置表記で297に該当するアミノ酸のNがAに突然変異したものを含まない。一つの態様において、本発明は、2つのサブユニットを含むsIFNベータ−IgGFcmutを提供し、該第一のサブユニットがIFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgG Fc腕部(Fcmut腕部)を含み、第二のサブユニットが単一IFN−ベータタンパク質と連結した突然変異IgG Fc腕部(IFNベータ−Fcmut腕部)を含み、該Fcドメインが、本発明のIgGFcmutであり、該IFNベータ−Fcmut腕部がIFN−ベータと直接連結した突然変異IgG Fc腕部を含む。本態様において、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、IgGFcmutとIFN−ベータとの間にリンカーを含まない。
もう一つの態様において、本発明は、2つのサブユニットを含むsIFNベータ−IgGFcmutを提供し、該第一のサブユニットがIFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgG Fc腕部(Fcmut腕部)を含み、第二のサブユニットが単一IFN−ベータタンパク質と連結した突然変異IgG Fc腕部(IFNベータ−Fcmut腕部)を含み、該Fcドメインが、本発明のIgGFcmutであり、該IFNベータ−Fcmut腕部がIFN−ベータと直接連結していない突然変異IgG Fc腕部を含む。
更なる好ましい態様において、IgGFcmutは、EUインデックスの位置表記で297に該当するアミノ酸のNがAに突然変異したものを含まない。従って、本発明のIgGFcmutの位置297には、アミノ酸Nが存在する。本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、IgGFcmutとIFN−ベータとの間に、リンカーを含む場合がある。
前記IgG1 Fcドメインは、EUインデックスの位置表記でL234A、L235E、G237A、A330S及びP331Sから選択される少なくとも5つの突然変異、又はFcドメインの他のいずれかの同等の位置に少なくともこれらの5つの突然変異を含む。故に、上記突然変異は、いずれのIgG1アロタイプのFcドメインにおいても作製することができる。
234(例えばL234A)、235(例えばL235E)及び237(例えばG237A)の3つの突然変異は、ADCCを低下又は阻害するために設定され;330(例えばA330S)及び331(例えばP331S)は、CDCを低下又は阻害するために設定される。
幾つかの態様において、本発明のFcドメインは、CHドメイン及び/又はCHドメイン、及び任意でCHドメイン、ヒンジ領域、若しくはそれらのフラグメント、又はそれらの任意の組合せを含み、又はそれらから構成される。好ましくは、前記Fcドメインは、ヒンジ領域若しくはそのフラグメント、CHドメイン及びCHドメインを含み、又はそれらから構成される。一つの態様において、前記Fcドメインは、CHドメイン及びCHドメインを含み、又はそれらから構成される。
本明細書中で定義されるいわゆる「ヒンジ領域」は、CHドメイン及びCHドメインの間に位置する特定の領域である。ヒンジ領域は、タンパク質分解開裂に特に感受性で;そのようなタンパク質分解により、正確な開裂部位により、2つ又は3つのフラグメントが得られる。
一つの態様において、ヒンジ領域のフラグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11アミノ酸で構成される。
もう一つの態様において、ヒンジ領域のフラグメントは、7アミノ酸で構成される。好ましくは、該ヒンジ領域は、配列番号2の配列(DKTHTCP)を含み、又はこれから構成される。
より好ましくは、IgGFcmutは、配列番号3の配列を含み、又はこれから構成されるFcmut腕部、並びに配列番号8の配列を含み、又はこれから構成されるsIFNベータ−IgGFcmut腕部の167〜393アミノ酸残基部分により構成される(図1)。配列番号3の配列は、L14A、L15E、G17A、A110S及びP111Sの突然変異を含み、これらはそれぞれ、EUインデックスの位置表記でIgG1突然変異のL234A、L235E、G237A、A330S及びP331Sに対応する。配列番号8は、L180A、L181E、G183A、A276S及びP277Sの突然変異を含み、これらはそれぞれ、EUインデックスの位置表示に従い、IgG1突然変異のL234A、L235E、G237A、A330S及びP331Sに対応する。本発明のFcドメインは、エフェクター作用を低下又は阻害するために、更に改変される場合もある。
以下のFc突然変異が、IgG1 Fcドメイン中EUインデックス位置表示で以下の位置に更に導入される場合がある:
T250Q及び/又はM428L、
M252Y、S254T、T256E、H433K及び/又はN434F、
E233P、L234V、L235A、ΔG236、A327G、A330S及び/又はP331S、
E333A及び/又はK322A。
T250Q及び/又はM428L突然変異は、タンパク質の血清半減期を増大させ得る。
M252Y、S254T、T256E、H433K及び/又はN434F突然変異は、タンパク質の血清半減期を増大させ得る。
E233P、L234V、L235A、ΔG236、A327G、A330S及び/又はP331S突然変異は、ADCC及びCDCを低下又は阻害し得る。
更に、Fc突然変異は、EUインデックス位置表記で330、331 、234、又は235、又はそれらの組合せから選択される位置における置換であり得る。更に、EUインデックス位置表記で220のシステイン残基も、セリン残基で置換され得て、イムノグロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合を通常形成するシステイン残基が排除される。
一つの態様において、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutは、更に、Fcドメインとサイトカインとの間にリンカーを含む。一つの態様において、該リンカーは、アミノ酸残基1〜3個の短いペプチド、又は例えば長さ13アミノ酸残基の長いペプチドである。
前記リンカーは、サイトカインとイムノグロブリン配列との間に導入される、例えばEFM(Glu−Phe−Met)トリペプチド配列、又はFGAGLVLGGQFM(GIu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Met)を含む13アミノ酸リンカー配列であり得る。好ましくは、該リンカーは、配列番号13の配列(EFAGAAAV)を含み、又はこれから構成される。
好ましくは、前記IFNはヒトIFN−ベータ(IFN−β)であり、より好ましくは組換えヒトIFN−ベータである。インターフェロンベータ−1aは、分子量約22,500ドルトンの精製された166アミノ酸の糖タンパク質である。これは、一般に、ヒトインターフェロンベータ遺伝子を導入した遺伝子改変チャイニーズハムスター卵巣細胞を使用する組換えDNA技術により生産される。
好ましくは、前記IFNは、CHO細胞由来等タンパクを有する組換えヒトIFN−ベータである。好ましくは、IFN−β部分及びFc鎖のいずれもグリコシル化されている。より好ましくは、該IFN−ベータは、配列番号7の配列から構成される。
Rebif(登録商標)及びAvonex(登録商標)は、CHO由来インターフェロンベータ−1aの市販調製物の2つの例である。
Betaseron(登録商標)は、E. coli由来インターフェロンベータ−1bの市販調製物の例である。
好ましくは、IFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgG Fc腕部(Fcmut腕部)を含むsIFNベータ−IgGFcmutの第一のサブユニットは、配列番号3の配列を含み、又はこれから構成される。配列番号3の配列及びそのシグナルペプチド(マウスIgk軽鎖のシグナルペプチド−実施例1を参照されたい)は、配列番号5に挙げられている。
好ましくは、単一IFN−ベータタンパク質と連結した突然変異IgG Fc腕部(IFNベータ−Fcmut腕部)を含むsIFNベータ−IgGFcmutの第二のサブユニットは、配列番号8の配列を含み、又はこれから構成される。配列番号8の配列及びそのシグナルペプチド(IFN−ベータシグナルペプチド)は、配列番号10に挙げられている。
sIFNベータ−IgGFcmutの例は、本明細書中で「コンパウンド1」と称されるタンパク質である。コンパウンドは、好ましくは本発明のsIFNベータ−IgGFcmutであり、配列番号3の配列及び配列番号8の配列から構成される。コンパウンド1は、Fcドメインに5つの突然変異:L234A(配列番号3及び5のL14A;配列番号8及び10のL180A)、L235E(配列番号3及び5のL15E;配列番号8及び10のL181E)、G237A(配列番号3及び5のG17A;配列番号8及び10のG183A)、A330S(配列番号3及び5のA110S;配列番号8及び10のA276S)、P331S(配列番号3及び5のP111S;配列番号8及び10のP277S)(標準的なヒトIgG重鎖ドメイン又はEUインデックス位置表記に従い番号を振られている)を有することにより、ADCC及びCDC活性を阻害する。コンパウンド1のFcドメインは、「G1M(non−1)マーカー」アロタイプに由来する(実施例1を参照されたい)。
もう一つの側面において、本発明は、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutをコードするDNA、該ポリヌクレオチドを含むベクター、及びより好ましくは発現ベクターを提供する。
一つの態様において、前記ポリヌクレオチドは、配列番号3、8、5、又は10の配列をコードする。好ましくは、ポリヌクレオチドは、sIFNベータ−IgGFcmutの第一のサブユニット(Fcmut腕部)をコードする配列番号4の配列を含み、又はこれから構成される。好ましくは、ポリヌクレオチドは、sIFNベータ−IgGFcmutの第二のサブユニット(IFNベータ−Fcmut腕部)をコードする配列番号9の配列を含み、又はこれから構成される。好ましくは、ポリヌクレオチドは、sIFNベータ−IgGFcmutの第一のサブユニット(Fcmut腕部)及びシグナルペプチド(即ちマウスIgk軽鎖のシグナルペプチド)をコードする配列番号6の配列を含み、又はこれから構成される。好ましくは、sIFNベータ−IgGFcmutの第二のサブユニット(IFNベータ−Fcmut腕部)及びシグナルペプチド(即ちヒトIFN−ベータのシグナルペプチド)をコードする配列番号9の配列を含み、又はこれから構成される。
一つの態様において、本発明のDNAは、双方向性プロモーターを含む。好ましくは、該双方向性プロモーターは、マウス双方向性CMVプロモーターである。
より好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号12の配列を含み、又はこれから構成され、本明細書ではC370ベクターとも称される(図11)。そのようなベクターは、コンパウンド1(即ち、配列番号6及び11)をコードするDNA配列を含む。
もう一つの側面において、本発明は、例えば本発明のベクター、又は本発明のポリヌクレオチドをトランスフェクションして生じる、宿主細胞を提供する。
もう一つの側面において、本発明は、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutを含む医薬組成物及びその医薬として、特に多発性硬化症治療のための使用を提供する。
本発明の医薬組成物は、多発性硬化症の診断、予防、及び/又は治療(局所的又は全身的)において有用である。
本発明の文脈中で、「治療」という用語は、疾患発症後の病理学的発達の減衰、低下、減少又は縮小を含む、疾患の進行に対する任意の有益な効果を指す。
本発明の医薬組成物は、医薬として許容される担体と共に投与されてもよい。
「医薬として許容される」という用語は、有効成分の生体活性の有効性に干渉せず、投与を受ける対象に毒性ではない任意の担体を含むことを意味する。例えば、非経口投与において、有効タンパク質は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンゲル溶液等のビヒクル中で、注射用単位剤形に製剤化され得る。
もう一つの側面において、本発明は、医薬として使用するための本発明の医薬組成物を提供する。もう一つの側面において、本発明は、患者に本発明の医薬組成物を投与することを含む、患者の疾患を治療する方法を提供する。好ましくは、前記疾患は、有毛細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病、多発性硬化症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、HIV並びに/又はエプスタイン・バー(Epstein Barr)、ヘルペスウイルス、及び/若しくはパピローマウイルスから選択されるウイルスにより引き起こされる感染から選択される。より好ましくは、前記疾患は多発性硬化症である。一つの態様において、前記疾患は、寛解再発型多発性硬化症(RRMS)である。
もう一つの側面において、本発明は、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutの、有毛細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病、多発性硬化症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、HIV並びに/又はエプスタイン・バー(Epstein Barr)、ヘルペスウイルス、及び/若しくはパピローマウイルスから選択されるウイルスにより引き起こされる感染の予防及び/又は治療のための医薬を製造するための使用を提供する。
本発明の第一の使用において、本発明の医薬組成物は、肺投与される。
本発明の第二の使用において、本発明の医薬組成物は、鼻腔内投与される。
本発明の第三の使用において、本発明の医薬組成物は、吸入により投与される。
本発明の第四の使用において、本発明の医薬組成物は、経口投与されうる。
本発明の第五の使用において、本発明の医薬組成物は、血管内投与又は筋肉内投与される。
好ましい態様において、本発明の使用において、本発明の医薬組成物は、皮下投与される。
本発明の医薬組成物は、毎日、又は2日置きに、上記経路のいずれかに従い投与される。
皮下投与又は筋肉内投与が行われたとすると、本発明の医薬組成物は、1週間に1回、2回、又は3回投与されるが、より好ましくは、2週間置きに投与される。
非経口(例えば、血管内、皮下、筋肉内)投与において、本発明の医薬組成物は、医薬として許容される非経口ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液)、及び等張性(例えばマンニトール)又は化学的安定性(例えば保存料及び緩衝液)を維持する添加物と組み合わせた溶液、懸濁物、エマルジョン、又は凍結乾燥粉末として製剤化され得る。該製剤は、通常使用される技術により滅菌される。
本発明の医薬組成物の有効成分は、様々な方法で、個体に投与され得る。投与の経路として、皮内、経皮(例えば徐放製剤で)、筋肉内、腹膜内、血管内、皮下、硬膜外、局所、経口経路が挙げられ、そして好ましくは、エアロゾル投与、鼻腔内経路又は吸入により投与される。他の任意の治療的に効果的な投与径路が使用され得て、例えば上皮又は内皮を通じた吸収、又は遺伝子治療による投与が挙げられる。遺伝子治療において、前記有効成分をコードするDNA分子が患者に投与(例えばベクターを用いて)され、これがインビボでの前記有効成分の発現を引き起こす。加えて、本発明に係る医薬組成物は、医薬として許容される界面活性剤、賦形剤、単体、希釈剤、及びビヒクル等の他の生体有効成分と共に投与され得る。
好ましくは、本発明の使用において、本発明の医薬組成物は、スプレー装置、エアロゾルスプレー、又は吸入器により送達される。一つの態様において、本発明の医薬組成物は、既知の装置を使用して投与され得る。単一バイアル系(single vial system)を含む例として、Rebiject(登録商標)等の溶液の送達用の自動注入器又はペン型注入器を含む。
もう一つの側面において、本発明は、本発明の医薬組成物を含む装置を提供する。好ましくは、該装置はスプレー装置である。
単発又は複数回投与として個体に投与される用量は、薬物動態的特性、投与径路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、伸長)、症状の程度、併用療法、治療の頻度、及び所望の効果を含む様々な要素に依存して変化し得る。
「複数回投与使用」という表現は、複数回、例えば2、3、4、5、6回以上注入及び/又は吸入用の、医薬組成物、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutの単一バイアル、アンプル、又はカートリッジの使用を含むことを意図する。該注入及び/又は吸入は、少なくとも、又は約12時間、24時間、48時間等の時間にわたり、好ましくは12日間に及んでなされる。該注入及び/又は吸入は、例えば、6、12、24、48、又は72時間等の間隔でなされ得る。
一つの態様において、本発明の使用において、本発明の医薬組成物は、対象あたり一日に約30〜120μgの用量でsIFNベータ−IgGFcmutが投与される。
好ましくは、本発明の使用において、本発明の医薬組成物は、吸入あたり約1、5、8、10、12、15、20、又はそれ以上の用量でsIFNベータ−IgGFcmutが投与される。
好ましくは、本発明の使用において、本発明の医薬組成物は、対象あたり一日に約30〜10,000μgの用量でsIFNベータ−IgGFcmutが投与され、又は対象あたり一日に約60〜2000μgの用量でsIFNベータ−IgGFcmutが投与され、又は対象あたり一日に約90〜1,000μgの用量でsIFNベータ−IgGFcmutが投与される。
一つの態様において、本発明の使用において、本発明の医薬組成物は、一回に少なくとも107μg、より好ましくは少なくとも157μgの用量でsIFNベータ−IgGFcmutが投与される。
sIFNベータ−IgGFcmutの重量(μg)に代えて、用量は、IFN−ベータの当量で計算され得る。
もう一つの側面において、本発明は、本発明のsIFNベータ−IgGFcmutの製造方法を提供し、該方法は、本発明の宿主細胞の培養、及び本発明のsIFNベータ−IgGFcmutの単離を含む。
学術論文又は概説、公開又は未公開の米国又は外国の特許出願、又は他の任意の参考文献を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、これらの引用される参考文献中に表されている全てのデータ、表、図及び文章を含め、全て本明細書中に参照により援用される。加えて、本明細書中に引用されるそれらの参考文献中に引用される参考文献の全ての内容も、全て参照により援用される。
前記具体的な態様の記載は、過度な実験を行うことなく、本発明の一般的概念から逸脱することなく、そのような具体的態様を適用するために、他者が、当該技術分野の通常の知識(本明細書中に引用される参考文献の内容を含む)を利用して、容易に改変及び/又は適応が可能となるように、本発明の一般的本質を全て明らかにするものである。従って、そのような適応及び改変は、本明細書中に表される教示及び誘導に基づいて、開示される態様の均等の意義の範囲内であると意図される。本明細書中の表現(phraseology)又は用語(terminology)は、記載を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。
本発明の一つの態様を記載するものであり、sIFNベータ−IgGFcmutの2つのサブユニットの模式図である。図1aは、sIFNベータ−IgGFcmutのFc腕部における5つの突然変異を示し、それらにはEUインデックスの位置表記で番号が振られ、及びその機能が記載されている。図1bはsIFNベータ−IgGFcmutを表し、サブユニットの名称を明示している。
本発明の1つの態様を記載し、部位指向的突然変異生成によりコンパウンド1(即ち配列番号3)のFcmut腕部内に導入されるアミノ酸突然変異と、MGC/Image共同体クローン(consortium clone)から得たcDNAクローン由来のFcドメイン(PEAK8由来hFc;「C1M(non−1)マーカー」アロタイプ)の相等部分とを比較した、配列アラインメントを表している。番号付けは、配列番号3に基づく。最初の3つの突然変異はADCCを低下させ、一方最後の2つはCDCを低下させる。突然変異L14A(即ちEUインデックスのL234A)、L15E(即ちEUインデックスのL235E)及びG17E(即ちEUインデックスのG237E)は、Fc受容体FcγRI、IIA、IIB及びIIIAとの結合を遮り、一方A110S(即ちEUインデックスのA330S)及びP111S(即ちEUインデックスのP331S)は、補体カスケードイニシエータータンパク質C1qとの結合を遮る。
本発明の一つの態様を記載したものであり、コンパウンド1のFcmut腕部(即ち配列番号3)、コンパウンド2の対応する部分(即ち配列番号14を指す。コンパウンド2は、IFN−βとFcドメインとの間に8アミノ酸のリンカー配列を含むモノマー−ダイマータンパク質であり、Fcドメインに1つだけ突然変異を含む)、及び「G1M(non−1)マーカー」アロタイプの定常領域重鎖(即ち配列番号1)の間の配列アラインメントを表す。「.」は、配列番号3が配列番号1及び14と異なっているアミノ酸の位置を示す。「:」は、配列番号14が配列番号1及び3と異なっているアミノ酸の位置を示す。
本発明の一つの態様を記載したものであり、コンパウンド1のIFNベータ−Fcmut腕部(即ち配列番号8)、コンパウンド2の対応する部分(即ち配列番号15)、及びヒトIFN−ベータ(UniProt受入番号P01574)の間の配列アラインメントを表す。「(下矢印)」は、IFN−ベータ−Fcmut腕部が突然変異している位置を示す。「(シャープ)」は、配列番号15が突然変異している位置を示す。「(センテンス)」は、コンパウンド1及び2が構成されている2つの異なるアロタイプを特徴づける位置を示す。
本発明の一つの態様を記載したものであり、抗ウイルスアッセイのWISH/VSV法(水疱性口内炎ウイルス(VSV)の細胞変性作用(CPE)に対する羊膜細胞株由来WISH細胞の耐性試験)の結果を表す。曲線は、コンパウンド1、コンパウンド2及び組換えヒトIFN−β−1aの用量応答曲線に対応する。データは、細胞変性作用の阻害のパーセンテージとして表される。
本発明の一つの態様を記載したものであり、WISH細胞における抗増殖アッセイの結果を表す。曲線は、コンパウンド1、コンパウンド2及び組換えヒトIFN−β−1aの用量応答曲線に対応する。データは、細胞増殖のパーセンテージとして表される。
本発明の一つの態様を記載したものであり、ベロ細胞におけるレポーター遺伝子アッセイ(RGA)の結果を表す。曲線は、コンパウンド1、コンパウンド2及び組換えヒトIFN−β−1aの用量応答曲線に対応する。データは、毎秒カウント(cps)として表される。
本発明の一つの態様を記載したものであり、コンパウンド1及びコンパウンド2と、CD64をトランスフェクションしたIIA1.6細胞との相対的な結合を表す。
本発明の一つの態様を記載したものであり、コンパウンド1及びコンパウンド2とC1qとの結合を表す。図9aはIgG1を含み、そして図9bはIgG1を除外している。
本発明の一つの態様を記載したものであり、平均(SD)IFN−β、コンパウンド1又はコンパウンド2の血清プロフィールを示す。曲線は、55pMol/kgのRebif(登録商標)皮下投与後のIFN−β血清レベル;表面付着用量138 pMol/kgで吸入経路によりコンパウンド1を投与した後のコンパウンド1の血清レベル;及び表面付着用量138 pMol/kgで吸入経路によりコンパウンド2を投与した後のコンパウンド2の血清レベルに対応する。
本発明の一つの態様を記載したものであり、コンパウンド1を生産するために使用される、C370発現ベクターを図示する。
以下において、本発明は、以下の実施例により例証されるが、これは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
特定に使用される解析プロトコル
1.RP−HPLC
HPLC: Agilent 1100 Seriesシステム(Agilent Technologies)
カラム: Aquapore BU−300 30x2.1mm(Brownlee 0711−0062)
溶媒A: 水中0.1%TFA
溶媒B: 90%アセトニトリル中0.1%TFA
勾配(Gradient): ProtC4
試料調製:
15μl注入する。タンパク質を、最終体積が100μlとなるように溶媒Aに溶解する。
2.SDS−PAGE
ゲル: NuPage 4−12% Bis−Tris(Invitrogen NP0322)
緩衝剤: NuPage MES SDS 泳動緩衝剤(Invitrogen NP0002)及び10x濃縮サンプル緩衝剤を使用する。還元条件にするため、10mMのDTTを添加する。
泳動条件: 200Vで40分間泳動する。
試料調製:
10μlを充填する。タンパク質を、最終体積が20μlとなるように10xサンプル緩衝剤に溶解する。95℃で5分間加熱する。0.1%クーマシーブルー、30%メタノール、10%酢酸中で、45分間染色する。30%メタノール、10%酢酸中で脱染色する。
3.IEF
ゲル: pH3〜10 IEFゲル(Invitrogen ECC6655A)
緩衝剤: IEF Anode緩衝剤(Invitrogen LC5300)、IEF Cathode緩衝剤(Invitrogen LC5310)、IEF pH3〜10 サンプル緩衝剤(Invitrogen LC5311)
試料調製:10μlを充填する。試料を、1容のサンプル緩衝剤で希釈する(試料を加熱しない)。
泳動条件: 100vで1時間、200vで1時間、400vで1時間とする。
30%メタノール、10%酢酸で30分間2回固定する。0.1%クーマシーブルー、30%メタノール、10%酢酸中で、45分間染色する。30%メタノール、10%酢酸中で脱染色する。
ウエスタンブロット
ブロッキング溶液: PBS/0.1%、Triton X100、5%ミルク
洗浄溶液: PBS/0.1%、TritonX100
抗体溶液: 洗浄溶液で抗体を希釈する。
室温で1時間、又は4℃で一昼夜ブロッキングする。5分間3回洗浄する。室温で1時間一次抗体でインキュベーションし、30分間洗浄する。室温で1時間一次抗体でインキュベーションし、少なくとも1時間洗浄する。
ECLによるウエスタンブロッティング: 試薬に付属している手順に従う。
抗体
抗Fc抗体=ヤギ抗ヒトIgG、FcフラグメントHRP(1,000x希釈)(Jackson 109−036−098)
抗IFN−ベータ=
一次抗体=抗IFN−ベータ−mab 117.1 0.1μg/ml
二次抗体=ヤギ抗マウスIgG HRP(1,000x希釈)(Dako P0447)
5.脱グリコシル化
N−グリコシダーゼF(Roche 11 365 193 001)
リン酸緩衝剤pH7.5/10%アセトアミド中に10μgのsIFNベータ−IgGFcmutを添加する。これに5UのPNGase Fを添加して、37℃で一昼夜インキュベーションする。
6.脱グリコシル化後の還元
試料を、4MグアニジンHCL、10mM DTT中で、56℃で1時間インキュベーションする。
7.N末端シークエンシング
200ピコモルを充填する。シークエンシングの前に、試料をProsobカートリッジ(ABI 402052)に充填する(Prosorbカートリッジは、シークエンシングに適したマトリックス(PVDF膜)上に希釈したタンパク質試料を迅速に濃縮及び洗浄するために設計されている)。
装置:
Microgradient 140C HPLC (Applied Biosystems)と接続したModel 494 Prociseマイクロシークエンシングシステム。
8.アミノ酸解析
アミノ酸解析は、真空下窒素中の気相加水分解により実行される。1mg/mlのフェノールを含む6N HCl中で、112℃で24時間処理(Atmosphere)する。アルファアミノ駱酸(AAbA)を、内部標準として加水分解産物中に含ませる。試料を2回解析する。加水分解したアミノ酸を、Waters ACCQ. Tag化学パッケージを使用して定量する。
Waters AccQ. Tag
これは、カラム前誘導体化技術である。AA誘導体をRP−HPLCで分画し、そして蛍光検出により定量する。A3レベルの較正が得られる(20、50、及び100ピコモル)。
材料
i)タンパク質加水分解:
反応バイアル集合(assembly)( Waters WAT007363)
試料チューブ(Waters WAT007571)
Pico. Tag ワークステーション(Waters WAT007370)
ii)AAA誘導体化、分画及び定量:
HPLC: Agilent 1090 Seriesシステム(Agilent Technologies)
検出器: FLD G1321A Agilent 1100シリーズ(Agilent Technologies)
励起: 250nm
放射: 395nm
カラム: AccQ.Tag C184μm 3.9x150mm(Waters WAT052825)
溶媒A: 900ml HO+90ml AccQ.Tag Eluent A Concentrate (WAT052890)
溶媒B: 水中60%アセトニトリル(Baker 9017)
Figure 2011500073
9.MALDI−TOF−MS
マススペクトロメトリー解析は、リニアモードで操作するVoyager DE−PRO MALDI−TOFマススペクトロメーター(Applied Biosystems)で実行された。エネルギー吸収分子として、シナピン酸を使用した。精製されたタンパク質試料を、1mg/mlの濃度の0.1%TFA溶液中に懸濁した。試料標的上に、1mgのタンパク質をスポットした。該タンパク質液滴上に1μlの飽和シナピン酸溶液(HO+0.1%TFA中50%アセトニトリル)を重層し、室温で感想させた。ABIの較正標準を使用して、各解析において質量較正を行った。
10.SE−HPLC法
HPLC: Waters Alliance 2695
移動相: 最終pH7.5の5OmMリン酸ナトリウム+NaCl 500mM
カラム: 室温のSuperdex 200 10/300GL。カラムは、垂直に使用しなければならない。
流速: 500μL/分〜750μL/分(圧力は最高で210psi)
オートサンプラー: 5℃のWaters Alliance 2695
検出: Waters Fluorescence 2475(Empower Softwareのエミュレーション474を用いる)を、励起波長280nm、放射波長348nm、ウインドウ18nm、ゲイン100, 減衰1で使用する。
実施例1
本発明の好ましいタンパク質は、コンパウンド1と称される、sIFNベータ−IgGFcmutである。コンパウンド1において、1つのサブユニット(IFNベータ−Fcmut腕部、配列番号8)は、IFN−βと、ヒトIgG1 Fcドメインの突然変異Fcドメインとの融合産物である。他のサブユニット(Fcmut腕部、配列番号3)は、前記第一のサブユニットのFc部分単独と同一である。両サブユニット中に存在するFc部分の配列は、イムノグロブリンエフェクター機能を低下させるべく、「G1M(non−1)マーカー」アロタイプの5つのアミノ酸を置換することにより改変されている(図1、3及び4)。比較のために、本明細書中で「コンパウンド2」と称される、WO 2005/001025に開示される、IFN−ベータのモノマー−ダイマータンパク質が調製される。コンパウンド2は、IFN−ベータとFcドメインとの間に8アミノ酸のリンカー配列を含み、異なるIgG1アロタイプと比較して、Fcドメインにおいて1つだけ突然変異(即ち、EUインデックス位置表記でN297E)を含む(図4)。
IFN−ベータと連結していないコンパウンド2のサブユニットは、配列番号15に記載されている。8アミノ酸のリンカーを介してIFN−ベータと連結しているコンパウンド2のサブユニットは、配列番号16に記載されている。
コンパウンド1の生産は、血清不存在下で培養したCHO−S細胞のクローンの作製により構築される。CHO−S細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞に由来し、無血清懸濁培養条件に適応している(Invitrogen/Gibco, La Jolla, CA)。
1.クローニング
コンパウンド1の生産に使用される発現ベクターC370(図11;C370ベクターの配列は、配列番号12に記載される)は、双方向性マウスCMVプロモーター(IE1及びIE2)を含む。IFN−ベータをコードする配列は、ヒトゲノムDNAに由来するものであった。IgG1重鎖cDNAクローン(「G1M(non−1)マーカー」アロタイプ)は、ヒト脾臓cDNAライブラリーに由来するMGC/Image共同体クローンから取得されるものであった。突然変異ヒトIgG1 Fcドメイン(IgGFcmut)は、「G1M(non−1)マーカー」アロタイプに由来するFcドメインを含むPEAK8プラスミドからPCRにより取得されるものであった。ここで該Fcドメインは、Quik change II突然変異生成システム(Stratagene)を使用する2つの工程において突然変異したものであった。幾つかの単アミノ酸置換をFcドメインに導入することにより、ADCC/CDCを媒介するのに重要なアミノ酸を突然変異させた(図2〜4)。第一の工程において、配列番号1の117LLGG120(即ちEUインデックスの234LLGG237)アミノ酸をコードする配列を、117AEGA120に突然変異させた。第二の工程において、配列番号1のA213(EUインデックスのA330)及びP214(EUインデックスのP331)アミノ酸をコードする配列を、S213及びS214に突然変異させた。sIFNベータ−IgGFmutのFc腕部とフレームを合わせた同種シグナルペプチド配列を含んで、IFN−ベータをコードするcDNAを、オーバーラッピングPCR(overlapping PCR)により作製し、そしてIE1プロモーターの下流をサブクローニングした。他の突然変異sIFNベータ−IgGFmutのFc腕部の配列をコードする配列と融合したマウスIgk軽鎖のシグナルペプチド配列をコードするcDNAをPCRにより作製し、IE2プロモーターの下流をサブクローニングした(図11)。
2.発現ベクターコンストラクト
それから、組換えPCRによりIFNベータ−Fmut腕部融合遺伝子を作製し、これをCHO細胞内で高いレベルで恒常的に発現する発現ベクターにクローニングした。最終的なベクターC370は、マウス双方向性CMVプロモーターを含む。
IFN−ベータダイマーとsIFNベータ−IgGFmutとの比率のバランスが望ましいものとなるように、Fcmut腕部コード配列を選択圧(selection pressure)に関連付けた。これにより、DSP精製の過程でより容易にIFN−ベータダイマーを排除できる。前記マウスCMV双方向性プロモーターは、コンパウンド1の2つの鎖の発現を駆動する。ポリオウイルス内部リボソーム侵入部位(IRES)を使用して、前記選択(selection)をFcmut腕部と連動させる。インスレーター配列を使用することにより、クロマチン近傍部位へのランダム挿入で起こり得る発現単位の抑制が遮蔽される。
3.トランスフェクション用DNAの調製
ステーブルトランスフェクションの水準を保証するために、トランスフェクション用プラスミドDNAを調製した。DH5α細菌(Invitrogen, Cat. #18265−017)を、供給元のプロトコルに従って、オリジナルプラスミドDNAを用いて形質転換し、アンピシリン100μg/mlの選択圧下で選択した。単一コロニーを拾い;細胞をアンピシリン100μg/mlを含む1mlのLB中で細胞を一昼夜培養して、それから100mlの培養で一昼夜増幅した。プラスミドは、Nucleobond PC 500 EFキット(Macherey−Nagel, Cat. #740550)のプロトコルに従って単離した。単離したプラスミドの水準は、OD260nm及びOD280nmを測定し、そしてOD260nm/OD280nmの比率が1.8を超えていることを測定することにより評価した。プラスミドの同一性は、4つの制限酵素を独立した反応で用いるDNA消化により評価した。Fcmut腕部及びIFNベータ−Fmut腕部のコード領域は、トランスフェクションに先立って両方向からシークエンシングされた。更に、プラスミドDNAは、元のベクターを切断する適切な酵素を用いて直鎖にされた。本ベクターC370は、ClaI(1.255 μg/μl)を用いて直鎖化された。
4.宿主細胞の起源及び標準的な培養手順
前記CHO−S細胞は、Invitrogenから入手した。トランスフェクションしていないCHO−S細胞は、L−グルタミン(Sigma, Cat. #G7513)を4.5mM添加したProCHO5培地(Bio Whittaker, Cat. #12−7660)中で培養した。トランスフェクションは、前記培地中で行った。選択において、4.5mMのL−グルタミン及び10μg/mlのピューロマイシン(Sigma, Cat. #P−7255)を添加したProCHO5培地を使用した。130rpmで振盪するT75フラスコ又はErlenmeyer(135 ml)フラスコ中で懸濁条件下の前記細胞株を培養し、これを5%COを含む37℃インキュベーター中でインキュベーションした。基本的に、週2〜3回の頻度で、0.2x10生存細胞/ウェルに希釈して、細胞を継代した。
5.細胞の凍結、融解及び培養
通常、バイアル当り5〜10x10生存細胞の密度で細胞を凍結した。必要な量の細胞を遠心分離し、それから0.5mlのProCHO5培地に再懸濁した。次に、DMSO(Sigma)を15%添加した0.5mlのProCHO5凍結培地(Bio Whittaker, Cat. #12−768E)を添加した。この細胞を−80℃で凍結し、それから窒素で冷却した保存タンクに移した。
融解において、アンプルを37℃のウォーターバスに置いた。次に、温めておいたProCHO5培地10mlに細胞を移し、800gで3分間遠心分離し、それからこれを、T75フラスコ中の新鮮な培地に、0.2〜0.4x10細胞/mlで再懸濁した。週2〜3回の頻度で、0.2x10生存細胞/mlに希釈して、細胞を継代した。T75フラスコにおいては10〜20mlの培地で、Erlmeyerフラスコにおいては35mlの培地で、細胞を培養した。
6.ステーブルトランスフェクション
トランスフェクションの前日に、4.5mMのL−グルタミンを添加したProCHO5培地中で培養していたCHO−S細胞を、0.7x10生存細胞/mlに希釈した。トランスフェクションは、12mlnのCHO−S及び10μg(8μl)のC370を用いて、エレクトロポレーションにより実行した。
7.選択
トランスフェクションの48時間後、細胞を計数し、遠心分離により培地を除去し、それから細胞を選択培地(L−グルタミン4.5mM及びピューロマイシン10μg/mlを添加したProCHO5)中で0.5x10生存細胞/mlに希釈した。培地は、2日置きに交換した。期間中、細胞密度をモニタリングし、生存細胞の数が0.1x10生存細胞/mlを下回ったときは、細胞をより小さい体積にまとめた。あるいは、生存細胞の数が増大したときは、細胞を0.4〜0.5x10生存細胞/mlに希釈した。この手順を、プールの生存率が90%に達するまで繰り返した。取得されたプールの生産率(タイター及び1日の細胞あたりのピコグラム(pcd))、及び生体活性(バイオアッセイ)が試験され、これらを単離プロトクローン(protoclone)に直接使用する。
8.プロトクローンの単離
ステーブルトランスフェクション細胞のプールを、0.3%(v/v)の0.5%フェノールレッド溶液(Sigma, Cat. #P0290)を添加した選択培地で、ウェルあたり(70μl)1個の細胞が含まれるように希釈し、これを、Multidrop分注ロボット(Thermo Labsystems)を用いて、384ウェルにプレーティングした。播種の2週間後、単一のプロトクローンを拾い、これを選択剤を含まない適切な培地200μlに懸濁し、これを96ウェルに再播種した。Beckman Biomek 2000ロボットを用いて、細胞を、1週間に1回20倍に希釈した。
9.クローンの単離及び評価
前記培養プロトクローンを、0.3%(v/v)のフェノールレッド溶液を添加した適切な培地で、0.4細胞/ウェル(70μl)の濃度に希釈し、これを、Multidrop分注ロボットを用いて384ウェルにプレーティングした。播種の4、5日後、各ウェル中の増殖を検鏡し、単一のクローンのみ増殖しているウェルにマークを付けた。クローン性を確認するために、増殖細胞を有するウェルの数を計数し、これがプレート全体の33%未満となるように維持した。培養の15日後、選択されたクローンを24ウェルプレートに移し、これを増殖させ、それから、定量Biacoreアッセイを用いて最初のプロトクローンのそれぞれにおける6つのクローンの生産性を更に解析した。T75フラスコ中で、タイター及び特定の生産性(Specific productivity)を、24時間ごとに評価した。最良のクローンを4つ選択し、更に振盪フラスコ実験において解析した。あるいは、Biacore法に代えて、RP−HPLC及びSE−HPLCを、解析法として使用する場合がある。
10.生産性測定
タンパク質濃度及び特定の生産性を、24時間ごとに測定した。このために、細胞を、10mlの新鮮な培地(60rpmで攪拌するT75フラスコ中)中に0.8x10生存細胞/mlで再懸濁した。24時間後、細胞を計数し、1mlの培養液を回収し、IFN−β特異的Biacoreアッセイに供した。特定の生産性(1日の細胞あたりのピコグラム(pcd)で表される)は、タイター(mg/l)/期間の始まりから終わりまでの間の平均細胞密度/期間の長さ(1日)として、計算した。攪拌フラスコ実験において、pcdは、所定の期間にわたるIVCの機能として計算した。
11.SDS−ウェスタンブロット解析
培養上澄を、ウェスタンブロット解析に供した。簡単に述べると、タンパク質試料を厚さ1mmの8〜18%濃度勾配アクリルアミドゲルを使用して、4℃で交流(30mA)のSDS−PAGEで分離し、その後、これをPVDF膜に転写した。抗IFNβ又はFcモノクローナル抗体を、エピトープ検出に使用した。
ノザンブロット解析
RNeasy MiniKitのプロトコル(Qiagen, Cat. #74104)に従い、8x10細胞からRNAを単離した。製造者のプロトコルに従い、NorthemMax(登録商標)−Gly kit(Ambion, Cat. #1946)を使用して、ノザンブロットを実行した。ウェルあたり100ngのRNAをウェルに注入し、これをアガロースゲル電気泳動(1%アガロース)により分離し、それからTurboblotterキット(Schleicher & Schuell, Cat. #10416328)を使用して、これをBrightStar−Plus膜(Ambion, Cat. #10102)に転写した。10μgのRNAラダー(Invitrogen, Cat. #15620−016)をサイズマーカーとして使用した。UV架橋(Strataリンカー)によりRNAを不動化し、そして焼き固めた(10分、70℃)。供給者のプロトコルに従い、DIG Northern Starter Kit (Roche, Cat. #2039672)を使用して、DIGを用いたプローブ標識及びハイブリダイゼーション(68℃)を実行した。ハイブリダイゼーションには、100ng/mlのRNAプローブを使用した。T3 RNAポリメラーゼを用いる標準的なインビトロ転写プロトコルを使用して、プローブを調製した。
取得されたパターンは、Hyper Film (Amersham Pharmacia Biotech, Cat. #RPN2103K)に前記膜を曝露し、又はChemi Doc (BioRad)を用いて画像を取得することにより検出された。
実施例2
1.発現
60mgのコンパウンド1を生産するために、5Lスケールのバイオリアクター中で、一般的培養プロセスを実行した。使用する細胞株(クローン)はCHO−Sであり、これを、「ボーラス流加培養」法(単一添加物を用いたバッチ培養)中、無血清条件下で培養した。所望の量を生産するには、これを2回行う必要がある。
各バイオリアクターの接種材料を作るために、細胞を振盪フラスコ中で増幅した。増幅は、125ml、500ml、及び1,000mlのフラスコに、それぞれ30ml、200ml、及び500mlの培地を入れて行った。5Lのバイオリアクターは、接種材料や栄養分の体積を含めて、最終的に3Lの内容物を含んでいた。
全ての段階で使用される維持培地は、4.5mMのL−グルタミンを添加した、Cambrex (Belgium)製ProCHO5であった。
2つのボーラスが添加された。第一のボーラスは、0.68g/Lのヒポキサンチン、0.194g/Lとなるチミジン0.56 g、42mg/LのL−システイン−HCI、0.5mMの葉酸及び4.5mMのL−グルタミン(最終濃度)を含むF1であった。ボーラスF2は、5mg/Lグルコースを含み、又は含まない4.5mM L−グルタミン(最終濃度)から構成された。培地中のグルコース量が3g/Lを下回ったときにのみ、F2にグルコースを添加した。
培養条件は、以下のように設定した。
−温度=37℃、細胞密度が最大になったときは32℃に下げる。
−攪拌=100rpm、最初のボーラス添加後、120〜130rpmに上げる。
−最高pH=7.3.COインキュベーションにより、アルカリ化を制御した。
O2=飽和濃度の50%とした。
播種時点及び培養6週間後の培養試料の細胞濃度は、それぞれ4.0x10及び3.4x10であり、最終的な生存率は約72%であった。
培養のパラメーターはオンラインで測定され、制御された。細胞計数、Trypan Blueによる生存率の評価、残留グルコース濃度(YSI analyzer, Yellow Springs Instruments)及び定性的タンパク質発現パターンが、オフラインで測定された。
2.精製
生産される他の形態からsIFNベータ−IgGFcmutタンパク質を効果的に単離する精製プロトコルが開発された。最初のCHOプールの培養により生産される材料を用いて、精製プロセスが構築された。これを直接スケールアップし、プロトクローンから細胞培養上澄を精製するのに使用した。
ここで、Fc−タグを付した分子は、以下のように称する:
−「遊離Fcダイマー」(Fcmut腕部/Fcmut腕部)
−「sIFNベータ−IgGFcmut」(Fcmut腕部/IFNベータ−Fcmut腕部ヘテロダイマー)
−「IFN−ベータダイマー」(IFNベータ−Fcmut腕部/IFNベータ−Fcmut腕部ホモダイマー)。
精製工程は、前記上澄中に存在する「sIFNベータ−IgGFcmut」を濃縮しつつ、殆どの関連する含有物(「遊離Fcダイマー」、「IFN−ベータダイマー」、切断形態及び凝縮形態)及び非関連生産物(培地に由来するタンパク質及びCHO細胞により分泌されるタンパク質)を排除することを本質とする。プロテインAによる最初の捕捉工程は、Fc−タグが付された全ての分子と結合する。それから、流出物は、IFN−タグが付された分子と優勢に結合するBlue Sepharoseゲルに注入され、これによりほとんどの「遊離Fcダイマー」を分離する。
最後の2つの工程は、洗浄工程として機能し、「IFN−ベータダイマー」及び高分子量分子の大部分を除去する、イオン交換クロマトグラフィー及びその後のサイズ排除クロマトグラフィーである。該プロセスは2回行われ、各回に開始材料として3Lの細胞培養上澄を使用して、所望の量のコンパウンド1を生産した。
2.1.プロテインAの捕捉工程
53mlのMab Select Sure (GE Healthcare)を充填したカラムをPBSで平衡化した後、線流速を35cm/hまで低下させることにより、カラム上に一昼夜前記試料を注入した。それから、アウトプットシグナルがベースラインまで後退するまで、該カラムをPBSで洗浄した。100%の0.1Mグリシン(pH2.7)を用いて、溶出は単一の工程で行われた。溶出ピークがプールされ、1mg/mlの濃度に相当するA[280]=1.38AUをもたらすモル吸光係数110230を使用するUVにより定量された。
溶出物(sIFNベータ−IgGFcmut、IFN−ベータダイマー及びFcダイマー)の最も豊富な分子種のモル吸光係数は類似しているため、UV光度分析による直接の定量が可能である。それから、該溶液は0.1Mグリシン(pH2.7)で1.3mg/mlに希釈され、すぐに20%(v/v)の1Mトリス(pH8)を添加して中和された。
2.2.Blue Sepharoseによる精製
G25の緩衝剤交換工程の後、タンパク質の内容を定量し、そして該溶液を、Blue Sepharose 6 Fast Flowゲル(GE Healthcare)に注入した。これを2回並行して行った。sIFNベータ−IgGFcmutはこの媒体と容易に結合するが、遊離Fcダイマーの殆どは、フロースルー分画に回収される。
50mMのトリス−HCl(pH8.5)を用いた第一の洗浄により、残留遊離Fcダイマー種が除去され、そして56%の50mMトリス−HCl(pH8.5)及び44%の45%プロピレングリコール+1.4M NaCl+50mMトリス−HCl(pH8.5)溶液を用いた溶出工程により、一部の凝集物大美IFN−ベータダイマーが除去された。100%の45%プロピレングリコール+1.4M NaCl+50mMトリス−HCl(pH8.5)緩衝液を用いた第二の溶出工程の溶出液は、大部分がsIFNベータ−IgGFcmutで、若干のIFN−ベータダイマーを含んでいた。
2.3.Q Sepharose Fast Flowによる精製
Blue Sepharose工程で得られた溶出物を、50mMのトリス(pH8.5)で緩衝剤交換し、これをQ Sepharose Fast Flowカラムに注入した。50mMのトリス(pH8.5)で洗浄した後、0.5MのNaCl+50mMのトリス(pH8.5)に達する塩勾配を適用した。sIFNベータ−IgGFcmutを含む強い主要なピークを回収し、UV−光度分析により定量した。
それから、この溶出物を10kDa Centriprepフィルターユニット(Amicon)に注入し、次の最終工程の前に材料を濃縮した。
2.4.Superdex 200による精製
前記タンパク質溶液は、サイズ排除クロマトグラフィーに付された。高い分解能を維持するために、注入する体積を最小にし、故に、複数回の注入が必要であった。前記タンパク質を50mMトリス+500mM NaCl+10%グリセロール(pH7.5)中で製剤化する旨が明記されていたので、ゲル濾過に使用された緩衝剤は、50mMトリス(pH7.5)+500mMNaClであった。所望のタンパク質中に凝集物やIFN−ベータダイマーが入り込まないように、鋭いピークの中央部分のみを回収した。それから、カットオフが10kDaのCentriprepフィルターを用いて前記タンパク質を1mg/mlにまで濃縮し、10%グリセロールを添加した。最後に、この溶液を、0.22μm膜で滅菌し、分注した。バイアルを、−80℃で保存した。
最終的に精製されたタンパク質は、本質的に、sIFNベータ−IgGFcmutで構成される。遊離Fcダイマーは殆ど含まない。
前記精製プロトコルは、CHOプロトクローンの細胞培養上澄3Lから、約60mgの精製コンパウンド1を取得できる。
sIFNベータ−IgGFcmutのSDS−PAGE解析は、該タンパク質の両ポリペプチドがグリコステロイド(Fcドメイン及びIFN−ベータ)であり、それらはジスルフィド結合により連結されている。従って、コンパウンド1の精製度及び活性の程度は高い。最終的な精製タンパク質は、本質的に、sIFNベータ−IgGFcmutで構成される(遊離Fcダイマーは殆ど含まない)。
実施例3−生産能力
実施例1及び2に従い、コンパウンド1を発現するプールの生産が実行された。トランスフェクション及び選択の後、IFN−βを測定するために開発されたBiacoreアッセイを用いて、前記分子の発現を試験した。
ProCH5培地を使用して、前記プールの、24時間の周期中の分泌を試験した。より高い特異的な生産性は、低温で取得された。
標準的な1細胞/ウェルのアレイから、プロトクローンを単離した。約300のプロトクローンを選択し、HTSフォーマットにおける生産能力を試験した。
HTSアッセイの試験結果が最も良好な15のプロトクローンを6ウェル及びT75フラスコにおいて、24時間周期のHTSアッセイに付して、3つの候補プロトクローンを選択した。これらの3つのプロトクローンを、0.4細胞/ウェルのアレイによりクローニングした。各プロトクローンにおいて、20クローンを選択するが、この際、それらが選択された元のプレートが、統計的なクローニングの基準(視覚的検査の後、2つのコロニーを有する任意のウェルを除き、回収率が33%未満である)に適合することを確認する。
まず、前記クローンを、HTSアッセイにおいてスクリーニングし、各プロトクローンを起源とするものから最良のクローン5つを、更に振盪フラスコ中のバッチ培養において試験した。最初の播種は、37℃のProCHO5に0.2x10生存細胞/mlで行った。振盪は、130rpmで行った。前記培養物は、生存率が低下し始める頃のWD7で停止した。培養物は、細胞数、生存率、タイターが試験され、そしてSDS−WBを実行して、異常な分子サイズ及び挿入を示すクローンを排除した。2つの最良のクローンは、37℃でタイターが40mg/lt、及びPCDが4付近を示した。細胞密度は正常で、増殖は強力で、早期の細胞死の兆候も無く、SDS−WBブロットの検出では、完全な分子を発現していた。
前記2つの最良のクローンを選択し、更に温度シフトを用いて、振盪フラスコ中で再試験した。それらの結果は、振盪フラスコ中で取得された最初の結果を補強するものであった。
IFN−ベータ特異的Biacoreアッセイによる検出において、120mg/ltに達するタイターが、温度を下げることにより取得された。これは、コンパウンド1が由来する特定のクローンを使用して取得された。その細胞は、バッチ中、強力な増殖及び極めて良好な生存率を示した。特定の生産性は、12pcdに達した。よって、このクローンは、有利なプロフィール、及び医薬品質管理基準/優良試験所基準(Good Laboratory/Manufacturing Practice (GLP/GMP))を満たす材料を生産するためのプロセス開発における非常に良好な可能性を示した。標準的なプロトコルに従い、回答後の生存率及び細胞増殖を評価した。FDA準拠プロトコルを使用して、マイコプラズマ及び無菌性試験を行った。
実施例4−安定性及び溶解度
4.1.使用されるバッチ
コンパウンド1を、前記元の緩衝剤:5OmMリン酸ナトリウム+NaCl 500mM+10%グリセロール(pH7.5)で1:2に希釈した。試験に供されるタンパク質は、0.66mg/mlであった。
4.2.試験条件
SE−HPLCによる熱安定性:
−1週間40℃
−1ヶ月5℃
−25℃で1ヶ月25℃
1サイクル及び5サイクル凍結/融解(−20℃)後の安定性を、SE−HPLCで測定した。
4.3.結果
t=0の時点で、試料は、sIFNベータ−IgGFcmutの濃度は98.5%以上で、HMWは2%未満であった。
1週間40℃の後、sIFNベータ−IgGFcmutの濃度は約81%に低下し、HMWは約19%となる。
1ヶ月5℃の後、sIFNベータ−IgGFcmutの濃度は約99%であり、HMWは僅かに減少する。
1ヶ月25℃のインキュベーション後、2つの試料のいずれも沈殿が生じた。SEC解析によると、予想されるsIFNベータ−IgGFcmutのピークは、より長い保留時間を経て溶出され、他のより低分子量のピークが存在していた。SDS−PAGE及びN−末端シークエンシング(SDS−ゲル電気エイド後にPVDF膜に転写する)による更なる解析の結果、融合部位付近が加水分解されるという仮説が確認され、そしてIFN−βの痕跡は何も見出されなかった。
1回及び5回の凍結/融解の後、sIFNベータ−IgGFcmutの含有量は、約98%であった。
4.4.凍結融解実験
試料を試験濃度に希釈し、4℃で少なくとも24時間保管して平衡化する。それから、t=0時点でのSECプロフィールを測定した後、試料を少なくとも1日−20℃で保管し、それから+4℃で(少なくとも1日)溶解して、これをSECで解析する。
4.5.凍結/融解実験(5サイクル)
試料を試験濃度まで希釈し、これを4℃で少なくとも24時間保管して平衡化する。それから、t=0時点でのSECプロフィールを測定した後、試料を少なくとも1日−20℃で保管し、それから+4℃で(少なくとも1日)溶解して、これと同じ手順でこのサイクルを5回繰り返して凍結/融解する。最後に、5回目の融解の終了時(及び少なくとも24時間4℃の再平衡化の時点)試料をSECにより解析する。
4.6.溶解度
タンパク質を、50mMリン酸ナトリウム+500mM NaCl+10%グリセロール(pH7.5)からなる緩衝剤(予備調製)中で、−80℃で保存した。該パッチは、1.32mg/mlの濃度のコンパウンド1を含んでいた。保存緩衝液中のこのバッチについて、安定性及びF/T試験を行った。
実施例5−2つのIFN−β−Fcヘテロダイマータンパク質:コンパウンド1及びコンパウンド2の生物学的挙動
5.1.導入
IFN−β1a(参照調製物3MIU/mL、11μg/mL)と比較して、IFN−β−Fcヘテロダイマータンパク質の2つの調製物、コンパウンド1及びコンパウンド2の生物学的挙動を、抗ウイルス性(WISHA/SV、図5)及び抗増殖性(WISH細胞、図6)、及びレポーター遺伝子アッセイ(pMx−LucでトランスフェクションしたサルVera細胞)の観点から評価した。
5.2.方法
5.2.1抗ウイルスアッセイ
IFN−β−Fcヘテロダイマータンパク質の抗ウイルス活性を、WISH細胞(羊膜)にIFN−β分子が及ぼす、水疱性口内炎ウイルス(VSV; Rubinstein et al. 1981)による細胞変性作用(CPE)に対する防御効果を測定することにより研究された。
MEM+10%FBS中で増殖するWISH細胞を、8つ連続で1:1.5に希釈していったIFN−β試料(0.7ng/mLで開始する)を含む96ウェルマイクロタイターの各ウェル中に、MEM+5%FBS中4x10細胞の密度で播種した。そして、細胞を、37℃、5%COで、18〜22時間インキュベーションした。このインキュベーション時間の最後に、VSV懸濁物(MEM+2.5%FBS中)を添加し、更に37℃、5%COで20〜25時間インキュベーションした。それから細胞をMTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)で染色し、マルチウェル走査型分光光度計により、各ウェル中の光学密度(595nmのO.D.)を測定した。
前記IFN−β−Fc調製物は、2つの独立した実験を経て、並行して試験された。故に、作成された用量応答曲線は、S字状(勾配が変化する)用量応答曲線により補間された(Graph Pad Software)。濃度(pM)をx軸上に、そしてコントロールウイルス及びコントロール細胞(0%及び100%増殖)で正規化した関連する吸光度(OD)の値を、細胞変性作用の阻害パーセントとしてy軸上に表した。
5.2.2.抗増殖性アッセイ
MEM+5%FBS中のWISH細胞を、9つ連続で1:2に希釈していったIFN−β試料(40ng/mLで開始する)を含む96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェル中に、1x10細胞の密度で播種して、細胞を、37℃、5%COで、72時間インキュベーションした。このインキュベーション時間の最後に、細胞をMTTで染色し、マルチウェル走査型分光光度計により、各ウェル中の光学密度(595nmのO.D.)を測定した。
前記IFN−β−Fc調製物は、2つの独立した実験を経て、並行して試験された。故に、作成された用量応答曲線は、S字状(勾配が変化する)用量応答曲線により補間された(Graph Pad Software)。濃度(pM)をx軸上に、そしてコントロール細胞(IFN−β無添加、100%増殖)で正規化したODの値を、細胞増殖のパーセントとしてy軸上に表した。
異なる細胞/ウイルス系(例えば(A549/EMCV)及び異なる細胞株(Hs294T)も、抗ウイルス及び抗増殖活性の測定に使用され得る。
5.2.3.レポーター遺伝子アッセイ
レポーター遺伝子アッセイ(RGA)は、IFN−β活性をモニタリングするための高度に特異的かつ高感度のインビトロバイオアッセイとして開発された。内性的IFN−α及びIFN−βが欠損しているVero細胞(アフリカミドリザル腎臓細胞、ATCC, CCL 81)に、IFN−α/β誘導性マウスMx1プロモーターの制御下にあるルシフェラーゼ(Luc)遺伝子を担持するpMx−Lucプラスミドを用いてステーブルトランスフェクションした。IFN−βによるLuc誘導性に基づき、1つのクローンを選択した(Canosi et al. 1996)。
前記アッセイは、ルシフェラーゼによるルシフェリンの酸化により放出される光の測定に基づく。
トランスフェクションされたサルVera細胞により生じるルシフェラーゼの量は、添加されたIFN−βの量に対応し、ソフトウェアに接続したルミノメーターにより自動的に測定される。
最初の濃度が234pg/mLで、これを7つ連続で1:2に希釈していったIFN−β試料を含む96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェル中に、前記Vera細胞をを播種した(40,000細胞)。インキュベーション(37℃、5%CO)の約21時間後、アッセイプレートを逆さにして内容物を除去し;各ウェル中の細胞層をPBSで洗浄し、細胞溶解緩衝剤を添加した。プレートを室温で15分放置し、それからVictor Light 1420中にセットし、ここでルシフェラーゼアッセイ試薬(LAR)が自動的に各ウェルに注入され、ルシフェラーゼによるルシフェリンの酸化により光が発生し、1秒あたりのカウント(cps)が測定される。
前記IFN−β−Fc調製物は、2つの独立した実験を経て、並行して試験された。故に、各アッセイにおいて作成された用量応答曲線は、S字状(勾配が変化する)用量応答曲線により補間された(Graph Pad Software)。ここで、質量として表されるIFN−β活性(pg/mL)をx軸上に、そして基底値及び最高値(0%及び100%増殖)で正規化した関連するcpsの値を、cpsのパーセントとしてy軸上に表した。
細胞に加えられた実際のINN−β濃度を計算するために、TFN−β−Fc中のIFN−β質量が考慮された:
−コンパウンド1:0.94mg/ml IFN−β−Fc=0.26mg/mL IFN−β、
−コンパウンド2:1.10mg/ml IFN−β−Fc=0.31mg/mL IFN−β。
5.2.4.結果及び結論
使用される細胞の種類に拘らず、sIFNβ−IgGFcmut(コンパウンド1)は、EUインデックスの位置表記で297がNからAに突然変異しているモノマー−ダイマータンパク質(コンパウンド2;図5〜7)、及びヒト組換えIFN−β調製物と比較可能な生体活性を示した。
実施例6−バイオアッセイ
コンパウンド1及びコンパウンド2のタイターは、理論に基づいて計算され、そしてIFN−βのタイター決定に現在利用されている標準的な方法(VSV−WISH)を使用して決定された。その結果を、表2にまとめる。
Figure 2011500073
理論的な活性は、以下の考慮に基づく:
IFN−β(22kD)において、MIUからμgへの変換係数は3.66である。ゆえに、1MIUは、3.66μgに対応する。
IFN−β−Fc(77kD)において、質量特異的活性が線形であると仮定すると、上記係数は3.5倍、つまり12.8となる。ゆえに、1MIUは12.8μgに対応する。
実施例7−Fc受容体/補体結合アッセイ
7.1.導入
IFN−β融合タンパク質は後退Fc部分を有しているため、抗体に関連するエフェクター作用:抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を引き起こす可能性を有する。
ADCCにおいて、抗原特異的抗体(例えばIgG)は、抗原を発現する細胞を殺傷するためのFcガンマ受容体(FcγR)を発現する、自然免疫系の免疫エフェクター細胞を指向する。FcγRは、NK細胞、好中球、単球/マクロファージ、樹状細胞及びB細胞において発現し、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)の3つのクラスを構成する。ヒトにおいて、FcγRII及びFcγRIIIは、更にFcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa及びγRIIIbに区別される。これらの受容体は、様々なIgGサブクラスとの親和性が相異しており、高親和性、中親和性、又は低親和性受容体に分けられる。項親和性受容体(CD64)はモノマーIgGと結合し、通常血清中のIgGが結合部位を埋めている。中親和性及び低親和性受容体(それぞれCD16及びCD32)は、凝集したIgG 及びIgG含有免疫複合体と結合する。NK細胞は、ADCCの主役であると信じられているが、単球−マクロファージ及び好中球も一定の役割を果たし、NK細胞が発現するCD16は、「ADCC受容体」と称されている。NK細胞は、細胞傷害性顆粒(パーフォリン(perforin)、グラニュリシン(granulysin)及びグランザイム(granzyme))の放出を通じて、標的細胞を殺傷する。
いわゆる「古典的経路」を介した補体活性化は、抗原と複合体を形成したイムノグロブリン、IgG又はIgMのFcドメインにC1qが結合することにより生じる。C1qはヒト結成中におよそ70μg/mLの濃度で存在する、約410kDaの巨大な糖タンパク質複合体である。
C1r及びC1sの2つのセリンプロテアーゼと共に、C1qは、第一の補体の構成要素であるC1複合体を形成する。4つのヒトIgGサブクラス(モノマー形態)のC1qと結合する能力は、lgG3>lgG1>lgG2>lgG4の順に低下する(IgG4は補体を活性化しない)。ヒンジ依存的Fab−Fab及びFab−Fcの柔軟性は、C1qと結合する補体結合部位の接触性を規定するので、ヒトIgGサブクラス中でヒンジが最も長いIgG3は、補体活性化において最も効果的なサブクラスである。IgG4が補体を活性化できないのは、Fcフラグメントの構造及びFab腕部による補体結合部位の立体障害による。
コンパウンド1は、「エフェクター作用」、即ちFcγ受容体及びC1qとの結合を低下させる改変を含む。これらの突然変異の有効性を形式的に実証するために、コンパウンド1とコンパウンド2との間で、Fcγ受容体の1つであるFcγRI(CD64)及びC1qとの結合能力を比較する研究が実行された。細胞ベースのフローサイトメトリー及びELISA結合法を採用した。
7.2.結果
コンパウンド1及びコンパウンド2は、ヒトIgG1と比較して、CD64(FcγRI)との結合能力の低下を示す。
IgG4及びIgG1のいずれも、トランスフェクションされたAII1.6細胞の表面に発現するCD64と、用量依存的に結合した。IgG4は、IgG1と比較して、僅かに結合が弱かった。対照的に、コンパウンド2は、ヒトIgG1よりも実質的に結合が弱く、コンパウンド1は、結合の更なる低下を示し、そのレベルは陰性対照により得られるレベルと同等であった(図8)。トランスフェクションしていないIIA1.6細胞とは、いずれの分子も結合しなかった。
コンパウンド1及びコンパウンド2とC1qとの結合を特定するために、ELISA−C1q結合アッセイを実行した。その結果を、図9に示す(図9a及び図9b)。IgG1は高度なC1q結合活性を示し、一方化合物1、又は陰性対照(Neg及びIgG4)は、結合が検出されなかった。化合物2の結合は極めて僅かであり、IgG2は、これらの実験条件下では、C1qと結合しなかった。
コンパウンド1及びコンパウンド2のC1qとの結合能力を更に調査するために、表面プラズモン共鳴センサーを使用して、これらの分子のC1qとの親和性を測定した。IgG1は陽性対照とみなされ、一方IgG4は陰性対照に含まれた。
デキストラン表面への第一級アミン基の架橋により、CM5チップ上にIFN−β−Fc分子及び前記対照を個別に不動化した。Biacore 3000バイオセンサー中で、不動化タンパク質とC1qとの結合及び解離をリアルタイムでモニタリングした。C1qとIgG1との結合は、センサーグラムの結合相の間の応答の鋭い増大、及び解離相における緩慢な低下により特徴付けられた。コンパウンド2は、C1qとは殆ど結合を示さず、一方コンパウンド1は、結合を示さなかった。
よって、コンパウンド1に含まれる突然変異は、コンパウンド1とC1qとの結合を完全に遮断する(図9)。上記研究は、コンパウンド1のFc部分に導入された突然変異が、コンパウンド2と比較して、CD64(FcγR1)−トランスフェクション細胞に対する該分子の結合を効果的に低下させるのみならず、C1qに対するコンパウンド1の結合を無効化することを実証する。内性的CD64を発現するトランスフェクションしていないU937ヒト単球細胞においても、同様の結果が得られた。CD64トランスフェクション細胞の場合、結合のレベルは、陰性対照を用いて得られるレベルと同一であった。
要するに、取得されたデータは、コンパウンド1が、この研究で採用した実験条件下でC1qと結合しないのに対して、コンパウンド2が僅かに結合能力を保持していることを実証する。
実施例8−サルにおけるPK/PD試験
ヒトIFN−βにヒトとほぼ同レベルで応答する唯一の動物であるサルにおいて、薬物動態/薬力学(PK/PD)試験を実行した。
コンパウンド1及びコンパウンド2のいずれも、サルにおけるIFN−β血清レベルの解析用の酵素免疫アッセイ(FujiRebio製、サル血清中のIFN−ベータ解析用に改変及び認証された)を使用して、血清試料の解析を行った。
IFN−β標準に代えて、コンパウンド1及びコンパウンド2を、較正曲線の構築に使用した。
8.1.導入
コンパウンド1は、Fcγ受容体及びC1qとの結合を低下させるための幾つかの突然変異を含む。これらの突然変異がコンパウン1のPK/PD能力を変化させるか否かをチェックするために、ヒトIFN−ベータに応答する唯一の動物種であるサルにおけるインビボ研究を実行した。第一の群は、参照として、皮下投与により55 pMol/kgのRebif(登録商標)の投与を受けた。第二のサル群はコンパウンド2の投与を受け、一方第三のサル群はコンパウンド1の投与を受け、これらはいずれも、138pMol/kgの用量が肺に沈着するように吸入投与されたものである。IFN−β、コンパウンド1及びコンパウンド2は、ネオプテリンと共に、血清レベルが測定された。非コンパートメント解析に従い、投与前に既に存在していた濃度を差し引いた後、PK及びPD解析を実行する。
8.2.薬物動態の結果
皮下経路で55pMol/kgのRebif(登録商標)を投与した後のIFNβの血清レベル、平均沈着用量が138pMol/kgとなるように吸入経路で投与した後のコンパウンド1の血清レベル、そして平均沈着用量が138pMol/kgとなるように吸入経路で投与した後のコンパウンド2の血清レベルの平均血清プロフィールを、図10に示す。コンパウンド1及びコンパウンド2の平均沈着用量が138pMol/kgとなるように吸入投与した後、平均Cmaxは、中央時間の8時間において、22.51+7.43pMol/L(コンパウンド2)及び16.36+6.94pMol/Lであり、これらは、Rebif(登録商標)の平均Cmaxが、中央tmaxの3時間の時点で1.40±1.10pMol/Lに達したことと対比されるべきである。AUClastは、コンパウンド2において886+393h.pMol/Lであり、コンパウンド1において505+322h.pMol/Lであり、これらは、Rebifの平均AUClastが12.5+20.0h.pMol/Lであったことと対比されるべきである。
明確な排除半減期は、コンパウンド2では27+4.5hであり、コンパウンド1では24.1+8.4hであった。コンパウンド1及びコンパウンド2のいずれも、通常の、定常的な血清レベルを示し、IFN−βにおいて検出される数値より大分高かった。実際に、いずれも、注入されたRebif(登録商標)と比較して、遥かに高い累積曝露を示した。
ネオプテリン血清レベルのベースライン補正された平均(SD)血清プロフィールは、皮下経路で55pMol/kgのRebif(登録商標)を投与した後、平均沈着用量が138pMol/kgとなるように吸入経路でコンパウンド1を投与した後、及び平均沈着用量が138pMol/kgとなるように吸入経路でコンパウンド2を投与した後に計算された。主要な薬力学パラメーターを、表3に示す。
Figure 2011500073
哺乳類において、通常約1ng/mLの数値に対して、投与前のネオプテリンレベルは1.11〜5.06ng/mLである。この事実は考慮されるべきである。なぜなら、投与前レベルが高いと、ネオプテリンの更なる増大を観察する機会を逸する場合があるからである。Rebif(登録商標)の皮下投与の後、予想通り、5匹中4匹のサルにおいてネオプテリンの増大が観察された。1匹のサルはネオプテリンの増大を示さなかった。このサルはネオプテリンのレベルが最高であり(4.4ng/mL)、IFN−βは測定できなかった。これらの2つの要素(ネオプテリンが高く、恐らく投与量が少なかった)が、応答の欠如をもたらしたと考えられる。これは、検出可能なIFN−βレベルを示す血清サンプルが1つだけであったという事実に拘らず、もう1匹のサルが明確なネオプテリン応答を示していたという検討により支持される。このサルにおいて、投与前の濃度は2.0ng/mLであった。コンパウンド1又はコンパウンド2を沈着用量が138pMol/kgとなるように吸入投与した後、殆どの動物は、ネオプテリンレベルの僅かな増大を示した。この僅かな増大は一部の動物においてより明確であり、一方その他の動物は、明確なIFN−β−Fc PKプロフィールを有しているにも拘らず、ベースライン濃度を超える血清試料が殆ど無かった。全体的に、コンパウンド1及びコンパウンド2のいずれも、類似のPK及びPD挙動を示した。
以下の表4は、配列表及び本テキスト全体に記載されている配列の同一性を明らかにしている。
Figure 2011500073
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  1. 2つのサブユニットを含む突然変異IgG Fcドメインと融合した単一IFN−ベータ(single IFN−beta)を含むタンパク質であり、第一のサブユニットがIFN−ベータタンパク質と連結していない突然変異IgG Fc腕部を含み、第二のサブユニットが単一IFN−ベータタンパク質と連結した突然変異IgG Fc腕部を含み、該IgG FcドメインがIgG1 Fcドメインであり、少なくとも以下のアミノ酸位置:EUインデックスの位置表記で234、235、237、330、及び331が突然変異していることを特徴とする前記タンパク質。
  2. 前記IgG1 Fcドメインにおける5個のアミノ酸突然変異が、ADCC及びCDCの低下又は阻害を目的としたものである、請求項1に記載のタンパク質。
  3. 前記IgG1 Fcドメインにおける5個のアミノ酸突然変異が、L234A、L235E、G237A、A330S、及びP331Sである、請求項1及び2のいずれか1項に記載のタンパク質。
  4. 前記IgG1 Fcドメインが、EUインデックスの位置表記で297に該当するアミノ酸のNがAに突然変異したものを含まない、前記請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
  5. 前記IgG1 Fcドメインが、297の位置にアミノ酸Nが存在するものである、前記請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
  6. 前記第二のサブユニットが、Fc腕部と単一IFN−ベータタンパク質との間にリンカーを含み得る、前記請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
  7. 前記リンカーが配列番号13の配列を含み、又はこの配列からなる、請求項6に記載のタンパク質。
  8. 前記第一のサブユニットが配列番号3の配列を含み、又はこの配列からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のタンパク質。
  9. 前記第二のサブユニットが配列番号8の配列を含み、又はこの配列からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のタンパク質。
  10. 配列番号3の配列及び配列番号8の配列からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のタンパク質。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  12. 配列番号4の配列若しくは配列番号9の配列を含み、又はこれらの配列からなる、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
  13. 配列番号12の配列を含み、又はこの配列からなる、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
  14. 請求項11〜13のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  15. 請求項14に記載のベクターを用いて形質転換した宿主細胞。
  16. CHO細胞である、請求項15に記載の宿主細胞。
  17. 請求項1〜10のいずれかに記載のタンパク質を含む医薬組成物。
  18. 医薬として使用される請求項17に記載の医薬組成物。
  19. 多発性硬化症治療用の医薬を調製するための、請求項18に記載の医薬組成物の使用。
  20. 請求項1〜10のいずれかに記載のタンパク質の製造方法であって、請求項15又は16に記載の宿主細胞の培養、及び前記タンパク質の単離を含む方法。
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