ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
1.布材
本実施形態1.に係る布材は、導電線材及び非導電線材を含む布材であって、非導電線材を部分的に除去して形成され導電線材を露出させる露出部と、露出部で露出された導電線材に電気的に接続される接続部材と、を備え、露出部は、布材が張設される枠体より内側に配置される複数の孔を有し、接続部材は、複数の孔を覆うように布材に取り付けられていることを特徴とする。
上記「非導電線材」は、布材を構成する限り、その材質、形状等は特に問わない。この非導電線材としては、例えば、導電線材よりも燃焼又は溶融し易い線材を採用することができる。この場合、非導電線材は、導電線材よりも低融点であるか、又は限界酸素指数(LOI)が26未満の線材であることが望ましい。この限界酸素指数(LOI)とは、絶縁繊維などの線材が燃焼を持続するために必要な最小酸素量から求めた酸素濃度の指数(O2%)である。限界酸素指数(LOI)は、「JIS K 7201 高分子材料の酸素指数燃焼試験方法」や、「JIS L 1091(1999) 8.5E−2法(酸素指数法試験)」に準拠して測定できる。
上記非導電線材の材質としては、例えば、植物系及び動物系の天然繊維、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる化学繊維及びこれらの混紡繊維を例示できる。これら繊維は、比抵抗が108 Ω・cmを超える絶縁繊維である。そして絶縁繊維の線材(紡績糸、フィラメント、延伸糸又は伸縮加工糸(仮撚加工糸や座屈糸)などの線材)を布材の構成として使用することができる。そして一般的な天然繊維はLOIが26未満であることが多い。例えば綿のLOIは18〜20であり、羊毛のLOIは24〜25である。そして天然繊維では、綿、麻又は羊毛が風合いに優れるため、布材の構成として用いることが好ましい。
また一般的な化学繊維は、導電繊維よりも低融点であることが多い。そしてLOIが26未満の化学繊維として、例えばポリエステル(LOI:18〜20)や、ナイロン(LOI:20〜22)を例示できる。そして化学繊維では、ポリエステル繊維やポリエチレン繊維(例えばポリエチレンテレフタレートのフィラメント)は耐久性と耐光性と強度に優れるため、布材の構成として用いることが好ましい。
上記「導電線材」は、通電可能な導電性の線材である限り、その材質、形状等は特に問わない。この通電線材は、典型的に比抵抗が100 〜10−12Ω・cmである。この比抵抗(体積抵抗率)とは、どのような材料が電気を通しにくいかを比較するために用いられる物性値であり、例えば「JIS K−7194」に準拠して測定することができる。この導電線材を含むことで、布材自体を、静電容量式センサの電極やヒータとして用いることができる。上記導電線材としては、金属線(例えば金属や合金などの導電糸)、炭素繊維のフィラメント及びメッキ線材(後述)を例示できる。また導電線材に非導電線材を撚り合せる(カバリングする)こともできる。ここで炭素繊維とは、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)やピッチ系炭素繊維である。なかでも焼成温度1000℃以上の炭素繊維(炭素化繊維、黒鉛化繊維、黒鉛繊維)は良好な電気伝導性を有するため、導電線材として好適に使用できる。
また金属線の材質として、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、鋼、亜鉛、錫、ニッケル、ステンレス、アルミニウム及びタングステンを例示できる。なかでもステンレス製の金属線は、耐食性及び強度に優れることから、導電線材として好適に使用することができる。ここで鋼種は特に限定しないが、SUSNo304、SUSNo.316及びSUSNo.316Lを例示できる。SUSNo304は汎用性が高く、SUSNo.316及びSUSNo.316Lはモリブテンが含まれるため耐食性に優れる。
ここで金属線の線径は特に限定しないが、強度や柔軟性を考慮すると、φ10〜150μmの金属線を用いることが好ましい。なお線径が小さい金属線ほど、柔軟性に優れる導電線材となる。そして導電線材として、他の線材の芯糸に対して、S又はZ撚方向に金属線(鞘糸)をカバリングしたカバリング糸を使用できる。すなわち線径の細い金属線(導電糸等)は、柔軟性に優れるが、引張強度が十分でない場合には、例えば芯糸にポリエステルフィラメントを用い、その鞘糸としてS及びZ撚方向にカバリングすることによって引張強度の補強ができる。
また導電線材は、金属線(芯部)と、樹脂層の鞘部を有することが好ましい。すなわち細径の金属線(導電糸等)は、表面積が広く、錆による影響が大きい。したがって、樹脂コーティングが行われることが好ましい。コーティングのし易さ、耐久性、接続部での除去のし易さから樹脂によるコーティングが好ましい。樹脂としては、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリエステルなど特に限定はないが、ポリウレタンが耐久性から好ましい。またコーティング(樹脂層)の厚さは、ポリマー種や耐久性、用途に応じて選択することができ、例えば0.05〜500μm程度に設定することができる。コーティング方法は特に限定しないが、ポリマー分散液中に金属線を通してポリマーを付着させ、熱をかけて固着させる方法が好ましい。またポリマー粉末やポリマー溶融物を金属線に付着させたのち、必要に応じて加熱などして固着させることもできる。そして金属線へのこれら樹脂コーティングも加熱手段(後述)によって溶融又は燃焼させて除去することによって導電線材を露出させることができる。
そして上記導電線材は、非導電線材よりも高融点を有する線材であるか、または限界酸素指数(LOI)が26以上の線材である。金属や合金などの導電糸は、典型的に天然繊維や合成繊維よりも高融点である。また金属や合金などの導電糸のLOIは典型的に26以上である(例えばステンレス繊維のLOIは49.6である)。そして炭素繊維(PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維)は、非溶融性であるとともに、そのLOIが60.0以上である。
そしてメッキ線材は、非導電性又は導電性の線材(芯部)と、金属又は合金のメッキ部を有する。メッキ部を形成することで、非導電性の線材を導電化できる。また導電性の線材にメッキ部を形成することで、その耐久性を向上させることができる。非導電性の線材(芯部)として、パラ系アラミド繊維(LOI:29)、メタ系アラミドPBO繊維(LOI:68)、ポリアクリレート繊維(LOI:28)、PPS繊維(LOI:34)、PEEK繊維(LOI:33)、ポリイミド繊維(LOI:36)、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維及びポロン繊維を例示できる。
またメッキ部は、芯部表面の全体または一部に形成することができる。メッキ部の形成方法(無電解メッキや電気メッキ等)は、芯部の材質に応じて適宜選択できる。メッキ処理に用いられる金属として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びパラジウム(Pd)を例示できる。またメッキ処理に用いられる合金として、Ni-Sn、Cu-Ni、Cu-Sn、Cu-Sn、Cu-Zn及びFe-Niを例示できる。
上記「布材」は、織物、編物、不織布又は組紐(組物)のいずれでもよい。例えば布材としての織物は、平織物、斜文織物又は朱子織物等のいかなる構成の織物でもよい。また布材としての編物は、経編、丸編又は横編等のいかなる構成の編物でもよい。そして布材としての不織布は、いかなるウェブ形成技術、いかなるウェブ結合技術によって製造した不織布でもよい。
そして布材としての織物を作製する場合、緯糸及び/又は経糸の一部又は全部を導電線材で構成するとともに、残りの緯糸と経糸を非導電線材で構成することができる。例えば導電線材(緯糸)を、複数又は単数の非導電線材(緯糸)毎に打込むことができる。また導電線材(経糸)を、複数又は単数の非導電線材(経糸)毎に配置することもできる。さらに上述の場合には、布材の裏面側に、表面側(例えば着座側、意匠面側等)よりも多くの導電線材を配置させることが好ましい。例えば朱子織物を用いることで、布材裏面に導電線材(緯糸)の大部分を配置することができる。このように布材の表面側に導電線材が極力露出しない構成として、摩擦や摩耗に対する導電線材の耐久性を向上させることができる。
また布材としての編物を作製する場合、タテ編又はヨコ編に限定されず、構成糸の一部に導電線材を用いるとともに、他の構成糸に非導電線材を用いる。そして組紐(経糸のみで作製された布材)では、その経糸の一部に導電線材を用いることができる。
また織物、編物、不織布の裏面に導電線材を貼り付けることにより、布材を作製することができる。貼付方法は特に限定しないが、刺繍や縫付け等のステッチボンド(縫着)、接着剤を用いたケミカルボンド、低融点のポリマーを用いたサーマルボンド等の手法を例示することができる。
そして布材を車両用シートの表皮材として用いる場合には、複数の導電線材を並列配置することが好ましい(例えば、図4等参照)。例えば布材にヒータ機能を持たせる場合、導電線材同士の間隔寸法(W1)を1mm〜60mmに設定することができる。また布材にセンサ(電極)機能を持たせる場合、導電線材同士の間隔寸法(W1)を60mmの範囲内に設定することが望ましい。導電線材同士の間隔寸法(W1)が60mmを超えると、布材のセンサ機能が悪化(静電容量が低下)して電極として機能しないおそれがある。好ましくは導電線材の間隔寸法(W1)の上限値を30mmとすることで、布材がより好適なセンサ機能(静電容量)を備える。
そして布材を車両用シートの座席部の表皮材として用いる場合、着座性等を考慮して、布材の裏面にバッキングを施したり(樹脂層を形成したり)、パッド材や裏基布を配設したりすることが好ましい。この種のパッド材は、柔軟性を備える多孔性の部材であり、例えば含気率の高いウレタンパッドや、軟質ウレタンフォームからなるスラブウレタンフォームを用いることができる。また裏基布は、例えば織編物や不織布(他の線材)にて構成できる。そして布材とパッド材と裏基布をこの順で積層して接合手段により一体化したのち、所定の形状にカットする(表皮ピースを形成する)ことが好ましく行われる。接合手段としては、ラミネート加工(溶着)、縫着、接着などの手法を例示することができる。
上記「露出部」は、非導電線材を部分的に除去して形成され導電線材を露出させる部位である限り、その配置形態、形状、大きさ、個数等は特に問わない。この露出部は、例えば、加熱手段を用いて、非導電線材を溶融又は燃焼させて除去することにより形成されることができる。このとき加熱手段の温度や出力などを適宜設定することにより、導電線材を極力燃焼(溶融)又は断線させることなく、非導電線材を燃焼(溶融)させることが望ましい。
上記加熱手段としては、例えば、布材と物理的に接触可能な加熱装置(例えばパンチ機構、ハサミ機構等)や、レーザなどの光学的な加熱手段を例示できる。なかでもレーザは正確な温度(出力)制御が可能であり、加熱手段として好適に用いることができる。ここでレーザの種類は特に限定しないが、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザ、LDレーザ、LD励起固体レーザを例示できる。なかでも有機物(非導電線材)への吸収が高いCO2レーザが好ましい。
またレーザは、布材の表裏面のいずれからも照射可能である。布材の表面側(表材としての布材側、即ち意匠面側)からレーザを照射する場合には、導電線材の位置をセンシングしつつレーザを照射することが望ましい。なかでも布材の裏面側(非意匠面側)からレーザを照射し、表面側を固定面に固定させることで、レーザの焦点を布材に合わせやすいため好ましい。またレーザの照射とともに不活性ガスを布材に吹付けることもできる。不活性ガス(窒素やヘリウムなど)の存在下で第1工程を行うことで、導電線材の燃焼(溶融)を好適に防止又は低減することができる。
そして加熱手段の設定温度などを適宜調節することで、導電線材を残存させつつ非導電線材だけを燃焼(溶融)させたり、必要に応じて導電線材を燃焼(溶融)させたりすることができる。例えば三菱炭酸ガスレーザ加工機(形式:2512H2、発信機形式名:25SRP、レーザ定格出力:1000W)を加熱手段として使用することができる。このときレーザ加工機の照射条件を、出力15W以上25W未満(周波数200Hz,加工速度1500mm/min)に設定することで、導電線材を極力残存させつつ非導電線材を燃焼(溶融)させることができる。また照射条件を、出力25W(周波数200Hz,加工速度500mm/min)以上に設定することで、導電線材を燃焼(溶融)又は切断させることができる。
上記露出部は、布材が張設される枠体の内側に配置される複数の孔を有する。この枠体としては、例えば、布材と一体に形成される樹脂製の枠体(例えば、図2参照)、布材の端縁部が係合手段(例えば、係合フック、クリップ、接着部、溶着部等)を介して係合される枠体等を挙げることができる。
上記複数の孔は、例えば、略直線状に並んで配置されていることができる(例えば、図4等参照)。この場合、例えば、複数の孔は、上記枠体の一辺の近傍内側でその一辺に沿って略直線状に並んで配置されることができる。これにより、複数の孔及び接続部材が布材の側縁部に形成されることとなる。そのため、布材の側縁部の表面に他部材(例えば、表皮材等)を設けることで、複数の孔及び接続部材を覆い隠して意匠性を高めることができる。また、乗員の着座動作などによるシートの機械的負荷が接続部材にかかり難くなり、接続部材の耐久性を向上させることができる。
上記孔は、例えば、導電線材の長手方向に横長となる形状に形成されていることができる(例えば、図5等参照)。
上記孔は、例えば、楕円形、円形又は角部が円弧状とされた多角形に形成されていることができる(例えば、図5及び図16等参照)。この場合、上記布材を構成する非導電線材の接点間が溶着されていることが好ましい。孔の周囲側の非導電線材により布材の張力をより好適に受け得るためである。
上記孔は、例えば、内縁部が溶着されていることができる。この場合、上記露出部は、加熱手段により非導電線材を燃焼又は溶融させて形成されることが好ましい。加熱手段による孔の形成と同時に孔の内縁部に溶着部位を形成できるためである。
上記「接続部材」は、上記露出部で露出された導電線材に電気的に接続される限り、その構成、配置形態、形状等は特に問わない。この接続部材は、通常、帯状に形成され、上記露出部を構成する複数の孔を覆うように布材に取り付けられる(例えば、図4等参照)。
上記接続部材としては、〔a〕布材に取り付けられる帯状の支持体と、この支持体の表面に設けられるメッキ層と、このメッキ層の上側に設けられる通電可能な導線と、を有する形態(例えば、図6等参照)、〔b〕布材に取り付けられる帯状の支持体と、この支持体の表面に設けられるメッキ層と、を有する形態(例えば、図9等参照)、〔c〕布材に取り付けられる通電可能な導線を有する形態(例えば、図11等参照)、〔d〕通電可能な導線と、弾縮性を有する帯状の支持体と、を有し、支持体は、上糸又は下糸の少なくとも一方に上記導線を用いるミシン(例えば工業用ミシン、家庭用ミシン等)によって布材に縫製して取り付けられている形態(例えば、図13及び図14等参照)等を挙げることができる。
上記〔a〕〔b〕形態では、例えば、支持体は布帛であることができる。また、上記メッキ層は、通常、電気導電性を有する金属又は合金を有する層である。このメッキ層は、支持体の両表面に形成されていてもよく、支持体の一方の表面(例えば導電線材に望む面)のみに形成されていてもよい。また、上記〔a〕〔c〕形態では、導線は、導電線材よりも比抵抗が低いことが好ましい。導線の電気抵抗を導電線材よりも低くすることで、通電時における接続部材の発熱を防止又は低減することができる。ここで導線の比抵抗は、導電線材の比抵抗によって適宜設定することができる。典型的には、導線の比抵抗を1.4〜15×10−8Ω・mに設定することで、通電時における接続部材の発熱を防止又は低減することができる。
上記〔d〕形態では、縫製にあたり、上記支持体は布材と縫製して固定して接続部が導電線材に過大な力が掛からないようにする。また後述するように支持体の弾縮性によって、導電線材に導線が押付けられるため、両部材の接触安定性が向上する。そして支持体は、所定の圧縮特性(圧縮残留ひずみ,硬さ)を有することが好ましい。例えば、支持体の硬さを75〜2000Nに設定することができ、好ましくは100N以上、さらに好ましくは200N以上に設定する。また支持体の圧縮残留ひずみを1〜9%(比較的低い値)に設定することができ、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下に設定する。このように圧縮残留ひずみの低い支持体を使用することで、導電線材と導線の接圧を好適に高めることができる。ここで支持体の硬さは、「JIS K 6400 6.」に準拠して測定できる。また圧縮残留ひずみは、「JIS K 6400 7.」に準拠して測定できる。
上記支持体の材質や厚みは特に限定しない。支持体(材質)として、ゴム(例えば天然ゴム、合成ゴム等)、エラストマ、スラブウレタンなどの発泡性樹脂、嵩高の不織布及び嵩高の織編物を例示できる。なかでもスラブウレタンや天然ゴム発泡体は、適度な圧縮特性を有するとともに、布材への縫製作業が容易である。例えば支持体として、スラブウレタン(タイプ:EMM、厚み:5.0mm)、スラブウレタン(タイプ:EL68H、厚み:4.3mm)、天然ゴム発泡体(厚み5.0〜10.0mm)を用いることができる。
上記導線は、ミシン糸として使用可能な柔軟性を有することが好ましい。例えば導線(材質)として、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、鋼、亜鉛、錫、ニッケル、ステンレス、アルミニウム及びタングステンを例示できる。なかでも銅製の導線(銅線)は、作製しやすく安価であることから、導線として好適に使用することができる。また導線に、上記材質のメッキ層を形成することができる。メッキ層を導線に形成することで、導電線材との接触抵抗を低減できるとともに、導線の耐腐食性を向上させることができる。なおメッキ層の材質は特に限定しないが、比較的安価である錫や銀のメッキ層を好適に使用することができる。また他の線材表面にメッキ層を形成してなる線材を、導線として用いることもできる。
上記導線の太さは特に限定しないが、例えばφ0.01mm〜φ2.0mmであることが好ましい。また導線(ミシン糸)として、単数の導線(単糸)や、複数の導線を撚り合わせた撚糸を用いることができる。例えば一般的な縫製針(ミシン針)を使用する場合、ミシン糸として、導線(φ0.05mm)を7〜22本撚り合わせた撚糸を用いることができる。ここで導線(撚糸)の撚り数は特に限定しないが、30〜200回/mであることが好ましい。撚り数が30回/m未満であると、縫製時などに導線が分解する(隣り合う導線同士が擦れ合うことで撚糸がバラける)ことがあり、縫製作業に手間取ることがある。また撚り数が200回/mよりも多いと、導電線材との接触面積が極端に低下する傾向にある。そして導線(撚糸)の撚り数を50〜150回/m(ピッチ:7〜10mm)に設定することで、導電線材との接触面積を好適に確保するとともに、縫製時の導線の分解を防止又は低減できる。
上記導線の縫製方法(ステッチ形式)は特に限定しないが、本縫い、単環縫い、手縫い、二重環縫い、縁飾り縫い及び扁平縫いを例示できる。なかでも本縫いは、導線(比較的剛性に優れる線材)に適したステッチ形式である。ここで本縫いでは、2種のミシン糸(上糸、下糸)を用いる。上糸とは、ミシン針に取付ける糸であり、下糸とは、上糸のループに通す糸である。これら上糸と下糸の少なくとも一方に導線を使用することで、本縫いによる縫製線を形成することができる(例えば、図12等参照)。また上糸と下糸のいずれか一方に導線を使用して、前記一方とは異なる他方に非導電線材を使用することもできる(例えば、図14等参照)。このとき導線は、一般的な縫製糸(ポリスエステルや綿)に比して低伸度且つ高剛性であるため、下糸として使用することが好ましい。非導電線材(材質や太さ)は特に限定しないが、強度や耐久性に優れるナイロンやポリエステル(太さ8#、20#程度)を使用することが好ましい。なおミシンとして各種の工業用ミシンを使用することができる。例えば本縫い可能なミシンとして、1本針本縫いミシンと2本針本縫いミシンを例示できる。
上記縫製線の形態(本数、縫いピッチ、縫い糸間隔、縫製部の幅、縫製形状)は特に限定しない。縫製線の本数は単数でもよいが、導電線材の抵抗値を低減する観点から、複数の縫製線を支持体に形成することが好ましい(例えば、図17等参照)。また典型的な縫製線の縫いピッチは2.0mm前後である。縫い糸間隔(縫製線同士の隙間間隔)は4mm前後であり、縫製部の幅(複数の縫製線全体の配置幅)は20mm前後である。そして、縫い糸間隔を調整するなどして縫製部の幅を狭めることにより(比較的簡単な作業により)、接続部材をコンパクト化することができる。また縫製線の縫製形状(上方視)は、直線状や蛇行状などの各種形状を取り得る。なかでも縫製線を直線状とすることで、複数の縫製線を支持体上にコンパクトに形成することができる。
上記接続部材は、例えば、縫製により布材に取り付けられていることができる。この縫製方法(ステッチ形式)は特に限定しないが、本縫い、単環縫い、手縫い、二重環縫い、縁飾り縫い及び扁平縫いを例示できる。また、縫製線の形態(本数、縫いピッチ、縫い糸間隔、縫製部の幅、縫製形状)は特に限定しない。縫製線の本数は単数でもよいが、導電線材の抵抗値を低減する観点から、複数の縫製線を形成することが好ましい(例えば、図17等参照)。また典型的な縫製線の縫いピッチは2.0mm前後である。縫い糸間隔(縫製線同士の隙間間隔)は4mm前後であり、縫製部の幅(複数の縫製線全体の配置幅)は20mm前後である。そして、縫い糸間隔を調整するなどして縫製部の幅を狭めることにより(比較的簡単な作業により)、接続部材をコンパクト化することができる。また縫製線の縫製形状(上方視)は、直線状や蛇行状などの各種形状を取り得る。なかでも縫製線を直線状とすることで、複数の縫製線を支持体上にコンパクトに形成することができる。
上記接続部材は、例えば、孔の内側及び外側での縫製により布材に取り付けられていることができる(例えば、図5等参照)。この縫製による縫製線は、通常、各孔の内側を通り接続部材の長手方向に沿って延びる縫製線と、各孔の外側を通り接続部材の長手方向に沿って延びる縫製線と、を有する。この場合、縫製作業性といった観点から、上記複数の孔が略直線状に配置されていることが好ましい。
上記接続部材は、例えば、布材の表面側及び裏面側のそれぞれに設けられていることができる(例えば、図6等参照)。さらに、上記接続部材は、例えば、布材の表面側に設けられる他部材(例えば、表皮材、加飾材等)で覆われる位置に配置されていることができる(例えば、図3等参照)。
2.布枠体
本実施形態2.に係る布枠体は、上述の実施形態1.で説明した布材と、この布材と一体にインサート成形され布材が張設される樹脂製の枠体と、を備えることを特徴とする。
3.布材の製造方法
本実施形態3.に係る布材の製造方法は、上述の実施形態1.で説明した布材の製造方法であって、非導電線材を部分的に除去して露出部を形成する第1工程と、露出部で露出された導電線材に接続部材を電気的に接続する第2工程と、を備え、第1工程では、布材が張設される枠体より内側に配置される複数の孔を有する露出部が形成され、第2工程では、接続部材は、複数の孔を覆うように布材に取り付けられることを特徴とする。
上記布材の製造方法としては、例えば、(1)上記第1工程では、加熱手段により非導電線材をスポット状(例えば、孔状、切欠き状等)に除去して露出部を形成する形態(例えば、図4等参照)、(2)上記布材は、通電の必要な第一の導電線材と、通電の不要な第二の導電線材と、を有し、上記第1工程では、露出部において、第一の導電線材を露出させるとともに、第二の導電線材を加熱手段により燃焼又は溶融させて除去する形態(例えば、図15(a)等参照)、(3)上記布材は、通電の必要な第一の導電線材と、通電の不要な第二の導電線材と、を有し、上記第1工程において、第一の導電線材をスポット状に露出させるとともに、第二の導電線材を非露出状態で維持する形態(例えば、図15(b)等参照)等を挙げることができる。
上記(1)形態によると、布材の外形形状を極力維持できるため、枠体に張設された布材の張力の低下を抑制できる。上記(2)(3)形態によると、比較的簡単な作業によって、第一の導電線材だけを露出させることができる。例えば、車両用シートでは、乗員との接触部(例えば腰部、肩部等)の導電線材を通電する一方、その他の部分は非通電状態にしたいとの要請があり、この要望に対応することができる。その結果、必要な導電線材(第一の導電線材)にのみ通電することで、布材(例えば、ヒータ機能、センサ機能等を持つ布材)の消費電力を極力抑えることができる。
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「布材」として、車両用シートの表皮材として用いられる布材を例示する。
<実施例1>
(1)車両用シートの構成
本実施例に係る車両用シート1Aは、図1に示すように、座席部を構成するシートクッション2Aと、このシートクッション2Aの一端側に連なり背もたれ部を構成するシートバック3Aと、このシートバック3Aの上端側に連なるヘッドレスト4Aと、を備えている。
(2)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体10Aは、図2及び図3に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この枠体11Aは、バックフレーム5Aの枠形状と合致する略四角形の枠形状に形成されており、バックフレーム5Aの前面部に着脱可能に組み付けられるようになっている。そして、この枠体11Aには、その枠の前面に覆い掛けられるようにして、布材13Aが張設されている。
上記バックフレーム5Aの後面部には、図3に示すように、樹脂製のバックボード6Aが後面全体を覆うように設けられて固定されている。ここで、布材13Aは、着座乗員の背部を支える支持面が、一枚の面材によって形成されており、この面材の外周縁部が、枠体11Aに向けて引張り込まれて枠体11Aに埋め込まれて固定されている。そして、布材13Aの左右両サイド部の表面側(意匠面側)には、着座乗員の背部をサイドサポートするクッション用のパッド7Aが配設されている。
そして、上記した面材(布材13A)の左右両サイド部には、更に面材8A(本発明に係る「他部材」として例示する。)が縫合されて継ぎ合わされており、これら左右の継ぎ合わされた面材8Aは、上記したパッド7Aを取り巻くように、枠体11Aの両外側に回し込まれると共に、それらの外周縁部に縫合された掛フック9Aが、枠体11Aの左右の横枠部の後面部に突出して形成された把持部12Aにそれぞれ引張り込まれて掛着されて固定されている。
上記枠体11Aは、図2に示すように、その上枠部が、バックフレーム5Aの上枠部となる丸パイプ製のアッパフレーム5aAに当てられた状態として、また左右の横枠部が、バックフレーム5Aの左右のサイドフレーム5bAにそれぞれ当てられた状態として、バックフレーム5Aに組み付けられるようになっている。
上記布材13Aは、図4に示すように、複数の導電線材15A及び非導電線材を含む織物からなり、適当な伸縮性を有している。複数の導電線材15Aは、所定の間隔W1(例えば、約10mm)で並列配置されている。また、布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部17Aと、この露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材18Aと、を備えている。
上記露出部17Aは、レーザ加熱手段を用いて非導電線材をスポット状に溶融又は燃焼させて除去することにより形成される複数の孔20Aからなる。これら複数の孔20Aは、枠体11Aの左右の側辺の内側で側辺に沿うように略直線状に並んで配置されている。
上記各孔20Aには、図5及び図6に示すように、レーザ加熱手段で燃焼(溶融)又は断線されない導電線材15Aの一部(被接続部)が露出される。また、各孔20Aの内縁部は、孔20Aを形成する際にレーザ加熱手段により溶着されている。また、各孔20Aは、導電線材15Aの長手方向に横長となる楕円形に形成されている。これら各孔20Aは、その長軸長さL1が約10mmとされ、その短軸長さL2が約5mmとされている。したがって、この長軸長さL1と短軸長さL2との比(L1/L2)は約2とされている。
上記接続部材18Aは、帯状に形成され、複数の孔20Aを覆うように布材13Aの表面側及び裏面側のそれぞれに縫製により取り付けられている。この接続部材18Aは、布材13Aの表面側に設けられる上述の面材8A(図6参照)で覆われる位置に配置されている。また、接続部材18Aは、布帛からなる帯状の支持体21Aと、この支持体21Aの表面に設けられるメッキ層22Aと、このメッキ層22Aの上側に設けられる通電可能な複数(図中2つ)の導線23Aと、を有している。
上記支持体21Aの両縁側は、縫製(本縫い)により布材13Aに取り付けられている。この縫製による縫製線25Aは、各孔20Aの外側を通って支持体21Aの長手方向に延びている。また、上記各導線23Aは、縫製(かがり縫い)により支持体21Aに取り付けられている。この縫製による縫製線26Aは、孔20Aの内側を通って支持体21Aの長手方向に延びている。上記メッキ層22A及び導線23Aは、孔20Aで露出された導電線材15Aに接触している。したがって、接続部材18Aに電源ケーブル27A(図2参照)の端子を接続すれば、複数の導電線材15Aに電力を供給でき、布材13Aを静電容量式センサの電極又はヒータとして機能させることができる。
(3)布枠体の製造方法
次に、上記構成の布枠体10Aの製造方法について説明する。図7(a)に示すように、枠体11Aに面状の布材13Aを一体にインサート成形してなる布枠前駆体10’Aを用意する。次に、図7(b)に示すように、レーザ加熱手段を用いて布材13Aに複数の孔20Aを形成する。次いで、図7(c)に示すように、布材13Aの一方の表面側に、各孔20Aを覆うように接続部材18Aを縫製により取り付ける。その後、布材13Aの他方の表面側にも、各孔20Aを覆うように接続部材18Aを縫製により取り付けて布枠体10A(図4参照)が得られる。
(4)実施例1の効果
以上より、本実施例の布枠体10Aによると、非導電線材を部分的に除去して露出部17Aが形成され、接続部材18Aは、露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される。このように、非導電線材を除去して形成される露出部17Aを備えることで、非導電線材に極力邪魔されることなく導電線材15Aと接続部材18Aとを接続性良く電気的に接続することができる。
また、本実施例では、露出部17Aを、布材13Aが張設される枠体11Aの内側に配置される複数の孔20Aを有して構成したので、複数の孔20Aの間には非導電線材が残った状態となるため、枠体11Aに張設された布材13Aの張力の低下を抑制して導電線材15Aと接続部材18Aとを電気的に接続することができる。また、露出部15Aで露出される導電線材15Aの両端側が非導電線材に支持されるため、露出された導電線材15Aのまがりやよれがなく、導電線材15Aと接続部材18Aとの接続安定性をより高めることができる。
また、本実施例では、接続部材18Aを、複数の孔20Aを覆うように布材13Aに取り付けたので、接続部材18Aに布材13Aの補強機能の持たせることができる。そのため、枠体11Aに張設された布材13Aの張力の低下をより確実に抑制できる。
また、本実施例では、接続部材18Aを、縫製により布材13Aに取り付けるようにしたので、接続部材18Aを簡易且つ強固に取り付けることができ、接続部材18Aの補強機能をより高めることができる。
また、本実施例では、接続部材18Aを、孔20Aの内側及び外側での縫製により布材13Aに取り付けるようにしたので、孔20Aの内側での導線23Aの縫製により導電線材15Aとの接続安定性をより高めることができる。また、孔20Aの外側での支持体21Aの縫製により接続部材18Aを布材13Aに強固に取り付けることができる。そのため、接続部材18Aの補強機能をより高めることができる。
また、本実施例では、接続部材18Aを、布材13Aの表面側及び裏面側のそれぞれに設けるようにしたので、表裏側の接続部材18Aで布材13Aが挟み込まれるため、導電線材15Aと接続部材18Aとの接続安定性及び接続部材18Aの補強機能をより高めることができる。
また、本実施例では、接続部材18Aを、布材13Aの表面側に設けられる面材8Aで覆われる位置に配置したので、面材8Aで接続部材18Aが覆い隠されるため、意匠性の低下を防止することができる。
また、本実施例では、複数の孔20Aを略直線状に並べて配置したので、露出部17Aを簡易に形成できるとともに、接続部材18Aを簡易に取り付けることができる。特に、本実施例では、複数の孔20Aを、枠体11Aの側辺の近傍内側で側辺に沿って略直線状に並んで配置させたので、複数の孔20A及び接続部材18Aが布材13Aの側縁部に形成されることとなる。そのため、布材13Aの側縁部の表面に他部材(例えば、面材8A等)を設けることで、複数の孔20A及び接続部材18Aを覆い隠して意匠性を高めることができる。また、乗員の着座動作などによるシートの機械的負荷が接続部材18Aにかかり難くなり、接続部材18Aの耐久性を向上させることができる。
また、本実施例では、孔20Aを、導電線材15Aの長手方向に横長となる楕円形状に形成したので、孔20Aの開口面積を必要最小限に抑えつつ導電線材15Aの露出面積を大きくすることができる。これにより、枠体11Aに張設された布材13Aの張力の低下をより確実に抑制できるとともに、導電線材15Aと接続部材18Aとの接続安定性をより高めることができる。
また、本実施例では、孔20Aの内縁部が溶着されているので、孔20Aの内縁部の溶着部位により布材13Aの張力を好適に受けることができる。そのため、枠体11Aに張設された布材13Aの張力の低下をより確実に抑制できる。特に、本実施例では、加熱手段により孔20Aを形成するようにしたので、孔20Aの形成と同時に孔20Aの内縁部に溶着部位を容易に形成することができる。
<実施例2>
次に、本実施例2に係る布枠体の構成について説明する。なお、本実施例2の布枠体では、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である接続部材について詳説する。
(1)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体30Aは、図8及び図9に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部17Aと、この露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材31Aと、を備えている。
上記接続部材31Aは、帯状に形成され、複数の孔20Aを覆うように布材13Aの表面側及び裏面側のそれぞれに縫製により取り付けられている。この接続部材31Aは、布材13Aの表面側に設けられる上述の面材8Aで覆われる位置に配置されている。また、接続部材31Aは、布帛からなる帯状の支持体32Aと、この支持体32Aの表面に設けられるメッキ層33Aと、を有している。
上記支持体32Aの両側縁は、縫製(本縫い)により布材13Aに取り付けられている。この縫製による縫製線34Aは、孔20Aの外側を通って支持体32Aの長手方向に延びている。また、支持体32Aの中央側は、縫製(本縫い)により布材13Aに取り付けられている。この縫製による縫製線35Aは、孔20Aの内側を通って支持体32Aの長手方向に延びている。上記メッキ層33Aは、孔20Aで露出された導電線材15Aに接触している。したがって、接続部材31Aに電源ケーブル27A(図2参照)の端子を接続すれば、複数の導電線材15Aに電力を供給でき、布材13Aを静電容量式センサの電極又はヒータとして機能させることができる。
(2)実施例2の効果
上記構成の布枠体30Aによると、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同様の作用・効果を奏することに加えて、接続部材31Aを、孔20Aの内側及び外側での縫製により布材13Aに取り付けるようにしたので、孔20Aの内側での支持体32Aの縫製により導電線材15Aとの接続安定性をより高めることができる。また、孔20Aの外側での支持体32Aの縫製により接続部材31Aを布材13Aに更に強固に取り付けることができ、接続部材31Aの補強機能をより高めることができる。
<実施例3>
次に、本実施例3に係る布枠体の構成について説明する。なお、本実施例3の布枠体では、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である接続部材について詳説する。
(1)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体40Aは、図10及び図11に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部17Aと、この露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材41Aと、を備えている。
上記接続部材41Aは、通電可能な複数(図中2つ)の導線42Aからなる。各導電42Aは、複数の孔20Aに架け渡されて布材13Aに縫製により取り付けられている。この導線42Aは、布材13Aの表面側に設けられる上述の面材8Aで覆われる位置に配置されている。
上記導線42Aは、固定手段43A(例えば、導電糸、非導電糸、リング部材等)により露出部17Aで露出された導電線材15Aに固定されている。したがって、接続部材41Aに電源ケーブル27A(図2参照)の端子を接続すれば、複数の導電線材15Aに電力を供給でき、布材13Aを静電容量式センサの電極又はヒータとして機能させることができる。
(2)実施例3の効果
上記構成の布枠体40Aによると、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同様の作用・効果を奏することに加えて、接続部材41Aを導線42Aから構成したので、接続部材41Aひいては全体の製品コストを抑えることができる。また、本実施例3において、導線42Aを縫製(かがり縫い)により布材13Aに取り付けるようにすれば、接続部材41Aを布材13Aにより簡易に取り付けることができる。
<実施例4>
次に、本実施例4に係る布枠体の構成について説明する。なお、本実施例4の布枠体では、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である接続部材について詳説する。
(1)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体50Aは、図12及び図13に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部17Aと、この露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材51Aと、を備えている。
上記接続部材51Aは、弾縮性を有する帯状の支持体52Aと、この支持体52Aを導電線材15Aに縫い付けるための導線53A(図14参照)と、を有している。この支持体52Aの両側縁部は、縫製により布材13Aに取り付けられている。この縫製による縫製線54Aは、孔20Aの外側を通って支持体52Aの長手方向に延びている。また、支持体52Aの中央部は、上記導線53Aをミシン糸として用いた縫製(本縫い)により布材13Aに取り付けられている。そのため、導線53Aは導電線材15Aに接触している。この縫製による縫製線55Aは、孔20Aの内側を通って支持体52Aの長手方向に延びている。
次に、上記接続部材51Aの取付方法について説明する。上記支持体52Aの中央部分(縫製部)を露出された導電線材15Aに対面配置する。そして布材13Aに支持体52Aの側部を縫製(本縫い)にて取り付ける。次に、支持体52Aaの中央部分(縫製部)を、導電線材15Aに縫製(本縫い)にて取り付ける。この縫製では、図14に示すように、下糸(導電線材15Aを臨む側の糸)に導線53Aを使用するとともに、上糸に非導電線材57Aを使用することで、導電線材15Aと導線53Aを直接的に接触させることができる。このとき上糸よりも下糸のテンションを高くすることが好ましい。こうすれば上糸による下糸の張引が極力阻止される。このため下糸(導線53A)が側面視で直線的に配置することで、導電線材15Aとの接触面積を増大させることができる。
(2)実施例4の効果
上記構成の布枠体50Aによると、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同様の作用・効果を奏することに加えて、接続部材51Aを、通電可能な導線53Aと、弾縮性を有する帯状の支持体52Aと、を有して構成し、支持体52Aを、上糸又は下糸の少なくとも一方に導線53Aを用いるミシンによって布材13Aに縫製して取り付けるようにしたので、支持体52Aの弾縮性によって、導電線材15Aに導線53Aが押し付けられて、導電線材15Aと導線53Aの接触性が向上する。これにより、導電線材15Aと接続部材51Aの接続安定性を向上させることができる。また、複数の縫製線(直線状)を支持体52Aにコンパクトに形成することができる。
また、上記実施例では、支持体52Aから引き出した下糸(導線53A)を、ECUや電源に直接的に接続することができる。すなわち一般的には縫製の終点の直近でミシン糸を切断するが、本実施例では、縫製が終了したのち一定の長さだけ下糸(導線53A)を支持体52Aから引き出す。そして引き出した複数の下糸(導線53A)を収束して束ねることで、ECUや電源のコネクタに挿入接続することができる。したがって、接続部材51Aを介して複数の導電線材15Aに電力を供給でき、布材13Aを静電容量式センサの電極又はヒータとして機能させることができる。
なお、本発明においては、上記実施例1〜4に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、すなわち、上記実施例1〜4において、複数の孔20Aのそれぞれで導電線材15Aを露出させるようにしたが、これに限定されず、例えば、図15(a)に示すように、導電線材15Aを露出させない孔66Aを設定するようにしてもよい。ここで、車両用シート1Aにおいて、乗員との接触部(例えば腰部や肩部)の導電線材15Aを通電する一方、その他の部分は非通電状態にしたいとの要請がある。具体的には、布材13Aには、上記接触部の導電線材(第一の導電線材67A)と接触部以外の導電線材(第二の導電線材68A)とがある。そこで、露出部17Aを形成する際に、孔66Aでは、第二の導電線材68Aの一部を加熱手段によって燃焼又は溶融させて除去する一方、孔20Aでは、第一の導電線材67Aを露出させる構成としてもよい。そして、第一の導電線材67Aにのみ接続部材18A,31A,41A,51Aを電気的につなげることで、第一の導電線材67Aを通電可能とする一方、第二の導電線材68Aを通電不能とすることができる。これにより、必要な導電線材(第一の導電線材67A)にのみ通電することで、例えば、静電容量式センサの電極又はヒータとして機能する布材13Aの消費電力を極力抑えることができる。
また、上記実施例1〜4において、例えば、図15(b)に示すように、第一の導電線材67Aを露出させるとともに、第二の導電線材68Aを非露出状態で維持するように露出部17Aを構成してもよい。これにより、上述のような、乗員との接触部の導電線材67Aを通電する一方、その他の部分の導電線材68Aは非通電状態にしたいとの要請に対応することができる。
また、上記実施例1〜4では、単数の孔20Aで単数の導電線材15Aを露出させるようにしたが、これに限定されず、例えば、図15(c)に示すように、単数の孔20Aで複数の導電線材15Aを露出させるようにしてもよい。
また、上記実施例1〜4では、露出部17Aを構成する孔20Aとして楕円形孔を例示したが、これに限定されず、例えば、図16に示すように、露出部17Aを構成する孔として、円形孔74A、多角形孔75A、角部が円弧状とされた多角形76A等を採用することができる。
また、上記実施例1〜4では、露出部17Aとして、加熱手段により非導電線材を溶融又は燃焼させて除去することにより形成されるものを例示したが、これに限定されず、例えば、切断手段(例えば、裁断機、カッター装置等)により非導電線材を切断除去することにより形成される露出部としてもよい。
また、上記実施例1〜4では、接続部材18A,31A,41A,51Aを縫製により布材13Aに取り付ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば、接続部材を接着、溶着等により布材に取り付けるようにしてもよい。
また、上記実施例1、2及び4では、孔20Aの内側及び外側での縫製により接続部材18A,31A,51Aを布材13Aに取り付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、孔の内側及び外側のうちの一方側のみでの縫製により接続部材を布材に取り付けるようにしてもよい。
また、上記実施例1〜4では、布材13Aの両表面に一対の接続部材18A,31A,41A,51Aを取り付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、布材の一方の表面のみに接続部材を取り付けるようにしてもよい。
また、上記実施例1〜4では、シートバック3Aを構成する表皮材としての布材13Aを例示したが、これに限定されず、例えば、シートクッション、天板メイン部、天板サイド部、かまち部、背裏部、ヘッドレスト等の車両用シートの各種構成の表皮材として布材を用いてもよい。また、上記実施例1〜4では、表皮材の着座側に布材を用いるようにしたが、これに限定されず、例えば、裏基布として布材を用いてもよい。さらに、布材を、家具用、家電用シートの表皮材として使用することもできる。
また、上記実施例1〜4では、布材13Aに対して導電線材15Aを波状に配設したが、これに限定されず、例えば、導電線材は、直線状やジグザグ状などの各種状態で布材に配設するようにしてもよい。
さらに、上記実施例1〜4では、導電線材15Aの両端部を露出させる例を説明したが、導電線材の露出部位を限定する趣旨ではない。
また、上記実施例1〜4では、樹脂製の枠体11Aに一体にインサート成形される布材13Aを例示したが、これに限定されず、例えば、図18に示すように、その端縁部が係合手段(例えば、係合フック、クリップ、接着部、溶着部等)を介して枠体に係合される布材13A’としてもよい。この場合、布材13A’の側縁部に形成された複数の孔20A’を覆うように接続部材18A、31A、41A、51Aを設けることができる。
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。