JP2015040352A - 通電可能な布材の製造方法 - Google Patents

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康平 加藤
明香里 高橋
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Abstract

【課題】接続部材と導電糸を、より安定的に電気的につなげることにある。【解決手段】第一工程において、加熱手段によって、他の糸材を溶融又は燃焼させて除去することにより被接続部11aを露出させるとともに、被接続部11aを覆う樹脂コーティング11bの大部分を除去し、第二工程において、第一面部21と第二面部22を、被接続部11aを挟んで対面可能に配置するとともに、第一面部21と第二面部22を当接させつつ被接続部11aに導線(21a,22a)の凹凸部分を擦り合せることにより、第一工程にて取りきれなかった残余の樹脂コーティング11bを被接続部11aから除去する。【選択図】図4

Description

本発明は、樹脂コーティングされた導電糸と、接続部材(導電糸に電力を供給可能な面状部材)を備えた通電可能な布材の製造方法に関する。
この種の通電可能な布材の製造方法として、下記の第一工程と第二工程を備えた製造方法が公知である(特許文献1を参照)。
この布材の製造方法では、第一工程にて、樹脂コーティングされた導電糸と他の糸材(例えばPET糸)を用いて布材を作成する(特許文献1の明細書の段落[0025]等を参照)。このとき布材に、複数の導電糸を適宜の間隔をあけて並列配置するなどして、各種機能(ヒータ機能,静電容量式センサの電極機能等)を持たせる。そして第一工程では、加熱手段を用いて他の糸材と樹脂コーティングを燃焼させて除去するなどして、布材の端部から各導電糸の端部(被接続部)を露出させる。
また第二工程では、露出した被接続部に通電手段(接続部材に相当)を電気的につなげる。このとき公知技術では、通電手段が、例えば帯状の支持体(布帛製)と、メッキ層と、導線(金属製)を有する。
そこで第二工程において、布材の端部に通電手段を配置して、メッキ層と導線を、複数の導電糸の被接続部を横断するように配置する。この状態で通電手段を布材にミシンにて縫合するとともに、縫合糸の拘束力にて、各被接続部と通電手段を接合させて電気的につなげる。
特開2010−261143号公報
ところで公知技術の第一工程では、加熱手段にて、他の糸材とともに樹脂コーティングを溶融等させて除去することにより各被接続部(導電糸本体)を露出させる。
しかしこの種の構成では、樹脂コーティングの除去が不十分となることがあり、樹脂コーティングが比較的多く残る箇所では、通電手段と導電糸の電気的な接合が不十分となるおそれがあった。そして通電手段と導電糸が(樹脂コーティングが間に介装されることで)部分的に非接合状態となることにより、例えば布材をヒータとして用いる場合には温度ムラが生じることとなる。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、接続部材と導電糸を、より安定的に電気的につなげることにある。
上記課題を解決するための手段として、第1発明の通電可能な布材の製造方法は、下記の第一工程と第二工程を備える。
第一工程:樹脂コーティングされた通電可能な導電糸と他の糸材を構成糸として布材を作成したのち、布材から導電糸の被接続部を露出させる。
第二工程:導電糸に電力を供給可能な面状の接続部材を、布材に取付けつつ被接続部に電気的につなげる。
そして布材を通電可能な状態として、各種機能(ヒータ機能,静電容量式センサの電極機能等)を持たせるのであるが、この種の構成では、接続部材と被接続部(導電糸)を、より安定的に電気的につなげられることが望ましい。
本発明では、上述の接続部材が、導電糸に電力を供給可能な面状の第一面部と、第一面部に対面配置可能な第二面部と、第一面部に設けられた通電可能な導線とを有する。そして導線の表面側に、導電糸の表面側よりも大きな凹凸が形成される。
そこで本発明では、第一工程において、加熱手段によって、他の糸材を溶融又は燃焼させて除去することにより被接続部を露出させるとともに、被接続部を覆う樹脂コーティングの大部分を除去する。
そして第二工程において、第一面部と第二面部を、被接続部を挟んで対面可能に配置するとともに、第一面部と第二面部を当接させつつ被接続部に導線の凹凸部分を擦り合せることにより、第一工程にて取りきれなかった残余の樹脂コーティングを被接続部から除去することとした。
本発明では、被接続部の樹脂コーティングを可能な限り除去する(第一工程後よりも多くの樹脂コーティングを除去する)ことで、接続部材と導電糸を、より安定的に電気的につなげることができる。
第2発明の通電可能な布材の製造方法は、第1発明の布材の製造方法であって、第二工程において、第一面部と第二面部を、被接続部を挟みつつ密着状に閉じ合せたのち、第一面部と第二面部を、超音波にて溶着することで接続部材を形成しつつ、超音波にて導電糸に導線の凹凸部分を擦り合せる。
本発明では、第一面部と第二面部の溶着と同時に被接続部に導線を擦り合せることができる(第二工程の簡略化に資する構成である)。
第3発明の通電可能な布材の製造方法は、第1発明又は第2発明の布材の製造方法において、第二工程において、導線が、布材に適宜の間隔で並列配置する複数の被接続部を横断しつつ直交状に配置される。
本発明では、複数の被接続部に対して導線を直交状に配置することで、樹脂コーティングを効率良く除去することができる。
本発明に係る第1発明によれば、接続部材と導電糸を、より安定的に電気的につなげることができる。また第2発明によれば、比較的簡略な構成にて、接続部材と導電糸を、より安定的に電気的につなげることができる。そして第3発明によれば、接続部材と導電糸を、更に安定的に電気的につなげることができる。
乗物用シートの正面図である。 (a)は、作成途中のシートカバー一部の正面図であり、(b)は、シートカバー一部の正面図である。 導電糸の断面図である。 シートカバー一部を破断して示す取付け機構の概略側面図である。 シートカバー一部の断面図である。 別例の導電糸の斜視図である。 シートカバー一部を破断して示す変形例にかかる取付け機構の概略側面図である。
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図7を参照して説明する。図1には、適宜、乗物用シート前方に符号F、乗物用シート後方に符号B、乗物用シート上方に符号UP、乗物用シート下方に符号DWを付す。なお図4及び図7では、便宜上、導線の凹凸を実際の寸法よりも大きく図示する。
図1の乗物用シート2は、シート構成部材(シートクッション4,シートバック6,ヘッドレスト8)を有する。これらシート構成部材は、各々、シート外形をなすシートパッド(4P,6P,8P)と、シートパッドを被覆するシートカバー(4S,6S,8S)を有する。
本実施例では、シートクッション4のシートカバー4Sが、複数の表皮ピース(第一表皮ピース40f,第二表皮ピース40s等)を縫合して形成される(図1及び図2を参照)。
ここで第二表皮ピース40sは、シート側部形状に倣った形状の面状部材であり、布帛(織物,編物,不織布)、皮革(天然皮革,合成皮革)又はこれらの複合材にて形成できる。
そして第一表皮ピース40fは、シート中央(座面)形状に倣った略矩形の面状部材である。本実施例では、第一表皮ピース40fが通電可能な布材(布帛)であり、複数種類の構成糸(導電糸11,他の糸材12)と、接続部材20を備える(図2(b)及び図5を参照、各部材の詳細は適宜後述する)。そして後述するように接続部材20(電源に電気的につながる部材)を、第一表皮ピース40fの両端に取付けつつ導電糸11の一部(被接続部11a)に電気的につなげる。こうして第一表皮ピース40fをヒータ等として機能させるのであるが、この種の構成では、接続部材20と導電糸11を、性能よく電気的につなげられることが望ましい。
そこで本実施例では、後述の構成にて、接続部材20と導電糸11を、性能よく電気的につなげることとした。以下、各構成について詳述する。
[導電糸]
導電糸11は、通電可能な導電性の糸材であり、典型的に比抵抗が100〜10-12Ω・cmである(図2及び図3を参照)。ここで「比抵抗(体積抵抗率)」とは、どのような材料が電気を通しにくいかを比較するために用いられる物性値であり、例えば「JIS K−7194」に準拠して測定することができる。
この種の導電糸11として、金属線(例えば金属や合金などの導電性糸材)、炭素繊維のフィラメント、カバリンク糸(後述の他の糸材12を金属線等でカバリングしてなる糸材)、メッキ糸材(他の糸材12表面を金属又は合金でメッキ処理した糸材)を例示できる。
(樹脂コーティング)
そして導電糸11は、導電糸11(本体)よりも低融点の樹脂コーティング11bで被覆される(図3を参照)。
樹脂コーティング11bは、典型的に導電糸11よりも耐水性(水によって変質しにくい性質)に優れる樹脂層(絶縁性)であり、導電糸11表面(略全面)に設けることができる。このように樹脂コーティング11bにて導電糸11を覆うことで、導電糸11の錆つきや加水分解を抑制することによりその耐久性を向上させることができる。
この種の樹脂として、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂及びシリコン樹脂を例示できる。なお樹脂コーティング11bの厚み寸法は特に限定しないが、典型的には10〜100μmである。
[他の糸材]
他の糸材12は、絶縁性の糸材(導電糸よりも比抵抗が大きい糸材)である(なお図2では、便宜上、他の糸材で形成された組織部分に符号12を付す)。
そして他の糸材12は、導電糸11よりも低融点であるか又は限界酸素指数(LOI)が26未満の糸材であることが望ましい。ここで限界酸素指数(LOI)とは、絶縁繊維などの糸材が燃焼を持続するために必要な最小酸素量から求めた酸素濃度の指数(O2%)である。限界酸素指数(LOI)は、「JIS K 7201 高分子材料の酸素指数燃焼試験方法」や、「JIS L 1091(1999) 8.5E−2法(酸素指数法試験)」に準拠して測定できる。
この種の他の糸材12(材質)として、植物系及び動物系の天然繊維、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる化学繊維及びこれらの混紡繊維を例示できる。そして他の糸材12として、上記繊維の糸材(紡績糸、フィラメント、延伸糸又は伸縮加工糸(仮撚加工糸や座屈糸))を好適に使用できる。
ここで一般的な天然繊維はLOIが26未満であることが多い。例えば綿のLOIは18〜20であり、羊毛のLOIは24〜25である。そして天然繊維では、綿、麻又は羊毛が風合いに優れるため、第一表皮ピース40fの構成糸(材質)として用いることが好ましい。
また一般的な化学繊維は、導電糸11よりも低融点であることが多い。そしてLOIが26未満の化学繊維として、例えばポリエステル(LOI:18〜20)や、ナイロン(LOI:20〜22)を例示できる。そして化学繊維では、ポリエステル繊維やポリエチレン繊維(例えばポリエチレンテレフタレートのフィラメント)は耐久性と耐光性と強度に優れるため、第一表皮ピース40fの構成糸(材質)として用いることが好ましい。
[接続部材]
接続部材20は、導電糸11に電力を供給可能な面状部材であり、第一面部21(導線21a)と、第二面部22(導線22a)を備える(図2、図4及び図5を参照)。
第一面部21は、可撓性を有する帯状の面材(布帛,繊維マット,樹脂シート等)であり、通電可能な導線21a(後述)を有する。そして第一面部21は、第一表皮ピース40fの端部に沿って配置可能な(複数の被接続部11aを横断可能な)長さ寸法を有する。また第二面部22は、第一面部21と同一構成の面材(後述の溶着前は第一面部21と別体)であり、通電可能な導線22a(後述)を有する。
そして本実施例では、第一面部21と第二面部22のベースとなる部分(導線を除く部分)が、いずれも熱により溶融可能な材質(例えば他の糸材で例示の材質)にて形成される。このため後述の第二工程において、第一面部21と第二面部22を面接触した状態で加熱により溶着可能である。
(導線)
導線21aは、第一面部21の長尺方向に延びる通電可能な線材であり、第一面部21の一面から露出して被接続部11aに対面可能に配置する(図4及び図5を参照)。また同様に導線22aは、第二面部22の長尺方向に延びる通電可能な線材であり、第二面部22の一面から露出して被接続部11aに対面可能に配置する。
この種の導線21a,22aとして、金属や合金などの線材、メッキされた線材(合成繊維の芯材とメッキ層を備える線材)、炭素繊維等を例示できる。例えば本実施例では、導線21a,22aとして、各種の金属(銅、金、銀、黄銅、白金、鉄、鋼、亜鉛、錫、ニッケル、ステンレス、アルミニウム及びタングステン等)製の線材を用いることができる。なお導線21a,22aは、各面部21,22中に単数配置することができ、また複数本を並列して配置することもできる。
そして本実施例では、導線21a,22aの表面(被接続部に接する面)側に、樹脂コーティング11bを除いた導電糸11(被接続部11a)の表面側よりも大きな凹凸が形成される。ここで導線21a,22aの凹凸部分(形成位置)は、導線の長さ方向全長及び全周に形成されていてもよく、被接続部11aに接する一部に形成されているだけでもよい。
例えば本実施例の導線21a,22aは、その全周にかかる表面粗さ(Ra)が導電糸11のそれよりも大きく、例えば表面粗さを0.05〜1.0μm(好ましくは0.1〜0.5μm)の範囲に設定できる。
(別例)
ここで導線は、上述の構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば別例にかかる導線21b,22bは、平角導線(四角柱状)に撚りを加えて形成されており、その表面側に、導電糸11(被接続部11a)の表面側よりも大きな凹凸が形成される(図6を参照)。このように別例に係る導線21b,22bによっても、後述する残余の樹脂コーティング11bを好適に除去できる。
導線21b,22bの断面形状は特に限定しないが、典型的に長方形や正方形や三角等の多角形状である。また導線21b,22bの撚数も特に限定しないが、典型的に10〜2000T/mの範囲に設定できる。
なお更に別の別例として、上述の断面形状の異なる複数の導線を引き揃えて一つの導線とすることで、一つの導線の表面側に大きな凹凸を形成することもできる。また太い導線の周りに細い導線をスパイラル状に巻装することで、表面側に大きな凹凸を形成することもできる。
[第一表皮ピース(通電可能な布材)の作成]
本実施例では、下記の第一工程と第二工程(詳細後述)にて、第一表皮ピース40f(通電可能な布材)を作成する(図2、図4及び図5を参照)。
第一工程:導電糸11を構成糸として第一表皮ピース40fの原反(布材)を作成する。そして第一表皮ピース40fから導電糸11の被接続部11aを露出させる。
第二工程:接続部材20を、第一表皮ピース40fに取付けつつ被接続部11aに電気的につなげる(通電可能な布材とする)。
そして本実施例では、後述する第二工程にて、導電糸11(被接続部11a)と接続部材20(導線21a,22a)を、より安定的に電気的につなげることとした。
[第一工程]
第一工程では、導電糸11と他の糸材12を構成糸として第一表皮ピース40fの原反を作成する(図2(a)を参照)。
そして本実施例では、複数の導電糸11を、第一表皮ピース40fの一端から他端にかけて(シート幅方向に向けて)適宜の間隔で並列配置させる。
例えば織物の第一表皮ピース40fを作成する場合、経糸(他の糸材12)を整経したのち、緯糸(他の糸材12)を打ち込むに際して、緯糸の一部として導電糸11を適宜打ち込むことができる。また経糸の一部に導電糸11を使用して、緯糸としての他の糸材12を打ち込むことができる。また編物の第一表皮ピース40fを作成する場合、コース方向又はウェール方向の一部に導電糸11を導入できる。また不織布の第一表皮ピース40fを作成する場合、他の糸材12でベースを形成するとともに、ベースに埋め込み状に導電糸11を配置することができる。
ここで隣り合う導電糸11同士の間隔寸法はシート構成に応じて適宜変更可能である。例えば第一表皮ピース40fにヒータ機能を持たせる場合、導電糸11同士の間隔寸法を60mm以内に設定できる。また第一表皮ピース40fに静電容量式センサの電極機能を持たせる場合においても、導電糸11同士の間隔寸法を60mm以内に設定することで、好適なセンサ機能(静電容量)を備えることとなる。
(被接続部の形成)
つぎに第一表皮ピース40fの両端から導電糸11の端部(被接続部11a)を露出させる(図2(a)及び図4を参照)。
本実施例では、後述の加熱手段(図示省略)を用いて、他の糸材12と樹脂コーティング11bを溶融又は燃焼させて除去する(図2及び図3を参照)。このとき加熱手段の温度や出力などを適宜設定することにより、導電糸11本体を極力燃焼(溶融)又は断線させることなく、他の糸材12を燃焼(溶融)及び樹脂コーティング11bを溶融させることが望ましい。
そして加熱手段によって他の糸材12だけを溶融(燃焼)させて、第一表皮ピース40fの両側に一対の切れ目を形成する。このとき他の糸材12は、加熱手段によって切断されるが、導電糸11は切断されることなくそのままの状態で残存する。そこで第一表皮ピース40f本体から端部側の布片を剥き取ることにより、導電糸11の端部(被接続部11a)を露出させることができる。
さらに本実施例では、上記作業時において加熱手段によって、被接続部11aを覆う樹脂コーティング11bに切れ目を入れる。そして樹脂コーティング11bの大部分を、被接続部11aから布辺とともに剥ぎ取るなどして除去する。こうして被接続部11a(導電糸本体)を露出させるのであるが、被接続部11aの周囲には、加熱手段で取りきれなかった樹脂コーティング11b一部が残存することとなる(なお図4では、便宜上、一部の樹脂コーティングにのみ符号を付す)。
(加熱手段)
加熱手段として、第一表皮ピース40fと物理的に接触可能な加熱装置(パンチ機構やハサミ機構等)や、レーザなどの光学的な加熱手段を例示できる。
なかでもレーザは正確な温度(出力)制御が可能であり、本実施例の加熱手段として好適に用いることができる。ここでレーザの種類は特に限定しないが、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザ、LDレーザ、LD励起固体レーザを例示できる。なかでも有機物(他の糸材12)への吸収が高いCO2レーザが好ましい。
例えば三菱炭酸ガスレーザ加工機(形式:2512H2、発信機形式名:25SRP、レーザ定格出力:1000W)を加熱手段として使用する。このときレーザ加工機の照射条件を、出力15W以上25W未満(周波数200Hz,加工速度1500mm/min)に設定することで、導電糸11を極力残存させつつ他の糸材12等を燃焼(溶融)させることができる。
[第二工程]
第二工程では、接続部材20を、取付け機構にて第一表皮ピース40fに取付けつつ被接続部11aに電気的につなげる(図2(b)、図4及び図5を参照)。
ここで本実施例の取付け機構は、ミシン(図示省略)と、振動装置30,32と、溶着装置34,36を有し、これら各装置は、図示しない台座にそれぞれ配設される(図4を参照)。そしてミシンは、接続部材20の端部側を第一表皮ピース40fの端部に重ね合わせて、この重ね合わせ部分を縫合してつなげるための装置である(図2(b)の縫合線SEWを参照)。
また溶着装置は、一対の加熱部材34,36(ローラ状)を有し、これら各部材は、他の糸材12を溶着可能な温度に加熱可能である。本実施例では、一対の加熱部材34,36を、所定の間隔(接続部材20の通過可能なクリアランス)をあけて対面配置し、それぞれ略水平に延びる軸材(図示省略)を回転中心として回転可能に配設する。そして一対の加熱部材34,36の回転にて、接続部材20を所定の方向に送り出す構成とする。
そして振動装置30,32は、一対の振動部材30,32(筒状又は平板状)を有し、これら各部材は、それぞれ図示しない機構(モータと超音波振動素子)の駆動により微振動可能である。本実施例では、一対の振動部材30,32を、溶着装置の前方に配設しつつ、所定の間隔(接続部材20の通過可能なクリアランス)をあけて対面配置する。
(取付け作業)
図2(b)及び図4を参照して、第一表皮ピース40fを取付け機構(図示しない台座上)に配置して、各被接続部11aを、振動装置30,32と溶着装置34,36の順で通過可能に配置する。
また第一面部21(導線21a)と第二面部22(導線22a)を、複数の被接続部11aを横断するように直交状に配置しつつ、各被接続部11aを挟んで対面可能に配置する。このとき第一面部21を、第一表皮ピース40fの表側に配置するとともに、第二面部22を、第一表皮ピース40fの裏側に配置して、両導線21a,22aを対面状に配置する。
そして本実施例では、接続部材20の端部側を第一表皮ピース40fの端部に重ね合わせて、この重ね合わせ部分を縫合する(図2の縫合線SEWを参照)。こうすることで第一表皮ピース40fに対する接続部材20の取付け安定性が向上する。そして第一表皮ピース40fと接続部材20をミシンにて縫合する場合には、センサ装置(図示省略)にて導電糸11を予め検出することにより、ミシンのミシン針(図示省略)が導電糸11を避けつつ、これらを縫付けることができる。
また上記作業とともに、第一面部21と第二面部22を、各被接続部11aを挟みつつ閉じ合せたのち、溶着装置34,36にて溶着することにより接続部材20を形成する。この種の構成では、接続部材20の導線21a,22aと被接続部11aを、(樹脂コーティング11bに極力邪魔されることなく)より安定性よく電気的につなげられることが望ましい。
そこで本実施例では、溶着作業の前に一対の振動部材30,32(振動装置)を、第一面部21と第二面部22にそれぞれ押し当てる。この状態で各振動部材30,32を微振動させて、両面部の導線21a,22aの凹凸部分と被接続部11aを擦り合わせる。こうすることで第一工程にて取りきれなかった残余の樹脂コーティング11bを被接続部11aから削り取るなどして極力除去する(第一工程後よりも多くの樹脂コーティングを除去する)ことができる。ここで残余の樹脂コーティング11bを除去するとは、例えば被接続部11aと導線21a,22aの間とは異なる箇所に樹脂コーティング11bを移動する又は樹脂コーティング11bを接続部材20中から取り去ることである。
つづいて一対の加熱部材34,36(溶着装置)を、それぞれ第一面部21又は第二面部22に押し当てて、第一面部21と第二面部22を密着状に閉じ合せる。この状態で各加熱部材34,36の加熱にて、第一面部21と第二面部22が、被接続部11aを挟んだ状態で溶着されて一体化される(図2の溶着箇所HSを参照)。こうして両面部の導線21a,22aにて各被接続部11aを挟むことで、接続部材20と導電糸11を電気的につなげることができる。
[シートカバーの作成及び使用]
こうして作成された第一表皮ピース40fを、他の表皮ピース(第二表皮ピース40s等)に縫合することでシートカバー4Sを作成する(図1を参照)。
そして接続部材20を図示しない電源に電気的につなげるとともに、シートカバー4Sを、シートパッド4P上に配置しつつ、ヒータ等として使用する。本実施例では、接続部材20と各導電糸11が、樹脂コーティング11bに極力邪魔されることなく電気的につながるため、例えばシートカバー4Sをヒータとして用いる場合には温度ムラが極力生じない構成となる(図4及び図5を参照)。
以上説明したとおり本実施例では、導線21a,22aにて、被接続部11aの樹脂コーティング11bを可能な限り除去することができる。
また本実施例では、複数の被接続部11aに対して導線21a,22aを直交状に配置することで、樹脂コーティング11bを効率良く除去することができる。
このため本実施例によれば、接続部材20と導電糸11を、より安定的に電気的につなげることができる。
[変形例]
本変形例では、超音波にて、第一面部21と第二面部22を溶着するとともに各被接続部11aに導線21a,22aを擦り合せる(図7を参照)。
ここで本変形例の取付け機構は、略矩形の台座BMと、ミシン(図示省略)と、溶着装置(40,43)を有する。溶着装置は、押え部材40(ローラ状)と、振動体43を有する。押え部材40は、略水平に延びる軸材Aを介して支持部材42に軸支されており、台座BM上で軸材Aを回転中心として軸周りに回転可能である。そして支持部材42を、図示しない昇降機構に連結することで、押え部材40を、台座BMに近接又は離間する向きに移動させる。また振動体43は、台座BMの一部をなす平板状の部位であり、押え部材40の対面位置に設けられる。そして振動体43は、台座BM内の図示しない機構(モータと超音波振動素子)の駆動により微振動可能である。
(取付け作業)
図7を参照して、第一表皮ピース(図示省略)を、台座BM上に配置しつつ、各被接続部11aを、押え部材40と振動体43の間に順次配置可能とする。
また第一面部21と第二面部22を、複数の被接続部11aを横断するように配置しつつ、各被接続部11aを挟んで対面可能に配置する。このとき第二面部22を、第一表皮ピースの裏側に配置しつつ、台座BMの上面から側面にかけて配置する。また第一面部21を、第一表皮ピースの表側に配置しつつ、溶着装置(40、43)側に向かうにつれて次第に第二面部22に近接させる。
そして本変形例では、第一表皮ピース(被接続部11a)と接続部材20を、押え部材40の回転等にて溶着装置側に向けて移動可能とする。このとき第一面部21と第二面部22が、第一表皮ピースの移動に追従しつつ、溶着装置(40,43)の手前で閉じ合わされる。
そして第一面部21と第二面部22を、各被接続部11aを挟みつつ閉じ合せたのち、溶着装置(40、43)にて溶着する(接続部材20を形成する)。このとき押え部材40を回転させつつ第一面部21側に押し当てて、第一面部21と第二面部22を密着状に閉じ合せる。この状態で振動体43を超音波にて微振動させることにより(押え部材40と振動体43の協働作用により)、第一面部21と第二面部22が、各被接続部11aを挟んだ状態で溶着されて一体化される。
更に本変形例では、溶着装置(40、43)の超音波にて、両面部の導線21a,22aと被接続部11aを擦り合わせる。こうすることで第一工程にて取りきれなかった残余の樹脂コーティング11bを被接続部11aから極力除去することができる。
本変形例では、第一面部21と第二面部22の溶着と同時に被接続部11aに導線21a,22aを擦り合せることができる(第二工程の構成の簡略化に資する構成である)。
本実施形態の布材の製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、第一面部21と第二面部22が別体である接続部材20を例示した。これとは異なり第一面部と第二面部が予め一体とされた接続部材を用いることができる。例えば幅広な接続部材(一側が第一面部と他側が第二面部)を二つ折りすることで、第一面部と第二面部を対面配置させる。なお取付け作業時において、第一面部を、第一表皮ピースの表面と裏面のいずれか一方の面に配置でき、第二面部を、一方とは異なる他方の面に配置できる。なお第一表皮ピースに電極機能を持たせる場合には、単数の接続部材を取付けることとなる。
(2)また本実施形態では、第一面部21と第二面部22の双方に導線21a,22aを設ける例を説明した。これとは異なり導線を、第一面部にのみ配置するとともに、第二面部を、可撓性を有する帯状の面材で(導線を省略して)形成することもできる。なお第一面部と第二面部は、第一表皮ピースの表裏面に適宜配設できる。なお導線は、被接続部に対して完全に直交して配置されるほか、被接続部をやや斜めに(実質的に直交状に)横断して配置させることもできる。
(3)また本実施形態では、複数の導電糸11を第一表皮ピース40f(布材)に直線状に並列配置する例を説明したが、導電糸の構成を限定する趣旨ではない。例えば導電糸は、布材に波状に並列配置させることができる。また被接続部11aの形成位置は、導電糸の端部に限定されず適宜変更可能である。
(4)また本実施形態では、溶着装置や振動装置の構成(各構成の形状や寸法や配置位置など)を例示したが、これら機構等の構成を限定する趣旨ではない。例えば溶着装置は、単数又は複数の加熱部材を有することができ、振動装置は、単数又は複数の振動部材を有することができる。なおセンサ装置は、導電糸の有無を検出可能な機構(磁気型、X線放射型、静電容量型などの機構)を備え、第一表皮ピースの表側と裏面と側面のいずれかから導電糸を検出可能な構成とすることができる。
(5)また本実施形態では、シートクッション4のシートカバー4Sを一例に説明したが、本実施例の構成は、シートバック等の各種シート構成部材のシートカバーに適用できる。また本実施例の構成は、車両用シートのほか、航空機や電車などの乗物用シート全般に適用できる。
2 乗物用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
4S シートカバー
4P シートパッド
11 導電糸
11a 被接続部
12 他の糸材
20 接続部材
21 第一面部
22 第二面部
21a,22a 導線
40f 第一表皮ピース
40s 第二表皮ピース
SEW 縫合線
HS 溶着箇所

Claims (3)

  1. 樹脂コーティングされた通電可能な導電糸と他の糸材を構成糸として布材を作成したのち、前記布材から前記導電糸の被接続部を露出させる第一工程と、
    前記導電糸に電力を供給可能な面状の接続部材を、前記布材に取付けつつ前記被接続部に電気的につなげる第二工程とを備える通電可能な布材の製造方法において、
    前記接続部材が、前記導電糸に電力を供給可能な面状の第一面部と、前記第一面部に対面配置可能な第二面部と、前記第一面部に設けられた通電可能な導線とを有するとともに、前記導線の表面側に、前記導電糸の表面側よりも大きな凹凸が形成され、
    前記第一工程において、加熱手段によって、前記他の糸材を溶融又は燃焼させて除去することにより前記被接続部を露出させるとともに、前記被接続部を覆う前記樹脂コーティングの大部分を除去し、
    前記第二工程において、前記第一面部と前記第二面部を、前記被接続部を挟んで対面可能に配置するとともに、前記第一面部と前記第二面部を当接させつつ前記被接続部に前記導線の凹凸部分を擦り合せることにより、前記第一工程にて取りきれなかった残余の樹脂コーティングを前記被接続部から除去する通電可能な布材の製造方法。
  2. 前記第二工程において、前記第一面部と前記第二面部を、前記被接続部を挟みつつ密着状に閉じ合せたのち、前記第一面部と前記第二面部を、超音波にて溶着することで前記接続部材を形成しつつ、前記超音波にて前記導電糸に前記導線の凹凸部分を擦り合せる請求項1に記載の通電可能な布材の製造方法。
  3. 前記第二工程において、前記導線が、前記布材に適宜の間隔で並列配置する複数の前記被接続部を横断しつつ直交状に配置される請求項1又は2に記載の通電可能な布材の製造方法。
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