JP5605247B2 - 布材 - Google Patents
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導電性の線材は、ステンレスや炭素繊維(導電糸)の束からなる芯糸と、非導電性の巻付糸を有する。巻付糸は、綿やポリエステルなどの線材であり、芯糸に対してスパイラル状に巻付けられる。
公知技術では、導電性の線材を用いて織物を織製したのち、接続部材を介して導電性の線材を通電状態とする。導電性の線材(経糸と緯糸)の交差部分は、非導電性の巻付糸が介在することによりコンデンサとしての機能を備える。
ここで特許文献1の織物は、例えば車両用シートの表皮材として使用される。このとき表皮材(織物)を通電状態として、交差部分(コンデンサ)の静電容量を測定することにより、シート上の乗員の有無等を検知できる。
そこで特許文献2の技術では、導電性の線材を表皮材の裏面等に接着する構成である。このため融着性(接着性)を有する巻付糸が芯糸にスパイラル状に配置する。そして巻付糸の接着性によって、芯糸に対する巻付糸のずれをある程度防止しつつ、導電性の線材を表皮材に接着することができる。
もっとも樹脂層などで芯糸を被覆することもできるが、そうすると布材に粗硬感がでたり、異物感が生じたりする。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、布材の性能を極力維持しつつ、芯糸に対する巻付糸のずれを極力阻止することにある。
そこで本発明では、導電糸が、炭素繊維であるとともに、融着糸が、巻付糸よりも低融点の糸材である。そして複数の導電糸の束と、導電糸の軸芯方向に配置された融着糸にて芯糸を形成したのち、巻付糸を、導電糸が露出しないように芯糸の周りにスパイラル状に配置した。こうすることで融着糸の露出を極力防止しつつ、芯糸に対する巻付糸のずれを極力阻止することができる。
図1の車両用シート2は、シートクッション4とシートバック6とヘッドレスト8を有する。これら部材は、各々、シート外形をなすクッション材(4P,6P,8P)と、クッション材を覆う表皮材(4S,6S,8S)を有する。
典型的なクッション材として、例えばポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)を用いることができる。
本実施形態の布材10は、導電性の第一線材20f(芯糸22,巻付糸28)を有する(図2及び図3を参照、詳細後述)。この種の構成では、布材10の性能を極力維持しつつ、芯糸22に対する巻付糸28のずれを極力防止できることが望ましい。
そこで本実施形態では、後述の構成によって、布材10の性能を極力維持しつつ、芯糸22に対する巻付糸28のずれを極力防止することとした。以下、各構成について詳述する。
表皮材は、表材(表皮材本体)と、布材10と、接続部材12を有する(図1及び図5を参照)。本実施形態では、表材(表皮材本体)の裏面に布材10を取付けるとともに、接続部材12によって、布材10を通電して加熱させる(布材10をヒータ部材として機能させる)こととした。
表材(表皮材本体)は、クッション材を被覆する部材であり、天然繊維や合成繊維などの布帛(織物、編物、不織布又はこれらの複合体)又は皮革(天然皮革や合成皮革)にて構成できる。
ここでも表材(表皮材本体)は、平織物、斜文織物又は朱子織物等のいかなる構成の織物でもよく、経編、丸編又は横編等のいかなる構成の編物でもよい。そして表材(表皮材本体)は、いかなる繊維(原料)、いかなるウェブ形成技術、いかなるウェブ結合技術によって製造した不織布でもよい。
布材10は、布帛(織物、編物、不織布又はこれらの複合体)からなる部材であり、表皮材の裏面側(クッション材を臨む側)に取付けることができる。そして布材10は、後述する複数の構成糸(第一線材20f,第二線材20s)を有する(図2を参照)。
本実施形態の布材10は緯編組織の編物であり、第一線材20fと第二線材20sが、それぞれループを形成しつつ構成糸として編込まれる。
また布材10は表皮材の裏面に配置するため、編地が薄く且つ伸びやすいことが好ましく、編物としては丸編機のうちのシングルベッド編機を用いたシングルジャージが好ましい。
第一線材20fは、芯糸22(複数の導電糸24の束、融着糸26)と、巻付糸28を有する(図3を参照)。
そして本実施形態では、導電糸24の軸芯方向に融着糸26を配置して芯糸22を形成したのち、芯糸22の周りに巻付糸28をスパイラル状に配置した。こうすることで融着糸26の露出を極力阻止しつつ、芯糸22に対する巻付糸28のずれを防止又は低減することができる。
導電糸24は、通電可能な導電性の線材であり、JIS K 7194に準拠して測定した比抵抗(体積抵抗率)が100〜10-12Ω・cmの線材を使用することができる。このような導電糸24としては、例えば、炭素繊維のフィラメント、金属線及びめっき線材(参考例)等が挙げられる。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、ピッチ系炭素繊維が挙げられる。これらのうちでは、焼成温度1000℃以上の炭素化繊維、黒鉛化繊維、黒鉛繊維が、良好な電気伝導性を有するため好ましい。
一方、芯材が導電性の繊維材料の場合、めっき層を形成することで耐久性を向上させることができる。
また非導電性繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミドPBO繊維、ポリアクリレート繊維、PPS繊維、PEEK繊維、ポリイミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維及びボロン繊維等が挙げられる。
そしてめっき処理に用いられる金属としては、錫、ニッケル、金、銀、銅、鉄、鉛、白金、亜鉛、クロム、コバルト及びパラジウム等の単体金属、並びにニッケル−錫、銅−ニッケル、銅−錫、銅−亜鉛及び鉄−ニッケル等の合金が挙げられる。
導電糸24は、編物に用いられる第二線材20s(後述)と比べて耐熱性を有していることが好ましい。言い換えれば、加熱により溶融する温度、又は溶融しない糸である場合は、燃焼開始温度が第二線材20sよりも高いことが好ましい。即ち導電糸24は、第二線材20sよりも高融点であるか、又は燃焼し難い糸であることが好ましい。
この燃焼性の指標としては、JIS K 7201及びJIS L 1091(1999)8.5E−2法(酸素指数法試験)に準拠して測定される限界酸素指数(LOI)を用いることができ、LOIが26以上である導電糸24が好ましい。上述の導電糸24のうち、金属線は、一般に、第二線材20sとして用いられる天然繊維や合成繊維よりも高融点であって、且つLOIは、通常、26以上であり、例えば、ステンレス鋼繊維のLOIは49.6である。また炭素繊維は溶融せず、LOIは60.0以上である。
融着糸26は、加熱により溶融したのち固化可能な線材であり、導電糸24の軸線方向に配置することができる(図3を参照)。
融着糸26の融点は、後述の巻付糸28の融点よりも低いことが望ましく、巻付糸28の融点より20℃以下とすることが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレートの巻付糸28を用いる場合、240℃以下の融点を有する融着糸26(例えばポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系の繊維)を用いることができる。
混繊型の融着糸26とは、比較的高融点の繊維と、比較的低融点の繊維(融着部分)が混在する合成繊維である。また芯鞘型の融着糸26とは、例えば、比較的高融点の芯材部分と、比較的低融点の融着部分を有する合成繊維である。
例えば直径7μmの炭素繊維1000本からなり直径約260μmの導電糸1束に対して、直径33μmのフィラメント10本からなり直径約100μmの融着糸を1本配置する。このとき330dtex−60フィラメントのPET仮撚加工糸である巻付糸を、上記両糸の周りに、カバリング撚数1500T/mにてスパイラル状に配置できる。
また融着糸26を2本以上とすることにより、第一線材20fの耐久性を向上させることもできる。
芯糸22は、上述の融着糸26を、導電糸24の軸方向に沿って配置することにより形成される(図3及び図4を参照)。
例えば導電糸24と融着糸26を引き揃える(両糸を略平行に配置する)ことで、融着糸26を導電糸24の軸方向に沿って配置できる。
また融着糸26に対して例えば解除撚り(後述の巻付糸28よりも少ない撚数の撚り)を施しつつ、導電糸24の軸方向に配置することができる。なお解除撚りは、通常、糸の撚りとして扱わない。
巻付糸28は、融着糸26とは異なる合成繊維又は天然繊維からなる線材(非接着性の線材)であり、芯糸22の周りにスパイラル状に配置される(図3を参照)。
このように芯糸22(導電糸24,融着糸26)の周りにスパイラル状に巻付糸28を配置することで、融着糸26の露出を極力阻止しつつ、芯糸22(導電糸24)に対する巻付糸28のずれを防止又は低減できる。
また導電糸24と融着糸26を引き揃えたのち(芯糸22を形成したのち)芯糸22の周りに巻付糸28を配置するため、巻付糸28を効果的に固定できる。このとき巻付糸28の固定点が導電糸24に全体ではなく一部であるため、粗硬とならず異物感を抑えることができる。
融着糸26を溶かして導電糸24と巻付糸28を接着する工程は限定されず、製編織時のズレを抑制するため製編織前でもよく、製品として使用される前迄に固定されればよい。
例えばシングルカバリングの場合、巻付糸28の撚数を20〜2000T/mに設定することで、第一線材20fに所望の耐久性を付与できる。ここで巻付糸28の撚数が20T/m未満であると、所望の第一線材20fの耐久性が得られない傾向にある。
そして巻付糸28の撚数を導電糸24が露出しない条件に設定することで、所望の耐久性を備えた第一線材20fとすることができる。
同図の装置は、複数のローラ(R1〜R5)と、複数のボビン(B1〜B4)を有し、第一線材20fを作成しつつ装置上方に巻取ることができる。
そして本装置では、ボビンB1から導電糸24を引出しつつ、ボビンB2から融着糸26を取出して、導電糸24と融着糸26を引揃えつつ巻取る(芯糸22を形成する)。
つぎにボビンB3とボビンB4からそれぞれ巻付糸28(後述)を取出して、芯糸22の周りにスパイラル状に配置しつつ巻取ることで、第一線材20fを作成できる。このとき第一線材20fでは、芯糸22が、巻付糸28にてダブルカバリングされる。
第二線材20sとして、天然繊維(植物系及び動物系の天然繊維、レーヨンなどの再生繊維)、合成繊維(ポリアミド及びポリエステル等の合成繊維、アセテートなどの半合成繊維)を用いてなる糸が挙げられる(図2を参照)。
第二線材20sとして、上述の繊維又は糸を1種類のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお第二線材20sは、通常、比抵抗が108Ω・cmを超え、絶縁性である。
第二線材20sは、加熱により溶融する温度、又は溶融せず燃焼する温度は、燃焼開始温度が導電糸24よりも低く、溶融せず燃焼する線材の場合、LOIが26未満であることが好ましい。天然繊維のLOIは26未満であることが多く、例えば綿のLOIは、18〜20であり、羊毛のLOIは24〜25である。
更に合成繊維は、導電糸24よりも低融点であることが多く、燃焼性は導電糸24よりも高い場合が多い。例えば、ポリエステル繊維のLOIは18〜20であり、ナイロン繊維のLOIは20〜22である。
第一線材20fは、第二線材20sの間に単数(1本)編み込んでもよく、複数(2〜10本、特に2〜5本)を連続して編み込んでもよい(図2及び図5を参照)。なお図2及び図5では、便宜上、第二線材で構成された布材部分に符号20sを付す。
この場合も、連続して編み込まれた複数の第一線材20fの、編物のウエール方向における配置は等間隔でもよく、等間隔でなくてもよい。このように車両用シートを均等に暖めるか、特定箇所をより十分に暖めるかは、第一線材20f(導電糸24)を配置させる間隔、および連続して編み込む時の本数などによって調整することができる。
間隔W1が狭いと(例えば2mm未満に設定すると)均等に温めることができるが、導電糸1本当たりの電流が少なくなり温度が低下する、もしくは温度を上げるために電圧を高くすれば、消費電力が増加することになる。
また間隔W1が広いと(例えば100mmを超えるように設定すると)導電糸1本当たりの電流が多くなり温度が上がる、若しくは電圧を下げて消費電力を抑制することができる。しかし、間隔W1が広いために温度にムラを生じやすくなる。
布材10をヒータ部材として用いるとき、第一線材20f(導電糸24)を略等間隔に編み込むことで、車両用シート2(シートクッション4やシートバック6)の全面をより均等に暖めることができる。
また着座者の特定の箇所(大腿部、肩部、背部等)を特に十分暖めたい場合は、布材10(ヒータ部材)の対応する箇所において第一線材20fを相対的に密に配置させ、他の箇所において相対的に疎に配置させることもできる。
ヒータ部材の製造方法は、切出し工程と、賦形工程と、接続工程を有する(図5を参照)。
本実施形態では、各工程の前に、第一線材20fと第二線材20sからなる緯編組織の編物(原反)を作成する。原反は、上述の通り、丸編又は横編により編み立てられる、例えば、丸編によって編まれ、この原反が開反されたのち後述の編物片が切出される。
切出し工程では、略矩形(長方形、正方形)の編物片を原反から切出す。編物片の形状は略長方形形状であり、長方形及び正方形のいずれでもよいが、車両用シートなどの座席に用いられるため、シートクッション4(座面)用及びシートバック6(背凭れ)用のいずれであっても長方形形状であることが多い。
原反からの編物片の切出し方法は特に限定されず、カッターにより切出すことができ、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザを照射して切出すこともできる。
賦形工程では、原反から切出された編物片を所定形状に賦形することで(所定形状とすることで)ヒータ部材を作成する。例えば同工程において、編物片が、座面又は背凭れと略同一の所定形状に賦形される。より具体的には、原反から切出された長方形形状の編物片のコース方向の両側端部を、針及びクリップ等で固定し、コース方向の両方向に引伸ばして所定形状とし、その形状を保持した状態で形状を固定し、賦形することができる。
賦形方法は特に限定されないが、編物には、第二線材20sが用いられるため、所定形状に固定された編物片を、第二線材20sの材質(例えば合成樹脂の種類)に応じた温度で所定時間加熱し、熱セットすることにより賦形することで、所定形状の布材10(ヒータ部材)を得ることができる。
接続工程では、布材10(ヒータ部材)のコース方向の両側端部に接続部材12を接続して、布材10の導電糸24をECUに接続する(図5〜図7を参照)。
例えば布材10(ヒータ部材)が有する複数の導電糸24の各々の両端部を、ECUに接続するための接続部材12に電気的に接続する。
接続工程では、布材10(ヒータ部材)が有する導電糸24のコース方向の両端部を、接続部材12が有する導体に接続し、それぞれの接続部材12の長さ方向の一端部の接続端子をECUに接続することにより、ECUからの信号で電源から電力が供給され、導電糸24が通電状態となる。
接続部材12の構成は特に限定されないが、織物等からなる帯状の基材の、少なくとも導電糸24の端部が接続される面にめっき処理が施されてなる接続部材12が挙げられる。この接続部材12では、めっき層12a(導体の一例)と導電糸24の端部を接続させ、かがり縫い等により固定する(縫合線SEW2)。その後、帯状の基材の一方の側端部をヒータ部材のコース方向の側端部に縫着することにより取付ける(縫合線SEW1)。
なお接続部材12(基材)は、布材10(ヒータ部材)に取付けるときの作業のし易さ、及び車両用シート等の椅子に乗員が着座した時の荷重による変形のし易さ等の観点で、柔軟であることが好ましい。
賦形前の略長方形形状の編物片であれば、コース方向の両側端部が直線状であり、接続部材12を縫着等により取付けるときに作業が容易である。更に編物片のコース方向の両側端部を、針及びクリップで固定し、コース方向の両方向に引伸ばして所定形状に賦形するときに、予め接続部材12が取付けられておれば、この接続部材12を針及びクリップで固定し、引伸ばすことができ、両側端部を、より容易に、且つより確実に固定することができる。
加熱手段は特に限定されず、電熱加熱による発熱部材等を接触させる方法、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザを照射する方法等が挙げられるが、レーザを照射する方法が好ましい。
そのため布材10本体と、その両側(接続用端部30)の境界部で、布材10のウエール方向に非導電材を帯状に除去する(図8を参照)。その後、接続用端部30を引っ張って導電糸24から抜きとり、布材10両側の非導電材の全てを除去することが好ましい。このようにすれば、非導電材をより効率良く除去することができる。
このように導電糸24の端部が直線状、又は多くの部分が直線状であれば、接続用端部30(非導電材)を容易に導電糸24から引き抜いて除去することができ、導電糸24を容易、且つ確実に露出させることができる。
そのため接続部材12は、表皮材と、この表皮材に隣接するサイド材等の他の部材との縫製部より外側に位置するように配置することが好ましい。このようにすれば、着座した乗員にほとんど違和感を発生させることなく、耐久性を向上させることができる。
このため本実施形態では、乗降を繰返しても、芯糸22に対する巻付糸28のずれが極力阻止されるため、第一線材20fの断線を好適に防止できる。また融着糸26(融着成分)が導電糸24と巻付糸28の間に存在する。このため布材10の作成時などに、隣り合う線材同士が接着して硬くなったり(粗硬感が生じたり)、布材10の伸縮性が阻害されたりすることがほとんどない。よって本実施形態によれば、布材10の性能を極力維持しつつ、芯糸22に対する巻付糸28のずれを極力阻止できる。
また本実施形態では、接続部材12を介して導電糸24に通電することにより、表皮材を、シートヒータとして使用できる。このため本実施形態によれば、各種性能に優れる表皮材を提供できる。
[実施例1]
実施例1の第一線材として、導電糸(東レ社製、炭素繊維「トレカT300−1K−50A」)と、融着糸(東レ社製、「エルダー」110dtex−10フィラメント−G100)と、巻付糸(ポリエチレンテレフタレート(PET)加工糸、330dtex−60フィラメント)を用いた。
そして導電糸と融着糸を引き揃えて芯糸を形成するとともに、巻付糸の撚数を1500T/mに設定して、芯糸に対して巻付糸のSおよびZ撚ダブルカバリングを行った。なおカバリング後、熱セットすることにより巻付糸がずれないようにした。この第一線材は、巻付糸表面から観察すると芯糸が見えず、被覆性に優れていた。
ダブルジャージは、緯編機として、両面選針機(福原精機製作所製、方式「V−LEC4DS」、釜径30インチ、18ゲージ、供糸口48)を用いて編成した。
またシングルジャージは、緯編機(福原精機製作所製、方式「V−SEC−7」、釜径30インチ、18ゲージ、供糸口24)を用いて編成した。このシングルジャージでは、針本数1728本中、着座部(図8の布材10本体)として496本を3組(合計1488本)を使用し、その間及び一方の端部側に接続部(図8の接続用端部30)として60本を4組(合計240本)使用した。また接続部では、第一線材はニットを減らして略直線状とし、非導電材であるPET糸を除去し易くするとともに、容易に接続することができるようにした。
その後、接続部材である接続ベルトと導電糸を縫製により接続した。次いで長方形形状の編物片の両側端部に接続ベルトを縫着させ、縫着された接続ベルトに針を刺し、表皮材の形状に合わせるべく個々の針を横方向に移動させ、編物片をコース方向に引っ張った状態で熱セットし、ヒータ部材(所定形状の布材)を得た。熱セットは、乾熱にて180℃で1分間とし、室温(20℃〜30℃)にまで冷却後、針の固定を外し、ヒータ部材を得た。
比較例1では、実施例1の第一線材から融着糸を省略して、第一線材を構成した。そして実施例1と同様の手法によって比較例1の布材(ヒータ部材)を作成した。
耐屈曲試験では、ヨコ(第一線材が編み込まれている方向)80mm、タテ25mmのサンプルを切出し、曲率半径1mmにて真っ直ぐな状態から片側に120°屈曲させる屈曲を繰返し10000回行った後、得られた第一線材を観察した。
耐屈曲試験後の比較例1の布材では、いずれの屈曲点においも屈曲部の外側において巻付糸がずれ、導電糸(炭素繊維)が露出し、そこで導電糸が折れているのが確認された。
これとは異なり、耐屈曲試験後の実施例1の布材では、芯糸に対する巻付糸のずれが観察されず、導電糸(炭素繊維)の折れも発生しなかった。これは芯糸(炭素繊維)を巻付糸で被覆することで、芯糸の一部に応力集中が生じなかったためと考えられる。すなわち一般的に、第一線材の繰返しの屈曲により、編地の第一線材が形成するループの先端部(屈曲点)で巻付糸のずれが生じやすい。そこで本実施例では、導電糸(炭素繊維)と巻付糸を融着糸で固定することにより、炭素繊維の折れを防ぐことができたと考えられる。
さらに実施例1の布材では、第一線材の表面に融着糸成分が露出しておらず、隣接する糸と接着していなかった。
以上の試験結果より、本実施例によれば、布材の性能を極力維持しつつ、芯糸に対する巻付糸のずれを極力阻止できることがわかった。
(1)本実施形態の布材は、天板メイン部、天板サイド部、かまち部及び背裏部などの車両用シート2の各種構成の表皮材(例えば4S,6S,8S)として使用することができる。また布材は、車両用シート(座席の一例)の表皮材のほか、家庭用の座席等の各種の座席の表皮材の構成部材として使用することができる。
(2)また本実施形態では、専らヒータ部材として機能する布材10を説明した。布材10は、静電容量式センサの電極として使用できる。この場合、布材10の片側にのみ単数の接続部材を取付けることができる。
また表材(表皮材本体)と布材の間にパッド材(ウレタンラミ等)を配設することもできる。
10 布材
12 接続部材
20f 第一線材
20s 第二線材
22 芯糸
24 導電糸
26 融着糸
28 巻付糸
30 接続用端部
Claims (2)
- 導電性の線材を有する布材において、
前記線材が、複数の導電糸の束と、融着性を有する融着糸と、前記融着糸とは異なる合成繊維又は天然繊維からなる巻付糸とを有して、前記導電糸が、炭素繊維であるとともに、前記融着糸が、前記巻付糸よりも低融点の糸材であり、
前記複数の導電糸の束と、前記導電糸の軸芯方向に配置された前記融着糸にて芯糸を形成したのち、前記巻付糸を、前記導電糸が露出しないように前記芯糸の周りにスパイラル状に配置した構成である布材。 - 請求項1に記載の布材を有する表皮材によって、シート外形をなすクッション材を被覆し、接続部材を介して前記導電糸を通電可能とした座席。
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