以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
本発明に係る気泡含有多層フィルムは、2層以上の多層構造を有し、少なくとも1層が、内部に複数の気泡を含有する気泡含有層であり、該気泡の平均気泡径が200nm未満であり、可視光線透過率が70%以上である。気泡含有層は、微細な気泡を含む。
図1に、本発明の一実施形態に係る気泡含有多層フィルムを模式的に断面図で示す。
図1に示す気泡含有多層フィルム1は、内部に複数の気泡Aを含有する気泡含有層11〜16と、気泡含有層とは異なる層21〜27(以下、他の層と記載することがある)とを有する。気泡含有層11〜16と他の層21〜27とは交互に、気泡含有多層フィルム1の厚み方向に積層されている。すなわち、気泡含有多層フィルム1は、他の層21、気泡含有層11、他の層22、気泡含有層12、他の層23、気泡含有層13、他の層24、気泡含有層14、他の層25、気泡含有層15、他の層26、気泡含有層16及び他の層27がこの順で積層されて、構成されている。気泡含有層11〜16は層21〜27により挟み込まれおり、気泡含有層11〜16はそれぞれ、層21〜27により互いに隔てられている。
気泡含有層11〜16は、複数の気泡Aを含有するように、発泡された発泡層であることが好ましい。他の層21〜27は、他の層の単位面積あたりの気泡の個数が、気泡含有層の単位面積あたりの気泡の個数よりも少ないことが好ましく、実質的に気泡を含まないことがより好ましい。他の層21〜27は、樹脂により形成された樹脂層であることが好ましい。気泡含有層11〜16の材料は、同一であってもよく、異なっていてもよい。他の層21〜27の材料は、同一であってもよく、異なっていてもよい。気泡含有層11〜16の材料と他の層21〜27の材料とは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、気泡Aの平均気泡径を、容易に200nm未満に制御できることから、気泡含有層11〜16の材料と他の層21〜27の材料とは異なることが好ましい。また、気泡Aの平均気泡径を200nm未満に容易に制御できることから、気泡含有層及び他の層が樹脂を含有する場合、気泡含有層に含まれる樹脂は、他の層に含まれる樹脂とは異なることが好ましい。
気泡含有多層フィルム1では、気泡含有層11〜16と他の層21〜27とが規則的に積層されている。気泡含有層と他の層とはランダムに積層されていてもよい。気泡含有層と他の層とは規則的に積層されていることが好ましく、更に交互に積層されていることが好ましい。本発明に係る気泡含有多層フィルムは、上記気泡含有層の両面に積層されている上記気泡含有層とは異なる他の層を有することが好ましい。上記気泡含有層は熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。上記他の層は熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
図2に、本発明の他の実施形態に係る気泡含有多層フィルムを模式的に断面図で示す。
図2に示す気泡含有多層フィルム51は、内部に複数の気泡Aを含有する気泡含有層61〜73を有する。該気泡含有層61〜73は、気泡含有多層フィルム51の厚み方向に積層されている。気泡含有層61〜73は、複数の気泡Aを含有するように、発泡された発泡層であることが好ましい。気泡含有層61〜73の材料は同一であってもよく、異なっていてもよい。
気泡含有多層フィルム1,51において、気泡含有層11〜16,61〜73に含まれている気泡Aの平均気泡径は、200nm未満である必要がある。気泡Aの平均気泡径が大きいと、光の散乱が多くなる。平均気泡径が200nm未満であれば、気泡含有多層フィルム1,51の可視光線透過率が70%以上になる。気泡含有多層フィルム1,51の透明性をより一層高める観点からは、気泡Aの平均気泡径は、180nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、80nm以下であることが特に好ましい。
気泡含有多層フィルム1,51の可視光線透過率は75%以上であることが好ましく、79%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
気泡含有多層フィルム1,51は、気泡含有層11〜16,61〜73を有するので、断熱性に優れており、かつクッション性に優れている。気泡含有多層フィルム1,51の断熱性及びクッション性をより一層高める観点からは、気泡Aの平均気泡径は、30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることが更に好ましい。
上記「平均気泡径」に関しては、気泡Aが独立気泡であり、真球状である場合には、気泡の直径から平均気泡径が求められる。気泡Aが独立気泡であり、真球状以外の形状である場合には、気泡Aの外周の2点を結ぶ最長の長さ、すなわち最大径から平均気泡径が求められる。また、気泡Aが連続気泡である場合にも、気泡Aの外周の2点を結ぶ最長の長さ、すなわち最大径から平均気泡径が求められる。平均気泡径は、少なくとも10個以上の気泡の気泡径の平均値を示し、任意に選択された10個の気泡の気泡径の平均値であることが好ましい。
また、上記「平均気泡径」の測定は、凍結切片法又は凍結破断法等により、気泡含有層の断面を露出させ、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、気泡含有層の断面を観察することにより行われる。上記平均気泡径は、例えば、凍結切片法により、気泡含有層の厚さ方向における中央部の断面を露出させた後、気泡含有層の厚さ方向における中央部を観察できるようにサンプルを準備し、日立製作所社製の走査型電子顕微鏡(SEM、型式「S−3400N」)を用いて、得られたサンプルを観察し、任意に選択された10個の気泡の気泡径の平均値により定義されることが好ましい。
気泡Aの平均気泡径を200nm未満にするために鋭意検討した結果、本発明者は、2層以上の多層構造を有する多層フィルムとすることが最適であることを発見した。さらに、本発明者は、気泡含有多層フィルム1のように、気泡含有層11〜16と、気泡含有層11〜16とは異なる他の層21〜27とを積層することにより、気泡Aの平均気泡径を容易に200nm未満にすることができることも発見した。
気泡の平均気泡径を200nm未満にするために、気泡含有層の少なくとも一方の表面に、気泡含有層とは異なる層が積層されていることが好ましく、気泡含有層の両面に、気泡含有層とは異なる層が積層されていることが好ましい。このような積層構造では、気泡含有層とは異なる層が、気泡含有層における気泡を保持し、かつ気泡の消失を抑制するように作用する。例えば、気泡含有層の内部に存在する気泡は、気泡含有層に積層されている他の層により保持される。また、更に気泡含有多層フィルム1の成形時の圧力によっても、気泡含有層とは異なる層の存在により、気泡が効果的に保持される。気泡の保持力が小さいと、気泡が大きくなりすぎたり、気泡含有層から気泡が消失したりする。これらを防ぐために、成形時における気泡含有層の材料の粘度は、成形時における他の層の材料の粘度よりも小さいことが好ましい。特に、気泡含有多層フィルムの透明性及び断熱性をより一層高くすることができることから、成形時における気泡含有層の粘度は、成形時における他の層の粘度よりも小さいことが好ましい。上記粘度の関係は、例えば気泡含有層及び他の層に用いる樹脂自体の粘度により制御されてもよく、成形時の温度調整による粘度変化によって制御されてもよい。なお、成形時とは、樹脂自体の温度が50℃以上300℃以下の環境下である状態として定義される。成形時における気泡含有層及び他の層の粘度(流動性)に関して、成形時における気泡含有層のMFR(メルトマスフローレイト)は成形時における他の層のMFRよりも、大きいことが好ましく、0.5(g/10min)以上大きいことが好ましく、1(g/10min)以上大きいことがより好ましく、2(g/10min)以上大きいことが更に好ましく、3(g/10min)以上大きいことが特に好ましい。成形時における気泡含有層のMFRの上限は特に限定されないが、30(g/10min)以下であることが好ましい。
更に、気泡含有層及び他の層が樹脂を含む場合、気泡含有多層フィルムの透明性及び断熱性をより一層高くすることができることから、気泡含有層に含まれる樹脂のMFRは、他の層に含まれる樹脂のMFRよりも、大きいことが好ましく、0.5(g/10min)以上大きいことが好ましく、1(g/10min)以上大きいことがより好ましく、2(g/10min)以上大きいことが更に好ましく、3(g/10min)以上大きいことが特に好ましい。気泡含有層に含まれる樹脂のMFRは特に限定されないが、30(g/10min)以下であることが好ましい。
また、気泡含有層の内部に存在する気泡を効率的に維持することができることから、他の層のガスバリア性は、気泡含有層のガスバリア性よりも高いことが好ましい。他の層のガスバリア性を、気泡含有層のガスバリア性よりも高くするために、他の層の材料として、ガス透過率が低い樹脂を使用することが好ましい。なお、MFRの測定手法はISO1133に準拠する。
また、本発明者は、気泡含有層の厚みが薄いほど、平均気泡径を小さくすることができることも発見した。よって、気泡含有多層フィルムの層数が多いほど、特に気泡含有層の層数が多いほど、平均気泡径が小さくなる。
また、層数が同じ気泡含有多層フィルムであれば、気泡含有多層フィルムの厚みが薄いほど、気泡径が小さくなる。例えば、同じ厚みの気泡含有多層フィルムを作製する場合に、気泡含有層の層数が多いほど、更に各気泡含有層の厚みが薄いほど、気泡含有層中の気泡の平均気泡径が小さくなる。従って、気泡含有多層フィルムにおける層数及び気泡含有多層フィルムの厚みを制御することによって、平均気泡径が200nm未満である気泡を含有する気泡含有層を有する気泡含有多層フィルムを容易に得ることができる。
気泡含有層は、内部に複数の気泡を含有し、該気泡が「動かない空気の層」を形成している。このような層は、気泡含有多層フィルムに高い断熱効果と、クッション性とを付与する。
気泡含有多層フィルムは、気泡含有層を2以上有することが好ましい。気泡含有層を2以上有する気泡含有多層フィルムでは、気泡含有層を1つのみ有する気泡含有多層フィルムと比較して、特に厚みの厚い気泡含有層を1つのみ有する気泡含有多層フィルムと比較して、熱放射の低減効果がより一層高くなることなどから、断熱効果がより一層高くなる。
上記気泡含有層及び上記他の層を構成する材料は、樹脂であることが好ましい。上記樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂等が挙げられる。気泡含有層における平均気泡径をより一層容易に制御できるので、上記気泡含有層及び上記他の層はそれぞれ、熱可塑性樹脂により形成されていることがより好ましい。上記熱可塑性樹脂として、結晶性樹脂を用いてもよく、非晶性樹脂を用いてもよい。
上記気泡含有層及び上記他の層を構成する樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、ポリカーボネート樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、熱可塑性エラストマー、及び(メタ)アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂等の結晶性樹脂が好適である。また、上記気泡含有層はポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。さらに、上記他の層はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、又は、ポリスチレン樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン又はα−オレフィン等の単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体、及び2種以上のα−オレフィンの共重合体等が挙げられる。上記ポリオレフィン系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記α−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン及び1−オクテン等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂には、高分子化合物がアロイ化又はブレンドされていてもよい。上記熱可塑性樹脂に、層状珪酸塩が添加されてもよい。さらに、例えば、熱可塑性樹脂に、マレイン酸等のカルボン酸をグラフトした高分子化合物を少量添加して、熱可塑性樹脂と層状珪酸塩との親和性を高めてもよい。
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと該塩化ビニルと重合可能な塩化ビニル以外の重合性単量体との共重合体、並びに塩化ビニル重合体以外の重合樹脂に塩化ビニル重合体をグラフトさせたグラフト共重合体等が挙げられる。
上記重合性単量体は、反応性二重結合を有していれば特に限定されない。上記重合性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン及びブチレン等のα−オレフィン類、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、ブチルビニルエーテル及びセチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン及びα−メチルスチレン等の芳香族ビニル類、塩化ビニリデン及びフッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類、並びに、N−フェニルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられる。上記重合性単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記重合樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂及び塩素化ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。上記重合樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ABS系樹脂としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体が挙げられる。
また、耐熱性を向上させるために、上記熱可塑性樹脂に、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類及びN−フェニルマレイミドを共重合させてもよい。
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
上記熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、スチレン・ブタジエン系エラストマー、エチレン・プロピレン系エラストマー及びアクリル系エラストマー等が挙げられる。
所望の物性を得るために、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、ITO粒子又はLaB6粒子などの熱線遮蔽粒子、滑剤、難燃剤又は帯電防止剤等の添加剤が、上記熱可塑性樹脂に適宜添加されてもよい。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱可塑性樹脂に、結晶核剤となり得る化合物を少量添加して、結晶を微細化して、物性の均一性を高めてもよい。
上記熱可塑性樹脂の分子量及び分子量分布は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは2万以上、好ましくは500万以下、より好ましくは30万以下である。上記熱可塑性樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、好ましくは80以下、より好ましくは40以下である。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質として求めた値である。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定した値を意味する。
上記気泡含有層における気泡は、互いに独立した独立気泡であってもよく、互いに連通した連続気泡であってもよく、独立気泡と連続気泡とが混在してもよい。連続気泡よりも独立気泡の方が、また独立気泡の数の連続気泡の数に対する比が小さいほど、吸音効果が大きくなり、気泡含有多層フィルムにおける吸音性が高くなる。
上記気泡含有層は発泡した発泡層であることが好ましい。上記気泡含有層における発泡倍率は、気泡含有多層フィルムの用途により適宜決定される。上記気泡含有層の発泡倍率は、10倍未満であることが好ましい。発泡倍率が10倍未満であると、気泡含有多層フィルムの透明性をより一層高めることができ、可視光線透過率を70%以上にすることが容易である。さらに、発泡倍率が10倍未満であると、気泡含有多層フィルムの機械的強度をより一層高めることができる。透明性と断熱性とのバランスを良好にする観点からは、上記気泡含有層の発泡倍率は、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下、更に好ましくは2.5倍以下である。気泡含有層のクッション性及び断熱性をより一層高める観点からは、上記気泡含有層の発泡倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、更に好ましくは1.5倍以上である。
上記「発泡倍率」とは、気泡含有層の断面積をS0とし、かつ該断面積S0に占める気泡の面積の総和をS1とした場合に、式:S0/(S0−S1)により求められる。
上記「発泡倍率」の測定は、上記「平均気泡径」の測定と同様に、凍結切片法又は凍結破断法等により、気泡含有層の断面を露出させ、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、気泡含有層の断面を観察することにより行われる。TEM又はSEMの観察結果から、手計算又は画像処理計算等により、発泡倍率を求めることができる。
例えば、凍結切片法により、気泡含有層の厚さ方向における中央部の断面を露出させた後、気泡含有層の厚さ方向における中央部を観察できるようにサンプルを準備し、日立製作所社製の走査型電子顕微鏡(SEM、型式「S−3400N」)を用いて、気泡含有層の厚さ方向における中央部の断面を観察する。走査型電子顕微鏡を用いて、倍率1万倍で断面を観察し、観察された断面積をS0(縦5μm×横5μm、25μm2)とし、観察された全ての気泡の断面積の総和S1を算出し、式:S0/(S0−S1)により、発泡倍率を求めることが好ましい。
上記気泡含有層の厚みは、気泡含有多層フィルムの用途により適宜決定される。上記気泡含有層の各厚みは3μm未満であることが好ましい。上記気泡含有層の1層の厚みが3μm未満であると、気泡含有多層フィルムの透明性をより一層高めることができ、可視光線透過率を70%以上にすることできる。気泡含有多層フィルムの断熱性及びクッション性をより一層高める観点からは、上記気泡含有層の厚みは、30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることが更に好ましい。
気泡含有多層フィルム1は、気泡含有層を6層有し、気泡含有多層フィルム51は気泡含有層を13層有する。気泡含有多層フィルムにおける気泡含有層の層数は、1層以上であれば特に限定されず、気泡含有多層フィルムの厚み又は用途などにより適宜決定される。気泡含有多層フィルムにおける気泡含有層の層数は、20以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。例えば、気泡含有多層フィルムを建築又は車両用透明断熱材に用いる場合、気泡含有層の層数は20以上であることが好ましい。気泡含有層の層数が20以上であると、気泡含有多層フィルムの断熱性をより一層高めることができる。断熱性をさらに一層高める観点からは、気泡含有層の層数は、40以上であることがより好ましい。気泡含有層の層数の上限は特に限定されない。気泡含有層の層数は2万以下であってもよく、2万以上であってもよい。透明性をさらに一層高める観点からは、気泡含有層の層数は1万以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましく、800以下であることが特に好ましい。
上記気泡含有層とは異なる層すなわち他の層の厚みは、気泡含有多層フィルムの用途により適宜決定される。上記他の層の厚みは3μm未満であることが好ましい。上記他の層の厚みが3μm未満であると、気泡含有多層フィルムの透明性をより一層高めることができ、可視光線透過率を70%以上にすることができる。上記他の層の厚みは2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。気泡含有多層フィルムの断熱性及びクッション性をより一層高める観点からは、上記他の層の厚みは、50nm以上であることが好ましい。
上記他の層の層数は、20以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。他の層の層数の上限は特に限定されない。他の層の層数は2万以下であってもよく、2万以上であってもよい。透明性をさらに一層高める観点からは、他の層の層数は1万以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましく、800以下であることが特に好ましい。
薄型化の要求に対応し、かつ取り扱い性をより一層高める観点からは、気泡含有多層フィルムの厚みは1mm未満であることが好ましい。断熱性及びクッション性をより一層高める観点からは、気泡含有多層フィルムの厚みは、10μm以上であることが好ましい。
気泡含有層の厚みは特に限定されないが、気泡含有多層フィルムの透明性がより一層高くなることから、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。気泡含有多層フィルムの断熱性及びクッション性をより一層高める観点からは、上記気泡含有層の厚みは、50nm以上であることが好ましく、気泡含有層の内部に存在する気泡の平均気泡径よりも大きいことがより好ましい。
(気泡含有多層フィルムの製造方法)
本発明に係る気泡含有多層フィルムの製造方法は特に限定されない。気泡含有多層フィルムの製造方法としては、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、押出コーティング法、多層押出法、ホットメルトラミネーション法及びヒートラミネーション法等が挙げられる。
気泡含有多層フィルムの製造が容易であり、かつ気泡含有層における気泡径を容易に制御できるで、気泡含有多層フィルムは、多層押出法により得られていることが好ましい。上記多層押出法としては、例えば、マルチマニフォールド法及びフィードブロック法等が挙げられる。
上記気泡含有層は、樹脂と発泡剤とを含有する樹脂組成物により形成されていることが好ましく、熱可塑性樹脂と発泡剤とを含有する樹脂組成物により形成されていることが好ましい。未発泡状態の樹脂組成物(未発泡層)中の発泡剤を発泡させることにより、微細な気泡が形成され、気泡含有層(発泡層)が得られる。上記多層押出法により気泡含有多層フィルムを製造する場合、上記未発泡層を発泡させて発泡層とする時期に関しては、多層押出装置から押し出す前であってもよく、多層押出装置から押し出した後であってもよい。
上記未発泡層を発泡させて発泡層とする方法としては、例えば、上述した熱可塑性樹脂に熱分解型発泡剤を練り込み、該熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させる化学発泡剤法、上記熱可塑性樹脂の溶融物中に、ブタン、ペンタン又はジクロロジフロロメタン(フロンR−12)のような熱可塑性樹脂の融点以下に沸点を有するガス又は揮発性液体を圧入した後、低圧域に放出して発泡させるガス発泡法、並びに上記熱可塑性樹脂と層状珪酸塩との複合物中に所定の化学物質を超臨界状態で含浸させて発泡させる超臨界法等が挙げられる。
上記化学発泡剤法では、均一かつ微細な独立気泡を有する発泡層を得ることができる。一方で、発泡層中に発泡剤の分解物が残渣として残りやすいために、発泡層の変色、臭気の発生及び食品衛生上の問題等が生じることがある。
また、上記ガス発泡法では、発泡剤がブタン又はペンタンのような低沸点有機溶剤である場合には、発泡層の製造時に爆発性のガスが発生するので、爆発の危険がある。上記ガス発泡法では、発泡剤がジクロロジフロロメタン(フロンR−12)である場合には、爆発の危険も少なく、発泡時の気化に伴う蒸発潜熱により発泡層を急激に冷却して固化でき、更にセル膜に対するガス透過性が小さいために、高い発泡倍率の発泡体を得やすい。ただし、オゾン層破壊等の環境問題から、フロン系ガス以外のガスを用いることが好ましい。
上記超臨界法において用いられる上記化学物質として、上記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合には(融点−20℃)〜(融点+20℃)の範囲内で、上記熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合には(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+20℃)の範囲内で、気体状態である有機質又は無機質の任意のガスを用いることができる。このような気体としては、例えば、二酸化炭素(炭酸ガス)、窒素、酸素、アルゴン及び水、並びにフロン、低分子量の炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素、フッ化脂肪族炭化水素、アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の有機ガス等が挙げられる。特に、常温(23℃)常圧(大気圧)で気体であるガスが好適に用いられる。
上記低分子量の炭化水素としては、ペンタン、ブタン及びヘキサン等が挙げられる。上記塩素化脂肪族炭化水素としては、塩化メチル及び塩化メチレン等が挙げられる。
ガスの回収が不要であり、安全に取り扱うことができるため、上記化学物質として、二酸化炭素が好適に用いられる。二酸化炭素は、比較的低い温度及び低い圧力により超臨界化することができ、超臨界流体時に、分散に対して効果的に作用する。
上記「超臨界状態」とは、含浸すべき化学物質の臨界点よりも温度及び圧力が高い状態を言う。「超臨界状態」は、気体と液体との区別がなく、気体と液体との中間的な性質を持ち、熱伝導性が高く、拡散速度が速く、粘性が小さいという性質を有する。
上記化学物質は、常温で液体であってもよい。常温で液体である化学物質としては、例えば、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエチレン及びジクロルエタン等の塩素系化合物、並びにCFC−11、CFC−12、CFC−113及びCFC−141b等のフッ素系化合物が挙げられる。
上記化学物質を熱可塑性樹脂に含浸させる方法としては特に限定されず、例えば、密閉したオートクレーブ中に化学物質としての気体を封入し、圧力を加える方法等が挙げられる。この方法では、圧力及び温度の制御が容易である。
上記熱可塑性樹脂を溶融押出機に入れ、スクリューとしてベントタイプスクリューを用い、シリンダーの途中からベント部分に上記気体を注入してもよい。この場合には、溶融状態の樹脂に圧力シールを行うことにより、熱可塑性樹脂に対して、上記化学物質を効果的に含浸させることができ、連続的に発泡層を製造できる。
上記化学物質を熱可塑性樹脂に含浸させる際のガスの圧力としては、上記化学物質として常温常圧で気体であるガスを用いる場合には、好ましくは9.8×105Pa以上、より好ましくは9.8×106Pa以上である。
上記化学物質として常温常圧で気体のガスを用いる場合、該ガスが超臨界流体となる条件は、化学物質の種類により異なる。前述のように二酸化炭素は、比較的穏やかな条件で超臨界状態の性質を示し、例えば、60℃及び60気圧で超臨界流体となる。
上記化学物質を熱可塑性樹脂に含浸させる温度は特に限定されず、樹脂が劣化しない温度に適宜調整される。上記温度が高いほど、熱可塑性樹脂に対する上記化学物質の溶解量が上昇し、発泡倍率が高くなる。従って、含浸温度は高い方が好ましい。良好な発泡状態を得る観点からは、上記化学物質を熱可塑性樹脂に含浸させる温度は、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合には(融点−20℃)〜(融点+20℃)の範囲内であることがより好ましく、熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合には(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+20℃)の範囲内であることがより好ましい。上記化学物質を含浸させる温度が(融点+20℃)以下又は(ガラス転移温度+20℃)以下であると、熱可塑性樹脂の分子運動が活発化しすぎず、複合物中に溶解した化学物質が複合物から抜け難くなる。化学物質を含浸させる温度が融点以上又はガラス転移温度以上であると、熱可塑性樹脂が充分に分子運動して、複合物に化学物質を充分に溶解させることができる。
上記化学物質を熱可塑性樹脂に含浸させた後、熱可塑性樹脂中で化学物質を膨張させることにより、上記気泡含有層が形成されていてもよい。化学物質を体積膨張させる方法は、化学物質の種類に応じて適宜選ばれる。化学物質の体積膨張は、例えば、相対的に高い圧力で上記化学物質である気体を熱可塑性樹脂に含浸させた後に、圧力を低くすることにより、又は加熱することにより行われる。
上記化学物質を体積膨張させる温度は特に限定されない。上記化学物質を体積膨張させる温度は、上記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合には(融点−50℃)〜(融点+10℃)の範囲内であることが好ましく、上記熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合には(ガラス転移温度−50℃)〜(ガラス転移温度+50℃)の範囲内であることが好ましい。体積膨張させる温度が(融点+10℃)以下又は(ガラス転移温度+50℃)以下であると、溶解した気体が容易に抜け難くなるため、発泡構造を維持することが容易になる。体積膨張させる温度が(融点−50℃)以上又は(ガラス転移温度−50℃)以上であると、熱可塑性樹脂の分子運動が拘束され難く、発泡倍率を高くすることができる。
気泡含有多層フィルムを上述した多層押出法により製造し、上記気泡含有層を超臨界法により形成する場合には、上述した多層押出装置内の気泡含有層となる樹脂組成物を供給する部分に所定の超臨界装置を取り付け、超臨界状態の化学物質を気泡含有層となる樹脂組成物に供給できるようにすればよい。
(気泡含有多層フィルムの用途)
本発明に係る気泡含有多層フィルムの用途は特に限定されない。気泡含有多層フィルムの用途としては、例えば、印刷受容基材、ディスプレイ用保護部材、建築又は車両用透明断熱材、多層吸音材、多層遮音材、遮熱材、加飾性多層体、内装遮音材、内装吸音材、高光沢加飾内装材及び水密シール材等の用途が挙げられる。本発明に係る気泡含有多層フィルムは薄型化できるので、印刷受容基材、ディスプレイ用保護部材、並びに建築又は車両用透明断熱材として、好適に用いることができる。
また、気泡含有多層フィルムは、車両関連用途に用いることができる。具体的には、例えば、フロント、ルーフ、リア、サイド及びリアサイド等の自動車用窓ガラス等のグレージングとして、気泡含有多層フィルムを用いることができる。
グレージングには、透明性及び断熱性が求められる。断熱性及び耐熱性が高いので、気泡含有多層フィルムは、車両用グレージングを含め、透明断熱材として好適に用いることができる。グレージングには、更に視野角選択、調光、紫外線カット及び低線膨張化による伸縮抑制等の機能も求められることがある。本発明に係る気泡含有多層フィルムには、これらの機能も付与できる。
気泡含有多層フィルムを車両用グレージングに用いる場合には、該気泡含有多層フィルムには、透明性及び断熱性が求められる。従って、上記気泡含有層及び上記他の層はそれぞれ、透明樹脂により形成されていることが好ましく、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂により形成されていることがより好ましい。この場合には、気泡含有多層フィルムの構成としては、例えば、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された気泡含有層とが積層された構成、ポリカーボネートにより形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された他の層とが積層された構成、(メタ)アクリル樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された気泡含有層とが積層された構成、(メタ)アクリル樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された他の層とが積層された構成、塩化ビニル系樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された気泡含有層とが積層された構成、並びに塩化ビニル系樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された他の層とが積層された構成等が挙げられる。なかでも、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された気泡含有層とが積層された構成、又は、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された他の層とが積層された構成が好ましく、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された他の層とが積層された構成がより好ましい。
気泡含有多層フィルムを内装遮音材に用いる場合には、上記気泡含有層は、連続気泡を有することが好ましく、更に気泡の平均気泡径が小さい方が好ましい。気泡含有多層フィルムを内層遮音材に用いる場合には、上記気泡含有層及び上記他の層はそれぞれ、常温にガラス転移温度を有する材料により形成されていることが好ましい。この場合には、気泡含有多層フィルムの構成は、上述した車両用グレージングに用いる場合で説明した構成であることが好ましい。なかでも、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された気泡含有層とが積層された構成、又は、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された他の層とが積層された構成が好ましく、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された他の層とが積層された構成がより好ましい。
上記車両用グレージングに視野角選択機能を付与する場合には、上記気泡含有層は、例えば、製造時に延伸されて扁平発泡されていることが好ましく、扁平状の気泡を含むことが好ましい。上記気泡含有層及び他の層はそれぞれ、透明樹脂により形成されていることが好ましく、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びポリ塩化ビニル系樹脂により形成されていることが好ましい。なお、上記扁平発泡とは、上記気泡含有層中の気泡の断面形状が楕円形等、円形以外である発泡を意味する。この場合には、気泡含有多層フィルムの構成は、例えば、上述した車両用グレージングに用いる場合で説明した構成であることが好ましい。なかでも、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された気泡含有層とが積層された構成、又は、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された他の層とが積層された構成が好ましい。
上記車両用グレージングに調光機能を付与する場合には、上記他の層が導電機能を有する添加剤を含むことが好ましい。さらに、上記気泡含有層及び上記他の層はそれぞれ、透明樹脂を含むことが好ましく、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂を含むことがより好ましい。上記気泡含有層及び上記他の層はそれぞれ、透明樹脂により形成されていることが好ましく、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル系樹脂により形成されていることがより好ましい。この場合には、気泡含有多層フィルムの構成としては、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された他の層とが積層された構成、(メタ)アクリル樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された他の層とが積層された構成、塩化ビニル系樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂又は塩化ビニル系樹脂により形成された他の層とが積層された構成等が挙げられる。なかでも、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネートにより形成された他の層とが積層された構成が好ましい。また、上述した車両用グレージングに用いる場合で説明した気泡含有多層フィルムなどは、例えば、酸化タングステンが添加された導電性ブチラール層を有していてもよい。
上記車両用グレージングに調光機能を付与する場合には、気泡含有多層フィルムの構成は、例えば、上述した車両用グレージングに用いる場合で説明した構成であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂を含む気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂を含む気泡含有層とが積層された構成、ポリカーボネート樹脂を含む気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂を含む他の層とが積層された構成、ポリカーボネート樹脂を含む気泡含有層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂を含む他の層とが積層された構成が好ましい。なかでも、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂により形成されている気泡含有層とが積層された構成、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、ポリカーボネート樹脂により形成された他の層とが積層された構成、ポリカーボネート樹脂により形成された気泡含有層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又はポリスチレン樹脂により形成された他の層とが積層された構成が好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
実施例1〜7及び比較例2〜5では、多層押出装置を用いて、多層押出成形により、後述の樹脂を用いて複数の気泡を含有する気泡含有層(発泡層)と、後述の樹脂を用いて気泡を含有しない他の層(樹脂層)とを形成し、気泡含有多層フィルムを作製した。気泡含有層と樹脂層とは、気泡含有多層フィルムにおける厚み方向に交互に積層した。なお、気泡含有多層フィルムにおける発泡層は、二酸化炭素ガス含浸法により作製した。
(実施例1)
主押出機にポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製、ユーピロンE2000、MFR=5.3(g/10min))を供給し、CO2を圧入した。また、副押出機にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、EV460、MFR=2.5(g/10min))を供給した。主押出機と副押出機との先端に多層用フィードブロックを取り付け、各々の原料を交互に、気泡含有層と他の層とが合計で20層積層するように、積層体を得た。さらに、下流部に分割積層可能な多層用ブロックを数セット取り付け、20層の積層体を8個積層することにより層数を増加させて、層数160及び厚み80μmの気泡含有多層フィルムを得た。
(実施例2〜5)
気泡含有層及び他の層の厚みを下記の表1に示すようにしたこと、並びに20層の積層体の積層数をかえて気泡含有多層フィルムの層数を下記の表1に示すようにしたこと、並びに気泡含有層の発泡倍率を下記の表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、気泡含有多層フィルムを得た。
(実施例6)
気泡含有層の材料をポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、トーヨースチロールHRM−26、MFR=1.5(g/10min)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、層数160及び厚み80μmの気泡含有多層フィルムを得た。
(実施例7)
気泡含有層の材料をポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、トーヨースチロールHRM−26、MFR=1.5(g/10min)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、層数640及び厚み128μmの気泡含有多層フィルムを得た。
(比較例1)
厚み2mmのガラス板を用意した。
(比較例2〜5)
気泡含有層及び他の層の厚みを下記の表1に示すようにしたこと、並びに20層の積層体の積層数をかえて気泡含有多層フィルムの層数を下記の表1に示すようにしたこと、並びに気泡含有層の発泡倍率を下記の表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、気泡含有多層フィルムを得た。
(評価)
(1)各層の平均厚み
得られた気泡含有多層フィルムを切断した。走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製)を用いて、気泡含有多層フィルムの断面を1万倍にて観察し、断面写真をランダムに10枚選択し、気泡含有層及び他の層の厚みを求め、気泡含有層及び他の層の平均厚みを算出した。
(2)平均気泡径
凍結切片法により、気泡含有層の厚さ方向における中央部の断面を露出させた後、気泡含有層の厚さ方向における中央部を観察できるようにサンプルを準備した。日立製作所社製の走査型電子顕微鏡(SEM、型式「S−3400N」)を用いて、得られたサンプルを観察し、気泡含有層の内部に含有されている気泡をランダムに10個選択し、該気泡の気泡径を求め、平均気泡径を算出した。
(3)熱伝導率
得られた気泡含有多層フィルムを直径10mmの大きさに切り出した。熱レーザーフラッシュ式熱伝導率測定器(アルバック理工製)を用いて、気泡含有多層フィルムの熱伝導率を測定した。
(4)発泡倍率
凍結切片法により、気泡含有層の厚さ方向における中央部の断面を露出させた後、気泡含有層の厚さ方向における中央部を測定できるようにサンプルを準備し、日立製作所社製の走査型電子顕微鏡(SEM、型式「S−3400N」)を用いて、気泡含有層の厚さ方向における中央部の断面を観察した。走査型電子顕微鏡を用いて、倍率1万倍で断面を観察し、観察された断面積をS0(縦5μm×横5μm、25μm2)とし、観察された全ての気泡の断面積の総和S1を算出し、式:S0/(S0−S1)により、発泡倍率を求めた。
(5)可視光線透過率
JIS R3106に準拠した方法により、可視光線透過率測定器(日立計測器社製「U−4100」)を用いて、得られた気泡含有多層フィルムの可視光線透過率を測定した。
結果を下記の表1に示す。