JP2011225968A - 高炉又は製鉄所の操業方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CO2を含む混合ガスからCO2を分離回収する工程(A)と、該工程(A)で分離回収されたCO2に水素系還元剤を添加し、CO2をCOに変換する工程(B)と、該工程(B)を経たガスからH2O又はH2OとN2を分離除去する工程(C)と、該工程(C)を経たガスを高炉内に吹き込む工程(D)を有する。CO2を含む混合ガスからCO2を分離回収してこれをCOに改質し、このCOを還元剤として高炉に吹き込むので、CO2を有効に利用した高炉操業を低コストで実施でき、CO2発生量の削減を図ることができる。
【選択図】図1
Description
高炉プロセスでは、高炉下部から1000℃以上の熱風を送風し、コークスを燃焼させ、鉄鉱石の還元・溶解に必要な熱を供給するとともに、還元ガス(CO)を生成させ、この還元ガスで鉄鉱石を還元し、溶銑を得る。
Fe2O3+3H2=2Fe+3H2O ΔH=100.1kJ/mol(吸熱) …(1)
Fe2O3+3CO=2Fe+3CO2 ΔH=-23.4kJ/mol(発熱) …(2)
上記のように水素による還元は吸熱反応であるため、水素を高炉に直接吹き込んだ場合、炉下部の熱を奪い、鉄鉱石の還元・溶解に必要な熱が不足する恐れがあり、炉下部の熱補償が必要となる。
さらに、特許文献2には、高炉で低還元材比操業を指向した場合には、炉上部の熱補償のために、高炉ガスの一部を燃焼させ、高温ガスとして高炉シャフト部に吹き込む技術が開示されている。同文献には、必要に応じて高炉ガス中のCO2を除去する技術も開示されている。
また、特許文献3には、高炉ガスを触媒の存在下でジメチルエーテルと反応させ、ジメチルエーテルと高炉ガス中のCO2をCOと水素に改質する方法が開示されている。
特許文献1の方法は、高炉にLNGを吹き込むことにより、還元材(コークスなど)が低減でき、間接的に高炉で発生するCO2量を低減できるが、発生したCO2を有効に利用し、実質のCO2発生量を削減するというものではない。また、特許文献2の技術も、特許文献1と同様に実質のCO2発生量を削減する技術ではなく、また、分離されたCO2をさらに有効に利用することについては記載されていない。また、特許文献3の方法で用いられるジメチルエーテルは、石炭、石油又は天然ガスをCO及びH2などの合成ガスに一旦変換し、さらにその合成ガスから製造されるものであるため、製造コストが高く、また、その製造工程においてエネルギーを投入することからCO2が新たに発生する問題がある。
また、本発明の他の目的は、発生したCO2を改質して製鉄所内で有効に利用することで、実質のCO2発生量を削減することができるとともに、製鉄所内で熱源となる副生ガスが不足した場合でもこれを補うことができ、しかも低コストに実施することができる製鉄所の操業方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、特に高炉から排出されるCO2を改質して有効利用することができる高炉又は製鉄所の操業方法を提供することにある。
[2]上記[1]の操業方法において、混合ガスがCO2とともにCOを含み、工程(A)では、混合ガスからCO2とCOを各々分離回収し、工程(D)では、工程(C)を経たガスを、工程(A)で分離回収したCOとともに高炉内に吹き込むことを特徴とする高炉の操業方法。
[4]上記[3]の操業方法において、混合ガスがCO2とともにCOを含み、工程(A)では、混合ガスからCO2とCOを各々分離回収し、工程(C)を経たガスを、工程(A)で分離回収したCOとともに製鉄所内の設備において燃料及び/又は還元剤として用いることを特徴とする製鉄所の操業方法。
(i)工程(B)で改質されることなく残存したCO2
(ii)工程(B)で消費されることなく残存した水素系還元剤
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの操業方法において、混合ガスが高炉ガスであることを特徴とする高炉又は製鉄所の操業方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの操業方法において、水素系還元剤が、水素又は/及びアンモニアであることを特徴とする高炉又は製鉄所の操業方法。
この高炉の操業方法では、CO2を含む混合ガスからCO2を分離回収する工程(A)と、この工程(A)で分離回収されたCO2に水素系還元剤を添加し、CO2をCOに変換(改質)する工程(B)と、この工程(B)を経たガスからH2O又はH2OとN2を分離除去する工程(C)と、この工程(C)を経たガス(通常、COガス又はCO主体のガス)を高炉内に吹き込む工程(D)を有する。また、混合ガスがCO2とともにCOを含む場合の好ましい実施形態では、工程(A)において混合ガスからCO2とCOを各々分離回収し、工程(D)では、工程(C)を経たガスを、工程(A)で分離回収されたCOとともに高炉内に吹き込む。
工程(D)で高炉内に吹き込まれたCOは、鉄鉱石の補助還元剤として機能する。COによる鉄鉱石の還元は発熱反応であり、水素による鉄鉱石還元ほど高炉下部への熱補償は必要ない。
また、本発明が最も有用なのは、原料の混合ガスとして高炉ガスを用いる場合であり、高炉ガスに含まれるCO2をCOに改質して高炉に還元剤として循環させることにより、高炉からのCO2排出量を削減することができる。高炉ガスの一般的な組成は、CO2:15〜25vol%、CO:15〜25vol%、N2:45〜55vol%、水素:0〜5vol%程度である。原料の混合ガスとして高炉ガスを用いる場合、高炉から発生する高炉ガスの一部又は全部を対象とするが、例えば、高炉ガスの20vol%を使用した場合には、CO2排出量を5〜6%程度削減することができる。
・工程(A)
原料ガスである混合ガスは、CO2を含む混合ガス(或いはCO2とCOを含む混合ガス)であり、この工程(A)では、この混合ガスからCO2を分離回収する。また、CO2とCOを含む混合ガスの場合には、混合ガスからCO2とCOを各々分離回収し、この分離回収されたCOを、工程(B)でCO2を変換(改質)して得られたCOとともに、最終的に高炉に吹き込むようにすることが好ましいが、これに限られるものではなく、例えば、CO2とCOを含む混合ガスから、CO2のみを分離回収するようにしてもよい。
混合ガスからCO2を分離回収する方法としては、例えば、加圧又は冷却によりCO2を液化又は固化する方法、苛性ソーダやアミンなどの塩基性水溶液にCO2を吸収させた後、加熱又は減圧により分離回収する方法、活性炭やゼオライトなどにCO2を吸着させた後、加熱又は減圧により分離回収する方法、CO2分離膜により分離回収する方法などが知られており、これらを含む任意の方法を採用することができる。
なお、混合ガスから分離回収されたCO2やCOのガス純度に特別な制限はないが、改質工程で使用する反応器の小型化などの観点からは、80vol%以上の純度であることが好ましい。
この工程(B)では、上記工程(A)で分離回収されたCO2に水素系還元剤を添加し、CO2をCOに変換(改質)するが、水素系還元剤(ガス)としては、水素、炭化水素、アンモニアなどの中から選ばれる1種以上が用いられる。具体的には、(i)CH4などを含むLNGやLPG、(ii)CH4及び水素などを含む製鉄所副生ガス(例えば、コークス炉ガスなど)、(iii)水素、(iv)アンモニア、などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。CO2排出量を低減する観点からは、実施の工程でCO2を新たに発生させないものの方が好ましいので、上記のなかでも炭素を含まない水素系還元剤、すなわち水素やアンモニアが特に好適である。
アンモニアは石炭を乾留するコークスを製造する際に発生し(アンモニア発生量は約3.3Nm3/t-石炭)、現状では、液安又は硫安として回収されている。このアンモニアを本発明において水素系還元剤として利用できれば、製鉄所外から水素系還元剤を調達する必要がなくなり、或いは製鉄所外から調達する量を少なくすることができる。
CO2+H2=CO+H2O ΔH=9.9kJ/mol(吸熱) …(3)
CO2+NH3=CO+1/2H2+H2O+1/2N2 ΔH=20.9kJ/mol(吸熱) …(4)
また、CO2に混合する水素系還元剤の量は、量論比以上であることが好ましい。
CO2をCOに改質するための反応は、上記反応式に示されるように吸熱反応であり、そのための熱源は、COG顕熱、スラグ顕熱、焼結鉱顕熱などの未回収の製鉄所の排熱を利用してもよいし、本発明で得られたCOを燃焼して得られる熱を利用してもよい。また、別途燃料を燃焼させて熱源としてもよい。
この工程(C)では、上記工程(B)を経たガス(以下、「改質後ガス」という)からH2O又はH2OとN2を分離除去する。水素系還元剤によってCO2をCOに改質した場合、同時に高炉内の還元材(コークスなど)を消費する成分が生成し、この成分が改質後ガス中に含まれてしまうことになる。具体的には、例えば、水素系還元剤として水素やCH4などの炭化水素を用いた場合にはH2Oが生成し、水素系還元剤としてアンモニアを用いた場合にはH2OとN2が生成する。H2Oが高炉に導入されると、高炉内のコークスを消費し、逆にCO2排出量が増加する。一方、N2が高炉に導入されても高炉内のコークスを消費することはないが、N2を高温ガスにするための顕熱が必要となり、結果としてコークス使用量の増加に繋がる。したがって、改質後ガスからH2O(例えば、水素系還元剤として水素やCH4などの炭化水素を用いた場合)又はH2OとN2(例えば、水素系還元剤としてアンモニアを用いた場合)を分離除去する必要がある。
また、改質後ガスからN2を分離除去するには、例えば、工程(A)で行われるような混合ガスからCOを分離回収する方法を適用し、改質後ガスからCOを分離することで実質的にN2を分離除去する方法を採ることができる。具体的な方法は、工程(A)で述べたとおりである。
さらに、改質後ガスに上記工程(B)でCOに改質されなかったCO2が残存している場合には、例えば、さきに述べたような方法でCO2を分離除去してもよい。
以上により、改質後ガスは、通常、CO主体のガス又は実質的にCOのみからなるガスとなる。
この工程(D)では、工程(C)を経た改質後ガスを補助還元剤として高炉内に吹き込むが、上記工程(A)で混合ガスからCOも分離回収した場合には、このCOと混合してから高炉内に吹き込んでもよい。改質後ガス(又は工程(A)で分離回収されたCOが混合された改質後ガス)は、高炉操業を考慮するとガス温度を高めて高炉内に吹き込むことが好ましく、このため工程(B)を経た直後の高温の改質後ガスと熱交換して昇温させてから高炉に吹き込んでもよい。また、他の熱源を用いて間接加熱により改質後ガスを昇温させてもよい。改質後ガスの高炉内への吹き込みは、通常、羽口を通じて行うが、これに限られるものではない。改質後ガスを羽口から吹き込む場合、羽口に吹込みランスを設置し、この吹込みランスから吹き込むのが一般的である。
この製鉄所の操業方法では、CO2を含む混合ガスからCO2を分離回収する工程(A)と、この工程(A)で分離回収されたCO2に水素系還元剤を添加し、CO2をCOに変換(改質)する工程(B)と、この工程(B)を経たガスからH2O又はH2OとN2を分離除去する工程(C)を有し、この工程(C)を経たガス(通常、COガス又はCO主体のガス)を製鉄所内において燃料及び/又は還元剤として用いる。また、混合ガスがCO2とともにCOを含む場合の好ましい実施形態では、工程(A)において混合ガスからCO2とCOを各々分離回収し、工程(C)を経たガスを、工程(A)で分離回収されたCOとともに、利用される製鉄所内の設備に供給する。
工程(C)を経たガスを供給する製鉄所内の設備としては、上述した高炉以外に、例えば、高炉に供給する熱風を製造する熱風炉、スラブ等の鋼片を加熱する蓄熱バーナのような加熱炉、コークス炉、焼結機等が挙げられるが、これらに限定されない。加熱炉や熱風炉等の設備に本発明で得られたCOを燃料として供給することで、それらの設備で使用する燃料ガス量を節減することができる。
また、さきに述べたように、製鉄所では高炉、コークス炉、転炉からそれぞれ高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガスが副生し、これら副生ガスは製鉄所内の加熱炉や熱風炉などの熱源(燃料)として利用されているが、この熱源となる副生ガスが種々の理由で不足する場合があり、これを補う熱源として、上記CO2を改質して得られたCOは有用である。
本発明を実施する前の高炉操業条件を以下に示す。
・送風量:1112Nm3/t-p
・酸素富化量:7.6Nm3/t-p
・送風中湿分:25g/Nm3
・送風温度:1150℃
・還元材比:497kg/t-p(コークス比:387kg/t-p、微粉炭比:110kg/t-p)
・高炉ガス発生量(dry):1636Nm3/t-p(窒素:54.0vol%,CO2:21.4vol%,CO:21.0vol%,水素:3.6vol%)
・CO2排出量(高炉に供給したCをCO2換算):1539kg/t-p
図1に示すような処理フローに従い、高炉ガスの一部を改質・循環させた。
高炉から発生した高炉ガスの約20vol%を、CO2吸着剤が充填された吸着塔に導入して絶対圧200kPaでCO2を吸着させ、しかる後、このCO2を絶対圧7kPaで脱着させ、CO2(CO2濃度99vol%)を得た(以下、この高炉ガスから分離・回収されたCO2を「CO2ガスx」という)。さらに、CO2が分離・回収された後の高炉ガスをCO吸着剤が充填された吸着塔に導入して絶対圧200kPaでCOを吸着させ、しかる後、このCOを絶対圧7kPaで脱着させ、CO(CO濃度99vol%)を得た(以下、この高炉ガスから分離・回収されたCOを「COガスy」という)。
上記COガスzを上記COガスyと混合した後、高炉羽口から吹き込んだ。この実施例では、還元材比:469kg/t-p(コークス比:359kg/t-p、微粉炭比:110kg/t-p)、CO2排出量:1453kg/t-pとなり、本発明を実施する前の高炉操業条件と比較してCO2排出量を約5.6%削減できた。
高炉から発生した高炉ガスの約10vol%を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、COガスを高炉羽口から吹き込んだ。この実施例では、還元材比:484kg/t-p(コークス比:374kg/t-p、微粉炭比:110kg/t-p)、CO2排出量:1499kg/t-pとなり、本発明を実施する前の高炉操業条件と比較してCO2排出量を約2.6%削減できた。
水素系還元剤としてアンモニアを用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、COガスを高炉羽口から吹き込んだ。高炉ガスから分離回収されたCO2ガスxを改質器(反応器)に導き、ここで水素系還元剤としてアンモニアを添加し(NH3/CO2:1.5モル比)、Ni−Co系触媒を用いて反応温度:500℃、SV:200h−1の条件でCOに改質(変換)した。CO2転化率は約90%であった。この実施例では、還元材比:469kg/t-p(コークス比:359kg/t-p、微粉炭比:110kg/t-p)、CO2排出量:1453kg/t-pとなり、本発明を実施する前の高炉操業条件と比較してCO2排出量を約5.6%削減できた。
[実施例4]
実施例1と同様の方法でCO2を改質して得られたCOを熱風炉で燃料として利用した。
通常の操業では、高炉ガス:493Nm3/t-p(発熱量:740kcal/Nm3)とコークス炉ガス:40Nm3/t(発熱量:4580kcal/Nm3)を混合して533Nm3/t-p(発熱量:1028kcal/Nm3)の混合ガスとし、この混合ガスを熱風炉にて燃焼させて熱風炉を蓄熱し、この蓄熱された熱風炉に空気を供給することで、1112Nm3/t-p、1150℃の熱風を製造し、高炉に送風している。これに対して本実施例では、上記コークス炉ガスの代わりに本発明法で得られたCOガス:75Nm3/t-p(発熱量:2950kcal/Nm3)を高炉ガス:493Nm3/t-p(発熱量:740kcal/Nm3)に混合して568Nm3/t-p(1032kcal/Nm3)の混合ガスとし、この混合ガスを熱風炉で燃焼させ、1112Nm3/t-p、1150℃の熱風を製造し、高炉に送風した。この結果、通常の操業で利用していた40Nm3/t-pのコークス炉ガスが削減でき、削減されたコークス炉ガスは所内の加熱炉で使用することができた。
Claims (7)
- CO2を含む混合ガスからCO2を分離回収する工程(A)と、該工程(A)で分離回収されたCO2に水素系還元剤を添加し、CO2をCOに変換する工程(B)と、該工程(B)を経たガスからH2O又はH2OとN2を分離除去する工程(C)と、該工程(C)を経たガスを高炉内に吹き込む工程(D)を有することを特徴とする高炉の操業方法。
- 混合ガスがCO2とともにCOを含み、
工程(A)では、混合ガスからCO2とCOを各々分離回収し、
工程(D)では、工程(C)を経たガスを、工程(A)で分離回収したCOとともに高炉内に吹き込むことを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業方法。 - CO2を含む混合ガスからCO2を分離回収する工程(A)と、該工程(A)で分離回収されたCO2に水素系還元剤を添加し、CO2をCOに変換する工程(B)と、該工程(B)を経たガスからH2O又はH2OとN2を分離除去する工程(C)を有し、該工程(C)を経たガスを製鉄所内の設備において燃料及び/又は還元剤として用いることを特徴とする製鉄所の操業方法。
- 混合ガスがCO2とともにCOを含み、
工程(A)では、混合ガスからCO2とCOを各々分離回収し、
工程(C)を経たガスを、工程(A)で分離回収したCOとともに製鉄所内の設備において燃料及び/又は還元剤として用いることを特徴とする請求項3に記載の製鉄所の操業方法。 - 工程(C)では、さらに、工程(B)を経たガスから下記(i)又は/及び(ii)を分離除去又は分離回収することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高炉又は製鉄所の操業方法。
(i)工程(B)で改質されることなく残存したCO2
(ii)工程(B)で消費されることなく残存した水素系還元剤 - 混合ガスが高炉ガスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高炉又は製鉄所の操業方法。
- 水素系還元剤が、水素又は/及びアンモニアであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高炉又は製鉄所の操業方法。
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